JP3502173B2 - 廃水処理用微生物付着用担体 - Google Patents

廃水処理用微生物付着用担体

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    • Y02W10/10Biological treatment of water, waste water, or sewage

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、BOD成分やチッ素成
分を含有する都市下水、産業廃水等を酸素富化空気を用
い省エネルギー化をし、コンパクトな装置で効率的にB
OD除去、チッ素成分の硝化を行う廃水処理用微生物付
着用担体に関する。
【0002】
【従来の技術】一般にBOD成分やチッ素成分を含む下
水および産業廃水等の処理方法として、BOD物質は空
気曝気により活性汚泥処理を行い、分解・除去してお
り、また廃水中のチッ素成分は同じく空気曝気槽におい
て活性汚泥処理することにより硝化を行い、後に嫌気性
にして脱窒を行っている。しかし、このような方法は処
理時間を長時間必要とするため一般に処理設備が大型と
なり、また撹拌を兼ねた酸素溶解のための散気に多大の
エネルギーを必要とする。
【0003】装置のコンパクト化のためには被処理時間
の短縮を計らねばならない。このためには活性汚泥濃度
(微生物濃度)の増加と酸素溶解速度の向上が必要とな
る。活性汚泥濃度の増加には空気曝気槽内に微生物付着
用担体を入れ、その表面に活性な微生物層を形成させ廃
水処理することが提案されている。この方法によるとき
は有効な微生物濃度を高めるのに効果があり、廃水の処
理時間の短縮、処理水品位の向上に有効な手段であるこ
とがわかってきた。しかし、活性のある微生物濃度の増
加は、単位時間当りの酸素消費量の増加を招くことにな
る。空気曝気法における酸素の溶解速度は濃度勾配が一
定、かつ気泡径が同一としたときには散気ガス量と比例
することになり、増大した酸素消費量に合せて散気ガス
量を増大させる必要が生ずる。このように散気ガス量が
増大すると、廃水処理槽の散気ガスによる撹拌が激しい
ことを意味し、微生物付着用担体同士あるいは曝気槽壁
への激しい衝突が避けられなくなり、この衝突により微
生物付着用担体表面に生長した微生物層の剥離が起こ
り、これが流出することにより微生物濃度が低下し、微
生物担持担体使用の意味がなくなる。
【0004】担体に対する微生物付着力を高めるため、
多孔質の担体、例えば軽石、貫通孔を有する円筒形担
体、表面をサンドブラスト等で粗面化した合成樹脂粒状
体などの提案もある。軽石や粗面化した粒状体などにお
いては、表面微生物層が剥離されてもその細孔内部の微
生物層は剥離することはないが、細孔内部に存在する微
生物層の量はあまりに少量であって微生物濃度を高め、
廃水処理時間を安定に短縮化する手段としては不十分で
ある。また大きな貫通孔を有する円筒形担体において
は、円筒の内部に増殖した微生物層は量的にも多くする
こともでき、激しい撹拌においても剥離されることは少
ないが、筒内の微生物であるため担体表面にある微生物
層に比して効率が劣り短時間処理にはあまり効果がな
い。またスポンジ状多孔質担体を用いたところ、短期間
の操業で崩壊して安定な廃水処理には不適当であった。
【0005】いずれにせよ、微生物濃度を高めるため微
生物付着用担体は相当多量用いることが必要のなるの
で、空気曝気流動層方式(この方式の概念図を図3に示
す)では、担体を流動化させるために本来BOD成分分
解等に必要とする空気量以上の空気が必要となり、微生
物層剥離の危険性の増大と共に省エネルギー効果を十分
に発揮できない。この担体の流動化エネルギーを小さく
するため、担体のサイズを小さくするときは、オーバー
フロー防止のためのスクリーンの網目サイズを小さくす
ることが必要となり、目詰りなどのトラブルの原因とな
るので、担体の比重を1未満の合成樹脂製筒状粒子と
し、固定床として用いる方法(特開昭58−19828
9号公報)、あるいは1.00〜1.02の合成樹脂と
