JP3516253B2 - 狭小地用の建築工法 - Google Patents

狭小地用の建築工法

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JP3516253B2
JP3516253B2 JP30177797A JP30177797A JP3516253B2 JP 3516253 B2 JP3516253 B2 JP 3516253B2 JP 30177797 A JP30177797 A JP 30177797A JP 30177797 A JP30177797 A JP 30177797A JP 3516253 B2 JP3516253 B2 JP 3516253B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、隣地境界線で挟ま
れた狭小地の施工現場において隣家に接するようにして
建物を建てる場合に採用される狭小地用の建築工法の改
良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】狭小地で建物を施工する場合には、建物
の外壁体は隣家に近接するために外壁体の設計位置では
足場を組んで外壁体を組み立てることができないという
施工上の制約がある。そこで、隣地境界線側の基礎より
も後退した場所で、組み立てスペースを確保して外壁体
を組み立て,その後水平移動させる水平移動工法が採用
されることとなるが、かかる工法では、完成した外壁体
をバール等の工具を用いて水平移動させるようにしてい
た。したがって、外壁体を水平移動させるのに多くの労
力を必要とし、また、外壁体を工具のみで立設状態を保
持しながら移動させるので、移動時の外壁体が不安定な
状態となり、外壁体の転倒事故が多発し、更には、移動
の際に外壁体を損傷させるという問題もあった。
【0003】そこで、基礎の上で横に寝かした状態で外
壁体を完成させた後、外壁体の軸組みの脚部を中心に外
壁体を起こす建て起こし工法が採用されるに至った。建
て起こし工法を採用すれば、外部足場が不要となり、外
壁体を不安定な状態で移動させずに済む。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、建て起こし工
法は、各階毎に外壁体を建て起こさなければならないの
で、通し柱を有する二階建てや三階建ての木造建物の場
合には採用できないという問題があった。また、建て起
こし工法は、各階に雨仕舞が完結する乾式工法の採用が
前提となるので、モルタル壁や、水平見切りのないサイ
ディングによる大壁の建物には採用できないという問題
があった。本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされた
ものであって、本発明の目的とするところは、外壁体を
安定した状態で水平移動させることができて作業の安全
が図れ、移動操作の管理が容易で、省力化を図ることが
でき、外壁体を損傷させることもない狭小地用の建築工
法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1の発明の狭小地用の建築工法は、隣地境界
線側に位置する基礎よりも内側に後退した位置で建物の
外壁体を立設した状態で組み立て、外壁体よりも後方に
反力体を配設し、外壁体と反力体との間に伸長可能な仮
設用の控え梁を介在し、控え梁を伸長させることにより
外壁体を立設した状態で隣地境界線側の基礎の上まで移
動させて隣地境界線側の基礎に固定することを特徴とす
る。
【0006】請求項2の発明の狭小地用の建築工法は、
狭小地を挟む左右の隣地境界線側に位置する基礎よりも
内側に後退した位置で建物の左右両側の外壁体をそれぞ
れ立設した状態で組み立て、左右両側の外壁体の間に伸
長可能な控え梁を介在し、一方の外壁体を反力体として
控え梁を伸長させることにより、他方の外壁体を立設し
