JP3525871B2 - 内燃機関の排気浄化装置 - Google Patents

内燃機関の排気浄化装置

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JP3525871B2
JP3525871B2 JP2000226227A JP2000226227A JP3525871B2 JP 3525871 B2 JP3525871 B2 JP 3525871B2 JP 2000226227 A JP2000226227 A JP 2000226227A JP 2000226227 A JP2000226227 A JP 2000226227A JP 3525871 B2 JP3525871 B2 JP 3525871B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は内燃機関の排気浄化
装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、燃焼室から排出された排気ガス中
の微粒子を捕集し、酸化するためのパティキュレートフ
ィルタを機関排気通路内に配置し、排気ガスがパティキ
ュレートフィルタを通過するときに排気ガス中の微粒子
が捕集されるようになっている内燃機関の排気浄化装置
が知られている。この種の内燃機関の排気浄化装置の例
としては、例えば特公平7−106290号公報に記載
されたものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが特開平7−1
06290号公報に記載された内燃機関の排気浄化装置
では、パティキュレートフィルタを通過する排気ガスの
流れが逆転されない。そのため、パティキュレートフィ
ルタの壁に捕集される微粒子をパティキュレートフィル
タの壁の一方の面と他方の面とに分散することができな
い。その結果、ある一定量以上の微粒子がパティキュレ
ートフィルタの壁に捕集されると、微粒子を除去しよう
とする作用がすべての微粒子に十分に伝わらなくなって
しまう。従って、特開平7−106290号公報に記載
された内燃機関の排気浄化装置では、パティキュレート
フィルタに流入する微粒子量がある一定量以上になる
と、そのすべての微粒子がパティキュレートフィルタの
壁の一方の面に捕集されてしまうのに伴い、パティキュ
レートフィルタの有する微粒子除去作用がすべての微粒
子に十分に伝わらなくなってしまい、その結果、微粒子
がパティキュレートフィルタの壁に堆積してしまう。そ
のため、パティキュレートフィルタが目詰まりし、背圧
が上昇してしまう。
【0004】前記問題点に鑑み、本発明は、パティキュ
レートフィルタを通過する排気ガスの流れを逆転させ、
パティキュレートフィルタの壁に捕集された微粒子を酸
化除去する酸化除去作用をすべての微粒子に十分に伝え
ることにより微粒子がパティキュレートフィルタの壁に
堆積してしまうのを阻止すると共に、パティキュレート
フィルタの暖機が完了する前にHCがパティキュレート
フィルタをすり抜けて排出されてしまうのを抑制するこ
とを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明に
よれば、燃焼室から排出された排気ガス中の微粒子を捕
集し、酸化するためのパティキュレートフィルタを機関
排気通路内に配置し、排気ガスが前記パティキュレート
フィルタを通過するときに排気ガス中の微粒子が捕集さ
れるようになっている内燃機関の排気浄化装置におい
て、前記パティキュレートフィルタを通過する排気ガス
の流れを逆転させるための排気ガス逆流手段を設け、排
気ガスが前記パティキュレートフィルタの一方の側と他
方の側とから交互に前記パティキュレートフィルタを通
過しうるようにし、前記パティキュレートフィルタを第
一のパティキュレートフィルタと第二のパティキュレー
トフィルタとに排気ガス流れ方向に分割し、温度が上昇
する前にはHCが吸着し、温度が上昇すると吸着してい
たHCが脱離するHC吸着材を前記第一のパティキュレ
ートフィルタと前記第二のパティキュレートフィルタと
の間に配置した内燃機関の排気浄化装置が提供される。
【0006】請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置
では、パティキュレートフィルタに捕集された微粒子が
酸化されると共に、パティキュレートフィルタを通過す
る排気ガスの流れを逆転させることにより、排気ガスが
パティキュレートフィルタの一方の側と他方の側とから
交互にパティキュレートフィルタを通過せしめられる。
そのため、パティキュレートフィルタ内に流入した微粒
子の大部分が、パティキュレートフィルタの壁の一方の
面において捕集されてしまうのを回避すると共に、パテ
ィキュレートフィルタの壁の方から排気ガス流れの下流
側の微粒子に対し酸化除去作用を及ぼすことができる。
更に請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置では、パ
ティキュレートフィルタが第一のパティキュレートフィ
ルタと第二のパティキュレートフィルタとに排気ガス流
れ方向に分割され、温度が上昇する前にはHCが吸着
し、温度が上昇すると吸着していたHCが脱離するHC
吸着材が第一のパティキュレートフィルタと第二のパテ
ィキュレートフィルタとの間に配置される。そのため、
第一のパティキュレートフィルタ及び第二のパティキュ
レートフィルタの暖機が完了する前に排気ガスが第一の
パティキュレートフィルタの側から通過せしめられて
も、あるいは、排気ガスが第二のパティキュレートフィ
ルタの側から通過せしめられても、排気ガス中に含まれ
るHCがHC吸着材に吸着せしめられる。それゆえ、第
一のパティキュレートフィルタ及び第二のパティキュレ
ートフィルタの暖機が完了する前にHCがパティキュレ
ートフィルタをすり抜けて排出されてしまうのを抑制す
ることができる。
【0007】請求項2に記載の発明によれば、前記第一
のパティキュレートフィルタ及び前記第二のパティキュ
レートフィルタを暖機させるとき、まず排気ガスを前記
第一のパティキュレートフィルタの側から通過せしめ、
次いで前記第一のパティキュレートフィルタの暖機が完
了した後であって前記HC吸着材からHCが脱離する前
に排気ガスの流れを逆転させ、排気ガスを前記第二のパ
ティキュレートフィルタの側から通過せしめるようにし
た請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置が提供され
る。
【0008】請求項2に記載の内燃機関の排気浄化装置
では、第一のパティキュレートフィルタの暖機が完了し
た後であってHC吸着材からHCが脱離する前に排気ガ
スの流れが逆転せしめられ、排気ガスが第二のパティキ
ュレートフィルタの側から通過せしめられる。そのた
め、第一のパティキュレートフィルタの暖機が完了した
後であってHC吸着材からHCが脱離するようになった
以降においても排気ガスが第一のパティキュレートフィ
ルタの側から通過せしめられ続けるのに伴ってHC吸着
材から脱離したHCが暖機完了前の第二のパティキュレ
ートフィルタをすり抜けて排出されてしまうのを抑制す
ることができる。
【0009】請求項3に記載の発明によれば、前記第一
のパティキュレートフィルタ及び前記第二のパティキュ
レートフィルタのそれぞれに一時的に捕集された微粒子
の酸化を促進する微粒子酸化促進成分である活性酸素を
放出する活性酸素放出剤が、前記第一のパティキュレー
トフィルタ及び前記第二のパティキュレートフィルタの
それぞれに担持されている請求項1又は2に記載の内燃
機関の排気浄化装置が提供される。
【0010】請求項3に記載の内燃機関の排気浄化装置
では、第一のパティキュレートフィルタ及び第二のパテ
ィキュレートフィルタのそれぞれに一時的に捕集された
微粒子の酸化を促進する微粒子酸化促進成分である活性
酸素を放出する活性酸素放出剤が、第一のパティキュレ
ートフィルタ及び第二のパティキュレートフィルタのそ
れぞれに担持されている。そのため、微粒子が活性酸素
によって酸化されるのに伴って微粒子の酸化性能が向上
し、微粒子を連続的に酸化させることができやすくな
る。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を用いて本発明の
実施形態について説明する。
【0012】図1は本発明の内燃機関の排気浄化装置を
圧縮着火式内燃機関に適用した第一の実施形態を示して
いる。なお、本発明は火花点火式内燃機関にも適用する
こともできる。図1を参照すると、1は機関本体、2は
シリンダブロック、3はシリンダヘッド、4はピスト
ン、5は燃焼室、6は電気制御式燃料噴射弁、7は吸気
弁、8は吸気ポート、9は排気弁、10は排気ポートを
夫々示す。吸気ポート8は対応する吸気枝管11を介し
てサージタンク12に連結され、サージタンク12は吸
気ダクト13を介して排気ターボチャージャ14のコン
プレッサ15に連結される。吸気ダクト13内にはステ
ップモータ16により駆動されるスロットル弁17が配
置され、更に吸気ダクト13周りには吸気ダクト13内
を流れる吸入空気を冷却するための冷却装置18が配置
される。図1に示される実施形態では機関冷却水が冷却
装置18内に導びかれ、機関冷却水によって吸入空気が
冷却される。一方、排気ポート10は排気マニホルド1
9及び排気管20を介して排気ターボチャージャ14の
排気タービン21に連結され、排気タービン21の出口
は第一のパティキュレートフィルタ22、温度が上昇す
る前にHCが吸着し温度が上昇した後には吸着していた
HCが脱離するHC吸着材80、及び第二のパティキュ
レートフィルタ22’を内蔵したケーシング23に連結
される。
【0013】第一のパティキュレートフィルタ22、H
C吸着材80、及び第二のパティキュレートフィルタ2
2’は排気ガスを順流方向にも逆流方向にも流すことが
できるように構成されている。71は排気ガスが第一の
パティキュレートフィルタ22、HC吸着材80、及び
第二のパティキュレートフィルタ22’を順流方向に通
過するときに第一のパティキュレートフィルタ22の上
流側通路となる第一通路、72は排気ガスが第一のパテ
ィキュレートフィルタ22、HC吸着材80、及び第二
のパティキュレートフィルタ22’を逆流方向に通過す
るときに第二のパティキュレートフィルタ22’の上流
側通路となる第二通路である。73は排気ガスの流れを
順流方向と逆流方向とバイパス状態とで切り換えるため
の排気切換バルブ、74は排気切換バルブ駆動装置であ
る。
【0014】排気マニホルド19とサージタンク12と
は排気ガス再循環(以下、EGRと称す)通路24を介
して互いに連結され、EGR通路24内には電気制御式
