JP3462016B2 - キチン成形体の製造方法 - Google Patents

キチン成形体の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、生体吸収性材料の
キチンを用いた成形体、例えば骨修復材や骨スクリュ
ー、骨プラグなどを得るための製造方法に関するもので
ある。 【0002】 【従来の技術】近年、キチン、キトサン又はそれらの誘
導体が生産され、人工皮膚や生活関連物質などとしても
開発されつつある。 【0003】最近の開発例のうち、主に食品や化粧品な
どの分野では、上記材料が一般に高分子量を有し、溶液
とした場合の粘度が高いため扱い難く用途が制限される
という欠点があるため、キトサンなどを化学的にあるい
は酵素的に分解することによって、低分子量でかつ易水
溶性のものにする試みが行われてきた。 【0004】まず特開平4−99493号には、キトサ
ン溶液に、バーティシリウム属の微生物が生産するキト
サナーゼを作用させることによって低分子化させる方法
が記載されている。 【0005】また、特開平4−103602号には、キ
チン、キトサンオリゴマーを溶解し難い析出媒体(亜硝
酸、塩酸など)をキチン、キトサンオリゴマーの水性媒
体に添加して、分子量の大きいキチン、キトサンオリゴ
マーを順次析出させて分離させて、低分子化させる方法
が記載されている。 【0006】他方、医療、歯科分野の応用として、特開
平3−162863号には、グリコールキチンやCMキ
チンなどを、その粘性を利用して、歯科充填用顆粒(リ
ン酸カルシウムなどの)と混合、練和して骨の欠損部に
充填するための糊剤として利用することが記載されてい
る。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】このように、従来のキ
チン系材料の応用技術は、生体内吸収性のキチンを成形
体として用いるものでなく、食品や化粧品などに微量添
加したり、歯科充填材の糊材としての使用の他には人工
皮膚として膜状に作製する程度のものしかなかった。 【0008】しかしながら、生体に安全な生体内吸収性
材料であるキチンを任意形状に成形し且つ保形性のある
成形体を得ることができれば、例えば、歯科や整形外科
の分野において骨補綴材、骨スクリューや骨プラグなど
をキチンで構成し、補綴部位を経時後に骨で置換するこ
とができる非常に有用な応用が開けることが考えられ
る。 【0009】 【発明の目的】上記課題に鑑み、本発明の目的は、生体
吸収性材料であるキチンにより保形性のある成形体を得
ることを目的とする。 【0010】 【課題を解決するための手段】前記従来技術を解決する
ため、本発明は、無機塩およびタンパク質を除去し、或
いは、脱アセチル化した後、N−アセチル化したキチン
をアセトンで洗浄した後、金型に充填して水分を除去す
るキチン成形物を得ることを特徴とする製造方法を提供
するものである。 【0011】 【作用】キチンは、無機塩およびタンパク質を除去した
り、或いは、脱アセチル化した後、N−アセチル化させ
てからアセトンで洗浄した場合、乾燥などの手段により
水分を除去しても分子どうしの結合は解消しない。した
がって、金型内で所望形状のキチン成形物を得ることが
できる。 【0012】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を詳細に
説明する。本発明のキチン成形体を得るにはまず、天然
原料からキチンを生成するかあるいは生成されたキチン
を得る。一般的なキチンの生成方法は次のとおりであ
る。 【0013】カニ殻、エビ殻など甲殻類の外骨格を希塩
酸、エレンジアミン四酢酸溶液に浸漬し、無機塩の除去
を行う。無機塩を除去後、水酸化ナトリウム溶液中で加
熱する。又はタンパク質分解菌を作用させてタンパク質
を除去する。この後、5酸化マンガン水溶液で脱色を行
い、さらにエタノール等の有機溶媒を用いて脂質の除去
を行いキチンを得る。 【0014】なお、天然原料のキチンを一度キトサンに
還元してからキチンに再生させる方法によってキチンを
得た場合、キトサンが溶媒に易溶性であるので、ゲル濾
過等の方法で分子量範囲を分画することができ、これに
より後述のキチン成形物の生体内での分解速度等を適宜
制御することができるという利点がある。このような再
生キチンの例として、イカからキチンを得る方法は次の
とおりである。 【0015】イカの背骨を水素化ほう酸ナトリウムを含
む40%(w/v)水酸化ナトリウムに懸濁後オートク
レーブで1時間処理する。そして部分脱アセチルキチン
を炉別する行程を繰り返し、脱アセチル化度96〜99
%のキトサンを作製する。このキトサンを稀酢酸水溶液
