JP3478751B2 - デジタル熱光学光スイッチ - Google Patents

デジタル熱光学光スイッチ

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  • Optical Modulation, Optical Deflection, Nonlinear Optics, Optical Demodulation, Optical Logic Elements (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、波長多重( WD
M) 光通信等の光通信及び光信号処理において光路切り
替えに用いられる光導波路型光スイッチに関し、特にデ
ジタル熱光学光スイッチに関する。
【0002】
【従来の技術】光導波路型熱光学光スイッチは、可動部
分が無く、挿入損失が低く、小型で集積化が容易なた
め、波長多重通信網のクロスコネクトやアドドロップマ
ルチプレクサ(ADM)用光スイッチ用として有望視さ
れている。この光導波路型熱光学光スイッチの中でもデ
ジタル熱光学光スイッチは、スイッチ特性が波長や偏光
や動作電力に対して原理的に低依存である利点が着目さ
れ、各機関で活発な研究開発が進められている(参考文
献1:N.Ooba et al.,“Low Loss 1×8 digital optica
l switch and tunable arrayed-waveguide grating mul
tiplexer using a silicone resin waveguide ”,Proc.
7th Int Plastic Opt. Fibres Conf.,Berlin,P.303,199
8 )。
【0003】デジタル熱光学光スイッチの動作には、大
きい熱光学屈折率変化が必要とされるので、コア・クラ
ッド共に熱光学定数の大きい高分子光導波路材料が主に
用いられている。
【0004】従来の一般的なデジタル熱光学光スイッチ
の構造を図4の平面図に示す。入力光導波路としての直
線光導波路11とテーパー光導波路12及び分岐光導波
路13及び出力光導波路14からなるY分岐光導波路に
沿って、薄膜ヒーター15はその垂直方向にほぼ一定間
隔をおいて配置されている。図4中、薄膜ヒーター15
に電流を供給するリードは省略している。2本の分岐光
導波路13は、互いにモード結合しながら徐々に離れて
いくテーパードヴェロシティーカップラーをなしてい
る。
【0005】一対の薄膜ヒーター15のいずれか一方を
加熱することで、熱光学効果により2つの分岐光導波路
13の屈折率を非対称とすると、テーパードヴェロシテ
ィーカップラーにおける基本モード光は、出力光導波路
14側では高屈折率側に集中する。このため、直線光導
波路11に入射した基本モード光が高次モードに結合し
なければ、高屈折率側の出力光導波路14に導かれ、こ
のデバイスは分岐スイッチとして動作する(参考文献
2:W.K.Burns,et al., “Mode conversion in planar-
dielectric separating waveguides”,IEEE j.Quantum
Electron.,Vol.QE-11,p.32,1975)。
【0006】デジタル熱光学光スイッチにおいて、より
高い分岐比を得るためには、分岐角を小さくする、また
は大きな屈折率差を分岐光導波路13に与えることが必
要となる。分岐角を小さくすると加熱領域である分岐光
導波路13が長くなる。20dBを越える消光比を得る
ためには、一般に分岐角0.1度程度となり、10mm
程度の分岐光導波路13や薄膜ヒーター15が必要とな
る(参考文献3:W.Horsthuis et al.,"PACKAGED POLYM
ERIC 1×8 DIGITAL OPTICAL SWITCHES", Proc.21st Eu
r.Conf.Opt.Comm.,Brussels,Th.L.3,4,p.1059, 199
5)。
【0007】しかし、高分子光導波路の場合、導波路自
体の導波損失が10mmで0.5dB程度見込まれるの
で、スイッチが長くなると損失増加をまねく問題が生じ
る。
【0008】また、大きな屈折率差を分岐光導波路13
に与えた場合、薄膜ヒーター15の直線光導波路11側
の端点において、モード変換による過剰損失が生じる。
これを防ぐためには、図4のAで示すように、薄膜ヒー
ター15を徐々にコア(光導波路)12に近づけている
領域が必要となる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】このように、従来のデ
ジタル熱光学光スイッチでは、コアと薄膜ヒーターの距
離を変えてコア部分の加熱量を制御している。しかし、
この従来方法では、加熱量を小さくしたい部分では、ス
イッチ動作に関与しないコアから離れた領域を加熱して
いることになり、加熱電力効率を下げている。そこで、
このようなデジタル熱光学光スイッチでは、加熱効率を
上げて、消費電力をさらに下げることが課題となってい
る。
【0010】本発明の目的は、上述のような従来技術の
課題を解決し、小さい動作電力で同等の性能を得ること
