JP3483215B2 - エチレン系共重合体及びそれを含有する熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

エチレン系共重合体及びそれを含有する熱可塑性樹脂組成物

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は新規なエチレン系共重合
体及びそれを含有する熱可塑性樹脂組成物に関する。さ
らに詳しくは、エチレンと炭素数3ないし20のα−オ
レフィンの一種以上とから誘導され、溶融流動の活性化
エネルギーの制御が可能であって、ブロー成形や真空成
形などに必要とされるダイスエル比が高く、加工性に優
れる上、密度,融点,結晶性などの物性をコントロール
することが可能であるなどの特徴を有するエチレン系共
重合体、及びこのものを含有する熱可塑性樹脂組成物に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ポリエチレンやエチレン−α−オ
レフィン共重合体は、分子量,分子量分布,共重合性
(ランダム性,ブロック性,分岐度分布)、さらにはジ
エンなどの第3成分の添加により分岐を導入するなどで
一次構造をコントロールすることがなされてきた。とこ
ろで、エチレン系重合体の成形方法は多岐にわたり、代
表的な成形方法としては、例えば射出成形,押出し成
形,ブロー成形,インフレーション成形,圧縮成形,真
空成形などが知られている。このような成形方法におい
ては、加工特性を向上して加工コストを低下させるため
に、高速成形性の付与や成形加工の低エネルギー化の試
みが長年にわたって行われてきており、それぞれの用途
に合った最適な物性を付与し、最適な加工特性でもって
成形することが重要な課題となっている。
【0003】また、近年、均一系メタロセン系触媒は、
オレフィン間の共重合性に優れ、得られるポリマーの分
子量分布が狭く、かつ従来のバナジウム系触媒と比較し
て極めて高い触媒活性を示すことが明らかにされた。し
たがって、このような特徴をいかして様々な用途分野へ
の展開が期待されている。しかしながら、一方でメタロ
セン系触媒により得られたポリオレフィンは、その成形
加工特性に問題が多く、ブロー成形やインフレーション
成形の際には制限を免れないという欠点を有している。
【0004】従来知られている低密度ポリエチレン(L
DPE)は、エチレンの高圧ラジカル重合によって得ら
れ、長鎖分岐及び短鎖分岐の両方を有する構造のもので
ある。該長鎖分岐はポリマーのラジカル生長末端とポリ
マーとの分子間水素移動反応によって生成することがい
われている。一方、短鎖分岐の生成する機構については
種々の説明がなされている。例えば back-biting機構が
提案されている〔「ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン
・ケミカル・ソサエティ(J. Am. Chem. Soc.)」第75
巻,第6110ページ(1953年)〕。これは、生長
ラジカル末端で六員環中間体を経由し、水素移動による
ブチル分岐の生成を合理的に説明したものある。また、
高圧下で生成するエチレン2分子会合体と生長ラジカル
末端の水素移動反応によりブチル分岐が、またエチレン
2分子会合体中での水素移動反応によるブテン−1の生
成によりエチル分岐が導入されることが報告されている
〔「マクロモレキュラル・ケミストリィ(Makromol. Che
m.) 」第181巻,第2811ページ(1981
年)〕。さらに、エチル分岐の生成が、エチル分岐ラジ
カルへのポリマー主鎖からの水素移動によることが報告
されている〔「ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエン
ス(J. Polym. Sci.) 」第34巻,第569ページ(1
959年)〕。
【0005】このように、低密度ポリエチレンの長鎖分
岐や短鎖分岐の生成は、ラジカル重合に基づく(1)水
素移動反応,(2)高圧下でのエチレン分子会合による
ラジカル重合反応性の変化によることに集約され、一般
的に認められた反応機構である。したがって、上記反応
過程において、長鎖分岐や短鎖分岐の存在量、短鎖分岐
の炭素数を任意に制御することは不可能であり、特にメ
チル分岐,プロピル分岐,ヘキシル分岐、また分岐α−
オレフィンより誘導される短鎖分岐(例えば4−メチル
ペンテン−1分岐)などを導入し又は制御することに限
界がある。このような低密度ポリエチレンは、長鎖分岐
によって、溶融張力,溶融流動の活性化エネルギーが大
きいために、高速成形性に優れ、フィルムなどに適して
いるが、分子量分布が広く、低分子量成分を含むため、
耐環境応力亀裂性(ESCR)が低く、かつ耐衝撃性が
小さいという欠点を有している。
【0006】一方、高密度ポリエチレン骨格に、長鎖分
岐を導入したエチレン系重合体が種々開示されている。
例えば(1)α,ω−ジエン、環式エンドメチレン系ジ
エンを用いた長鎖分岐を有するオレフィン系共重合体
(特開昭47−34981号公報)、(2)非共役ジエ
ンとオレフィンとを共重合させる際、重合を2段階で行
い、高分子量体部の非共役ジエン含有量が、低分子量体
部のそれより多い共重合体の製造方法(特開昭59−5
6412号公報)、(3)メタロセン/アルミノキサン
系触媒を用いた、エチレン/α−オレフィン/1,5−
ヘキサジエン共重合体(特表平1−501555号公
報)、(4)0価又は二価のニッケル化合物と特定のア
ミノビス(イミノ)化合物を触媒とし、α,ω−ジエン
をエチレンと共重合することにより、長鎖分岐を導入す
る方法(特開平2−261809号公報)、(5)上記
(4)と同一の触媒成分を用い、エチレンのみを重合す
ることによって得られる短鎖分岐,長鎖分岐の双方を含
むポリエチレン(特開平3−277610号公報)など
が開示されている。
【0007】しかしながら、上記(1)の共重合体にお
いては、ジエン成分が長鎖分岐の形成に関与すると同時
に、架橋反応を併発し、フィルム成形時にゲルが発生し
たり、また溶融特性が逆に低下し、制御範囲が極端に狭
い上、共重合反応性も低く、低分子量体の生成に基づく
物性低下などの問題がある。(2)の共重合体の製造方
法においては、高分子量成分に長鎖分岐を導入するため
に、架橋による分子量の増大が著しく、不溶不融化やゲ
ル化を併発するおそれがあり、制御範囲がせまい上、共
重合反応性も低く、低分子量体の生成に基づく物性低下
などの問題がある。また、(3)の共重合体において
は、分子量分布が狭く、ブロー成形やフィルム成形など
に対して不利である上、1,5−ヘキサジエンの環化反
応の進行によって分岐点を形成するための有効モノマー
濃度が低いなどの欠点がある。さらに、(4)の長鎖分
岐を導入する方法はゲルの発生や物性の制御範囲がせま
いなどの問題を有している。また、(5)のポリエチレ
ンは、エチル分岐,ブチル分岐を全く含まない重合体で
あり、物性の制御、例えば密度の制御をメチル分岐で行
うため、機械物性が低下しやすいなどの問題点を有して
いる。
【0008】また、共重合方法により加工特性を付与し
たエチレン系重合体の製造方法、例えば予備重合により
高分子量体(〔η〕=10〜20デシリットル/g)を
製造したのち、本重合によってエチレン/α−オレフィ
ン共重合体を製造する方法が開示されている(特開平4
−55410号公報など)。しかしながら、この方法に
おいては、得られる共重合体の溶融特性を変化させ、溶
融張力を増加させる効果を示すものの、フィルムゲルが
発生しやすいという欠点がある。さらに、メタロセン系
触媒を用いたエチレン系重合体やその製造方法、例えば
(1)拘束幾何型触媒を用いてエチレン系重合体を製造
する方法及びそれによって得られるエチレン系共重合体
(特開平3−163088号公報、WO93/0822
1号公報)、(2)多孔質無機酸化物(アルミニウム化
合物)を担体として用いた、担持メタロセン触媒による
ポリオレフィンの製造方法(特開平4−100808号
公報)、(3)特定のハフニウム系触媒によって、エチ
レンとα−オレフィンとから誘導される分子量分布が狭
く、溶融流動特性を向上させたエチレン/α−オレフィ
ン共重合体(特開平2−276807号公報)が開示さ
れている。
【0009】しかしながら、上記(1)の技術において
は、密度などのコントロールをエチレン連鎖へのα−オ
レフィン単位の導入によって実施し、得られたものは実
質的に線状ポリマーであり、ダイスエル比も小さく、ブ
ロー成形に制限がある。また、(2)の製造方法におい
ては、得られるエチレンとα−オレフィンとの共重合体
はダイスエル比が大きいとされているが、ここに開示さ
れたエチレン/ブテン−1共重合体の融点に対するダイ
スエル比の関係をみると、融点の上昇に伴い、ダイスエ
ル比が低下することは明らかである。したがって、フィ
ルムやシート成形時に問題となるネックインに関係する
ダイスエル比を融点範囲の広い領域で制御した共重合体
