JP3478924B2 - 核磁気共鳴スペクトルの自動位相補正装置 - Google Patents

核磁気共鳴スペクトルの自動位相補正装置

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JP3478924B2
JP3478924B2 JP12488696A JP12488696A JP3478924B2 JP 3478924 B2 JP3478924 B2 JP 3478924B2 JP 12488696 A JP12488696 A JP 12488696A JP 12488696 A JP12488696 A JP 12488696A JP 3478924 B2 JP3478924 B2 JP 3478924B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、核磁気共鳴スペク
トルに含まれる位相シフトの補正を行う核磁気共鳴スペ
クトルの自動位相補正装置に関する。
【0002】NMR(核磁気共鳴)装置では、被測定試
料を静磁場内に配置し、その周囲に配置した送受信コイ
ルを介して共鳴周波数を持つ高周波磁場をパルス的に照
射する。その結果送受信コイルに誘起された共鳴信号
は、自由誘導減衰信号(FID信号)として取り出され
る。このFID信号をフーリエ変換することにより、N
MRスペクトルが得られる。一次元(1D)NMRスペ
クトルは、吸収強度を縦軸に、周波数あるいは磁場を横
軸にして表わされる。
【0003】多次元NMR測定例えば2次元NMR測定
は、図1に示すように2つのパルスを展開時間(evoluti
on period)t1 置いて試料に照射して行われる。パルス
照射の結果検出されるFID信号は検出期間(detection
period)t2 に検出されて記憶される。この測定がt1
を段階的に変化させて所定回数M繰り返し行われる。そ
して、図2に示すように、一連の測定で得られたM個の
FID信号の集合データA(t2,t1)をt2,t1 につい
て二重フーリエ変換することにより、2次元NMRスペ
クトルデータS(F2,F1)が得られる。
【0004】図2に示されている2次元NMRスペクト
ルのF2 軸は、t2 軸をフーリエ変換した軸で直接観測
軸と呼ばれ、F1 軸はt1 軸をフーリエ変換した軸で間
接観測軸と呼ばれる。
【0005】NMR測定は上述のようにして行われる
が、得られるNMRスペクトルには、種々の要因により
位相シフトが含まれることは避けられない。この位相シ
フトは1次元NMRスペクトルだけでなく、2次元以上
のNMRスペクトルのすべての観測軸に存在する。スペ
クトルの解析に用いることができるような完全な吸収ス
ペクトルを得るためには、このような位相シフトをすべ
ての観測軸について補正することが必要であり、従来
は、分析者がスペクトルを確認しながら、例えば1次元
NMRスペクトルでは信号の形状から判断して補正の係
数(1次項)を与え、その係数に基づくデータ処理によ
り位相シフトの補正を行っている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、分析者という
人間の目でスペクトルを確認しながらマニュアルで係数
を決定して位相補正をするということは容易なことでは
ない。そのため個人的な勘や知識、慣れが必要であり、
個人差が生じるという問題がある。また、1次項にもと
づく補正では補正の精度が高くできないという問題もあ
る。したがって、多次元NMRスペクトルの位相シフト
を人間の手を介在させることなくコンピュータソフトウ
エアによって補正することが長い間望まれていた。
【0007】本発明は、上記の課題を解決するものであ
って、位相シフトの補正を自動的に行うことのできる核
磁気共鳴スペクトルの自動位相補正装置を提供すること
を目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】そのために本発明は、核
磁気共鳴スペクトルに含まれる位相シフトの補正を行う
核磁気共鳴スペクトルの自動位相補正装置であって、測
定により得られた周波数ωを変数とする核磁気共鳴スペ
クトルデータS(ω)に対して測定遅延による位相シフ
トφdと周波数フィルタによる位相シフトφfとオフレゾ
ナンスによる位相シフトφoの補正を行う第1の位相補
手段と、該第1の位相補正手段による補正が施された
核磁気共鳴スペクトルデータに対して、測定に使用され
た高周波キャリア波と検波参照波の位相差による位相シ
フトφcの補正を行う第2の位相補正手段を備え、前記
核磁気共鳴スペクトルデータS(ω)は直接観測軸と間
接観測軸とを有する多次元核磁気共鳴スペクトルデータ
であり、測定遅延による位相シフトφdとオフレゾナン
スによる位相シフトφoの補正は直接観測軸と間接観測
軸とについて行われ、周波数フィルタによる位相シフト
φfと測定に使用された高周波キャリア波と検波参照波
の位相差による位相シフトφcの補正は直接観測軸のみ
について行われることを特徴とするものである。また、
核磁気共鳴スペクトルに含まれる位相シフトの補正を行
う核磁気共鳴スペクトルの自動位相補正装置であって、
測定により得られた周波数ωを変数とする核磁気共鳴ス
ペクトルデータS(ω)に対して測定遅延による位相シ
フトφdと周波数フィルタによる位相シフトφfとオフレ
ゾナンスによる位相シフトφoの補正を行う第1の位相
