JP3495521B2 - 動圧軸受装置 - Google Patents

動圧軸受装置

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JP3495521B2
JP3495521B2 JP24717496A JP24717496A JP3495521B2 JP 3495521 B2 JP3495521 B2 JP 3495521B2 JP 24717496 A JP24717496 A JP 24717496A JP 24717496 A JP24717496 A JP 24717496A JP 3495521 B2 JP3495521 B2 JP 3495521B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、潤滑剤に動圧を発
生させ、その動圧により固定部材に対して回転部材を支
持するように構成した動圧軸受装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、モータ等の各種装置において、特
に高速回転に対応し得るようにオイル等の潤滑剤の動圧
を利用した動圧軸受装置が種々検討され提案されてい
る。この動圧軸受装置においては、固定部材側の動圧面
と回転部材側の動圧面とが対向配置されていると共に、
これら両対向動圧面のうちの少なくとも一方側に動圧発
生用溝が形成されており、上記回転部材と固定部材との
両対向面間に介在された所定のオイル等の潤滑剤が、回
転部材の回転時に動圧発生用溝のポンピング作用により
昇圧され、当該潤滑剤の動圧によって回転部材の回転支
持が行われるようになっている。
【0003】このように動圧軸受装置は、オイル等の潤
滑剤(以下、単に潤滑剤という)を軸受部内に有してお
り、その潤滑剤の保持構造によって次の3つの型式に一
般に大別することができる。 1)部分潤滑剤構造(例えば、特開平6−178492
号公報参照) これは、潤滑剤が軸受部分のみに充填されており、軸受
同士の間に空気層を設けた構造であって、最も単純な動
圧軸受構造である。 2)潤滑剤循環構造(例えば、米国特許4,795,2
75参照) これは、軸受同士の間も潤滑剤で満たしておき、軸受端
同士を循環孔で繋げた構造であって、回転時に発生する
内部の圧力差(差圧)を解消するように潤滑剤を循環移
動させる構造である。この構造によれば、潤滑剤の量を
十分に確保して長寿命化を図ることが可能となると共
に、潤滑剤の内部圧力差(差圧)を循環孔により常に解
消しているため、潤滑剤の外部漏れを防止する点におい
ても有利である。 3)片袋保持構造(例えば、米国特許5,427,45
6参照) 軸受部の軸方向一端側を壁で閉塞して袋状の軸受空間を
形成し、その軸受空間が外気と繋がる出口部を一個所と
した構造であって、潤滑剤の圧力差を片袋構造により支
えるように構成したものである。この構造によれば、潤
滑剤の移動が防止されるため、簡易で低コストな動圧軸
受構造を得ることができると共に、長寿命化と潤滑剤漏
れ防止との双方が可能となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た従来の各動圧軸受構造のうち、1)の「部分潤滑剤構
造」においては、潤滑剤の注入量管理が難しい上に、軸
受部内のスペースが小さいために潤滑剤の絶対量が少な
くなってしまい絶対寿命が短いという問題がある。ま
た、これを解消するために潤滑剤の充填スペースを拡大
して潤滑剤の量を増やすと、今度は潤滑剤が漏れ易くな
ってしまう。さらに、軸受同士の間にある空気層が気圧
及び温度の変化によって体積膨張及び縮小することから
潤滑剤の移動・漏れが生じ易く、これを防止するために
外部に繋がる孔を設ける等の対策が必要となる。
【0005】また、上述した2)の「潤滑剤循環構造」
においては、循環孔を設けるために構造が複雑化してし
まい、従って量産性に乏しく、製造コストも高くなると
いう問題がある。
【0006】さらに、上述した3)の「片袋保持構造」
では、片袋状の軸受部を作る結果として、所謂軸回転型
及び軸固定型の何れの軸受構造であっても、軸部材が片
持ち構造に限られてしまい、そのため用途が限定される
という問題がある。
【0007】そこで本発明は、簡易で低コストな構造
で、潤滑剤漏れを良好に防止しつつ長寿命化を図ること
ができ、しかも適用性の広い動圧軸受装置を提供するこ
とを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成す
るために、先ず、1)潤滑剤漏れを防止する条件、2)
長寿命化を可能とするための条件、及び3)低コストで
量産性を良好とするための条件のそれぞれについて必要
な点を考えてみる。
【0009】1)潤滑剤漏れを防止するための条件。 1-1. 潤滑剤の外部漏れを防止するためには、まず潤滑
剤の液面位置が固定部材と回転部材との間の狭い隙間内
にあることが必要である。これは、回転及び停止の双方
の状態を含むのは勿論、温度・気圧が変化した状態、全
ての姿勢状態、振動・衝撃が加わった状態、潤滑剤の注
入量のばらつき及び蒸発などによる量変化した状態等、
仕様内のあらゆる状態に対して必要な条件である。
【0010】特に、動圧軸受に対して大きな慣性力が負
荷された場合には、毛細管力や磁気力によるシール力だ
けでは潤滑剤を保持することが難しくなるため、その場
合には、潤滑剤の流体粘性抵抗による動圧力を潤滑剤保
持力の主とする必要がある。そしてこの潤滑剤の流体粘
性抵抗による動圧力を大きくするためには、潤滑剤の表
面位置における隙間を一定以下に狭くする必要がある。
【0011】さらに、上述したように潤滑剤の液面位置
が常に狭い隙間内にあるには、 a.潤滑剤の液面位置及び量が、上述した何れの状態に
あっても大きく変動しないこと、 b.潤滑剤の注入時における液面位置を管理・調整する
ことができ、簡単に指定の位置内とすることができるこ
と、 c.狭い隙間内における液面指定位置の前後に、ある程
度の体積的余裕があること、などが必要となる。
【0012】1-2. 潤滑剤の外部漏れを防止するための
次の条件としては、停止時において、毛細管シール力が
働く状態になっていることがある。つまり、潤滑剤を軸
受内部の所定の位置に維持する力としての毛細管力によ
る引戻力が、連続的に作用していることが必要である。
【0013】1-3. さらに潤滑剤の外部漏れを防止する
ためには、回転時において潤滑剤の内部差圧が解消され
ており、バランスがとれた状態であることを要する。つ
まり、回転時に発生する動圧力または遠心力によって潤
滑剤内に圧力差が生じることとなるが、この圧力差は一
般にシール圧力よりもかなり大きくなってしまい、例え
ば、2つの出口部同士の間で潤滑剤に圧力差があると、
その圧力差が解消されるまで潤滑剤が移動して外部漏れ
の原因となることがある。すなわち、潤滑剤の外部漏れ
を防止するためには、潤滑剤の僅かな移動量だけで上述
した圧力差が解消され、バランスが取れるようにした構
造、或は、片袋保持構造のように圧力差を支えられる構
造とすることが必要である。
【0014】1-4. さらにまた潤滑剤の外部漏れを防止
するためには、回転時において軸受部間の軸受空間(所
謂潤滑剤溜り部)を正圧とする必要がある。これは、潤
滑剤溜り部が負圧になると、潤滑剤に溶け込んでいた空
気が分離・気化して該潤滑剤溜り部に溜り、その体積膨
張分潤滑剤が押し出されてしまうからである。
【0015】また、外気に繋がる出口部の付近は、潤滑
剤が濡れ拡散しない条件、例えば種々の環境条件下にお
いても潤滑剤の接触角が0度とならないような部分を、