無機物質を主成分とした、内径1mmφ以上の貫通孔を
有する粒子を用いる流動床として用いる方法などが提案
されている(特開平2−211292号公報)。このよ
うに担体の比重が水より大きいときは、担体を流動させ
る散気のための空気供給エネルギーが莫大なものとなり
コストアップを招くので、担体の比重調整は流動床式生
物反応装置では特に重要な問題とされてきた。
【0006】一方空気に代え、酸素ガス分離法の技術革
新により安価となった酸素ガスを用いる酸素富化空気曝
気法(この方式の概念図を図4に示す)の場合、供給酸
素富化空気(酸素濃度90%位)の必要供給量は空気曝
気法における必要供給空気量の約1/30〜1/50で
よく、従ってそれだけでかなりのコンパクト化、省エネ
ルギーの方法であることがわかる。そしてこの方法は、
機械撹拌方式による表面曝気法であり、微生物付着用担
体を充填した流動層方式を採用する場合に適する微生物
付着用担体は未だ提案されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は酸素富化空気
曝気法の利点を生かし、多量の担体を使用し、かつコン
パクト化、省エネルギー化を実現し得る酸素富化空気を
用いた流動床式廃水処理用微生物付着用担体の開発を目
的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、合成樹脂と無機物質と
からなり、表面に微生物層の付着および生育に適した多
数の0.1〜100μmの細孔および/または溝を有
し、さらに微生物層の担体への保持性を強めるために担
体壁内外面を貫通する細孔も有する外径5〜30mm
φ、厚さ0.5〜5mm、長さが外径の0.8〜1.2
倍であって、実比重が1.03〜1.10の円筒状であ
る酸素富化空気を用いる機械撹拌方式による表面曝気式
廃水処理用微生物付着用担体を開発することにより上記
の目的を達成した。
【0009】本発明の担体を用いる流動床式廃水処理装
置としては、通常酸素富化空気曝気式廃水処理装置とし
て用いられている流動床式廃水処理装置に有効に使用で
きる。例えば原廃水供給口、酸素富化空気製造装置から
の酸素富化空気供給口、表面曝気機、微生物付着用担体
の流出を防ぐためのスクリーンを設けた処理水出口およ
び廃ガス出口、または次室への供給口を有する一段また
は多段階処理のための密閉型廃水処理装置が使用でき
る。特に微生物濃度を高めるため担体使用量が多い場合
や、処理槽の水深が深い場合においても担体の流動化お
よび溶存酸素の液中への拡散を確保するため、表面曝気
機に加え担体流動化のための撹拌装置を別途設けた装置
が好ましい。
【0010】本発明に使用する微生物付着用担体として
は、 流動に適した、またスクリーン等の目詰り等を起こさ
ず容易に流出防止ができる比重、大きさ、形状を有す
る。 撹拌等により破砕、変形、摩耗等を起こさない強度
と、なおかつ柔軟性を有する。 撹拌、担体相互接触等により担持微生物が剥離、脱落
しない微生物保持力を有する。 担体単位容積当りの微生物担持量が大きい。 などの要件を備えていることが必要とされる。
【0011】酸素富化空気を用いて酸素溶解に必要な強
度の撹拌で流動可能な担体の比重は1.2以下であっ
た。また比重1.03未満の比重の担体は、処理槽液表
面近くに集まる傾向が見られた。以上の結果より、比重
は1.03〜1.10が選ばれた。担体のサイズは、小
さい程表面積を大きくすることが可能であり、小さい程
表面積を大とすることができるが、代表径5mmφ以下
では流出防止スクリーンも5mm以下となり目詰り等の
トラブルが起こり易く、また、大きすぎると流動性が悪
化するので担体の代表径は5〜30mmφ、好ましくは
7〜25mmφである。形状としては微生物保持量が大
きく、微生物層が剥離、脱落しにくいように、その表面
に多数の0.1〜100μmの微細孔および/または細
溝を有する筒状のものであり、微細孔は貫通しているも
のがあることが好ましく、円筒形状のものが製造も容易
であり性能的にも優れている。
【0012】担体の材料としては比重、サイズ、強度、