補正手段と、該第1の位相補正手段による補正が施され
た核磁気共鳴スペクトルデータに対して、測定に使用さ
れた高周波キャリア波と検波参照波の位相差による位相
シフトφcの補正を行う第2の位相補正手段を備え、
記核磁気共鳴スペクトルデータS(ω)は直接観測軸と
間接観測軸とを有する多次元核磁気共鳴スペクトルデー
タであり、前記測定遅延による位相シフトφdの補正
は、測定に使用されたパルスシーケンスに応じて与えら
れる遅延時間td、すなわち、直接観測軸に関しては、
実際の測定遅延時間、間接観測軸に関しては、測定に使
用されたパルスシーケンスに応じて与えられる展開時間
の初期値を用いて、S(ω){cos(ωtd)−isin
(ωtd)}の演算により行われることを特徴とするもの
である。また、前記周波数フィルタによる位相シフトφ
fの補正は、測定に使用された周波数フィルタの設計式
に基づいて観測周波数範囲について位相シフトφfを算
出し、算出されたφfに基づいてS(ω)[cos{φf
(ω)}−isin{φf(ω)}]の演算により行われる
ことを特徴とするものである。 また、前記オフレゾナン
スによる位相シフトφoの補正は、測定に使用されたパ
ルスのパルス幅に基づいて算出されたφoを用い、S
(ω)[cos{φo(ω)}−isin{φo(ω)}]の演
算により行われることを特徴とするものである。また、
核磁気共鳴スペクトルに含まれる位相シフトの補正を行
う核磁気共鳴スペクトルの自動位相補正装置であって、
測定により得られた周波数ωを変数とする核磁気共鳴ス
ペクトルデータS(ω)に対して測定遅延による位相シ
フトφdと周波数フィルタによる位相シフトφfとオフレ
ゾナンスによる位相シフトφoの補正を行う第1の位相
補正手段と、該第1の位相補正手段による補正が施され
た核磁気共鳴スペクトルデータに対して、測定に使用さ
れた高周波キャリア波と検波参照波の位相差による位相
シフトφcの補正を行う第2の位相補正手段を備え、前
記高周波キャリア波と検波参照波の位相差による位相シ
フトφcの補正は、核磁気共鳴スペクトルデータS
(ω)から核磁気共鳴信号の裾の部分のデータ及びベー
スラインの部分のデータを選択する段階と、選択された
データに基づいて該データの分散の方向を求めることに
よりφcを決定する段階と、決定されたφcを用いS
(ω){cos(φc)−isin(φc)}の演算を行う段階によ
り行われることを特徴とするものである。また、前記核
磁気共鳴スペクトルデータS(ω)から核磁気共鳴信号
の裾の部分のデータおよびベースラインの部分のデータ
を選択する段階は、任意のデータ点iについて、データ
点i−1からiへのベクトルとiからi+1へのベクト
ルの外積が正のデータ点を選択することを特徴とするも
のである。
【0009】
【0010】
【作用】本発明の実施の形態を説明する前に、位相シフ
トについて詳細に説明する。まずFID信号とNMRス
ペクトルを数式として定義しておく。FID信号F(t)
は、t=0において位相シフトを持ち、指数関数的に減
衰する信号(波)の和として観測される。
【0011】
【数1】 ここで、Nは信号(波)の数、Ij はt=0における信
号jの強度、τj は信号jの緩和定数、ωj は信号jの
角周波数、Φj はt=0における信号jの位相シフトで
ある。
【0012】式(1)をFIDが完全に減衰するまで測
定した条件のもとt=0〜Tでフーリエ変換すると、ス
ペクトルS(ω)が得られる。
【0013】
【数2】 ここでIj { …} の部分が位相シフトのない信号jのス
ペクトル成分である。Φj は信号jの位相シフトである
が、位相シフトを周波数の関数としたことから結局スペ
クトルは下式で表わされる。
【0014】
【数3】 ここで、S´(ω)が位相シフトのない真のスペクトル
であり、残りの部分exp{iΦ(ω)}が位相シフト
の成分である。
【0015】以上は一次元NMRスペクトルについての
検討であるが、多次元NMRスペクトルにおける位相シ
フトは、 となる。ここで、Nは次元数、in はある軸の虚数、ω
n はある軸の周波数である。
【0016】例えば2次元NMRについて見ると、直接
観測軸F2、間接観測軸F1における各軸の位相シフト
ΦF2(ω),ΦF1(ω)は、一般に、 ΦF2(ω)=PoF2+P1F2・ω+P2F2・ω2 +……… ΦF1(ω)=PoF1+P1F1・ω+P2F1・ω2 +……… (5) と、多項式で表すことができる。ここで、Po,P1,P2,
…は0次,1次,2次,…の係数、ωは角周波数であ
る。上記式の各係数が求まれば、NMRスペクトルデー
タに対して補正計算を施して位相シフトを打ち消すこと
ができる。
【0017】ここで、本発明者は、NMRスペクトルに
含まれる位相シフトの要因について検討を加え、その結
果、位相シフトの要因を下記4つに整理した。
【0018】第1の要因はFID信号の測定開始の遅延
である。NMR測定では、図4に示されているようにパ
ルス照射が終了し、パルスの裾の歪みがFID信号の強
度に比べ無視できるまで小さくなるまで待ってからFI
D信号の検出が行われる。
【0019】第2の要因は、検出回路に挿入されている
周波数フィルタである。このフィルタは位相特性を持
ち、FID信号に含まれる様々の周波数成分はこの位相
特性による影響を受ける。
【0020】第3の要因は、パルス期間内のオフレゾナ
ンス効果である。励起パルスの加えられている間、ジャ
