JP3512704B2 - 密着層の形成方法およびその密着層を有する積層体 - Google Patents

密着層の形成方法およびその密着層を有する積層体

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JP3512704B2 JP2000098855A JP2000098855A JP3512704B2 JP 3512704 B2 JP3512704 B2 JP 3512704B2 JP 2000098855 A JP2000098855 A JP 2000098855A JP 2000098855 A JP2000098855 A JP 2000098855A JP 3512704 B2 JP3512704 B2 JP 3512704B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、珪素化合物膜また
は珪素膜と他の積層材料との密着性を向上させる密着層
の形成方法、およびその密着層を有する積層体に関し、
主に、食品や医薬品等の包装用フィルムや電子デバイス
等のパッケージ用フィルムとして用いられる積層体に適
用される。
【0002】
【従来の技術】積層フィルム等の積層体は、構成する各
積層材料が十分な密着性で積層されていることが好まし
い。密着性が不足する積層体は、構成する各積層材料間
に隙間や剥がれが生じることがあり、種々の問題を引き
起こす場合がある。
【0003】特に、酸化珪素膜をガスバリア性材料とし
て適用する積層体においては、その酸化珪素膜と、その
上に積層される他の積層材料との間の密着性を向上させ
るという従来からの課題がある。例えば、食品や医薬品
等の包装材料に使用されるガスバリア性の積層フィルム
においては、密着性不足に基づいて生じた酸化珪素膜と
他の積層材料との間の隙間や剥がれによって、デラミネ
ーションが発生したりガスバリア性が低下することがあ
り、電子デバイス等のパッケージ材料に使用される積層
フィルムにおいては、リーク電流が発生することがあ
る。
【0004】こうした問題に対しては、従来より、コロ
ナ放電処理、真空中または大気中でのプラズマ処理、火
炎処理、グロー放電処理等によって酸化珪素膜の表面を
改質処理し、酸化珪素膜と他の積層材料との間の密着性
を向上させたり、酸化珪素膜上にプライマー層を設ける
ことによって、他の積層材料との密着性を向上させてい
た。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
表面改質処理方法は、高価な専用処理装置が必要になる
ために処理コストがかさんだり、そうした専用処理装置
を用いた場合であっても、密着性を安定させることが難
しいという問題がある。
【0006】また、プライマー層を設ける場合において
は、プライマー層は主に有機系材料が用いられるため、
酸化珪素膜に積層する他の積層材料の種類に応じて多種
の有機系材料の中から適切な材料を選定する必要があ
り、その選定が難しいという問題や、積層体の適用分野
によってはそうした有機系材料の使用が制限されるとい
う問題もある。さらに、上述の表面改質処理されていな
い酸化珪素膜においては、その酸化珪素膜とプライマー
層との間の密着性自体が不十分であるという問題もあ
る。
【0007】本発明は、上記問題を解決すべくなされた
ものであって、酸化珪素膜等の珪素化合物膜または珪素
膜からなる積層材料と他の積層材料との密着性を向上さ
せる密着層の形成方法、およびそうした密着層を有する
積層体を提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の密着層の形成方
法は、珪素化合物膜または珪素膜と他の積層材料との密
着性を向上させる密着層の形成方法であって、前記珪素
化合物膜または珪素膜をプラズマCVD法で形成し、
記珪素化合物膜または珪素膜の表面をフッ素化合物で溶
することにより、凹凸部分からなり原子間力顕微鏡測
定による表面粗さRaが0.5〜5nmである密着層を
形成したことに特徴を有する。
【0009】この発明によれば、珪素化合物膜または珪
素膜の表面は、フッ素化合物の作用によって溶解し、微
小な凹凸表面(凹凸部分という。)に変化する。この凹
