JP3528658B2 - 内燃機関の排気浄化装置 - Google Patents

内燃機関の排気浄化装置

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JP3528658B2
JP3528658B2 JP04496999A JP4496999A JP3528658B2 JP 3528658 B2 JP3528658 B2 JP 3528658B2 JP 04496999 A JP04496999 A JP 04496999A JP 4496999 A JP4496999 A JP 4496999A JP 3528658 B2 JP3528658 B2 JP 3528658B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は内燃機関の排気浄化
装置に関し、詳細には流入する排気空燃比がリーンのと
きに排気中のNOX を吸収し、流入する排気中の酸素濃
度が低下したときに吸収したNOX を放出するNOX
蔵還元触媒を備えた内燃機関の排気浄化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】流入する排気空燃比がリーンのときに排
気中のNOX を吸収し、流入する排気中の酸素濃度が低
下したときに吸収したNOX を放出するNOX 吸蔵還元
触媒が知られている。NOX 吸蔵還元触媒はリーン空燃
比雰囲気下で排気中のNOX を吸収するが、吸収したN
X 量が増大し飽和量に到達するとそれ以上NOX を吸
収できなくなる。このため、NOX 吸蔵還元触媒を用い
た排気浄化装置では定期的にNOX 吸蔵還元触媒に流入
する排気の酸素濃度を低下させてNOX 吸蔵還元触媒か
ら吸収したNOX を放出させる必要がある。NOX 吸蔵
還元触媒をガソリン機関の排気浄化装置として使用した
場合には、機関の運転空燃比を低下させると(すなわち
機関をリッチ空燃比で運転すると)排気中の酸素濃度が
低下するとともに排気中の未燃HC、CO成分が増大す
るため、上記NOX 吸蔵還元触媒からNOX が放出さ
れ、放出されたNOX がNOX 吸蔵還元触媒上でHC、
COにより還元される。
【0003】ところが、ディーゼル機関はリッチ空燃比
で運転することが困難であるため、NOX 吸蔵還元触媒
をディーゼル機関の排気浄化装置として使用した場合に
は、他の手段を用いて排気中の酸素濃度を低下させるこ
とが必要となる。NOX 吸蔵還元触媒をディーゼル機関
の排気浄化装置として使用する場合に排気酸素濃度を低
下させてNOX 吸蔵還元触媒から吸収したNOX を放出
させる一つの方法としては、NOX 吸蔵還元触媒の上流
側の排気通路に液体炭化水素等の還元剤を供給する方法
が知られている。上流側の排気通路に供給された還元剤
が排気中に分散して排気とともにNOX 吸蔵還元触媒に
流入すると、還元剤がNO X 吸蔵還元触媒上で排気中の
酸素と反応し酸化される。このため、NOX 吸蔵還元触
媒の雰囲気酸素濃度が低下し、NOX 吸蔵還元触媒から
吸収したNOX が放出される。また、放出されたNOX
はNOX 吸蔵還元触媒上で排気中の還元剤により還元浄
化される。
【0004】NOX 吸蔵還元触媒に関するものではない
が、排気通路に配置した触媒の上流側の排気通路に還元
剤を供給する装置の例としては特開平6−108829
号公報に記載されたものがある。同公報の装置は、内燃
機関の排気通路にNOX 還元用の還元触媒を配置したも
のであり、NOX の還元に必要とされる還元剤を触媒上
流側排気通路に噴射するインジェクタを備えている。同
公報の装置では、還元剤として機関の燃料が用いられ、
燃料は機関の燃料噴射系統から分岐配管を通じてインジ
ェクタに供給される。また、分岐配管上には燃料を遮断
する遮断弁が設けられており触媒が活性化していない場
合には遮断弁を閉弁してインジェクタからの燃料噴射を
停止する構成とされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記公報の装置のよう
に、排気通路に液体還元剤を噴射するインジェクタと、
このインジェクタへの還元剤供給を制御する遮断弁とを
設けた場合には、噴射終了後のインジェクタからの還元
剤の洩出が問題となる場合がある。通常、インジェクタ
からの還元剤噴射を制御する遮断弁や制御弁としては、
電磁弁等の応答速度の早いアクチュエータを備えた弁が
