JP3484041B2 - 石炭の液化方法 - Google Patents
石炭の液化方法Info
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Description
関し、詳細には、石炭を溶剤、水酸化鉄触媒又はパイラ
イト触媒(鉄の量として石炭の無水無灰分換算の石炭質
量に対して1質量%以下)、及び、助触媒の硫黄の存在
下で、温度:420 〜480 ℃、圧力:10〜20MPa で水添す
る水添工程と、該水添工程で得られる水添生成物から硫
化鉄を含む重質液化生成物を分離して得る分離工程と、
該分離工程で得られる硫化鉄を含む重質液化生成物を前
記水添工程へ循環する循環工程とを有する石炭の液化方
法に関する技術分野に属する。
わる液体燃料の開発が強く望まれている。特に、石炭は
その埋蔵量が豊富なことから、石炭を効率良く液化して
液体燃料を得る技術の確立が重要な課題となっている。
提案されている。その代表的な石炭の液化方法として
は、乾燥及び粉砕された石炭を溶剤と混合してスラリー
状混合体とし、これに高温高圧下で水素ガスを添加し、
水添反応を起こさせ、液化させる方法があげられる。
させる際、一般には水添反応の効率を高めるために前記
スラリー状混合体に触媒が添加され、そして水添反応に
供され、触媒及び溶剤の共存下で石炭を水添する方法が
採用される。
化用触媒)としては、従来から種々のモリブデン系の触
媒、あるいは塩化物系触媒が用いられているが、モリブ
デン系の触媒では極めて高価であると共に資源的な問題
を有しており、塩化物系の触媒では装置の腐食が起こり
易いという問題点があり、安価で比較的活性が高く、回
収する必要のない鉄系触媒がよく用いられてきている。
イト(FeS2)は比較的活性が優れていることが知られて
おり、水酸化鉄触媒としてリモナイト等の鉱物、α−オ
キシ水酸化鉄(ゲーサイト)、γ−オキシ水酸化鉄等が
提案されている(特開平8-41463 号公報)。これら鉄系
触媒は懸濁状で液化工程で使用されるが、一般的には触
媒作用を発揮するのはピロタイト(Fe1-x S )の形の硫
化鉄であるといわれている。水酸化鉄の如く硫黄原子を
含まない鉄系触媒においては、これを硫黄と反応させて
硫化鉄とするために、通常は単体硫黄を助触媒として添
加している。
究がなされているが、添加する触媒の鉄量(即ち、鉄系
触媒の鉄としての量)の1.2 倍(原子比)程度の硫黄を
添加した場合、液化残渣中の硫化鉄の形態はほとんどピ
ロタイトとなっていること、又、添加する硫黄量をさら
に増やしても液化油収率の向上がさほど見込めないこと
より、通常、単体硫黄の添加量は添加する触媒の鉄量の
1〜2倍(原子比)の範囲として行われている。一方、
触媒としてパイライト(FeS2)を用いる場合は、パイラ
イト自身に鉄に対して2倍量(原子比)の硫黄が含まれ
ているため、パイライトが脱硫されてピロタイトを生成
することより、硫黄を添加せずに用いられることが一般
的である。
して、液化生成物中の硫化鉄を含む重質液化生成物を水
添工程へ循環するボトムリサイクル法が知られている。
これは、水添工程で得られる水添生成物(液化生成物)
を軽質油及び中質油と硫化鉄を含む重質液化生成物とに
分離し、この硫化鉄を含む重質液化生成物を水添工程に
循環し、水添反応を起こさせる方法である。このボトム
リサイクル法を実施することにより、循環使用される重
質液化生成物が分解し、有用な軽質油や中質油等を製品
