JP3491007B2 - 袋詰め味噌の膨れ防止及び味噌中の芽胞菌増殖抑制製剤 - Google Patents
袋詰め味噌の膨れ防止及び味噌中の芽胞菌増殖抑制製剤Info
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Description
い作用を及ぼす雑菌類のうち最も一般的なBacill
us subtilisの増殖を抑制し、味噌の包装製
品の膨れの原因とされるLactobacillus
fructivoransの増殖を阻止して、味噌醸造
工業における懸案の課題を解消することを目的とした低
濃度エタノール製剤に関する。 【0002】 【従来の技術】味噌醸造法には幾多の伝統手法がある
が、一般には蒸煮大豆を冷却したのち、塩切麹、食塩種
水を混合し、チョッパーで部分的にすりつぶし、発酵容
器に充填する作業を混合仕込という。この際に添加する
Zygosaccharomyces−rouxiiは
麹の酵素作用によって米麹のでんぷん質が糖化してグル
コースができ、これを酵母が摂取し、酵素をとって増
殖、1g中に50万にも増えると酵母の環境は嫌気条件
となり、その後はアルコール発酵を開始し、アルコール
と炭酸ガスを生成するため、切り返しを行なって空気中
の酸素を補給してやる必要が生じる。Candida属
は後熟酵母と呼ばれ、味噌の熟成の後期に活躍し香気成
分に関与する酵母であるが、袋詰め後も発酵を続けて炭
酸ガスを発生し、膨れの原因となるため、60℃で10
分、70℃で5分程度加熱して殺菌し、膨れによる被害
を防止する。 【0003】一方、乳酸菌は糖類を発酵して乳酸を生成
する細菌で、乳酸だけを生成するホモ型と乳酸以外に酢
酸やエチルアルコールを作るヘテロ型とがあり、味噌の
主要乳酸菌の場合はホモ型のPediococcus
halophilusは、味噌に酸味を与え大豆臭を除
き酵母の発育を促す働きがある。製麹中にStrept
coccus faecalisが生えることが多く、
耐酸性で製麹中に強く雑菌を抑制する。味噌の発酵は仕
込当初、麹の酵素とこうした耐熱性微生物との総合作用
によって進められ、更には重石を載せてみそ溜りを浮か
せ、味噌と空気の接触を遮り、酸化を防止する方法がと
られる。このように味噌醸造に関して、典型的な有用乳
酸菌は、高度な好塩性を示すこのPediococcu
s halophilusであり、味噌の熟成、塩なれ
効果、押し味の付与、原料臭・未熟臭の除去、熟成中の
着色抑制、さえ効果など、味噌醸造過程後期に主要な菌
叢を占め、味噌の熟成に関わって重要な役割りを果して
いる。 【0004】味噌醸造の初期には、Enterococ
cus faecalisをはじめとする中程度の耐塩
性をもったEnterococcus属、乳酸菌が存在
し、麹などに由来する雑菌の生育阻害、味噌の明るい色
調(さえ)を保つ作用など有用な働きをすることが指摘
された。一方、味噌醸造に好ましくない作用を及ぼす雑
菌類の存在もあり、主要な細菌はBacillus s
ubtilisである。本菌種が麹などで圧倒した生育
を示すと異常な麹の生成原因となったり、製造工程中に
高濃度で存在した場合はアンモニア臭などの不快な香り
や好ましくない風味(フレーバー)を付与したりするこ
とが分かっている。特に問題視されるのは味噌を原料と
した二次加工品における変敗である。近年、味噌の機能
性が注目される中で、味噌を原料とした加工品が多く製
造・流通されるようになったことから、原料味噌に対し
ても厳密な細菌規格が求められるようになり、Baci
llus subtilisの生菌数の減少が急務とな
ってきた。 【0005】その他の雑菌類としては、味噌醸造初期に
Micrococcus属が酸敗の原因菌とされ、乳酸
菌の仲間でもPediococcus acidila
cticiは過度の酸敗を引き起こすと指摘され、就中
Lactobacillus fructivoran
sは包装製品の膨れの原因菌であると判断されたことか
ら、熟成味噌に2〜5%のエタノールを添加、脱気包装
して4℃に保存すれば、酵母数を著しく減少させること
ができるとしている。味噌の膨張袋発生の防止に用いて
いるエタノール使用量の低減を目的とした研究もなされ
正常袋味噌、膨張袋味噌の細分画50資料のエタノール
濃度、還元糖類、食塩濃度、pHの平均値、広がりには
両者で多少の差は認められたが、味噌中のエタノール濃
度の片寄りが膨張袋発生の原因とは考えられなかったと