使用される。ところが、このような制御弁等を用いる場
合には作動の信頼性を確保するために、高温になる排気
通路から充分に距離をおいて設置する必要がある。従っ
て、このような制御弁を使用する場合にはインジェクタ
と制御弁とを接続する配管長さが長くなり、配管の容積
が大きくなる場合がある。インジェクタからの還元剤噴
射を停止するために制御弁が閉弁すると、制御弁とイン
ジェクタとを接続する配管中には高圧の還元剤が残留す
ることになるが、この配管中に残留した還元剤は制御弁
閉弁後も圧力が低下するまでインジェクタから排気通路
に洩出する可能性がある。
【0006】特に、噴射した還元剤の霧化を良好にする
ためにスワールノズル式のインジェクタを使用した場合
には、後述するようにノズル噴孔を閉鎖する弁体が存在
しないため制御弁閉弁後に配管中の還元剤がインジェク
タから洩出しやすくなる。このため、制御弁とインジェ
クタとの間の配管容積(デッドボリューム)が大きい場
合には洩出する還元剤の量も多くなり、噴射終了後(制
御弁閉弁後)もインジェクタから排気通路に還元剤が供
給されてしまう、いわゆる噴射の「切れ」が悪くなると
いう問題がある。
【0007】特にNOX 吸蔵還元触媒に還元剤を供給す
る場合に噴射の「切れ」が悪くなると、NOX 吸蔵還元
触媒には吸収したNOX の還元に必要な量以上の還元剤
が供給され、過剰な還元剤がNOX の還元に使用されな
いまま触媒下流側に流出するようになり排気性状が悪化
する問題が生じる。この、噴射の「切れ」の問題を解決
するためには、制御弁をできるだけインジェクタ近傍に
配置して配管のデッドボリュームを低減すれば良いが、
この場合には制御弁が排気通路の高温の影響を直接受け
ることになり、制御弁の作動不良、破損等が生じる可能
性が高くなってしまう問題がある。
【0008】本発明は上記問題に鑑み、制御弁とインジ
ェクタ(ノズル)との距離の増大による還元剤噴射の
「切れ」の悪化を簡易に防止し、熱による制御弁の信頼
性低下を防止することが可能な内燃機関の排気浄化装置
を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明に
よれば、内燃機関の排気通路に配置され、流入する排気
の空燃比がリーンのときに排気中のNOXを吸収し流入
する排気の酸素濃度が低下したときに吸収したNOX
放出するNOX吸蔵還元触媒と、該NOX吸蔵還元触媒の
上流側の排気通路に液体還元剤を噴射するノズルと、該
ノズルに加圧還元剤を供給する還元剤通路と、該還元剤
通路を開閉して前記ノズルからの還元剤噴射を制御する
制御弁とを有する還元剤供給装置と、前記ノズルからの
還元剤噴射終了後に前記還元剤供給装置内に残留する還
元剤を回収する回収手段と、を備えた内燃機関の排気浄
化装置において、前記回収手段は、液体還元剤を昇圧し
て前記還元剤通路に供給する還元剤ポンプの吸入側低圧
部分と前記還元剤通路とを接続する連通路と、該連通路
を開閉する回収弁とを備え、前記ノズルからの還元剤噴
射終了後に前記回収弁を開弁することにより還元剤供給
装置内に残留する還元剤を回収する内燃機関の排気浄化
装置が提供される。
【0010】すなわち、請求項1に記載の発明では、ノ
ズルからの還元剤噴射が終了すると、回収手段により還
元剤供給装置内に残留した高圧の還元剤が供給装置外に
回収される。このため、噴射が終了するとノズルと制御
弁との距離とは無関係に還元剤通路内に高圧の還元剤が
残留することがなくなり、噴射終了後にノズルから還元
剤が洩出することが防止される。
【0011】また、請求項1に記載の発明では、回収手
段は噴射終了後に還元剤通路を還元剤ポンプの吸入側に
連通することにより還元剤を回収する。還元剤ポンプの
吸入側圧力はポンプ吐出側圧力(すなわち、噴射終了時
の還元剤通路内圧力)より大幅に低くなっているため、
これにより噴射終了後には還元剤通路内に残留する還元
剤は連通路を通って強制的に還元剤通路外に排出され、
還元剤供給装置内の還元剤が回収される。なお、連通路
は還元剤ポンプに還元剤を供給するタンク等の低圧部分
に接続しても良いが、還元剤ポンプの吸入配管等のよう
にタンク内より低圧となる部分に接続することも可能で
ある。
【0012】請求項2に記載の発明によれば、内燃機関
の排気通路に配置され、流入する排気の空燃比がリーン
のときに排気中のNO X を吸収し流入する排気の酸素濃
度が低下したときに吸収したNO X を放出するNO X 吸蔵
還元触媒と、該NO X 吸蔵還元触媒の上流側の排気通路