油として回収することができると共に、重質液化生成物
に含まれる硫化鉄の触媒活性のため、水添反応の効率が
向上するという利点がある。
℃の高温下で、かつ、水素圧10〜30MPa ないしはそれ以
上の水素圧下で水添するという条件が採用される。しか
し、最近では、高活性触媒の開発やボトムリサイクル法
の実施により、条件を緩和することが可能となり、反応
温度:420 〜480 ℃、反応圧力:10〜20MPa 程度の反応
条件で水添が行われることが主流となっいる。
場合、一般的には、水分及び灰分を除いた石炭(無水無
灰炭)の質量、即ち、石炭の無水無灰分換算の石炭質量
に対して鉄として(鉄基準で)3質量%程度の添加とさ
れる。しかし、最近では、高活性触媒の開発が進み、前
記水酸化鉄触媒やパイライト触媒の添加量が鉄基準で石
炭の無水無灰分換算の石炭質量に対して(無水無灰炭基
準で)1質量%以下でも比較的高い油分収率が得られる
ようになった。
媒として用い、経済性向上のため触媒添加量を鉄基準で
1質量%以下にした場合、触媒と共に添加される助触媒
の単体硫黄の量も減少する。又、パイライト触媒を触媒
として用い、単体硫黄を添加しない場合においても、パ
イライト触媒の添加量が減少すると、必然的にパイライ
トに含まれる硫黄の量も減少する。従って、前記ボトム
リサイクル法により硫化鉄を含む重質液化生成物を水添
工程に循環使用した場合、硫化鉄であるピロタイト(即
ち、触媒作用を発揮するピロタイトの形態の硫化鉄)中
の硫黄が徐々に脱硫され、触媒活性が小さいとされるト
ロイライト(FeS )の形態の硫化鉄が生成し、そのた
め、硫化鉄の触媒活性が低下し、ボトムリサイクル法に
よる液化油収率向上の寄与が小さくなってくる。
に着目してなされたものであって、その目的は、石炭に
溶剤を添加し、触媒として水酸化鉄又はパイライトをそ
の鉄の量として前記石炭の無水無灰分換算の石炭質量に
対して1質量%以下となるように添加し、助触媒として
単体硫黄を添加した混合体を温度:420 〜480 ℃、圧
力:10〜20MPa で水添する水添工程を遂行すると共に、
該水添工程で得られる水添生成物から硫化鉄を含む重質
液化生成物を分離して得、この硫化鉄を含む重質液化生
成物を前記水添工程へ循環する(即ち、ボトムリサイク
ル法により循環する)に際し、前記従来の石炭の液化方
法の場合と異なり、触媒作用を発揮するピロタイトの形
態の硫化鉄の脱硫が生じ難く、触媒活性が小さいとされ
るトロイライトの形態の硫化鉄の生成を抑制し得、その
ため、硫化鉄の触媒活性の低下を抑制し得て高い触媒活
性を維持し得、ひいては従来の石炭の液化方法の場合に
比較して液化油収率を向上し得る石炭の液化方法を提供
しようとするものである。
めに、本発明に係る石炭の液化方法は、請求項1〜2記
載の石炭の液化方法としており、それは次のような構成
としたものである。即ち、請求項1記載の石炭の液化方
法は、石炭に溶剤を添加し、触媒として水酸化鉄又はパ
イライトをその鉄の量として前記石炭の無水無灰分換算
の石炭質量に対して1質量%以下となるように添加し、
助触媒として単体硫黄を添加した混合体を温度:420 〜
480 ℃、圧力:10〜20MPa で水添する水添工程と、該水
添工程で得られる水添生成物から硫化鉄を含む重質液化
生成物を分離して得る分離工程と、該分離工程で得られ
る硫化鉄を含む重質液化生成物を前記水添工程へ循環す
る循環工程とを有する石炭の液化方法であって、前記水
添工程での気相部の硫化水素ガスの体積濃度を0.4 〜1.