ストレゾナンスの状態にない(オフレゾナンスの状態
の)核スピンには、回転座標系で傾斜した有効高周波磁
場がかかる。その結果、ジャストレゾナンスの状態にな
い核スピンからの信号成分には位相シフトが含まれるこ
とになる。なお、ジャストレゾナンスは、パルスのキャ
リア波の周波数に等しい歳差運動周波数を持つ核スピン
にのみ起こる。
【0021】第4の要因は、FID信号を検出するため
に行われる検波の際の検波参照波と高周波パルスのキャ
リア波との位相差である。
【0022】以上の4つの要因による位相シフトは、例
えば2次元NMRの場合、F2 軸とF1 軸で等しく起こ
るわけではない。すなわち、下表に示すように、F2 軸
における位相シフトは、測定遅延、周波数フィルタ、オ
フレゾナンス効果、キャリア波と参照波の位相差の4つ
の要因により発生する。一方、F1 軸における位相シフ
トは、測定遅延とオフレゾナンス効果の2つの要因によ
る。
【0023】 要 因 F2 軸 F1 軸 測定遅延 ○ ○ 周波数フィルタ ○ オフレゾナンス効果 ○ ○ キャリア波と参照波の位相差 ○ 表 1 これらの要因の内、測定の遅延時間,周波数フィルタ,
オフレゾナンス効果は、観測軸の周波数の関数で高次の
位相シフトのみを生じさせる。また、キャリア波と参照
波の位相差は、周波数に依存しない0次の位相シフトを
発生させる。これらのことを考慮すると、(5)式は下
式で置き代えることができる。
【0024】 ΦF2(ωF2)=φd F2(ωF2)+φf F2(ωF2)+φo F2(ωF2)+φc F2(ωF2) ΦF1(ωF1)=φd F1(ωF1) +φo F1(ωF1) …(6) (6)式において、φd ,φf ,φo ,φc は、測定遅
延、フィルタ、オフレゾナンス効果、キャリア波と参照
波の位相差の要因により発生する位相シフトをそれぞれ
示している。
【0025】本発明は、これらの4つの要因による位相
シフトを直接観測軸と間接観測軸とに分けて適切に補正
することを特徴としている。
【0026】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
を参照しつつ説明する。図3は本発明にかかる核磁気共
鳴スペクトルの自動位相補正装置の一実施例を示す図で
ある。図3において、NMR測定部1は静磁場を発生す
る磁石と、試料及びその周囲に配置される送受信コイル
を収容するNMRプローブを備えている。試料にはパル
ス出力部2で発生された所定のパルス列が送受信コイル
を介して照射される。その結果送受信コイルに誘起され
たFID信号は周波数フィルタを備えたFID検出部3
より取り出される。取り出されたFID信号は、A−D
変換器4を介して記憶部5へ送られて記憶される。フー
リエ変換部6は記憶部5に記憶されたFID信号をフー
リエ変換することによりNMRスペクトルデータを得
る。得られたNMRスペクトルデータは、記憶部6に記
憶される。第1の位相補正部7は、記憶部5に記憶され
たNMRスペクトルデータに対して、直接観測軸と間接
観測軸についてFID信号検出の際の測定遅延による位
相シフトの補正、直接観測軸について周波数フィルタに
よる位相シフトの補正、直接観測軸と間接観測軸につい
てオフレゾナンスによる位相シフトの補正を行うもので
ある。第2の位相補正部8は、直接観測軸について検波
参照波とキャリア波の位相差に起因する位相シフトを求
め補正するものである。観測制御部9は、パルス出力部
2、FID検出部3、A−D変換部4、フーリエ変換部
6、第1の位相補正部7、第2の位相補正部8を制御す
るものであり、位相シフトの補正を行うための情報とし
て、測定に使用したパルス列の情報、パルス幅や観測周
波数幅の情報、FID検出部3の測定遅延情報、FID
検出部3における周波数フィルタのフィルタ種類及び周
波数特性の情報を第1の位相補正部7へ供給している。
【0027】次に、図4に示す流れ図に基づいて2次元
NMR測定を例にとって動作手順を説明する。まず、ス
テップS10において、t1 の初期値t1oと、t1 の変
化刻みΔtと、測定回数Mとがオペレータにより設定さ
れ、現在測定回数Nが1にセットされる。次のステップ
S11において、パルス出力部2から発生された図1に
示すような時間t1 (=t1o+N・Δt)置いた2つの
パルスからなるパルス列がNMR観測部1の送受信コイ
ルへ供給され、試料に照射される。次のステップS12
において、試料中の観測核の共鳴に伴って送受信コイル
に誘起されるFID信号FID1 が、直接観測軸(時間
軸)t2 について検出部3により検出される。次に、ス
テップ13において、得られたFID信号はA−D変換
器4を介してコンピュータメモリであるNMRデータ記
憶部5に格納される。ステップS14においてNがMに
等しいか否かが判断され、等しくない場合はステップS
15でN=N+1としてステップS11に戻る。
【0028】このようにしてN=Mになるまで、時間t
1 を段階的に変えながら、上記ステップS11〜S13
がM回繰り返される。N=MとなりM回の測定が終了し
た時点で、記憶部5には図5に示されるようにM個のF
ID信号をt1 の順に並べた集合データA(t2,t1)が
格納される。
【0029】M回の測定が終了後、記憶部5に格納され
ている集合データA(t2,t1)を、演算部6でt2,t1
について二重フーリエ変換することにより2次元スペク