に溶解し、メタノールを加えた粘稠液に計算量(3〜4
倍モル当量)の無水酢酸を加え、反応させる。生成した
ゲルをワーリングブレンダーで細片化後、アセトンで充
分洗浄してから稀水酸化カリウム水溶液で処理してエス
テル結合を加水分解して水酸基を遊離後、水、エタノー
ルで洗浄、乾燥し、再生イカキチンを得る。この非晶形
の再生キチンを直接金型で成形する。或いは、このよう
にして得られたキチンを以下のような方法で成形する。 【0016】塩化カルシウム水塩飽和-2- メタノール溶
液にキチンを溶解し、この溶液を脱イオン水に滴下しな
がらキチンを沈殿させる。濾過して集めた沈殿にアセト
ン水混合液を加えて充分遠心洗浄する。アセトンが完全
に脱離し大部分の水分が蒸発した非晶形キチン粉末を得
る。 【0017】この後、この非晶形キチンを成形用の金型
に加圧充填し、所望時間(例えば24時間)静置し、減
圧にして水分を十分蒸発してキチン成形体を得る。なお
金型に充填する前に熱を加えてアセトンのみを蒸発させ
ることによって低結晶性のキチンを得ることができ、こ
れを金型に入れて成形体を得る場合、より密度の高い成
形体となる。これに対して、金型内でアセトンと水を同
時に蒸発させた場合、成形体が多孔質状となるところ
で、上記キチン製造方法において、塩化カルシウム水塩
飽和-2- メタノール水溶液にキチンを溶解する時に、リ
ン酸カルシウム材料を所望量加えることによってリン酸
カルシウム顆粒を分散させたキチン・リン酸カルシウム
系材料複合体を得ることができる。このような複合化用
のリン酸カルシウム材料の顆粒を作製する方法としては
次のような方法がある。 【0018】リン酸カルシウム材料を固相合成、湿式合
成にて合成する。この時のCa/Pモル比は1.3〜
1.8になるようにする。そして、この合成物を焼成
し、焼成体を粉砕、分級し、リン酸カルシウム材料の顆
粒を得る。また、リン酸カルシウム材料の多孔体を得る
には、合成したリン酸カルシウム材料にポア材としての
ナフタレン、ポリビニルアルコール等の有機物を混合、
焼成し、この焼成体を粉砕、分級し、多孔質顆粒を得
る。 【0019】以下、本発明の実施例を具体的に説明す
る。 【0020】 【実施例1】硝酸カルシウム水溶液にリン酸第2アンモ
ニウム水溶液を滴下し、リン酸カルシウム沈殿物を作製
する。 【0021】反応時のCa/Pモル比が1.67になる
ように、硝酸カルシウム水溶液、リン酸第2アンモニウ
ム水溶液の濃度を調製する。得られたリン酸カルシウム
沈殿物を乾燥後、粉砕、分級し、顆粒を作製する。そし
てポア材であるナフタレンと分級し、アパタイト顆粒を
作製する。 【0022】前もって無機塩およびタンパク質を除去し
て生成したキチン1gを51%塩化カルシウム2水塩飽
和メタノール水溶液100mlに溶解し、キチン溶液を
作製する。このキチン溶液を脱イオン水に滴下しながら
キチンを沈澱させる。そして80%アセトンで遠心洗浄
後、熱を加えてアセトンのみを蒸発させ、非晶形キチン
を作製する。 【0023】次に、1g非晶形キチンに0.2gアパタ
イト顆粒を加え、乳鉢にて練和、混合し、キチン・アパ
タイト複合体を作製する。この複合物を金型に充填、加
圧しながら、約24時間静置し、成形する。デシケータ
ー中でほぼ水分を蒸発させてから凍結乾燥にて完全に水
分を除去した後、切削加工を施し、所望の形状の骨スク
リューと骨プラグに仕上げた。 【0024】なお、本実施例で作製した成形体を観察し
たところ、アパタイト顆粒が均一に分散していたこと、
及びアパタイト顆粒が表面にも露出していたことを確認
した。 【0025】 【実施例2】炭酸カルシウムとピロリン酸カルシウムを
Ca/Pモル比が1.50になるように調合し、混合す
る。この混合物を1100℃にて焼成し、第3リン酸カ
ルシウムを合成する。この後、合成した第3リン酸カル
シウムを粉砕、分級し、複合化用の第3リン酸カルシウ
ム顆粒を得る。 【0026】前もって無機塩およびタンパク質を除去し
て生成したキチン1gを51%塩化カルシウム2水塩飽
和メタノール水溶液100mlに溶解し、キチン溶液を
作製する。このキチン溶液を脱イオン水に滴下しながら
キチンを沈澱させ、80%アセトンで遠心洗浄後、熱を
加えてアセトンのみを蒸発させ、非晶形キチンを作製す
る。 【0027】次に、1g非晶形キチンに0.2g第3リ
ン酸カルシウム顆粒を加え、乳鉢にて練和、混合し、キ
チン・第3リン酸カルシウム複合体を作製する。そし
て、この複合体を金型に充填、減圧下、加重しながら、
約24時間静置し、成形する。 【0028】デシケーター中でほぼ水分を蒸発させてか
ら凍結乾燥にて完全に水分を蒸発させた後、切削加工を
施し、所望の形状の骨スクリューと骨プラグに仕上げ