た状態で隣地境界線側の基礎の上まで移動させて隣地境
界線側の基礎に固定し、次に、前記他方の外壁体を反力
体として控え梁を伸長させることにより、前記一方の外
壁体を隣地境界線側の基礎の上まで移動させて隣地境界
線側の基礎に固定することを特徴とする。
【0007】請求項3の発明の狭小地用の建築工法は、
請求項2に記載の狭小地用の建築工法において、外壁体
を反力体として使用する時には、外壁体を控え柱にて支
持することを特徴とする。
【0008】請求項4の発明の狭小地用の建築工法は、
請求項1乃至請求項3に記載の狭小地用の建築工法にお
いて、隣地境界線側に外壁体組立て用の外部足場を設置
することを特徴とする。
【0009】請求項5の発明の狭小地用の建築工法は、
請求項1乃至請求項4に記載の狭小地用の建築工法にお
いて、隣地境界線側の基礎を除く狭小地の基礎に土台を
固定し、この土台と連続する仮設土台を隣地境界線側の
基礎に設置し、土台上で組み立てた外壁体を仮設土台の
上まで移動させた後、仮設土台を取り除いて外壁体を隣
地境界側の基礎に固定することを特徴とする。
【0010】請求項6の発明の狭小地用の建築工法は、
請求項5に記載の狭小地用の建築工法において、外壁体
を移動させるためのレールを土台に取付けることを特徴
とする。
【0011】請求項7の発明の狭小地用の建築工法は、
請求項6に記載の狭小地用の建築工法において、仮設土
台の上に補助レールを取付け、この補助レールを土台上
のレールと連続させることを特徴とする。
【0012】請求項8の発明の狭小地用の建築工法は、
請求項5乃至請求項7に記載の狭小地用の建築工法にお
いて、土台に台車を載せ、この台車上で外壁体を組立て
ることを特徴とする。
【0013】請求項9の発明の狭小地用の建築工法は、
請求項1乃至請求項8に記載の狭小地用の建築工法にお
いて、外壁体は二階建て又は三階建ての木造建物の外壁
体であることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に従って説明する。図1乃至図11は、狭小地用の建築
工法を示している。本工法を概説すると、まず、図1乃
至図4に示すように、狭小地Aに配設される基礎1のう
ち、狭小地Aを挟む左右の隣地境界線B側にそれぞれ位
置する基礎1よりも内側に後退した基礎1上で、建物の
左右両側に相対向して外壁体2を立設した状態で組立て
た後、左右両側の外壁体2の間に伸長可能な仮設用の控
え梁3を介在させる。
【0015】次に、図5、図6及び図8に示すように、
一方の外壁体2を反力体として控え梁3を伸長させて他
方の外壁体2を立設した状態で隣地境界線B側の基礎1
の上まで移動させた後、図6及び図9に示すように、他
方の外壁体2を隣地境界線側の基礎1に固定する。次
に、図6に示すように、他方の外壁体2を反力体として
控え梁3を伸長させることにより、一方の外壁体2を隣
地境界線側の基礎1の上まで移動させる。次に、図7及
び図11に示すように、一方の外壁体2を隣地境界線側
の基礎1に固定した後、外壁体2,2間に二階梁及び三
階梁(以下、階梁4ともいう)を架設する。
【0016】図12は、控え梁3を外壁体2の通し柱2
Aに、梁接続金具5、控え梁接続金具6及びアダプター
7を用いて接続した状態を示している。
【0017】図13及び図14に示すように、控え梁3
は、外管から成る控え梁本体31の両端部に伸縮部32
を設けて構成され、伸縮部32は、内管33、操作杆3
4a付きの調整ねじ34及び係止ピン35を備えてい
る。図13に示すように、控え梁本体31の端部外周に
ねじ部36が形成され、控え梁本体31の端部には管軸
方向に長い一対の長孔37が穿設されている。また、控
え梁本体31のねじ部36には一対の調整ねじ34が螺
合されている。図13に示すように、内管33には複数
対のピン孔38が管軸方向に列設されている。
【0018】そして、図14のように、控え梁本体31
