JP3534103B2 - ボロメータ型赤外線センサ - Google Patents

ボロメータ型赤外線センサ

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JP3534103B2 JP2001375708A JP2001375708A JP3534103B2 JP 3534103 B2 JP3534103 B2 JP 3534103B2 JP 2001375708 A JP2001375708 A JP 2001375708A JP 2001375708 A JP2001375708 A JP 2001375708A JP 3534103 B2 JP3534103 B2 JP 3534103B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ボロメータ型赤外
線センサに関し、特に、抵抗温度特性にヒステリシスが
あるボロメータ材料を用いたボロメータ型赤外線センサ
に関する。
【0002】
【従来の技術】ボロメータ型赤外線センサは、熱分離さ
れたボロメータ材料に赤外線を照射し、温度変化に起因
する抵抗変化により赤外線を検出するセンサである。図
4は、この種のボロメータ型赤外線センサの従来例の構
造を示す図で、図(A)は平面図、図(B)は図(A)
のAA’断面図である。図(B)に示されているよう
に、ダイアフラム10は、ボロメータ薄膜5およびその
下に形成された支持膜3、ボロメータ薄膜5の上面に形
成された保護膜、保護膜の外表面に形成された赤外吸収
膜7を備えている。また、ダイアフラム10は、ボロメ
ータ薄膜5の両端に電極4を備えている。電極4は電極
配線14に接続され、電極4に電圧を印加してボロメー
タ薄膜5の温度変化に起因する抵抗変化を読み取ること
によって赤外線が検知される。
【0003】この赤外線センサは、ダイアフラム10が
梁12、12’によって宙に浮いた構造にされ、それに
よって、ボロメータ薄膜5が熱分離されるように設計さ
れている。基板2の上には完全反射膜1が設けられ、該
反射膜1とダイアフラム10との間に空洞9を設け、反
射膜1とダイアフラム10間との間隔を最適に限定する
することによって、ダイアフラム表面の赤外吸収膜7に
よって吸収された入射赤外線11のほとんどが散失する
ことなくボロメータ薄膜5を含むダイアフラム10で吸
収される。これによりダイアフラムの温度が上昇し、ボ
ロメータ薄膜5の抵抗が変化する。図(B)において、
基板2上の土手16は空洞9の側壁を構成し、ダイアフ
ラム10と土手16との間はスリット8によって熱遮断
されている。なお、図4(A)の参照番号13,13’
はそれぞれ梁12,12’の付け根であり、参照番号1
5は電極配線のコンタクトである。
【0004】このようなボロメータ型赤外線センサのボ
ロメータ材料としては、温度変化1度当たりの抵抗変化
率である抵抗温度係数(TCR、temperature coeffici
entof resistance、[%/K])の高い材料が望まれる。金
属や金属酸化物、半導体のなかにこのような特性を有す
るものが報告されている。例えば、特開平5−2065
26、米国出願768801にはボロメータ材料として
n型またはp型にドープされたアモルファスシリコン
(a−Si)を用いる技術が開示されている。また、酸
化バナジウムまたはそれをベースとした材料は、ボロメ
ータによく用いられており、文献Solar Energy Materia
ls 14, 205 (1986)や文献Physical ReviewB 22, 2626
(1980)などにそれらの特性が報告されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】a−Si系のボロメー
タ材料はTCRの値が3%/K 程度という比較的高い値を示
すけれど、比抵抗が1000Ωcmを越える高い値をもってい
る。このように、比抵抗が高い場合には、抵抗値を読み
出す際に大きなジョンソンノイズが加わり、赤外線に対
する実質的な感度はあまり高くならない。逆に、比抵抗
が極めて小さい場合には配線抵抗の影響が現れて高い感
度が得られなくなる。したがって、比抵抗としては0.01
〜1Ωcm程度が望ましい値である。
【0006】一方、酸化バナジウムもしくはそれをベー
スにした材料では、比抵抗(〜0.1Ωcm)が比較的低
