JP3471406B2 - 溶鋼成分適中精度を向上させたスラグ中の有価金属の還元回収方法 - Google Patents

溶鋼成分適中精度を向上させたスラグ中の有価金属の還元回収方法

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JP3471406B2 JP04698294A JP4698294A JP3471406B2 JP 3471406 B2 JP3471406 B2 JP 3471406B2 JP 04698294 A JP04698294 A JP 04698294A JP 4698294 A JP4698294 A JP 4698294A JP 3471406 B2 JP3471406 B2 JP 3471406B2
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  • Treatment Of Steel In Its Molten State (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、製錬後の溶鋼表面を覆
うスラグ層に懸濁している易還元性酸化物中の有価金属
を溶鋼に還元回収すると共に、得られる溶鋼の成分適中
精度を高めたスラグ中有価金属の還元回収方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】転炉,真空脱ガス装置等でステンレス鋼
等の合金鋼を脱炭精練するとき、溶鋼中の炭素が吹錬酸
素と反応しCOガスとなって溶鋼から除去されると同時
に、有用成分であるCr,Fe,Mn等も一部が次の反
応に従って酸化される。 4[Cr]+3O2 →2(Cr23 ) 2[Fe]+O2 →2(FeO) 2[Mn]+O2 →2(MnO) 酸化物となったCr,Fe,Mn等の金属元素は、溶鋼
表面に浮遊しているスラグに移行する。スラグ中の金属
元素は、製鋼の最終段階で酸化物から金属状態に還元さ
れ、メタルとして溶鋼に回収される。回収は、Cr,F
e,Mn等の金属元素がSiによって容易に金属状態に
還元されることを利用し、たとえば真空精錬時に所定量
のSiを取鍋内溶鋼に添加することにより行われてい
る。Siによる還元反応は、次の通りである。 2(Cr23 )+3Si→4[Cr]+3(SiO
2 ) 2(FeO)+Si→2[Fe]+(SiO2 ) 2(MnO)+Si→2[Mn]+(SiO2
【0003】また、Siよりも酸素親和力が大きなA
l,Ti等を還元剤として使用するとき、スラグ中のS
iをメタルに移行させることもできる。金属状態になっ
たCr,Fe,Mn等は溶鋼に取り込まれ、溶鋼が成分
調整される。成分調整を高精度で行うためには、最終段
階でスラグから溶鋼に移行する金属元素を定量的に把握
しておく必要がある。また、最近では、Si含有量に関
する規格が極めて厳しい鋼種が使用され始めている。こ
のような高精度の成分調整やSi含有量が厳格に管理さ
れた鋼種に対応するためには、Siによって還元される
易還元性酸化物がスラグ中に含まれている量を正確に把
握することが必要である。スラグに含まれている易還元
性金属元素の量は、Cr23 ,FeO,MnO等の金
属酸化物中の酸素濃度及びスラグ量から算出される。算
出された酸素量は、還元剤として必要なSiの添加量を
定めるときの基準になる。金属酸化物中の酸素を定量す
る方法として、スラグ試料を蛍光X線分析する方法が知
られている。蛍光X線分析においては、精錬中の転炉,
真空脱ガス装置等から採取した溶融スラグをガラスビー
ド法,プレス成形法等で分析用試料に作製している。
【0004】ガラスビード法では、たとえば図1に示す
ように、凝固したスラグを粉砕した後、秤量し、スラグ
0.2gを炭酸ナトリウム等の融剤2.0gと共に白金
ルツボに入れ、ビードサンプラーで加熱・撹拌し、均一
に溶融・冷却する。この方法によるとき、分析用試料を
得るまでに25分程度の作業が必要となる。プレス成形
法では、採取された適量のスラグをアルミニウム製キャ
ップに充填し、15〜20トンのプレスで加圧成形する
ことにより、分析用試料を作製している。プレス成形法
は、ガラスビード法に比較して分析用試料を得るまでの
時間が短いものの、粉砕した粒子のバラツキ等に起因す
る測定誤差を解消するため同一試料で2回の分析が必要
となる。そのため、結果として分析結果を得るまでに2