EGR制御弁25が配置される。また、EGR通路24
周りにはEGR通路24内を流れるEGRガスを冷却す
るための冷却装置26が配置される。図1に示される実
施形態では機関冷却水が冷却装置26内に導びかれ、機
関冷却水によってEGRガスが冷却される。一方、各燃
料噴射弁6は燃料供給管26を介して燃料リザーバ、い
わゆるコモンレール27に連結される。このコモンレー
ル27内へは電気制御式の吐出量可変な燃料ポンプ28
から燃料が供給され、コモンレール27内に供給された
燃料は各燃料供給管26を介して燃料噴射弁6に供給さ
れる。コモンレール27にはコモンレール27内の燃料
圧を検出するための燃料圧センサ29が取付けられ、燃
料圧センサ29の出力信号に基づいてコモンレール27
内の燃料圧が目標燃料圧となるように燃料ポンプ28の
吐出量が制御される。
【0015】電子制御ユニット30はデジタルコンピュ
ータからなり、双方向性バス31によって互いに接続さ
れたROM(リードオンリメモリ)32、RAM(ラン
ダムアクセスメモリ)33、CPU(マイクロプロセッ
サ)34、入力ポート35及び出力ポート36を具備す
る。燃料圧センサ29の出力信号は対応するAD変換器
37を介して入力ポート35に入力される。また、ケー
シング23には第一のパティキュレートフィルタ22の
温度を検出するための温度センサ39が取付けられ、こ
の温度センサ39の出力信号は対応するAD変換器37
を介して入力ポート35に入力される。更に、ケーシン
グ23には第二のパティキュレートフィルタ22’の温
度を検出するための温度センサ39’が取付けられ、こ
の温度センサ39’の出力信号は対応するAD変換器3
7を介して入力ポート35に入力される。アクセルペダ
ル40にはアクセルペダル40の踏込み量Lに比例した
出力電圧を発生する負荷センサ41が接続され、負荷セ
ンサ41の出力電圧は対応するAD変換器37を介して
入力ポート35に入力される。更に入力ポート35には
クランクシャフトが例えば30°回転する毎に出力パル
スを発生するクランク角センサ42が接続される。一
方、出力ポート36は対応する駆動回路38を介して燃
料噴射弁6、スロットル弁駆動用ステップモータ16、
EGR制御弁25、燃料ポンプ28及び排気切換バルブ
駆動装置74に接続される。
【0016】図2に第一のパティキュレートフィルタ2
2の構造を示す。尚、第二のパティキュレートフィルタ
22’の構造は第一のパティキュレートフィルタ22の
構造と同様である。図2において(A)はパティキュレ
ートフィルタ22の正面図を示しており、(B)はパテ
ィキュレートフィルタ22の側面断面図を示している。
図2(A)及び(B)に示されるようにパティキュレー
トフィルタ22はハニカム構造をなしており、互いに平
行をなして延びる複数個の排気流通路50,51を具備
する。これら排気流通路は下流端が栓52により閉塞さ
れた排気ガス流入通路50と、上流端が栓53により閉
塞された排気ガス流出通路51とにより構成される。な
お、図2(A)においてハッチングを付した部分は栓5
3を示している。従って排気ガス流入通路50及び排気
ガス流出通路51は薄肉の隔壁54を介して交互に配置
される。云い換えると排気ガス流入通路50及び排気ガ
ス流出通路51は各排気ガス流入通路50が4つの排気
ガス流出通路51によって包囲され、各排気ガス流出通
路51が4つの排気ガス流入通路50によって包囲され
るように配置される。パティキュレートフィルタ22は
例えばコージライトのような多孔質材料から形成されて
おり、従って排気ガス流入通路50内に流入した排気ガ
スは図2(B)において矢印で示されるように周囲の隔
壁54内を通って隣接する排気ガス流出通路51内に流
出する。
【0017】本発明による実施形態では各排気ガス流入
通路50及び各排気ガス流出通路51の周壁面、即ち各
隔壁54の両側表面上、栓53の外端面及び栓52,5
3の内端面上には全面に亘って例えばアルミナからなる
担体の層が形成されており、この担体上には、貴金属触
媒、及び微粒子の酸化を促進する微粒子酸化促進成分を
発生する微粒子酸化促進成分発生剤として、周囲に過剰
酸素が存在すると酸素を取込んで酸素を保持しかつ周囲
の酸素濃度が低下すると保持した酸素を活性酸素の形で
放出する酸素吸蔵・活性酸素放出剤が、パティキュレー
トフィルタの隔壁54の表面上に一時的に捕集された微
粒子を酸化するための酸化触媒として担持されている。
【0018】この場合、本発明による実施形態では貴金
属触媒として白金Ptが用いられており、酸素吸蔵・活
性酸素放出剤としてカリウムK、ナトリウムNa、リチ
ウムLi、セシウムCs、ルビジウムRbのようなアル
カリ金属、バリウムBa、カルシウムCa、ストロンチ
ウムSrのようなアルカリ土類金属、ランタンLa、イ
ットリウムYのような希土類、及び遷移金属から選ばれ
た少なくとも一つが用いられている。なお、この場合酸
素吸蔵・活性酸素放出剤としてはカルシウムCaよりも
イオン化傾向の高いアルカリ金属又はアルカリ土類金
属、即ちカリウムK、リチウムLi、セシウムCs、ル
ビジウムRb、バリウムBa、ストロンチウムSrを用
いることが好ましい。
【0019】図3は図1に示した第一のパティキュレー
トフィルタ22、HC吸着材80、及び第二のパティキ
ュレートフィルタ22’の拡大断面図である。図3に示
すように、第一のパティキュレートフィルタ22及び第
二のパティキュレートフィルタ22’は排気ガス流れ方
向に分離して配置されており、HC吸着材80は第一の
パティキュレートフィルタ22と第二のパティキュレー
トフィルタ22’との間に挟まれて配置されている。本
実施形態のHC吸着材80はモノリス触媒として構成さ
れている。
【0020】次にパティキュレートフィルタ22、2
2’による排気ガス中の微粒子除去作用について担体上
に白金Pt及びカリウムKを担持させた場合を例にとっ
て説明するが他の貴金属、アルカリ金属、アルカリ土類
金属、希土類、遷移金属を用いても同様な微粒子除去作
用が行われる。図1に示されるような圧縮着火式内燃機
関では空気過剰のもとで燃焼が行われ、従って排気ガス
は多量の過剰空気を含んでいる。即ち、吸気通路及び燃
焼室5内に供給された空気と燃料との比を排気ガスの空
燃比と称すると図1に示されるような圧縮着火式内燃機
関では排気ガスの空燃比はリーンとなっている。また、
燃焼室5内ではNOが発生するので排気ガス中にはNO
が含まれている。また、燃料中にはイオウSが含まれて
おり、このイオウSは燃焼室5内で酸素と反応してSO
2 となる。従って排気ガス中にはSO2 が含まれてい
る。従って過剰酸素、NO及びSO2 を含んだ排気ガス
がパティキュレートフィルタ22、22’の排気ガス流
入通路50内に流入することになる。
【0021】図4(A)及び(B)は排気ガス流入通路
50の内周面上に形成された担体層の表面の拡大図を模
式的に表わしている。なお、図4(A)及び(B)にお
いて60は白金Ptの粒子を示しており、61はカリウ
ムKを含んでいる酸素吸蔵・活性酸素放出剤を示してい
る。上述したように排気ガス中には多量の過剰酸素が含
まれているので排気ガスがパティキュレートフィルタ2
2、22’の排気ガス流入通路50内に流入すると図4
(A)に示されるようにこれら酸素O2 がO2 - 又はO
2-の形で白金Ptの表面に付着する。一方、排気ガス中
のNOは白金Ptの表面上でO2 - 又はO2-と反応し、
NO2 となる(2NO+O2 →2NO2)。次いで生成
されたNO2 の一部は白金Pt上で酸化されつつ酸素吸
蔵・活性酸素放出剤61内に吸収され、カリウムKと結
合しながら図4(A)に示されるように硝酸イオンNO
3 - の形で酸素吸蔵・活性酸素放出剤61内に拡散し、
硝酸カリウムKNO3 を生成する。
【0022】一方、上述したように排気ガス中にはSO
2 も含まれており、このSO2 もNOと同様なメカニズ
ムによって酸素吸蔵・活性酸素放出剤61内に吸収され
る。即ち、上述したように酸素O2 がO2 - 又はO2-
形で白金Ptの表面に付着しており、排気ガス中のSO
2 は白金Ptの表面でO2 - 又はO2-と反応してSO 3
となる。次いで生成されたSO3 の一部は白金Pt上で
更に酸化されつつ酸素吸蔵・活性酸素放出剤61内に吸
収され、カリウムKと結合しながら硫酸イオンSO4 2-
の形で酸素吸蔵・活性酸素放出剤61内に拡散し、硫酸
カリウムK2 SO4 を生成する。このようにして酸素吸
蔵・活性酸素放出触媒61内には硝酸カリウムKNO3
及び硫酸カリウムK2 SO4 が生成される。
【0023】一方、燃焼室5内においては主にカーボン
Cからなる微粒子が生成され、従って排気ガス中にはこ
れら微粒子が含まれている。排気ガス中に含まれている
これら微粒子は排気ガスがパティキュレートフィルタ2
2、22’の排気ガス流入通路50内を流れているとき
に、或いは排気ガス流入通路50から排気ガス流出通路
51に向かうときに図4(B)において62で示される
ように担体層の表面、例えば酸素吸蔵・活性酸素放出剤
61の表面上に接触し、付着する。
【0024】このように微粒子62が酸素吸蔵・活性酸
素放出剤61の表面上に付着すると微粒子62と酸素吸
蔵・活性酸素放出剤61との接触面では酸素濃度が低下
する。酸素濃度が低下すると酸素濃度の高い酸素吸蔵・
活性酸素放出剤61内との間で濃度差が生じ、斯くして
酸素吸蔵・活性酸素放出剤61内の酸素が微粒子62と
酸素吸蔵・活性酸素放出剤61との接触面に向けて移動
しようとする。その結果、酸素吸蔵・活性酸素放出剤6
1内に形成されている硝酸カリウムKNO3 がカリウム
Kと酸素OとNOとに分解され、酸素Oが微粒子62と
酸素吸蔵・活性酸素放出剤61との接触面に向かい、N
Oが酸素吸蔵・活性酸素放出剤61から外部に放出され
る。外部に放出されたNOは下流側の白金Pt上におい
て酸化され、再び酸素吸蔵・活性酸素放出剤61内に吸
収される。
【0025】一方、このとき酸素吸蔵・活性酸素放出剤
61内に形成されている硫酸カリウムK2 SO4 もカリ
ウムKと酸素OとSO2 とに分解され、酸素Oが微粒子
62と酸素吸蔵・活性酸素放出剤61との接触面に向か
い、SO2 が酸素吸蔵・活性酸素放出剤61から外部に
放出される。外部に放出されたSO2 は下流側の白金P
t上において酸化され、再び酸素吸蔵・活性酸素放出剤
61内に吸収される。ただし、硫酸カリウムK2 SO4
は、安定化しているために硝酸カリウムKNO 3 に比べ
て活性酸素を放出しづらい。
【0026】一方、微粒子62と酸素吸蔵・活性酸素放
出剤61との接触面に向かう酸素Oは硝酸カリウムKN
3 のような化合物から分解された酸素である。化合物
から分解された酸素Oは高いエネルギを有しており、極