を提供することはできない。一方、(3)に開示されて
いるものは、α−オレフィン単位を必須単位として含む
共重合体であり、さらに樹脂密度0.92g/cm3 を超
える共重合体は含まれていない。また、(1)及び
(3)においては、分岐の導入に対して、エチレン/α
−オレフィン共重合体の融点が大きく低下し、かつ機械
的強度も低下する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
事情のもとで、溶融流動の活性化エネルギーの制御が可
能であって、ブロー成形や真空成形などに必要とされる
ダイスエル比が高く、加工特性に優れる上、密度,融
点,結晶性などの物性をコントロールすることができ、
同一密度で比較した場合、融点が高いなどの特徴を有
し、通常の高密度ポリエチレン(HDPE)、上記の特
開平3−163088号公報、WO93/8221号公
報及び特開平2−276809号公報に開示されたエチ
レン/α−オレフィン共重合体、高圧法低密度ポリエチ
レン(LDPE)とは異なる新規なエチレン系共重合体
を提供すること目的としてなされたものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記の好
ましい性質を有する新規なエチレン系共重合体を開発す
べく鋭意研究を重ねた結果、エチレンと炭素数3ないし
20のα−オレフィンの一種以上とから誘導されたもの
であって、重量平均分子量(Mw)とダイスエル比(D
R ) とが特定の関係にあり、かつ溶融流動の活性化エネ
ルギー(Ea)が大きく、一般にLDPEに存在する四
級炭素が存在しない重量平均分子量(Mw)が特定の範
囲にあるエチレン系共重合体、及びこのものを水素化処
理してなるエチレン系共重合体がその目的に適合しうる
ことを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成
したものである。
【0012】すなわち、本発明は、エチレンと炭素数3
ないし20のα−オレフィンの一種以上とから誘導され
る重合体において、(イ)ゲルパーミエーションクロマ
トグラフィー法によって測定したポリエチレン換算の重
量平均分子量(Mw)が5,000〜2,000,00
0の範囲にあること、(ロ)該重量平均分子量(Mw)
とダイスエル比(DR)との関係が、式 1.75>DR>0.16+0.21×logMw を満足すること、(ハ)溶融流動の活性化エネルギー
(Ea)が8〜20kcal/モルの範囲にあること、
及び(ニ)ポリマー主鎖中に四級炭素が存在しないこと
を特徴とするエチレン系共重合体〔但し、プロトン核磁
気共鳴スペクトル法( 1 H−NMR)によって得られる
1.2〜1.4ppm領域のメチレン基と0.8〜1.
0ppm領域のメチル基とのモル比〔CH 3 /CH 2 〕が
0.005〜0.1の範囲にあり、かつ示差走査熱量計
(DSC)によって観測した融点(Tm)と〔CH 3
CH 2 〕とが、式 Tm≧131−1340〔CH 3 /C
2 〕の関係を満たすものを除く。〕、及びこのものを
水素化(水添)処理してなるエチレン系共重合体、並び
にこれらのエチレン系共重合体を含有してなる熱可塑性
樹脂組成物を提供するものである。
【0013】本発明のエチレン系共重合体は、通常のH
DPE,L−LDPE(線状低密度ポリエチレン),L
DPEとは異なり、この相違は、以下に示す(A)一次
構造の評価及び(B)物性評価により判定することがで
きる。 (A)一次構造の評価による判定 HDPE,L−LDPE,LDPEとの比較13 C−核磁気共鳴スペクトルの測定により、少なくとも
HDPE,L−LDPE,LDPEとは異なる構造を有
することが分かる。 (a)HDPE(比較的低分子量体)との比較 通常のHDPE(比較的低分子量体)は、末端構造が、
【0014】
【化1】
【0015】A:13.99,B:22.84,C:30.0
0,D:32.18(単位ppm) (ただし、A,B,Dは微少ピークである。)で表さ
れ、分岐に基づくピークは存在しない。 (b)エチレン/α−オレフィン共重合体との比較 (エチレン−ブテン−1共重合体)エチレン−ブテン−
1共重合体は、分岐点近傍の構造として、
【0016】
【化2】
【0017】A:11.14,B:26.75,C:27.3
5,D:30.00,E:30.49,F:34.11,G:
39.75(単位ppm)で表される構造を有している。 (エチレン−ヘキセン−1共重合体)エチレン−ヘキセ
ン−1共重合体は、分岐点近傍の構造として、
【0018】
【化3】
【0019】A:14.08,B:23.36,C:27.3
3,D:29.57,E:30.00,F:30.51,G:
34.22,H:34.61,I:38.23(単位ppm)
で表される構造を有している。 (エチレン/4−メチルペンテン−1共重合体)エチレ
ン/4−メチルペンテン−1共重合体は、分岐点近傍の
構造として、
【0020】
【化4】
【0021】A:23.27,B:26.05,C:27.1
4,D:30.00,E:30.51,F:34.88,G:
36.03,H:44.83(単位ppm)で表される構造
を有している。 (エチレン/オクテン−1共重合体)エチレン/オクテ
ン1共重合体は、分岐点近傍の構造として、
【0022】
【化5】
【0023】A:14.02,B:22.88,C:27.2
8,D:27.33,E:30.00,F:30.51,G:
32.20,H:34.59,I:38.25(単位ppm)
で表される構造を有している。 (エチレン/プロピレン共重合体)エチレン/プロピレ
ン共重合体は、分岐点近傍の構造として、
【0024】
【化6】
【0025】A:19.98,B:27.47,C:30.0
0,D:33.31,E:37.59(単位ppm)で表さ
れる構造を有している。 以上のようなエチレン/α−オレフィン共重合体は、α
−オレフィン由来の短鎖分岐が存在し、長鎖分岐が存在
していない。
【0026】(c)LDPEとの比較 LDPEの13C−NMRスペクトルは複雑であって、短
鎖分岐(エチル,ブチル分岐)と長鎖分岐(少なくとも
ヘキシル分岐以上)とが存在しており、分岐点近傍の構
造として次に示す(イ)〜(ホ)の構造を主に有すると
考えられている。 (イ)孤立した分岐(Bn)
【0027】
【化7】
【0028】(ロ)三級炭素に結合したエチル−エチル
(1,3)分岐(peq)
【0029】
【化8】
【0030】(ハ)孤立したエチル−エチル(1,3)
分岐(pee)
【0031】
【化9】
【0032】(ニ)孤立したエチル−プロピル(1,
3)分岐(pep)
【0033】
【化10】
【0034】(ホ)孤立したメチル−エチル(1,4)
分岐(pme)
【0035】
【化11】
【0036】LDPEは、上記(イ)〜(ホ)の構造を
主に有すると考えられており、これらに対応する同定が
行われている〔「マクロモレキュルズ(Macromolecule
s)」第17巻,第1756ページ(1984年)〕。こ
の文献によれば、第1表に示すように同定がなされ、少
なくともヘキシル分岐以上の長鎖分岐(32.18pp
m)とエチル分岐との存在が確認されている。
【0037】
【表1】
【0038】13C−核磁気共鳴スペクトルによって、
長鎖分岐の存在を確認する試み ヘキシル分岐を有するエチレン/オクテン−1共重合体
の比較により、ヘキシル分岐の存在を確認し、定量化す
る手法が提案されている〔「マクロモレキュルズ(Macro
molecules)」第14巻,第215ページ(1981
年)、同第17巻,第1756ページ(1984
年)〕。それらによると、27.3ppm付近に出現する
ピークが、エチレンオクテン−1共重合体で出現するピ
ークと異なることを、LDPEとのブレンド物の13C−
核磁気共鳴スペクトルの測定から明らかにしたとしてい
る。また、長鎖分岐のモデル物質として用いるノルマル
3674では、末端より3番目の炭素シグナルが32.1
8ppmに出現する。一方、エチレン/オクテン−1共
重合体のヘキシル分岐の末端より、3番目の炭素シグナ
ルは32.22ppmに出現する。分岐鎖長によりケミカ
ルシフトが異なることを利用して、エチレン/オクテン
−1共重合体と長鎖分岐の存在するLDPEをブレンド
し、13C−核磁気共鳴スペクトルを測定すると、2つの
ピークが出現することから、LDPEの長鎖分岐を同定
し、かつ定量を行うことができるとしている。このよう
な手法により、LDPEは長鎖分岐を有することが確認
された。
【0039】(B)物性評価による判定 溶融流動体の解析による方法 長鎖分岐は、溶融粘性や粘弾性的性質などの溶融体の流
動挙動に関与し、樹脂の加工性,光学的性質あるいは、
環境応力亀裂抵抗などの機械的特性に重要な影響を及ぼ
すことが知られており、これらを測定・評価することに
より、間接的にその存在を明らかにすることができる。
また、長鎖分岐の存在を裏ずける理由として、次のよう
な事実が挙げられる。LDPEのMI−Mwの関係は、