トルデータS(F2,F1)が得られる(ステップS1
6)。
【0030】得られた2次元スペクトルデータS(F2,
F1)に対して、第1の補正部7による位相補正(ステッ
プ17)と第2の補正部8による位相補正(ステップ1
8)が順次行われ、その結果、純粋な吸収スペクトルが
得られる。ステップ17は、周波数フィルターによる位
相シフトφf を補正するステップ17−1,測定の遅延
による位相シフトφd を補正するステップ17−2,オ
フレゾナンス効果による位相シフトφo を補正するステ
ップ17−3から構成される。一方、ステップ18は検
波参照波とキャリア波との位相差による位相シフトφc
の補正が行われる。以下、第1の補正部7による各位相
シフトφf ,φd ,φo の補正と、第2の補正部8によ
る位相シフトφc の補正について詳細に説明する。 [17−1]周波数フィルタによる位相シフトφf の補
正 周波数フィルタは、周波数空間における設計式に基づい
て作成されており、この設計式が予め位相補正部7に格
納されている。アナログ周波数フィルターの4極バター
ワースフィルタを例にとると、その設計式は下式の通り
である。
【0031】
【数4】 ここで、Ωk ,Qk がフィルタの設計定数で、ωc がカ
ットオフ周波数である。最近のNMR装置で通常使用さ
れる直交位相検波(Quadrature phase detection)法で
は、−ωc 〜ωの範囲の角周波数成分のみを通過させ
る。
【0032】(7)式におけるTf(ω) は周波数フィル
タ関数で、|Tf(ω) |なる強度特性と、Tf(ω) /|
Tf(ω) |なる位相特性を持つ。
【0033】そして真のスペクトルS´(ω)とフィル
タを通過させたスペクトルS(ω)との間には次の関係
が成り立つ。 S(ω)=Tf(ω) ×S´(ω) ={Tf(ω)/|Tf(ω) |}×|Tf(ω) |×S´(ω)…(8) {}内が位相シフトを起こす項なので、(2)式と比較
すると次式が導かれる。
【0034】 exp{iφf(ω)}=Tf(ω)/|Tf(ω) | …(9) (9)式におけるTf(ω) は(6)式から計算できるの
で、周波数フィルタの任意の角周波数における位相シフ
トは(9)式により数値的に求められる。位相シフトφ
f(ω)を補正するためには、角周波数ωにおけるスペク
トル値S(ω)を−φf(ω)だけ回転させることが必要
であるから、下式により S1(ω)=S(ω)[cos{−φf(ω)}+isin{−φf(ω)} =S(ω)[cos{φf(ω)}−isin{φf(ω)}] …(10) 位相シフトφf(ω)を補正したスペクトルS1(ω)を得
ることができる。
【0035】要するに、ステップ17−1では、(6)
式のフィルタ設計式及び(9)式に基づいて直接観測軸
F2 の観測周波数範囲について任意の角周波数における
位相シフトφf をシミュレートし、求めたφf を用いて
(10)式に基づいて測定により得られたスペクトルS
(ω)が補正される。
【0036】周波数フィルターとしては、デジタルフィ
ルタもアナログフィルタと併用して或るいは単独で使用
される。デジタルフィルタを単独で使用した場合も、上
記と全く同様に設計式に基づいて位相シフトのシミュレ
ートが可能であり、求めたφf を用いてスペクトルS
(ω)の補正が可能である。両者を併用した場合でも、
それぞれの設計式に基づく位相シフトを合成することに
より、併用した場合の位相シフトをシミュレートすれば
良い。 [17−2]測定の遅延による位相シフトφd の補正 前述の様に、FID信号の時間原点と検出開始までは遅
延時間が必要である。このFID信号の時間原点から検
出開始までの遅延時間をtd とし、これを(1)式に反
映させると、
【0037】
【数5】 となる。これをフーリエ変換して得られるスペクトル
は、
【0038】
【数6】 となる。(12)式において、ωj td が信号jの測定遅
延時間による位相シフトである。(12)式は、測定遅延
時間による位相シフトが個々の信号の角周波数に依存す
ることを示している。この位相シフトを完全に補正する
には、個々の信号を分離し、それらの位相シフトを独立
に補正しなければならない。この信号の分離には、最小
二乗法などの反復法が必要となり、演算時間がかかる。
幸い、NMRの信号はシャープなので、ω=ωj と置き
換えても問題がないと仮定される。この様な仮定に基づ
けば、測定遅延時間による位相シフトφd(ω)は、 φd(ω)=ωtd …(13) と表わせる。td は測定条件として既知なので、位相シ
フトφd(ω)は数値的に求められる。実際には、φd
(ω)はF2 ,F1 の両方の軸について求められ、それ
ぞれの軸についての補正が行われる。φd(ω)を求める
のに必要なtd の値は、F2 軸に関しては実際の測定遅
延時間を、F1 軸に関しては展開時間t1 の初期値をそ
れぞれ用いることができる。
【0039】求められたF2 軸,F1 軸のそれぞれにつ
いての位相シフトφd(ω)を補正するには、周波数フィ
ルタによる位相シフトを補正したスペクトルS1(ω)を
さらに−φd(ω)だけ回転させる必要がある。したがっ
て、 S2(ω)=S1(ω){cos(ωtd)−isin(ωtd)} …(14) の演算を行うことによって位相シフトφd(ω)を補正し
たスペクトルS2(ω)を得ることができる。
【0040】要するに、ステップ17−2では、分析者
から与えられた測定時の遅延時間の情報(例えばF2 軸