5 %に調整することを特徴とする石炭の液化方法である
(第1発明)。
炭が褐炭であって、硫化水素ガスに転化し得る硫黄の含
有量が該褐炭の無水無灰分換算の褐炭質量に対して3%
以下である請求項1記載の石炭の液化方法である(第2
発明)。
り、例えば次のようにして実施する。石炭に溶剤を添加
し、触媒として水酸化鉄又はパイライトをその鉄の量と
して前記石炭の無水無灰分換算の石炭質量に対して1質
量%以下となるように添加し、助触媒として単体硫黄を
添加して、スラリー状混合体を得る。次に、該スラリー
状混合体に水素を添加し、温度:420 〜480 ℃、圧力:
10〜20MPa の水添反応条件で水添反応塔において水添す
る水添工程を遂行する。それと共に、該水添工程で得ら
れる水添生成物から硫化鉄を含む重質液化生成物を分離
して得、この硫化鉄を含む重質液化生成物を前記水添工
程へ循環して供給する(即ち、ボトムリサイクル法によ
り循環供給する)。このとき、前記水添工程での気相部
の硫化水素ガスの体積濃度を0.4 〜1.5 %に調整する。
この硫化水素ガスの体積濃度の調整は、前記単体硫黄の
添加量を調整することにより行う。即ち、助触媒として
添加された単体硫黄の量が比較的多い場合、水添工程に
おいて単体硫黄は助触媒として作用するだけでなく、水
素と反応して硫化水素ガスを生成するので、単体硫黄の
量を調整することにより、水添工程での気相部(水添反
応塔内の気相部)での硫化水素ガスの体積濃度を調整す
ることができ、かかる調整により硫化水素ガスの体積濃
度を0.4 〜1.5 %に調整する。より具体的には、水添工
程での気相部の硫化水素ガスの体積濃度が0.4 〜1.5 %
になるように、単体硫黄の添加量を調整する。
鉄を含む重質液化生成物を水添工程へ循環使用するに際
し、硫化鉄の触媒活性の低下を抑制し得て高い触媒活性
を維持し得る技術を開発すべく研究した結果、水添反応
塔内の気相部の硫化水素ガスの濃度を0.4 〜1.5 vol(体
積)%に調整すると、硫化鉄の触媒活性の低下が抑制さ
れて硫化鉄の高い触媒活性が維持されるという新規知見
を得、この知見に基づき完成されたものである。
酸化鉄またはパイライトをその鉄の量として前記石炭の
無水無灰分換算の石炭質量に対して1質量%以下となる
ように添加し、助触媒として単体硫黄を添加した混合体
を温度:420 〜480 ℃、圧力:10〜20MPa で水添する水
添工程と、該水添工程で得られる水添生成物から硫化鉄
を含む重質液化生成物を分離して得る分離工程と、該分
離工程で得られる硫化鉄を含む重質液化生成物を前記水
添工程へ循環する(ボトムリサイクル法により循環す
る)循環工程とを有する石炭の液化方法において、前記
水添工程での単体硫黄の添加量を調整することにより前
記水添工程での気相部の硫化水素ガスの濃度を調整する
ことができ、この硫化水素ガスの濃度を0.4 〜1.5 vol
(体積)%に調整すると、従来の石炭の液化方法の場合
と異なり、触媒作用を発揮するピロタイトの形態の硫化
鉄の脱硫が生じ難く、触媒活性が小さいとされるトロイ
ライトの形態の硫化鉄の生成を抑制し得、そのため、硫
化鉄の触媒活性の低下を抑制し得て高い触媒活性を維持
し得、ひいては従来の石炭の液化方法の場合に比較して
液化油収率を向上し得るという新規知見が得られた。
により水添工程での気相部の硫化水素ガスの体積濃度を
調整することができるのは、単体硫黄は鉄系触媒を硫化
鉄にする助触媒として作用するだけでなく、水添工程に
おいて水素と反応し、硫化水素ガスを生成するからであ
る。即ち、助触媒として単体硫黄を添加する際、鉄系触