の端部に内管33を嵌め込み、控え梁本体31の端部の
一対の長孔37及び内管33のいずれか一対のピン孔3
8に係止ピン35を挿着して係止ピン35の両端部を控
え梁本体31の長孔37から外部に突出し、この係止ピ
ン35の突出部を一対の調整ねじ34にて挟持すること
により伸縮部32が構成されている。一対の調整ねじ3
4は正転させると、係止ピン35が押されて内管33が
控え梁本体31の端部から突出し、一対の調整ねじ34
を逆転させると、係止ピン35が逆方向に押されて内管
33が引退する。このように、一対の調整ねじ34で係
止ピン35を挟んで伸縮部32を伸縮させるので、内管
33が控え梁本体31の端部から予定量以上に突出して
外壁体2が予定の移動量をオーバーするのを防止するこ
とができる。内管33が伸び切れば、係止ピン35を内
管33の隣のピン孔38に差し替えることにより内管3
3を更に伸ばすことができる。また、内管33の先端に
は、アダプター7を固定するための止具孔39aが穿設
された固定板39が取着されている。
【0019】また、控え梁本体31の中間部を継ぎ足す
構造にしても良く、また、控え梁3として仮設用パイプ
サポートを利用すれば、施工費が安価になる。以上のよ
うに構成される控え梁3は、外壁体2を組立てるための
仮設材としても使用されるものである。なお、係止ピン
35は控え梁3に紐35aによって繋がれている。
【0020】図11及び図12に示すように、梁接続金
具5は、階梁4を通し柱2Aに接続するものであって、
一対の梁接続板部51と取付け部52から構成されてお
り、梁接続金具5の取付け部52は止具にて通し柱2A
に固定される。各梁接続板部51の上縁には、止具嵌合
部51aを底部に有するV字状の切り欠き51bが形成
され、切り欠き51bの下方には3個の止具孔51cが
縦方向に等間隔で列設されており、切り欠き51bの止
具嵌合部51aと最上段の止具孔51cの間隔は、止具
孔51c間の間隔と同じに設定されている。この梁接続
金具5は、階梁4を通し柱2Aに接続する前は、控え梁
3を通し柱2Aに接続するために使用される。
【0021】図12及び図15に示すように、控え梁接
続金具6は、控え梁3を通し柱2Aの脚部に接続するも
のであって、一対の接続板部61と平断面U字状の取付
け部62を連結し、一対の接続板部61の底部にジャッ
キ受け板63を固定して構成されている。各接続板部6
1の上縁には、止具嵌合部61aを底部に有するV字状
の受け溝61bが形成され、受け溝61bの下方には3
個の止具孔61cが、梁接続金具5の止具孔51cと同
間隔で縦方向に列設されており、受け溝61bの止具嵌
合部61aと最上段の止具孔61cの間隔は、止具孔6
1c同士の間隔と同じに設定されている。なお、最下段
の止具孔61cは予備に設けられている。また、取付け
部62には止具孔62aが穿設されている。
【0022】図12及び図16に示すように、アダプタ
ー7は、控え梁3の両端に取付けらて控え梁3を梁接続
金具5及び控え梁接続金具6に連結するものであって、
一対のジョイント板部71を取付け板72を固定して構
成されている。各ジョイント板部71には3個の止具孔
71a,71b,71cが、梁接続金具5の止具孔51
c及び控え梁接続金具6の止具孔61cと同間隔で縦方
向に列設されている。中央の止具孔71bの孔径は上下
の止具孔71a,71cの孔径よりも大きくなるように
設定されている。その理由は、後述するように、外壁体
2を隣地境界側外周基礎1に固定するためにジャッキJ
で昇降させるときに、外壁体2の昇降が控え梁3によっ
て邪魔されないようにするために、外壁体2の昇降に従
って控え梁3を上下に揺動させるためである。例えば、
上下の止具孔71a,71cの孔径が13mmの場合に
は、中央の止具孔71bの孔径16mmに設定する。図1
3及び図14は、アダプター7を控え梁3の固定板39
に止具aにて固定した状態を示している。