長鎖分岐が多くなるにつれて直鎖ポリエチレン(HDP
E)の関係からずれ、すなわち、同一MwでLDPEは
より小さいMIを示す。また、レオメトリックス社製メ
カニカルスペクトロメータ(RMS800)によって流
動特性を調べ、シフトファクターから求めた活性化エネ
ルギー(Ea)はHDPEが6kcal/molと小さ
く、一方、LDPEは約12kcal/molと大きい
ことから、流動性が長鎖分岐の影響を受けていることが
確認できる。
【0040】次に、本発明のエチレン系共重合体の特性
について説明する。本発明のエチレン系共重合体は、エ
チレンと炭素数3〜20のα−オレフィン、例えばプロ
ピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、3
−メチル−ブテン−1、4−メチル−ペンテン−1、デ
セン−1、オクタデセン−1、1−エイコセンなどとの
共重合体である。本発明のエチレン系共重合体において
は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GP
C)法〔装置:ウォーターズALC/GPC 150
C,カラム:東ソー製,TSK HM+GMH6×2,
流量1.0ミリリットル/分,溶媒:1,2,4−トリク
ロロベンゼン,135℃〕によって測定したポリエチレ
ン換算の重量平均分子量(Mw)は5000〜2,000,
000、好ましくは9000〜1,500,000、より好
ましくは10,000〜1,000,000の範囲である。こ
の重量平均分子量(Mw)が5000未満では力学的性
質の発現が不充分であるし、2,000,000を超えると
加工特性が低下する。また、該GPC法によって測定し
たポリエチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均
分子量(Mn)との比Mw/Mnは、通常1.5〜70好
ましくは1.6〜60、より好ましくは2.0〜50の範囲
である。
【0041】また、本発明のエチレン系共重合体におい
ては、上記重量平均分子量(Mw)とダイスエル比(D
R ) とが、式 DR > 0.5+0.125×logMw 好ましくは、 1.80>DR > 0.36+0.159×logMw より好ましくは、 1.75>DR > 0.16+0.21×logMw さらに好ましくは、 1.70>DR >−0.11+0.279×logMw の関係を満たすことが必要である。ここで、ダイスエル
比(DR ) は、東洋精機製作所性のキャピログラフを用
いて、キャピラリーノズル〔直径(D0)=1.275m
m,長さ(L)=51.03mm,L/DO =40,流入
角=90°〕より押出速度1.5mm/分(剪断速度10
sec-1) 、温度190℃の条件で押出して得られたス
トランドの直径(D1,mm)を求め、この直径をキャ
ピラリーノズル径で除した値(D1 /D0 )である。な
お、ストランドの直径(D1)は、押出したストランド長
5cm(ノズル出口から5cmの長さ)の中央部の径の
長軸及び短軸を5個の試料についてそれぞれ測定し、そ
の平均値で表した。
【0042】また、溶融流動の活性化エネルギー(E
a)が8〜20kcal/モル、好ましくは8.5〜19
kcal/モル、より好ましくは9〜18kcal/モ
ルの範囲にあることが必要であり、この活性化エネルギ
ー(Ea)が8kcal/モル未満では充分な加工特性
が得られない。なお、該活性化エネルギー(Ea)は、
温度150℃,170℃,190℃,210℃,230
℃における動的粘弾性の周波数依存性(10-2〜102
rod/sec)を測定し、170℃を基準温度として
温度一時間換算則を用い、それぞれの温度における
G’,G”のシフトファクターと絶対温度の逆数からア
レニウスの式により算出した値である。
【0043】さらに、本発明のエチレン系共重合体は、
ポリマー主鎖中に四級炭素が存在せず、かつその樹脂密
度(d)は、通常0.86〜0.96g/cm3 、好ましく
は0.865〜0.955g/cm3 、より好ましくは0.8
70〜0.950g/cm3 の範囲である。なお、該密度
は、190℃の温度においてプレスシートを作成し、急
冷したものを密度勾配管によって測定した値である。
【0044】そして、本発明のエチレン系共重合体にお
いては、分子末端に不飽和基が存在しており、この不飽
和基は、温度190℃でプレスシート(厚み100〜5
00μm)を作成し、このものの赤外線吸収スペクトル
の測定によって、容易に同定及び定量することができ
る。 末端不飽和基の種類 吸収位置(cm-1) ビニレン基 963 ビニリデン基 888 ビニル基 907 該エチレン系共重合体では、末端ビニル基の生成割合
は、上記不飽和基の総和に対して、通常30モル%以
上、好ましくは40モル%以上、より好ましくは50モ
ル%以上である。なお、該末端ビニル基の量は、式 n=0.114A907 /〔d・t〕 (ただし、nは100炭素当たりの末端ビニル基の個
数、A907 は907cm-1における吸光度、dは樹脂密
度(g/cm3 )、tはフィルムの厚さ(mm)であ
る。)によって算出することができる。
【0045】末端不飽和含有量の高いエチレン系共重合
体については、該不飽和基の変性により、ポリオレフィ
ンの欠点である、接着性,印刷性,塗装性,相溶化能,
透湿性,バリアー性といった各種機能を付与することが
可能であり、同時に分岐に基づく加工特性の向上が見込
める。さらに、分岐状マクロモノマーとして各種グラフ
ト共重合体の製造に用いることができる。一方、末端不
飽和基含有量の少ないエチレン系共重合体については、
熱安定性が向上し、分岐に基づく加工特性の向上が見込
める。また、接着,印刷性といった機能の付与に関して
は、末端不飽和基含有量の少ないエチレン系共重合体で
も、実用上変性によって充分機能を発揮する。
【0046】本発明はまた、このような末端不飽和結合
を含む炭素−炭素不飽和結合を水添処理してなるエチレ
ン系共重合体も提供するものであり、この水添処理によ
って該不飽和基を減少又は消失したエチレン系共重合体
は、熱安定性が向上したものとなる。本発明のエチレン
系共重合体(水添処理前エチレン重合体,水添処理後エ
チレン重合体)は他の熱可塑性樹脂に混合して用いるこ
とができる。他の熱可塑性樹脂としては、例えばポリオ
レフィン系樹脂,ポリスチレン系樹脂,縮合系高分子重
合体,付加重合系高分子重合体などが挙げられる。該ポ
リオレフィン系樹脂の具体例としては、高密度ポリエチ
レン;低密度ポリエチレン;ポリ−3−メチルブテン−
1;ポリ−4−メチルペンテン−1;コモノマー成分と
してブテン−1;ヘキセン−1;オクテン−1;4−メ
チルペンテン−1;3−メチルブテン−1などを用いて
得られる直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビ
ニル共重合体,エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化
物,エチレン−アクリル酸共重合体,エチレン−アクリ
ル酸エステル共重合体,エチレン系アイオノマー,ポリ
プロピレンなどが挙げられる。ポリスチレン系樹脂の具
体例としては、汎用ポリスチレン,アイソタクチックポ
リスチレン,ハイインパクトポリスチレン(ゴム変性)
などが挙げられる。縮合系高分子重合体の具体例として
は、ポリアセタール樹脂,ポリカーボネート樹脂,ナイ
ロン6,ナイロン6・6などのポリアミド樹脂、ポリエ
チレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレートな
どのポリエステル樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂,
ポリイミド樹脂,ポリスルホン樹脂,ポリエーテルスル
ホン樹脂,ポリフェニレンスルフィド樹脂などが挙げら
れる。付加重合系高分子重合体としては、例えば極性ビ
ニルモノマーから得られた重合体やジエン系モノマーか
ら得られた重合体、具体的にはポリメチルメタクリレー
ト,ポリアクリロニトリル,アクリロニトリル−ブタジ
エン共重合体,アクリロニトリル−ブタジエン−スチレ
ン共重合体、ジエン鎖を水添したジエン系重合体、さら
には熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0047】本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の
エチレン系共重合体100重量部に対して、他の熱可塑
性樹脂あるいはエラストマーを好ましくは2〜500重
量部、より好ましくは3〜300重量部の割合で配合し
たものである。本発明のエチレン系共重合体(水添処理
前)は、エチレンと炭素数3ないし20のα−オレフィ
ンの一種以上とを、前記した特性を有するエチレン系共
重合体が得られるような重合触媒の存在下に共重合させ
ることにより、製造することができる。このような重合
触媒としては、例えば(A)遷移金属化合物及び(B)
