JP3488252B2 - 化学気相析出用有機金属錯体溶液 - Google Patents

化学気相析出用有機金属錯体溶液

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JP3488252B2 JP25559291A JP25559291A JP3488252B2 JP 3488252 B2 JP3488252 B2 JP 3488252B2 JP 25559291 A JP25559291 A JP 25559291A JP 25559291 A JP25559291 A JP 25559291A JP 3488252 B2 JP3488252 B2 JP 3488252B2
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【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、化学気相析出法(以
下、CVD法と略記する)の原料等に用いられ、β−ジ
ケトネート金属錯体の空軌道に求核性化合物を配位させ
て化学的に不活性な有機金属錯体とし、これを求核性化
合物からなる溶媒に溶解することによって、保存安定性
を向上せしめ、製造工程の安定化を図り、生産性の向上
と製品品質の保証を得ることができるようにした化学気
相析出用有機金属錯体溶液に関する。 【0002】 【従来の技術】近年、酸化物系のセラミック薄膜あるい
は層状セラミック等の製造方法としてCVD法が有力な
手段として用いられるようになり、その研究開発も盛ん
に行われるようになった。例えば、超電導体薄膜、誘電
体薄膜や各種集積回路の製造工程においてCVD法が用
いられている。そしてその原料としては揮発性と反応性
に優れたβ−ジケトネート金属錯体が多く用いられてい
る。 【0003】β−ジケトネート金属錯体については、以
前からガスクロマトグラフィーによる微量金属の分析
や、金属錯体における立体化学や異性体化学、配位子の
交換、弱求核試薬相互作用などの研究に用いられ、さら
にはガソリンのアンチノック剤、内燃機関の炭素除去用
触媒などへの応用も考えられている(R.E.Siev
ers;Science,201(1978)217−
223)。β−ジケトネート金属錯体は、比較的蒸気圧
が高く、反応性に富むのでCVD用の原料として有用性
が高い。例えば、β−ジケトネート金属錯体を用いてC
VD法によって酸化物を製造する方法が特開昭57−1
18002号公報に開示されている。また、この他にも
β−ジケトネート金属錯体を用い、CVD法によって酸
化物超伝導体の単結晶薄膜を製造する方法が特開平1−
257194号公報に開示されている。 【0004】このようなβ−ジケトネート金属錯体のC
VD用原料としての有用性については、錯体を形成する
金属種によって錯体の性質に与える影響と、R1−CO
−CH2−CO−R2で示される錯体の配位子R1および
2の種類による影響について、熱重量分析曲線(以
下、TGと略記する)と蒸気圧のデータによって解析さ
れ、明らかにされている(T.Ozawa;Volat
ility of Metal β−Diketona
tes for Chemical VaporDep
osition of Oxide Supercon
ductor(Thermochimica Act
a,174(1991)185−199))。 【0005】β−ジケトネート金属錯体をCVD法に用
いる際には、このものが室温で固体であるので、気化装
置を設けて気化させ、キャリアーガスで搬送して反応に
供する方法が行われている。このキャリアーガスとして
は、多くの場合、アルゴン、窒素などの不活性ガスが用
いられ、最近では有機溶剤などを用いる方法も試みられ
ている。例えば、松野繁らは、テトラヒドロフランをキ
ャリアーガスに用いる方法を発表している(応用物理学
会 1990年春期年会29p−ZB−16、1991
年秋期年会28p−ZM−6)。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、β−ジ
ケトネート金属錯体は、一般に空気中の水分や炭酸ガス
の影響を受けて劣化し易い。また、保存中にオリゴマー
を形成して分子量が大きくなるなどして蒸発温度が高く
なる等、変質し易い。例えばジピバロイルメタン((C
33CCOCH2COC(CH33、以下DPMと略
記する)は代表的なβ− ジケトンであるが、その金属