凸部分は、凹凸が形成されることで被密着体との接触面
積が増加するため、密着層として作用し、その上に積層
される他の積層材料との間の密着性を向上させる。こう
した密着層は、安価なフッ素化合物と比較的簡単な処理
装置を使用することによって形成できるので、製造コス
トの低減を図ることができる。また、珪素化合物膜また
は珪素膜の膜質を制御することによって、フッ素化合物
に対する溶解性を制御できるので、他の積層材料との密
着性の程度を容易且つ安定的に制御することができる。
【0010】
【0011】この発明によれば、プラズマCVD法は、
珪素化合物膜と珪素膜の膜質を容易に変化させることが
できるので、フッ素化合物に対する珪素化合物膜または
珪素膜の溶解性を任意に調節することができる。こうす
ることにより、珪素化合物膜または珪素膜の表面に形成
される凹凸部分の凹凸状態を任意に変化させることがで
き、その上に積層される他の積層材料との間の密着性を
制御することができる。また、プラズマCVD法は、成
膜した珪素化合物膜または珪素膜と基材との界面を化学
結合させることができるので、この両者間の密着性が十
分高く、さらに、低温成膜が可能なので、高分子フィル
ム等の有機材料からなる基材上に成膜する場合に特に好
ましく適用できる。
【0012】また、前記珪素化合物膜が、酸化珪素膜ま
たは窒化珪素膜であり、前記フッ素化合物が、フッ化水
素酸、フッ化アンモニウム水溶液またはこれらの混合溶
液であることが好ましい。
【0013】本発明の積層体は、珪素化合物膜または珪
素膜と他の積層材料との密着性を向上させる密着層を有
した積層体であって、前記珪素化合物膜または珪素膜を
プラズマCVD法で形成し、前記珪素化合物膜または珪
素膜の表面がフッ素化合物で溶解することにより、凹凸
部分からなり原子間力顕微鏡測定による表面粗さRaが
0.5〜5nmである密着層を形成し、当該密着層上に
前記他の積層材料を積層してなることに特徴を有する。
【0014】この発明によれば、積層体を構成する珪素
化合物膜または珪素膜の表面は、フッ素化合物により溶
解されて凹凸部分に変化し、密着層が形成される。その
密着層上に他の積層材料を積層することによって、珪素
化合物膜または珪素膜と他の積層材料とを強い密着力で
積層することができ、密着性に優れた積層体とすること
ができる。そうした密着層は、安価なフッ素化合物と比
較的簡単な処理装置を使用して形成できるので、製造コ
ストの低減を図ることができ、積層体のコストダウンと
品質向上を達成できる。また、珪素化合物膜または珪素
膜の膜質を制御することによって、フッ素化合物に対す
る溶解性を制御できるので、他の積層材料との密着性を
容易且つ安定的に制御することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明は、珪素化合物膜または珪
素膜の表面をフッ素化合物で溶解し、その表面を凹凸部
分に変化させることによって、その凹凸部分からなる密
着層を形成する方法、およびそうして形成された密着層
を有する積層体についてのものである。この凹凸部分か
らなる密着層は、珪素化合物膜または珪素膜と他の積層
材料との間の密着性を向上させる作用を有している。以
下に、積層体について説明しつつ、密着層の形成方法に
ついて説明する。
【0016】図1は、本発明の積層体1の一例を示す断
面図である。積層体1は、図1に示すように、基材2
と、その基材2上に設けられた珪素化合物膜3と、その
珪素化合物膜3の表面に形成された密着層4と、その密
着層4上に設けられた一層以上の他の積層材料5、6と
から構成されてなるものである。本発明においては、珪
素化合物膜3の代わりに珪素膜を設けることができ、そ
の珪素膜は、以下で説明する珪素化合物膜3の場合と同
様な溶解現象、作用および効果を示す。
【0017】基材2は、得られる積層体1の用途に応じ
て任意に選択され、金属基材、高分子フィルム等のプラ
スチック基材、セラミック等の無機材料基材等が使用さ
れる。
【0018】積層体1を食品や医薬品等の包装用フィル
ムや電子デバイス等のパッケージ用フィルムとして使用
する場合には、高分子フィルムからなる基材2が好まし
く用いられる。具体的には、ポリエチレンテレフタレー
ト(PET)フィルム、二軸延伸ポリプロピレン(OP