く、TCRとして2%/K程度のものが得られる。しかし、よ
り高感度のセンサを目指すためには、さらに大きなTCR
が必要となる。酸化バナジウムを用いてさらに大きなTC
Rを得るために、酸化バナジウムの相転移を利用する方
法がある。酸化バナジウムの相転移の前後では、一般的
に二桁以上の抵抗変化が観察される。また、酸化バナジ
ウムに種々の金属をドーピングすることにより、転移温
度を適当な温度に制御することができる。このような理
由で、酸化バナジウムをボロメータとして用いるならば
高感度の赤外線検出特性を期待することができる。
【0007】しかし、酸化バナジウムの比抵抗は温度変
化のサイクルに対してヒステリシスをもつことが知られ
ている。従来、比抵抗温度特性がヒステリシスをもつボ
ロメータ材料は、次に説明する理由によって赤外線受光
素子材料として使うことはできなかった。
【0008】図5は、比抵抗温度特性にヒステリシスを
持つ材料のヒステリシス曲線を表す図である。図5にお
いて、低温側の安定相を第1相とし、高温側の安定相を
第2相とする。以下の記述において図中の点(すなわ
ち、ボロメータ温度と該温度に対応するボロメータ抵抗
との組)をボロメータの「状態」と記す。
【0009】同図のボロメータ材料の比抵抗ρ(図5に
おいては対数表示されている)は温度変化と共に次のよ
うに変化する。先ず、第1相の状態aから温度を上昇さ
せると、臨界状態bに達するまでは、比抵抗は緩やかに
変化する。臨界状態bを超えて更に温度を上昇させる
と、相転移が始まり、比抵抗は急激に減少する。そうし
て状態cに達すると、更に温度を上昇させても、比抵抗
の急激な変化はもはや起こらず、比抵抗は再び緩やかに
変化する。すなわち、状態bから状態cの間にボロメー
タ材料は第1相から第2相へ相転移をし、臨界状態cで
相転移を終了して高温側安定相である第2相に移行す
る。以下の記述で、曲線bcを昇温曲線と記す。
【0010】次に、ボロメータ材料を第2相の状態fか
ら降温するときには、温度が状態cに対応する温度にな
っても相転移は起こらないでボロメータ材料は第2相を
維持する。この温度域では、ボロメータ材料の比抵抗は
緩やかに変化する。温度を更に下げて状態dに達する
と、相転移が始まり、比抵抗は急激に増加する。そうし
て状態eに対応する温度まで比抵抗の急激な上昇が続
く。状態eを過ぎて更に温度を下げると、この温度域で
は、ボロメータ材料の比抵抗は緩やかに変化する。以下
の記述において、曲線deを降温曲線と記す。ボロメータ
材料は降温曲線に対応する温度域において第2相から第
1相への相転移を行なう。
【0011】この種のボロメータ材料を使用するとき注
意を要することは、昇温曲線および降温曲線で表される
相転移が不可逆過程であるということである。いま、ボ
ロメータ材料の状態を第1相の状態aから臨界状態bを経
て昇温曲線上の一点p1に移行させ、次に温度を降下させ
る場合を考える。このとき、ボロメータ材料の状態は、
状態p1から昇温曲線上を逆向きに臨界状態bの方向に移
行するのではなく、状態p1から曲線abにほぼ平行に低温
側に向かって移行する(図5の点p1から向かって左方に
向かって移行する)。そうして、そのような過程を経て
ボロメータ材料の状態が図5の点pで表される状態にな
ったとき、その材料の温度を再び上昇させると、その比
抵抗は、図5の曲線p-p1に沿って緩やかに変化した後、
材料の状態が昇温曲線上の点p1に達して始めて昇温曲線
に沿って急激に変化する。
【0012】同様な現象は、ボロメータ材料を第2相の
状態fから出発して温度を降下させる場合にも生じる。
いま、ボロメータ材料の状態を第2相の状態fから臨界
状態dを経て降温曲線上の一点p2に移行させ、次に温度
を上昇させる場合を考える。このとき、ボロメータ材料
の状態は、状態p2から降温曲線上を逆向きに臨界状態d
の方向に移行するのではなく、状態p2から曲線dfにほぼ
平行に高温側に向かって移行する(図5の点p2から向か
って右方に向かって移行する)。そうして、そのような
過程を経てボロメータ材料の状態が図5の点pで表され
る状態になったとき、その材料の温度を再び降下させる
と、その比抵抗は、図5の曲線p-p2に沿って緩やかに変
化した後、材料の状態が降温曲線上の点p2に達して始め
て降温曲線に沿って急激に変化する。
【0013】したがって、相転移を利用して高い赤外線