については遅延時間,F1軸に関しては展開時間t1 の
初期値)を用い、(13)式に基づいて観測周波数範囲の
全てについて位相シフトφdのが求められ、求めたφd
を用いて(14)式に基づいてスペクトルの補正が行われ
る。 [17−3]オフレゾナンス効果による位相シフトφo
(ω)の補正 先に述べたように,励起パルスの加えられている間、ジ
ャストレゾナンスの状態にない(オフレゾナンスの状態
の)核スピンには、回転座標系で傾斜した有効高周波磁
場がかかる。時間幅τp の高周波パルスを印加すると、
ジャストレゾナンスにない核スピンは傾斜した有効磁場
によって歳差運動を起こす。これによりジャストレゾナ
ンスにない核スピンは、オフセット周波数Ω(NMRで
用いられる周波数で角周波数に対しΩ=−{ω/2π}×
Freq の関係を持つ。Freq は観測周波数範囲であ
る。)に依存する位相シフトφo(ω)を持つ。このオフ
レゾナンス効果による位相シフトには、
【0041】
【数7】 なる関係がある。ここで、
【0042】
【数8】 である。(15),(16)および(17)式において90°
パルスの幅τ90と実効パルスの幅τp は既知の定数なの
で、位相シフトφo(ω)は角周波数の関数となる。オフ
レゾナンス効果による位相シフトφo(ω)を補正するた
めには、測定遅延時間による位相シフトの補正を行った
スペクトルS2(ω)をさらに−φo(ω)だけ回転させる
必要があるので、 S3(ω)=S2(ω)[cos{φo(ω)}−isin{φo(ω)}] …(18) なる演算を行うことにより、オフレゾナンス効果による
位相シフトφo(ω)を補正したスペクトルS3(ω)を求
めることができる。なお、(18)式の演算にあたって
は、φo(ω) を求めずに、(15),(16)式で計算され
るcos{φo(ω)}とsin{φo(ω)}を利用することができ
る。
【0043】そこでステップ17−3においては、分析
者から与えられる測定に使用されたパルスシーケンスの
情報(パルス幅等の情報)に基づいて(15),(16)お
よび(17)式に基づいてF2 ,F1 軸について観測周波
数範囲にわたってφo が求められ、求めたφo を用いて
(18)式に基づいてスペクトルの補正が行われる。 [18]検波参照波とキャリア波との位相差による位相
シフトφc(ω) の補正 前述した[17-1], [17-2], [17-3] の補正によりφf ,
φd ,φo が補正されたスペクトルS3(ω)には、直接
観測軸F2 について観測周波数全域にわたって共通な位
相シフトφc のみが残っている。
【0044】図5(a)は、NMRスペクトルの1つの
ピーク(信号)の近傍におけるスペクトル強度の軌跡を
周波数−複素空間(r,i,ω)上に3次元曲線Lとし
て描いた概念図である。磁化はピーク位置ωp から離れ
た周波数領域では共鳴を起こさないため、図5(a)に
示されているように曲線Lはω軸上にある。そして、ピ
ーク位置ωp を通り越す際の磁化の共鳴により、曲線L
はω=ωp を通るi−r平面上で1回転する。したがっ
て、曲線Lをi−r平面(複素平面)に投影すると図5
(b)に示すように円形になる。また、曲線Lをω−r
平面に投影すると、周波数ωを横軸とした通常のスペク
トルとなり、そのスペクトルは図5(d)に示すように
純粋な吸収波形となる。
【0045】この時検波参照波とキャリア波との位相差
があると、図5(c)に示す様に曲線Lを投影した円は
ω軸を中心に位相差に相当する角度φc 回転する。そし
て、それをω−r平面に投影したものは、図5(e)に
示されるように位相シフトにより歪んだピーク波形を示
す。
【0046】図5(c)に示されている円の回転角度φ
c を求めれば、スペクトル全体を逆方向にφc 回転させ
る下記の演算処理により、位相シフトを補正したスペク
トルS4(ω)を得ることができる。 S4(ω)=S3(ω){cos(φc)−isin(φc)} …(19) このφc は、図5(c)の円を構成する離散データの
内、破線で囲んで示したところの原点(i=0,r=
0)を含みその近傍の領域に存在するデータのみを選択
し、その選択したデータの分散方向を調べ、原点におけ
る円の接線mの傾きを決定することにより求めることが
できる。測定により取得したNMRスペクトルのデータ
は、所定の単位周波数刻みの多数のデータ点から構成さ
れるが、上述した原点近傍の領域に含まれるデータは、
スペクトルのピーク部分のデータではなく、スペクトル
のピークの無い部分及びピークの裾の部分のデータであ
る。
【0047】図6は、この様な考え方に基づく補正を実
施するための手順を表わす流れ図である。図6において
手順1及び手順2は信号の裾とベースライン上のデータ
点を選び出す段階であり、手順3は選択されたデータ点
に基づいてφc を求め補正する段階である。
【0048】まず、手順1において、複素空間における
データ点i−1からiへのベクトルと、iからi+1へ
のベクトルの外積が考慮され、この外積が正のデータ点
が選択される。信号成分が支配的な部分ではノイズの寄
与が少ないので、外積は負の値になる。一方、信号の裾
やベースラインの部分ではノイズが目立ち、外積は正か
負のいずれかになる。そこで、外積が正になるデータ点
を選び出せば、信号の裾とベースラインのデータ点を選
び出すことになる。
【0049】なお、多次元NMRスペクトルデータの場