に液体還元剤を噴射するノズルと、該ノズルに加圧還元
剤を供給する還元剤通路と、該還元剤通路を開閉して前
記ノズルからの還元剤噴射を制御する制御弁とを有する
還元剤供給装置と、前記ノズルからの還元剤噴射終了後
に前記還元剤供給装置内に残留する還元剤を回収する回
収手段と、を備えた内燃機関の排気浄化装置において、
前記制御弁は、前記還元剤通路を液体還元剤を昇圧する
還元剤ポンプの吐出側高圧部分に接続する第1の位置
と、前記還元剤通路を前記還元剤ポンプの吸入側低圧部
分に接続する第2の位置との間で動作する三方弁であ
り、前記回収手段は前記ノズルからの還元剤噴射終了後
に前記制御弁を第1の位置から第2の位置に動作させる
ことにより還元剤供給装置内に残留する還元剤を回収す
る内燃機関の排気浄化装置が提供される。
【0013】
【0014】すなわち、請求項2に記載の発明では、制
御弁は三方弁とされノズルからの還元剤噴射時には還元
剤ポンプからの高圧還元剤を還元剤通路に導き、噴射終
了時にはポンプからの還元剤通路への還元剤供給を遮断
するとともに、還元剤通路を低圧部分に接続する。これ
により、還元剤通路内に残留した還元剤は噴射終了後直
ちに排出され、回収される。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を用いて本発明の
一実施形態について説明する。図1は、本発明の排気浄
化装置を自動車用ディーゼル機関に適用した場合の実施
形態の概略構成を示す図である。図1において、1は自
動車用ディーゼル機関を示す。機関1の各気筒排気ポー
トは排気マニホルド31を介して共通の排気通路3に接
続され、排気通路3上には後述するNOX 吸蔵還元触媒
7が配置されている。図1に9で示すのはNOX吸蔵還
元触媒7再生操作時にNOX 吸蔵還元触媒7に還元剤を
供給する還元剤供給装置である。還元剤供給装置9は、
NOX 吸蔵還元触媒7の排気入口近傍に配置された還元
剤噴射弁91を備えNOX 吸蔵還元触媒7に流入する排
気中に還元剤を噴射することによりNOX 吸蔵還元触媒
7に流入する排気中の酸素濃度を低下させ、触媒7から
吸収したNOX を放出させるとともに、放出されたNO
X を還元浄化する。後述するように、本実施形態では還
元剤として機関1の燃料(軽油)が使用される。還元剤
供給装置9は、図示しない機関燃料系統から供給された
燃料を加圧する燃料ポンプ92を備え、機関1の燃料を
加圧して還元剤噴射弁91から排気通路3内に噴射す
る。
【0016】図1に30で示すのは、機関1の電子制御
ユニット(ECU)である。本実施形態では、ECU3
0はRAM、ROM、CPUを備えた公知の構成のマイ
クロコンピュータとして構成され、機関1の燃料噴射
量、燃料噴射時期等の基本制御を行う他、還元剤供給装
置9を制御して後述するNOX 吸蔵還元触媒7からのN
X の放出及び還元浄化操作(NOX 吸蔵還元触媒の再
生操作)時に噴射弁91から排気通路3に燃料を噴射す
るとともに、噴射終了時には噴射弁91内に残留した燃
料を回収する。
【0017】NOX 吸蔵還元触媒7の再生操作を行うた
め、ECU30の入力ポートには、機関のアクセルペダ
ル近傍に配置されたアクセル開度センサ33から運転者
のアクセルペダル踏込み量(アクセル開度、ACCP)
に応じた電圧信号が、また、機関クランク軸近傍に配置
されたクランク回転角センサ35からクランク軸一定回
転角度毎に回転パルス信号が入力されている。ECU3
0は、クランク回転角センサ35から入力するパルス信
号の時間間隔に基づいて一定時間毎に機関1の回転数N
Eを算出する。
【0018】また、ECU30の出力ポートは、図示し
ない駆動回路を介して還元剤噴射弁91に接続され、噴
射弁91の開弁時間(噴射量)を制御している。本実施
形態のNOX 吸蔵還元触媒7は、アルミナ等の担体上に
例えばカリウムK、ナトリウムNa 、リチウムLi 、セ
シウムCs のようなアルカリ金属、バリウムBa 、カル
シウムCa のようなアルカリ土類、ランタンLa 、セリ
ウムCe、イットリウムYのような希土類から選ばれた
少なくとも一つの成分と、白金Ptのような貴金属とを
担持したものである。NOX 吸蔵還元触媒は流入する排
気ガスの空燃比がリーンのときに、排気中のNOX (N
2 、NO)を硝酸イオンNO3 - の形で吸収し、流入
排気ガスの酸素濃度が低下すると吸収したNOX を放出
するNOX の吸放出作用を行う。
