JP3507626B2 - 高強度ボルト用鋼および高強度ボルト - Google Patents
高強度ボルト用鋼および高強度ボルトInfo
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Description
機械等に用いられるボルト用鋼および該ボルト用鋼を用
いて得られるボルトに関する。詳細には、引張強度が7
85N/mm2 を超えると共に、オーステナイト結晶粒
度番号が5以上であるボルトを製造するのに有用な高強
度ボルト用鋼に関するものである。
mm2 の高強度ボルトを製造するには、SCM435に
代表される低合金鋼が使用されていたが、近年における
コスト低減化の要請に伴い、B添加による焼入性向上効
果を利用したB添加鋼が用いられつつある。しかしなが
らB添加鋼は、焼入れ加熱時にオーステナイトの結晶粒
度が粗大化しやすいという問題がある。特に、冷間加工
を施した材料については、焼入れ・焼鈍時にオーステナ
イト結晶粒度が粗大化しやすくなる。そこで、オーステ
ナイト結晶粒の粗大化を抑制することを目的として、特
に焼入れ加熱時、或いは焼入れ加熱前における加熱速度
を制御した種々の方法が提案されている。
時の加熱速度を3〜50℃/secに制御する方法であ
るが、通常のボルト焼入れ時の加熱速度(0.1〜0.
8℃/sec)とは異なり急速加熱処理を施す必要があ
り、適用範囲が限定されてしまうという問題がある。
れ時の加熱速度を3℃/min以下と、通常の焼入加熱
速度に比べて非常に遅くする方法であるが、加熱手段は
誘導加熱法を前提としており、通常のボルト焼入れ・焼
鈍処理で繁用される電気炉加熱は利用しにくいという不
都合がある。更にこの方法によれば、オーステナイトの
結晶粒度を調整するために、鋼の焼入れ処理前に熱間加
工または950℃以上1000℃以下の加熱処理を行う
ことが前提となっており、工程が煩雑となりコストの上
昇を招く等の問題も伴っている。
Nを微細析出させることによって焼入れ時のオーステナ
イト結晶粒の粗大化を防止する方法が開示されている。
即ち、連続鋳造時にTiNを微細析出させると共に、そ
の後の圧延工程においても、TiNの凝集を阻止すると
いう観点から従来の加熱温度(1000〜1250℃)
よりも低い加熱温度(800〜950℃)で加熱処理す
る方法である。しかしながら、この方法では鋳造時の凝
固速度を速くする必要があり、従って、ブルーム連続鋳
造や造塊鋳造等の如く凝固速度の遅い鋳造方法を採用し
た場合には、オーステナイト結晶粒度の粗大化を防止す
ることはできない。
に着目してなされたものであって、その目的は、焼入れ
加熱前における加熱速度や加熱温度等を制御しなくと
も、オーステナイト結晶粒度番号が5以上の微細結晶粒
を含有し且つ引張強度が785N/mm2を超える高強
度ボルトを製造するのに有用な高強度ボルト用鋼を提供
することにある。
発明の高強度ボルト用鋼とは、鋼の化学成分がB:0.00
08〜0.004%(質量%の意味、以下同じ),C:0.4%以
下(0%を含まない),Ti:0.025〜0.06%,N:0.0
06%以下(0%を含まない),Si:0.35%以下(0%
を含まない),Mn:2%以下(0%を含まない),A
l:0.1%以下(0%を含まない),Cr:2.0%以下
(0%を含まない),残部:Feおよび不可避不純物で
あると共に、[TiNを除くTi化合物の合計量/FG
c1/2]×1000で規定されるG値(FGcは鋼を熱間圧
延したときのフェライト結晶粒度を意味する。以下、単
にG値と呼ぶ場合がある)が下式(1)または(2)を
満足するところに要旨を有するものである。
000℃(好ましくは850〜940℃)である} G値≧3 … (2)
強度ボルトも本発明の範囲内に包含される。
として有用なB添加鋼における上述した問題点、即ち焼
入れ時におけるオーステナイト結晶粒の粗大化を防止す
ることを目的として鋭意検討を行った。その結果、オ
ーステナイト結晶粒の粗大化を防止するには、TiNを
除くTi化合物を微細析出させることが有効であるこ
と、及びオーステナイト結晶粒の粗大化は鋼材のフェ
ライト結晶粒にも依存することが分かった。従って、鋼
材のフェライト結晶粒度および焼入温度に見合った量
の、TiNを除くTi化合物を微細析出させることがで
きれば上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完
成したのである。
説明する。
が、過剰に添加すると;焼入れ後の靱性が低下すると共
に、割れが発生する等の問題を招くので、その上限を0.
