JP3533592B2 - 炭素粉末を分散した加工液を供給して金属電極を用いて放電により被加工面に前記金属炭化物の被膜を形成する方法 - Google Patents

炭素粉末を分散した加工液を供給して金属電極を用いて放電により被加工面に前記金属炭化物の被膜を形成する方法

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義幸 宇野
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和久 平尾
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、炭素粉末を分散し
た加工液を供給して金属電極を用いて放電により被加工
面に前記金属炭化物の被膜を形成する方法に関するもの
であり、特には被加工物表面に表面粗さが改善された硬
質被覆層を形成する方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】近年、放電加工を利用して工作物表面に硬
質の被膜を形成できることが明らかにされ、純チタンに
対し放電加工を行うことにより加工液の熱分解により生
成した炭素が加工面に侵入し、チタン表面にTiC層が
形成できること(電気加工学会全国大会講演論文集、1
15(1996年)参照)、また、純チタン電極を用
い、切削工具の表面にTiCからなる硬質の被膜を形成
することによって、該工具の寿命が著しく改善できるこ
とが報告されている(電気加工学会誌、31,6第26
頁−、(1997年)、および電気加工学会全国大会講
演論文集、5(1997年)等参照)。しかしながら、
前記方法による被膜は、処理表面が比較的粗いために、
光沢面を必要とする金型や機械部品の摺動面の形成には
十分なものとはいえなかった。また、前記放電加工で
は、耐摩耗性被膜として十分な膜厚を得ることが難しか
った。
【0003】また、特開平9−19829号公報には、
液中で被加工物に改善層を形成する放電加工による表面
処理方法において、炭素と結合して耐摩耗性の高い炭化
物を形成する金属を電極として用い、所定の絶縁耐力を
有し、炭素を所定量含有する液体を加工液として用い、
所定の立ち上がり時間を有する電流波形を放電パルス波
形として用いることにより、放電加工の熱作用によって
前記金属電極物質と前記加工液中の炭素との間に化学反
応を発生せしめ、前記被加工物表面に金属炭化物の改質
層を形成することを特徴とする放電加工による表面処理
方法、の発明が記載されている。しかしながら、前記表
面処理方法は、加工中、放電により発生した熱エネルギ
ーにより、電極材料であるTi(チタン)が加工部分の
加工液中に浮遊するとともに、工作物表面に付着する。
また、同時に加工液3の中のC(炭素)が放電の熱エネ
ルギーにより分解し、加工液から離脱する。この分解し
た炭素と前記加工液中および工作物表面に付着したTi
(チタン)との間の化学反応により、Tiの炭化物(T
iC)が形成され、工作物表面に硬質被膜が形成され
る、ものであり、分解した炭素を利用するものである。
この方法では、比較的パルス幅の長い条件で膜を形成す
るために厚い被膜を形成できるが、処理面の粗さが大き
いという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、膜
厚が厚い場合においても、表面粗さが十分小さい硬質膜
を工作物の表面に形成できる放電加工を利用した表面処
理方法を見出すのが本願発明の課題である。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨の第1は、
電極に炭素と結合して耐摩耗性の優れた炭化物を形成す
る金属を用い、加工液として炭素粉末を添加した高分子
化合物または鉱物油を供給し、前記加工液中で放電によ
り被加工物表面に前記金属の炭化物からなる硬質被覆層
を形成することを特徴とする炭素粉末を分散した加工液
を供給して金属電極を用いて放電により被加工面に前記
金属炭化物の被膜を形成する方法であり、第2は、前記
炭素粉末の濃度を、加工液体積に対して、1g/L以上
30g/L以下であることを特徴とする前記炭素粉末を
分散した加工液を供給して金属電極を用いて放電により
被加工面に前記金属炭化物の被膜を形成する方法であ
り、第3は、加工液に加える炭素粉末の平均粒径を40
μm以下とすることを特徴とする前記炭素粉末を分散し
た加工液を供給して金属電極を用いて放電により被加工
面に前記金属炭化物の被膜を形成する方法である。
【0006】
【本発明の態様】本発明の態様を説明する。金属電極と
しては、Ti以外に、従来から硬質膜の形成に使用され
ている、W(タングステン),V(バナジウム),Ta
(タンタル),Nb(ニオブ)などを用いることができ
る。加工液としては、炭化水素系の鉱物油やグリセリン
などの高分子加工物系加工液を用いることができる。炭
素粉末の平均粒径としては、40μm以下が好ましい
が、更に好適な範囲は30μm以下である。パルス幅と
して、従来から5〜500μsecの範囲が用いられて
いるが、本発明の方法では、パルス幅の全範囲におい
て、加工表面粗さが改善されることが理解され、比較的
膜厚の大きな硬質膜を形成する方法において有用であ
る。
【0007】
【実施例】実施例 加工条件 電極 直径15mmのTi 被加工物 SKD−61 極性 電極:(−)(正極性) 無負荷電圧 Ui=90V 放電電流 ie=3A パルス幅 te=2〜200μsec Duty factor τ=10% 炭素粉末濃度 Cc=0〜15g/L 炭素粉末の平均粒径は30μmである。加工液として
は、灯油を用いた。図1は、加工液中の炭素粉末の濃度
を変化させた場合の、処理表面粗さ(左縦軸)および再
凝固層厚さ(被膜厚さ)(右縦軸)との関係を示す。い
ずれのパルス幅(2μs〜200μs)の条件において
も、炭素粉末濃度の増加とともに加工面の粗さが減少し
ている。再凝固層厚さ(被膜厚さ)は粉末濃度に関係な
くほぼ一定であり、パルス幅2μsの場合に約6μm、
パルス幅200μsの場合約30μmである。
【0008】図2は、パルス幅を変化させた場合の加工
面粗さおよび再凝固層厚さ(被膜厚さ)との関係を示
す。パルス幅の増加と共に加工面粗さは増加するが、粉
末を入れた方が粗さが小さい、すなわち表面特性が良い
ことが解る。一方再凝固層厚さ(被膜厚さ)にはほとん
ど差がない。粉末混入加工の場合には粗さ約1μmRz
で厚さ約6μmの再凝固層(被膜)の加工面を形成する
ことができる。従って、加工液に炭素粉末を加えたもの
を供給して放電加工することにより、再凝固層(被膜)
が厚く、表面粗さの改善された加工面が得られることが
解った。
【0009】図3は、パルス幅200μs,炭素粉末濃
度15g/Lの条件で形成した再凝固層(被膜)の表面
(a)および断面(b)の顕微鏡写真である。加工面の
凹凸は小さく、均一な厚さの再凝固層(被膜)が形成さ
れていることがわかる。図4は、パルス幅200μs,
炭素粉末濃度15g/Lの条件で形成した再凝固層(被
膜)のX線回折による再凝固層(被膜)の組成分析結果
を示す。再凝固層(被膜)には母材の組成以外にTiC
の存在が明らかである。該層のビッカース硬度は、約2
000Hvである。TiCの本来の硬度は3200Hv
と比較すると小さい。これは再凝固層(被膜)が完全な
TiCでないためと考えられる。しかしながら、母材と
比較するとかなり硬く、表面改質の効果は十分に得られ
ている。
【0010】
【発明の効果】以上述べたように、本発明の炭素粉末を
分散した加工液を供給して金属電極を用いて放電により
被加工面に前記金属炭化物の薄膜を形成する方法によ
り、膜厚が厚い場合においても、表面粗さが十分小さい
硬質膜を工作物の表面に形成できるという優れた効果が
もたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 炭素粉末濃度と加工面粗さおよび再凝固層厚
さ(被膜厚さ)との関連
【図2】 パルス幅と加工面粗さおよび再凝固層厚さ
(被膜厚さ)との関連
【図3】 パルス幅200μs,炭素粉末濃度15g/
Lの条件で形成した再凝固層(被膜)の表面(a)およ
び断面(b)の顕微鏡写真
【図4】 パルス幅200μs,炭素粉末濃度15g/
Lの条件で形成した再凝固層(被膜)の表面のX線回折
による組成分布分析結果
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高木 俊 岐阜県大垣市青柳町300 イビデン株式 会社青柳工場内 (56)参考文献 特開 平7−70761(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 26/00 B23H 1/06 B23H 1/08 B23H 9/00