錯体Ba(DPM)2、Sr(DPM)2は、これを保存
する際にデシケータ中に保存する等の注意を払っても、
TGに変化が認められる等、極めて不安定なものであ
る。したがって、β−ジケトネート金属錯体は、保存状
態や取り扱い時に劣化するのを防止するために細心の注
意を必要とするものであり、原料として操作性が劣るも
のであった。また、このような不安定な金属錯体をCV
D法用の原料として用いると良好な再現性が得られず、
製品品質が低下するという不都合もしばしば起こってい
た。 【0007】またCVD法において、固体のβ−ジケト
ネート金属錯体を原料として、これを単独で気化させる
場合には、100〜250℃に加熱し、減圧してキャリ
アーガスによって反応炉に導入することが行われる。と
ころが、酸化物超電導体などでは複合酸化物なので、こ
れを製造するために数種類の原料を使用するが、これら
の原料は蒸気圧や蒸発温度がそれぞれ異なる。よって、
構成金属元素の有機金属化合物を独立した個々の気化装
置で気化させる必要があった。例えば、Y−B−C系や
B−S−C−C系の超電導体の構成金属元素において、
Ca、Y、CuなどのDPM錯体の蒸発温度は100〜
180℃であるが、Ba(DPM)2やSr(DPM)2
は200℃以下では低い蒸気圧しか得られず、これらを
気化させるために200℃以上の他の錯体よりも高い加
熱温度を必要とする。したがって、原料を別の系統から
のキャリアーガスによって搬送する方法では、蒸気圧が
それぞれ異なる原料を気化させるために、あるいは気化
した原料ガスをキャリアーガス中に安定に再現性よく均
一に同伴させるために、製造工程における温度、圧力、
濃度などの条件設定や制御機構が複雑になるという欠点
があった。また、例えば200℃以上の高温にすること
によって、原料のβ−ジケトネート金属錯体自体が劣化
あるいは変質して、蒸発速度の経時変化や生産性の低下
などを引き起こし易いという問題もあった。 【0008】本発明は前記事情に鑑みてなされたもの
で、β−ジケトネート金属錯体を用い、CVD法によっ
て超電導体薄膜や誘電体薄膜等を製造する際に、製造工
程の安定化を図り、生産性の向上と製品品質の保証を得
ることができるようにした化学気相析出用有機金属錯体
溶液の提供を目的とする。 【0009】 【課題を解決するための手段】本発明の化学気相析出用
有機金属錯体溶液は、β−ジケトネート金属錯体に第1
の求核性化合物を配位させて得られる有機金属錯体を、
第2の求核性化合物からなる溶媒に溶解してなり、第1
の求核性化合物が、エチレンジアミン、ビピリジル、テ
トラヒドロフランから選ばれた1種の化合物であり、第
2の求核性化合物が、プロピルアミンまたはテトラヒド
ロフランであるものである。 【0010】 【作用】例えば、Ba(DPM)2、Sr(DPM)2
のアルカリ土類金属のβ−ジケトネート錯体は四配位の
錯体であるが、Ba、Sr等のアルカリ土類金属が本来
六配位をとる原子であり、二配位分が空軌道となってい
る。この空軌道が、空気中の水分や炭酸ガスによる影響
を受けて、劣化し変質する原因となると考えられる。こ
のようなβ−ジケトネート金属錯体を、≡N:基や、=
O:基などの孤立電子対を有する第1の求核性化合物に
よって、その空軌道を配位結合させて化学的に不活性と
することにより、水分や炭酸ガスの影響を防止するとと
もに、オリゴマー化も防止できる。しかも、これらの第
1の求核性化合物の配位子と金属との結合は配位結合な
のでその結合力は弱く、通常の条件下において、CVD
法の化学的反応性を減じることはない。 【0011】 また、このようにして得られる有機金属
錯体は極めて安定であり、このものを第2の求核性化合
からなる溶媒に溶解させて有機金属錯体溶液とするこ
とができる。このとき、溶質である有機金属錯体の相互
作用はほとんどないので、高濃度の溶液とすることが可
能である。したがって、CVD法において高濃度の原料
溶液を供給することができ、生産効率の向上、コストの
低減を図ることができる。また、複合酸化物を製造する
際に複数種の有機金属錯体を同一の第2の求核化合物か
らなる溶媒に溶解させて溶液とすることができ、これを
用いて単一の気化装置で複合酸化物の製造が可能とな
り、CVD装置や制御機構を簡略化することができる。 【0012】 【実施例】以下、本発明を詳しく説明する。本発明にお
いて用いられるβ−ジケトネート金属錯体としては、ア
ルカリ土類金属のβ−ジケトネート金属錯体が好適に用