媒の鉄分よりも原子比で過剰に単体硫黄を添加すると、
この過剰分の単体硫黄は水添系内の水素と反応し、硫化
水素ガスを生成する。従って、かかる単体硫黄の量によ
り硫化水素ガスの生成量を変化させ得るからである。
ものであり、本発明に係る石炭の液化方法は、前述の如
く、石炭に溶剤を添加し、触媒として水酸化鉄又はパイ
ライトをその鉄の量として前記石炭の無水無灰分換算の
石炭質量に対して1質量%以下となるように添加し、助
触媒として単体硫黄を添加した混合体を温度:420 〜48
0 ℃、圧力:10〜20MPa で水添する水添工程と、該水添
工程で得られる水添生成物から硫化鉄を含む重質液化生
成物を分離して得る分離工程と、該分離工程で得られる
硫化鉄を含む重質液化生成物を前記水添工程へ循環する
循環工程とを有する石炭の液化方法であって、前記水添
工程での気相部の硫化水素ガスの体積濃度を0.4 〜1.5
%に調整するようにしている(第1発明)。
れば、石炭に溶剤を添加し、触媒として水酸化鉄又はパ
イライトをその鉄の量として前記石炭の無水無灰分換算
の石炭質量に対して1質量%以下となるように添加し、
助触媒として単体硫黄を添加した混合体を温度:420 〜
480 ℃、圧力:10〜20MPa で水添する水添工程を遂行す
ると共に、該水添工程で得られる水添生成物から硫化鉄
を含む重質液化生成物を分離して得、この硫化鉄を含む
重質液化生成物を前記水添工程へ循環する(ボトムリサ
イクル法により循環する)に際し、従来の石炭の液化方
法の場合と異なり、触媒作用を発揮するピロタイトの形
態の硫化鉄の脱硫が生じ難く、触媒活性が小さいとされ
るトロイライトの形態の硫化鉄の生成を抑制し得、その
ため、硫化鉄の触媒活性の低下を抑制し得て高い触媒活
性を維持し得、ひいては従来の石炭の液化方法の場合に
比較して液化油収率を向上し得るようになる。
整される硫化水素ガスの体積濃度を0.4 〜1.5 %として
いるのは、0.4 %未満にすると硫化鉄の触媒活性が低下
し、それに伴って液化油収率が低下し、1.5 %超にする
と液化油収率が低下して不充分となるからである。
化鉄を含む重質液化生成物を水添工程へ循環使用するに
際し、水添工程での気相部の硫化水素ガスの体積濃度を
0.4〜1.5 %にすると硫化鉄の触媒活性が高く、液化油
収率が向上し、0.4 %未満にした場合や1.5 %超にした
場合には液化油収率が低下する理由については、必ずし
も明らかではないが、次のように考えられる。
においてピロタイトの形態の硫化鉄に転化し、このピロ
タイトが触媒活性を有し、触媒作用を発揮すると考えら
れている。このピロタイトは、ボトムリサイクル法によ
り重質液化生成物と共に循環される過程において徐々に
脱硫され、触媒活性が小さいとされるトロイライトの形
態の硫化鉄に転化し、硫化鉄の触媒活性が劣化してく
る。そこで、単体硫黄の添加量を増やし水添工程での気
相部の硫化水素ガスの体積濃度を0.4 %以上に増加させ
ると、硫化鉄(ピロタイト)の脱硫が抑制でき、触媒活
性の高いピロタイトの状態が維持され、ひいては液化油
収率が向上する。一方、単体硫黄は溶剤中の水素と反応
し硫化水素ガスを生成するが、単体硫黄の添加量が増加
すると共に溶剤が脱水素され、溶剤中の移行可能性水素
量が減少し、溶剤の水素供与性能が低下してくる。水添
工程での気相部の硫化水素ガス濃度を1.5vol%超とした
場合には、それに応じて単体硫黄の添加量が多くなり、
硫化鉄の脱硫が抑制される効果よりも、溶剤の脱水素に
よる溶剤の水素供与性能の低下の影響が大きくなり、水