検出感度を得るために、昇温曲線上の1点p1に対応する
物理化学的構造(ボロメータ材料が単結晶である場合に
は結晶構造、結晶不完全性、ボロメータ材料が多結晶で
ある場合には結晶粒の結晶構造、結晶不完全性および結
晶粒界のエネルギー状態)をもつボロメータ材料を使用
したとしても(例えば、図5においてボロメータ材料の
状態を昇温曲線上の状態p1にして、次に温度を降下させ
て状態pにすることによって実現することができる)、
その動作温度を状態p1に対応する転移温度に置かなけれ
ば、高感度の比抵抗変化(ヒステリシス曲線に沿う変
化)を実現することはできない。
【0014】しかし、従来のボロメータは周囲温度を動
作温度として動作するので、ボロメータ材料の物理化学
的構造がヒステリシス曲線上の状態に対応する物理化学
的構造と同一であったとしても、それによって、ヒステ
リシス曲線に沿う急激な比抵抗変化を実現することが出
来るとは限らないという問題がある。
【0015】この問題を具体的に説明すると、次のよう
になる。赤外線センサの温度分解能(NETD)は、0.1℃
程度が一般的である。したがって、高感度検出が要求さ
れる被写体からの赤外線によって生じるボロメータの温
度変化はこの程度の大きさである。その結果、そのよう
な被写体によって生じるボロメータの温度変化はヒステ
リシスの温度幅ΔTtより充分小さいのが通常である。実
際、このヒステリシスの温度幅ΔTtはVO2の場合、ボロ
メータ材料がバルク単結晶である場合には1℃、多結晶
薄膜の場合で2℃、結晶性の悪い薄膜で10℃という値が
報告されている(J. Vac. Sci. Tchnol. A15, 1113 (199
7))。また、V2O3に1mol%のCrをドーピングしたもので
は、50℃という値が報告されている((Physical Review
B 22, 2626 (1980))。このような条件の下で、図の状
態p(温度Tobj)にあるボロメータに赤外光が入射した
とき、ボロメータ抵抗値はヒステリシスの温度幅の中で
図中の実線矢印のように変動する。このとき、ボロメー
タの温度変化ΔTobjはヒステリシス温度幅ΔTtに比較し
て小さいので、ボロメータの温度Tobjは転移温度(昇温
曲線上の点p1に対応する温度T1)に到達しない。したが
って、相転移は生じない。その結果、高いTCRは得られ
ず、したがって、高い赤外線検出感度は得られない。
【0016】さらに、温度ヒステリシスをもつ材料をボ
ロメータに使用するときには、温度履歴(その材料が昇
温過程にある材料であるのか降温過程にある材料である
のか)がが明らかでなければ使用できないという問題が
ある。例えば、図5の状態pを実現するためには、2つ
の熱処理の過程がある。第1の過程は、第1相の状態a
から出発して、臨界状態bを経由して昇温曲線上の状態p
1に達し、状態p1から温度を降下させて状態pに到る過程
である。第2の過程は、第2相の状態fから出発して、
臨界状態dを経由して降温曲線上の状態p2に達し、状態p
2から温度を上昇させて状態pに到る過程である。
【0017】第1の過程によって生成された状態pの材
料温度をTobjから上昇させると、比抵抗ρ(図5上では
logρ)は曲線p-p1に沿って緩やかに変化し、材料の温
度が状態p1に対応するT1に達すると、それ以後は、温度
上昇に対して急激に変化する。しかし、この材料の温度
を状態pに対応するTobjから降下させると、比抵抗は、
ほぼ、直線p1-pの延長線に沿って緩やかに変化する。そ
のとき、その延長線が降温曲線と交差しても相転移をす
ることなく、そのまま緩やかな変化を継続する。その理
由は、この材料は、昇温曲線上の状態p1における物理化
学的構成が凍結されたまま、温度のみが変化した状態で
あるので、再び、温度が状態p1に戻らない限り、相転移
をすることが出来ないからである。
【0018】第2の過程によって生成された状態pの材
料温度をTobjから降下させると、比抵抗ρは曲線p-p2に
沿って緩やかに変化し、材料の温度が状態p2に対応する
温度に達すると、それ以後は、温度降下に対して急激に
上昇する。しかし、この材料の温度を状態pに対応するT
objから上昇させると、比抵抗は、ほぼ、直線p2-pの延
長線にそって緩やかに変化する。そのとき、その延長線
が昇温曲線と交差しても相転移をすることなく、そのま