各出口部の外側に設けておく等の対策を施しておくこと
が潤滑剤漏れを防止するために必要である。
【0016】2)長寿命化を可能とするための条件。 長寿命化を図るためには、まず、軸受部内に充填された
潤滑剤の容量の何倍かの量の潤滑剤が余裕分として保持
されていることが必要である。これは、軸受の使用によ
り潤滑剤に摩耗粉が混入したり、化学的変化を生じた
り、蒸発や漏れなどが、材料・条件により程度の差
るものの必ず生じ、これらを原因として潤滑剤の劣化・
減少を招来するからである。従って、動圧軸受の長寿命
化は、どの程度の余裕潤滑剤を内部に保持できるかが目
安となると共に、蒸発や漏れなどによる潤滑剤の減少を
いかに少なくできるかがポイントとなる。
【0017】3)低コストで量産性を良好とするための
条件。 これを達成するためには、当然のことであるが、できる
だけ簡易な構造とすることが重要である。
【0018】このようなことから、本発明にかかる動圧
軸受装置は、固定部材に対して回転部材を回転可能に支
承する少なくとも2つの動圧軸受部が一連の軸受空間を
画成し、この動圧軸受部を構成する固定部材及び回転部
材の少なくとも一方側に、前記軸受空間内に充填された
潤滑剤に動圧を発生させる動圧溝が設けられた動圧軸受
装置において、前記軸受空間の両端部分には、前記固定
部材と回転部材との間の隙間を狭小にしてなる毛細管シ
ール部がそれぞれ設けられていると共に、前記潤滑剤
は、前記動圧軸受部を含む両毛細管シール部同士の間の
軸受空間内に連続して充填され、且つ前記少なくとも2
つの動圧軸受部のうち、最外端に位置する各動圧軸受部
の動圧溝は、前記軸受空間の一方側に向かう所定の差圧
を前記潤滑剤に生じさせるような形状にそれぞれ形成さ
れると共に、前記差圧が解消されて平衡した状態で、前
記最外端に位置する両動圧軸受部の間の軸受空間が前記
潤滑剤により加圧されるような形状にそれぞれ形成され
たものであって、前記少なくとも2つの動圧軸受部のう
ち、最外端に位置する各動圧軸受部の動圧溝は、該最外
端に位置する両動圧軸受部の間の軸受空間に向かう差圧
を潤滑剤に生じさせるような形状にそれぞれ形成される
と共に、この両差圧の差を所定の差圧として前記潤滑剤
が軸受空間の一方側に移動して平衡した状態で、前記両
動圧軸受部の間の軸受空間が前記潤滑剤により加圧され
るような形状にそれぞれ形成され、前記両毛細管シール
部のうち、潤滑剤の移動方向下流側の毛細管シール部の
隙間内容量は、潤滑剤の移動による変位分を許容する量
に設定されていることを特徴としている。
【0019】そして、このような動圧軸受装置によれ
ば、先ず潤滑剤の液面位置が、固定部材と回転部材との
間の狭い隙間からなる毛細管シール部内に存在し、停止
時において、毛細管シール力が常時働く状態になってお
り、この毛細管シール力に基づく引戻力によって潤滑剤
が内部側所定の位置に保持される。一方、大きな慣性力
Gが負荷された場合には、潤滑剤の流体粘性抵抗による
動圧力が、狭い隙間からなる毛細管シール部に発生し、
これにより潤滑剤の外部拡散が防止される。
【0020】回転時においては、動圧軸受部で潤滑剤に
対して意図的に差圧が生じさせられ、この潤滑剤の差圧
を解消するように潤滑剤の移動が僅かに行われて平衡状
態になされるため、回転時における潤滑剤の外部拡散が
防止されるようになっている。
【0021】さらに、潤滑剤の差圧を解消するように潤
滑剤の移動が僅かに行われて平衡状態になされた時、最
外端に位置する各動圧軸受部の動圧溝により、該最外端
に位置する両動圧軸受部の間の軸受空間(潤滑剤溜り
部)が潤滑剤により加圧されているため、この軸受空間
において潤滑剤に溶け込んでいた空気が分離・気化する
ことはなく体積膨張が行われずに、回転時における潤滑
剤の外部拡散がより防止されるようになっている。
【0022】加えて、このような漏れ防止作用を有する
毛細管シール部が、固定部材と回転部材との間の狭小隙
間により簡易に構成されているため、製作の容易化が図
られ生産性が向上されるようになっている。
【0023】また、潤滑剤の移動方向下流側の毛細管シ
ール部の隙間内容量が、潤滑剤の移動による偏位分を許
容する容量に設定されているため、潤滑剤の漏れがより
防止されるようになっている。
【0024】また、動圧溝が回転部材側に形成されてい
る場合には、回転時において潤滑剤が移動してラジアル
軸受部の動圧溝が一部露出し、この露出した動圧溝が回
転することによって該露出した動圧溝を介してエアーが
送り出され、この送り出されたエアー及び凹凸を有し回
転する動圧溝により潤滑剤の界面が乱れて気泡を抱き込
みやすくなり、その結果体積膨張が行われて、回転時に
おける潤滑剤の外部拡散の畏れが大きくなるが、特に請
求項5の動圧軸受装置によれば、回転時において潤滑剤
が移動して露出する動圧溝が固定部材側に形成されてい
るため、該動圧溝が回転部材側に形成されている場合に
比して、潤滑剤の界面の乱れが抑えられて気泡の抱き込
みが抑止されるようになり、回転時における潤滑剤の外
部拡散がより防止されるようになっている。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明を、所謂両端軸固定
型のHDDスピンドルモータに適用した実施形態につい
て図面により詳細に説明する。先ず、図1に示されたH
DDスピンドルモータの全体構造を説明すると、このH
DDスピンドルモータは、固定部材としてのステータ組
1と、このステータ組1に対して図示上側から組み付け
られた回転部材としてのロータ組2とから構成されてい
る。このうちステータ組1は、図示省略した固定基台側
にネジ止めされるフレーム11を有していると共に、こ
のフレーム11の略中央部分に立設された固定軸12
が、図示上方に向かって延在している。この固定軸12
の先端部(図示上端部)は、図示を省略した固定基台に
対して螺子止めされる。
【0026】また、上記フレーム11は、中空円筒状の
支持ホルダー13を有しており、この支持ホルダー13
の外周にステータコア14が嵌着されており、当該ステ
ータコア14の突極部に対して巻線15が巻回されてい
る。
【0027】一方、上記ロータ組2は、図示を省略した
所定の記録媒体を支持するためのハブ21を有してお
り、このハブ21は、当該ハブ21の中心部分に配置さ
れた一対のラジアル動圧軸受部22a,22bを介して
上記固定軸12の外周側に回転自在に支承されている。
【0028】上記ハブ21は、磁気ディスク等の磁気記
録媒体を外周部に装着する略円筒形状の胴部21aを有
していると共に、この胴部21aの内周側に、バックヨ
ーク21bを介して駆動マグネット21cが環状に装着
されている。この駆動マグネット21cは、前述したス
テータコア14の外周端面に対して環状に対向するよう
に近接配置されている。
【0029】また、上記一対のラジアル動圧軸受部22
a,22bは、ハブ21の内周側に当該ハブ21と一体
に形成されており、軸方向に所定間隔離して並列するよ
うに配置されている。これらの各ラジアル動圧軸受部2
2a,22bの内周面と、前記固定軸12の外周面と
は、数μmの隙間を介して対向配置されている。
【0030】そして、上記各ラジアル動圧軸受部22
a,22bと固定軸12との両対向面のうち、少なくと
も一方側には、図2に示されているようなヘリンボーン
形状のラジアル動圧発生用溝23a,23bが環状に並
列するように凹設されていると共に、上記両対向面間に
は、オイルや磁性流体等からなる所定の潤滑剤24が介
在されており、前記ハブ21の回転時に、ラジアル動圧
発生用溝23a,23bのポンピング作用によって潤滑
剤24が昇圧されて動圧が生じ、この潤滑剤24に生じ