P)フィルム、二軸延伸ポリアミド(ONy)フィル
ム、ポリイミド(PI)フィルム、ポリエチレン(P
E)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フ
ィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、環状ポリ
オレフィン(CPO)フィルム、エチレン−四フッ化エ
チレン共重合体(ETFE)フィルム等を挙げることが
できる。これらのフィルムは、機械的強度と寸法安定性
に優れているので、後述のプラズマCVD法による成膜
中ないし成膜後の製造工程中に引張り張力が加わった場
合でも、安定して製造することができる。さらに、それ
らの高分子フィルムは表面平滑性にも優れているので、
珪素化合物膜3または珪素膜を均一に形成し易いという
利点がある。また、高分子フィルムを用いる場合には、
ロール状に巻き上げられた長尺品が便利であり、その厚
さは、得られる積層体1の具体的な用途によって異なる
ので一概には規定できないが、一般的な包装用積層フィ
ルムやパッケージ用積層フィルムの基材2として用いる
場合には、3〜188μmが好ましい。
【0019】珪素化合物膜3または珪素膜は、上記の基
材2上に種々の成膜方法で形成される。このとき形成さ
れる珪素化合物膜3または珪素膜は、基材2の片面また
は両面に必要に応じて設けることができる。この珪素化
合物膜3は、酸化珪素膜または窒化珪素膜であり、特に
酸化珪素膜が好ましい。
【0020】珪素化合物膜3または珪素膜の成膜方法と
しては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレー
ティング法等の方法や、熱CVD法やプラズマCVD法
を適用することができる。これらのうち、プラズマCV
D法は、高分子樹脂に熱的ダメージが加わらない程度の
低温(およそ−10〜150℃程度の範囲)で珪素化合
物膜3や珪素膜を成膜できると共に、原料ガスの種類・
流量、成膜圧力、投入電力等によって得られる膜の物性
(膜質)を制御できるという利点があるので、高分子フ
ィルムを基材2とする場合に好ましく採用できる。さら
に、プラズマCVD法で成膜された珪素化合物膜3また
は珪素膜は、基材2との界面で化学結合するので、その
両者間の密着性が十分高くなる。
【0021】プラズマCVD法によって珪素化合物膜3
または珪素膜を形成する場合には、プラズマCVD装置
の反応室内に、所定の混合ガスを所定の流量で供給する
と共に、電極に直流電力または低周波から高周波の範囲
内での一定周波数を持つ電力を印加してプラズマを発生
させ、そのプラズマ中でその混合ガスを反応させること
によって、珪素化合物膜3または珪素膜を基材2上に形
成できる。
【0022】プラズマCVD法によって酸化珪素膜を形
成する場合には、混合ガスとして、(I)ヘキサメチル
ジシロキサン(HMDSO)、1,1,3,3−テトラ
メチルジシロキサン(TMDSO)、ビニルトリメトキ
シシラン、ビニルトリメチルシラン、テトラメトキシシ
ラン(TMOS)、メチルトリメトキシシラン、ジメチ
ルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、また
はヘキサメチルジシラザン等の有機珪素化合物ガスと、
酸素ガスとを混合したものや、(II)シラン系ガスと、
酸素ガスまたは酸化物ガスとを混合したもの、例えば、
SiH4 ガスに、N2 Oガス、NOガス、COガス、C
2 ガス、O2 ガス、Arガス等を混合させたガスを好
ましく用いることができる。
【0023】プラズマCVD法によって窒化珪素膜(S
34)を形成する場合には、混合ガスとして、例え
ば、SiH4 +NH3 ガス、ヘキサメチルジシラザン
(HMDS)+O2 ガス等を好ましく用いることができ
る。なお、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)+O2
ガスで成膜した場合には、SiNxy の膜となる。
【0024】プラズマCVD法によって珪素膜を形成す
る場合には、混合ガスとして、例えば、SiH4 ガス、
SiH4 +H2 ガス、SiH4 +Arガス、Si26
ガス、Si38 ガス、SiF4 +H2 ガス、SiCl