合は、信号の存在する直接観測軸方向のスライスデータ
(1次元NMRスペクトルデータ)を複数取出して連結
し、連結して出来上がった1次元スペクトルデータにつ
いて上述した外積によるデータの選択が行われる。
【0050】手順1における外積による判定では、ピー
クとピークの重なる部分のデータ点を取り出す可能性が
ある。これらのデータ点は手順3における作業に対して
ノイズとなる。そこで、手順2において信号の裾とベー
スラインを構成することが確かなデータ点だけが選び出
される。具体的には、手順1で選び出されたデータ点に
ついて、1)データ点i−1からiへのベクトルの長さ
の平均AVと標準偏差SDが求められる。2)そして、
データ点i−1からiへのベクトルと、iからi+1へ
のベクトルの長さがそれぞれAV+3SDよりも小さい
データ点iだけが選び出される。3)捨てられるデータ
点がなくなるまで1)及び2)が繰り返し行われる。
【0051】図7は、手順1及び手順2におけるデータ
点の選択の過程を示す図である。図7(a)では手順1
を実施する前の原データのすべて32768ポイントが
i−r平面にプロットされている。図7(b)では、手
順1終了後に残った5435ポイントのデータ点がi−
r平面にプロットされている。図7(c)では、手順2
の途中において残っている4661ポイントのデータ点
がi−r平面にプロットされている。図7(d)では、
手順2終了後に残った4147ポイントのデータ点がi
−r平面にプロットされている。
【0052】上述した手順1及び手順2により、信号の
裾およびベースラインを構成するデータ点であることが
確実なデータ点が選択される。そして、最後の手順3に
おいて、手順1及び手順2で選択されたデータ点を用い
てφc の決定、及び得られたφc を用いた(19)式に
基づくスペクトルの補正演算処理がコンピュータにより
行われる。φc の決定は、例えば主成分分析などの手法
により行うことができる。
【0053】図8は、分析者が手動で0次と1次の係数
を与えて位相補正した場合と、本発明により自動位相補
正を行った場合に得られたNMRスペクトルの例を示
す。これらのスペクトルはキャリア波と検波参照波の周
波数をずらしながら積算し得た水のスペクトルである。
図8(a)の従来の場合、スペクトルの中心付近に着目
して係数を与えたため、スペクトルの両端部での位相シ
フトが補正されていないのが目立つ。一方、本発明によ
る自動位相補正により得られた図8(b)のスペクトル
では、スペクトル全域にわたって位相補正が正しく行わ
れていることが分かる。
【0054】図9(a)はストリキニーネ(strychnine)
について測定した 1H−NMRの標準的な1次元スペク
トル、同図(b)はそれを本発明により自動位相補正し
て得られたスペクトルをそれぞれ示す。
【0055】図10(a)は同じ試料について測定した
13C−NMRの標準的な1次元スペクトル、同図(b)
はそれを本発明により自動位相補正して得られたスペク
トルをそれぞれ示す。
【0056】図11(a)は同じ試料について測定した
13C−NMRのDEPT135 スペクトル、同図(b)は
それを本発明により自動位相補正して得られたスペクト
ルをそれぞれ示す。
【0057】図9−図11のいずれも、本発明により1
次元スペクトルの全域にわたって位相補正が正しく行わ
れていることを示している。
【0058】図12(a)は、ストリキニーネ(strychn
ine)について2次元NMR測定により得られたDQF−
COSYスペクトル、同図(b)はそれを本発明により
自動位相補正して得られたスペクトルをそれぞれ示す。
【0059】図13(a)は、同じ試料について2次元
NMR測定により得られたNOESYスペクトル、同図
(b)はそれを本発明により自動位相補正して得られた
スペクトルをそれぞれ示す。
【0060】図14(a)は、同じ試料について2次元
NMR測定により得られたHSQCスペクトル、同図
(b)はそれを本発明により自動位相補正して得られた
スペクトルをそれぞれ示す。
【0061】図12−図14のいずれも、F2 軸,F1
軸の双方について全域にわたって位相補正が的確に行わ
れていることを示している。
【0062】なお、本発明は、上記の実施例に限定され
るものではなく、種々の変形が可能である。例えば測定
遅延による補正、周波数フィルタによる補正、オフレゾ
ナンスによる補正はどの順序で行ってもよいし、まず直
接観測軸のみについて実行し、その後に間接観測軸につ
いて実行する手順でもよい。
【0063】また、検波参照波とキャリア波の位相差に
起因する位相シフトの補正を行う場合における信号の裾
とベースライン上のデータ点の抽出には、次の方法も考
えられる。強度の平均値(y◆)と標準偏差(σ)を計
算し、y◆+3σを外れるデータ点を除く。残ったデー
タ点に対して再度平均値(y◆)と標準偏差(σ)を計
算し、y◆+3σを外れるデータ点を除く。この操作を
除かれるデータ点がなくなるか極度に少なくなるまで繰
り返し、残ったデータ点を信号の裾とベースライン上の
データ点として決定する。
【0064】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
によれば、測定遅延による位相シフトと周波数フィルタ
による位相シフトとオフレゾナンスによる位相シフトの
補正を行い、さらに位相シフトの定数項の補正を行うの