【0019】この吸放出のメカニズムについて、以下に
白金PtおよびバリウムBaを使用した場合を例にとっ
て説明するが他の貴金属、アルカリ金属、アルカリ土
類、希土類を用いても同様なメカニズムとなる。流入排
気中の酸素濃度が増大すると(すなわち排気の空燃比が
リーン空燃比になると)、これら酸素は白金Pt上にO
2 - またはO2-の形で付着し、排気中のNOX は白金P
t上のO2 - またはO2-と反応し、これによりNO2
生成される。また、流入排気中のNO2 及び上記により
生成したNO2 は白金Pt上で更に酸化されつつ触媒中
に吸収されて吸収剤として機能する酸化バリウムBaO
と結合しながら硝酸イオンNO3 - の形で触媒内に拡散
する。このため、リーン雰囲気下では排気中のNOX
NOX 吸蔵還元触媒内に硝酸塩の形で吸収されるように
なる。
【0020】また、流入排気中の酸素濃度が低下すると
(すなわち、排気の空燃比が低下すると)、白金Pt上
でのNO2 生成量が減少するため反応が逆方向に進むよ
うになり、触媒内の硝酸イオンNO3 - はNO2 の形で
NOX 吸蔵還元触媒から放出されるようになる。この場
合、排気中にHC、CO等の成分が存在すると白金Pt
上でこれらの成分によりNO2 が還元される。
【0021】本実施形態では、機関1としてディーゼル
機関が使用されているため機関の排気空燃比はリーンで
あり、通常運転中は排気通路3のNOX 吸蔵還元触媒7
にはリーン空燃比の排気が流入し排気中のNOX がNO
X 吸蔵還元触媒7に吸収される。また、NOX 吸蔵還元
触媒7上流側の排気通路3に還元剤が供給されるとNO
X 吸蔵還元触媒7には還元剤を含んだ排気が流入し、還
元剤の一部はNOX 吸蔵還元触媒7の白金Pt上で酸素
と反応する。これにより、NOX 吸蔵還元触媒7の雰囲
気中の酸素濃度が低下するとともに、還元剤の酸化によ
り未燃HC、CO等の成分が発生する。還元剤の酸化に
よりNOX 吸蔵還元触媒7の雰囲気酸素濃度が低下する
と、上述したメカニズムによりNOX 吸蔵還元触媒7か
らNOXが放出され排気中のHC、CO成分により還元
される。
【0022】上記NOX 吸蔵還元触媒からのNOX の放
出、還元浄化操作(NOX 吸蔵還元触媒の再生操作)に
使用される還元剤としては、排気中でH2 等の還元成分
やHC、CO成分を生成するものが使用され、例えば水
素、一酸化炭素等の気体、プロパン、プロピレン、ブタ
ン等の液体又は気体の炭化水素、ガソリン、軽油、灯油
等の液体燃料等が使用できる。本実施形態では、内燃機
関1としてディーゼル機関が使用されているため、補
給、貯蔵の便を考慮して還元剤として機関1の燃料(軽
油)を使用するようにしている。
【0023】後述するように、本実施形態ではECU3
0は、機関負荷状態(アクセル開度ACCPと回転数N
E)とに基づいてNOX 吸蔵還元触媒7に吸蔵されたN
X量を算出するとともに、算出された吸蔵NOX 量が
所定値に到達する毎に還元剤供給装置9からNOX 吸蔵
還元触媒7上流側の排気通路に還元剤(燃料)を供給し
てNOX 吸蔵還元触媒7の再生操作を行う。これによ
り、NOX 吸蔵還元触媒7が吸収したNOX で飽和し
て、それ以上排気中のNOX を吸収できなくなることが
防止される。
【0024】図2は、本実施形態の還元剤噴射弁91の
概略構造を説明する図である。図2において、噴射弁9
1はノズル91a、制御弁91b及びこれらを接続する
接続配管91cを備えている。ノズル91aはNOX
蔵還元触媒7上流側の排気通路3の管壁を貫通して設置
される。制御弁91bは燃料ポンプ92からノズル91
aに供給される加圧燃料を遮断する遮断弁として機能す
る。また、本実施形態では、接続配管91cからはノズ
ル91aの上流側で後述する連通配管91dが分岐して
おり、さらに連通配管91d上には回収弁として機能す
る電磁遮断弁91eが設けられている。電磁遮断弁91
eはECU30の出力ポートに接続され、ECU30か
らの制御信号に応じて開閉する。連通配管91d、電磁
遮断弁91eは後述するように噴射弁91からの燃料噴
射終了後に接続配管91cに残留した燃料を回収する回
収手段の一部として機能する。
【0025】図3はノズル91aの概略構造を説明する
断面図である。本実施形態では、燃料のNOX 吸蔵還元
触媒7上での反応性を高めるためノズル91aとして噴
射燃料の微粒化向上が可能なスワールノズルが使用され
ている。図3(A) は、スワールノズル91aの軸線に沿