いられ、さらに好ましくはアルカリ土類金属のDPM金
属錯体が用いられる。例えばBa(DPM)2、Ca
(DPM)2、Sr(DPM)2などを用いることができ
る。 【0013】 本発明において、β−ジケトネート金属
錯体に配位する第1の求核性化合物としては、β−ジケ
トネート金属錯体に対して、積極的に配位結合して安定
化する化合物であって、例えば酸塩基両性を示す両性有
機化合物であって親プロトン性を有するエチレンジアミ
あるいは、プロトンを放出する性質がほとんどない非
プロトン性有機化合物であって親プロトン性を有する
ピリジル、テトラヒドロフランを用いることができる。 【0014】 【0015】 【0016】 これらの化合物のうち、エチレンジアミ
(以下、Enと略記する)およびテトラヒドロフラン
(以下、THFと略記する)について、保存安定性につ
いて検討した。その結果、Ba(DPM)2、Sr(D
PM)2などEn、THFを配位させることにより、
保存安定性が飛躍的に向上し、CVD法による製膜にお
いても、反応の安定化、品質の向上が得られた。ここで
用いられたEn分子内には≡N:基が、またTHFに
は=O:基があり、これらは高い求核性を示す。したが
って、これらの求核性原子が、上記金属錯体の空軌道に
配位結合性をもってその空軌道を保護することによっ
て、これらの金属錯体の安定化が得られることが考察さ
れた。 【0017】 これらの結果をふまえて、上記有機金属
錯体は、β−ジケトネート金属錯体の空軌道に、上記化
合物からなる第1の求核性化合物を配位させて、その空
軌道を化学的に不活性な状態とすることによって、固体
状態での保存安定性を向上させたものである。 【0018】 この有機金属錯体は、例えば、Ba(D
PM)2、Sr(DPM)2などのβ−ジケトネート金属
錯体を、これらが容易に溶解する溶媒に溶かして、その
溶液中で第1の求核性化合物と反応させた後、この溶媒
を蒸発させることによって好適に得ることができる。 【0019】また、このような有機金属錯体において
は、これを用いて、CVD法によって製膜する際には、
固体状態の有機金属錯体を気化装置で気化させ、キャリ
アーガスなどに同伴して反応に供することもできる。
発明の有機金属錯体溶液は、この有機金属錯体を、第2
の求核性化合物からなる溶媒に溶解させて得られた溶液
であるこの有機金属錯体溶液は、キャリアーガスを用
いずに気化装置を経由してCVD装置に供給することが
できる。 【0020】 本発明の有機金属錯体溶液に用いられる
溶媒としては、第2の求核性化合物を用いる。第2の求
核性化合物には、上述のようにプロピルアミンまたはテ
トラヒドロフランが用いられる。本発明の有機金属錯体
溶液では、溶質としての有機金属錯体、2種以上の混
合物を用いてもよく、溶媒には2種の第2の求核性化合
からなる混合溶媒を用いてもよい。本発明の有機金属
錯体溶液をCVD法の原料として用いる際には、その濃
度を適宜設定することができ、例えば1mol/l程度
あるいはそれ以上の高濃度にすることも可能である。そ
うすることによって、CVD法においてその堆積速度を
安定に向上させることができる。 【0021】本発明の有機金属錯体溶液は、例えば、B
a(DPM)2、Sr(DPM)2などのβ−ジケトネー
ト金属錯体を、まず、これらが容易に溶解する有機溶媒
に溶かして、その溶液中で第1の求核性化合物と反応さ
せた後、有機溶媒を蒸発させることによって、固体の有
機金属錯体を得、これを第2の求核性化合物からなる
媒に溶解させて得ることができる。また、上記過程中で
得られる固体の有機金属錯体はきわめて安定なものであ
るので、原料の保存に際しては、この固体状態で保存
し、CVD法に供する際に溶液状態とするのが好まし
い。 【0022】また、本発明の有機金属錯体溶液は、CV
D法による超電導体や誘電体の製造だけでなく、β−ジ
ケトネート金属錯体を用いる工業分野においても広く用
いることができる。以下、具体例を挙げる。 【0023】(1) Ba(DPM)2 5.0gを、その保存状態から取り
出し、直ちにエタノール 100mlに溶解させて、温
度を50℃に保持した。この溶液をマグネチックスター
ラーにて撹拌し、En 0.6gを加えて60分間反応
させた。反応終了後、エタノールを蒸発させて固体を得
た。この固体を元素分析したところ、6配位化されたB
a(DPM)2(En)であることが認められた。合成
直後のBa(DPM)2(En)の揮発性を熱重量分析
により調べた。サンプル量;14mg、昇温速度;10℃