めて高い活性を有する。従って微粒子62と酸素吸蔵・
活性酸素放出剤61との接触面に向かう酸素は活性酸素
Oとなっている。これら活性酸素Oが微粒子62に接触
すると微粒子62はただちに輝炎を発することなく酸化
せしめられ、微粒子62は完全に消滅する。従って微粒
子62はパティキュレートフィルタ22、22’上に堆
積することがない。
【0027】従来のようにパティキュレートフィルタ2
2、22’上に積層状に堆積した微粒子が燃焼せしめら
れるときにはパティキュレートフィルタ22、22’が
赤熱し、火炎を伴って燃焼する。このような火炎を伴う
燃焼は高温でないと持続せず、従ってこのような火炎を
伴なう燃焼を持続させるためにはパティキュレートフィ
ルタ22、22’の温度を高温に維持しなければならな
い。
【0028】これに対して本発明では微粒子62は上述
したように輝炎を発することなく酸化せしめられ、この
ときパティキュレートフィルタ22、22’の表面が赤
熱することもない。即ち、云い換えると本発明では従来
に比べてかなり低い温度でもって微粒子62が酸化除去
せしめられている。従って本発明による輝炎を発しない
微粒子62の酸化による微粒子除去作用は火炎を伴う従
来の燃焼による微粒子除去作用と全く異なっている。
【0029】ところで白金Pt及び酸素吸蔵・活性酸素
放出剤61はパティキュレートフィルタ22、22’の
温度が高くなるほど活性化するので単位時間当りに酸素
吸蔵・活性酸素放出剤61が放出しうる活性酸素Oの量
はパティキュレートフィルタ22、22’の温度が高く
なるほど増大する。従ってパティキュレートフィルタ2
2、22’上において単位時間当りに輝炎を発すること
なく酸化除去可能な酸化除去可能微粒子量はパティキュ
レートフィルタ22、22’の温度が高くなるほど増大
する。
【0030】図6の実線は単位時間当りに輝炎を発する
ことなく酸化除去可能な酸化除去可能微粒子量Gを示し
ている。なお、図6において横軸はパティキュレートフ
ィルタ22、22’の温度TFを示している。単位時間
当りに燃焼室5から排出される微粒子の量を排出微粒子
量Mと称するとこの排出微粒子量Mが酸化除去可能微粒
子Gよりも少ないとき、即ち図6の領域Iでは燃焼室5
から排出された全ての微粒子がパティキュレートフィル
タ22、22’に接触するや否や短時間のうちにパティ
キュレートフィルタ22、22’上において輝炎を発す
ることなく酸化除去せしめられる。
【0031】これに対し、排出微粒子量Mが酸化除去可
能微粒子量Gよりも多いとき、即ち図6の領域IIでは全
ての微粒子を酸化するには活性酸素量が不足している。
図5(A)〜(C)はこのような場合の微粒子の酸化の
様子を示している。即ち、全ての微粒子を酸化するには
活性酸素量が不足している場合には図5(A)に示すよ
うに微粒子62が酸素吸蔵・活性酸素放出剤61上に付
着すると微粒子62の一部のみが酸化され、十分に酸化
されなかった微粒子部分が担体層上に残留する。次いで
活性酸素量が不足している状態が継続すると次から次へ
と酸化されなかった微粒子部分が担体層上に残留し、そ
の結果図5(B)に示されるように担体層の表面が残留
微粒子部分63によって覆われるようになる。
【0032】担体層の表面を覆うこの残留微粒子部分6
3は次第に酸化されにくいカーボン質に変質し、斯くし
てこの残留微粒子部分63はそのまま残留しやすくな
る。また、担体層の表面が残留微粒子部分63によって
覆われると白金PtによるNO,SO2 の酸化作用及び
酸素吸蔵・活性酸素放出剤61による活性酸素の放出作
用が抑制される。その結果、図5(C)に示されるよう
に残留微粒子部分63の上に別の微粒子64が次から次
へと堆積する。即ち、微粒子が積層状に堆積することに
なる。このように微粒子が積層状に堆積するとこれら微
粒子は白金Ptや酸素吸蔵・活性酸素放出剤61から距
離を隔てているためにたとえ酸化されやすい微粒子であ
ってももはや活性酸素Oによって酸化されることがな
く、従ってこの微粒子64上に更に別の微粒子が次から
次へと堆積する。即ち、排出微粒子量Mが酸化除去可能
微粒子量Gよりも多い状態が継続するとパティキュレー
トフィルタ22上には微粒子が積層状に堆積し、斯くし
て排気ガス温を高温にするか、或いはパティキュレート
フィルタ22、22’の温度を高温にしない限り、堆積
した微粒子を着火燃焼させることができなくなる。
【0033】このように図6の領域Iでは微粒子はパテ
ィキュレートフィルタ22、22’上において輝炎を発
することなく短時間のうちに酸化せしめられ、図6の領
域IIでは微粒子がパティキュレートフィルタ22、2
2’上に積層状に堆積する。従って微粒子がパティキュ
レートフィルタ22、22’上に積層状に堆積しないよ
うにするためには排出微粒子量Mを常時酸化除去可能微
粒子量Gよりも少なくしておく必要がある。
【0034】図6からわかるように本発明の実施形態で
用いられているパティキュレートフィルタ22、22’
ではパティキュレートフィルタ22、22’の温度TF
がかなり低くても微粒子を酸化させることが可能であ
り、従って図1に示す圧縮着火式内燃機関において排出
微粒子量M及びパティキュレートフィルタ22、22’
の温度TFを排出微粒子量Mが酸化除去可能微粒子量G
よりも常時少なくなるように維持することが可能であ
る。従って本発明による第1の実施形態においては排出
微粒子量M及びパティキュレートフィルタ22、22’
の温度TFを排出微粒子量Mが酸化除去可能微粒子量G
よりも常時少なくなるように維持するようにしている。
排出微粒子量Mが酸化除去可能微粒子量Gよりも常時少
ないとパティキュレートフィルタ22、22’上に微粒
子がほとんど堆積せず、斯くして背圧がほとんど上昇し
ない。従って機関出力は低下しない。
【0035】一方、前述したように一旦微粒子がパティ
キュレートフィルタ22、22’上において積層状に堆
積するとたとえ排出微粒子量Mが酸化除去可能微粒子量
Gよりも少なくなったとしても活性酸素Oにより微粒子
を酸化させることは困難である。しかしながら酸化され
なかった微粒子部分が残留しはじめているときに、即ち
微粒子が一定限度以下しか堆積していないときに排気微
粒子量Mが酸化除去可能微粒子量Gよりも少なくなると
この残留微粒子部分は活性酸素Oによって輝炎を発する
ことなく酸化除去される。従って第2の実施形態では排
出微粒子量Mが酸化除去可能微粒子量Gよりも通常少な
くなり、かつ排出微粒子量Mが一時的に酸化除去可能微
粒子量Gより多くなったとしても図5(B)に示される
ように担体層の表面が残留微粒子部分63によって覆わ
れないように、即ち排出微粒子量Mが酸化除去可能微粒
子量Gより少なくなったときに酸化除去しうる一定限度
以下の量の微粒子しかパティキュレートフィルタ22、
22’上に積層しないように排出微粒子量M及びパティ
キュレートフィルタ22、22’の温度TFを維持する
ようにしている。
【0036】つまり第2の実施形態では、排出微粒子量
Mが酸化除去可能微粒子量Gよりも通常少なくなり、か
つ排出微粒子量Mが一時的に酸化除去可能微粒子量Gよ
り多くなったとしてもその後排出微粒子量Mが酸化除去
可能微粒子量Gより少なくなったときに酸化除去しうる
一定限度以下の量の微粒子しかパティキュレートフィル
タ22、22’上に堆積しないように、排出微粒子量M
およびパティキュレートフィルタ22、22’の温度T
Fを維持すべく内燃機関の運転条件が制御される。
【0037】機関始動直後はパティキュレートフィルタ
22、22’の温度TFは低く、従ってこのときには排
出微粒子量Mの方が酸化除去可能微粒子量Gよりも多く
なる。従って実際の運転を考えると第2の実施形態の方
が現実に合っていると考えられる。一方、第1の実施形
態又は第2の実施形態を実行しうるように排出微粒子量
M及びパティキュレートフィルタ22、22’の温度T
Fを制御していたとしてもパティキュレートフィルタ2
2、22’上に微粒子が積層状に堆積する場合がある。
このような場合には排気ガスの一部又は全体の空燃比を
一時的にリッチにすることによってパティキュレートフ
ィルタ22、22’上に堆積した微粒子を輝炎を発する
ことなく酸化させることができる。
【0038】即ち、排気ガスの空燃比をリッチにする
と、即ち排気ガス中の酸素濃度を低下させると酸素吸蔵
・活性酸素放出剤61から外部に活性酸素Oが一気に放
出され、これら一気に放出された活性酸素Oによって堆
積した微粒子が輝炎を発することなく一気に燃焼除去さ
れる。この場合、パティキュレートフィルタ22、2
2’上において微粒子が積層状に堆積したときに排気ガ
スの空燃比をリッチにしてもよいし、周期的に排気ガス
の空燃比をリッチにしてもよい。排気ガスの空燃比をリ
ッチにする方法としては、例えば機関負荷が比較的低い
ときにEGR率(EGRガス量/(吸入空気量+EGR
ガス量))が65パーセント以上となるようにスロット
ル弁17の開度及びEGR制御弁25の開度を制御し、
このとき燃焼室5内における平均空燃比がリッチになる
ように噴射量を制御する方法を用いることができる。
【0039】図7に機関の運転制御ルーチンの一例を示
す。図7を参照するとまず初めにステップ100におい
て燃焼室5内の平均空燃比をリッチにすべきか否かが判
別される。燃焼室5内の平均空燃比をリッチにする必要
がないときには排出微粒子量Mが酸化除去可能微粒子量
Gよりも少なくなるようにステップ101においてスロ
ットル弁17の開度が制御され、ステップ102におい
てEGR制御弁25の開度が制御され、ステップ103
において燃料噴射量が制御される。
【0040】一方、ステップ100において燃焼室5内
の平均空燃比をリッチにすべきであると判別されたとき
にはEGR率が65パーセント以上になるようにステッ
プ104においてスロットル弁17の開度が制御され、
ステップ105においてEGR制御弁25の開度が制御
され、燃焼室5内の平均空燃比がリッチとなるようにス
テップ106において燃料噴射量が制御される。
【0041】ところで燃料や潤滑油はカルシウムCaを
含んでおり、従って排気ガス中にカルシウムCaが含ま
れている。このカルシウムCaはSO3 が存在すると硫
酸カルシウムCaSO4 を生成する。この硫酸カルシウ
ムCaSO4 は固体であって高温になっても熱分解しな
い。従って硫酸カルシウムCaSO4 が生成されるとこ
の硫酸カルシウムCaSO4 によってパティキュレート
フィルタ22、22’の細孔が閉塞されてしまい、その
結果排気ガスがパティキュレートフィルタ22、22’
内を流れづらくなる。この場合、酸素吸蔵・活性酸素放
出剤61としてカルシウムCaよりもイオン化傾向の高
いアルカリ金属又はアルカリ土類金属、例えばカリウム
Kを用いると酸素吸蔵・活性酸素放出剤61内に拡散す