った断面を示す。図3(A) において、911はノズルボ
ディ、913はノズルボディ911に嵌挿、固定された
略円筒状のノズルピースを示している。ノズルピース9
13中心には軸線方向に燃料通路913aが設けられて
いる。この燃料通路913aは接続配管91cを介して
制御弁91bに接続されており、制御弁91b開弁時に
は燃料ポンプ92から接続配管91cを介して加圧燃料
が供給される。
【0026】図3(A) に913bで示すのは、スプリン
グ913cにより、燃料通路913aを閉鎖する方向に
押圧付勢されるチェックボール、913dはチェックボ
ール913bの下側で燃料通路913aに接続するよう
に半径方向に穿設された燃料通路である。図3(B) はノ
ズルピース913の図3(A) のB−B線方向矢視図であ
る。図3(B) に示すように、ノズルピース913は両側
面に平面状の切り欠きが形成されており、ノズルボディ
911の内周とノズルピース913外周との間にこの平
面状の切欠き部により、半径方向燃料通路913dに接
続する燃料通路913eが形成されている。
【0027】また、ノズルピース913下部はその外周
部がノズルボディ911内周と密接するように装着され
ている。ノズルピース913下面には図3(B) に示すよ
うに、スワール生成溝913fが形成されており、燃料
通路913eとノズルボディ911中心の噴射孔915
とを接続する噴射通路を形成している。図3(B) に示す
ように、噴射通路913fはノズルピース913下面外
周から、ノズルピース913中心軸線に対してやや偏心
した位置を指向するように設けられており、噴射通路9
13fから噴射された燃料は噴射孔915の内周接線方
向に入射するようになっている。
【0028】制御弁91bが開弁すると、燃料ポンプ9
2から加圧燃料が配管91cを介してノズルピース91
3の燃料通路913aに流入する。配管91c内の燃料
圧力によりチェックボール913bに作用する力がスプ
リング913cの付勢力を越えるとチェックボール91
3bは下方に移動し、燃料が燃料通路913aから半径
方向燃料通路913dに流入する。これにより、加圧燃
料は半径方向燃料通路913dからノズルピース両側の
平面状切欠により形成される燃料通路913eに流入
し、噴射通路913fから噴射孔915を通って排気通
路3に噴射される。前述したように、ノズルピース91
3の噴射通路913fは、ノズルピース913の噴射孔
915中心軸線に対して偏心した方向を指向しているた
め、噴射通路913fを通る燃料は噴射孔915内周接
線方向の速度を付与される。このため、噴射燃料は噴射
孔915内で旋回流(スワール)を生成しながら噴射孔
915接線方向に噴射されるようになり、排気通路3内
に噴射された燃料は極めて微細な粒子となる。これによ
り、噴射された燃料は排気熱で直ちに蒸発、気化して下
流側のNOX 吸蔵還元触媒7に到達するようになり、N
X 吸蔵還元触媒7上での還元剤としての燃料の反応性
が向上する。
【0029】上記のように、接続配管91cを介してノ
ズル91aに供給される燃料を制御弁91bを開閉して
制御することによりノズル91aからの燃料噴射を制御
する場合には、前述した燃料噴射の「切れ」の問題が生
じる。すなわち、制御弁91bは高熱による作動不良、
破損等が生じることを避けるためにできるだけ排気通路
3から離れた位置に設置することが好ましい。ところ
が、制御弁91bとノズル91aとの距離が長くなると
接続配管91c内容積が増大し制御弁91b閉弁時にノ
ズル91aと制御弁91bとの間の接続配管91c内に
残留する燃料の量が増大する。このため、ノズル91a
からの燃料噴射を終了するために制御弁91bを閉弁し
てもノズル91aからは接続配管91c内に残留した高
圧の燃料が排気通路3に噴射され続けるようになり、噴
射弁91からの燃料の洩出が生じる。この燃料の洩出は
接続配管91c内の圧力が低下すればノズル91aのチ
ェックボール913bの作用により停止するものの、接
続配管91c内に残留した高圧燃料の量が多いほど、す
なわち接続配管91cの容積が大きいほど洩出する燃料
の量が多くなる。従って、作動信頼性を確保するために
制御弁91bを排気通路3から離れた位置に配置すると
噴射終了後に排気通路に洩出する燃料量が大きくなり、
NOX 吸蔵還元触媒7には過剰な量の燃料が供給されて
しまい未反応の燃料がNOX 吸蔵還元触媒7下流側に流
出して排気性状の悪化を生じるようになる。