4%とした。好ましい上限値は0.35%である。また、上
記作用を有効に発揮させるには、0.15%以上の添加が好
ましい。
入効果を発揮させるのに非常に有用である。特に、Ti
化合物の形成は焼入れ後のオーステナイト結晶粒の粗大
化防止に非常に有用である。この様な作用を有効に発揮
させるには0.025%以上の添加が必要である。好ましい
下限値は0.030%であり、より好ましいのは0.040%であ
る。しかしながら、0.06%以上添加してもその効果は飽
和するので、その上限を0.06%とした。
テナイト結晶粒の粗大か防止に寄与する元素である。し
かしながら、過剰に添加するとAlやTiの添加によっ
ても全てを捕捉することはできず、余剰のNがBNを形
成するため、Bによる焼入性を確保できないと共に、焼
入れ後のオーステナイト結晶粒の粗大化防止に大きく寄
与するTiNを除くTi化合物の析出量が少なくなるた
め、その上限値を0.006%にした。好ましい上限値は0.0
050%であり、より好ましいのは0.0040%である。
元素である。その効果を有効に発揮させるためには0.00
08%以上の添加が必要である。好ましい下限値は0.0010
%であり、より好ましいのは0.0015%である。しかしな
がら過剰に添加すると、かえって延性を阻害するので、
その上限を0.004%とした。好ましい上限値は0.0035%
であり、より好ましいのは0.0030%である。
は0.035%である。しかしながら、その添加量が増大す
るにつれて冷間鍛造性が低下するので、その上限を0.35
%以下とした。
るのに有用である。しかしながら、Mnの添加量が多す
ぎると、圧延後に過冷組織が生成し、冷間鍛造性が低下
する他、ボルトの寿命低下をもたらす。好ましい上限値
は1.5%であり、より好ましいのは1.2%である。
Nを形成して結晶粒を微細化することによって頭飛び特
性の向上に寄与する元素である。この様な作用を有効に
発揮させるには0.005%以上の添加が好ましい。より好
ましい下限値は0.010%であり、更により好ましいのは
0.020%である。しかしながら多過ぎると酸化物系介在
物が生成することによって冷間鍛造性が低下するので、
その上限を0.1%とした。好ましい上限値は0.08%であ
り、より好ましいのは0.06%である。
非常に有用である。
残部:Feおよび不可避不純物からなるが、その他、必
要に応じてMo:1.0%以下(0%を含まない)を添加
することは、焼入性を改善して強度を高めるという観点
から非常に有用である。
明で規定する前記G値について、上記式(1)または
(2)を満足しなければならない。
結晶粒の粗大化はTiNを除くTi化合物量および鋼材
のフェライト結晶粒度に依存し、焼入れ後のオーステナ
イト結晶粒の粗大化を防止するには、上記G値が式
(1)または(2)の関係を満足することが必要であ
る。尚、本発明において「TiNを除くTi化合物」と
は、例えばTiC、Ti4C2S2、TiS等のTi化合
物を意味する。
(Y)との関係で規定したものである。図1に、後記す
る実施例において、G値や焼入温度(Y)を種々変化さ
せた場合におけるM10ボルトのオーステナイト結晶粒
粗大化の有無をグラフ化したものを示す。図中、GGと
はオーステナイト結晶粒の粗大化を示す。同図から明ら
かな様に、式(1)の関係を満たすものは、焼入温度
(Y)を変化させてもオーステナイト結晶粒の粗大化は
全く生じないことが分かる。焼入温度は800〜100
0℃であり、より好ましくは850〜940℃である。
係なくG値のみによって規定されるものである。即ち、
G値が3以上である鋼を用いれば、その後の製造条件に
拘わらず、焼入れ加熱前における加熱速度や加熱温度等
を制御しなくとも、オーステナイト結晶粒の粗大化は生
じないのである。G値の好ましい下限値は4である。
i化合物が多量に生成すると鋼の清浄化が低下する等の
点を考慮すれば、6以下が好ましい。
組成およびG値を制御した点に特徴があり、この様な鋼
を用いれば、オーステナイト結晶粒度番号が5以上の高
強度ボルトを効率よく製造することができる。従って、
本発明鋼を用いてボルトを製造するに当たっては、鋼片