ま緩やかな変化を継続する。その理由は、この材料は、
降温曲線上の状態p2における物理化学的構成が凍結され
たまま、温度のみが変化した状態であるので、再び、温
度が状態p2に対応する温度に戻らない限り、相転移をす
ることが出来ないからである。
【0019】このような理由によって、ボロメータ材料
が同一の化学組成(同一のドーピング濃度)をもち、か
つ、同一の状態pにあっても、その熱処理の履歴によっ
て正反対の動作をする。このことは、ヒステリシスをも
つ材料をボロメータに使用することができない第2の理
由である。以上の問題のため、ヒステリシスを有する材
料を、ボロメータ型赤外線センサに応用したという報告
例はない。
【0020】本発明はこのような従来の事情に鑑みてな
されたもので、比抵抗温度特性におけるヒステリシスの
問題を解決し、相転移を利用した高感度のボロメータ型
赤外線センサを提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明のボロメータ型赤外線センサは、ボロメータ
材料として抵抗温度特性にヒステリシスを有する材料が
用いられ、かつボロメータ感熱部に対して温度サイクル
を与える手段を有する。
【0022】温度サイクルによってボロメータ感温部に
周期的な温度シフトが与えられる。この温度シフトによ
って、ボロメータ感温部の動作温度(照射赤外線光量変
化に起因する温度変化を定める基準温度(ゼロ点温
度))をヒステリシス曲線上におくことができる。それ
によって、温度変化に対する比抵抗変化を高感度で検出
することができる。また、この温度シフトを周期的に行
うことによって次のような利点を実現することができ
る。1)温度シフトが周期的に行われるので赤外線検出信
号(抵抗変化として検出される)も周期信号として検出
される。周期信号は、それがノイズに埋まった微弱な信
号であっても同期的信号処理(例えば同期整流)によっ
て容易に検出することができる。2)周期的な温度シフト
によってボロメータ感温部の動作温度を2つのヒステリ
シス曲線(昇温曲線および降温曲線)の両方の上に交互
におくことができる。その結果、赤外線光量の増加およ
び減少の双方を検出することができる。
【0023】上記2)の利点を安定した動作で実現するた
めに、温度サイクルの温度変動幅ΔTcをΔTc > ΔTt
+|ΔTobj|になるように設定することが望ましい。こ
こでΔTtはヒステリシスの温度幅、ΔTobjは温度サイク
ルの一周期後の、被写体から発射される赤外線の光量変
化に起因するボロメータ感熱部の温度変化である。
【0024】このような設定をするのは次の理由によ
る。前記したように、2つのヒステリシス曲線の両方を
使用するためには温度シフトの範囲、すなわち、温度サ
イクルの変動幅ΔTcは少なくともヒステリシスの温度幅
ΔTtの大きさである必要がある。しかし、変動幅ΔTcを
ΔTc=ΔTtのように設定すると次の問題が発生する。例
えば、ΔTobj>0のとき、ボロメータ感温部は赤外線に
よって暖められるので、温度サイクルの変動幅ΔTcはΔ
Tobjだけ昇温曲線側にずれることになる。したがって、
ボロメータ感温部の動作温度はΔTobjだけ降温曲線から
遠ざかることになり、昇温曲線を利用して赤外線検出を
することはできるけれど、降温曲線を利用して赤外線検
出をすることはできなくなる。逆に、ΔTobj<0の場合
には、昇温曲線を利用して赤外線検出をすることはでき
なくなる。
【0025】このような問題を回避するために、ΔTtに
予め|ΔTobj|を加算したものを温度変動幅ΔTcとして
設定することによって、赤外線光量に正負いずれの変動
があっても、ヒステリシス曲線に沿う比抵抗変化特性を
利用した赤外線検出を行うことができる。
【0026】しかし、このように温度変動幅ΔTcを設定
しても、その温度サイクルがヒステリシス曲線から遠隔
した温度領域で行われた場合には、本発明の目的を達成
することはできない。したがって、温度サイクルを実行
する温度領域は、ヒステリシス曲線に近い温度領域に設
定されなければならない。すなわち、温度サイクルは、
その温度サイクル中にヒステリシス曲線に沿う比抵抗変
化が生じる温度領域に設定される。
【0027】温度サイクルを実現するために、本発明の
一実施形態においては、ボロメータ感熱部に電流を断続
的に流して、ジュール熱を発生させる。この場合には、