るSO3はカリウムKと結合して硫酸カリウムK2 SO
4 を形成し、カルシウムCaはSO3 と結合することな
くパティキュレートフィルタ22、22’の隔壁54を
通過して排気ガス流出通路51内に流出する。従ってパ
ティキュレートフィルタ22、22’の細孔が目詰まり
することがなくなる。従って前述したように酸素吸蔵・
活性酸素放出剤61としてはカルシウムCaよりもイオ
ン化傾向の高いアルカリ金属又はアルカリ土類金属、即
ちカリウムK、リチウムLi、セシウムCs、ルビジウ
ムRb、バリウムBa、ストロンチウムSrを用いるこ
とが好ましいことになる。
【0042】図示しないが本実施形態では、酸素吸蔵・
活性酸素放出剤61の他に、NOx吸収剤がパティキュ
レートフィルタ22、22’の隔壁54の表面上に担持
されている。このNOx吸収剤は、リーン空燃比の下で
NOxを吸収し、ストイキ又はリッチ空燃比の下でNO
xを放出する。
【0043】図8は図2(B)に示したパティキュレー
トフィルタ22、22’の隔壁54の拡大断面図であ
る。図8において、66は隔壁54の内部に広がってい
る排気ガス通路、67はパティキュレートフィルタの基
材、261はパティキュレートフィルタの隔壁54の表
面上に担持されている酸素吸蔵・活性酸素放出剤であ
る。上述したように、この酸素吸蔵・活性酸素放出剤2
61はパティキュレートフィルタの隔壁54の表面上に
一時的に捕集された微粒子を酸化する活性酸素を放出す
る機能を有する。161はパティキュレートフィルタの
隔壁54の内部に担持されている酸素吸蔵・活性酸素放
出剤である。この酸素吸蔵・活性酸素放出剤161も、
酸素吸蔵・活性酸素放出剤261と同様な機能を有し、
パティキュレートフィルタの隔壁54の内部に一時的に
捕集された微粒子を酸化する活性酸素を放出することが
できる。図示しないが、酸素吸蔵・活性酸素放出剤26
1と同様に、NOx吸収剤もパティキュレートフィルタ
22、22’の隔壁54の上側表面上と下側表面上とに
担持されている。パティキュレートフィルタ22、2
2’の隔壁54の上側表面上に担持されているNOx吸
収剤は、リーン空燃比の下で図8の上側から流れてくる
排気ガス中に含まれるNOxを吸収し、ストイキ又はリ
ッチ空燃比の下で図8の上側から流れてくる排気ガス中
にNOxを放出する。また、パティキュレートフィルタ
22、22’の隔壁54の下側表面上に担持されている
NOx吸収剤は、リーン空燃比の下で図8の下側から流
れてくる排気ガス中に含まれるNOxを吸収し、ストイ
キ又はリッチ空燃比の下で図8の下側から流れてくる排
気ガス中にNOxを放出する。
【0044】図9は図1に示した第一のパティキュレー
トフィルタ22、HC吸着材80、及び第二のパティキ
ュレートフィルタ22’の拡大図である。詳細には、図
9(A)は第一のパティキュレートフィルタ22、HC
吸着材80、及び第二のパティキュレートフィルタ2
2’の拡大平面図、図9(B)は第一のパティキュレー
トフィルタ22、HC吸着材80、及び第二のパティキ
ュレートフィルタ22’の拡大側面図である。図10は
排気切換バルブの切換位置と排気ガスの流れとの関係を
示した図である。詳細には、図10(A)は排気切換バ
ルブ73が順流位置にあるときの図、図10(B)は排
気切換バルブ73が逆流位置にあるときの図、図10
(C)は排気切換バルブ73がバイパス位置にあるとき
の図である。排気切換バルブ73が順流位置にあると
き、図10(A)に示すように、排気切換バルブ73を
通過してケーシング23内に流入した排気ガスは、まず
第一通路71を通過し、次いで第一のパティキュレート
フィルタ22、HC吸着材80、及び第二のパティキュ
レートフィルタ22’を通過し、最後に第二通路72を
通過し、再び排気切換バルブ73を通過して排気管に戻
される。排気切換バルブ73が逆流位置にあるとき、図
10(B)に示すように、排気切換バルブ73を通過し
てケーシング23内に流入した排気ガスは、まず第二通
路72を通過し、次いで第二のパティキュレートフィル
タ22’、HC吸着材80、及び第一のパティキュレー
トフィルタ22を図10(A)に示した場合とは逆向き
に通過し、最後に第一通路71を通過し、再び排気切換
バルブ73を通過して排気管に戻される。排気切換バル
ブ73がバイパス位置にあるとき、図10(C)に示す
ように、第一通路71内の圧力と第二通路72内の圧力
とが等しくなるために、排気切換バルブ73に到達した
排気ガスはケーシング23内に流入することなくそのま
ま排気切換バルブ73を通過する。排気切換バルブ73
は、例えば減速フューエルカット運転毎に順流位置(図
10(A))から逆流位置(図10(B))へ、あるい
は、逆流位置(図10(B))から順流位置(図10
(A))へ切り換えられる。
【0045】図11は排気切換バルブ73の位置が切り
換えられるのに応じてパティキュレートフィルタ22、
22’の隔壁54の内部の微粒子が移動する様子を示し
た図である。詳細には、図11(A)は排気切換バルブ
73が順流位置(図10(A)参照)にあるときのパテ
ィキュレートフィルタ22、22’の隔壁54の拡大断
面図、図11(B)は排気切換バルブ73が順流位置か
ら逆流位置(図10(B)参照)に切り換えられたとき
のパティキュレートフィルタ22、22’の隔壁54の
拡大断面図である。図11(A)に示すように、排気切
換バルブ73が順流位置に配置され、排気ガスが上側か
ら下側に流れているとき、隔壁内部の排気ガス通路66
内に存在する微粒子162は、排気ガスの流れによって
隔壁内部の酸素吸蔵・活性酸素放出剤161に押しつけ
られ、その上に堆積してしまっている。そのため、酸素
吸蔵・活性酸素放出剤161に直接接触していない微粒
子162は、十分な酸化作用を受けていない。次に図1
1(B)に示すように排気切換バルブ73が順流位置か
ら逆流位置に切り換えられて排気ガスが下側から上側に
流れると、隔壁内部の排気ガス通路66内に存在する微
粒子162は排気ガスの流れによって移動せしめられ
る。その結果、十分に酸化作用を受けていなかった微粒
子162が、酸素吸蔵・活性酸素放出剤161に直接接
触せしめられ、十分な酸化作用を受けるようになる。ま
た、排気切換バルブ73が順流位置に配置されていたと
き(図11(A)参照)にパティキュレートフィルタの
隔壁表面の酸素吸蔵・活性酸素放出剤261上に堆積し
ていた微粒子の一部は、排気切換バルブ73が順流位置
から逆流位置に切り換えられることにより、パティキュ
レートフィルタの隔壁表面の酸素吸蔵・活性酸素放出剤
261上から脱離する(図11(B)参照)。この微粒
子の脱離量は、パティキュレートフィルタ22、22’
の温度が高いほど多くなり、また、排気ガス量が多いほ
ど多くなる。パティキュレートフィルタ22、22’の
温度が高いほど微粒子の脱離量が多くなるのは、パティ
キュレートフィルタ22、22’の温度が高くなるに従
って、微粒子を堆積させているバインダとしてのSOF
の結合力が弱くなるからである。
【0046】本実施形態では、図10(A)に示す排気
切換バルブ73の順流位置から図10(B)に示す逆流
位置への切り換え、及び、図10(B)に示す逆流位置
から図10(A)に示す順流位置への切り換えは、パテ
ィキュレートフィルタ22、22’の隔壁54に捕集さ
れる微粒子をパティキュレートフィルタ22、22’の
隔壁54の上面と下面(図8参照)とに分散させるよう
にして行われる。そのように排気切換バルブ73の切換
を行うことにより、パティキュレートフィルタ22、2
2’の隔壁54に捕集された微粒子が酸化除去されるこ
となく堆積する可能性が低減せしめられる。好適には、
パティキュレートフィルタ22、22’の隔壁54に捕
集される微粒子は、パティキュレートフィルタ22、2
2’の隔壁54の上面と下面とにほぼ同程度に分散され
る。
【0047】以下、上述したストイキ又はリッチ空燃比
を形成するための方法の一例について説明する。図12
は機関低負荷運転時にスロットル弁17の開度およびE
GR率を変化させることにより空燃比A/F(図12の
横軸)を変化させたときの出力トルクの変化、およびス
モーク、HC,CO,NOxの排出量の変化を示す実験
例を表している。図12からわかるようにこの実験例で
は空燃比A/Fが小さくなるほどEGR率が大きくな
り、理論空燃比(≒14.6)以下のときにはEGR率
は65パーセント以上となっている。図12に示される
ようにEGR率を増大することにより空燃比A/Fを小
さくしていくとEGR率が40パーセント付近となり空
燃比A/Fが30程度になったときにスモークの発生量
が増大を開始する。次いで、更にEGR率を高め、空燃
比A/Fを小さくするとスモークの発生量が急激に増大
してピークに達する。次いで更にEGR率を高め、空燃
比A/Fを小さくすると今度はスモークが急激に低下
し、EGR率を65パーセント以上とし、空燃比A/F
が15.0付近になるとスモークがほぼ零となる。即
ち、煤がほとんど発生しなくなる。このとき機関の出力
トルクは若干低下し、またNOxの発生量がかなり低く
なる。一方、このときHC,COの発生量は増大し始め
る。
【0048】図13(A)は空燃比A/Fが21付近で
スモークの発生量が最も多いときの燃焼室5内の燃焼圧
変化を示しており、図13(B)は空燃比A/Fが18
付近でスモークの発生量がほぼ零のときの燃焼室5内の
燃焼圧の変化を示している。図13(A)と図13
(B)とを比較すればわかるようにスモークの発生量が
ほぼ零である図13(B)に示す場合はスモークの発生
量が多い図13(A)に示す場合に比べて燃焼圧が低い
ことがわかる。
【0049】図12および図13に示される実験結果か
ら次のことが言える。即ち、まず第1に空燃比A/Fが
15.0以下でスモークの発生量がほぼ零のときには図
12に示されるようにNOxの発生量がかなり低下す
る。NOxの発生量が低下したということは燃焼室5内
の燃焼温度が低下していることを意味しており、従って
煤がほとんど発生しないときには燃焼室5内の燃焼温度
が低くなっていると言える。同じことが図13からも言
える。即ち、煤がほとんど発生していない図13(B)
に示す状態では燃焼圧が低くなっており、従ってこのと
き燃焼室5内の燃焼温度は低くなっていることになる。
【0050】第2にスモークの発生量、即ち煤の発生量
がほぼ零になると図12に示されるようにHCおよびC
Oの排出量が増大する。このことは炭化水素が煤まで成
長せずに排出されることを意味している。即ち、燃料中
に含まれる図14に示されるような直鎖状炭化水素や芳
香族炭化水素は酸素不足の状態で温度上昇せしめられる
と熱分解して煤の前駆体が形成され、次いで主に炭素原
子が集合した固体からなる煤が生成される。この場合、