該遷移金属化合物又はその派生物からイオン性錯体を形
成しうる化合物を主成分とするものを挙げることができ
る。これらの触媒成分の選択,触媒の調製方法,重合方
法の選択,組合せなどによって本発明のエチレン系共重
合体を得ることができる。該触媒における(A)成分の
遷移金属化合物としては、周期律表3〜10族に属する
金属又はランタノイド系列の金属を含む遷移金属化合物
を使用することができる。上記遷移金属としては、チタ
ニウム,ジルコニウム,ハフニウム,バナジウム,ニオ
ビウム,クロムなどが好ましい。
【0048】このような遷移金属化合物としては、種々
のものが挙げられるが、特に4族,5族,6族の遷移金
属を含む化合物を好適に使用することができる。特に一
般式 CpM1 1 a 2 b 3 c ・・・(I) Cp2 1 1 a 2 b ・・・(II) (Cp−Ae −Cp)M1 1 a 2 b ・・・(III) 又は一般式 M1 1 a 2 b 3 c 4 d ・・・(IV) で示される化合物やその誘導体が好適である。
【0049】前記一般式(I)〜(IV)において、M1
はチタン,ジルコニウム,ハフニウム,バナジウム,ニ
オビウム,クロムなどの遷移金属を示し、Cpはシクロ
ペンタジエニル基,置換シクロペンタジエニル基,イン
デニル基,置換インデニル基,テトラヒドロインデニル
基,置換テトラヒドロインデニル基,フルオレニル基又
は置換フルオレニル基などの環状不飽和炭化水素基又は
鎖状不飽和炭化水素基を示す。R1 ,R2 ,R3 及びR
4 はそれぞれ独立にσ結合性の配位子,キレート性の配
位子,ルイス塩基などの配位子を示し、σ結合性の配位
子としては、具体的には水素原子,酸素原子,ハロゲン
原子,炭素数1〜20のアルキル基,炭素数1〜20の
アルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基,アルキル
アリール基若しくはアリールアルキル基、炭素数1〜2
0のアシルオキシ基,アリル基,置換アリル基,ケイ素
原子を含む置換基などを例示でき、またキレート性の配
位子としては、アセチルアセトナート基,置換アセチル
アセトナート基などを例示できる。Aは共有結合による
架橋を示す。a,b,c及びdはそれぞれ独立に0〜4
の整数、eは0〜6の整数を示す。R1 ,R2 ,R3
びR4 はその2以上が互いに結合して環を形成してもよ
い。上記Cpが置換基を有する場合には、該置換基は炭
素数1〜20のアルキル基が好ましい。(II)式及び
(III)式において、2つのCpは同一のものであっても
よく、互いに異なるものであってもよい。
【0050】上記(I)〜(III)式における置換シクロ
ペンタジエニル基としては、例えばメチルシクロペンタ
ジエニル基,エチルシクロペンタジエニル基,イソプロ
ピルシクロペンタジエニル基,1,2−ジメチルシクロ
ペンタジエニル基,テトラメチルシクロペンタジエニル
基,1,3−ジメチルシクロペンタジエニル基,1,
2,3−トリメチルシクロペンタジエニル基,1,2,
4−トリメチルシクロペンタジエニル基,ペンタメチル
シクロペンタジエニル基,トリメチルシリルシクロペン
タジエニル基などが挙げられる。また、上記(I)〜
(IV)式におけるR 1 〜R4 の具体例としては、例えば
ハロゲン原子としてフッ素原子,塩素原子,臭素原子,
ヨウ素原子、炭素数1〜20のアルキル基としてメチル
基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−
ブチル基,オクチル基,2−エチルヘキシル基、炭素数
1〜20のアルコキシ基としてメトキシ基,エトキシ
基,プロポキシ基,ブトキシ基,フェノキシ基、炭素数
6〜20のアリール基,アルキルアリール基若しくはア
リールアルキル基としてフェニル基,トリル基,キシリ
ル基,ベンジル基、炭素数1〜20のアシルオキシ基と
してヘプタデシルカルボニルオキシ基、ケイ素原子を含
む置換基としてトリメチルシリル基,(トリメチルシリ
ル)メチル基、ルイス塩基としてジメチルエーテル,ジ
エチルエーテル,テトラヒドロフランなどのエーテル
類、テトラヒドロチオフェンなどのチオエーテル類、エ
チルベンゾエートなどのエステル類、アセトニトリル,
ベンゾニトリルなどのニトリル類、トリメチルアミン,
トリエチルアミン,トリブチルアミン,N,N−ジメチ
ルアニリン,ピリジン,2,2’−ビピリジン,フェナ
ントロリンなどのアミン類、トリエチルホスフィン,ト
リフェニルホスフィンなどのホスフィン類、エチレン,
ブタジエン,1−ペンテン,イソプレン,ペンタジエ
ン,1−ヘキセン及びこれらの誘導体などの鎖状不飽和
炭化水素、ベンゼン,トルエン,キシレン,シクロヘプ
タトリエン,シクロオクタジエン,シクロオクタトリエ
ン,シクロオクタテトラエン及びこれらの誘導体などの
環状不飽和炭化水素などが挙げられる。また、上記(II
I)式におけるAの共有結合による架橋としては、例え
ば、メチレン架橋,ジメチルメチレン架橋,エチレン架
橋,1,1’−シクロヘキシレン架橋,ジメチルシリレ
ン架橋,ジメチルゲルミレン架橋,ジメチルスタニレン
架橋などが挙げられる。
【0051】さらに、(A)成分として、前記一般式
(III)の中で、置換若しくは無置換の2個の共役シクロ
ペンタジエニル基(但し、少なくとも1個は置換シクロ
ペンタジエニル基である)が周期律表の14族から選ば
れる元素を介して互いに結合した多重配位性化合物を配
位子とする4族遷移金属化合物を好適に用いることがで
きる。このような化合物としては、例えば一般式(V)
【0052】
【化12】
【0053】で表される化合物又はその誘導体を挙げる
ことができる。前記一般式(V)中のY1 は炭素,ケイ
素,ゲルマニウム又はスズ原子,R5 t −C5 4-t
びR5 u −C5 4-u はそれぞれ置換シクロペンタジエ
ニル基、t及びuは1〜4の整数を示す。ここで、R5
は水素原子,シリル基又は炭化水素基を示し、互いに同
一であっても異なっていてもよい。また、少なくとも片
方のシクロペンタジエニル基には、Y1 に結合している
炭素の隣の少なくとも片方の炭素上にR5 が存在する。
6 は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素
数6〜20のアリール基、アルキルアリール基若しくは
アリールアルキル基を示す。M2 はチタン、ジルコニウ
ム又はハフニウム原子を示し、X1 は水素原子,ハロゲ
ン原子,炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20
のアリール基、アルキルアリール基若しくはアリールア
ルキル基又は炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。X
1 は互いに同一であっても異なっていてもよく、R6
互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0054】上記一般式(V)における置換シクロペン
タジエニル基としては、例えばメチルシクロペンタジエ
ニル基,エチルシクロペンタジエニル基,イソプロピル
シクロペンタジエニル基,1,2−ジメチルシクロペン
タジエニル基,1,3−ジメチルシクロペンタジエニル
基,1,2,3−トリメチルシクロペンタジエニル基,
1,2,4−トリメチルシクロペンタジエニル基などが
挙げられる。X1 の具体例としては、ハロゲン原子とし
てフッ素原子,塩素原子,臭素原子,沃素原子、炭素数
1〜20のアルキル基としてメチル基,エチル基,n−
プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,オクチル
基,2−エチルヘキシル基、炭素数1〜20のアルコキ
シ基としてメトキシ基,エトキシ基,プロポキシ基,ブ
トキシ基,フェノキシ基、炭素数6〜20のアリール
基,アルキルアリール基若しくはアリールアルキル基と
してフェニル基,トリル基,キシリル基、ベンジル基な
どが挙げられる。R6 の具体例としてはメチル基,エチ
ル基,フェニル基,トリル基,キシリル基、ベンジル基
などが挙げられる。さらに、一般式(VI)
【0055】
【化13】
【0056】で表される化合物も包含する。該一般式
(VI) の化合物において、Cpはシクロペンタジエニル
基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換
インデニル基、テトラヒドロインデニル基、置換テトラ
ヒドロインデニル基、フルオレニル基又は置換フルオレ
ニル基などの環状不飽和炭化水素基又は鎖状不飽和炭化
水素基を示す。M3 はチタン、ジルコニウム又はハフニ
ウム原子を示し、X2 は水素原子、ハロゲン原子、炭素
数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール
基、アルキルアリール基若しくはアリールアルキル基又
は炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。ZはSi
7 2,CR7 2,SiR7 2SiR7 2,CR7 2CR7 2,CR
7 2CR7 2CR7 2,CR7 =CR7 ,CR7 2SiR7 2又は
GeR7 2を示し、Y 2 は−N(R8)−,−O−,−S−
又は−P(R8 )−を示す。上記R7 は水素原子又は2
0個までの非水素原子をもつアルキル,アリール,シリ
ル,ハロゲン化アルキル,ハロゲン化アリール基及びそ
れらの組合せから選ばれた基であり、R8 は炭素数1〜
10のアルキル若しくは炭素数6〜10のアリール基で
あるか、又は1個若しくはそれ以上のR7 と30個まで
の非水素原子の縮合環系を形成してもよい。wは1又は
2を示す。
【0057】さらに、該(A)成分の遷移金属化合物と
しては、上記一般式(IV)で示した遷移金属化合物のう
ち、少なくとも2個のハロゲン原子又はアルコキシ基、
あるいはそれぞれ2個のハロゲン原子とアルコキシ基が
中心金属に結合した遷移金属化合物と、一般式(VII)〜
(XII)
【0058】
【化14】
【0059】で表されるジオールとの反応生成物も用い
ることができる。上記一般式(VII)〜(XII)で表される
化合物において、R9 及びR10は炭素数1〜20の炭化
水素基であり、それらはたがいに同一でも異なっていて
もよく、Y3 は炭素数1〜20の炭化水素基、
【0060】
【化15】
【0061】で示される基(ここで、R15は炭素数1〜
6の炭化水素基を示す。)である。R 9 ,R10及びY3
で表される炭素数1〜20の炭化水素基としては、例え
ばメチレン,エチレン,トリメチレン,プロピレン,ジ
フェニルメチレン,エチリデン,n−プロピリデン,イ
ソプロピリデン,n−ブチリデン,イソブチリデン基な
どが挙げられるが、これらの中で、メチレン,エチレ
ン,エチリデン,イソプロピリデン及びイソブチリデン
基が好適である。nは0以上の整数を示すが、特に0又
は1が好ましい。
【0062】また、R11,R12,R13及びR14は、それ
ぞれ炭素数1〜20の炭化水素基,水酸基,ニトロ基,
ニトリル基,ヒドロカルビロキシ基又はハロゲン原子を
示し、これらはたがいに同一でも異なっていてもよい。
炭素数1〜20の炭化水素基としては、例えばメチル,
エチル,n−プロピル,イソプロピル,n−ブチル,イ
ソブチル,t−ブチル,n−アミル,イソアミル,n−
ヘキシル,n−ヘプチル,n−オクチル,n−デシル,
n−ドデシル基などのアルキル基、フェニル,ナフチル
基などのアリール基、シクロヘキシル,シクロペンチル
基などのシクロアルキル基、プロペニル基などのアルケ
ニル基、ベンジル基などのアラルキル基を挙げることが
できるが、これらの中で炭素数1〜10のアルキル基が
好適である。y,y’,y'',y''' ,z,z’,z''
及びz''' は各々芳香族環に結合している置換基の数を
表し、y,y’,z及びz’は各々0〜4の整数、y''
及びz''は各々0〜2の整数、y''' 及びz''' は各々
0〜3の整数を示す。
【0063】該遷移金属化合物と、上記一般式(VII)〜
(XII)で表されるジオールとの反応生成物の一例として
は、一般式(XIII)
【0064】
【化16】
【0065】で表される化合物を挙げることができる。
上記一般式(XIII)において、M1 は前記と同じ意味で
あり、E1 及びE2 はそれぞれ炭素数1〜20の炭化水
素基で、v及びxはそれぞれ0又は1を示し、E1 及び
2 はY4 を介して架橋構造を形成するものである。E
3 及びE4 はそれぞれσ結合性配位子、キレート性の配
位子又はルイス塩基を示し、それらはたがいに同一でも
異なっていてもよい。v’及びx’はそれぞれ0〜2の
整数〔v’+x’(M1 の原子価−2)の整数〕を示
す。Y4 は炭素数1〜20の炭化水素基,E5
6 5 ,酸素原子又は硫黄原子を示し、mは0〜4の整
数を示す。E5 及びE6 はそれぞれ炭素数1〜20の炭
化水素基、Y5 は炭素原子又は硅素原子を示す。本発明
のエチレン系共重合体は各種の製造法により得られ、そ
の方法は特に限定されないが、これら触媒と重合条件を
選択することにより得られる。この際の触媒としては、
アルコキシチタン化合物、又は配位子間に架橋の存在す
るチタン,ジルコニウム化合物が好適に用いられる。
【0066】本発明のエチレン系共重合体を得るために
用いる重合触媒においては、(A)成分の遷移金属化合
物は、一種用いてもよいし、二種以上を組合せて用いて
もよい。 一方、該重合触媒において、(B)成分とし
て用いられる、前記(A)成分の遷移金属化合物又はそ
の派生物からイオン性の錯体を形成しうる化合物として
は、(B−1)該(A)成分の遷移金属化合物と反応し
てイオン性の錯体を形成するイオン性化合物,(B−
2)アルミノキサン及び(B−3)ルイス酸を例示する
ことができる。該(B−1)成分のイオン性化合物とし
ては、前記(A)成分の遷移金属化合物と反応してイオ
ン性の錯体を形成するイオン性化合物であればいずれの
ものでも使用できるが、カチオンと複数の基が元素に結
合したアニオンとからなる化合物、特にカチオンと複数
の基が元素に結合したアニオンとからなる配位錯化合物
を好適に使用することができる。このようなカチオンと
複数の基が元素に結合したアニオンとからなる化合物と
しては、一般式 (〔L1 −R16k+p (〔M4 1 2 ・・Zn (h-g)-q ・・(XIV) 又は (〔L2 k+p (〔M5 1 2 ・・Zn (h-g)-q ・・(XV) (但し、L2 はM6 ,R17187 ,R19 3 C又はR20
7 である)(式中、L1 はルイス塩基、M4 及びM5
はそれぞれ周期律表の5族,6族,7族,8〜10族,
11族,12族,13族,14族及び15族から選ばれ
る元素、好ましくは13族,14族及び15族から選ば
れる元素、M6 及びM7 はそれぞれ周期律表の3族,4
族,5族,6族,7族,8〜10族,1族,11族,2
族,12族及び17族から選ばれる元素、Z1 〜Zn
それぞれ水素原子,ジアルキルアミノ基,炭素数1〜2
0のアルコキシ基,炭素数6〜20のアリールオキシ
基,炭素数1〜20のアルキル基,炭素数6〜20のア
リール基,アルキルアリール基,アリールアルキル基、
炭素数1〜20のハロゲン置換炭化水素基、炭素数1〜
20のアシルオキシ基、有機メタロイド基又はハロゲン
原子を示し、Z1 〜Zn はその2以上が互いに結合して
環を形成していてもよい。R16は水素原子、炭素数1〜
20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基,アル
キルアリール基又はアリールアルキル基を示し、R17
びR18はそれぞれシクロペンタジエニル基、置換シクロ
ペンタジエニル基,インデニル基又はフルオレニル基、
19は炭素数1〜20のアルキル基、アリール基,アル
キルアリール基又はアリールアルキル基を示す。R20
テトラフェニルポルフィリン,フタロシアニンなどの大
環状配位子を示す。gはM4 ,M5 の原子価で1〜7の
整数、hは2〜8の整数、kは〔L1 −R16〕,
〔L2 〕のイオン価数で1〜7の整数、pは1以上の整
数、q=(p×k)/(h−g)である。)で表される
化合物がある。
【0067】ここで、上記L1 で示されるルイス塩基の
具体例としては、アンモニア,メチルアミン,アニリ
ン,ジメチルアミン,ジエチルアミン,N−メチルアニ
リン,ジフェニルアミン,トリメチルアミン,トリエチ
ルアミン,トリ−n−ブチルアミン,N,N−ジメチル
アニリン,メチルジフェニルアミン,ピリジン,p−ブ
ロモ−N,N−ジメチルアニリン,p−ニトロ−N,N
−ジメチルアニリンなどのアミン類、トリエチルフォス
フィン,トリフェニルフォスフィン,ジフェニルフォス
フィンなどのフォスフィン類、ジメチルエーテル,ジエ
チルエーテル,テトラヒドロフラン,ジオキサンなどの
エーテル類、ジエチルチオエーテル,テトラヒドロチオ
フェンなどのチオエーテル類、エチルベンゾエートなど
のエステル類などが挙げられる。
【0068】また、M4 及びM5 の具体例としては、ホ
ウ素,アルミニウム,珪素,リン,砒素,アンチモンな
どの各原子、好ましくはホウ素又はリン,M6 の具体例
としては、リチウム,ナトリウム,銀,銅,臭素,沃素
などの各原子、M7 の具体例としては、マンガン,鉄,
コバルト,ニッケル,亜鉛などの各原子が挙げられる。
1 〜Zn の各々の具体例としては、例えば、ジアルキ
ルアミノ基としてジメチルアミノ基,ジエチルアミノ
基、炭素数1〜20のアルコキシ基としてメトキシ基,
エトキシ基,n−ブトキシ基、炭素数6〜20のアリー
ルオキシ基としてフェノキシ基,2,6−ジメチルフェ
ノキシ基,ナフチルオキシ基、炭素数1〜20のアルキ
ル基としてメチル基,エチル基,n−プロピル基,イソ
プロピル基,n−ブチル基,n−オクチル基,2−エチ
ルヘキシル基、炭素数6〜20のアリール基,アルキル