させられた動圧によって、ハブ21がラジアル方向に軸
支持されるように構成されている。上記ラジアル動圧発
生用溝23a,23bのヘリンボーン形状については後
述する。
【0031】本実施形態における上記潤滑剤24として
は、当該潤滑剤24の寿命と良好な軸受特性とを両立し
得るように、トリメチロールプロパン(TMP)または
ペンタエリスリトール(PE)と、炭素数5〜18の直
鎖または分岐脂肪酸とをエステル化した構造のオイルが
使用されており、その中でも、特に蒸発率が10-7g/h
・cm2 (at40°C)以下で、粘度が30cP(at4
0°C)以下のオイルが用いられている。
【0032】なお、このような潤滑剤24を軸受内部に
注入するにあたっては、組立が完了したモータを一旦真
空室内に入れ、その真空引きした状態で毛細管力または
外部大気圧を利用して行う。このようにすれば、含有空
気率が低い状態で軸受内部全体に潤滑剤24を満たすこ
とが可能となる。
【0033】さらに、上記固定軸12の先端側(図示上
端側)の途中部分には、2つのスラスト動圧軸受部16
a,16bを構成するリング状のスラスト板16が固着
されている。このスラスト板16により構成される2つ
のスラスト動圧軸受部16a,16bは、図示上側に配
置されたラジアル動圧軸受部22aの図示上側に隣接す
るように配置されている。
【0034】すなわち、上記スラスト板16の図示下面
側は、図示上側に配置されているラジアル動圧軸受部2
2aの端面(図示上端面)に対面するように配置されて
いると共に、スラスト板16の図示上端面は、前記ハブ
21の中央部分に螺子止めされたスラスト押え板25の
端面(図示下端面)に対面するように配置されている。
【0035】また、上記スラスト板16とラジアル動圧
軸受部22aとの対向面同士の間、及びスラスト板16
とスラスト押え板25と対向面同士の間の各隙間部分に
は、上述したラジアル動圧軸受部22a,22b側の潤
滑剤24が連続するようにして充填されている。
【0036】上記スラスト動圧軸受部16bを構成する
スラスト板16の軸方向下端面には、図4に示されてい
るようなヘリンボーン形状のスラスト動圧発生用溝17
bが環状に形成されている。すなわち、下側のスラスト
動圧軸受部16bでは、図6上半部分に示されているよ
うに、一対の動圧発生用溝17b,17bにおける各半
径方向の長さLa,La同士が、実質的に同一の軸方向
長さにそれぞれ設定されている(実質的にLa=L
a)。すなわち、周速と面積との関係から内側の溝長の
方がやや長く形成されていはるものの、両者の中心側に
向かう加圧力がバランスするように実質的に同一の溝長
さに形成されている。
【0037】一方、上記スラスト動圧軸受部16aを構
成するスラスト板16の軸方向上端面には、図5に示さ
れているようなヘリンボーン形状のスラスト動圧発生用
溝17aが環状に形成されている。すなわち、上側のス
ラスト動圧軸受部16aでは、図6下半部分に示されて
いるように、一対の動圧発生用溝17a,17aのう
ち、半径方向内側の傾斜溝の半径方向長さLb1が、半
径方向外側の傾斜溝の半径方向長さLb2より実質的に
長く設定されており(実質的にLb1>Lb2)、この
ような半径方向に実質的に非対称な溝形状に形成されて
いることによって、半径方向内側の傾斜溝による加圧力
が、半径方向外側の傾斜溝による加圧力を上回り、従っ
て半径方向外方に向かう差圧P2(図7参照)を潤滑剤
24に生じさせるように構成されている。
【0038】そして、上記ハブ21の回転時に、スラス
ト動圧発生用溝17a,17bのポンピング作用によっ
て潤滑剤24が昇圧されて動圧が生じ、この潤滑剤24
に生じさせられた動圧によってハブ21がスラスト方向
に軸支持されるように構成されている。
【0039】この時、上記スラスト押え板25は、上述
した各動圧軸受部の組付後にハブ21に対して接合され
るが、前記潤滑剤24の充填部分に臨む接合部は、この
スラスト押え板25による接合部のみであって、潤滑剤
24の充填部分に対するその他の部位は一体に成形され
て密閉性を確保している。
【0040】このスラスト押え板25とハブ21との接
合部は、潤滑剤24の注入前に、接着剤によって完全密
閉構造となるように接合され、これによって潤滑剤24
に対する密閉性が良好に確保されている。この接合部に
充填される接着剤は、当該接合部に形成された環状案内
溝(図示省略)の毛細管力によって、接合部全周にわた
って切れ目なく連続的に充填されるようになっており、
これによって密閉構造が完全化される。
【0041】また、上記スラスト押え板25には、外側
(図示上側)から吸収布26を介して薄板状のストッパ
ー板27が設けられており、これら吸収布26及びスト
ッパー板27によって、最悪の場合でも、潤滑剤24の
外部飛散が防止されるようになっている。
【0042】上述した2つのラジアル動圧軸受部22
a,22b、及び2つのスラスト動圧軸受部16a,1
6bは、軸方向に延びる一連の軸受空間を画成するよう
に併設されており、これら4つの動圧軸受部16a,1
6b,22a,22bを含む軸受空間の軸方向両端部分
には、前記固定軸12と回転側の部材22b,25との
隙間を狭小にしてなる2箇所の毛細管シール部31a,
31bが、前記4つの動圧軸受部16a,16b,22
a,22bを軸方向両側から挟むように設けられてい
る。
【0043】これらの各毛細管シール部31a,31b
のうち、図示下側の毛細管シール部31bは、図示下側
に配置されたラジアル動圧軸受部22bの一部に設けら
れており、より具体的には、当該ラジアル動圧軸受部2
2bの軸方向外端部分(図示下端部分)の内周壁と、前
記固定軸12の外周面との隙間を狭小にすることによっ
て形成されている。従って、この図示下側の毛細管シー
ル部31bを構成する狭小隙間は、図示下側のラジアル
動圧軸受部22bの軸受部を構成する隙間に対して直接
的に連通されていると共に、この毛細管シール部31b
とラジアル動圧軸受部22bとの連通部分には、隙間を
拡大するような凹部は設けられていない。
【0044】一方、図示上側の毛細管シール部31a
は、スラスト動圧軸受部16aを構成するスラスト押え
板25と固定軸12との間の隙間により形成されてお
り、前述したスラスト押え板25の内周壁と固定軸12
の外周面との間の隙間を狭小にすることによって形成さ
れている。
【0045】これら図示上下両側の各毛細管シール部3
1a,31bは、当該毛細管シール部31a,31bを
構成する狭小隙間が図示上下の外方に開口するように軸
方向に沿って設けられている。そして、これらの各毛細
管シール部31a,31bの狭小隙間を構成するように
固定軸12側に各々対面しているスラスト押え板25の
内周壁、及び図示下側のラジアル動圧軸受部22bの内
周壁は、軸方向外方に向かって上記隙間の寸法を連続的
に拡大するように傾斜壁に形成されており、この連続的
に拡大している狭小隙間の寸法が、20μmから300
μmとなっている部位を毛細管シール部31a,31b
としている。また、これらの各毛細管シール部31a,
31bの外方部分には、潤滑剤24の外部拡散による漏
れを防止するための撥油が被着された部位がそれぞれ設
けられている。
【0046】前述したように、4つの動圧軸受部16
a,16b,22a,22bを含む上記2箇所の毛細管
シール部31a,31b同士の間の軸受空間部分には、
潤滑剤24が連続して充填されており、その潤滑剤24
の図示上下端における各液面位置が、モータ停止時にお
いては、図3及び図7中にそれぞれ実線A,Bで示され
ているように、各毛細管シール部31a,31bの内部