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電極材料に炭素と結合して耐摩耗性の優
    れた炭化物を形成する金属を用い、加工液として炭素粉
    末を添加した高分子化合物または鉱物油を供給し、前記
    加工液中で放電により被加工物表面に前記金属の炭化物
    からなる硬質被覆層を形成することを特徴とする炭素粉
    末を分散した加工液を供給して金属電極を用いて放電に
    より被加工面に前記金属炭化物の被膜を形成する方法。
  2. 【請求項2】 前記炭素粉末の濃度は、加工液体積に対
    して、1g/L以上30g/L以下であることを特徴と
    する請求項1に記載の炭素粉末を分散した加工液を供給
    して金属電極を用いて放電により被加工面に前記金属炭
    化物の被膜を形成する方法。
  3. 【請求項3】 前記炭素粉末の平均粒径は40μm以下
    であることを特徴とする請求項1または2に記載の炭素
    粉末を分散した加工液を供給して金属電極を用いて放電
    により被加工面に前記金属炭化物の被膜を形成する方
    法。
  4. 【請求項4】 前記電極に用いる金属はTi(チタ
    ン),W(タングステン),V(バナジウム),Ta
    (タンタル),Nb(ニオブ)から選ばれる1種である
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の炭
    素粉末を分散した加工液を供給して金属電極を用いて放
    電により被加工面に前記金属炭化物の被膜を形成する方
    法。
  5. 【請求項5】 前記電極に用いる金属はTi(チタン)
    であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記
    載の炭素粉末を分散した加工液を供給して金属電極を用
    いて放電により被加工面に前記金属炭化物の被膜を形成
    する方法。
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