アリール基若しくはアリールアルキル基としてフェニル
基,p−トリル基,ベンジル基,4−t−ブチルフェニ
ル基,2,6−ジメチルフェニル基,3,5−ジメチル
フェニル基,2,4−ジメチルフェニル基,2,3−ジ
メチルフェニル基、炭素数1〜20のハロゲン置換炭化
水素基としてp−フルオロフェニル基,3,5−ジフル
オロフェニル基,ペンタクロロフェニル基,3,4,5
−トリフルオロフェニル基,ペンタフルオロフェニル
基,3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル基、ハ
ロゲン原子としてフッ素,塩素,臭素,沃素の各原子、
有機メタロイド基として五メチルアンチモン基,トリメ
チルシリル基,トリメチルゲルミル基,ジフェニルアル
シン基,ジシクロヘキシルアンチモン基,ジフェニル硼
素基が挙げられる。R16,R19の具体例としては先に挙
げたものと同様なものが挙げられる。R17及びR18の置
換シクロペンタジエニル基の具体例としては、メチルシ
クロペンタジエニル基,ブチルシクロペンタジエニル
基,ペンタメチルシクロペンタジエニル基などのアルキ
ル基で置換されたものが挙げられる。ここで、アルキル
基は通常炭素数が1〜6であり、置換されたアルキル基
の数は1〜5の整数である。
【0069】上記一般式(XIV)又は(XV)の化合物の中で
は、M4 ,M5 が硼素であるものが好ましい。この(B
−1)成分である、該(A)成分の遷移金属化合物と反
応してイオン性の錯体を形成するイオン性化合物は一種
用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、該(A)成分の遷移金属化合物及び上記(B−
1)成分のイオン性の錯体を形成するイオン性化合物か
らなる成分がポリカチオン錯体であってもよい。一方、
(B−2)成分のアルミノキサンとしては一般式(XVI)
【0070】
【化17】
【0071】(式中、R21はそれぞれ独立して炭素数1
〜20、好ましくは1〜12のアルキル基,シクロアル
キル基,アルケニル基,アリール基,アリールアルキル
基などの炭化水素基、ハロゲン原子、より好ましくはア
ルキル基であり、sは重合度を示し、通常3〜50、好
ましくは7〜40の整数である。)で表される鎖状アル
ミノキサン、及び一般式(XVII)
【0072】
【化18】
【0073】(式中、R21及びsは各々前記と同じであ
る。)で表される環状アルミノキサンを挙げることがで
きる。前記一般式(XVI)及び(XVII)の化合物の中で好
ましいのは、重合度7以上のアルミノキサンである。こ
の重合度7以上のアルミノキサン又はこれらの混合物を
用いた場合には高い活性を得ることができる。また、一
般式(XVI)及び(XVII)で示されるアルミノキサンを水
などの活性水素をもつ化合物で変性した通常の溶剤に不
溶な変性アルミノキサンも好適に使用することができ
る。
【0074】前記アルミノキサンの製造法としては、ア
ルキルアルミニウムと水などの縮合剤とを接触させる方
法が挙げられるが、その手段については特に制限はな
く、公知の方法に準じて反応させればよい。例えば有
機アルミニウム化合物を有機溶剤に溶解しておき、これ
を水と接触させる方法、重合時に当初有機アルミニウ
ム化合物を加えておき、後に水を添加する方法、金属
塩などに含有されている結晶水、無機物や有機物への吸
着水を有機アルミニウム化合物と反応させる方法、テ
トラアルキルジアルミノキサンにトリアルキルアルミニ
ウムを反応させ、さらに水を反応させる方法などがあ
る。これらのアルミノキサンは一種用いてもよく、二種
以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、(B−3)
成分のルイス酸については特に制限はなく、有機化合物
でも固体状無機化合物でもよい。有機化合物としては、
硼素化合物やアルミニウム化合物などが、無機化合物と
してはマグネシウム化合物、アルミニウム化合物などが
好ましく用いられる。これらのルイス酸は一種用いても
よいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】本発明においては、該(B)触媒成分とし
て、上記(B−1)成分、(B−2)成分及び(B−
3)成分をそれぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を
組み合わせて用いてもよい。本発明で用いられる重合触
媒においては、所望により、(C)成分として、一般式
(XVIII) R22 r AlQ3-r ・・・ (XVIII) (式中、R22は炭素数1〜10のアルキル基,Qは水素
原子,炭素数1〜20のアルコキシ基,炭素数6〜20
のアリール基又はハロゲン原子を示し、rは1〜3の整
数である)で表される有機アルミニウム化合物を用いる
ことができる。特に、(B)成分として(B−1)とし
て示した(A)成分の遷移金属化合物と反応してイオン
性の錯体を形成するイオン性化合物を用いる場合に、
(C)有機アルミニウム化合物を併用することによって
高い活性を得ることができる。
【0076】次に、本発明においては、前記(A),
(B)及び所望に応じて用いられる(C)触媒成分の少
なくとも一種を適当な担体に担持して用いることができ
る。該担体の種類については特に制限はなく、無機酸化
物担体、それ以外の無機担体及び有機担体のいずれも用
いることができるが、特に無機酸化物担体あるいはそれ
以外の無機担体が好ましい。無機酸化物担体としては、
具体的には、SiO2 ,Al2 3 ,MgO,Zr
2 ,TiO2 ,Fe2 3 ,B2 3 ,CaO,Zn
O,BaO,ThO2 やこれらの混合物、例えばシリカ
アルミナ,ゼオライト,フェライト,グラスファイバー
などが挙げられる。これらの中では、特にSiO2 又は
Al2 3 が好ましい。なお、上記無機酸化物担体は、
少量の炭酸塩,硝酸塩,硫酸塩などを含有してもよい。
【0077】一方、上記以外の無機担体として、MgC
2 ,Mg(OC2 5)2 などのマグネシウム化合物や
その錯塩、あるいはMgR23 i 3 j で表される有機マ
グネシウム化合物などを挙げることができる。ここで、
23は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20の
アルコキシ基又は炭素数6〜20のアリール基、X3
ハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルキル基を示し、
iは0〜2、jは0〜2である。また、有機担体として
は、ポリスチレン,スチレン−ジビニルベンゼン共重合
体,置換ポリスチレン,ポリエチレン,ポリプロピレ
ン,ポリアリレートなどの重合体やスターチ,カーボン
などを挙げることができる。ここで、用いられる担体の
性状は、その種類及び製法により異なるが、平均粒径は
通常1〜300μm、好ましくは10〜200μm、よ
り好ましくは20〜100μmである。
【0078】粒径が小さいと重合体中の微粉が増大し、
粒径が大きいと重合体中の粗大粒子が増大し嵩密度の低
下やホッパーの詰まりの原因になる。また、担体の比表
面積は、通常1〜1000m2 /g、好ましくは50〜
500m2 /g、細孔容積は通常0.1〜5cm3 /g、
好ましくは0.3〜3cm3 /gである。比表面積又は細
孔容積のいずれかが上記範囲を逸脱すると、触媒活性が
低下することがある。なお、比表面積及び細孔容積は、
例えばBET法に従って吸着された窒素ガスの体積から
求めることができる(ジャーナル・オブ・アメリカン・
ケミカル・ソサィエティ,第60巻,第309ページ
(1983年)参照)。さらに、上記担体は、通常15
0〜1000℃、好ましくは200〜800℃で焼成し
て用いることが望ましい。担体に担持させる方法につい
ては特に制限はなく、従来慣用されている方法を用いる
ことができる。
【0079】次に、各触媒成分の使用割合について説明
する。触媒成分として(1)(A)成分と(B−1)成
分とを用いる場合には、(A)成分/(B−1)成分モ
ル比が1/0.1〜1/100、好ましくは1/0.5〜1
/10、より好ましくは1/1〜1/5の範囲にあるよ
うに両成分を用いるのが望ましい。(2)(A)成分と
(B−1)成分と(C)成分とを用いる場合には、
(A)成分/(B−1)成分モル比は前記(1)の場合
と同様であるが、(A)成分/(C)成分モル比は1/
2000〜1/1、好ましくは1/1000〜1/5、
より好ましくは1/500〜1/10の範囲にあるのが
望ましい。
【0080】また、(3)(A)成分と(B−2)成分
とを用いる場合には、(A)成分/(B−2)成分モル
比が1/20〜1/10000、好ましくは1/100
〜1/5000、より好ましくは1/200〜1/20
00の範囲にあるように両成分を用いるのが望ましい。
(4)(A)成分と(B−2)成分と(C)成分とを用
いる場合には、(A)成分/(B−2)成分モル比は前