所定位置となるように設定されている。
【0047】また、モータ回転時においては、潤滑剤2
4の両液面のうち、図示上端側の液面の位置が、図7中
の破線A’で示されているように、図示上側の毛細管シ
ール部31a内に保持されていると共に、図示下端側の
液面位置は、図3中の破線B’で示されているように、
図示下側に配置されているラジアル動圧軸受部22b内
に引き込まれた位置に設定されている。このような潤滑
剤24の移動については後述する。
【0048】一方、上述したラジアル動圧軸受部22
a,22bにおけるヘリンボーン形状の各動圧発生用溝
23a,23bは、図2に示されているように、当該ラ
ジアル動圧軸受部22a,22bの軸方向両端部から中
心側で合流するようにして「く」の字状に延びる一対の
傾斜溝を環状に並列することにより構成されている。各
動圧発生用溝23a,23bを構成する各傾斜溝は、数
μmの溝深さに形成されており、軸方向両端側から中心
側に向かって潤滑剤24を加圧するようなっている。
【0049】この時、図示上側のラジアル動圧軸受部2
2aでは、図2に示されるように、一対の動圧発生用溝
23a,23a同士が、ほぼ同一の軸方向長さLaにそ
れぞれ設定されており、これによって図示上側の動圧発
生用溝23aによる図示下側方向への加圧力と、図示下
側の動圧発生用溝23aによる図示上側への加圧力とが
ほぼ等しくなって、軸方向両端側から中心側に向かう加
圧力がほぼバランスするように構成されている。
【0050】これに対して、軸方向における最外部分に
配置された図示下側のラジアル動圧軸受部22bでは、
図2に示されるように、一対の動圧発生用溝23b,2
3bのうち、軸方向外側(図示下側)の傾斜溝の軸方向
長さLb1が、軸方向内側(図示上側)の傾斜溝の軸方
向長さLb2より長く設定されている(Lb1>Lb
2)。すなわち、このような軸方向に非対称な溝形状に
形成されていることによって、図示下側の傾斜溝による
上方加圧力が、図示上側の傾斜溝による下方加圧力を上
回り、軸方向一方側(図示上側)に向かって所定の差圧
P1(図3参照)を潤滑剤24に生じさせる構造になさ
れている。
【0051】このように軸受空間内に一連に充填されて
いる潤滑剤24には、ラジアル動圧軸受部22bにより
生じる差圧P1と、上述したスラスト動圧軸受部16a
により生じる差圧P2とが作用することになるが、本実
施形態では、ラジアル動圧軸受部22bによる差圧P1
とスラスト動圧軸受部16aによる差圧P2との差圧差
(P1−P2)が、(P1−P2)>0となるように、
上記ラジアル動圧発生用溝23b及びスラスト動圧発生
用溝17aの形状が決定されている。
【0052】従って、潤滑剤24は、P1>P2により
図示上側に向かって移動して偏位することとなるが、こ
の潤滑剤24の移動方向下流側(図示上側)の毛細管シ
ール部31aは、図7に示されているように、潤滑剤2
4の移動による偏位分を許容する隙間内容量に設定され
ており、上述したように、モータ回転時においても潤滑
剤24の液面位置が毛細管シール部31a内に保持され
るようになっている(図7中の破線A’参照)。
【0053】より具体的には、この潤滑剤24の移動方
向下流側(図示上側)の毛細管シール部31aは、0.
5mm以上の軸方向長さに設定されていると共に、当該
毛細管シール部31aの隙間内容量または軸方向長さ
が、潤滑剤24の移動により当該潤滑剤24が減少する
側(図示下側)の毛細管シール部31bの隙間内容量ま
たは軸方向長さの3倍以上に設定されている。また、こ
の潤滑剤24の移動による当該潤滑剤24の偏位分を許
容する側の毛細管シール部31aにおける隙間寸法は、
潤滑剤24の移動により当該潤滑剤24が減少する側の
毛細管シール部31bの実質的な隙間寸法、すなわちラ
ジアル動圧軸受部22bにおける動圧発生用溝23bを
含めた隙間寸法より大きく設定されている。これは、潤
滑剤24の注入量の増減に対する余裕を持たせると共
に、潤滑剤24の移動や蒸発による潤滑剤24の減少に
対して量的な余裕を持たせるためである。
【0054】一方、前述したように、潤滑剤24の移動
方向上流側(図示下側)の毛細管シール部31bは、ラ
ジアル動圧軸受部22bの軸方向外端部分(図示下端部
分)に設けられているため、潤滑剤24が上述した差圧
により図示上側に向かって移動して偏位した際には、図
3中の破線B’で示されているように、当該図示下側の
毛細管シール部31b内の潤滑剤24の全部が消失し、
且つラジアル動圧軸受部22b内の潤滑剤24における
図示下側の一部が消失するように構成されている。
【0055】より具体的には、ハブ21が回転したとき
の上述した差圧による潤滑剤24の移動により、図示下
側の動圧発生用溝23bの軸方向長さLb1の約1/4
の長さにわたって潤滑剤24が枯渇し、図示下側の動圧
発生用溝23bに残された潤滑剤24の軸方向長さLb
3が、図示上側の動圧発生用溝23bの軸方向長さLb
2とほぼ等しくなる位置まで液面が上昇する。そして、
潤滑剤が枯渇した分、図示下側の動圧発生用溝23bで
発生する動圧力が低下して差圧が解消するようになって
いる。
【0056】また、この軸方向最外部に配置されている
図示下側のラジアル動圧軸受部22bは、潤滑剤24が
枯渇・消失する部位に、当該部位における隙間を他の部
位の隙間より大きくする窪み部28が形成されており、
この窪み部28によって、潤滑剤24の枯渇・消失時に
おいても、衝撃等による急激な大負荷力によってラジア
ル動圧軸受部22bの内周面が固定軸12の外周面に接
触することのないように構成されている。この窪み部2
8としては、図3に示されているような段部形状とし
て、隙間を2μm程度大きしたものや、テーパ形状とし
て最外端部における隙間を0.5μmないし3μm程度
大きくなるようにしたもの等が考えられる。
【0057】図1に戻って、上述した図示上側の毛細管
シール部31aの軸方向外側(図示上側)には、当該毛
細管シール部31aに対して軸方向に連続するようにし
て潤滑剤注入部32が設けられている。この潤滑剤注入
部32は、毛細管シール部31aを構成している狭小隙
間に連続する拡大隙間からなっており、前記固定軸12
側に対面しているスラスト押え板25の内周壁を、毛細
管シール部31aを構成している傾斜壁よりもさらに大
きい開角で傾斜させることによって形成されている。
【0058】この潤滑剤注入部32を構成する傾斜壁
は、軸方向に向かって潤滑剤24が良好に進入して行く
ように、70度以下の開角に形成されていると共に、当
該潤滑剤注入部32の軸方向最外端における隙間が40
0μm以上となるように設定されている。また、この潤
滑剤注入部32の隙間内容量は、前述した2つの毛細管
シール部31a,31b同士の間を結ぶ軸受空間の内容
量より大きく設定されており、これによって、潤滑剤2
4の全量を、一旦、潤滑剤注入部32内に注入すること
ができ、以後は毛細管力によって内部側(図示下側)に
案内されていき、大気開放によって軸受空間の全長に渡
って潤滑剤24が満たされるようになっている。
【0059】また、前述したラジアル動圧軸受部22
a,22b同士の軸方向間部分には、内周面を窪ませる
ことによって固定軸12との隙間を拡大してなる潤滑剤
溜り部33が設けられている。本実施形態における潤滑
剤溜り部33の隙間寸法は、ラジアル動圧軸受部22
a,22bにおける軸受隙間寸法の3倍以上または40
μm以上に設定されている。これは、軸受部に対して潤
滑剤24に量的余裕をもたせるように一定量以上の潤滑
剤24を潤滑剤溜り部33内に確保して長寿命化を図る
ためである。
【0060】また、前述したスラスト板16の外周面と