実際の煤の生成過程は複雑であり、煤の前駆体がどのよ
うな形態をとるかは明確ではないがいずれにしても図1
4に示されるような炭化水素は煤の前駆体を経て煤まで
成長することになる。従って、上述したように煤の発生
量がほぼ零になると図12に示される如くHCおよびC
Oの排出量が増大するがこのときのHCは煤の前駆体又
はその前の状態の炭化水素である。
【0051】図12および図13に示される実験結果に
基づくこれらの考察をまとめると燃焼室5内の燃焼温度
が低いときには煤の発生量がほぼ零になり、このとき煤
の前駆体又はその前の状態の炭化水素が燃焼室5から排
出されることになる。このことについて更に詳細に実験
研究を重ねた結果、燃焼室5内における燃料およびその
周囲のガス温度が或る温度以下である場合には煤の成長
過程が途中で停止してしまい、即ち煤が全く発生せず、
燃焼室5内における燃料およびその周囲の温度が或る温
度以上になると煤が生成されることが判明したのであ
る。
【0052】ところで煤の前駆体の状態で炭化水素の生
成過程が停止するときの燃料およびその周囲の温度、即
ち上述の或る温度は燃料の種類や空燃比の圧縮比等の種
々の要因によって変化するので何度であるかということ
は言えないがこの或る温度はNOxの発生量と深い関係
を有しており、従ってこの或る温度はNOxの発生量か
ら或る程度規定することができる。即ち、EGR率が増
大するほど燃焼時の燃料およびその周囲のガス温度は低
下し、NOxの発生量が低下する。このときNOxの発
生量が10p.p.m 前後又はそれ以下になったときに煤が
ほとんど発生しなくなる。従って上述の或る温度はNO
xの発生量が10p.p.m 前後又はそれ以下になったとき
の温度にほぼ一致する。
【0053】さて、煤が生成される前の状態で炭化水素
の成長を停止させるには燃焼室5内における燃焼時の燃
料およびその周囲のガス温度を煤が生成される温度より
も低い温度に抑制する必要がある。この場合、燃料およ
びその周囲のガス温度を抑制するには燃料が燃焼した際
の燃料周りのガスの吸熱作用が極めて大きく影響するこ
とが判明している。即ち、燃料周りに空気しか存在しな
いと蒸発した燃料はただちに空気中の酸素と反応して燃
焼する。この場合、燃料から離れている空気の温度はさ
ほど上昇せず、燃料周りの温度のみが局所的に極めて高
くなる。即ち、このときには燃料から離れている空気は
燃料の燃焼熱の吸熱作用をほとんど行わない。この場合
には燃焼温度が局所的に極めて高くなるために、この燃
焼熱を受けた未燃炭化水素は煤を生成することになる。
【0054】一方、多量の不活性ガスと少量の空気の混
合ガス中に燃料が存在する場合には若干状況が異なる。
この場合には蒸発燃料は周囲に拡散して不活性ガス中に
混在する酸素と反応し、燃焼することになる。この場合
には燃焼熱は周りの不活性ガスに吸収されるために燃焼
温度はさほど上昇しなくなる。即ち、燃焼温度を低く抑
えることができることになる。即ち、燃焼温度を抑制す
るには不活性ガスの存在が重要な役割を果しており、不
活性ガスの吸熱作用によって燃焼温度を低く抑えること
ができることになる。
【0055】この場合、燃料およびその周囲のガス温度
を煤が生成される温度よりも低い温度に抑制するにはそ
うするのに十分な熱量を吸収しうるだけの不活性ガス量
が必要となる。従って燃料量が増大すれば必要となる不
活性ガス量はそれに伴なって増大することになる。な
お、この場合、不活性ガスの比熱が大きいほど吸熱作用
が強力となり、従って不活性ガスは比熱の大きなガスが
好ましいことになる。この点、CO2 やEGRガスは比
較的比熱が大きいので不活性ガスとしてEGRガスを用
いることは好ましいと言える。
【0056】図15は不活性ガスとしてEGRガスを用
い、EGRガスの冷却度合を変えたときのEGR率とス
モークとの関係を示している。即ち、図15において曲
線AはEGRガスを強力に冷却してEGRガス温をほぼ
90℃に維持した場合を示しており、曲線Bは小型の冷
却装置でEGRガスを冷却した場合を示しており、曲線
CはEGRガスを強制的に冷却していない場合を示して
いる。図15の曲線Aで示されるようにEGRガスを強
力に冷却した場合にはEGR率が50パーセントよりも
少し低いところで煤の発生量がピークとなり、この場合
にはEGR率をほぼ55パーセント以上にすれば煤がほ
とんど発生しなくなる。一方、図15の曲線Bで示され
るようにEGRガスを少し冷却した場合にはEGR率が
50パーセントよりも少し高いところで煤の発生量がピ
ークとなり、この場合にはEGR率をほぼ65パーセン
ト以上にすれば煤がほとんど発生しなくなる。また、図
15の曲線Cで示されるようにEGRガスを強制的に冷
却していない場合にはEGR率が55パーセントの付近
で煤の発生量がピークとなり、この場合にはEGR率を
ほぼ70パーセント以上にすれば煤がほとんど発生しな
くなる。なお、図15は機関負荷が比較的高いときのス
モークの発生量を示しており、機関負荷が小さくなると
煤の発生量がピークとなるEGR率は若干低下し、煤が
ほとんど発生しなくなるEGR率の下限も若干低下す
る。このように煤がほとんど発生しなくなるEGR率の
下限はEGRガスの冷却度合や機関負荷に応じて変化す
る。
【0057】図16は不活性ガスとしてEGRガスを用
いた場合において燃焼時の燃料およびその周囲のガス温
度を煤が生成される温度よりも低い温度にするために必
要なEGRガスと空気の混合ガス量、およびこの混合ガ
ス量中の空気の割合、およびこの混合ガス中のEGRガ
スの割合を示している。なお、図16において縦軸は燃
焼室5内に吸入される全吸入ガス量を示しており、鎖線
Yは過給が行われないときに燃焼室5内に吸入しうる全
吸入ガス量を示している。また、横軸は要求負荷を示し
ている。図16を参照すると空気の割合、即ち混合ガス
中の空気量は噴射された燃料を完全に燃焼せしめるのに
必要な空気量を示している。即ち、図16に示される場
合では空気量と噴射燃料量との比は理論空燃比となって
いる。一方、図16においてEGRガスの割合、即ち混
合ガス中のEGRガス量は噴射燃料が燃焼せしめられた
ときに燃料およびその周囲のガス温度を煤が形成される
温度よりも低い温度にするのに必要最低限のEGRガス
量を示している。このEGRガス量はEGR率で表すと
ほぼ55パーセント以上であり、図16に示す実施形態
では70パーセント以上である。即ち、燃焼室5内に吸
入された全吸入ガス量を図16において実線Xとし、こ
の全吸入ガス量Xのうちの空気量とEGRガス量との割
合を図16に示すような割合にすると燃料およびその周
囲のガス温度は煤が生成される温度よりも低い温度とな
り、斯くして煤が全く発生しなくなる。また、このとき
のNOx発生量は10p.p.m 前後、又はそれ以下であ
り、従ってNOxの発生量は極めて少量となる。
【0058】燃料噴射量が増大すれば燃料が燃焼した際
の発熱量が増大するので燃料およびその周囲のガス温度
を煤が生成される温度よりも低い温度に維持するために
はEGRガスによる熱の吸収量を増大しなければならな
い。従って図16に示されるようにEGRガス量は噴射
燃料量が増大するにつれて増大せしめなければならな
い。即ち、EGRガス量は要求負荷が高くなるにつれて
増大する必要がある。ところで過給が行われていない場
合には燃焼室5内に吸入される全吸入ガス量Xの上限は
Yであり、従って図16において要求負荷がLo よりも
大きい領域では要求負荷が大きくなるにつれてEGRガ
ス割合を低下させない限り空燃比を理論空燃比に維持す
ることができない。云い換えると過給が行われていない
場合に要求負荷がLo よりも大きい領域において空燃比
を理論空燃比に維持しようとした場合には要求負荷が高
くなるにつれてEGR率が低下し、斯くして要求負荷が
Loよりも大きい領域では燃料およびその周囲のガス温
度を煤が生成される温度よりも低い温度に維持しえなく
なる。
【0059】ところが、図示しないがEGR通路を介し
て過給機の入口側即ち排気ターボチャージャの空気吸込
管内にEGRガスを再循環させると要求負荷がLo より
も大きい領域においてEGR率を55パーセント以上、
例えば70パーセントに維持することができ、斯くして
燃料およびその周囲のガス温度を煤が生成される温度よ
りも低い温度に維持することができる。即ち、空気吸込
管内におけるEGR率が例えば70パーセントになるよ
うにEGRガスを再循環させれば排気ターボチャージャ
のコンプレッサにより昇圧された吸入ガスのEGR率も
70パーセントとなり、斯くしてコンプレッサにより昇
圧しうる限度まで燃料およびその周囲のガス温度を煤が
生成される温度よりも低い温度に維持することができ
る。従って、低温燃焼を生じさせることのできる機関の
運転領域を拡大することができることになる。要求負荷
がLo よりも大きい領域でEGR率を55パーセント以
上にする際にはEGR制御弁が全開せしめられる、スロ
ットル弁が若干閉弁せしめられる。
【0060】前述したように図16は燃料を理論空燃比
のもとで燃焼させる場合を示しているが空気量を図16
に示される空気量よりも少くしても、即ち空燃比をリッ
チにしても煤の発生を阻止しつつNOxの発生量を10
p.p.m 前後又はそれ以下にすることができ、また空気量
を図16に示される空気量よりも多くしても、即ち空燃
比の平均値を17から18のリーンにしても煤の発生を
阻止しつつNOxの発生量を10p.p.m 前後又はそれ以
下にすることができる。即ち、空燃比がリッチにされる
と燃料が過剰となるが燃焼温度が低い温度に抑制されて
いるために過剰な燃料は煤まで成長せず、斯くして煤が
生成されることがない。また、このときNOxも極めて
少量しか発生しない。一方、平均空燃比がリーンのと
き、或いは空燃比が理論空燃比のときでも燃焼温度が高
くなれば少量の煤が生成されるが本発明では燃焼温度が
低い温度に抑制されているので煤は全く生成されない。
更に、NOxも極めて少量しか発生しない。このよう
に、低温燃焼が行われているときには空燃比にかかわら
ずに、即ち空燃比がリッチであろうと、理論空燃比であ
ろうと、或いは平均空燃比がリーンであろうと煤が発生
されず、NOxの発生量が極めて少量となる。従って燃
料消費率の向上を考えるとこのとき平均空燃比をリーン
にすることが好ましいと言える。
【0061】ところで燃焼室内における燃焼時の燃料お
よびその周囲のガス温度を炭化水素の成長が途中で停止
する温度以下に抑制しうるのは燃焼による発熱量が比較
的少ない機関中低負荷運転時に限られる。従って本発明
による実施形態では機関中低負荷運転時には燃焼時の燃
料およびその周囲のガス温度を炭化水素の成長が途中で
停止する温度以下に抑制して第1の燃焼、即ち低温燃焼
を行うようにし、機関高負荷運転時には第2の燃焼、即