されている。 【0006】ヘテロ乳酸菌による加工味噌の膨れについ
ての研究では、流通過程において膨れが生じた食塩含量
5%程度の加工味噌(酢味噌)から、極めて多数のLa
ctobacillus fructivoransを
検出し、本菌の性質を調べた結果、ヘテロ発酵によって
炭酸ガスを発生し、味噌の膨れを引き起こすことが分か
った。本菌は比較的耐塩性、耐アルコール型の乳酸菌
で、アルコール添加のみでは十分な増殖抑制効果は期待
できないが、アルコール添加と加熱殺菌の併用は本菌に
汚染された場合の対策として有効だが、製造工程中の微
生物管理がより重要とされている。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、味噌
醸造工業における味噌の膨張袋の発生を防止し、味噌製
品中の芽胞菌抑制を達成する具体的方法として、味噌の
防湧効果を確立し芽胞の生菌数を減少する殺菌剤を提供
することにある。 【0008】 【課題を解決するための手段】本発明による殺菌剤は、
味噌の包装製品の膨れの原因とされるLactobac
illus fructivoransの増殖を抑制
し、味噌醸造に好ましくない作用を及ぼすBacill
us subtilisの増殖を阻止するなど、味噌醸
造工業における微生物制御対策に重要な役割りを果たす
ほか、食品の風味を損なうことなくまた味噌の物性を変
化することなく、安全で無害な殺菌剤の調剤に取り組ん
できたが、植物油を原料とするグリセリンエステルとア
ミノ酸と砂糖大根から分離された天然の物質であるベタ
インをアルコール/水系に溶解させることによって、味
噌にアンモニア臭などの不快な香りや、風味(フレーバ
ー)を付与する微生物を発生させずに、また膨張袋の発
生を抑えることが分かって本発明を完成した。 【0009】本発明による殺菌剤は、味噌醸造工業にお
いて熟成味噌に2%程度添加し平均に混ぜるだけで、L
actobacillus fructivorans
とBacillus subtilisの増殖を抑制す
ることを特徴とし、特に生菌数を減少させるのが難しい
とされてきたBacillus subtilisに対
し殺菌効果があることから、製造ラインの殺菌消毒洗浄
に応用でき、味噌醸造工業における環境衛生保全整備に
利用が見込まれる。 【0010】エタノールは、日本薬局方無水エタノール
(アルコール分99.5V%以上)または変性エタノー
ル(アルコール分89.0V%)のいずれも使用でき
る。 【0011】グリセリンエステルはモノグリ、ジグリの
いずれをも使用できる。 【0012】アミノ酸はリゾチーム、グリシン、リジン
のいずれも使用できる。 【0013】ベタイン(トリメチルグリシン)ニッテン
製その他を使用できる。 【0014】本発明による殺菌剤は、エタノールにグリ
セリンエステルを溶解させ、水系にアミノ酸、ベタイン
を溶解し、両者を混合溶解させることを基本としてアル
コール濃度は消防法に定めた非危険物扱いとなるエタノ
ール製剤とする。 【0015】本発明を実施するにあたり、変性エタノ
ールを65v/v%以下にグリセリンエステルを0.4
〜1.8%以下に配合し溶解する。アミノ酸10%以
下とベタイン10%以下を水系に溶解した後、両者を
混合し撹拌溶解して完成する。 【0016】エタノールの殺菌力は通常70%位とさ
れ、エチルアルコールによる殺菌は短時間作用の場合、
アルコール濃度が40%位が限界となるがこれ以下の濃
度では殺菌力が急速に低下するので、従来、アルコール
殺菌は40%以上というのが常識だった。しかし通産省
の「アルコールの新規用途開発」研究班の研究で、大部
分の微生物はアルコール濃度40%以下でも作用時間を
長くすれば十分殺菌できることが判明した。中濃度(2
0〜40%)エタノールによる微生物の殺菌条件での殺
菌では8〜20%条件下で働いた死滅要因のほかに、細
胞膜の一部の破壊、Catalaseの失活、過酸化水
素生成の増大、菌体内成分の酸化等による死滅が進行す
ると考えられる。このような死滅作用は、大腸菌ばかり
でなく酵母でも確認されている。中高濃度(40〜80
%)エタノールによる微生物の殺菌は、従来から知られ
ている短時間殺菌に相当するもので、微生物の細胞膜、
蛋白構造等がエタノールで急速に破壊、変性される。従
って菌体内から蛋白、RNA等が急速に漏出するが、こ
れは死滅原因ではなく、死滅に従属して生ずる現象であ
る。微生物に中濃度エタノールを作用させる時、エタノ
ールは細胞の内部まで自由に入って行き細胞内のあらゆ