この外周面に対向するハブ21の内周面との間にも潤滑
剤溜り部X1(図1参照)が形成されており、また図示
下側のスラスト軸受部16bと図示上側のラジアル軸受
部22aとの境界部にも潤滑剤溜り部X2(図7参照)
が形成されている。すなわち、本実施形態の動圧軸受装
置では、2つのスラスト軸受部16a,16bと、2つ
のラジアル軸受部22a,22bと、3つの潤滑剤溜り
部33,X1,X2と、を備えている。
【0061】このような実施形態装置によれば、先ず潤
滑剤24の液面位置が、固定軸12と回転側部材25,
22bとの間の狭隙間からなる毛細管シール部31a,
31b内に存在するため、回転時には勿論停止時におい
ても毛細管シール力が常時働く状態になっており、この
毛細管シール力に基づく引戻力によって、潤滑剤24が
内部側の所定位置に保持される。
【0062】一方、大きな慣性力が負荷された場合に
は、潤滑剤24の流体粘性抵抗による動圧力が狭隙間か
らなる毛細管シール部31a,31bに生じ、その潤滑
剤24の流体粘性抵抗による動圧力が保持力の主となっ
て、潤滑剤24の外部拡散が防止される。
【0063】回転時においては、ラジアル動圧軸受部2
2bで潤滑剤24に対して差圧P1が意図的に生じさせ
られると共に、スラスト動圧軸受部16aで潤滑剤24
に対して上記差圧P1に対向する差圧P2が意図的に生
じさせられ、この潤滑剤24の差圧差(P1−P2)を
解消するように潤滑剤24の移動が僅かに行われて平衡
状態になされる。すなわち、毛細管シール部31aでは
潤滑剤24の界面がA→A’に移動し、毛細管シール部
31bでは潤滑剤24の界面がB→B’に移動し、この
ようなバランスによって回転時における潤滑剤24の外
部拡散が防止される。
【0064】このバランスは、最外端の一方に位置する
スラスト動圧軸受部16aのスラスト動圧発生用溝17
aによる潤滑剤24の他の軸受部側(潤滑剤溜り部33
側)に向かう加圧力と、最外端の他方に位置するラジア
ル動圧軸受部22bのラジアル動圧発生用溝23bによ
る潤滑剤24の他の軸受部側(潤滑剤溜り部33側)に
向かう加圧力と、の互いに押し合う加圧力の均衡により
とられるため、上記3つの潤滑剤溜り部33,X1,X
2は、全て加圧されることになる。従って、これら潤滑
剤溜り部33,X1,X2においては、潤滑剤24に溶
け込んでいた空気が分離・気化することはなく体積膨張
が行われずに、回転時における潤滑剤24の外部拡散
が、より防止されることになる。
【0065】さらに、潤滑剤24の移動方向下流側の毛
細管シール部31aが、潤滑剤24の差圧差による移動
による偏位分を許容する隙間内容量に設定されているた
め、潤滑剤24の漏れが防止される。
【0066】また、当該発明による毛細管シール部31
a,31bは、傾斜面による簡易な構成を有しているた
め、製作の容易化が図られ生産性が向上される。
【0067】なお、本実施形態では、ラジアル動圧発生
用溝を、固定軸12と回転側部材22a,22bとの両
対向面のうち、少なくとも一方側に設けるようにしてい
るが、特に図示下側のラジアル動圧発生用溝23bに関
しては、固定軸12に設けるのがより好ましい。
【0068】これは、ラジアル動圧発生用溝23bが回
転側部材22bに設けられていると、回転時において潤
滑剤24が上述のように図示上方に移動して該ラジアル
動圧発生用溝23bの図示下部が一部露出した時に、こ
の露出したラジアル動圧発生用溝23bが回転すること
によって該露出したラジアル動圧発生用溝23bを介し
てエアーが送り出され、この送り出されたエアー及び凹
凸を有し露出して回転する動圧発生用溝23bにより潤
滑剤24の界面が乱れて気泡を抱き込みやすくなって該
気泡が潤滑剤溜り部33に溜り、その結果体積膨張が行
われて、回転時における潤滑剤の外部拡散の畏れが大き
くなるが、該ラジアル動圧発生用溝23bが固定軸12
に設けられていれば、回転時において潤滑剤24が移動
して該ラジアル動圧発生用溝23bの一部が露出しても
該ラジアル動圧発生用溝23bが上記回転側部材22b
に設けられている場合に比して、潤滑剤24の界面の乱
れが抑えられて気泡の抱き込みが抑止され、回転時にお
ける潤滑剤24の外部拡散を防止できるからである。因
に、回転時において潤滑剤24が移動して露出するラジ
アル動圧発生用溝23bを固定軸12側に設けるように
すれば、他の動圧発生用溝、すなわち回転時において潤
滑剤24より露出しない動圧発生用溝23a,17a,
17bは、固定部材側、回転部材側の何れに設けるよう
にしても良い(両方でも可)。
【0069】なお、上記差圧差(P1−P2)<0とす
れば、潤滑剤24が図示下側に移動して平衡がとられる
ため、図示下側のラジアル動圧発生用溝23bが露出す
ることはなく、従ってこのような場合にあっては、ラジ
アル動圧発生用溝23bが回転側部材22a,22bに
設けられていても、気泡発生の畏れは低減されることに
なる。一方、この潤滑剤24の移動により潤滑剤24の
界面位置は下がって、図示上側のスラスト動圧軸受部1
6aに位置することになり、当該位置での潤滑剤24の
界面にスラスト動圧発生用溝17aによる気泡混入の畏
れが生じるが、このような気泡が多少生じても強い求心
力(遠心力を受けた潤滑剤24が比重の軽い気泡を内側
に押しやる力)の作用によって該気泡が大気に開放され
ることになるため問題はない。
【0070】因に、上記スラスト動圧軸受部16aの動
圧発生用溝17aを意図的に外周に向かって潤滑剤24
を加圧しない形状、すなわち図4に示したように中心側
に向かう加圧力がバランスするような形状とした場合に
は、溝加工の誤差等により一対の傾斜溝17a,17a
のうちの何れか一方側(内側若しくは外側)が長くなっ
必ず何れか一方側(内周側若しくは外周側)に潤滑剤
24を加圧する形状となってしま。ここで、この加工
誤差により、溝形状が、本実施形態と同様な外周側に加
圧する形状となった場合(一対の傾斜溝17a,17a
のうちの内側が長くなった場合)には問題はないが、内
周側に加圧する形状となった場合(一対の傾斜溝17
a,17aのうちの外側が長くなった場合)には、潤滑
剤24が上述したと同様に平衡した時に、潤滑剤溜り部
33,X1,X2が負圧となることがあるので問題とな
る。従って、該潤滑剤溜り部33,X1,X2を正圧に
するには、本実施形態のように、スラスト動圧軸受部1
6aの動圧発生用溝17aを意図的に外周に向かって潤
滑剤24を加圧する形状とする必要がある。勿論、下側
のラジアル動圧軸受部22bの動圧発生用溝23bも、
意図的に上側に向かって潤滑剤24を加圧する形状とす
る必要がある。なお、上記スラスト動圧軸受部16bの
動圧発生用溝17b、ラジアル動圧軸受部22aの動圧
発生用溝23aも、加工誤差等により、何れか一方側に
潤滑剤24を加圧する形状となってしまうが、この加圧
力は、上述した意図的に生ぜしめられた差圧P1,P2
に比して小さいため無視できる。
【0071】一方、図8に示されている実施形態は、軸
方向に併設された2つのラジアル軸受部42a,42b
を有する動圧軸受装置に対して本発明を適用したもので
あって、軸部材40と円筒状部材41とが、2つのラジ
アル軸受部42a,42bを介して相対回転可能に支承
されている。
【0072】上記2つのラジアル軸受部42a,42b
は、円筒状部材41側に固定されており、各ラジアル動
圧軸受部42a,42bと軸部材40との両対向面のう
ち、少なくとも一方側(上述したように、より好ましく
は固定部材側)には、例えば図示展開図のようなヘリン
ボーン形状のラジアル動圧発生用溝43a,43bが環