添反応性が低下し、ひいては液化油収率が低下するもの
と考えられる。
化水素ガスの体積濃度とは、水添工程での気相部の体積
V1から、この気相部中の水、軽質油等で、圧力:1気圧
(0.1MPa )、常温としたときに凝縮する性質を有する気
体の占める体積V2を引いた体積V3(=V1−V2)中に、占
める硫化水素ガスの体積V4の割合のことである。即ち、
100 ×V4/V3の値のことである。
特には限定されず、褐炭等の低炭化度炭の他、亜瀝青炭
や瀝青炭を使用することができるが、安価で比較的穏和
な反応条件で液化し易い褐炭を用いるのが望ましい。
褐炭中の硫黄には硫化水素ガスを発生するものもある。
褐炭中の硫黄の量は、炭種、炭層によって異なり、その
量は無水無灰炭基準で(無水無灰分換算の石炭質量に対
して)0.1 〜数%と種々のものが存在する。これらの褐
炭の中で、硫化水素ガスに転化し得る硫黄の含有量が多
く、その含有量が無水無灰炭基準で3%を超える褐炭を
用いる場合、過剰の水素ガスを水添塔内に供給する等の
対策をとらない限り、褐炭中の硫黄から生成する硫化水
素ガスの水添塔内気相部における体積濃度が1.5 %を越
えてしまい、水添塔内気相部の硫化水素ガスの体積濃度
を0.4 〜1.5 %に調整し難くなり、0.4〜1.5 %に調整
できなくなることもあり得る。即ち、硫化水素ガスに転
化し得る硫黄の褐炭中の含有量が無水無灰炭基準で3%
を超える場合には、硫黄量が多過ぎて、硫黄と水素との
反応により生成した硫化水素ガスにより硫化鉄の脱硫が
抑制される効果よりも、硫黄による溶剤の脱水素によっ
て溶剤の水素供与性能が低下する影響の方が大きくなり
易く、ひいては液化油収率が低下し易くなるという傾向
がある。従って、石炭として褐炭を用いる場合、硫化水
素ガスに転化し得る硫黄の含有量が該褐炭の無水無灰分
換算の褐炭質量に対して3%以下である褐炭を用いるこ
とが望ましい(第2発明)。
かい粒度に粉砕されたものが使用され、これによれば有
利に石炭液化を行うことができる。
パイライトを用いられるが、これらは鉄系触媒の中でも
比較的活性が優れている。この中、水酸化鉄触媒として
はリモナイト等の鉱物、α−オキシ水酸化鉄(ゲーサイ
ト)、γ−オキシ水酸化鉄等が用いられる。これら触媒
の添加量は、多いほど液化油収率は向上するものの、鉄
の量として無水無灰炭に対して1質量%超としても、触
媒添加量の増加に対する液化油収率の増加量が少なくな
り、経済的でないことから、1質量%以下とする。
緩和な条件として、反応温度:420〜480 ℃、反応圧
力:10〜20MPa とする。
件によっても異なるが、通常180 〜420 ℃の沸点範囲の
留分から選ばれた石炭系溶剤が使用される。この溶剤
は、スラリー調整工程(石炭、溶剤及び触媒が共存する
スラリー状混合体を得る工程)で使用され、そして、水
添工程で得られる水添生成物からの溶剤分離工程、又
は、油分分離工程(水添生成物から蒸留等の分離操作に
より、溶剤を分離して得る工程、又は、油分を分離して
得る工程)で溶剤として分離される。
倍量が添加されるので、溶剤の使用量は膨大なものとな
る。そのため、前記溶剤分離工程、油分分離工程の中、
油分分離工程を採用し、油分分離工程において油分(軽
質油、中質油、重質油)を製品として得る石炭の液化方
法においては、この油分の一部が石炭液化溶剤としてス
ラリー調整工程に循環使用される場合が多い。
液化生成物を水添工程へ循環する方法としては、特には
限定されず、前記油分分離工程において得られる油分と
ともにスラリー調整工程に循環してもよいし、直接水添