【0030】特に、本実施形態のように燃料の霧化を良
好にするためにスワールノズル91aを使用した場合に
は他の形式の燃料噴射弁を使用した場合に較べて燃料の
洩出の問題が生じやすくなる。すなわち、通常の燃料噴
射弁では燃料噴射停止時にはニードル等の弁体が噴射孔
を閉塞する構造とされているため、噴射弁上流側に多少
の高圧燃料が残留していた場合でも噴射停止後の燃料洩
出は生じにくくなっている。これに対して、スワールノ
ズルでは図3(A) に示したようにニードル等の弁体を備
えておらず、燃料噴射終了後も噴射孔915は開放され
たままになってしまう。このため、接続配管91c内に
高圧の燃料が残留しているかぎり(接続配管91c内の
圧力がチェックボール913bの開放圧力より高いかぎ
り)噴射孔915から排気通路3に燃料が洩出するよう
になる。
【0031】本実施形態では、この噴射終了後の燃料の
洩出を防止するために、連通配管91dと電磁遮断弁9
1eとを用いて噴射終了時に接続配管91c内の高圧燃
料を配管91c外に排出、回収するようにしている。す
なわち、ECU30はノズル91aからの燃料噴射終了
時に制御弁91bを閉弁すると同時に電磁遮断弁91e
を開弁する操作を行う。本実施形態では、連通配管91
dは燃料ポンプ92吸入側(上流側)の低圧の燃料供給
系統に接続されている。このため本実施形態では、制御
弁91bが閉弁されると接続配管91c内に残留した高
圧燃料は直ちに電磁遮断弁91e、連通配管91dを通
って燃料系統の低圧部に排出、回収され、制御弁91b
閉弁後直ちに接続配管91c内の燃料圧力は低下する。
従って、制御弁91bが閉弁するとチェックボール91
3bの作用にによりノズル91aからの燃料の噴射は直
ちに停止するようになり、燃料の洩出が生じない。
【0032】なお、連通配管91dは燃料ポンプ92で
昇圧される前の燃料系統低圧部であればどの部分(例え
ば燃料タンク)に接続しても良いが、本実施形態では燃
料ポンプ92の入口(吸入)配管に接続するようにして
いる。燃料ポンプ92の入口配管では、燃料ポンプ92
運転中はポンプの吸入により圧力が低下しており、燃料
系統の他の低圧部分よりも圧力が低くなっている。制御
弁91b閉弁直後もポンプ92入口配管ではこの低圧が
維持されているため、この部分に連通配管91dを接続
することにより燃料噴射停止後に接続配管91c内の燃
料圧力を極めて短時間で低下させることが可能となる。
【0033】図4は、上述した制御弁91bと遮断弁9
1eとの操作を説明するNOX 吸蔵還元触媒7の再生操
作のフローチャートである。本操作はECU30により
一定時間間隔で実行されるルーチンにより行われる。図
4において、ステップ401では現在のNOX 吸蔵還元
触媒7のNOX 吸蔵量CNOXが算出される。
【0034】本実施形態では、NOX 吸蔵量CNOXは
機関の運転状態に基づいて算出される。機関から単位時
間(例えば図4の操作の実行間隔)あたりに発生するN
X量は、機関負荷条件(例えばアクセル開度と回転数
と)により定まる。そこで、本実施形態では、予め機関
を負荷条件を変えて運転し、各負荷条件下でのNOX
生量を実測して例えばアクセル開度ACCPと回転数N
Eとを用いた数値テーブルの形でECU30のROMに
格納してある。ステップ401では、クランク回転角セ
ンサ35出力に基づいて算出された機関回転数NEとア
クセル開度センサ33により検出されたアクセル開度A
CCPとから上記数値テーブルを用いて前回操作実行時
から今回操作実行時までに機関から発生したNOX 量を
算出する。そして、この発生量に所定の定数(排気中の
NOX のうちNOX 吸蔵還元触媒7に吸収されるNOX
の割合)を乗じた値をCNOXに加算する。これによ
り、CNOXの値はNOX 吸蔵還元触媒7に吸蔵された
NOX 量に常時対応する値となる。
【0035】次いで、ステップ403では、上記により
算出したNOX 吸蔵還元触媒7のNOX 吸蔵量CNOX
が所定値CNOX0 に到達したか否かが判定される。こ
こで、CNOX0 はNOX 吸蔵還元触媒7の再生操作が
必要となるNOX 吸蔵量であり、本実施形態では例えば
NOX 吸蔵還元触媒7の最大NOX 吸蔵量(飽和量)の
10パーセント程度の量に相当する値に設定される。
【0036】ステップ403でCNOX≧CNOX0
あった場合には、NOX 吸蔵還元触媒7のNOX 吸蔵量
が増大しており、再生操作を行う必要があるため、ステ