で、2次元以上のNMRスペクトルの完全な吸収スペク
トルを自動的に得ることができる。また、周波数に対し
て高次の多項式を用いることができるため、スペクトル
の端の信号まできれいに位相補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 2次元NMR測定において用いられるパルス
列とFID信号の例を示す図である。
【図2】 2次元NMRスペクトルを求める演算過程を
示す図である。
【図3】 本発明に係る核磁気共鳴スペクトルの自動位
相補正装置の1実施例を示す図である。
【図4】 NMR装置の動作を説明するための流れ図で
ある。
【図5】 NMRスペクトルの位相シフトを説明するた
めの図である。
【図6】 φc の補正を行う手順の一例を示す流れ図で
ある。
【図7】 信号の裾とベースラインのデータが選び出さ
れる過程を示す図である。
【図8】 分析者が手動で係数を与えて位相補正した場
合と、本発明により自動位相補正を行った場合に得られ
たNMRスペクトルの例を示す図である。
【図9】 ストリキニーネ(strychnine)について測定し
1H−NMRスペクトル及びそれを本発明により自動
位相補正して得られたスペクトルを示す図である。
【図10】 ストリキニーネ(strychnine)について測定
した13C−NMRの標準的なスペクトル及びそれを本発
明により自動位相補正して得られたスペクトルを示す図
である。
【図11】 ストリキニーネ(strychnine)について測定
した13C−NMRのDEPT135 スペクトル及びそれを
本発明により自動位相補正して得られたスペクトルを示
す図である。
【図12】 ストリキニーネ(strychnine)について2次
元NMR測定により得られたDQF−COSYスペクト
ル及びそれを本発明により自動位相補正して得られたス
ペクトルを示す図である。
【図13】 ストリキニーネ(strychnine)について2次
元NMR測定により得られたNOESYスペクトル及び
それを本発明により自動位相補正して得られたスペクト
ルを示す図である。
【図14】 ストリキニーネ(strychnine)について2次
元NMR測定により得られたHSQCスペクトル及びそ
れを本発明により自動位相補正して得られたスペクトル
を示す図である。
【符号の説明】
1…NMR測定部 2…パルス出力部 3…FID検出部 4…A−D変換部 5…フーリエ変換部 6…NMRデータ記憶部 7…第1の位相補正部 8…第2の位相補正部 9…NMR観測制御部
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平8−220205(JP,A) 特開 平1−155253(JP,A) 特開 平2−220635(JP,A) Jean−Marie Dauben feld et.al,Automat ic Intensity, Phas e, and Baseline Co rrections in Quant itative Carbon−13 S pectroscopy,Journa l of Magnetic Reso nance,1985年,Vol.62,p. 195−208 エルンスト,2次元NMR−原理と測 定法−,吉岡書店,1991年,第146−149 頁 Christopher H.Sot ak et.al,Automatic Phase Correction of Fourier Transfo rm NMR Spectra Bas ed on the Dispersi on versus Absorpti o,Journal of Magne tic Resonance,1984年, Vol.57,p.453−462 Juwhan Liu et.al, An Automatic Phase Correction Method in Nuclear Magnet ic Resonance Imagi ng,Journal of Magn etic Resonance,Vo l.86,1990年,593−604 宮林延良,核磁気共鳴スペクトルの自 動位相補正,分析化学,社団法人日本分 析化学会,1995年 7月 5日,第44巻 第7号,第549−554頁 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 24/00 - 24/14 G01R 33/20 - 33/64 A61B 5/055 JICSTファイル(JOIS)

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】核磁気共鳴スペクトルに含まれる位相シフ
    トの補正を行う核磁気共鳴スペクトルの自動位相補正装
    置であって、測定により得られた周波数ωを変数とする
    核磁気共鳴スペクトルデータS(ω)に対して測定遅延
    による位相シフトφdと周波数フィルタによる位相シフ
    トφfとオフレゾナンスによる位相シフトφoの補正を行
    う第1の位相補正手段と、該第1の位相補正手段による
    補正が施された核磁気共鳴スペクトルデータに対して、
    測定に使用された高周波キャリア波と検波参照波の位相
    差による位相シフトφcの補正を行う第2の位相補正手
    段を備え、前記核磁気共鳴スペクトルデータS(ω)は
    直接観測軸と間接観測軸とを有する多次元核磁気共鳴ス