そのジュール熱による温度上昇ΔTcがΔTc > ΔTt +
|ΔTobj|になるように電流を流す。
【0028】また、温度サイクルをかけるために、本発
明の実施形態においては、ボロメータ感熱部に電流を流
す際、その電流値からボロメータの温度情報を読みと
る。
【0029】さらに本発明によれば、ボロメータ型素子
をアレイ状に複数個並べ、画素ごとに用意された読み出
し回路により温度サイクルの付与と温度情報読み取りと
を同時に行う。それによって、高感度で安価な赤外線セ
ンサが得られる。
【0030】
【発明の実施の形態】次に、本発明について図面を参照
して説明する。
【0031】図1は、本発明の赤外線センサの動作原理
を説明するボロメータ感温部の比抵抗温度特性図であ
る。図1においても、ボロメータ比抵抗ρは対数表示
(logρ)で表されている。ボロメータは常にヒステリ
シスの温度幅ΔTtより大きい温度変動幅ΔTcで昇温・降
温が周期的に繰り返される。ここで、ΔTcは式ΔTc>Δ
Tt+ΔTmaxが成り立つように設定され、ΔTmaxは予想さ
れる赤外線光量変化に起因するボロメータ感温部の温度
変化の最大値である。
【0032】いま、赤外線光量が設定された基準値であ
るとき、ボロメータを降温曲線上の状態A(温度Tobj)
におき、温度サイクルを開始する。まず、昇温を開始す
ると、ボロメータは、物理化学的構造変化を伴わずに温
度上昇して比抵抗曲線(図中A→Bで表されている)
は、昇温曲線と状態Bでクロスする。ΔTc>ΔTtである
ので、ボロメータ温度はさらに上昇する。状態Bの温度
TBを超すと、ボロメータは物理化学的構造変化を伴って
温度上昇し、状態C(温度Tc =Tobj+ΔTc)に到る。
【0033】次に降温を開始すると、物理化学的構造変
化を伴わずに温度降下し、比抵抗曲線(図中C→Dで表
されている)は状態Dで降温ラインとクロスする。状態
Dの温度から最初の温度Tobjまでは物理化学的構造変化
を伴って温度降下する。
【0034】赤外線光量が減少した場合には、この温度
サイクル中に赤外線光量の減少によってボロメータから
放出される熱量が一定であれば、この熱量はボロメータ
の温度をΔTobjだけ下降させるように働く。したがっ
て、温度サイクルはΔTobjだけ低温側(図の左方)にず
れる。図1の点A’は、次の温度サイクル開始点であ
る。このようにして、ΔTobjを検出することによって、
高TCRを維持したまま赤外線の光量変化を検知するこ
とができる。
【0035】図1の実施形態においては、温度サイクル
の開始点を降温曲線上においた場合について説明したが
温度サイクルの開始点をヒステリシス曲線以外の点にお
いても同様な結果を得ることができる。図2は温度サイ
クルの開始点をヒステリシス曲線以外の点に設定した場
合の温度サイクルの一例を説明する図である。
【0036】図2は、昇温曲線の外側(高温側)の点C
を温度サイクルの開始点に設定し、ボロメータ温度を最
初に降下させ、次に上昇させる場合の例である。温度サ
イクルが行われる温度領域はT1〜T2でこの温度領域は比
抵抗温度特性のヒステリシスが起こる温度領域TD〜TUの
範囲内にある。温度変動幅ΔTc>ΔTtである。
【0037】図2を参照すると、状態C(温度T2)から
出発してボロメータ温度を降下させる。ボロメータ材料
は物理化学的構造変化を生じることなく昇温曲線を横切
って降温曲線上の点Dに達する。さらに温度を降下させ
ると、降温曲線に沿って(物理化学的構造変化をしなが
ら)状態A(温度T1)に到達する。次の昇温過程におい
ては、ボロメータ材料は物理化学的構造変化を生じない
で昇温曲線上の状態Bに達する。ボロメータ材料の温度
が更に上昇すると、該材料は昇温曲線に沿って(物理化
学的構造変化を生じながら)昇温曲線上の点E(温度T
2)に達する。これで最初の1サイクルを終了する。第
2サイクルは昇温曲線上の点Eから開始するのであるか
ら、図1の温度サイクルと全く同様な動作になる。従っ
て、赤外線検出は第2サイクル以後の温度サイクルで実
行すれば図1と同様な方法を適用することができる。
【0038】本発明のボロメータ型赤外線センサに安定
した動作を行わせる条件は、温度サイクルの温度差をΔ
Tc、一周期後の光量変化に伴う温度変化をΔTobjとし
て、 ΔTc > ΔTt +|ΔTobj| (1) となるようにΔTcを決めることと、温度サイクルの温度