状に並列するように凹設されていると共に、上記両対向
面間には、オイルや磁性流体等からなる所定の潤滑剤4
4が介在されている。
【0073】すなわち、上記2つのラジアル動圧軸受部
42a,42bは、軸方向に延びる一連の軸受空間を画
成するように併設されており、これら2つのラジアル動
圧軸受部42a,42bを含む軸受空間の軸方向両端部
分には、当該ラジアル動圧軸受部42a,42bと軸部
材40との隙間を狭小にしてなる2箇所の毛細管シール
部45a,45bが、前記2つのラジアル動圧軸受部4
2a,42bを軸方向両側から挟むように設けられてい
る。
【0074】すなわち、上記各毛細管シール部45a,
45bは、図示上下にそれぞれ配置された各ラジアル動
圧軸受部42a,42bの一部に設けられており、従っ
て、これらの各毛細管シール部45a,45bを構成す
る狭小隙間は、各ラジアル動圧軸受部42a,42bの
軸受部を構成する隙間に対して直接的に連通されている
と共に、各毛細管シール部45a,45bとラジアル動
圧軸受部42a,42bとの連通部分には、隙間を拡大
するような凹部は設けられていない。
【0075】これら図示上下両側の各毛細管シール部4
5a,45bは、当該毛細管シール部45a,45bを
構成する狭小隙間が図示上下の外方に開口するように軸
方向に沿って設けられている。そして、これらの各毛細
管シール部45a,45bの狭小隙間を構成するように
軸部材40側に各々対面しているラジアル動圧軸受部4
2a,42bの内周壁は、軸方向外方に向かって隙間寸
法を連続的に拡大する傾斜壁に形成されている。
【0076】前述したように、2つのラジアル動圧軸受
部42a,42bを含む上記2箇所の毛細管シール部4
5a,45b同士の間の軸受空間部分には、潤滑剤44
が連続して充填されており、その潤滑剤44の図示上下
端における各液面位置が、停止時においては、図中にそ
れぞれ実線A,Bで示されているように、各毛細管シー
ル部45a,45bの内部所定位置となるように設定さ
れている。
【0077】上記図示上側のラジアル動圧軸受部42a
では、一対の動圧発生用溝43a,43aのうち、軸方
向外側(図示上側)の傾斜溝の軸方向長さLa1が、軸
方向内側(図示下側)の傾斜溝の軸方向長さLa2より
長く設定されている(La1>La2)。すなわち、こ
のような軸方向に非対称な溝形状に形成されていること
によって、図示上側の傾斜溝による下方加圧力が、図示
下側の傾斜溝による上方加圧力を上回り、軸方向一方側
(図示下側)に向かって所定の差圧P3を潤滑剤44に
生じさせる構造になされている。
【0078】一方、図示下側のラジアル動圧軸受部42
bでは、一対の動圧発生用溝43b,43bのうち、軸
方向外側(図示下側)の傾斜溝の軸方向長さLb1が、
軸方向内側(図示上側)の傾斜溝の軸方向長さLb2よ
り長く設定されている(Lb1>Lb2)。すなわち、
このような軸方向に非対称な溝形状に形成されているこ
とによって、図示下側の傾斜溝による上方加圧力が、図
示上側の傾斜溝による下方加圧力を上回り、軸方向一方
側(図示上側)に向かって所定の差圧P4を潤滑剤44
に生じさせる構造になされている。
【0079】このように軸受空間内に一連に充填されて
いる潤滑剤44には、図示上側のラジアル動圧軸受部4
2aにより生じる差圧P3と、図示下側のラジアル動圧
軸受部42bにより生じる差圧P4とが作用することに
なるが、本実施形態では、ラジアル動圧軸受部42bに
よる差圧P4とラジアル動圧軸受部42aによる差圧P
3との差圧差(P4−P3)が、(P4−P3)>0と
なるように、上記ラジアル動圧発生用溝43b,43a
の形状が決定されている。
【0080】また、ラジアル動圧軸受部42a,42b
同士の軸方向間部分には、先の実施形態と同様な潤滑剤
溜り部46が設けられている。
【0081】従って、回転時においては、上記差圧差
(P4−P3)を解消するように潤滑剤44が僅かに図
示上方に移動して、潤滑剤44の両液面のうち、図示上
端側の液面の位置が、図中の破線A’で示されているよ
うに、図示上側の毛細管シール部45a内に保持される
と共に、図示下端側の液面位置は、図中の破線B’で示
されているように、図示下側に配置されているラジアル
動圧軸受部42b内に引き込まれた位置に引き込まれて
バランスがとられる。
【0082】このバランスは、最外端の一方に位置する
ラジアル動圧軸受部4aのラジアル動圧発生用溝43
aによる潤滑剤44の他方のラジアル動圧軸受部42b
側(潤滑剤溜り部46側)に向かう加圧力と、最外端の
他方に位置するラジアル動圧軸受部42bのラジアル動
圧発生用溝43bによる潤滑剤44の他方のラジアル動
圧軸受部42a側(潤滑剤溜り部46側)に向かう加圧
力と、の互いに押し合う加圧力の均衡によりとられるた
め、該潤滑剤溜り部46は加圧されることになり、この
潤滑剤溜り部46においては、潤滑剤44に溶け込んで
いた空気が分離・気化することはなく体積膨張が行われ
ずに、回転時における潤滑剤44の外部拡散が防止され
るようになっている。
【0083】また、上記差圧差(P4−P3)により潤
滑剤44は図示上側に向かって移動して偏位することと
なるが、この潤滑剤44の移動方向下流側(図示上側)
の毛細管シール部45aは、潤滑剤44の移動による偏
位分を許容する隙間内容量に設定されている。従って上
述したように、回転時においても、潤滑剤44の図示上
端側の液面位置は毛細管シール部45a内に保持される
(図8中の破線A’参照)。
【0084】一方、前述したように、潤滑剤44の移動
方向上流側(図示下側)の毛細管シール部45bは、ラ
ジアル動圧軸受部42bの軸方向外端部分(図示下端部
分)に設けられているため、潤滑剤44が上述した差圧
差により図示上側に向かって移動して偏位した際には、
図8中の破線B’で示されているように、当該図示下側
の毛細管シール部45b内の潤滑剤44の全部が消失
し、且つラジアル動圧軸受部42b内の潤滑剤44にお
ける図示下側の一部が消失するように構成されている。
そして、潤滑剤44が枯渇した分、図示下側の動圧発生
用溝43bで発生する動圧力が低下して差圧が解消す
る。このような実施形態装置においても、上述した実施
形態と同様な作用・効果を得ることができる。なお、先
の実施形態で説明したように、回転時において潤滑剤4
4が移動して露出するラジアル動圧発生用溝43bを固
定部材側に設けるようにすれば、気泡の抱き込みを抑止
でき、回転時における潤滑剤44の外部拡散をより防止
できることになる。勿論、この実施形態にあっても、他
の動圧発生用溝すなわちラジアル動圧発生用溝43a
は、固定部材側、回転部材側の何れに設けるようにして
も良い(両方でも可)。
【0085】また、図9に示されている実施形態は、軸
方向に併設された2つのスラスト軸受部52a,52b
を有する動圧軸受装置に対して本発明を適用したもので
あって、軸部材50と円筒状部材51とが、上記2つの
スラスト軸受部52a,52bを構成するスラスト板5
2を介して相対回転可能に支承されている。
【0086】上記2つのスラスト軸受部52a,52b
を構成するスラスト板52は、軸部材50側に対して一
体に固定されており、各スラスト動圧軸受部52a,5
2bと円筒状部材との両対向面のうち、少なくとも一方
側には、例えば図5に示したようなヘリンボーン形状の
スラスト動圧発生用溝17aが環状に並列するように凹
設されていると共に、上記両対向面間には、オイルや磁
性流体等からなる所定の潤滑剤54が介在されている。
【0087】すなわち、各スラスト動圧軸受部52a,
52bでは、図5及び図6下半分に示されるように、一