た。 【0029】なお、本実施例で作製した成形体を観察し
たところ、第3リン酸カルシウム顆粒が均一に分散して
いたこと、及び第3リン酸カルシウム顆粒が表面にも露
出していたことを確認した。 【0030】 【実施例3】前もって無機塩およびタンパク質を除去し
て生成したキチン1gを83%塩化カルシウム2水塩飽
和メタノール水溶液100mlに溶解し、キチン溶液を
作製する。このキチン溶液を脱イオン水やアルコール類
に滴下しながらキチンを沈澱させる。80%アセトン遠
心洗浄する。 【0031】この状態の1gキチンを金型に充填、加圧
しながら、約24時間静置し、成形する。凍結乾燥にて
完全にアセトンと水分を除去して所望の形状の骨修復部
材を得た。 【0032】なお、本実施例で作製した成形体は気孔率
60%、平均孔径が20μm の多孔質体であり、弾力性
も有していた。 【0033】 【実施例4】前もって無機塩およびタンパク質を除去し
て生成したキチン1gを83%塩化カルシウム2水塩飽
和メタノール水溶液100mlに溶解し、キチン溶液を
作製する。このキチン溶液を脱イオン水やエタノール等
のアルコール類に滴下しながらキチンを沈澱させる。8
0%アセトン水で遠心洗浄後、熱を加えてアセトンのみ
を蒸発させ、非晶形キチンを作製する。非晶形キチンの
一部を取り出し、残りをさらに熱を加えて、水を蒸発さ
せ、低結晶性のフレーク状キチンを得る。 【0034】前記非晶形キチンにこのフレーク状キチン
を加え、均一になるように分散するように混合する。こ
の混合体を金型に充填、加圧しながら約24時間静置し
た後、成形する。デシケーター中でほぼ水分を蒸発させ
て、骨修復材を得る。 【0035】 【実施例5】CaCO3 :45g、Ca2 2 7 :2
4g、SiO2 :28g、MgO:3gを混合、溶融
し、リン酸カルシウム系ガラスを作製する。 【0036】950℃にてアパタイトを析出させた後、
粉砕、分級し、複合化用のリン酸カルシウム系ガラスセ
ラミックス(AWGC)顆粒を得た。 【0037】前もって無機塩およびタンパク質を除去し
て生成したキチン1gを51%塩化カルシウム2水塩飽
和メタノール水溶液100mlに溶解し、キチン溶液を
作製する。このキチン溶液を脱イオン水に滴下しながら
キチンを沈澱させる。80%アセトン遠心洗浄後、熱を
加えてアセトンのみを蒸発させ、非晶形キチンを作製す
る。 【0038】次に、1g非晶形キチンに2gAWGC顆
粒を加え、乳鉢にて練和、混合し、キチン・AWGC複
合体を作製する。この複合体を金型に充填、加圧しなが
ら、約24時間静置し、成形する。デシケーター中でほ
ぼ水分を蒸発させてから凍結乾燥にて完全に水分を蒸発
させた後、切削加工を施し、所望の形状の骨スクリュー
と骨プラグに仕上げた。 【0039】なお、本実施例で作製した成形体を観察し
たところ、AWGC顆粒が均一に分散していたこと、及
びAWGC顆粒が表面にも露出していたことを確認し
た。 【0040】 【発明の効果】以上のように、本発明によれば、無機塩
およびタンパク質を除去し、或いは、脱アセチル化した
後N−アセチル化して生成したキチンをアセトンで洗浄
した後、金型に充填して水分を除去するという方法によ
って、任意形状で、且つ保形性のあるキチンの成形体を
得ることができる。 【0041】そして、本発明により例えば、歯科や整形
外科の分野における骨補綴材、骨スクリューや骨プラグ
などをキチンからなるものとすることによって、補綴部
位を経時後に骨で置換することができるといった、非常
に有用な新たなキチン材料の応用が開ける。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭56−43301(JP,A) 特開 昭61−53339(JP,A) 特開 平3−41131(JP,A) 特開 昭60−166301(JP,A) 特開 平4−363333(JP,A) 特開 平6−63117(JP,A) 特開 平2−77262(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08J 5/00 - 5/24 C08J 9/00 - 9/42 A61L 15/00 - 33/00

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】無機塩およびタンパク質を除去し、或い
    は、脱アセチル化した後、N−アセチル化して生成した
    キチンをアセトンで洗浄した後、金型に充填して所望形
    状に成形することを特徴とするキチン成形体の製造方
    法。
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