0分程度かかる。蛍光X線分析法は、ガラスビード法及
びプレス成形法の何れにおいても試料秤量から分析値の
算出までに20〜25分を必要とする。しかも、試料に
含まれている金属酸化物が単独の形態をとっているもの
と仮定し、金属と酸化物との化学量論的な関係から定ま
る係数を酸化物の定量値に乗じることにより、酸素分析
値を算出している。しかし、実際の操業状態にあるスラ
グから採取した試料には金属状態のCr,Fe,Mn等
や酸素価が異なる金属酸化物が含まれていることが多
く、この方法では必然的に測定誤差が生じる。
【0005】本発明者等は、分析時間の短縮及び分析誤
差の抑制を図るため、製鋼スラグから採取された試料と
炭素源との反応により系外に排出される酸素量に基づ
き、製鋼スラグに含まれているCr,Fe,Mn等の易
還元性金属酸化物を定量する方法を開発し、特願平4−
319364号として出願した。この方法によって、1
0分以内の短時間でスラグ中の酸素を定量することが可
能となる。他方、スラグを計量する方法として、出鋼,
排滓ごとに取鍋の重量を計量し、溶鋼及びスラグ量を含
めた取鍋全重量から差し引く方法等が知られているが、
依然としてスラグ量を高精度に測定することが困難な現
状にある。本発明者等は、スラグ下にある溶鋼の表面位
置を検出できると、スラグ層の厚み、ひいてはスラグ重
量の算出が可能になるとの前提で、溶鋼の表面位置を検
出する手段を検討した。その結果、渦電流センサーに供
給される交流電流の周波数を特定することにより、導電
性の金属液滴が多量に懸濁しているスラグ層を介しても
溶鋼の表面位置が正確に検出されることを見い出し、周
波数0.5〜500KHzの交流電流が供給される渦電
流センサーを使用する方法を開発し、特願平5−708
59号で提案した。渦電流センサーに供給された交流電
流によって溶鋼の湯面に渦電流が生じ、渦電流により発
生する誘導磁界に基づき溶鋼の表面位置が算出される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】算出された溶鋼の表面
位置から、溶鋼の重量WM が算出される。他方、真空脱
ガス容器,取鍋等の容器重量WV や溶鋼及びスラグを含
む全重量WT は計量容易であるので、スラグ重量WS
は、WS =WT − (WM +WV)で算出される。しかし、
この方式では、溶鋼重量WM を仲介としてスラグ重量W
S を間接的に算出するため、誤差要因が取り込まれる可
能性が高い。たとえば、溶鋼を収容している真空脱ガス
容器,取鍋等の容器は、使用回数が増すにつれて溶鋼や
スラグによる侵食によって内壁面が複雑に凹凸化してく
る。そのため、溶鋼の表面位置から溶鋼重量WM を単純
に算出するとき、内壁面の凹凸に起因する影響が算出因
子に取り込まれずに誤差要因となる可能性がある。この
ような誤差要因は、精練直前の容器の耐火物の形状を計
測することにより取り除かれる。しかし、計測は、長時
間を要し且つ作業負荷を増すため、最適な方法とはいえ
ない。本発明は、このような問題を解消すべく案出され
たものであり、スラグ層の厚み自体を測定対象とするこ
とにより、溶鋼重量の測定に随伴した誤差要因を可能な
限り排除し、スラグの重量を正確に算出し、算出重量及
びスラグ組成を基準にして定められた量の還元剤を添加
することにより、規格成分以上にSi,Al等の還元剤
が溶鋼に持ち込まれることなく、しかもMn,Cr等の
合金成分の含有量適中精度を向上させた溶鋼を得ること
を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明のスラグ中有価金
属還元回収方法は、その目的を達成するため、溶鋼の表
面に浮遊するスラグから易還元性酸化物中の有価金属を
前記溶鋼に還元回収する際、前記スラグから採取された
試料を炭素還元して前記易還元性酸化物の含有量を測定
すると共に、前記スラグ及び前記溶鋼の表面位置を検出
し、検出された表面位置の差からスラグの厚みを算出
し、該スラグの厚みに基づいて前記スラグの重量を求
め、前記易還元性酸化物の含有量及び前記スラグの重量
から還元剤の必要添加量を演算し、演算結果の添加量で
前記還元剤を前記スラグに投入することを特徴とする。
スラグの表面位置は、渦電流,レーザ,マイクロ波,放
射線等を用いた距離計や、スラグ表面に直接接触させる
タッチ式センサー,スラグの輝度を測定する方法等によ
って検出される。渦電流センサーとしては、周波数が5