対の動圧発生用溝17a,17aのうち、半径方向内側
の傾斜溝の半径方向長さLb1が、半径方向外側の傾斜
溝の半径方向長さLb2より実質的に長く設定されてお
り(実質的にLb1>Lb2)、このような半径方向に
実質的に非対称な溝形状に形成されていることによっ
て、半径方向内側の傾斜溝による加圧力が、半径方向外
側の傾斜溝による加圧力を上回り、従って図示上側のス
ラスト動圧軸受部52aでは半径方向外方に向かう差圧
P5を潤滑剤54に生じさせ、図示下側のスラスト動圧
軸受部52bでは半径方向外方に向かう差圧P6を潤滑
54に生じさせるように構成されている。
【0088】このように軸受空間内に一連に充填されて
いる潤滑剤54には、図示上側のスラスト動圧軸受部5
2aにより生じる差圧P5と、図示下側のスラスト動圧
軸受部52bにより生じる差圧P6とが作用することに
なるが、本実施形態では、差圧P6と差圧P5との差圧
差(P6−P5)が、(P6−P5)>0となるよう
に、上記各スラスト動圧発生用溝の形状が決定されてい
る。
【0089】また、上記2つのスラスト動圧軸受部52
a,52bは、軸方向に所定間隔離して設けられている
が、これら2つのスラスト動圧軸受部52a,52b同
士は、一連の軸受空間を断面コの字状に画成するように
併設されており、当該両スラスト動圧軸受部52a,5
2bを含む軸受空間の両端部分には、前記円筒状部材5
1とスラスト板52との隙間を狭小にしてなる2箇所の
毛細管シール部55a,55bが設けられている。
【0090】これらの各毛細管シール部55a,55b
は、各スラスト動圧軸受部52a,52bの最内周部分
にそれぞれ設けられており、スラスト板52の内周部分
と、円筒状部材51の内周部分との間の軸方向隙間を狭
小にすることによって形成されている。従って、これら
の各毛細管シール部55a,55bを構成する狭小隙間
は、各スラスト動圧軸受部52a,52bの軸受部を構
成する隙間に対して直接的に連通されていると共に、各
毛細管シール部55a,55bとスラスト動圧軸受部5
2a,52bとの連通部分には、隙間を拡大するような
凹部は設けられていない。
【0091】これら図9における上下両側の各毛細管シ
ール部55a,55bは、当該毛細管シール部55a,
55bを構成する狭小隙間が内周側に開口するように設
けられている。そして、これらの各毛細管シール部55
a,55bの狭小隙間を構成するようにスラスト板52
に対面している円筒状部材51の内周側壁は、内周側に
向かって隙間寸法を連続的に拡大する傾斜壁に形成され
ている。
【0092】前述したように、2つのスラスト動圧軸受
部52a,52bを含む上記2箇所の毛細管シール部5
5a,55b同士の間の軸受空間部分には、潤滑剤54
が連続して充填されており、その潤滑剤54の両端にお
ける各液面位置が、停止時においては、図9中にそれぞ
れ実線A,Bで示されているように、各毛細管シール部
55a,55bの内部所定位置となるように設定されて
いる。
【0093】また、スラスト動圧軸受部52a,52b
同士の間の部分、すなわちスラスト板52の外周面とこ
の外周面に対向する円筒状部材51との間には、先の実
施形態と同様な潤滑剤溜り部57が設けられている。
【0094】従って、回転時においては、上記差圧差
(P6−P5)を解消するように潤滑剤54が僅かに移
動して、潤滑剤54の両液面のうち、図示上端側の液面
の位置が、図中の破線A’で示されているように、図示
上側の毛細管シール部55a内に保持されると共に、図
示下端側の液面位置は、図中の破線B’で示されている
ように、図示下側に配置されているスラスト動圧軸受部
52b内に引き込まれた位置に引き込まれてバランスが
とられる。
【0095】このバランスは、最外端の一方に位置する
スラスト動圧軸受部52aによる潤滑剤54の他方のス
ラスト動圧軸受部52b側(潤滑剤溜り部57側)に向
かう加圧力と、最外端の他方に位置するスラスト動圧軸
受部52bによる潤滑剤54の他方のスラスト動圧軸受
部52a側(潤滑剤溜り部57側)に向かう加圧力と、
の互いに押し合う加圧力の均衡によりとられるため、該
潤滑剤溜り部57は加圧されることになり、この潤滑剤
溜り部57においては、潤滑剤54に溶け込んでいた空
気が分離・気化することはなく体積膨張が行われずに、
回転時における潤滑剤54の外部拡散が防止されるよう
になっている。
【0096】また、このようにスラスト動圧軸受部52
a,52bによって潤滑剤54に生じさせられる差圧差
(P6−P5)により、潤滑剤54は毛細管シール部5
2b側から52a側に向かって移動して偏位することと
なるが、この潤滑剤54の移動方向下流側(図9上側)
の毛細管シール部55aは、潤滑剤54の移動による偏
位分を許容する隙間内容量に設定されている。従って上
述したように、回転時においても、潤滑剤54の図9上
側の液面位置は毛細管シール部55a内に保持される
(図9中の破線A’参照)。
【0097】一方、前述したように、潤滑剤54の移動
方向上流側(図9下側)の毛細管シール部55bは、ス
ラスト動圧軸受部52bの内周側部分に設けられている
ため、潤滑剤54が上述した差圧差により移動して偏位
した際には、図9中の破線B’で示されているように、
当該図9下側の毛細管シール部55b内の潤滑剤54の
全部が消失し、且つスラスト動圧軸受部52b内の潤滑
剤54における内周側の一部が消失するように構成され
ている。そして、潤滑剤54が枯渇した分、図9下側の
動圧発生用溝53bで発生する動圧力が低下して差圧が
解消するようになっている。このような実施形態装置に
おいても、上述した実施形態装置と同様な作用・効果を
得ることができる。なお、先の実施形態で説明したよう
に、回転時において潤滑剤54が移動して露出する図示
下側のスラスト動圧発生用溝(スラスト動圧軸受部52
b側のスラスト動圧発生用溝)を固定部材側に設けるよ
うにすれば、気泡の抱き込みを抑止でき、回転時におけ
る潤滑剤54の外部拡散をより防止できることになる。
勿論、この実施形態にあっても、他の動圧発生用溝、す
なわち図示上側のスラスト動圧発生用溝(スラスト動圧
軸受部52a側のスラスト動圧発生用溝)は、固定部材
側、回転部材側の何れに設けるようにしても良い(両方
でも可)。
【0098】以上、本発明者によってなされた発明の実
施形態を具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に
限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で
種々変形可能であるというのはいうまでもない。
【0099】例えば、図10(a)に示されているよう
に、スラスト動圧軸受部を構成するスラスト板66を、
2つのラジアル動圧軸受部62a,62bの軸方向間部
分に配置し、図示上側のラジアル動圧発生用溝を図8に
示した図示上側のラジアル動圧発生用溝と同様な形状に
して図示下側に向かう差圧P7を生ぜしめると共に、図
示下側のラジアル動圧発生用溝を図8に示した図示下側
のラジアル動圧発生用溝と同様な形状にして図示上側に
向かう差圧P8を生ぜしめ、且つ差圧差(P8−P7)
>0となるように構成し、且つ潤滑剤の移動方向下流側
(図示上側)の毛細管シール部65aの隙間内容量を、
潤滑剤の移動による偏位分を許容する容量に設定する構
成とすることも可能である。
【0100】また、例えば図10(b)に示されている
ように、スラスト動圧軸受部を構成するスラスト板66
を、上述した第1の実施形態とは反対側である図示下側
のラジアル動圧軸受部62bに隣接して配置し、図示上
側のラジアル動圧発生用溝を図8に示した図示上側のラ