領域を、ボロメータ比抵抗温度特性のヒステリシスが起
こる温度領域TD〜TU内に設定することである。
【0039】本発明の赤外センサには、温度サイクルを
実現するために、ボロメータに電流を断続的に供給して
ジュール熱を発生させた。これにより特別な昇温・降温
装置は必要なく、コンパクトなセンサが実現できた。ま
た同時に、電流を流すことを利用して抵抗値の測定も行
った。このような電流制御および抵抗値の読み出し動作
は、素子に隣接するIC回路により一括して行った。
【0040】図3は、ボロメータに電流を供給し、1フ
レームごとに昇温・降温を繰り返す温度サイクルを説明
した図である。抵抗値は、印加した電圧と流れた電流に
よって測定する。この場合の温度差ΔTcは ΔTc = VB2(1-exp(-τro /τT))/G RB (2) で表される。ここで、VBはボロメータに印加されるバイ
アス電圧、t roは読出時間、t Tは熱時定数、Gは熱コン
ダクタンス、RBはボロメータの抵抗である。本実施形態
では、図4に示されている素子を50μm間隔で並べてア
レイ素子を作成し、ΔTc は 12.9℃となるよう設計し
た。また、ボロメータ材料として室温付近で転移点を迎
えるように、意図的に酸素欠陥を多くしたVO2 薄膜を用
いた。この膜のTCRは10%/Kである。なお、通常の相転移
の無い領域のVO2のTCRは、2%/K程度である。また、こ
の膜のヒステリシスの温度幅ΔTt は5℃である。この
ような材料は、従来のボロメータ型赤外線センサでは使
用することができない。
【0041】このようにして得られた赤外線センサの温
度分解能を測定したところ、0.02Kの温度分解能が得ら
れた。これは従来のヒステリシスの無いVO2を用いた素
子の5倍の感度であり、高感度の赤外線センサが実現す
ることができた。
【0042】
【発明の効果】以上説明したように本発明によると、比
抵抗温度特性のヒステリシスがあるボロメータ材料に周
期的な温度バイアスを与えて、任意の温度において赤外
線吸収によって発生した微小な温度変化を相転移温度近
傍の温度変化に変換することによって、相転移による急
峻な比抵抗温度特性を赤外線センサに応用することが可
能になり、その結果、ボロメータ材料の相転移による比
抵抗変化を利用した高感度赤外線センサを実現すること
ができる。また、ボロメータ材料に電力サイクルを印加
してジュール熱によって温度サイクルを実現し、その温
度サイクルを生成するための電流および電圧によって抵
抗値を測定することにより、温度サイクル機能を含め赤
外線センサを低コスト・コンパクトに実現することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の赤外線センサの動作原理を説明する
ボロメータ感温部の比抵抗温度特性図である。
【図2】 温度サイクルの開始点をヒステリシス曲線以
外の点に設定した場合の温度サイクルの一例を説明する
図である。
【図3】 ボロメータに電流を供給し1フレームごとに
昇温・降温を繰り返す温度サイクルを説明する図であ
る。
【図4】 ボロメータ型赤外線センサの従来例の構造を
示す図で、(A)は平面図、(B)は(A)のAA’断
面図である。
【図5】 比抵抗温度特性にヒステリシスを持つ材料の
ヒステリシス曲線を表す図である。
【符号の説明】
1 完全反射膜 2 基板 3 保護膜 4 電極 5 ボロメータ薄膜 6 保護膜 7 赤外吸収膜 8 スリット 9 空洞 10 ダイアフラム 11 赤外線 12と12’ 梁 13と13’ 梁の付け根 14 電極配線 15 コンタクト 16 土手
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平9−61259(JP,A) 特開 平5−206526(JP,A) 特開 平2−291929(JP,A) H.R.Kokabi他,“Elec trical characteriz ation of PTC therm istor based on chr omium doped vanadi um sesquioxide”,Ma terials Science an d Engineering B,1996 年,vol.38,no.1−2,p.80 −89 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01J 1/00 - 1/60 G01J 5/00 - 5/62 G01K 1/00 - 19/00 Web of Science