00kHz以上で1MHz以下の高周波交流電流が供給
される渦電流式センサーを使用することが好ましい。周
波数が500kHz以上で1MHz以下の高周波交流電
流は、スラグの表面にのみ渦電流を発生させるため、ス
ラグの表面位置を検出できる。
【0008】溶鋼の表面位置は、周波数0.5〜500
kHzの高周波交流電流が供給され渦電流センサーによ
り検出される。周波数0.5〜500kHzの高周波交
流電流を供給することにより、スラグ層に懸濁している
金属液滴に起因する渦電流による誤差要因が渦電流セン
サーの受信コイルに取り込まれることなく、スラグ下に
ある溶鋼の表面位置が高精度で検出される。或いは、渦
電流センサーに代え、一対の電極をスラグからメタルに
わたって浸漬し、スラグ及びメタルそれぞれの導電性の
差を電気的に検出する方法,常に一定量のガスが流れて
いるガスプローブをスラグからメタルにわたって浸漬
し、スラグ及びメタルそれぞれの比重差に起因したガス
プローブ中の背圧変化を検出する方法等によっても、溶
鋼の表面位置を検出することができる。溶鋼に還元回収
される有価金属は、使用する還元剤の還元能に応じて選
択できる。たとえば、Si又はフェロシリコンを還元剤
として使用すると、Fe,Mn及びCrが溶鋼に還元回
収される。Al,Ti,Ca,Mg又はそれらの合金を
還元剤として使用すると、Fe,Mn,Cr及びSiが
還元回収される。Al,Ca,Mg又はそれらの合金を
還元剤として添加すると、Fe,Mn,Cr,Si及び
Tiが溶鋼に還元回収される。何れの場合にも、スラグ
中の易還元性酸化物の酸素量及びスラグ重量から還元剤
の必要添加量が定まっているので、規格成分以上に余分
な還元剤を添加することなく、目標組成に高精度で一致
した溶鋼が得られる。
【0009】
【作用】本発明においては、スラグ及び溶鋼の表面位置
が基準点からの距離X1 ,X2として検出される。溶鋼
の表面位置はスラグ層との界面にあるので、スラグ層の
厚みは(X1 −X2 )と算出される。他方、真空脱ガス
容器,取鍋等の容器の内側半径Rは予め判っているの
で、スラグの体積VS はVS =πR2 ×(X1 −X2
となる。スラグの重量WS は、体積VS にスラグの比重
ρを乗じることにより、WS =ρ×VS =ρ×πR2 ×
(X1 −X2 )として算出される。得られたスラグ重量
S は、溶鋼重量WM を介在させることなく、スラグ層
の厚みから直接的に算出された値である。そのため、誤
差要因が取り込まれることが少なく、高精度のスラグ重
量WS となる。他方、スラグに含まれている易還元性酸
化物の含有量は、本発明者等が先に提案した炭素還元法
で迅速に得られる。このようにして求められたスラグ重
量WS及び易還元性酸化物の含有量から、還元剤の必要
添加量が算出される。この添加量で還元剤を添加すると
き、スラグ中の易還元性酸化物が還元され、金属状態で
溶鋼に回収される。また、過剰の還元剤を添加すること
がないため、溶鋼に持ち込まれる余分な還元剤も少なく
することができる。すなわち、規格成分以上にSi,A
l等の還元剤が溶鋼に余分に持ち込まれることなく、し
かもMn,Cr等の合金成分の含有量適中精度を向上さ
せた溶鋼が得られる。
【0010】−スラグに含まれている易還元性酸化物の
酸素定量− スラグに含まれている易還元性酸化物の酸素量は、スラ
グから採取された試料を不活性雰囲気中で連続的に加熱
しながら炭素源と反応させ、炭素と結合して系外に排出
される酸素量を時系列的に測定することにより定量する
ことができる。たとえば、スラグ試料を活性炭,炭化物
等の炭素源と共に黒鉛ルツボに入れ、不活性雰囲気中で
連続的に昇温すると、易還元性酸化物と炭素との反応に
よってCOガスが発生する。このとき、スラグ試料に含
まれているCr,Fe,Mn等の酸化物(ここでは、こ
れら酸化物を易還元性酸化物という)は、比較的低温で
還元反応を開始し、金属元素から分離した酸素が抽出さ
れる。他方、Ca,Mg,Si等の酸化物(ここでは、
これら酸化物を難還元性酸化物という)は、Cr2
3 ,FeO,MnO等の酸化物よりも酸素親和力が大き
いため、還元反応の開始温度が高温となる。すなわち、
易還元性酸化物から酸素抽出が終了した後で、難還元性
酸化物からの酸素抽出が開始する。そこで、試料スラグ
の炭素還元により発生するCOガスを赤外線吸収法で連
続的に定量すると、図2に示すような酸素抽出曲線が得