ができ、光クロスコネクトシステムや光アドドロップマ
ルチプレクサの低電力化を図ったデジタル熱光学光スイ
ッチを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、請求項1の発明は、直線光導波路及びテーパー光導
波路及び分岐光導波路からなるY分岐光導波路と、該Y
分岐光導波路に沿う薄膜ヒーターとにより構成されるデ
ジタル熱光学光スイッチにおいて、前記薄膜ヒーターの
一部が前記直線光導波路側から前記分岐光導波路側へ向
けて徐々にその幅が細くなる形状、およびその厚さが薄
くなる形状の少なくともいずれかの形状を有することを
特徴とする。
【0012】ここで、好ましくは、前記薄膜ヒーターの
前記一部は、前記テーパー光導波路に沿う部分である。
【0013】また、好ましくは、前記Y分岐光導波路
が、アクリル系高分子、または紫外線硬化エポキシ樹
脂、またはシリコーン樹脂、またはポリイミドのいずれ
か、またはそれらの組み合わせによって作られている。
【0014】
【発明の実施の形態】図面を参照して、本発明の実施の
形態を詳細に説明する。
【0015】まず、本発明の原理を説明する。抵抗率ρ
の金属薄膜で出来ている厚さT、幅Wのストリップ状の
薄膜電熱ヒーターに電流iを流した時、単位面積当たり
の発熱量は、
【0016】
【数1】
【0017】となる。光導波路の厚さに比べてヒーター
の幅が同程度以上の場合、ヒーターの上昇温度は、単位
面積当たりの発熱量に比例すると近似できる。ここか
ら、薄膜ヒーターの幅、または厚さを変化させること
で、ヒーターの上昇温度を場所により変化させることが
できることがわかる。
【0018】(第1の実施形態)図1は、本発明の一実
施形態のデジタル熱光学光スイッチの構成を示す平面図
である。図1において、図4の従来例と同様の構成要素
には同一符号を付してある。すなわち、入力光導波路と
しての直線光導波路11とテーパー光導波路12及び分
岐光導波路13及び出力光導波路14からなるY分岐光
導波路に沿って、薄膜ヒーター15はその垂直方向にほ
ぼ一定間隔をおいて配置されている。2本の分岐光導波
路13は、互いにモード結合しながら徐々に離れていく
テーパードヴェロシティーカップラーをなしている。
【0019】テーパー光導波路12が形成されている図
1のBの領域では、直線光導波路11側へ向けて薄膜ヒ
ーター15の幅Wを徐々に太くすることで(最小幅W0
→最大幅W1 )、発熱量を減らし、従来ヒーターを遠ざ
けていたのと同じ効果を得ている。例えば、ヒーター1
5の左端で1/10の発熱量とするには、
【0020】
【数2】
【0021】とすればよい。この時、B領域のヒーター
15の全体の発熱量若しくは加熱電力P1 は、ヒーター
15の幅を、
【0022】
【数3】
【0023】B領域のヒーター15の長さをLとして、
【0024】
【数4】
【0025】である。ただし、P0 は、従来の幅W0
ヒーターの発熱量若しくは加熱電力、
【0026】
【数5】
【0027】である。
【0028】上式(4)から、本実施形態のB領域にお
ける発熱量若しくは加熱電力P1 は、従来型の発熱量若
しくは加熱電力P0 に比べ約半分になることがわかる。
分岐光導波路13が形成されている図1のC部分を含む
ヒーター15全体でも2割以上の加熱電力の減少が見込
まれる。
【0029】なお、本発明を適用するY分岐光導波路
は、例えば、アクリル系高分子、または紫外線硬化エポ
キシ樹脂、またはシリコーン樹脂、またはポリイミドの
いずれか、またはそれらの組み合わせによって作成する
のが好ましい。
【0030】(第2の実施形態)図2は、本発明の他の
実施形態のデジタル熱光学光スイッチの構成を示し、薄
膜ヒーターの厚みを制御して発熱量を変化させた例を示
す平面図と側面図である。図2の(a)の平面図、図2
の(b)の側面図に示すように、テーパー光導波路12
が形成されているBの領域では、直線光導波路11側へ
向けて徐々にヒーター15の厚みTを厚くすることで
(最小厚みT0 →最大厚みT1 )、発熱量P1 を減ら
し、従来のヒーターを光導波路から遠ざけていたのと同
じ効果を得ている。たとえば、ヒーター左端で1/10
の発熱量とするには、
【0031】
【数6】 T1 =10T0 …(6) とすればよい。この時、B領域のヒーター全体の発熱量
若しくは加熱電力P1 は、従来の厚さT0 のヒーターに
比べ約1/4になる。C領域部分を含むヒーター全体で
も3割以上の加熱電力の減少が見込まれる。
【0032】
【実施例】次に、本発明の実施例を具体的に説明する。
【0033】(第1の実施例)屈折率1.489の重水
素シリコーン樹脂をコアに、屈折率1.485の重水素
化シリコーン樹脂をクラッドに用いて、シリコン基板上
にY分岐光導波路を作製した。シリコーン樹脂光導波路
の作成方法は、本願発明者らが提案した「熱光学デバイ
ス」(特開平10−319445号公報)の作成方法に
準じた。
【0034】コア断面サイズは8μm×8μm、下層ク
ラッド厚、コア上の上部クラッド厚は、それぞれ14μ
m、12μmとした。導波路上に金薄膜をスパッター法
で形成し、フォトリソグラフィー及びドライエッチング
法を用いて図1示す形状のストリップ状の薄膜抵抗ヒー