4 +H2 ガス等のガスが好ましく用いられる。
【0025】なお、上述した珪素化合物膜中または珪素
膜中には、原料となる混合ガス由来の成分、例えば有機
珪素化合物ガスを使用する場合には炭素原子等、が含有
されることがある。
【0026】上述の場合において、キャリアガスとし
て、ヘリウムガスやアルゴンガスを適宜用いることもで
きる。また、使用されるプラズマCVD装置のタイプは
特に限定されず、種々のタイプのプラズマCVD装置を
用いることができる。長尺の高分子フィルムを基材2と
して用いる場合には、それを搬送させながら連続的に珪
素化合物膜3を形成することができる連続成膜可能な装
置が好ましく用いられる。
【0027】積層体1を包装用フィルム等、フレキシブ
ル性が要求される用途として用いる場合には、形成され
る珪素化合物膜3の機械的特性や用途を勘案し、珪素化
合物膜3の厚さを5〜20nmとすることがより好まし
い。珪素化合物膜3の厚さを5〜20nmとすることに
よって、軟包装材料としてのフレキシブル性を持たせる
ことができ、包装用フィルムを曲げた際のクラックの発
生を防ぐことができる。また、積層体1が比較的薄さを
要求されない用途、例えばフィルム液晶ディスプレイ用
ガスバリア膜、フィルム有機ELディスプレイ用ガスバ
リア膜またはフィルム太陽電池用ガスバリア膜等の用
途、に用いられる場合には、珪素化合物膜3、特に酸化
珪素膜によるガスバリア性が優先して要求されるので、
前述の5〜20nmの範囲よりも厚めにすることが好ま
しく、その厚さを50〜200nmとすることが生産性
等も考慮した場合により好ましい。
【0028】密着層4は、珪素化合物膜3または珪素膜
とその他の積層材料5との密着性を向上させることを目
的とし、上述のように形成された珪素化合物膜3または
珪素膜の表面をフッ素化合物で溶解することによって形
成される。この密着層4が形成される態様を図2と図3
に示す。図2は、フッ素化合物で溶解させる前の珪素化
合物膜3の表面形態の一例を示す断面図であり、図3
は、フッ素化合物で溶解させた後の珪素化合物膜3の表
面形態の一例を示す断面図である。
【0029】このとき、珪素化合物膜3または珪素膜
は、フッ素化合物に比較的溶解し難い微細な結晶粒から
なる部分11と、その結晶粒相互間に形成されてフッ素
化合物に比較的溶解し易い粒界領域12とで構成されて
いるものと推察される。こうした珪素化合物膜3または
珪素膜の表面にフッ素化合物を実際に接触させると、粒
界領域12が溶解して、図2に示す平滑な表面形態から
図3に示す微小な凹凸状の表面形態に変化するのが観察
される。本発明は、珪素化合物膜3または珪素膜の表面
がこのように変化することを見いだしたことによって達
成されたものであり、その微小な凹凸表面(凹凸部分)
は、凹凸が形成されることで被密着体との接触面積が増
加するため、珪素化合物膜3または珪素膜とその表面上
に積層される他の積層材料5との間の密着性を向上させ
る密着層4として作用する。
【0030】密着層4の作用に基づく密着性の程度は、
その密着層4の凹凸部分の形態に影響され、その凹凸部
分の形態は、珪素化合物膜3または珪素膜の膜質によっ
て変化する。こうした膜質は、珪素化合物膜3または珪
素膜の成膜条件によって変化するので、その成膜条件を
任意に制御することによって、珪素化合物膜3や珪素膜
表面のフッ素化合物に対する溶解性、溶解後の凹凸の程
度、他の積層材料5との間の密着力等の程度を調製する
ことができる。特に、上述したプラズマCVD法は、成
膜条件を変化させて膜質を制御し易いという利点があ
る。密着層4の好ましい形態は、フッ素化合物で処理し
た後において、原子間力顕微鏡測定による表面粗さRa
でおよそ0.5〜5nmであることが好ましい。
【0031】フッ素化合物は、フッ化水素酸、フッ化ア
ンモニウム水溶液またはこれらの混合溶液の蒸気または
溶液であり、こうしたフッ素化合物は、珪素化合物膜3
または珪素膜の表面に接触して上述の粒界領域12を化
学的に溶解させる作用を有している。
【0032】フッ素化合物は、その濃度、処理温度、処
理時間等を任意に変化させて、密着層4の凹凸状態を変
化させることができる。例えば、酸化珪素膜に対してフ
ッ化水素酸を用いる場合には、フッ化水素酸を50質量