の加熱温度や加熱処理後の焼入れ・焼鈍条件、ボルト製
造時における冷間加工条件、溶製条件等については特に
制御されず、本発明の作用を損なわない範囲で、適宜好
ましい条件を選択することができる。
説明するが、下記実施例は本発明を制限するものではな
く、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施するこ
とは全て本発明の技術的範囲に包含される。
0×430mmブルーム連鋳機)または造塊法にて溶製
した後、圧延加熱温度および圧延仕上温度を変化させる
ことにより10.3mmφの線材に熱間圧延した。後記
する表2中、圧延加熱条件における低温加熱とは約85
0℃の加熱を、高温加熱とは約1050℃の加熱を夫々
意味し、一方、圧延仕上温度条件における低温仕上とは
約750℃の仕上温度を、高温仕上とは約900℃の仕
上温度で処理することを夫々意味する。
Nを除くTi化合物の合計量を測定した後、9.0mm
φに冷間伸線し、冷間加工を施すことによりM10ボル
トを作製した。このM10ボルトを更に850〜940
℃で加熱した後、焼入処理を施し、オーステナイト結晶
粒の粗大化の有無を調べた。
粒度およびTiNを除くTi化合物量、並びにM10ボ
ルトのオーステナイト結晶粒度は、夫々、下記の方法で
測定した。
から切粉を採取し、以下の手順によりTi化合物を組成
別に分離して分析した。
%MS系電解法にて溶解し、0.1μmのフィルターを
用いて残渣を抽出した(1次分離)。
l:H2O=1:1)で溶解した後、超音波処理を行
い、0.1μmのフィルターを用いて残渣を抽出した
(2次分離)。
−メタノールと14%I2−メタノールの混液中に加
え、60℃×5minの条件で溶解した後、超音波処理
を行い、0.1μmのフィルターを用いて残渣を抽出し
た(3次分離)。
た後、HCl(HCl:H2O=1:1)とH2O2の混
液で溶解してからICP法でTiSを定量した。……
(1) また、溶液については灼熱・灰化した後、Na2O3及び
Na2B4O7で融解し、更にHCl,H2O2及びH2Oの
混液で溶解してから、ICP分析法で[Ti+Ti4C2
S2+TiC]を分析した。……(2) 上記(1)+(2)を、TiNを除くTi化合物量とし
て算出した。
ト結晶粒度No.が5番未満か、或いはオーステナイト結
晶粒度が3番以上離れたものをオーステナイト結晶粒の
粗大化発生有りと判定した。
0.3mmφ線材のフェライト結晶粒度、TiNを除く
Ti化合物量およびG値を表2に併記する。更に、図1
には、G値や焼入温度を種々変化させた場合におけるM
10ボルトのオーステナイト結晶粒の粗大化状況をグラ
フ化して表す。
とができる。
る化学組成およびG値を満足する鋼を用いた例であり、
連続鋳造法、造塊法のいずれの溶製法を採用しようと
も、焼入加熱温度(圧延加熱条件、圧延仕上条件)に関
係なく、オーステ ナイト結晶粒の粗大化は見られなか
った。
発明の要件を満足しており、式(1)を満足する範囲内
ではオーステナイト結晶粒の粗大化は認められなかっ
た。
が規定外の鋼を用いた例であり、焼入加熱温度を種々変
えてもオーステナイト結晶粒の粗大化が見られた。
例であり、オーステナイト結晶粒の粗大化効果が飽和し
ている。
で、焼入れ加熱前における加熱速度や加熱温度等を制御
しなくとも、オーステナイト結晶粒度番号が5以上の微
細結晶粒を含有し、且つ引張強度が785N/mm2を
超える高強度ボルトを効率よく製造することができる。
ボルトのオーステナイト結晶粒の粗大化状況を示すグラ
フ。
Claims (4)
- 【請求項1】 鋼の化学成分が B :0.0008〜0.004%(質量%の意味、以下同じ), C :0.4%以下(0%を含まない), Ti:0.025 〜0.06%, N :0.006 %以下(0%を含まない),Si:0.35 %以下(0%を含まない), Mn:2 %以下(0%を含まない), Al:0.1 %以下(0%を含まない), Cr:2.0%以下(0%を含まない), 残部:Feおよび不可避不純物 であると共に、下式(1)を満足することを特徴とする
高強度ボルト用鋼。 [TiNを除くTi化合物の合計量/FGc1/2]×100