柔軟性、表面状態、成形加工性などから合成樹脂および
無機物質を組合せることが好ましい。合成樹脂としては
ポリエチレン、ポリプロピレン等の柔軟性があり、軽量
のポリオレフィン系汎用熱可塑性合成樹脂、無機物質と
しては炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム、ゼオラ
イト等を用いる。合成樹脂の比重は1.0g/cm3
下であるので、これら無機物質は合成樹脂の比重の調節
と担体表面の粗面化、親水性付与の目的も兼ねて組合さ
れる。特に担体表面に強固な付着微生物層を形成させる
微細孔、細溝を多く発生させるためには、成形に際して
担体表面の粗面化、比重の調整を兼ねて発泡剤を併用す
ることは好ましい。使用する酸素富化空気としては、空
気液化分離した酸素の如く高純度の酸素であってもよい
が、経済的にはゼオライト系モレキュラーシーブを用い
るPSAの如き酸素富化空気(70vol%以上、好ま
しくは90vol%以上)であってもよい。
【0013】上記の合成樹脂、無機物質の材質的な組合
せによる担体性能の差はほとんど無いので、比重および
表面状態が目的の範囲に入るように混合比を調整する。
但し無機物質の割合が大きくなると破損し易くなるの
で、前記の比重範囲に入る混合割合が強度の点からも適
している。担体表面状態は、担体単位容量当りの微生物
担持量および撹拌等に対する微生物保持性能に大きな影
響を与える。担体成形時の条件(引き抜き速度、発泡剤
種類と添加量など)により、担体表面の細孔大きさと分
布割合、円筒状担体の時の筒内面から外面への貫通孔の
大きさと数がコントロールできることを見出した。
【0014】担体流出防止用のスクリーンは、スクリー
ンの目詰りを防ぐため担体が通り抜けない限りできるだ
け網目の大きいスクリーンを用いる。操業に際して、微
生物付着用担体使用量としては廃水処理水量の10〜4
0vol%、好ましくは20〜35vol%程度入れて
行う。密閉型処理槽の気相部の酸素濃度は、一般式処理
においては少なくとも30vol%、できれば50vo
l%以上に維持するように操業することが好ましい。多
段式処理であるときは、向流、併流のいずれでもよい
が、最終段の処理槽の酸素濃度が少なくとも25vol
%、できれば40vol%以上維持するように操業する
ことが好ましい。
【0015】
【作用】本発明の微生物付着用担体は、酸素富化空気を
用いる機械撹拌方式による表面曝気式廃水処理を行うの
に適した仕様を求めたものである。例えば90%以上の
酸素富化空気を供給するため、散気法による酸素溶解お
よび担体の流動ではエネルギー効率が悪くなる。酸素溶
解は十分に維持できるので担体の流動にはさらに効率の
よい機械撹拌を用いる。このため散気による担体流動の
場合に問題となった、空気吹込により担体の流動を確保
するために比重を極度に低く押えられていたが、機械撹
拌であるため従来の提案されていた担体とは異なった比
重のものが好ましいことがわかった。この結果、担体の
比重が大であるため沈降性もよく、処理水出口のスクリ
ーン部分に担体の集積も避けられ、目詰りもなく、コン
パクトな装置で消費エネルギーも少なく、効率的にBO
D除去、チッ素成分の硝化を行うことができた。さらに
この担体は脱窒用および嫌気性処理用担体としても使用
できる。
【0016】
【実施例】本発明の実施を図面により説明する。図1は
本発明の担体を用いた酸素富化空気曝気法流動式廃水処
理方法の一例を示す該略図である。曝気槽1は1,00
0mm×1,000mm、高さ1,000mmの密閉型
で、表面曝気機2、担体流動用撹拌機3、原廃水供給口
4、目開き8mmのスクリーン5を供えた処理水出口
6、酸素富化空気供給口7、廃ガス出口8を備えてい
る。微生物付着用担体10は図2(a)に示す如きもの
でポリエチレンと炭酸カルシウムとからなる組成物を用
い、比重約1.05、外径約10mmφ、内径約8mm
φ、長さ約10mmの多孔性円筒状担体で、円筒内外表
面に約1〜100μm位の微細孔や細溝の凸凹が無数に
あり、約100〜500μm孔の円筒内外の貫通孔がい
くつかある。