ジアル動圧発生用溝と同様な形状にして図示下側に向か
う差圧P9を生ぜしめると共に、図示下側のラジアル動
圧発生用溝を図8に示した図示下側のラジアル動圧発生
用溝と同様な形状にして図示上側に向かう差圧P10を
生ぜしめ、且つ差圧差(P9−P10)>0となるよう
に構成し、且つ潤滑剤の移動方向下流側(図示下側)の
毛細管シール部65bの隙間内容量を、潤滑剤の移動に
よる偏位分を許容する容量に設定する構成とすることも
可能である。
【0101】また、本発明を適用する動圧発生用溝は、
上述した実施形態におけるようなヘリングボーン形状の
ものに限定されることはなく、その他のあらゆる形状の
動圧発生用溝に対しても本発明は同様に適用することが
できる。
【0102】さらに、上述した実施形態は、いわゆる軸
固定型のモータに対して本発明を適用したものである
が、軸回転型のモータに対しても本発明は同様に適用す
ることができる。
【0103】さらにまた本発明は、上述したHDDモー
タ以外に用いられる動圧軸受装置に対しても同様に適用
することができる。
【0104】
【発明の効果】以上述べたように本発明は、固定部材と
回転部材との間の狭い隙間からなる毛細管シール部を軸
受空間の両端側に設けることによって、本来の毛細管力
による引戻し力に加えて、大きな慣性力が負荷された場
合に潤滑剤の流体粘性抵抗による動圧力によって潤滑剤
の外部拡散を防止すると共に、動圧軸受部で潤滑剤に対
して意図的に差圧を生じさせ、この潤滑剤の差圧を解消
するように潤滑剤を僅かに移動させることによってバラ
ンス状態として、これにより回転時における潤滑剤の外
部拡散を防止し、さらに潤滑剤の差圧を解消するように
潤滑剤の移動が僅かに行われて平衡状態になされた時、
最外端に位置する各動圧軸受部の動圧溝により、該最外
端に位置する両動圧軸受部の間の軸受空間(潤滑剤溜り
部)を潤滑剤により加圧し、この軸受空間において潤滑
剤に溶け込んでいた空気を分離・気化させずに体積膨張
が行われないようにして回転時における潤滑剤の外部拡
散をより防止し、加えて、毛細管シール部の隙間内容量
を潤滑剤の移動による偏位分を許容する容量に設定する
ことによって潤滑剤の漏れを防止し、且つこのような漏
れ防止作用を有する毛細管シール部を、簡易な傾斜面に
より構成することによって製作の容易化を図るように構
成したものであるから、簡易で低コストな構造で、潤滑
剤漏れを良好に防止しつつ長寿命化を図ることができ、
しかも動圧軸受装置の適用性を拡大することができ、動
圧軸受装置の信頼性を飛躍的に向上させることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における動圧軸受装置を備
えたHDDスピンドルモータを表した横断面図である。
【図2】ラジアル動圧発生用溝を表した正面展開図であ
る。
【図3】下側の毛細管シール部の構造を表した部分拡大
横断面図である。
【図4】下側のスラスト動圧発生用溝を表した平面図で
ある。
【図5】上側のスラスト動圧発生用溝を表した平面図で
ある。
【図6】下側、上側のスラスト動圧発生用溝の具体的な
寸法形状を上半分、下半分でそれぞれ分けて表した平面
説明図である。
【図7】上側の毛細管シール部の構造を表した部分拡大
横断面図である。
【図8】2つのラジアル動圧軸受部を有する動圧軸受装
置に本発明を適用した実施形態を表した半横断面図であ
る。
【図9】2つのスラスト動圧軸受部を有する動圧軸受装
置に本発明を適用した実施形態を表した半横断面図であ
る。
【図10】動圧軸受部の配置関係を変更した場合を模式
的に示した半横断面図である。
【符号の説明】
12 固定部材 16a,16b,52a,52b スラスト動圧軸受部 17a,17b スラスト動圧発生用溝 21 回転部材 22a,22b,42a,42b,62a,62b ラ
ジアル動圧軸受部 23a,23b,43a,43b ラジアル動圧発生用
溝 24,44,54 潤滑剤 31a,31b,45a,45b,55a,55b,6
5a,65b 毛細管シール部 33,46,57,X1,X2 最外端に位置する両動
圧軸受部の間の軸受空間(潤滑剤溜り部) P1,P2〜P10 差圧
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 早川 正通 長野県諏訪郡下諏訪町5329番地 株式会 社三協精機製作所内 (56)参考文献 特開 平3−272318(JP,A) 特開 平8−152024(JP,A) 特開 昭63−106419(JP,A) 特開 昭61−2914(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16C 17/00 - 17/26 F16C 33/00 - 33/28

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 固定部材に対して回転部材を回転可能に
    支承する少なくとも2つの動圧軸受部が一連の軸受空間
    を画成し、この動圧軸受部を構成する固定部材及び回転
    部材の少なくとも一方側に、前記軸受空間内に充填され
    た潤滑剤に動圧を発生させる動圧溝が設けられた動圧軸
    受装置において、 前記軸受空間の両端部分には、前記固定部材と回転部材
    との間の隙間を狭小にしてなる毛細管シール部がそれぞ
    れ設けられていると共に、 前記潤滑剤は、前記動圧軸受部を含む両毛細管シール部
    同士の間の軸受空間内に連続して充填され、且つ前記少
    なくとも2つの動圧軸受部のうち、最外端に位置する各
    動圧軸受部の動圧溝は、前記軸受空間の一方側に向かう
    所定の差圧を前記潤滑剤に生じさせるような形状にそれ
    ぞれ形成されると共に、前記差圧が解消されて平衡した
    状態で、前記最外端に位置する両動圧軸受部の間の軸受
    空間が前記潤滑剤により加圧されるような形状にそれぞ
    れ形成されたものであって、 前記少なくとも2つの動圧軸受部のうち、最外端に位置
    する各動圧軸受部の動圧溝は、該最外端に位置する両動
    圧軸受部の間の軸受空間に向かう差圧を潤滑剤に生じさ
    せるような形状にそれぞれ形成されると共に、この両差
    圧の差を所定の差圧として前記潤滑剤が軸受空間の一方
    側に移動して平衡した状態で、前記両動圧軸受部の間の
    軸受空間が前記潤滑剤により加圧されるような形状にそ
    れぞれ形成され、 前記両毛細管シール部のうち、潤滑剤の移動方向下流側
    の毛細管シール部の隙間内容量は、潤滑剤の移動による
    変位分を許容する量に設定され ていることを特徴とする
    動圧軸受装置。
  2. 【請求項2】 動圧軸受部は、2つのラジアル軸受部
    と、2つのスラスト軸受部と、を有し、 これら4つの軸受部のうち、最外端に位置する各動圧軸
    受部の動圧溝が、軸受空間の一方側に向かう所定の差圧
    を潤滑剤に生じさせるような形状にそれぞれ形成される
    と共に、前記差圧が解消されて平衡した状態で、前記最
    外端に位置する両動圧軸受部の間の軸受空間が前記潤滑
    剤により加圧されるような形状にそれぞれ形成されてい
    ることを特徴とする請求項1記載の動圧軸受装置。
  3. 【請求項3】 回転時において潤滑剤が移動して露出す
    る動圧溝は、固定部材側に形成されていることを特徴と
    する請求項1又は2の何れか一つに記載の動圧軸受装
    置。
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