%以下の濃度に任意に調製し、0〜100℃の範囲の所
定の温度に適宜設定して処理することができる。実際
は、酸化珪素膜の膜質に大きく影響されるので、酸化珪
素膜の凹凸形態ないし他の積層材料との密着力測定を行
うことによって各処理条件が設定される。酸化珪素膜に
代えて窒化珪素膜や珪素膜を用いた場合、さらにフッ化
水素酸に代えてフッ化アンモニウム水溶液を用いた場
合、またはフッ化水素酸とフッ化アンモニウム水溶液と
の混合溶液を用いた場合も上述と同様に、それぞれの処
理条件が設定される。
【0033】フッ素化合物を珪素化合物膜3または珪素
膜の表面に接触させる方法としては、その蒸気を噴霧し
たり、その水溶液中に浸漬するディップ処理、その水溶
液を吹き付けるスプレー処理等があり、特に限定されな
い。なお、フッ化水素酸やフッ化アンモニウムと同様な
作用効果を有するもの、さらには、フッ素化合物と同様
な作用効果を有するものであれば、その他の溶解性物質
を用いることも可能である。
【0034】密着層4上には、積層体1の用途に応じて
適宜選択された他の積層材料5、6が設けられる。ここ
でいう他の積層材料5、6として、低密度ポリエチレン
フィルム(LDPE、LLDPE)やキャストポリプロ
ピレンフィルム(CPP)を、ウレタン系接着剤やイソ
シアネート系接着剤を介して密着層上に積層することが
できる。また、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム
(EVA)を、押出しラミネーション法によって密着層
上に形成して積層させることもできる。
【0035】密着層4とその上に設けられた積層材料5
との密着性は、積層体1の用途に応じ、剥離接着強度測
定、引張り接着強度測定、せん断接着強度測定等の方法
で測定された密着力によって評価することができる。そ
の密着力は、形成された密着層4の凹凸形態や積層材料
5の種類によって異なるが、密着層4を形成しない珪素
化合物膜3の場合と比較すると、2〜10倍向上させる
ことができる。
【0036】本発明の積層体1には、さらに、PVC法
やCVD法のような乾式成膜や塗工等の湿式成膜によっ
て形成した積層材料を、基材2と珪素化合物膜3との
間、基材2の裏面側等に必要に応じて積層することも可
能である。このとき、基材2の表面には、本発明の目的
を阻害しない範囲内で、珪素化合物膜3との密着性の向
上を目的としたアンカーコート処理層を設けることがで
きる。アンカーコート処理層を設けるためのアンカーコ
ート剤としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹
脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアル
コール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチ
レン樹脂、変性シリコン樹脂、およびアルキルチタネー
ト等を、単独または二種以上併せて使用することができ
る。これらのアンカーコート剤には、従来公知の添加剤
を加えることもできる。
【0037】なお、フッ素化合物等の溶解性物質によっ
て、珪素化合物膜3または珪素膜の表面と同様な凹凸部
分が現れるものであれば、他の無機材料薄膜に対しても
本発明を適用できる。他の無機材料薄膜としては、A
l、Ti、Cr、Ni、Pd、Si等の金属薄膜、Ga
As、GaP、CdS、SiC、InSn等の化合物薄
膜、Al23、SiO2 、TiO2 、ZrO2 、SnO
2 、In23、Ta25、ITO(Indium Tin Oxid
e)、MgO等の酸化物薄膜、Si34、TiN、AlN
等の窒化物薄膜、等を挙げることができる。なお、他の
無機材料薄膜に対する溶解性物質は、その無機材料薄膜
の材質によって適宜選定され、フッ化水素酸やフッ化ア
ンモニウム水溶液の他、酸化剤を含む腐食性物質および
その溶液、その他の酸性水溶液、例えば、硝酸水溶液、
塩化第二鉄水溶液、塩酸水溶液等を用いることも可能で
ある。
【0038】以下、凹凸部分の表面粗さの測定について
説明する。
【0039】本発明においては、凹凸部分の形態の評価
として、原子間力顕微鏡(以下「AFM」という。)で