ップ405に進み制御弁91bを開弁するとともに電磁
遮断弁91eを閉弁する。これにより、燃料ポンプ92
から接続配管91cに加圧燃料が供給され、配管91c
内の圧力の上昇によりノズル91a内のチェックボール
913b(図3)が押動されてノズル91aの噴射孔9
15からは排気通路3のNOX 吸蔵還元触媒7上流側に
燃料が噴射される。噴射された燃料は速やかに気化して
排気とともにNOX 吸蔵還元触媒7に到達する。これに
より、NOX 吸蔵還元触媒7からはNO X が放出され、
還元浄化される。
【0037】ステップ407、409はノズル91aか
らの燃料噴射終了時期の判定を占めている。すなわち、
ステップ407では再生操作計時カウンタtの値が1増
加される。計時カウンタtは再生操作を実行していない
ときにはステップ413で常時0にリセットされている
ため、ステップ407で算出されるtの値は再生操作開
始時からの経過時間に対応した値となる。
【0038】次いで、ステップ409では計時カウンタ
tの値が予め定めた値t0 に到達したか否か、すなわ
ち、再生操作開始後所定の時間が経過したか否かが判定
される。t0 の値は、NOX 吸蔵還元触媒7に吸蔵され
たCNOXに相当する量のNO X を放出、還元するのに
必要な量の燃料がノズル91aから噴射される時間に対
応した値に設定される。t0 の値は詳細には実際のNO
X 吸蔵還元触媒7を用いた実験により決定される。ステ
ップ409で所定時間t0 が経過していない場合には、
今回の操作実行は終了し、次回操作実行時にステップ4
01からの操作が繰り返される。また、ステップ409
でt≧t0 であった場合、すなわち所定時間のノズル9
1aからの燃料噴射が完了した場合には次にステップ4
11に進み、NOX 吸蔵量CNOXの値が0にリセット
される、これにより、次回ルーチン実行時からはステッ
プ403の次にステップ413が実行され計時カウンタ
tの値は0にリセットされるようになる。
【0039】また、ステップ409でt≧t0 であった
場合には、ステップ411実行後ステップ415で制御
弁91bは閉弁され、同時に遮断弁91eが開弁され
る。これにより、燃料ポンプ92から接続配管91cへ
の高圧燃料の供給は停止され、同時に接続配管91cに
残留した高圧燃料は連通配管91dを通って燃料ポンプ
92の吸入配管に強制的に排出、回収されるため、直ち
に接続配管91c内の燃料圧力が低下し、ノズル91a
からの燃料噴射が停止される。これにより、接続配管9
1c内には高圧の燃料が残留しなくなるためノズル91
aからの燃料の洩出が生じない。
【0040】また、ステップ403でCNOX<CNO
0 であった場合、すなわちNOX吸蔵還元触媒7のN
X 吸蔵量が少なく、再生操作を実行する必要がない場
合には、ステップ413とともにステップ415が実行
され、制御弁91bは閉弁状態に、遮断弁91eは開弁
状態にそれぞれ保持される。なお、本実施形態では制御
弁91bと遮断弁91eとを別個に設けているが、制御
弁91bを電磁駆動の三方弁とすることにより制御弁9
1bに遮断弁91eの機能を持たせることも可能であ
る。
【0041】図5は、制御弁91bとして三方弁を用い
た場合を示す図2と同様な図である。本実施形態では、
連通配管91dは三方弁(制御弁)91bに接続されて
おり、制御弁91bは、ECU30からの制御信号に応
じて接続配管91cを燃料ポンプ92吐出側に接続する
第1の位置と接続配管91cを連通配管91dに接続す
る第2の位置との間で作動可能とされている。
【0042】図6は、制御弁91bとして三方弁を用い
た場合のNOX 吸蔵還元触媒の再生操作を示す図4と同
様なフローチャートである。図6のフローチャートで
は、ステップ605で制御弁91bが接続配管91cと
燃料ポンプ92吐出側とを接続する第1の位置にセット
され、ステップ615では制御弁91bが接続配管91
cを連通配管91dを介して燃料ポンプ92の吸入側に
接続する第2の位置にセットされる。この場合にも、他
の操作は図4のフローチャートに示した操作と同一にな
る。
【0043】なお、上記実施形態はいずれもNOX 吸蔵
還元触媒上流側の排気通路に還元剤を噴射する場合につ
いて例をとって説明しているが、本発明は他の触媒、例
えば還元触媒に還元剤を供給する場合にも適用すること
ができる。また、同様に排気通路に酸化触媒を担持した
パティキュレートフィルタを配置して排気微粒子を捕集
した後にパティキュレートフィルタに燃料を供給して酸