/min、Arガス流量;100cc/minとして、
500℃まで加熱したところ、97%が揮発し、3%が
残渣として残った。さらにBa(DPM)2(En)を
合成後、大気中(室温;22℃、湿度;66%)に1時
間放置し、上記と同様にして熱重量分析を行ったとこ
ろ、97%が揮発し、3%が残渣として残った。これら
の結果から、Ba(DPM)2(En)は良好な保存安
定性を有することが認められた。 【0024】(2) Ba(DPM)2 5.0gを、その保存状態から取り
出し、直ちにエタノール 100mlに溶解させて、温
度を50℃に保持した。この溶液をマグネチックスター
ラーにて撹拌し、2.2’−ビピリジル(C1082
以下bpyと記載する)1.9gを加えて60分間反応
させた。反応終了後、エタノールを蒸発させて固体を得
た。この固体を元素分析したところ、6配位化されたB
a(DPM)2(bpy)であることが認められた。合
成直後のBa(DPM)2(bpy)の揮発性を熱重量
分析により調べた。サンプル量;13mg、昇温速度;1
0℃/min、Arガス流量;100cc/minとし
て、500℃まで加熱したところ、97%が揮発し、3
%が残渣として残った。さらにBa(DPM)2(bp
y)を合成後、大気中(室温;22℃、湿度;66%)
に1時間放置し、上記と同様にして熱重量分析を行った
ところ、97%が揮発し、3%が残渣として残った。こ
れらの結果から、Ba(DPM)2(bpy)は良好な
保存安定性を有することが認められた。 【0025】(3) Ba(DPM)2 5.0gを、その保存状態から取り
出し、直ちにTHF100mlに溶解させて、温度を5
0℃に保持した。この溶液をマグネチックスターラーに
て撹拌して、60分間反応させた。反応終了後、過剰の
THFを蒸発させて固体を得た。この固体を元素分析し
たところ、6配位化されたBa(DPM)2(THF)2
であることが認められた。合成直後のBa(DPM)2
(THF)2の揮発性を熱重量分析により調べた。サン
プル量;13mg、昇温速度;10℃/min、Arガス
流量;100cc/minとして、500℃まで加熱し
たところ、95%が揮発し、5%が残渣として残った。
さらにBa(DPM)2(THF)2を合成後、大気中
(室温;22℃、湿度;66%)に1時間放置し、上記
と同様にして熱重量分析を行ったところ、95%が揮発
し、5%が残渣として残った。これらの結果から、Ba
(DPM)2(THF)2は良好な保存安定性を有するこ
とが認められた。 【0026】(4) Ca(DPM)2 5.0gを、その保存状態から取り
出し、直ちにエタノール 100mlに溶解させて、温
度を50℃に保持した。この溶液をマグネチックスター
ラーにて撹拌し、bpy 1.9gを加えて60分間反
応させた。反応終了後、エタノールを蒸発させて固体を
得た。この固体を元素分析したところ、6配位化された
Ca(DPM)2(bpy)であることが認められた。
合成直後のCa(DPM)2(bpy)の揮発性を熱重
量分析により調べた。サンプル量;13mg、昇温速度;
10℃/min、Arガス流量;100cc/minと
して、500℃まで加熱したところ、100%が揮発
し、残渣は残らなかった。さらにCa(DPM)2(b
py)を合成後、大気中(室温;22℃、湿度;66
%)に1時間放置し、上記と同様にして熱重量分析を行
ったところ、100%が揮発し、残渣は残らなかった。
これらの結果から、Ca(DPM)2(bpy)は良好
な保存安定性を有することが認められた。 【0027】(5) 上記1と同様にして、固体のBa(DPM)2(E
n)を得た。これを 原料とし、通常のCVD法の条件
の例として、圧力;50Torr,キャリアAr流量;
200cc/min、O2流量;675cc/min、
基板温度;<700℃と設定し、原料蒸発器の温度を変
化させて、酸化物の積層速度を調べた。その結果、酸化
物の積層速度0.35〜0.39μmol/Hr・cm
2で、安定して製膜できた。 【0028】(6) 上記2と同様にして、固体のBa(DPM)2(bp
y)を得た。これを原料とし、5と同様にして酸化物
の積層速度を調べたところ、積層速度0.35〜0.3
8μmol/Hr・cm2で、安定して製膜できた。 【0029】(7) 上記3と同様にして、固体のBa(DPM)2(TH
F)2を得た。これを原料とし、5と同様にして酸化
物の積層速度を調べたところ、積層速度0.39〜0.