測定した結果を基に、その表面粗さRaを測定してい
る。測定に供するAFMは、Digital Instruments製、
セイコー電子製、Topometrix製等を使用できる。例え
ば、Digital Instruments製のNano ScopeIIIを使用した
場合は、タッピングモードで凹凸処理面を500nm×
500nmの面積を測定したAFM凹凸像についてフラ
ット処理を行った後、粗さ解析を行って表面粗さRa
(中心線平均粗さ)を求めた。測定においては、摩耗や
汚れのない状態のカンチレバーを使用し、著しいへこみ
や突起のない均一な凹凸領域を測定個所とした。なお、
タッピングモードとは、Q.ZongらがSurface Science Le
tter,1993年Vol.290,L688-692 に説明されている通りで
あり、ピエゾ加振器を用いて、先端に深針をつけたカン
チレバーを共振周波数近傍(約50〜500MHz)で
加振させ、試料表面上を断続的に軽く触れながら操作す
る方法であって、検出される振幅の変化量を一定に維持
するように、カンチレバーの位置を凹凸方向(Z方向)
に移動させ、このZ方向への移動に基づいた信号と平面
方向(XY方向)の信号とによって、3次元表面形状を
測定する方法である。また、フラット処理とは、2次元
データについて、基準面に対して1次、2次または3次
元の関数で傾きの補正を処理することであり、この処理
データを用いて粗さ解析を行い、以下の式1によって表
面粗さRaを算出した。式1において、Lx、Lyは、
表面のX方向、Y方向の寸法であり、f(x,y)は、
中心面に対する平均ラフネス曲面である。なお、中心面
とは、一般的な表面粗さ測定における粗さ曲線の中心線
に相当する面であり、その面の上下の凸部と凹部の体積
が等価となるように求めた平均値である。
【0040】
【式1】
【0041】なお、本願において、JIS B 060
1やその対応国際規格ISO468等を用いて表面粗さ
を測定しなかったのは、本願で形成される凹凸が極めて
微細であり、従来の測定方法ではその凹凸を表す物性値
が得られないことが明白であったためである。
【0042】
【実施例】以下に、実施例と比較例を示して、本発明を
さらに具体的に説明する。
【0043】(実施例1)基材2として、厚さ12μm
のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ユ
ニチカ製、PTM)を用いた。この基材2の一方の面
に、プラズマCVD法によって酸化珪素膜をガスバリア
膜として形成した。プラズマCVD装置としては、周波
数90kHzの低周波電源を備える平行平板型プラズマ
CVD装置(アネルバ製、PED−401)を使用し
た。成膜条件としては、原料ガスにはヘキサメチルジシ
ロキサン(HMDSO)ガス1.5sccm、酸素ガス
15sccm、ヘリウムガス30sccmを用い、投入
電力250W、成膜圧力33.325Pa(250mT
orr)で、膜厚が50nmとなるまで成膜した。
【0044】得られた酸化珪素膜を、0.5質量%フッ
化水素酸(23℃)に10秒間ディップ処理し、水洗、
乾燥を行って、酸化珪素膜の表面に本発明に係る密着層
4を形成した。この密着層の表面粗さRaは、原子間力
顕微鏡測定で1.68nmであった。
【0045】密着層4の効果を評価するために、剥離接
着強度測定、いわゆるラミ強度測定による密着性の評価
を行った。先ず、形成した密着層4上に、ウレタン系接
着剤を塗布して接着剤層を形成し、その接着剤層を介し
て低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE;出光石油
製、LF732)を接着させ、実施例1の試験試料を作
製した。なお、ウレタン系接着剤は、酢酸エチルを4g
/m2 、A511(武田薬品製)を1g/m2 、A−1
2(武田薬品製)を0.1g/m2 の割合で混合したも
のを使用し、そのウレタン系接着剤をテストドライラミ
コーターで塗布、乾燥して接着剤層を形成した。次い
で、剥離接着強度測定として、試験試料のT字剥離テス
トを行った。T字剥離テストは、試験試料を15mm幅
で切り出し、酸化珪素膜が形成されたフィルム基材2側
と、接着剤層を介して設けられた低密度ポリエチレンフ