【0017】この微生物付着用担体を約30vol%
(210リットル)入れた密閉型曝気槽1に原廃水供給
口4から350リットル/hrの割合で原廃水を供給
し、表面曝気機2および撹拌機3を起動し担体を均一に
流動化させる。次いで、酸素富化空気(酸素濃度約90
%)を酸素富化空気供給口7より供給しながら連続的に
原廃水を処理する。処理水はスクリーン5を通って処理
水出口6より排出する。原廃水の処理条件は以下の通り
である。 曝気槽有効内容積 700リットル 原廃水供給量 350リットル/hr 酸素富化空気供給量 100リットル/hr 撹拌動力 50w 表1に原廃水の処理条件、原廃水の組成及び4ケ月連続
処理を行い処理が平衡に達した後の処理廃水の組成を示
す。
【0018】[比較例1]使用した担体を図2(b)に
示す、大きさおよび形状は実施例と同じ内径8mmφ、
外径10mmφ、長さ10mmの円筒状担体であるが、
円筒外面に鱗片状の凸凹を付けた担体を使用した。担体
の曝気槽への添加量、装置、処理条件は実施例と同じと
した。表1に使用担体、原廃水の処理条件、原廃水の組
成および4ケ月連続処理後の処理廃水の組成を示す。
【0019】[比較例2]比較例での装置、処理条件は
本発明の担体を添加しないことおよび曝気槽内の微生物
濃度を約4,000mg/リットルに保持するために返
送微生物を循環した以外は実施例と同じである。表1に
原廃水の処理条件、原廃水の組成および4ケ月連続処理
後の処理廃水の組成を示す。
【0020】
【表1】
【0021】
【発明の効果】本発明の微生物付着用担体は製造も簡単
で安価であり、これを使用した酸素富化空気法流動層式
廃水処理方法は、空気曝気式廃水処理法は勿論、従来の
酸素富化空気使用廃水処理法等の従来法に比較してBO
D分解速度、硝化速度を著しく大きくすることができ、
処理槽単位容積当りの処理量を上げることができる。本
発明の微生物付着用担体は、従来の酸素富化空気による
廃水処理装置に直接、場合によっては僅かの手直しをす
るだけで適用できるので、装置費、運転費が安価で極め
てコンパクトな廃水処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施例を示す概略図である。
【図2】本発明で使用した担体の1実施例を示す概略図
である。
【図3】比較のために使用した担体の概略図である。
【図4】従来技術の空気曝気流動槽方式の概念図であ
る。
【図5】従来技術の酸素富化空気曝気方式の概念図であ
る。
【符号の説明】
1 処理槽 2 表面曝気機 3 微生物付着用担体流動用撹拌機 4 原廃水供給口 5 スクリーン 6 処理水出口 7 酸素富化空気供給口 8 廃ガス出口 10 微生物付着用担体 11 散気装置 12 空気供給ポンプ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高橋 雄一 神奈川県川崎市川崎区千鳥町3−2昭和 電工株式会社川崎樹脂研究所内 (56)参考文献 特開 昭49−113460(JP,A) 特開 昭61−149085(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C02F 3/00 - 3/34

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 合成樹脂と無機物質とからなり、表面に
    多数の0.1〜100μmの細孔および/または溝を有
    する外径5〜30mmφ、厚さ0.5〜5mm、長さが
    外径の0.8〜1.2倍であって、実比重が1.03〜
    1.10の円筒状である酸素富化空気を用いる機械撹拌
    方式による表面曝気式廃水処理用微生物付着用担体。
  2. 【請求項2】 合成樹脂がポリエチレンおよび/または
    ポリプロピレン、無機物質が炭酸カルシウムおよび/ま
    たはタルクである請求項1記載の機械撹拌方式による表
    面曝気式廃水処理用微生物付着用担体。
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