JP3460925B2 - 画像変換方法及び記録媒体 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、ネガフィルムの
ネガ画像をスキャナで読み取ってポジ画像の印刷物を作
成する場合等、ネガフィルムをもとにした各種画像処理
を実行するために必要となるネガ画像からポジ画像への
画像変換方法と、これをコンピュータにおいて実行する
ためのプログラムを記録した記録媒体に関する。

【０００２】

【従来の技術】ポジフィルムは、直接見てその内容を認
識でき、スキャナ等の画像入力機器によってレッド（以
下、「Ｒ」）、グリーン（以下、「Ｇ」）及びブルー
（以下、「Ｂ」）の３色に色分解した画像データを得た
後に、この画像データに対応する画像をモニター等に再
現して表示することも簡単である。

【０００３】これに対して、ネガフィルムは、撮影され
た対象（被写体）のネガ画像を何らかの方法でポジ画像
に反転しなくては内容を理解することができない。この
ようなネガ画像からポジ画像への画像反転方法の適・不
適によって、得られるポジ画像の品質は大きな影響を与
えることになるものと考えられるが、このような画像反
転を電子化した画像処理によって行う画像反転方法につ
いて具体的に開示した文献は存在しない。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】上記のような画像反転
方法として、例えば、スキャナでネガフィルムをＲＧＢ
の３色に色分解してネガ画像の画像データを読み取った
後、電気的信号処理によって、反転前のネガ画像におけ
る各色毎のハイライトポイント及びシャドウポイントを
反転後のポジ画像における各色毎の現実のハイライトポ
イント及びシャドウポイントにそれぞれ対応させるよう
な明暗反転の強度換算を行うことが考えられる。ここ
で、ネガ画像において、ハイライトポイントとは、反転
後のポジ画像中で最も明るく表現したい点を意味し、シ
ャドウポイントとは、反転後のポジ画像中で最も暗く表
現したい点を意味する。

【０００５】上記の強度換算をより具体化して説明する
と、ネガ画像から得た画像データの各色毎の最小値がポ
ジ画像の画像データの各色毎の最大値にそれぞれ変換さ
れ、ネガ画像から得た画像データの各色毎の最大値がポ
ジ画像の画像データの各色毎の最小値にそれぞれ変換さ
れるように一次関数の強度変換式を求め、この強度変換
式をネガ画像の各画素データに適用するデータ変換を実
行することによって、ネガ画像を適宜反転したポジ画像
を得ることができる。

【０００６】しかし、上記ような方法では、反転前にお
けるネガ画像の各色毎についてのシャドウポイントを合
成したものが比較的鮮やかな有彩色となっている場合、
その色に関して均等な反転が行われず、被写体に近いポ
ジ画像を得ることができないという問題がある。

【０００７】そこで、この発明は、様々な色分布を有す
るネガ画像について、各色毎に均等な反転を行うことが
でき、被写体に近いポジ画像を得ることができる画像変
換方法及びかかる方法を実行するためのプログラムを記
録した記録媒体を提供することを目的とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、請求項１の画像変換方法は、ネガフィルムのネガ画
像の画像データを対応するポジ画像の画像データに変換
するものであって、ネガ画像上の各画素の画素データか
らハイライトポイントを求め、このハイライトポイント
の画像データをハイライトデータとする工程と、ネガ画
像上の各画素を色分解した第１から第３の色に関する強
度値の総和が略最大となる画素をネガ画像上のシャドウ
ポイント候補とする工程と、シャドウポイント候補の画
素データが、ハイライトデータと所定以上の差異を有し
ており、かつ、このシャドウポイント候補の画素データ
が、ネガフィルムと同一銘柄のネガフィルムについて予
め求めてあるグレー軸と所定以上に近接している場合、
シャドウポイント候補を適切なシャドウポイントと判定
して、このシャドウポイント候補の画素データをシャド
ウデータとし、シャドウポイント候補が適切なシャドウ
ポイントでないと判定された場合、ハイライトポイント
の画像データを参照して決められるグレー軸上の仮想的
画像データをシャドウデータとする工程と、ハイライト
データとシャドウデータとに基づいてネガ画像の画像デ
ータをポジ画像の画像データに変換する工程とを有する
ことを特徴とする。