ィルム側との一方を固定し、他方を180°方向に一定
速度(50mm/分)で引っ張った際の強度を剥離強度
として求め、その値を密着強度として評価した。
【0046】T字剥離テストの結果、酸化珪素膜と接着
剤層との間の剥離はみられず、基材自体が切断するいわ
ゆる基材切れが生じた。そのときの強度は、7.85N
/15mm(0.8kgf/15mm)を示しており、
その密着力はそれ以上であることがわかった。
【0047】(比較例1)フッ化水素酸によるディップ
処理を省略した以外は、実施例1と同様にして、比較例
1の試験試料を得た。なお、接着剤層を設けた酸化珪素
膜表面の表面粗さRaは、原子間力顕微鏡測定で0.4
5nmであった。
【0048】実施例1と同様のT字剥離テストの結果、
酸化珪素膜と接着剤層との間の剥離がみられた。そのと
きの強度は、1.96N/15mm(0.2kgf/1
5mm)を示していた。
【0049】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の密着層の
形成方法によれば、珪素化合物膜または珪素膜と他の積
層材料との間の密着性を向上させる密着層を、安価なフ
ッ素化合物と比較的簡単な処理装置を使用することによ
って形成できるので、製造コストの低減を図ることがで
きる。また、珪素化合物膜または珪素膜の膜質を制御す
ることによって、フッ素化合物に対する溶解性を制御で
きるので、他の積層材料との密着性の程度を容易且つ安
定的に制御することができる。
【0050】本発明の積層体によれば、珪素化合物膜ま
たは珪素膜と他の積層材料とを強い密着力で積層するこ
とができ、密着性に優れた積層体とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層体の一例を示す断面図である。
【図2】フッ素化合物で溶解させる前の珪素化合物膜の
表面形態の一例を示す断面図である。
【図3】フッ素化合物で溶解させた後の珪素化合物膜の
表面形態の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 積層体 2 基材 3 珪素化合物膜 4 密着層 5、6 積層材料 11 結晶粒からなる部分 12 粒界領域
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平11−322984(JP,A) 特開 平5−267270(JP,A) 特開 平8−97538(JP,A) 特開2001−288589(JP,A) 特開2001−277420(JP,A) 特開2000−918(JP,A) 特公 昭49−389(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23F 1/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 珪素化合物膜または珪素膜と他の積層材
    料との密着性を向上させる密着層の形成方法であって、前記珪素化合物膜または珪素膜をプラズマCVD法で形
    成し、 前記珪素化合物膜または珪素膜の表面をフッ素化合物で
    溶解することにより、凹凸部分からなり原子間力顕微鏡
    測定による表面粗さRaが0.5〜5nmである密着層
    を形成したことを特徴とする密着層の形成方法。
  2. 【請求項2】 前記珪素化合物膜が、酸化珪素膜または
    窒化珪素膜であり、前記フッ素化合物が、フッ化水素
    酸、フッ化アンモニウム水溶液またはこれらの混合溶液
    であることを特徴とする請求項1に記載の密着層の形成
    方法。
  3. 【請求項3】 珪素化合物膜または珪素膜と他の積層材
    料との密着性を向上させる密着層を有した積層体であっ
    て、前記珪素化合物膜または珪素膜をプラズマCVD法で形
    成し、 前記珪素化合物膜または珪素膜の表面をフッ素化合物で
    溶解することにより、凹凸部分からなり原子間力顕微鏡
    測定による表面粗さRaが0.5〜5nmである密着層
    を形成し、当該密着層上に前記他の積層材料を積層して
    なることを特徴とする積層体。
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