    ペクトルデータであり、測定遅延による位相シフトφd
    とオフレゾナンスによる位相シフトφoの補正は直接観
    測軸と間接観測軸とについて行われ、周波数フィルタに
    よる位相シフトφfと測定に使用された高周波キャリア
    波と検波参照波の位相差による位相シフトφcの補正は
    直接観測軸のみについて行われることを特徴とする核磁
    気共鳴スペクトルの自動位相補正装置。
  2. 【請求項2】核磁気共鳴スペクトルに含まれる位相シフ
    トの補正を行う核磁気共鳴スペクトルの自動位相補正装
    置であって、測定により得られた周波数ωを変数とする
    核磁気共鳴スペクトルデータS(ω)に対して測定遅延
    による位相シフトφdと周波数フィルタによる位相シフ
    トφfとオフレゾナンスによる位相シフトφoの補正を行
    う第1の位相補正手段と、該第1の位相補正手段による
    補正が施された核磁気共鳴スペクトルデータに対して、
    測定に使用された高周波キャリア波と検波参照波の位相
    差による位相シフトφcの補正を行う第2の位相補正手
    段を備え、前記核磁気共鳴スペクトルデータS(ω)は
    直接観測軸と間接観測軸とを有する多次元核磁気共鳴ス
    ペクトルデータであり、前記測定遅延による位相シフト
    φdの補正は、測定に使用されたパルスシーケンスに応
    じて与えられる遅延時間td、すなわち、直接観測軸に
    関しては、実際の測定遅延時間、間接観測軸に関して
    は、測定に使用されたパルスシーケンスに応じて与えら
    れる展開時間t の初期値を用いて、S(ω){cos(ω
    td)−isin(ωtd)}の演算により行われることを特徴
    とする核磁気共鳴スペクトルの自動位相補正装置。
  3. 【請求項3】前記周波数フィルタによる位相シフトφf
    の補正は、測定に使用された周波数フィルタの設計式に
    基づいて観測周波数範囲について位相シフトφfを算出
    し、算出されたφfに基づいてS(ω)[cos{φf
    (ω)}−isin{φf(ω)}]の演算により行われる
    ことを特徴とする請求項1記載の核磁気共鳴スペクトル
    の自動位相補正装置。
  4. 【請求項4】前記オフレゾナンスによる位相シフトφo
    の補正は、測定に使用されたパルスのパルス幅に基づい
    て算出されたφoを用い、S(ω)[cos{φo(ω)}
    −isin{φo(ω)}]の演算により行われることを特
    徴とする請求項1記載の核磁気共鳴スペクトルの自動位
    相補正装置。
  5. 【請求項5】 核磁気共鳴スペクトルに含まれる位相シフ
    トの補正を行う核磁気共鳴スペクトルの自動位相補正装
    置であって、測定により得られた周波数ωを変数とする
    核磁気共鳴スペクトルデータS(ω)に対して測定遅延
    による位相シフトφdと周波数フィルタによる位相シフ
    トφfとオフレゾナンスによる位相シフトφoの補正を行
    う第1の位相補正手段と、該第1の位相補正手段による
    補正が施された核磁気共鳴スペクトルデータに対して、
    測定に使用された高周波キャリア波と検波参照波の位相
    差による位相シフトφcの補正を行う第2の位相補正手
    段を備え、前記高周波キャリア波と検波参照波の位相差
    による位相シフトφcの補正は、核磁気共鳴スペクトル
    データS(ω)から核磁気共鳴信号の裾の部分のデータ
    及びベースラインの部分のデータを選択する段階と、選
    択されたデータに基 づいて該データの分散の方向を求め
    ることによりφcを決定する段階と、決定されたφcを用
    いS(ω){cos(φc)−isin(φc)}の演算を行う段階
    により行われることを特徴とする核磁気共鳴スペクトル
    の自動位相補正装置。
  6. 【請求項6】 前記核磁気共鳴スペクトルデータS(ω)
    から核磁気共鳴信号の裾の部分のデータおよびベースラ
    インの部分のデータを選択する段階は、任意のデータ点
    iについて、データ点i−1からiへのベクトルとiか
    らi+1へのベクトルの外積が正のデータ点を選択する
    ことを特徴とする請求項5記載の核磁気共鳴スペクトル
    の自動位相補正装置。
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Christopher H.Sotak et.al,Automatic Phase Correction of Fourier Transform NMR Spectra Based on the Dispersion versus Absorptio,Journal of Magnetic Resonance,1984年,Vol.57,p.453−462
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エルンスト,2次元NMR−原理と測定法−,吉岡書店,1991年,第146−149頁
宮林延良,核磁気共鳴スペクトルの自動位相補正,分析化学,社団法人日本分析化学会,1995年 7月 5日,第44巻第7号,第549−554頁

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