化触媒で燃焼させることによりパティキュレートフィル
タ温度を上昇させて排気微粒子を燃焼させるような場合
にも適用可能であることはいうまでもない。
【0044】
【発明の効果】各請求項に記載の発明によれば、還元剤
噴射終了後のノズルからの燃料洩出を簡易に防止するこ
とができるため、噴射弁の作動信頼性を高く維持しなが
ら同時に排気性状の悪化を効果的に防止可能となるとい
う共通の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を自動車用ディーゼル機関に適用した実
施形態の概略構成を説明する図である。
【図2】図1の還元剤噴射弁の構成を説明する図であ
る。
【図3】スワールノズルの構成を説明する図である。
【図4】NOX 吸蔵還元触媒の再生操作の一実施形態を
説明するフローチャートである。
【図5】還元剤噴射弁の図2とは異なる構成を説明する
図である。
【図6】図5の還元剤噴射弁を用いたNOX 吸蔵還元触
媒の再生操作を説明する図4と同様なフローチャートで
ある。
【符号の説明】
1…ディーゼル機関 3…排気通路 7…NOX 吸蔵還元触媒 9…還元剤供給装置 30…電子制御ユニット(ECU) 91…還元剤噴射弁 91a…ノズル 91b…制御弁 91c…接続配管 91d…連通配管 91e…電磁遮断弁
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 田原 淳 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (56)参考文献 特開 平11−36846(JP,A) 特開 平9−150036(JP,A) 実開 昭48−95012(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F01N 3/08 - 3/36

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内燃機関の排気通路に配置され、流入す
    る排気の空燃比がリーンのときに排気中のNOXを吸収
    し流入する排気の酸素濃度が低下したときに吸収したN
    Xを放出するNOX吸蔵還元触媒と、該NOX吸蔵還元
    触媒の上流側の排気通路に液体還元剤を噴射するノズル
    と、該ノズルに加圧還元剤を供給する還元剤通路と、該
    還元剤通路を開閉して前記ノズルからの還元剤噴射を制
    御する制御弁とを有する還元剤供給装置と、前記ノズル
    からの還元剤噴射終了後に前記還元剤供給装置内に残留
    する還元剤を回収する回収手段と、を備えた内燃機関の
    排気浄化装置において、 前記回収手段は、液体還元剤を昇圧して前記還元剤通路
    に供給する還元剤ポンプの吸入側低圧部分と前記還元剤
    通路とを接続する連通路と、該連通路を開閉する回収弁
    とを備え、前記ノズルからの還元剤噴射終了後に前記回
    収弁を開弁することにより還元剤供給装置内に残留する
    還元剤を回収する内燃機関の排気浄化装置。
  2. 【請求項2】 内燃機関の排気通路に配置され、流入す
    る排気の空燃比がリーンのときに排気中のNO X を吸収
    し流入する排気の酸素濃度が低下したときに吸収したN
    X を放出するNO X 吸蔵還元触媒と、該NO X 吸蔵還元
    触媒の上流側の排気通路に液体還元剤を噴射するノズル
    と、該ノズルに加圧還元剤を供給する還元剤通路と、該
    還元剤通路を開閉して前記ノズルからの還元剤噴射を制
    御する制御弁とを有する還元剤供給装置と、前記ノズル
    からの還元剤噴射終了後に前記還元剤供給装置内に残留
    する還元剤を回収する回収手段と、を備えた内燃機関の
    排気浄化装置において、 前記制御弁は、前記還元剤通路を液体還元剤を昇圧する
    還元剤ポンプの吐出側高圧部分に接続する第1の位置
    と、前記還元剤通路を前記還元剤ポンプの吸入側低圧部
    分に接続する第2の位置との間で動作する三方弁であ
    り、前記回収手段は前記ノズルからの還元剤噴射終了後
    に前記制御弁を第1の位置から第2の位置に動作させる
    ことにより還元剤供給装置内に残留する還元剤を回収す
    る内燃機関の排気浄化装置。
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