ち従来より普通に行われている通常燃焼を行うようにし
ている。なお、ここで第1の燃焼、即ち低温燃焼とはこ
れまでの説明から明らかなように煤の発生量がピークと
なる不活性ガス量よりも燃焼室内の不活性ガス量が多く
煤がほとんど発生しない燃焼のことを言い、第2の燃
焼、即ち従来より普通に行われている通常燃焼とは煤の
発生量がピークとなる不活性ガス量よりも燃焼室内の不
活性ガス量が少ない燃焼のことを言う。
【0062】図17は第1の燃焼、即ち低温燃焼が行わ
れる第1の運転領域I’と、第2の燃焼、即ち従来の燃
焼方法による通常燃焼が行われる第2の運転領域II’と
を示している。なお、図17において縦軸Lはアクセル
ペダル40の踏込み量、即ち要求負荷を示しており、横
軸Nは機関回転数を示している。また、図17において
X(N)は第1の運転領域I’と第2の運転領域II’と
の第1の境界を示しており、Y(N)は第1の運転領域
I’と第2の運転領域II’との第2の境界を示してい
る。第1の運転領域I’から第2の運転領域II’への運
転領域の変化判断は第1の境界X(N)に基づいて行わ
れ、第2の運転領域II’から第1の運転領域I’への運
転領域の変化判断は第2の境界Y(N)に基づいて行わ
れる。即ち、機関の運転状態が第1の運転領域I’にあ
って低温燃焼が行われているときに要求負荷Lが機関回
転数Nの関数である第1の境界X(N)を越えると運転
領域が第2の運転領域II’に移ったと判断され、従来の
燃焼方法による通常燃焼が行われる。次いで要求負荷L
が機関回転数Nの関数である第2の境界Y(N)よりも
低くなると運転領域が第1の運転領域I’に移ったと判
断され、再び低温燃焼が行われる。
【0063】このように第1の境界X(N)と第1の境
界X(N)よりも低負荷側の第2の境界Y(N)との二
つの境界を設けたのは次の二つの理由による。第1の理
由は、第2の運転領域II’の高負荷側では比較的燃焼温
度が高く、このとき要求負荷Lが第1の境界X(N)よ
り低くなったとしてもただちに低温燃焼を行えないから
である。即ち、要求負荷Lがかなり低くなったとき、即
ち第2の境界Y(N)よりも低くなったときでなければ
ただちに低温燃焼が開始されないからである。第2の理
由は第1の運転領域I’と第2の運転領域II’間の運転
領域の変化に対してヒステリシスを設けるためである。
【0064】ところで機関の運転領域が第1の運転領域
I’にあって低温燃焼が行われているときには煤はほと
んど発生せず、その代り未燃炭化水素が煤の前駆体又は
その前の状態の形でもって燃焼室5から排出される。こ
のとき燃焼室5から排出された未燃炭化水素は酸化機能
を有する触媒(例えば白金Pt60及びカリウムKを含
んでいる酸素吸蔵・活性酸素放出剤61)により良好に
酸化せしめられる。この触媒としては酸化触媒、三元触
媒、又はNOx吸収剤を用いることができる。NOx吸
収剤は燃焼室5内における平均空燃比がリーンのときに
NOxを吸収し、燃焼室5内における平均空燃比がリッ
チになるとNOxを放出する機能を有する。このNOx
吸収剤は例えばアルミナを担体とし、この担体上に例え
ばカリウムK、ナトリウムNa、リチウムLi、セシウ
ムCsのようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウ
ムCaのようなアルカリ土類、ランタンLa、イットリ
ウムYのような希土類から選ばれた少くとも一つと、白
金Ptのような貴金属とが担持されている。酸化触媒は
もとより、三元触媒およびNOx吸収剤も酸化機能を有
しており、従って上述した如く三元触媒およびNOx吸
収剤を上述した触媒として用いることができる。
【0065】図18は空燃比センサ(図示せず)の出力
を示している。図18に示されるように空燃比センサの
出力電流Iは空燃比A/Fに応じて変化する。従って空
燃比センサの出力電流Iから空燃比を知ることができ
る。
【0066】次に図19を参照しつつ第1の運転領域
I’および第2の運転領域II’における運転制御につい
て概略的に説明する。図19は要求負荷Lに対するスロ
ットル弁17の開度、EGR制御弁25の開度、EGR
率、空燃比、噴射時期および噴射量を示している。図1
9に示されるように要求負荷Lの低い第1の運転領域
I’ではスロットル弁17の開度は要求負荷Lが高くな
るにつれて全閉近くから2/3開度程度まで徐々に増大
せしめられ、EGR制御弁25の開度は要求負荷Lが高
くなるにつれて全閉近くから全開まで徐々に増大せしめ
られる。また、図19に示される例では第1の運転領域
I’ではEGR率がほぼ70パーセントとされており、
空燃比はわずかばかりリーンなリーン空燃比とされてい
る。
【0067】言い換えると第1の運転領域I’ではEG
R率がほぼ70パーセントとなり、空燃比がわずかばか
りリーンなリーン空燃比となるようにスロットル弁17
の開度およびEGR制御弁25の開度が制御される。ま
た、第1の運転領域I’では圧縮上死点TDC前に燃料
噴射が行われる。この場合、噴射開始時期θSは要求負
荷Lが高くなるにつれて遅くなり、噴射完了時期θEも
噴射開始時期θSが遅くなるにつれて遅くなる。なお、
アイドル運転時にはスロットル弁17は全閉近くまで閉
弁され、このときEGR制御弁25も全閉近くまで閉弁
せしめられる。スロットル弁17を全閉近くまで閉弁す
ると圧縮始めの燃焼室5内の圧力が低くなるために圧縮
圧力が小さくなる。圧縮圧力が小さくなるとピストン4
による圧縮仕事が小さくなるために機関本体1の振動が
小さくなる。即ち、アイドル運転時には機関本体1の振
動を抑制するためにスロットル弁17が全閉近くまで閉
弁せしめられる。
【0068】一方、機関の運転領域が第1の運転領域
I’から第2の運転領域II’に変わるとスロットル弁2
0の開度が2/3開度程度から全開方向へステップ状に
増大せしめられる。このとき図19に示す例ではEGR
率がほぼ70パーセントから40パーセント以下までス
テップ状に減少せしめられ、空燃比がステップ状に大き
くされる。即ち、EGR率が多量のスモークを発生する
EGR率範囲(図15)を飛び越えるので機関の運転領
域が第1の運転領域I’から第2の運転領域II’に変わ
るときに多量のスモークが発生することがない。第2の
運転領域II’では従来から行われている通常燃焼が行わ
れる。この第2の運転領域II’ではスロットル弁17は
一部を除いて全開状態に保持され、EGR制御弁25の
開度は要求負荷Lが高くなると次第に小さくされる。ま
た、この運転領域II’ではEGR率は要求負荷Lが高く
なるほど低くなり、空燃比は要求負荷Lが高くなるほど
小さくなる。ただし、空燃比は要求負荷Lが高くなって
もリーン空燃比とされる。また、第2の運転領域II’で
は噴射開始時期θSは圧縮上死点TDC付近とされる。
【0069】図20(A)は第1の運転領域I’におけ
る目標空燃比A/Fを示している。図20(A)におい
て、A/F=15.5,A/F=16,A/F=17,
A/F=18で示される各曲線は夫々目標空燃比が1
5.5,16,17,18であるときを示しており、各
曲線間の空燃比は比例配分により定められる。図20
(A)に示されるように第1の運転領域I’では空燃比
がリーンとなっており、更に第1の運転領域I’では要
求負荷Lが低くなるほど目標空燃比A/Fがリーンとさ
れる。即ち、要求負荷Lが低くなるほど燃焼による発熱
量が少くなる。従って要求負荷Lが低くなるほどEGR
率を低下させても低温燃焼を行うことができる。EGR
率を低下させると空燃比は大きくなり、従って図20
(A)に示されるように要求負荷Lが低くなるにつれて
目標空燃比A/Fが大きくされる。目標空燃比A/Fが
大きくなるほど燃料消費率は向上し、従ってできる限り
空燃比をリーンにするために本発明による実施形態では
要求負荷Lが低くなるにつれて目標空燃比A/Fが大き
くされる。
【0070】なお、図20(A)に示される目標空燃比
A/Fは図20(B)に示されるように要求負荷Lおよ
び機関回転数Nの関数としてマップの形で予めROM3
2内に記憶されている。また、空燃比を図20(A)に
示す目標空燃比A/Fとするのに必要なスロットル弁1
7の目標開度STが図21(A)に示されるように要求
負荷Lおよび機関回転数Nの関数としてマップの形で予
めROM32内に記憶されており、空燃比を図20
(A)に示す目標空燃比A/Fとするのに必要なEGR
制御弁25の目標開度SEが図21(B)に示されるよ
うに要求負荷Lおよび機関回転数Nの関数としてマップ
の形で予めROM32内に記憶されている。
【0071】図22(A)は第2の燃焼、即ち従来の燃
焼方法による通常燃焼が行われるときの目標空燃比A/
Fを示している。なお、図22(A)においてA/F=
24,A/F=35,A/F=45,A/F=60で示
される各曲線は夫々目標空燃比24,35,45,60
を示している。図22(A)に示される目標空燃比A/
Fは図22(B)に示されるように要求負荷Lおよび機
関回転数Nの関数としてマップの形で予めROM32内
に記憶されている。また、空燃比を図22(A)に示す
目標空燃比A/Fとするのに必要なスロットル弁17の
目標開度STが図23(A)に示されるように要求負荷
Lおよび機関回転数Nの関数としてマップの形で予めR
OM32内に記憶されており、空燃比を図22(A)に
示す目標空燃比A/Fとするのに必要なEGR制御弁2
5の目標開度SEが図23(B)に示されるように要求
負荷Lおよび機関回転数Nの関数としてマップの形で予
めROM32内に記憶されている。
【0072】また、第2の燃焼が行われているときには
燃料噴射量Qは要求負荷Lおよび機関回転数Nに基づい
て算出される。この燃料噴射量Qは図24に示されるよ
うに要求負荷Lおよび機関回転数Nの関数としてマップ
の形で予めROM32内に記憶されている。
【0073】次に図25を参照しつつ本実施形態の運転
制御について説明する。図25を参照すると、まず初め
にステップ1100において機関の運転状態が第1の運
転領域I’であることを示すフラグIがセットされてい
るか否かが判別される。フラグIがセットされていると
き、即ち機関の運転状態が第1の運転領域I’であると
きにはステップ1101に進んで要求負荷Lが第1の境
界X(N)よりも大きくなったか否かが判別される。L
≦X(N)のときにはステップ1103に進んで低温燃
焼が行われる。一方、ステップ1101においてL>X
(N)になったと判別されたときにはステップ1102
に進んでフラグIがリセットされ、次いでステップ11
09に進んで第2の燃焼が行われる。
【0074】ステップ1100において、機関の運転状
態が第1の運転領域I’であることを示すフラグIがセ
ットされていないと判別されたとき、即ち機関の運転状
態が第2の運転領域II’であるときには、ステップ11