41μmol/Hr・cm2で、安定して製膜できた。 【0030】(8) 上記4と同様にして、固体のCa(DPM)2(bp
y)を得た。これを原料とし、5と同様にして酸化物
の積層速度を調べたところ、積層速度0.55〜0.5
7μmol/Hr・cm2で、安定して製膜できた。 【0031】(例9) 例1と同様にして固体のBa(DPM)2(En)を
得、これの種々の有機溶媒(第2の求核性化合物である
化合物を含む)への溶解性およびその溶液の揮発性につ
いて調べた。有機溶媒として、両性溶媒で水酸基を有す
溶媒の例として無水エタノール、両性溶媒で親プロト
溶媒の例としてn−プロピルアミン、非プロトン溶媒
で親プロトン溶媒の例としてTHF、非プロトン溶媒で
疎プロトン溶媒の例としてアセトニトリル、非プロトン
溶媒で不活性溶媒の例としてベンゼンをそれぞれ用い
た。室温での溶解性を調べた結果、上記の各溶媒1ml
に対して、Ba(DPM)2(En) 1.0gをそれ
ぞれ溶解でき、mol濃度に換算して1.2mol /
lの高濃度の溶液を容易に得ることができた。また、こ
れらの溶液について揮発性を熱重量分析により調べた。
サンプル重量;24mg、昇温速度;500℃/Hrと
して400℃で保持した。この結果、いずれの溶液も全
量が蒸発し、蒸発に要した時間は、それぞれ無水エタノ
ール溶液では150秒、n−プロピルアミン溶液では9
0秒、THF溶液では90秒、アセトニトリル溶液では
110秒、ベンゼン溶液では170秒であった。 【0032】(10) Sr(DPM)2(bpy)のTHFへの溶解性とその
溶液の揮発性について調べた。まず、Sr(DPM)2
5.0gをエタノール100mlに溶解し、bpy
1.7gを加えて反応させた後、エタノールを蒸発させ
て固体のSr(DPM)2(bpy)を得た。室温での
溶解性を調べた結果、THF 1mlに対して、0.7
gのSr(DPM)2(bpy)が溶解した。このとき
のmol濃度は1.1mol/lであった。また、この
Sr(DPM)2(bpy)の1.1mol/l TH
F溶液の揮発性を調べた。サンプル重量を23mgとし
た以外は9と同様の条件で調べた結果、全量が蒸発
し、蒸発に要した時間は85秒であった。 【0033】(11) 4と同様にして固体のCa(DPM)2(bpy)を
得、これのTHF への溶解性とその溶液の揮発性を調
べた。室温での溶解性を調べた結果、THF 1mlに
対して、1.3gのCa(DPM)2(bpy)が溶解
した。このときのmol濃度は1.5mol/lであっ
た。また、このCa(DPM)2(bpy)の1.5m
ol/l THF溶液の揮発性を調べた。サンプル重量
を22mgとした以外は9と同様の条件で調べた結
果、全量が蒸発し、蒸発に要した時間は75秒であっ
た。 【0034】(12) 1と同様にして固体のBa(DPM)2(En)を
得、これをTHFに溶解させて1.2mol/lのTH
F溶液を調製した。この溶液をキャリアーガスを用いず
に、蒸発器を経由してCVD装置に供給した。蒸発器の
温度を210℃として、別の系統から酸素ガスを流量1
000cc/minで供給し、基板温度700℃の条件
下で製膜実験を行った。その結果、30分間にわたっ
て、酸化物の積層速度1.08〜1.13μmol/H
r・cm2で、安定して製膜できた。 【0035】(13) 10と同様にして、固体のSr(DPM)2(bp
y)を得、これをTHFに溶解させて1.1mol/l
のTHF溶液を調製した。この溶液を用いて12と同
様の条件下で製膜実験を行った結果、30分間にわたっ
て、酸化物の積層速度1.21〜1.24μmol/H
r・cm2で、安定して製膜できた。 【0036】(14) 4と同様にして、固体のCa(DPM)2(bpy)