られる。酸素抽出曲線は、分析時間及び加熱温度に伴っ
て上昇するが、時点t1 に達する1800℃近傍の温度
1 で一旦降下し、次いで再度立ち上がった後、時点t
0 で酸素強度0となる。時点t1 における分析酸素強度
の極小値I1 は明瞭に検出され、易還元性酸化物と難還
元性酸化物の還元反応とを明確に区別できる。
【0011】分析開始から時点t1 までの間の酸素強度
を積分した値、すなわち図2で斜線を付けた領域の面積
が易還元性酸化物から抽出された酸素量に相当する。こ
のようにして求められた酸素値からスラグに含まれてい
る易還元性酸化物の酸素量が算出され、それに応じて還
元剤の必要添加量が演算される。組成が把握されている
スラグに対し相応の添加量で還元剤が添加されるため、
スラグから溶鋼に回収される有価金属も量的に制御さ
れ、しかも規格成分以上に溶鋼に持ち込まれる未反応の
還元剤が抑制される。炭素還元法は、Siで還元される
Fe,Mn,Cr等の易還元性酸化物を定量するときに
使用される。この炭素還元法に蛍光X線分析法を組み合
せると、より酸素親和力が大きなAl,Ti,Ca,M
g等で還元される難還元性酸化物、すなわちCr,F
e,Mn等とAl,Ti,Ca,Mg等との間の酸素親
和力をもつ金属の酸化物も定量される。たとえば、Al
を還元剤として使用する場合、SiO2 ,TiO2 等が
酸素定量される。
【0012】−スラグ重量の計測− スラグの表面位置T1 は、500kHz〜1MHzの高
周波交流電流が供給される渦電流センサーや、レーザ,
マイクロ波,放射線等を用いた距離計,スラグの表面に
検出端子を直接接触させるタッチ式センサー,スラグの
輝度を検出するセンサー等を使用して計測される。スラ
グの表面位置T1 を渦電流センサーで検出するとき、5
00kHz〜1MHzの高周波交流電流が供給される渦
電流センサーを使用することが必要である。500kH
z〜1MHzの高周波交流電流は、スラグの表面のみに
誘導磁界を発生させ、スラグの表面位置T1 を検出す
る。周波数が500kHzに満たない高周波交流電流で
は、スラグ下にある溶鋼の表面位置T2 が検出される。
他方、1MHzを超える高周波交流電流では、スラグの
表面位置T1 の測定が理論的に可能であるものの実用的
でない。具体的には、高周波交流電流を渦電流センサー
に供給する技術、たとえば高周波交流電流の供給側の設
備とセンサー本体を接続するためのケーブルに対する外
来ノイズ等を防止する対策が難しい。スラグとの界面に
ある溶鋼の表面位置T2 は、0.5〜500kHzの高
周波交流電流が供給される渦電流センサー,一対の電極
をスラグからメタルにわたって浸漬しスラグ及びメタル
それぞれの導電性の差を電気的に検出する方法,常に一
定量のガスが流れているガスプローブをスラグからメタ
ルにわたって浸漬しスラグ及びメタルの比重差に起因し
たガスプローブ中の背圧変化を検出する方法等で計測さ
れる。それぞれのセンサーで検出された表面位置の差
(T1 −T2 )から、スラグ層の厚みを求める。このと
き、スラグ及び溶鋼の平面内で多数の測定点をとること
により、測定精度が向上する。このスラグ層の厚み(T
1 −T2 )と予め測定した真空脱ガス容器,取鍋等の容
器の内側半径Rから、スラグの体積VS をπR2×(T1
−T2 )として求める。スラグの重量WS は、体積VS
に比重ρを乗じることにより、ρ×πR2 ×(T1
2 )として演算される。
【0013】−還元剤の必要添加量の算出− 還元剤の必要添加量は、図3に示すフローに従って算出
される。すなわち、スラグの表面位置T1 及び溶鋼の表
面位置T2 から求めたスラグ重量WS とスラグに含まれ
ている易還元性酸化物の酸素含有率(O)とを掛け合わ
せると、易還元性酸化物がWO =WS ×(O)として酸
素定量される。したがって、WO =WS×(O)に対応
した還元剤の必要添加量WR が求められる。このように
して調整された量WR の還元剤を投入することにより、
過剰添加を招くことなく、スラグから溶鋼に所定量で易
還元性酸化物中のFe,Mn,Cr等が還元回収され
る。その結果、還元剤を効率よく消費できることは勿
論、過剰量の還元剤が溶鋼に持ち込まれることがないこ
とから溶製後の溶鋼成分的中度が向上する。そのため、
特に還元剤に由来するSi,Al等の含有量に対して厳
格な管理が要求される鋼種をも、精度良く溶製すること
が可能になる。
【0014】
【実施例】