反応塔に循環してもよく、或いは、油分と分離された状
態でスラリー調整工程又は水添反応塔に循環してもよ
い。水添生成物から分離した硫化鉄を含む重質液化生成
物の全量を循環してもよいし、一部を循環し、残りを系
外に抜き出してもよい。
その要旨を越えない限り、これら実施例に限定されるも
のではない。
積:8.5リットル(この内、液相部4リットル)の水添反
応器(塔)を直列に3塔有する連続反応装置を用いて、
下記の如き方法により石炭液化を実施した。
水酸化鉄触媒としてγ−オキシ水酸化鉄触媒を添加し、
助触媒として単体硫黄を添加し、更に石炭液化溶剤を添
加して、スラリー状混合体を得た。このとき、γ−オキ
シ水酸化鉄触媒の添加量は、表2に示す如く、鉄量とし
て無水無灰炭基準(以降、mafcという)で1.0 質量%と
なるようにし、石炭液化溶剤の添加量は無水無灰炭基準
で250 質量%となるようにした。単体硫黄の添加量は、
表2に示す如く、触媒の鉄量に対する原子比での倍率
(以降、S/Fe原子比という)で2.0 となるようにし
た。
熱器で予熱した後、前記連続反応装置の水添反応塔へ供
給し、反応温度:450 ℃、反応圧力:14.7MPa 、見かけ
反応時間:1hの条件で水添した。但し、予熱器手前に
吹き込む水素ガス量を1.2Nm3/kg・mafcとした。最前段
(1塔目)の水添反応塔にはプロセスガスを3.4Nm3/kg
・mafcの量だけ循環した。
0 ℃以上の重質液化生成物を分離して得、これを無水無
灰炭基準で100 %を原料調整工程(スラリー状混合体を
得る工程)に循環し、ボトムリサイクル法により水添工
程へ循環した。このとき、スラリー状混合体中の溶剤量
は無水無灰炭基準で約150 %となる。
の気相部での硫化水素ガスの体積濃度は0.4 %であっ
た。水添反応塔内における硫化鉄中、ピロタイトがトロ
イライトに転化した割合は30%であった。油分収率は無
水無灰炭基準で64.8質量%であった。
スの体積濃度は、次のようにして分析して求めた。水添
反応塔内のガスを一部採取し、採取したガスの内、常温
・1気圧において凝縮しない成分について、ガスクロマ
トグラフィーで分析し、硫化水素ガスの体積濃度を測定
した。
子比で3.0 となるようにし、この点を除き、実施例1と
同様の方法により石炭液化を実施した。
の気相部での硫化水素ガスの体積濃度は1.1 %であっ
た。水添反応塔内における硫化鉄中、ピロタイトがトロ
イライトに転化した割合は25%であった。油分収率は無
水無灰炭基準で66.1質量%であった。
子比で3.5 となるようにし、この点を除き、実施例1と
同様の方法により石炭液化を実施した。
の気相部での硫化水素ガスの体積濃度は1.5 %であっ
た。水添反応塔内における硫化鉄中、ピロタイトがトロ
イライトに転化した割合は25%であった。油分収率は無
水無灰炭基準で65.2質量%であった。
子比で1.2 となるようにし、この点を除き、実施例1と
同様の方法により石炭液化を実施した。
の気相部での硫化水素ガスの体積濃度は0.1 %であっ
た。水添反応塔内における硫化鉄中、ピロタイトがトロ
イライトに転化した割合は80%であった。油分収率は無
水無灰炭基準で49.0質量%であった。
子比で1.5 となるようにし、この点を除き、実施例1と
同様の方法により石炭液化を実施した。
の気相部での硫化水素ガスの体積濃度は0.3 %であっ
た。水添反応塔内における硫化鉄中、ピロタイトがトロ
イライトに転化した割合は45%であった。油分収率は無
水無灰炭基準で53.7質量%であった。
子比で4.0 となるようにし、この点を除き、実施例1と