【0023】図8及び図12中の符号8は、外壁体2を
移動させるための台車であって、上面が外壁体2の土台
2Bの載置部81となった台車本体82にローラ83を
取付け、台車本体82の後部から仮止片84を立設して
構成されている。
【0024】図8及び図12中の符号9は、隣地境界線
側の位置する基礎1よりも内側に後退した場所で組み立
てられた外壁体2を隣地境界線側の位置する基礎1まで
移動させるためのレールであって、レール本体91の両
側から側板部92を垂設して構成されており、側板部9
2の外側面には外壁体2の移動距離を示す目盛93が付
けられている。
【0025】次に、隣地境界線Bで挟まれた狭小地Aの
施工現場において隣家Cに接するように三階建ての木造
建物を施工する場合の施工方法を、図1乃至図11に基
づいて詳述する。まず、狭小地Aに建てられる建物の基
礎1の工事を行う。図1に示すように、左右の隣地境界
線Bに沿った狭小地Aの奥行き方向には隣地境界側外周
基礎1aを配設し、狭小地Aの間口部には間口側外周基
礎1bを配設し、狭小地Aの奥部には奥部側外周基礎1
cを配設し、左右の隣地境界側外周基礎1の間には間仕
切り基礎1dを配設する。図12に示すように、基礎1
に土台固定用のアンカーボルト10を埋設する。
【0026】次に、図2に示すように、間口側外周基礎
1b、奥部側外周基礎1c及び間仕切り基礎1dに土台
11を固定し、この土台11の両端部にレール9を止具
aにて固定することにより、レール9を外壁体2の組立
て場所から外周基礎1の手前まで延ばす。また、図12
に示すように、レール9は、基礎1のアンカーボルト1
0を避けるためにボルト回避孔12aを有する重ね板1
2を介して土台11に固定する。
【0027】また、図2及び図8に示すように、補助レ
ール13の付いた仮設土台14を隣地境界側外周基礎1
aに載置することにより、仮設土台14を土台11と連
続させると共に、補助レール13をレール9に同レベル
で連続させる。なお、仮設土台14は、土台11の高さ
及び幅と同じに設定され、補助レール13は、レール9
と重ね板12を合わせた厚み及びレール9の幅と同じに
設定されている。
【0028】次に、図3及び図4に示すように、左右の
隣地境界側外周基礎1aよりも内側に約800mm後退し
たレール9上に台車8を配設し、この台車8の上で左右
両側に位置する外壁体2,2の組み立て作業を行う。図
3及び図4に示すように、外壁体2,2の組立て場所の
外側に外部足場Dを組み、この外部足場Dを利用して外
壁体2,2を組み立てる。外壁体2を組み立てる場合に
は、図2に示すように、外壁体2,2を構成する土台2
Bを台車8に載せて台車8の仮止め片84に止具aにて
仮止めした後、図3に示すように、土台2Bの上に通し
柱2Aや胴差し2C等を組んで軸組みを行い、図8及び
図9に示すように、この軸組みに下地合板、防水シー
ト、サッシ、外壁板材2D、土台水切り2E等を取り付
けて外壁体2を完成させる。台車8上での外壁体2,2
の組み立て作業時には、台車8をレール9に車止めして
作業の安全を図る。
【0029】外壁体2,2の軸組み作業の際には、図3
及び図4に示すように、左右両側に位置する外壁体2,
2の通し柱2A間に控え梁3を予め架設して外壁体2を
支持すると共に、外壁体2を控え柱15にて支持する。
そのために、図12に示すように、予め控え梁接続金具
6の取付け部62を通し柱2Aの脚部に止具aにて固定
し、梁接続金具5の取付け部52を二階梁及び三階梁の
レベルで通し柱2Aに止具にて固定しておく。そして、
控え梁接続金具6及び梁接続金具5を利用して控え梁3
を通し柱2A間に架設する。
【0030】すなわち、図12に示すように、アダプタ
ー7の一対のジョイント板部71の上端の止具孔71a
に止具aを予め挿着した後、この止具aを通し柱2Aの
梁接続金具5の梁接続板部51の切り欠き51bの止具
嵌合部51aに落とし込んで控え梁3を梁接続金具5に