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ボロメータ材料を用いた感温部を有す
    る赤外線センサにおいて、ボロメータ材料として比抵抗
    温度特性にヒステリシスを有する材料が用いられ、かつ
    ボロメータ感熱部に対して温度サイクルを与える手段を
    し、 前記温度サイクルの温度変動幅をΔ Tc 、ヒステリシスの
    温度幅をΔ Tt 、温度サイクルの一周期後の、被写体から
    の赤外線光量変化に起因するボロメータ感熱部の温度変
    化をΔ Tobj とするとき、 Δ Tc Δ Tt +|Δ Tobj になるように温度変動幅Δ Tc が設定され、 前記温度サイクルは、その温度サイクル中にヒステリシ
    ス曲線に沿う比抵抗変化が生じる温度領域に設定されて
    いる ことを特徴とするボロメータ型赤外線センサ。
  2. 【請求項2】 ボロメータ材料を用いた感温部を有する
    赤外線センサにおいて、ボロメータ材料として比抵抗温
    度特性にヒステリシスを有する材料が用いられ、かつボ
    ロメータ感熱部に対して温度サイクルを与える手段を有
    し、 前記温度サイクルを与える手段は、ボロメータ感熱部に
    電流を断続的に供給して、ジュール熱を発生させるジュ
    ール熱発生手段を有し、 前記ジュール熱による温度上昇をΔTcとし、ヒステリシ
    スの温度幅をΔTt、温度サイクルの一周期後の、被写体
    からの光量変化に起因する温度変化をΔTobjとすると
    き、前記ジュール熱発生手段は、 ΔTc>ΔTt+|ΔTobj | となるように電流を供給し、 前記温度サイクルは、その温度サイクル中にヒステリシ
    ス曲線に沿う比抵抗変化が生じる温度領域に設定されて
    いる ことを特徴とするボロメータ型赤外線センサ。
  3. 【請求項3】 温度サイクルを与えるためにボロメー
    タ感熱部の電流を測定し、その電流値からボロメータの
    温度情報を読みとる温度読取手段を有することを特徴と
    する請求項2記載のボロメータ型赤外線センサ。
  4. 【請求項4】 ボロメータ型素子をアレイ状に複数個
    並べ、画素ごとに用意された読み出し回路により温度サ
    イクルの付与と温度情報読み取りとを同時に行うことを
    特徴とする請求項記載のボロメータ型赤外線センサ。
  5. 【請求項5】 ボロメータ材料を用いた感温部を有す
    る赤外線センサにおいて、 ボロメータ材料として比抵抗温度特性にヒステリシスを
    有する材料が用いられ、かつ前記ボロメータ材料を発熱
    体として当該感温部に温度サイクルを与える手段を有
    し、 前記温度サイクルの温度変動幅をΔ Tc 、温度サイクルの
    一周期後の、被写体からの赤外線光量変化に起因するボ
    ロメータ感熱部の温度変化をΔ Tobj とするとき、前記温
    度サイクルの温度範囲におけるヒステリシスの温度幅が
    最大でもΔ Tt 以下となるような値Δ Tt を定め、 Δ Tc Δ Tt +|Δ Tobj になるように温度変動幅Δ Tc が設定され、 該温度変動幅Δ Tc による前記温度サイクルに同期させて
    当該ボロメータ材料の比抵抗値を読みとることによって
    入射赤外線エネルギーを検出することを特徴とするボロ
    メータ型赤外線センサ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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H.R.Kokabi他,"Electrical characterization of PTC thermistor based on chromium doped vanadium sesquioxide",Materials Science and Engineering B,1996年,vol.38,no.1−2,p.80−89

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