08に進んで要求負荷Lが第2の境界Y(N)よりも低
くなったか否かが判別される。L≧Y(N)のときには
ステップ1110に進み、リーン空燃比のもとで第2の
燃焼が行われる。一方、ステップ1108においてL<
Y(N)になったと判別されたときにはステップ110
9に進んでフラグIがセットされ、次いでステップ11
03に進んで低温燃焼が行われる。
【0075】ステップ1103では図21(A)に示す
マップからスロットル弁17の目標開度STが算出さ
れ、スロットル弁17の開度がこの目標開度STとされ
る。次いでステップ1104では図21(B)に示すマ
ップからEGR制御弁25の目標開度SEが算出され、
EGR制御弁25の開度がこの目標開度SEとされる。
次いでステップ1105では質量流量検出器(図示せ
ず)により検出された吸入空気の質量流量(以下、単に
吸入空気量と称す)Gaが取込まれ、次いでステップ1
106では図20(B)に示すマップから目標空燃比A
/Fが算出される。次いでステップ1107では吸入空
気量Gaと目標空燃比A/Fに基づいて空燃比を目標空
燃比A/Fとするのに必要な燃料噴射量Qが算出され
る。
【0076】上述したようにに低温燃焼が行われている
ときには要求負荷L又は機関回転数Nが変化するとスロ
ットル弁17の開度およびEGR制御弁25の開度がた
だちに要求負荷Lおよび機関回転数Nに応じた目標開度
ST,SEに一致せしめられる。従って例えば要求負荷
Lが増大せしめられるとただちに燃焼室5内の空気量が
増大せしめられ、斯くして機関の発生トルクがただちに
増大せしめられる。一方、スロットル弁17の開度又は
EGR制御弁25の開度が変化して吸入空気量が変化す
るとこの吸入空気量Gaの変化が質量流量検出器により
検出され、この検出された吸入空気量Gaに基づいて燃
料噴射量Qが制御される。即ち、吸入空気量Gaが実際
に変化した後に燃料噴射量Qが変化せしめられることに
なる。
【0077】ステップ1110では図24に示されるマ
ップから目標燃料噴射量Qが算出され、燃料噴射量がこ
の目標燃料噴射量Qとされる。次いでステップ1111
では図23(A)に示すマップからスロットル弁17の
目標開度STが算出される。次いでステップ1112で
は図23(B)に示すマップからEGR制御弁25の目
標開度SEが算出され、EGR制御弁25の開度がこの
目標開度SEとされる。次いでステップ1113では質
量流量検出器により検出された吸入空気量Gaが取込ま
れる。次いでステップ1114では燃料噴射量Qと吸入
空気量Gaから実際の空燃比(A/F)R が算出され
る。次いでステップ1115では図22(B)に示すマ
ップから目標空燃比A/Fが算出される。次いでステッ
プ1116では実際の空燃比(A/F)R が目標空燃比
A/Fよりも大きいか否かが判別される。(A/F)R
>A/Fのときにはステップ1117に進んでスロット
ル開度の補正値ΔSTが一定値αだけ減少せしめられ、
次いでステップ1119へ進む。これに対して(A/
F)R ≦A/Fのときにはステップ1118に進んで補
正値ΔSTが一定値αだけ増大せしめられ、次いでステ
ップ1119に進む。ステップ1119ではスロットル
弁17の目標開度STに補正値ΔSTを加算することに
より最終的な目標開度STが算出され、スロットル弁1
7の開度がこの最終的な目標開度STとされる。即ち、
実際の空燃比(A/F)R が目標空燃比A/Fとなるよ
うにスロットル弁17の開度が制御される。
【0078】このように第2の燃焼が行われているとき
には要求負荷L又は機関回転数Nが変化すると燃料噴射
量がただちに要求負荷Lおよび機関回転数Nに応じた目
標燃料噴射量Qに一致せしめられる。例えば要求負荷L
が増大せしめられるとただちに燃料噴射量が増大せしめ
られ、斯くして機関の発生トルクがただちに増大せしめ
られる。一方、燃料噴射量Qが増大せしめられて空燃比
が目標空燃比A/Fからずれると空燃比が目標空燃比A
/Fとなるようにスロットル弁20の開度が制御され
る。即ち、燃料噴射量Qが変化した後に空燃比が変化せ
しめられることになる。
【0079】これまで述べた実施形態では低温燃焼が行
われているときに燃料噴射量Qはオープンループ制御さ
れ、第2の燃焼が行われているときに空燃比がスロット
ル弁20の開度を変化させることによって制御される。
しかしながら低温燃焼が行われているときに燃料噴射量
Qを空燃比センサ27の出力信号に基づいてフィードバ
ック制御することもできるし、また第2の燃焼が行われ
ているときに空燃比をEGR制御弁31の開度を変化さ
せることによって制御することもできる。
【0080】すなわち本実施形態では、ストイキ(わず
かばかりリーンも含む)又はリッチ空燃比を形成するた
めに上述した低温燃焼、つまり、煤の発生量がピークと
なる不活性ガスとしてのEGRガスの量よりも燃焼室5
内に供給されるEGRガスの量が多く煤がほとんど発生
しない燃焼が実行される。他の実施形態では、他の方法
によりストイキ又はリッチ空燃比を形成してもよい。
【0081】図26はパティキュレートフィルタ22、
22’の暖機制御方法を示したフローチャートである。
図26に示すルーチンは、内燃機関の始動時毎に実行さ
れる。図26に示すように、このルーチンが開始される
と、まずステップ200において、温度センサ39によ
り検出された第一のパティキュレートフィルタ22の温
度及び温度センサ39’により検出された第二のパティ
キュレートフィルタ22’の温度のうち、高い方の温度
TFが所定の閾値KTFより高いか否かが判定される。
YESのときには、第一のパティキュレートフィルタ2
2及び第二のパティキュレートフィルタ22’のうちの
排気ガス流れ上流側のパティキュレートフィルタの暖機
が完了したと判断し、ステップ202に進む。一方、N
Oのときには、第一のパティキュレートフィルタ22及
び第二のパティキュレートフィルタ22’のうちの排気
ガス流れ上流側のパティキュレートフィルタの暖機がま
だ完了しておらず、そのパティキュレートフィルタの暖
機を継続する必要があると判断し、ステップ201に進
む。
【0082】ステップ201では、所定時間だけ遅延処
理が施され、ステップ200に戻る。すなわち、ステッ
プ200においてNOと判定されたときには、排気切換
バルブ73の切換が実行されず、排気切換バルブ73が
順流位置(図10(A))に配置されているときには排
気切換バルブ73がそのまま順流位置(図10(A))
に維持され、あるいは、排気切換バルブ73が逆流位置
(図10(B))に配置されているときには排気切換バ
ルブ73がそのまま逆流位置(図10(B))に維持さ
れる。一方、ステップ202では、排気切換バルブ73
の切換が実行される。すなわち、排気切換バルブ73が
順流位置(図10(A))に配置されているときには排
気切換バルブ73が順流位置(図10(A))から逆流
位置(図10(B))に切り換えられ、あるいは、排気
切換バルブ73が逆流位置(図10(B))に配置され
ているときには排気切換バルブ73が逆流位置(図10
(B))から順流位置(図10(A))に切り換えられ
る。
【0083】本実施形態によれば、パティキュレートフ
ィルタ22、22’に一時的に捕集された微粒子が微粒
子酸化促進成分としての活性酸素によって酸化され、排
気切換バルブ73によって排気ガスがパティキュレート
フィルタ22、22’の隔壁54の一方の側と他方の側
とから交互にパティキュレートフィルタ22、22’を
通過せしめられる。そのため、パティキュレートフィル
タ22、22’内に流入した微粒子の大部分が、パティ
キュレートフィルタ22、22’の隔壁54の一方の面
において捕集されてしまうのを回避すると共に、パティ
キュレートフィルタ22、22’の隔壁54の方から排
気ガス流れ下流側の微粒子に対し酸化除去作用を及ぼす
ことができる。
【0084】更に本実施形態によれば、第一のパティキ
ュレートフィルタ22と第二のパティキュレートフィル
タ22’とが排気ガス流れ方向に分離して配置され、温
度が上昇する前にはHCが吸着し、温度が上昇すると吸
着していたHCが脱離するHC吸着材80が第一のパテ
ィキュレートフィルタ22と第二のパティキュレートフ
ィルタ22’との間に配置される。そのため、第一のパ
ティキュレートフィルタ22及び第二のパティキュレー
トフィルタ22’の暖機が完了する前において、排気切
換バルブ73が順流位置(図10(A))に配置されて
排気ガスが第一のパティキュレートフィルタ22の側か
ら通過せしめられても、あるいは、排気切換バルブ73
が逆流位置(図10(B))に配置されて排気ガスが第
二のパティキュレートフィルタ22’の側から通過せし
められても、排気ガス中に含まれるHCがHC吸着材8
0に吸着せしめられる。それゆえ、排気切換バルブ73
が順流位置(図10(A))に配置されているときであ
って第二のパティキュレートフィルタ22’の暖機が完
了する前に、HCが第二のパティキュレートフィルタ2
2’をすり抜けて排出されてしまうのを抑制することが
できる。また、排気切換バルブ73が逆流位置(図10
(B))に配置されているときであって第一のパティキ
ュレートフィルタ22の暖機が完了する前に、HCが第
一のパティキュレートフィルタ22をすり抜けて排出さ
れてしまうのを抑制することができる。
【0085】また本実施形態によれば、内燃機関の始動
時に排気切換バルブ73が順流位置(図10(A))に
配置されている場合、第一のパティキュレートフィルタ
22の暖機が完了した後であってHC吸着材80からH
Cが脱離する程度にHC吸着材80が昇温する前に、排
気切換バルブ73が順流位置(図10(A))から逆流
位置(図10(B))に切り換えられ、排気ガスが第二
のパティキュレートフィルタ22’の側から通過せしめ
られる。そのため、第一のパティキュレートフィルタ2
2の暖機が完了した後であってHC吸着材80からHC
が脱離する程度にHC吸着材80が昇温した以降におい
ても排気切換バルブ73が順流位置(図10(A))の
まま維持されて排気ガスが第一のパティキュレートフィ
ルタ22の側から通過せしめられ続けるのに伴ってHC
吸着材80から脱離したHCが暖機完了前の第二のパテ
ィキュレートフィルタ22’をすり抜けて排出されてし
まうのを抑制することができる。詳細には、第一のパテ
ィキュレートフィルタ22の暖機が完了するまでHC吸
着材80からHCが脱離しないようにするために、本実
施形態のHC吸着材80は、第一のパティキュレートフ
ィルタ22の暖機が完了するまでHC吸着材80からH
Cが脱離する程度にHC吸着材80が昇温しないような
比較的大きな容量を有する。
【0086】同様に本実施形態によれば、内燃機関の始
動時に排気切換バルブ73が逆流位置(図10(B))