仮止めし、次に、アダプター7のジョイント板部71の
残りの止具孔71b,71c及び梁接続金具5の最上段
及び中段の止具孔51c,51cに止具aを挿通するこ
とにより、控え梁3を階梁4のレベルで通し柱2A間に
架設する。
【0031】また、同図に示すように、アダプター7の
一対のジョイント板部71の最上段の止具孔71aに止
具aを予め挿着した後、この止具aを通し柱2Aの控え
梁接続金具6の接続板部61の受け溝61bの止具嵌合
部61aに落とし込んで控え梁3を控え梁接続金具6に
仮止めし、次に、アダプター7のジョイント板部71の
残りの止具孔71b,71c及び控え梁接続金具6の最
上段及び中段の止具孔61c,61cに止具aを挿通す
ることにより、控え梁3を脚部のレベルで通し柱2A間
に架設する。
【0032】このようにして、左右の外壁体2の通し柱
2A間に控え梁3を架設するが、二階梁レベルの控え梁
3又は三階梁レベルの控え梁3のいずれか一方を省略し
ても良い。
【0033】図3乃至図6に示すように、控え柱15の
端部を土台11及び通し柱2Aを止具にて固定すことに
よりトラス構造が形成され、外壁体2を反力壁として機
能させることができる。また、図4に示すように、目盛
16a付き遣方16の基端を反力壁側の外壁体2に固定
し、遣方16の先端を移動側の外壁体2よりも外側に突
出させる。
【0034】このようにして組立てられた外壁体2,2
は、次の要領で移動させる。図5に示すように、外部足
場Dを撤去すると共に、移動させる側の外壁体2の控え
柱15を取り外し、残りの外壁体2を反力壁として控え
梁3の伸縮部32にて控え梁3を伸長させる。これによ
り、図5及び図8に示すように、台車8はレール9上を
移動すると共に、外壁体2は垂直性が保持された状態で
水平移動する。そして、外壁体2を土台11から架設土
台14の補助レール13に移動させて架設土台14の補
助レール13上で停止させる。外壁体2の移動は、作業
者の人数や控え梁3の配置バランス等を考慮し、全移動
距離を複数に区分けして行う。外壁体2の移動量は、レ
ール9の目盛93及び遣方16の目盛16aで確認す
る。また、外壁体2が移動し過ぎた場合には、控え梁3
の調整ねじ34を逆転させる。
【0035】次に、隣地境界側外周基礎1aに外壁体2
をアンカーボルト10で固定する。そのために、図9に
示すように、控え梁接続金具6のジャッキ受け板63の
下にジャッキJを設置し、補助レール13付き仮設土台
14が抜き取れる分だけ外壁体2を上昇させ、仮設土台
14を抜き取ると共に台車8を外壁体2の土台2bから
取り外す。外壁体2を昇降させる前に、アダプター7の
最下段に位置する止具孔71cに挿通された止具aを予
め抜き取っておく。アダプター7の大径の止具孔71b
と止具孔71bに挿通された止具aとの間に大きな隙間
が形成されているので、止具aを抜き取った状態では、
階梁レベルの控え梁3は、梁接続金具5の切り欠き51
bの止具嵌合部51a内の止具aを中心にして当該隙間
の分だけ上下方向を揺動可能となる。また、通し柱2A
の脚部レベルの控え梁3は、控え梁接続金具6の受け溝
61b内の止具aを中心として当該隙間の分だけ上下方
向を揺動可能となる。これにより、図6及び図9に示す
ように、外壁体2の昇降に伴って、控え梁3も外壁体2
に対して上下に揺動して外壁体2の昇降が可能となる。
図9中の符号J1は、ジャッキJの土台である。
【0036】その後、外壁体2の土台2Bを隣地境界側
外周基礎1aのアンカーボルトに固定する。
【0037】残りの外壁体2も、同じ要領で移動させて
隣地境界側外周基礎1aに固定する。図6に示すよう
に、既に移動が完了し、隣地境界側外周基礎1aに固定
された外壁体2を控え柱15で支持して反力壁として働
かせる。
【0038】図7は、左右両側の隣地境界側外周基礎1
aに固定された両外壁体2,2から控え梁3及び控え梁
接続金具6を取り外し、外壁体2,2間に階梁4を架設