を得、これをTHFに溶解させて1.1mol/lのT
HF溶液を調製した。この溶液を用いて12と同様の
条件下で製膜実験を行った結果、30分間にわたって、
酸化物の積層速度1.41〜1.45μmol/Hr・
cm2で、安定して製膜できた。 【0037】(15) 上記3と同様にして固体のBa(DPM)2(TH
F)2を得た。得られたBa(DPM)2(THF)2
20.3gと、Y(DPM)3 10.0gおよびCu
(DPM)2 20.2gをTHFに溶解させて全量を
100mlとした。この混合溶液を、単一の蒸発器を経
由してCVD装置に供給し、Y−B−C系の超電導体薄
膜を形成することができた。 【0038】(比較例1) Ba(DPM)2 5.0gを、その保存状態から取り
出し、直ちに熱重量分析により揮発性を調べた。サンプ
ル量;13mg、昇温速度;10℃/min、Arガス流
量;100cc/minとして、500℃まで加熱した
ところ、94%が揮発し、6%が残渣として残った。さ
らにBa(DPM)2を、大気中(室温;22℃、湿
度;66%)に1時間放置し、上記と同様にして熱重量
分析を行ったところ、75%が揮発し、25%が残渣と
して残った。 【0039】(比較例2) Ca(DPM)2 5.0gを、その保存状態から取り
出し、直ちに熱重量分析により揮発性を調べた。サンプ
ル量;13mg、昇温速度;10℃/min、Arガス流
量;100cc/minとして、500℃まで加熱した
ところ、100%が揮発し、残渣は残らなかった。さら
にCa(DPM)2を、大気中(室温;22℃、湿度;
66%)に1時間放置し、上記と同様にして熱重量分析
を行ったところ、89%が揮発し、11%が残渣として
残った。 【0040】(比較例3) 原料として固体のBa(DPM)2を用い、通常のCV
D法によって、製膜を試みたが、製膜状態が不安定で、
実質的に積層速度は測定不能であった。 【0041】(比較例4) 原料として固体のCa(DPM)2を用い、通常のCV
D法によって製膜を試みたところ、積層速度は0.29
〜0.35μmol/Hr・cm2であった。 【0042】(比較例5) Ba(DPM)2の種々の有機溶媒への溶解性およびそ
の溶液の揮発性について調べた。9と同様の溶媒を用
い、これらの各溶媒に対するBa(DPM)2の溶解性
を調べた結果、いずれも9で得られたBa(DPM)
2(En)の溶解性に比べて極端に低いものであった。
特に、THF 1mlに溶けるBa(DPM)2の量は
0.5gが限界であり、溶質の量が0.5gに近づくと
溶液の粘度が上がり、0.5gを越えると未溶解の粉末
が残るのが認められた。この限界濃度をmol濃度で表
すと0.67mol/lであった。また、Ba(DP
M)2の0.67mol/l THF溶液の揮発性を調
べた。サンプル重量を22mgとした以外は9と同様
の条件で調べた結果、全量が蒸発するのに105秒を要
した。 【0043】(比較例6) Sr(DPM)2のTHFに対する溶解性とその溶液の
揮発性を調べた。溶解性については0.72mol/l
が限界濃度であった。またSr(DPM)2の0.72
mol/l THF溶液の揮発性を調べた。サンプル重
量を18mgとした以外は9と同様にして調べたとこ
ろ、全量が蒸発するのに100秒を要した。 【0044】(比較例7) Ca(DPM)2のTHFに対する溶解性とその溶液の
揮発性を調べた。溶解性については0.9mol/lが
限界濃度であった。またCa(DPM)2の0.9mo
l/l THF溶液の揮発性を調べた。サンプル重量を
20mgとした以外は9と同様にして調べたところ、
全量が蒸発するのに85秒を要した。 【0045】以上、1〜4および比較例1〜2の結果
より、固体のBa(DPM)2 やCa(DPM)2は、