同様の方法により石炭液化を実施した。
の気相部での硫化水素ガスの体積濃度は1.9 %であっ
た。水添反応塔内における硫化鉄中、ピロタイトがトロ
イライトに転化した割合は20%であった。油分収率は無
水無灰炭基準で57.5質量%であった。
に、水添反応塔内の気相部における硫化水素ガスの体積
濃度が0.4 %未満である場合、硫化鉄中のトロイライト
の比率が45〜80%と多く、油分収率は50質量%程度と低
い。これは、水添反応塔内気相部の硫化水素ガス濃度が
低いため、ピロタイトが脱硫され、触媒活性の小さいト
ロイライトの生成量が増加し、硫化鉄の触媒活性が低下
し、水素ガスから溶剤への水素供与速度が遅く、その結
果、油分収率が低くなったものと考えられる。これに対
し、水添反応塔内気相部における硫化水素ガスの体積濃
度を0.4 〜1.5 %に調整すると、ピロタイトの脱硫が抑
制され、硫化鉄中のトロイライトの比率が25〜30%に減
少し、触媒の活性劣化が抑制され、その結果、65質量%
程度の高い油分収率が得られた。しかし、水添反応塔内
気相部の硫化水素ガスの体積濃度を1.9 %に増加させる
と、さらにピロタイトの脱硫が抑制され、硫化鉄中のト
ロイライトの比率が20%まで減少するものの、その一方
で、単体硫黄添加量の増加に伴って溶剤自身が脱水素さ
れ、溶剤の移行可能水素量が減少し、溶剤の水素供与能
が低下し、その結果、油分収率が低下したものと考えら
れる。
ける硫化水素ガスの体積濃度が0.4%未満でも、1.5 %
を超えても油分収率が低く、硫化水素ガスの体積濃度が
0.4〜1.5 %の場合に油分収率が高く有効であることが
わかる。
石炭に溶剤を添加し、触媒として水酸化鉄又はパイライ
トをその鉄の量として前記石炭の無水無灰分換算の石炭
質量に対して1質量%以下となるように添加し、助触媒
として単体硫黄を添加した混合体を温度:420 〜480
℃、圧力:10〜20MPa で水添する水添工程を遂行すると
共に、該水添工程で得られる水添生成物から硫化鉄を含
む重質液化生成物を分離して得、この硫化鉄を含む重質
液化生成物を前記水添工程へ循環する(ボトムリサイク
ル法により循環する)に際し、従来の石炭の液化方法の
場合と異なり、触媒作用を発揮するピロタイトの形態の
硫化鉄の脱硫が生じ難く、触媒活性が小さいとされるト
ロイライトの形態の硫化鉄の生成を抑制し得、そのた
め、硫化鉄の触媒活性の低下を抑制し得て高い触媒活性
を維持し得、ひいては従来の石炭の液化方法の場合に比
較して液化油収率を向上し得るようになる。
Claims (2)
- 【請求項1】 石炭に溶剤を添加し、触媒として水酸化
鉄又はパイライトをその鉄の量として前記石炭の無水無
灰分換算の石炭質量に対して1質量%以下となるように
添加し、助触媒として単体硫黄を添加した混合体を温
度:420 〜480℃、圧力:10〜20MPa で水添する水添工
程と、該水添工程で得られる水添生成物から硫化鉄を含
む重質液化生成物を分離して得る分離工程と、該分離工
程で得られる硫化鉄を含む重質液化生成物を前記水添工
程へ循環する循環工程とを有する石炭の液化方法であっ
て、前記水添工程での気相部の硫化水素ガスの体積濃度
を0.4 〜1.5 %に調整することを特徴とする石炭の液化
方法。 - 【請求項2】 前記石炭が褐炭であって、硫化水素ガス
に転化し得る硫黄の含有量が該褐炭の無水無灰分換算の
褐炭質量に対して3%以下である請求項1記載の石炭の
液化方法。
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