した状態を示している。図11は、隣地境界線側基礎1
aに固定された外壁体2の通し柱2Aに階梁4の端部を
取付けるための作業説明図である。同図に示すように、
階梁4の端部には一対のスリット溝41及び4個の貫通
孔41,42が形成されており、階梁4の最上部の貫通
孔41には、取付け前に止具aを予め挿着しておく。そ
して、同図の矢印で示すように、階梁4のスリット溝4
1を梁接続金具5の梁接続板部51に挿入すると共に、
階梁4の止具aを梁接続金具5の梁接続板部51の切り
欠き51aに落とし込んで通し柱2Aに仮止めする。次
に、同図に示すピンa1を階梁4の残りの挿通孔43及
び梁接続板部51の止具孔51cに差し込むことによ
り、通し柱2Aに階梁4の端部を取付ける。このよう
に、本工法は、階梁4を取付けるための梁接続金具5を
利用して控え梁3の接続を行うので、安価に施工でき、
外壁体2の加工も不要となる。また、上述のように仮設
用パイプサポート等を利用できるので、この面からも施
工費が安価になる。
【0039】なお、止具aとしては、ボルトなど建築分
野で汎用されている種々の止具が考えられる。本発明の
狭小地用の建築工法は、鉄骨構造の建物にも適用でき
る。この場合には、建て起こし工法のように、階毎に建
て起こす必要がなく、施工期間を短縮できる。外壁体2
に代えて専用の反力体(反力壁)を使用しても良い。ま
た、小型モーターを用い、スイッチ操作により控え梁3
を伸縮させても良い。
【0040】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1の発明の
狭小地用の建築工法によると、二階建てや三階建ての木
造建物の外壁体の水平移動による施工が可能となる。し
かも、外壁体を控え梁によって安定させた状態で移動で
きるので、作業の安全性が確保され、外壁体を傷付ける
こともない。また、控え梁を伸長させて外壁体を移動さ
せるので、外壁体の移動管理が容易となり、省力化が図
れる。また、クレーン等の重機を使用しないので、無騒
音施工が可能となる。また、控え梁等の管理要員を要所
に配置するだけで済むので、少人数で施工できる。更
に、ダメ工事もなく、仕口の設計をすれば広く一般木造
や鉄骨系の建物にも適用することができる。請求項2の
発明の狭小地用の建築工法によると、外壁体を反力体と
して利用するので、専用の反力体が不要となり、施工性
が向上し、施工費を低減できる。請求項3の発明の狭小
地用の建築工法によると、外壁体を反力体として使用す
る時には、外壁体を控え柱にて支持するので、外壁体を
反力体として十分に機能させることができる。請求項4
の発明の狭小地用の建築工法によると、隣地境界線側に
外壁体組立て用の外部足場を設置するので、外壁体の組
み立てが容易となる。請求項5の発明の狭小地用の建築
工法によると、基礎に固定される土台を利用して外壁体
を移動できるので、外壁体を移動させるための設備を簡
略化でき、施工性が向上する。請求項6の発明の狭小地
用の建築工法によると、外壁体をレールに載せて移動で
きるので、外壁体の移動が更にスムーズになる。請求項
7の発明の狭小地用の建築工法によると、仮設土台の上
に補助レールを取付け、この補助レールを土台上のレー
ルと連続させるので、外壁体を隣地境界側外周基礎の上
にスムーズに移すことができる。請求項8の発明の狭小
地用の建築工法によると、土台に台車を載せ、この台車
上で外壁体を組立てるので、外壁体の移動抵抗が少なく
なり、控え梁の伸長操作が容易になる。請求項9の発明
の狭小地用の建築工法によると、安全、かつ確実に二階
建てや三階建ての木造建物の外壁体を施工できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す狭小地用の建築工法
の一工程を示す斜視図である。
【図2】同工法の一工程を示す斜視図である。
【図3】同工法の一工程を示す斜視図である。
【図4】同工法の一工程を示す断面図である。