に配置されている場合、第二のパティキュレートフィル
タ22’の暖機が完了した後であってHC吸着材80か
らHCが脱離する程度にHC吸着材80が昇温する前
に、排気切換バルブ73が逆流位置(図10(B))か
ら順流位置(図10(A))に切り換えられ、排気ガス
が第一のパティキュレートフィルタ22の側から通過せ
しめられる。そのため、第二のパティキュレートフィル
タ22’の暖機が完了した後であってHC吸着材80か
らHCが脱離する程度にHC吸着材80が昇温した以降
においても排気切換バルブ73が逆流位置(図10
(B))のまま維持されて排気ガスが第二のパティキュ
レートフィルタ22’の側から通過せしめられ続けるの
に伴ってHC吸着材80から脱離したHCが暖機完了前
の第一のパティキュレートフィルタ22をすり抜けて排
出されてしまうのを抑制することができる。詳細には、
第二のパティキュレートフィルタ22’の暖機が完了す
るまでHC吸着材80からHCが脱離しないようにする
ために、本実施形態のHC吸着材80は、第二のパティ
キュレートフィルタ22’の暖機が完了するまでHC吸
着材80からHCが脱離する程度にHC吸着材80が昇
温しないような比較的大きな容量を有する。
【0087】以下、本発明の内燃機関の排気浄化装置の
第三の実施形態について説明する。図27は本実施形態
における図1と同様の全体構成図である。図27におい
て、図1に示した参照番号と同一の参照番号は図1に示
した部品又は部分と同一の部品又は部分を示しており、
122は第一のパティキュレートフィルタ、122’は
第二のパティキュレートフィルタ、123はケーシン
グ、180はHC吸着材である。図28は図3と同様の
第一のパティキュレートフィルタ122、HC吸着材1
80、及び第二のパティキュレートフィルタ122’の
拡大断面図である。図28に示すように、本実施形態の
第一のパティキュレートフィルタ122及び第二のパテ
ィキュレートフィルタ122’は、HC吸着材180が
配置されている部分を貫通して延びている共通の隔壁5
4を有しており、HC吸着材180は隔壁54により画
定される排気流通路50、51内に配置されている。本
実施形態によっても、上述した第一及び第二の実施形態
とほぼ同様の効果を奏することができる。
【0088】以下、本発明の内燃機関の排気浄化装置の
第四の実施形態について説明する。図29は本実施形態
における図1と同様の全体構成図である。図29におい
て、図1に示した参照番号と同一の参照番号は図1に示
した部品又は部分と同一の部品又は部分を示しており、
222は第一のパティキュレートフィルタ、222’は
第二のパティキュレートフィルタ、223はケーシン
グ、280はHC吸着材である。図29に示すように、
本実施形態のHC吸着材280は第一のパティキュレー
トフィルタ222及び第二のパティキュレートフィルタ
222’から間隔を隔てて配置されている。本実施形態
によっても、上述した第一及び第二の実施形態とほぼ同
様の効果を奏することができる。
【0089】
【発明の効果】請求項1に記載の発明によれば、パティ
キュレートフィルタ内に流入した微粒子の大部分が、パ
ティキュレートフィルタの壁の一方の面において捕集さ
れてしまうのを回避すると共に、パティキュレートフィ
ルタの壁の方から排気ガス流れの下流側の微粒子に対し
酸化除去作用を及ぼすことができる。更に第一のパティ
キュレートフィルタ及び第二のパティキュレートフィル
タの暖機が完了する前に排気ガスが第一のパティキュレ
ートフィルタの側から通過せしめられても、あるいは、
排気ガスが第二のパティキュレートフィルタの側から通
過せしめられても、排気ガス中に含まれるHCがHC吸
着材に吸着せしめられる。それゆえ、第一のパティキュ
レートフィルタ及び第二のパティキュレートフィルタの
暖機が完了する前にHCがパティキュレートフィルタを
すり抜けて排出されてしまうのを抑制することができ
る。
【0090】請求項2に記載の発明によれば、第一のパ
ティキュレートフィルタの暖機が完了した後であってH
C吸着材からHCが脱離するようになった以降において
も排気ガスが第一のパティキュレートフィルタの側から
通過せしめられ続けるのに伴ってHC吸着材から脱離し
たHCが暖機完了前の第二のパティキュレートフィルタ
をすり抜けて排出されてしまうのを抑制することができ
る。
【0091】請求項3に記載の発明によれば、微粒子が
活性酸素によって酸化されるのに伴って微粒子の酸化性
能が向上し、微粒子を連続的に酸化させることができや
すくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の内燃機関の排気浄化装置を圧縮着火式
内燃機関に適用した第一の実施形態を示した図である。
【図2】パティキュレートフィルタ22の構造を示した
図である。
【図3】図1に示した第一のパティキュレートフィルタ
22、HC吸着材80、及び第二のパティキュレートフ
ィルタ22’の拡大断面図である。
【図4】排気ガス流入通路50の内周面上に形成された
担体層の表面の拡大図である。
【図5】微粒子の酸化の様子を示した図である。
【図6】単位時間当りに輝炎を発することなく酸化除去
可能な酸化除去可能微粒子量Gを示した図である。
【図7】機関の運転制御ルーチンの一例を示した図であ
る。
【図8】図2(B)に示したパティキュレートフィルタ
の隔壁54の拡大断面図である。
【図9】図1に示したパティキュレートフィルタ22の
拡大図である。
【図10】排気切換バルブの切換位置と排気ガスの流れ
との関係を示した図である。
【図11】排気切換バルブ73の位置が切り換えられる
のに応じてパティキュレートフィルタの隔壁54の内部
の微粒子が移動する様子を示した図である。
【図12】スモークおよびNOxの発生量等を示す図で
ある。
【図13】燃焼圧を示す図である。
【図14】燃料分子を示す図である。
【図15】スモークの発生量とEGR率との関係を示す
図である。
【図16】噴射燃料量と混合ガス量との関係を示す図で
ある。
【図17】第1の運転領域I’および第2の運転領域I
I’を示す図である。
【図18】空燃比センサの出力を示す図である。
【図19】スロットル弁の開度等を示す図である。
【図20】第1の運転領域I’における空燃比等を示す
図である。
【図21】スロットル弁等の目標開度のマップを示す図
である。
【図22】第2の燃焼における空燃比等を示す図であ
る。
【図23】スロットル弁等の目標開度のマップを示す図
である。
【図24】燃料噴射量のマップを示す図である。
【図25】機関の運転を制御するためのフローチャート
である。
【図26】パティキュレートフィルタ22、22’の暖
機制御方法を示したフローチャートである。
【図27】第三の実施形態における図1と同様の全体構
成図である。
【図28】図3と同様の第一のパティキュレートフィル
タ122、HC吸着材180、及び第二のパティキュレ
ートフィルタ122’の拡大断面図である。
【図29】第四の実施形態における図1と同様の全体構
成図である。
【符号の説明】
5…燃焼室 6…燃料噴射弁 20…排気管 22…第一のパティキュレートフィルタ 22’…第二のパティキュレートフィルタ 39,39’…温度センサ 61…酸素吸蔵・活性酸素放出剤 73…排気切換バルブ 80…HC吸着材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 浅沼 孝充 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (72)発明者 中谷 好一郎 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (72)発明者 木村 光壱 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (56)参考文献 特開 平7−189655(JP,A) 特開2000−18026(JP,A) 特開 平11−36851(JP,A) 特開 平11−324662(JP,A) 特開 平6−185342(JP,A) 特開2000−145439(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F01N 3/02 F01N 3/08 - 3/24

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 燃焼室から排出された排気ガス中の微粒
    子を捕集し、酸化するためのパティキュレートフィルタ
    を機関排気通路内に配置し、排気ガスが前記パティキュ
    レートフィルタを通過するときに排気ガス中の微粒子が
    捕集されるようになっている内燃機関の排気浄化装置に
    おいて、前記パティキュレートフィルタを通過する排気
    ガスの流れを逆転させるための排気ガス逆流手段を設
    け、排気ガスが前記パティキュレートフィルタの一方の
    側と他方の側とから交互に前記パティキュレートフィル
    タを通過しうるようにし、前記パティキュレートフィル
    タを第一のパティキュレートフィルタと第二のパティキ
    ュレートフィルタとに排気ガス流れ方向に分割し、温度
    が上昇する前にはHCが吸着し、温度が上昇すると吸着
    していたHCが脱離するHC吸着材を前記第一のパティ
    キュレートフィルタと前記第二のパティキュレートフィ
    ルタとの間に配置した内燃機関の排気浄化装置。
  2. 【請求項2】 前記第一のパティキュレートフィルタ及
    び前記第二のパティキュレートフィルタを暖機させると
    き、まず排気ガスを前記第一のパティキュレートフィル
    タの側から通過せしめ、次いで前記第一のパティキュレ
    ートフィルタの暖機が完了した後であって前記HC吸着
    材からHCが脱離する前に排気ガスの流れを逆転させ、
    排気ガスを前記第二のパティキュレートフィルタの側か
    ら通過せしめるようにした請求項1に記載の内燃機関の
    排気浄化装置。
  3. 【請求項3】 前記第一のパティキュレートフィルタ及
    び前記第二のパティキュレートフィルタのそれぞれに一
    時的に捕集された微粒子の酸化を促進する微粒子酸化促
    進成分である活性酸素を放出する活性酸素放出剤が、前
    記第一のパティキュレートフィルタ及び前記第二のパテ
    ィキュレートフィルタのそれぞれに担持されている請求
    項1又は2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
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