記(3)の場合と同様であるが、(A)成分/(C)成
分モル比は1/2000〜1/1、好ましくは1/10
00〜1/5、より好ましくは1/500〜1/10の
範囲にあるのが望ましい。さらに、(5)(A)成分と
(B−3)成分とを用いる場合には、(A)成分/(B
−3)成分モル比が1/0.1〜1/2000、好ましく
は1/0.2〜1/1000、より好ましくは1/0.5〜
1/500の範囲にあるように両成分を用いるのが望ま
しい。(6)(A)成分と(B−3)成分と(C)成分
とを用いる場合には、(A)成分/(B−3)成分モル
比は前記(5)の場合と同様であるが、(A)成分/
(C)成分モル比は1/2000〜1/1、好ましくは
1/1000〜1/5、より好ましくは1/500〜1
/10の範囲にあるのが望ましい。また、重合方法につ
いては特に制限はなく、不活性炭化水素などを用いる溶
媒重合法(懸濁重合,溶液重合)又は実質上不活性炭化
水素溶媒の存在しない条件で重合する塊状重合法、気相
重合法も利用できる。
【0081】重合に際して使用される炭化水素系溶媒と
しては、例えばブタン,ペンタン,ヘキサン,ヘプタ
ン,オクタン,ノナン,デカン,シクロペンタン,シク
ロヘキサンなどの飽和炭化水素、ベンゼン,トルエン,
キシレンなどの芳香族炭化水素、クロロホルム,ジクロ
ロメタン,二塩化エチレン,クロロベンゼンなどの塩素
含有溶媒などが挙げられる。重合温度としては、−10
0〜200℃、重合圧力としては常圧〜100kg/c
2 で行うのが一般的であるが、好ましくは−50〜1
00℃、常圧〜50kg/cm2 、さらに好ましくは0
〜100℃、常圧〜20kg/cm2 の範囲である。得
られる重合体の分子量制御は、通常用いられる方法によ
って行えばよい。例えば水素,温度,モノマー濃
度,触媒濃度などで制御することができる。
【0082】また、前記で得られたエチレン系共重合体
の水素化処理に使用される水素化触媒としては、前記詳
述したものの他、オレフィン化合物の水素化に際して一
般に使用されている触媒であれば使用可能であり、特に
制限されないが、たとえば次のようなものを挙げること
ができる。不均一系触媒としては、ニッケル、パラジウ
ム、白金またはこれらの金属をカーボン、シリカ、ケイ
ソウ土、アルミナ、酸化チタン等の担体に担持させた固
体触媒、例えばニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ
土、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラ
ジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナなどを挙げ
ることができる。また、ニッケル系触媒としては、ラネ
ーニッケル触媒など、白金系触媒では、酸化白金触媒、
白金黒などを挙げることができる。均一系触媒として
は、周期律表VIII族の金属を基体とするもの、例えばナ
フテン酸コバルト/トリエチルアルミニウム、オクテン
酸コバルト/n−ブチルリチウム、ニッケルアセチルア
セトナート/トリエチルアルミニウムなどのNi,Co
化合物と周期律表IA, IIA, IIIB 族から選ばれる金属の
有機金属化合物からなるもの、又はRh化合物などを挙
げることができる。また、エム・エス・サロアン(M.
S.Saloan)らが開示しているチーグラー系水素
化触媒(J.Am.Chem.Soc.,85,401
4(1983))も有効に使用できる。これらの触媒と
しては、例えば、次のようなものを挙げることができ
る。Ti(O−iC3 7 ) 4 −(iC4 9 ) 3
l、Ti(O−iC3 7 ) 4 −(C2 5 ) 3 Al、
(C2 5 2 TiCl2 −(C2 5 ) 3 Al、Cr
(acac)3 −(C2 5 ) 3 Al(ここでacac
はアセチルアセトナートを示す)、Na(acac)3
−(iC4 9 3 Al、Mn(acac)3 −(C2
5 ) 3 Al、Fe(acac)3 −(C2 5 ) 3
l、Ca(acac)2 −(C2 5 ) 3 Al、(C7
5 COO)3 Co−(C2 5 3 Al、
【0083】水素化処理における触媒の使用量について
は、エチレン重合体中の残存不飽和基含量と水素化触媒
成分とのモル比が107 :1〜10:1、好ましくは1
6:1〜102 :1の範囲にあるように選ぶのが望ま
しい。また、水素の張り込み圧力は、常圧〜50kg/
cm2 Gの範囲が望ましい。さらに、反応温度は、重合
工程で得られたオレフィン重合体が分解しない範囲で高
い方が好ましく、通常−100℃〜300℃、好ましく
は−50〜200℃、より好ましくは10〜180℃の
範囲で選ばれる。
【0084】
【実施例】更に、実施例により本発明を詳細に説明する
が、本発明はこれらの例によってなんら限定されるもの
ではない。 実施例1 (1)メチルアルミノキサン(MAO)の調製 窒素置換した内容積500ミリリットルのガラス製容器
に、トルエン200ミリリットル,硫酸銅5水塩(Cu
SO4 ・5H2 O)17.8g(71ミリモル)及びトリ
メチルアルミニウム24ミリリットル(250ミリモ
ル)を入れ、40℃で8時間反応させた。その後、固体
成分を除去して得られた溶液から、更にトルエンを減圧
留去して触媒生成物(メチルアルミノキサン)6.7gを
得た。
【0085】(2)チタニウム触媒成分の調製 100ミリリットルのナスフラスコを乾燥,窒素置換し
たのち、トルエン30ミリリットル、n−ブチルリチウ
ムのヘキサン溶液(1.66モル/リットル)3.6ミリリ
ットルを入れ、−78℃に冷却した。これにシクロペン
タノール0.56gを滴下し、その後60分間を要して−
50℃に昇温した。次いで、これにペンタメチルシクロ
ペンタジエントリクロリドチタニウムのトルエン溶液
(0.0769モル/リットル)26ミリリットルを60
分間かけて滴下した。さらに、−25℃まで昇温し、1
20分間反応を行ったのち、20℃に昇温し、24時間
放置した。反応溶液は淡黄色であり、下部に塩化リチウ
ムの白色沈澱を生成した。
【0086】(3)触媒成分の調製 50ミリリットルのフラスコを乾燥窒素置換した後、ト
ルエン20ミリリットル,上記(2)で調製したチタニ
ウム触媒成分0.5ミリモル,(第3級ブチルアミド)ジ
メチル(テトラメチル−η5 −シクロペンタジエニル)
シランチタンジクロリド0.02ミリモルを仕込み、25
℃で攪拌した。これに、上記(1)で調製したメチルア
ルミノキサン0.6ミリモルを加え、2時間反応させた。
この反応物を触媒成分として用いた。
【0087】(4)エチレン−オクテン−1共重合体の
製造 1リットル容のステンレス製耐圧オートクレーブに、ト
ルエン400ミリリットル,オクテン−1を20ミリリ
ットル,上記(1)で調製したメチルアルミノキサン3
0ミリモルを仕込み、90℃に昇温した後、上記(3)
で調製した触媒成分をチタニウム換算で0.026ミリモ
ル加えた。次いで、これに、エチレンを3.0kg/cm
2 Gの圧力で連続的に導入し、60分間重合反応を行っ
た。重合反応終了後、脱圧してエチレン−オクテン−1
共重合体を回収し、メタノールで洗浄した後、乾燥して
ポリエチレン75.2gを得た。
【0088】(5)エチレン−オクテン−1共重合体の
評価 (a)密度の測定 190℃で熱プレスして成形した試料を用い、密度勾配
管法により測定した。その結果、密度は0.895g/c
3 であった。また、試料のアニーリング処理は実施し
なかった。
【0089】(b)分子量分布の測定 装置:ウォーターズALC/GPC150C,カラム:
東ソー製,TSK HM+GMH6×2,溶媒:1,
2,4−トリクロロベンゼン,温度:135℃,流量:
1ミリリットル/分の条件にてGPC法により、ポリエ
チレン換算で分子量の測定を行った。その結果、重量平
均分子量(Mw)は126,000,数平均分子量(M
n)は45,000であり、Mw/Mnは2.8であった。
【0090】(c)溶融流動の活性化エネルギー(E
a)の測定 装置としてレオメトリックス社製,RMS E−605
を用い、以下の方法に従って溶融流動の活性化エネルギ
ー(Ea)を測定した。すなわち、測定温度150℃,
170℃,190℃,210℃,230℃における動的
粘弾性の周波数依存性(10-2〜102 rod/se
c)を測定し、170℃を基準温度にして、温度・時間
換算則を用いそれぞれの温度におけるG’,G”のシフ
トファクターと絶対温度の逆数からアレニウス式によ
り、活性化エネルギー(Ea)を算出した。その結果、
活性化エネルギー(Ea)は13.2kcal/モルであ
った。なお、HDPEのEaは6.3kcal/モルであ
る〔「ポリマー・エンジニアリング・サイエンス(Poly
m. Eng. Sci.) 」第8巻,第235ページ(1968
年)〕。
【0091】(d)ダイスエル比の測定 ダイスエル比(DR ) は、東洋精機製作所製のキャピロ
グラフを用いて、キャピラリーノズル〔直径(D0)=1.