る部分に作用するので、中濃度でも殺菌効果があるとい
われる。 【0017】 【作用】本発明においては、本剤を熟成後の味噌中に直
接スプレーしたり、練り込んだり、機械器具に付着しが
ちな味噌醸造関与微生物の殺菌に使用するなど、味噌の
膨張袋発生防止を実現し、芽胞菌の生菌数を減少し、ま
た味噌醸造ラインの殺菌・消毒・洗浄を可能とするな
ど、多目的な用途を達成することができる。 【0018】 【実施例】以下、実施例により発明実施の態様を説明す
るが、例示は単に説明用のもので、発明構想の制限また
は限定を意味するものではない。 実施例1. 技術研究所報告(実施者 大手味噌メーカー) 平
成13年 7月26日 「テーマ」 OS−1、OS−30の防湧(酵母静菌)
効果を検証する。酵母培養培地とダーラム管を試験管に
入れた後、加圧加熱滅菌した。各検体および滅菌水を添
加し、NO.1〜15の試験区を調整した。各試験区に
酵母(Saccharomyces rouxii,H
−118)を1.0×104cfu/g添加した。25
℃、暗所にてincubateした。CO2の発生状況
を5日毎に観察した。 実施例2. (実施者 株式
会社エスアールエル) 【0019】以上2つの実施例を掲示したが、発明の名
称と同じく、実施例1は袋詰め味噌の膨れ防止効果を実
現し、実施例2では芽胞菌増殖抑制効果を実証したもの
で、食品と食品添加物を組み合わせて効果ある製剤を示
すことができた。 【0020】 【発明の効果】本発明による殺菌剤は、味噌醸造工業協
同組合連合会などで、多年懸案とされてきた課題を解決
したものであり、従来から使われてきた食添変性エタノ
ールによる防湧方法と比較して格段の効果を確かめるこ
とができ、膨張袋味噌による損害を減少することが予測
できた。また味噌醸造に被害を及ぼす代表的雑菌とされ
るBacillus subtilisの生菌数減少を
実現できたことにより、味噌にとって混在の可能性が否
定しきれない危害原因物質といえる、病原微生物Bac
−illus cereusにも殺菌効果が期待できる
ほか、一部の製品味噌にその存在を指摘されたClos
tridium属菌の増殖抑制にも効果があると予想で
きた。そのうえ味噌醸造のラインに本剤を用いて殺菌消
毒洗浄作業を実施できれば、食品製造環境衛生に大きく
寄与でき、国民的消費材にとって安心と安全に貢献でき
ると考える。 【0021】食品は動物か植物を原料とするかぎり、そ
れらを永久に保存することはできない。微生物学的、或
は化学的要因によって必ず劣化する宿命にある。人類に
とってこの腐敗・変敗などによる食糧資源の損失は重大
問題であり、食品を無駄なく有効に活用するための保蔵
技術を開発することは、食品化学に課せられた使命であ
る。近年、有用な微生物の抗菌力を利用して有害な微生
物の増殖を抑止しようとするバイオプリザベーションの
研究が進められて、食品保蔵および製造の考え方として
注目される。このバイオプリザベーションの主軸と目さ
れるのが、乳酸菌が産生するバクテリオシンと総称され
る抗菌性物質で、比較的類縁の細菌にのみ抗菌作用を示
す物質であるといわれ、味噌醸造に関与する乳酸菌の中
にも存在するとされている。このように食品の殺菌と
は、食品に含まれる微生物を皆殺しにすることではな
く、食品の安全性を確保するため必要最小限の処置であ
るべきであり、味噌の細菌学的背景から推論して、味噌
中の有用乳酸菌のなかから雑菌類に対して生育阻害作用
を示す菌株を同定できれば、その積極的な作用によって
味噌製造および保蔵に置けるバイオプリザベーションが
実現されることが予想され、食品化学に関与する立場に
とって、また消費者にとっても究極の願望とされる有益
無害、安全な食品の供給体制が調うことになると考えら
れる。
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】エタノール/水系にグリセリンエステルと
グリシン、ポリリジン、リゾチームの中から選ばれた1
種、ベタインを溶解してなる、味噌の防湧効果および芽
胞菌減少を目的とした殺菌剤
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JP2001355364A JP3491007B2 (ja) | 2001-10-18 | 2001-10-18 | 袋詰め味噌の膨れ防止及び味噌中の芽胞菌増殖抑制製剤 |
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