空気中に1時間程度放置すると、その揮発性が低下し、
変質、劣化が認められた。これに対して、Ba(DP
M)2やCa(DPM)2を、En、THF、bpyなど
で6配位化して得られる固体は、大気中に放置してもそ
の揮発性は変化せず、保存安定性に優れることが認めら
れた。また、上記5〜7および比較例3の結果より、
Ba(DPM)2をEn、THF、bpyなどで6配位
化することによって、これを用いてCVD法により酸化
物膜を安定して製膜できることが認められた。一方、
8および比較例4の結果より、Ca(DPM)2をbp
yで6配位化することによって、これを用いてCVD法
により酸化物膜を安定して製膜できるとともに、その製
膜速度を増大できることが認められた。 【0046】また、9ないし11、および比較例5な
いし7の結果より、Ba(DPM)2、Sr(DP
M)2、Ca(DPM)2を、Enやbpyによって6配
位化することによって、有機溶媒への溶解性およびその
溶液の揮発性が著しく向上することが認められた。さら
に、12ないし14の結果より、これらの有機金属錯
体を溶媒に溶解させた溶液を用いて、CVD法により酸
化物膜を安定して製膜できることが認められた。また、
15の結果より、複数種の有機金属化合物を同一の溶
媒に溶解せしめて混合溶液とすることによって、CVD
法によって複合酸化物である超電導体薄膜を作成する際
に、単一の気化装置によって製膜できることが認められ
た。 【0047】 【発明の効果】以上説明したように、本発明の化学気相
用析出用有機金属錯体溶液は、β−ジケトネート金属錯
体に第1の求核性化合物を配位させて得られた有機金属
錯体を、第2の求核性化合物からなる溶媒に溶解してな
り、第1の求核性化合物がエチレンジアミン、ビピリジ
ル、テトラヒドロフランから選ばれた1種の化合物であ
り、第2の求核性化合物がプロピルアミンまたはテトラ
ヒドロフランであるものである。 【0048】したがって、β−ジケトネート金属錯体を
用いて、保存安定性に優れ、高濃度の有機金属錯体溶液
が得られる。この有機金属錯体溶液をCVD法で超電導
体や誘電体等を製造する際に、原料として好適に用いる
ことができ、CVD法における原料操作性を容易にする
とともに、プロセスの安定化を図ることができ、生産
性、製品品質を向上せしめることができる。また、複数
種の有機金属錯体を1種または2種以上の第2の求核性
化合物からなる溶媒に溶解させ、この溶液を原料として
用いることができ、CVD法における気化装置の単一化
等、工程の簡略化を図ることができるとともに、生産性
および製品品質を向上せしめることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 杉森 由章 神奈川県川崎市幸区塚越4−320 日本 酸素株式会社内 (56)参考文献 特開 平3−115245(JP,A) 特開 平3−37101(JP,A) 特開 昭61−40844(JP,A) 特開 平1−305813(JP,A)

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】β−ジケトネート金属錯体に第1の求核性
    化合物を配位させて得られた有機金属錯体を、第2の求
    核性化合物からなる溶媒に溶解してなり、第1の求核性
    化合物が、エチレンジアミン、ビピリジル、テトラヒド
    ロフランから選ばれた1種の化合物であり、第2の求核
    性化合物が、プロピルアミンまたはテトラヒドロフラン
    であることを特徴とする化学気相析出用有機金属錯体溶
    液。
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