【図5】同工法の一工程を示す断面図である。
【図6】同工法の一工程を示す断面図である。
【図7】同工法の一工程を示す断面図である。
【図8】同工法による外壁体の移動動作を示す正面図で
ある。
【図9】同工法による外壁体の昇降動作を示す正面図で
ある。
【図10】同工法の外壁体の昇降動作を示す正面図であ
る。
【図11】通し柱への階梁の接続動作を示す斜視図であ
る。
【図12】同工法の一工程を示す斜視図である。
【図13】同工法に使用される控え梁の伸縮部の分解し
た斜視図である。
【図14】同工法に使用される控え梁の伸縮部の斜視図
である。
【図15】同工法に使用される控え梁接続金具の斜視図
である。
【図16】同工法に使用される梁接続金具の斜視図であ
る。
【符号の説明】
A 狭小地 B 隣地境界線 D 外部足場 1 基礎 1a 隣地境界側外周基礎 2 外壁体 2A 外壁体の通し柱 2B 外壁体の土台 3 控え梁 8 台車 9 レール 11 土台 13 補助レール 14 仮設土台 15 控え柱

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 隣地境界線側に位置する基礎よりも内側
    に後退した位置で建物の外壁体を立設した状態で組み立
    て、 外壁体よりも後方に反力体を配設し、 外壁体と反力体との間に伸長可能な仮設用の控え梁を介
    在し、 控え梁を伸長させることにより外壁体を立設した状態で
    隣地境界線側の基礎の上まで移動させて隣地境界線側の
    基礎に固定することを特徴とする狭小地用の建築工法。
  2. 【請求項2】 狭小地を挟む左右の隣地境界線側に位置
    する基礎よりも内側に後退した位置で建物の左右両側の
    外壁体をそれぞれ立設した状態で組み立て、 左右両側の外壁体の間に伸長可能な控え梁を介在し、 一方の外壁体を反力体として控え梁を伸長させることに
    より、他方の外壁体を立設した状態で隣地境界線側の基
    礎の上まで移動させて隣地境界線側の基礎に固定し、 次に、前記他方の外壁体を反力体として控え梁を伸長さ
    せることにより、前記一方の外壁体を隣地境界線側の基
    礎の上まで移動させて隣地境界線側の基礎に固定するこ
    とを特徴とする狭小地用の建築工法。
  3. 【請求項3】 外壁体を反力体として使用する時には、
    外壁体を控え柱にて支持することを特徴とする請求項2
    に記載の狭小地用の建築工法。
  4. 【請求項4】 隣地境界線側に外壁体組立て用の外部足
    場を設置することを特徴とする請求項1乃至請求項3に
    記載の狭小地用の建築工法。
  5. 【請求項5】 隣地境界線側の基礎を除く狭小地の基礎
    に土台を固定し、この土台と連続する仮設土台を隣地境
    界線側の基礎に設置し、土台上で組み立てた外壁体を仮
    設土台の上まで移動させた後、仮設土台を取り除いて外
    壁体を隣地境界側の基礎に固定することを特徴とする請
    求項1乃至請求項4に記載の狭小地用の建築工法。
  6. 【請求項6】 外壁体を移動させるためのレールを土台
    に取付けることを特徴とする請求項5に記載の狭小地用
    の建築工法。
  7. 【請求項7】 仮設土台の上に補助レールを取付け、こ
    の補助レールを土台上のレールと連続させることを特徴
    とする請求項6に記載の狭小地用の建築工法。
  8. 【請求項8】 土台に台車を載せ、この台車上で外壁体
    を組立てることを特徴とする請求項5乃至請求項7に記
    載の狭小地用の建築工法。
  9. 【請求項9】 外壁体は二階建て又は三階建ての木造建
    物の外壁体であることを特徴とする請求項1乃至請求項
    8に記載の狭小地用の建築工法。
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