0 ≧(Y−775)/70 …… (1) (式中、FGc:鋼を熱間圧延したときのフェライト結
晶粒度, Y:焼入温度(℃)を夫々意味し、 Yは800〜1000℃である ) - 【請求項2】 前記焼入温度(Y)は850〜940℃
である請求項1に記載の高強度ボルト用鋼。 - 【請求項3】 鋼の化学成分が B :0.0008〜0.004%(質量%の意味、以下同じ), C :0.4%以下(0%を含まない), Ti:0.025 〜0.06%, N :0.006 %以下(0%を含まない),Si:0.35 %以下(0%を含まない), Mn:2 %以下(0%を含まない), Al:0.1 %以下(0%を含まない), Cr:2.0%以下(0%を含まない), 残部:Feおよび不可避不純物 であると共に、下式(2)を満足することを特徴とする
高強度ボルト用鋼。 [TiNを除くTi化合物の合計量/FGc1/2]×100
0 ≧3 …… (2) (式中、FGcは前と同じ意味) - 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載のボルト
用鋼を用いて得られる高強度ボルト。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP20741596A JP3507626B2 (ja) | 1996-08-06 | 1996-08-06 | 高強度ボルト用鋼および高強度ボルト |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP20741596A JP3507626B2 (ja) | 1996-08-06 | 1996-08-06 | 高強度ボルト用鋼および高強度ボルト |
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Publication Number | Publication Date |
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JPH1053834A JPH1053834A (ja) | 1998-02-24 |
JP3507626B2 true JP3507626B2 (ja) | 2004-03-15 |
Family
ID=16539379
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP20741596A Expired - Lifetime JP3507626B2 (ja) | 1996-08-06 | 1996-08-06 | 高強度ボルト用鋼および高強度ボルト |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3507626B2 (ja) |
Families Citing this family (4)
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---|---|---|---|---|
JP4653389B2 (ja) * | 2003-06-05 | 2011-03-16 | 新日本製鐵株式会社 | 耐遅れ破壊特性に優れた高強度Alめっき線材及びボルト並びにその製造方法 |
JP6031022B2 (ja) | 2013-12-02 | 2016-11-24 | 株式会社神戸製鋼所 | 耐遅れ破壊性に優れたボルト用鋼線および高強度ボルト並びにそれらの製造方法 |
WO2017002770A1 (ja) | 2015-06-29 | 2017-01-05 | 新日鐵住金株式会社 | ボルト |
WO2017094487A1 (ja) | 2015-12-04 | 2017-06-08 | 新日鐵住金株式会社 | 高強度ボルト |
-
1996
- 1996-08-06 JP JP20741596A patent/JP3507626B2/ja not_active Expired - Lifetime
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