(スラグ面測定用渦電流センサーの周波数による影響)
非磁性材料であるSUS304系ステンレス鋼板の上
に、厚み50mmに成形したスラグ10kgを配置し
た。スラグとしては、SiO2 25重量%,Al23
10重量%及びCaO45重量%を基本組成とした。ス
ラグ面から予め測定した実測距離Dの高さに渦電流セン
サーを配置し、渦電流センサーに供給される高周波交流
電流の周波数を100kHzから1MHzの間で変化さ
せ、渦電流センサーで測定されたスラグまでの距離dに
与える周波数の影響を調査した。調査結果を示す表1か
ら明らかなように、渦電流センサーに供給した高周波交
流電流の周波数が550kHzから1MHzまでの範囲
で、測定距離dが実測距離Dに高精度で一致しているこ
とが判った。このことから、測定誤差なくスラグの表面
位置を高精度で測定するためには、渦電流センサーに供
給される高周波交流電流に所定の周波数範囲があること
が確認された。
【0015】
【表1】
【0016】(実際のスラグに適用した距離測定)転炉
製錬が終了したオーステナイト系ステンレス鋼及びフェ
ライト系ステンレス鋼の溶鋼77〜81トン(合計50
チャージ)を真空脱ガス装置に注湯し、1分後に溶鋼表
面に浮遊しているスラグから試料スラグをサンプリング
すると共に、スラグ及び溶鋼の表面位置を検出した。こ
こでは、周波数550kHz〜1MHzの交流電流が供
給される渦電流センサー及びスラグの表面に検出端子を
直接接触させるタッチ式センサーにより、スラグの表面
位置を検出した。また、周波数0.5〜500kHzの
交流電流が供給される渦電流センサー及び一対の電極を
スラグからメタルにわたって浸漬しスラグ及びメタルそ
れぞれの導電度を検出する電極式センサーを使用し、溶
鋼の表面位置を検出した。それぞれの方法で検出したス
ラグ及び溶鋼の表面位置からスラグ層の厚みを算出した
結果を表2に示す。スラグ厚みの差は、表2にみられる
ように、最も大きいもので5mm程度であった。
【0017】
【表2】
【0018】(還元剤の必要添加量の算出)チャージN
o.1について、試料スラグを炭素還元法で酸素定量した
ところ、易還元性酸化物の酸素量は11.3%であっ
た。スラグの見掛け比重は、JIS法で測定したところ
4.0であった。したがって、スラグの重量は、渦電流
センサーで測定したスラグの厚み25.1cm,見掛け
比重4.0及び真空脱ガス容器の内側半径130cmか
ら、π×16900cm×25.1cm×4.0g/c
3 =5.3トンと算出された。この算出値と炭素還元
法による酸素量11.3%から、Cr23 ,FeO,
MnO等の易還元性酸化物の還元回収に必要な還元剤の
添加量は、Si換算で5.3トン×11.3%×(28
/32)=527.1kgと算出された。Si含有量6
0%のフェロシリコンを還元剤として使用することか
ら、還元剤の必要添加量は527.1kg÷60%=8
78kgと算出された。
【0019】(還元剤添加前後の溶鋼成分)算出量87
8kgのフェロシリコンを溶鋼に投入した後、真空脱ガ
ス・脱酸を20分継続した。スラグを再度サンプリング
し、易還元性酸化物を酸素定量した。その結果、スラグ
に含まれている易還元性酸化物の酸素量は、0.04%
まで低下していた。チャージNo.1について、Si脱酸
の前後で採取したスラグに含まれていた易還元性酸化物
の組成を湿式分析法で別途分析した。分析結果を示す表
3から明らかなように、易還元性酸化物が十分に還元回
収されていることが確認された。
【0020】
【表3】
【0021】渦電流センサーを使用し、同様の方法で求
めた50チャージ分のMn及びCrの回収率は、平均値
がそれぞれ98.1%及び96.2%であった。同じ5
0チャージ分について、脱酸後における溶鋼中のSi含
有量を測定した。その結果、Si含有量の目標値に対す
る分析値の差の標準偏差(σ)は、1σ=0.031重
量%と極めて低い値を示した。このことから、有価金属
であるCr及びMnが効率よく溶鋼に回収され、脱酸剤
の過剰な持ち込みに起因するSi含有量の増加を来すこ
となく高い成分適中精度で溶鋼が脱酸されることが確認
された。
【0022】(タッチ式センサー及び電極式センサーを
使用したスラグ厚みの計測例)転炉製錬が終了したオー
ステナイト系ステンレス鋼及びフェライト系ステンレス
鋼の溶鋼78〜80トン(合計7チャージ)について、
スラグの表面位置をタッチ式センサーで測定し、溶鋼の