ターを作製した。ここで、W0 =20μm、W1 =60
μmである。
【0035】比較のため図4に示す一定幅20μmのヒ
ーターを備えた形状の従来型光スイッチも同様にして作
製した。
【0036】波長1.55μmのLD光源(図示しな
い)及び2つの光パワーメータ(図示しない)をそれぞ
れ幹側コア11、分岐側コア14に接続してスイッチ特
性を測定した。2つの分岐出力の比、即ち消光比が30
dBを越えるのに必要なヒーター加熱電力は、従来型1
60mWに対して本発明の光スイッチは120mWであ
った。これにより、本発明を適用することで加熱効率を
上げ、消費電力を下げることが可能であることが確認さ
れた。
【0037】(第2の実施例)上記の本発明の第1の実
施例と同構造のY分岐光導波路を作製し、この上に、図
3に示すように金属マスク18を光導波路16から離し
て設置したスパッター装置を用いて、膜厚変化のある金
属薄膜17を堆積した。ここで、19はスパッター装置
のスパッターターゲットである。さらに、フォトリソグ
ラフィー及びドライエッチング法を用いて図2に示す形
状のストリップ状の薄膜抵抗ヒーターを作製した。ここ
で、T0 =0.05μm、T1 =0.6μmとなった。
【0038】上記の第1の実施例と同様の方法で消光比
を測定した。消光比が30dB以上となるヒーター加熱
電力は、100mWであった。これにより、本発明を適
用することで加熱効率を上げ、消費電力を下げることが
可能であることが確認された。
【0039】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
従来のものより小さい動作電力で同等の性能を得ること
ができ、光クロスコネクトシステムや光アドドロップマ
ルチプレクサの低電力化が図れるという効果が得られ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるヒーター幅を
変化させたY分岐デジタル熱光学光スイッチの構成を示
す平面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態におけるヒーター厚を
変化させたY分岐デジタル熱光学光スイッチの構成を示
す平面図(a)と側面図(b)である。
【図3】本発明の実施例で用いたスパッター薄膜堆積装
置の概略図である。
【図4】従来のY分岐デジタル熱光学光スイッチの構成
を示す平面図である。
【符号の説明】
11 直線光導波路 12 テーパー光導波路 13 分岐光導波路 14 出力光導波路 15 薄膜ヒーター 16 光導波路 17 堆積した金属薄膜 18 マスク 19 スパッターターゲット
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平9−211501(JP,A) 特開 平9−50053(JP,A) 大庭直樹 他,シリコーン光導波路を 用いたデジタル熱光学スイッチ,1997年 電子情報通信学会総合大会論文集,1997 年 3月,エレクトロニクス1、C−3 −11,第196頁 Y.Hida et al,Elec tronics Letters,1997 年 3月27日,vol.33,no.7, pp.626−627 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G02F 1/00 - 1/125 G02F 1/29 - 7/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 直線光導波路及びテーパー光導波路及び
    分岐光導波路からなるY分岐光導波路と、該Y分岐光導
    波路に沿う薄膜ヒーターとにより構成されるデジタル熱
    光学光スイッチにおいて、 前記薄膜ヒーターの一部が前記直線光導波路側から前記
    分岐光導波路側へ向けて徐々にその幅が細くなる形状、
    およびその厚さが薄くなる形状の少なくともいずれかの
    形状を有することを特徴とするデジタル熱光学光スイッ
    チ。
  2. 【請求項2】 前記薄膜ヒーターの前記一部は、前記テ
    ーパー光導波路に沿う部分であることを特徴とする請求
    項1に記載のデジタル熱光学光スイッチ。
  3. 【請求項3】 前記Y分岐光導波路が、アクリル系高分
    子、または紫外線硬化エポキシ樹脂、またはシリコーン
    樹脂、またはポリイミドのいずれか、またはそれらの組
    み合わせによって作られていることを特徴とする請求項
    1または2に記載のデジタル熱光学光スイッチ。
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Title
Y.Hida et al,Electronics Letters,1997年 3月27日,vol.33,no.7,pp.626−627
大庭直樹 他,シリコーン光導波路を用いたデジタル熱光学スイッチ,1997年電子情報通信学会総合大会論文集,1997年 3月,エレクトロニクス1、C−3−11,第196頁

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