275mm,長さ(L)=51.03mm,L/D0 =4
0,流入角=90°〕より押出速度1.5mm/分(剪断
速度10sec -1)、温度190℃の条件で押出して得
られたストランドの直径(D1 ,mm)を求め、この直
径をキャピラリーノズル径で除し、D1 /D0 として算
出した。なお、ストランドの直径(D1 )は、押出した
ストランド長5cm(ノズル出口から5cmの長さ)の
中央部の径の長軸及び短軸を5個の試料についてそれぞ
れ測定し、その平均値で表した。その結果、ダイスエル
比は1.52であった。
【0092】実施例2 (1)チタニウム触媒成分の調製 100ミリリットルのナスフラスコを乾燥,窒素置換し
たのち、トルエン30ミリリットル、n−ブチルリチウ
ムのヘキサン溶液(1.66モル/リットル)3.6ミリリ
ットルを入れ、−78℃に冷却した。これにノルマルブ
タノール0.49gを滴下し、その後60分間を要して−
50℃に昇温した。次いで、これにペンタメチルシクロ
ペンタジエントリクロリドチタニウムのトルエン溶液
(0.0769モル/リットル)26ミリリットルを60
分間かけて滴下した。さらに、−25℃まで昇温し、1
20分間反応を行ったのち、20℃に昇温し、24時間
放置した。反応溶液は淡黄色であり、下部に塩化リチウ
ムの白色沈澱を生成した。
【0093】(2)触媒成分の調製 実施例1−(3)に於て、実施例1−(2)で得られた
チタニウム触媒成分の代わりに上記(1)で得られたチ
タニウム触媒成分0.25ミリモルを用い、かつ(第3級
ブチルアミド)ジメチル(テトラメチル−η5 −シクロ
ペンタジエニル)シランチタンジクロリド0.01ミリモ
ル,メチルアルミノキサン0.8ミリモルを用いた以外
は、実施例1−(3)と同様にして触媒成分を調製し
た。
【0094】(3)エチレン−ヘキセン−1共重合体の
製造 実施例1−(4)において、オクテン−1に代えヘキセ
ン−1を10ミリリットル用いること以外は同様の方法
で第2表に示す条件でエチレン−ヘキセン−1共重合体
を製造した。その結果を第2表に示す。
【0095】比較例1 実施例2−(3)と同様の方法で、第2表に示す条件で
エチレン−ヘキセン−1共重合体を製造した。その結果
を第2表に示す。
【0096】
【表2】
【0097】
【表3】
【0098】実施例3 実施例1で得られたエチレン/オクテン−1共重合体
を、デカリン溶液中において、温度140℃,共重合体
濃度9重量%,水素圧分30kg/cm2 G,カーボン
担持ルテニウム触媒(Ru含有量5重量%)濃度4重量
%,反応時間6時間の条件下にて水素添加したのち、得
られた重合体を反応溶液より単離した。この共重合体を
用いて、厚さ300μmのプレスシートを作成し、赤外
線吸収スペクトルを測定したところ、885〜970c
-1の範囲に存在する不飽和基の吸収は認められなかっ
た。また、密度,分子量,融点,流動活性化エネルギー
は実施例1と同様であった。
【0099】
【発明の効果】本発明のエチレン系共重合体は、エチレ
ンと炭素数3ないし20のα−オレフィンの一種以上と
から誘導され、ポリマー主鎖中に四級炭素を含まず、通
常のHDPE,L−LDPE,LDPEとは異なるもの
であって、溶融流動の活性化エネルギーの制御が可能で
あり、また、ブロー成形や真空成形などに必要とされる
ダイスエル比が高く、加工特性に優れる上、密度,融
点,結晶性などの物性をコントロールすることが可能で
あるなどの特徴を有している。また、上記エチレン系共
重合体を水添処理したものは、上記特性を有するととも
に、熱安定性に優れている。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−306209(JP,A) 特開 平3−21607(JP,A) 特開 昭63−68606(JP,A) 特開 昭63−69806(JP,A) 特開 昭64−45406(JP,A) 特開 昭61−236804(JP,A) 特開 昭63−235309(JP,A) 特開 昭58−157838(JP,A) 特開 昭59−213746(JP,A) 特表 平7−500622(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08F 4/60 - 4/70 C08F 10/00 - 10/14 C08F 110/00 - 110/14 C08F 210/00 - 210/18 C08L 23/00 - 23/36

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エチレンと炭素数3ないし20のα−オ
    レフィンの一種以上とから誘導される重合体において、
    (イ)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によ
    って測定したポリエチレン換算の重量平均分子量(M
    w)が5,000〜2,000,000の範囲にあるこ
    と、(ロ)該重量平均分子量(Mw)とダイスエル比
    (DR)との関係が、式 1.75>DR>0.16+0.21×logMw を満足すること、(ハ)溶融流動の活性化エネルギー
    (Ea)が8〜20kcal/モルの範囲にあること、
    及び(ニ)ポリマー主鎖中に四級炭素が存在しないこと
    を特徴とするエチレン系共重合体〔但し、プロトン核磁
    気共鳴スペクトル法( 1 H−NMR)によって得られる
    1.2〜1.4ppm領域のメチレン基と0.8〜1.
    0ppm領域のメチル基とのモル比〔CH 3 /CH 2 〕が
    0.005〜0.1の範囲にあり、かつ示差走査熱量計
    (DSC)によって観測した融点(Tm)と〔CH 3
    CH 2 〕とが、式 Tm≧131−1340〔CH 3 /C
    2 〕の関係を満たすものを除く。〕
  2. 【請求項2】 ゲルパーミエーションクロマトグラフィ
    ー法によって測定したポリエチレン換算の重量平均分子
    量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比Mw/Mnが
    1.5〜70の範囲にある請求項1記載のエチレン系共
    重合体。
  3. 【請求項3】 樹脂密度(d)が0.86〜0.96g
    /cm3の範囲にある請求項1記載のエチレン系共重合
    体。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし3のいずれかに記載のエ
    チレン系共重合体を水素化処理してなるエチレン系共重
    合体。
  5. 【請求項5】 請求項1ないし4のいずれかに記載のエ
    チレン系共重合体を含有してなる熱可塑性樹脂組成物。
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