表面位置を電極式センサーで測定した。両表面位置の差
をスラグ層の厚みとし、同様にスラグの重量を算出し
た。算出されたスラグ重量及びスラグに含まれている易
還元性酸化物の酸素量から算出した量のフェロシリコン
を還元剤として添加し、溶鋼を脱酸した。その結果、7
チャージ分のMn及びCrの回収率は、平均値でそれぞ
れ97.8%及び97.0%であった。また、7チャー
ジの脱酸後における溶鋼中のSi含有量を分析したとこ
ろ、目標値に対する分析値の差の標準偏差(σ)は、1
σ=0.003重量%と極めて低い値を示した。すなわ
ち、Mn,Crの回収率及び溶鋼中のSi含有量の的中
率は、工業的に十分満足できる値であった。以上の実施
例においては、Si還元剤を使用してFe,Mn,Cr
等を還元回収する場合を説明した。しかし、本発明はこ
れに拘束されることなく、Al,Ti等の他の還元剤を
使用することも可能である。たとえば、Siよりも酸素
親和力が大きなAl系還元剤を使用するとき、スラグに
含まれているSiも溶鋼に還元回収される。この場合に
は、Si及びTiの酸化物を含む形態でスラグを酸素定
量する。
【0023】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明において
は、最適添加量で還元剤を添加することにより、スラグ
に含まれているFe,Mn,Cr等の易還元性酸化物を
金属状態に還元して溶鋼に回収すると共に、還元剤の過
剰添加に起因して処理後の溶鋼におけるSi含有量,A
l含有量等が上昇することを抑制している。その結果、
目標組成に対する的中率が高い溶鋼が溶製される。ま
た、還元剤の消費量を必要最小限とすることができるの
で、製造コストも低減される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 スラグに含まれている金属酸化物を酸素定量
するフロー
【図2】 本発明者等が開発した炭素還元法による酸素
定量のグラフ
【図3】 本発明に従って還元剤の必要添加量を定める
フロー
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 福田 富也 広島県呉市昭和町11番1号 日新製鋼株 式会社鉄鋼研究所内 (56)参考文献 特開 平6−279828(JP,A) 特開 平6−148167(JP,A) 特開 平5−51625(JP,A) 特開 平6−122917(JP,A) 特開 昭61−272604(JP,A) 特開 昭60−183503(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21C 7/00

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶鋼の表面に浮遊するスラグから易還元
    性酸化物中の有価金属を前記溶鋼に還元回収する際、前
    記スラグから採取された試料を炭素還元して前記易還元
    性酸化物の含有量を測定すると共に、前記スラグ及び前
    記溶鋼の表面位置を検出し、検出された表面位置の差か
    らスラグの厚みを算出し、該スラグの厚みに基づいて前
    記スラグの重量を求め、前記易還元性酸化物の含有量及
    び前記スラグの重量から還元剤の必要添加量を演算し、
    演算結果の添加量で前記還元剤を前記スラグに投入する
    ことを特徴とする溶鋼成分適中精度を向上させたスラグ
    中の有価金属の還元回収方法。
  2. 【請求項2】 スラグの表面位置を検出する装置とし
    て、周波数が500kHz以上で1MHz以下の高周波
    交流電流を供給する渦電流式センサーを使用する請求項
    1記載の還元回収方法。
  3. 【請求項3】 易還元性酸化物がFe,Mn及びCrの
    酸化物であり、還元剤がSi又はフェロシリコンである
    請求項1記載の還元回収方法。
  4. 【請求項4】 易還元性酸化物がFe,Mn,Cr及び
    Siの酸化物であり、還元剤がAl,Ti,Ca,Mg
    又はそれらの合金である請求項1記載の還元回収方法。
  5. 【請求項5】 易還元性酸化物がFe,Mn,Cr,S
    i及びTiの酸化物であり、還元剤がAl,Ca,Mg
    又はそれらの合金である請求項1記載の還元回収方法。
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