【０００９】また、請求項２の画像変換方法は、シャド
ウポイント候補の画素データがハイライトデータと所定
以上の差異を有してるか否かを、シャドウポイント候補
の第１の色に関する強度値と、ハイライトデータにおけ
る第１の色に関する強度値との差異（例えば、両強度値
の差）が所定の下限値以上であるか否かに基づいて判断
することを特徴とする。

【００１０】また、請求項３の画像変換方法は、シャド
ウポイント候補の画素データがグレー軸と所定以上近接
しているか否かを、シャドウポイント候補の第２及び第
３の色に関する強度値との組み合わせによってグレー軸
上の点になるよう定めた第１の色に関する一対の強度期
待値と、シャドウポイント候補の第１の色に関する強度
値とのうちの最大値と最小値の相違（例えば、両値の比
率）が所定の上限値以下であるか否かに基づいて判断す
ることを特徴とする。

【００１１】また、請求項４の記録媒体は、コンピュー
タによってネガフィルムのネガ画像の画像データを対応
するポジ画像の画像データに変換するためのプログラム
を記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体であっ
て、ネガ画像上の各画素の画素データからハイライトポ
イントを求め、このハイライトポイントの画像データを
ハイライトデータとする機能と、ネガ画像上の各画素を
色分解した第１から第３の色に関する強度値の総和が略
最大となる画素をネガ画像上のシャドウポイント候補と
する機能と、シャドウポイント候補の画素データが、ハ
イライトデータと所定以上の差異を有しており、かつ、
このシャドウポイント候補の画素データが、ネガフィル
ムと同一銘柄のネガフィルムについて予め求めてあるグ
レー軸と所定以上に近接している場合、シャドウポイン
ト候補を適切なシャドウポイントと判定して、このシャ
ドウポイント候補の画素データをシャドウデータとし、
シャドウポイント候補が適切なシャドウポイントでない
と判定された場合、ハイライトポイントの画像データを
参照して決められるグレー軸上の仮想的画像データをシ
ャドウデータとする機能と、ハイライトデータとシャド
ウデータとに基づいてネガ画像の画像データをポジ画像
の画像データに変換する機能とを実現させるプログラム
を記録したことを特徴とする。

【００１２】

【発明の実施の形態】図１は、この発明の一実施形態に
係る画像変換方法を実行するための画像処理装置の構成
を示す概略図である。

【００１３】同図に示すように、この画像処理装置１０
０は、ネガフィルムに撮影されたネガ画像を読み取って
電子化された画像データに変換する画像入力部１０と、
画像入力部１０からの画像データを必要に応じて保管す
る画像保持部２０と、画像保持部２０に保管された画像
データを適宜分析する画像分析部３０と、画像分析部３
０における分析結果等を保持する情報保持部４０と、画
像分析部３０からの指示及び情報に基づいて画像保持部
２０に保管されたネガ画像の画像データに一定の処理を
施してポジ画像の画像データに変換する画像変換部５０
と、画像変換部５０で得たポジ画像の画像データを可視
的なポジ画像として出力する画像出力部６０とを備え
る。

【００１４】画像入力部１０は、スキャナ等の画像読取
り装置を備え、ネガフィルムに記録されたネガ画像をＲ
ＧＢの３色に色分解し、それぞれの強度をデジタル信号
化した画像データとして出力する。

【００１５】画像保持部２０は、画像データ用のメモリ
を備え、画像入力部１０から出力された複数の画像デー
タを一時的または恒常的に保管することができ、一定の
呼出命令に応じて保管した画像データを画像分析部３０
や画像変換部５０に適宜送り出すことができる。

【００１６】画像分析部３０は、演算処理装置等を備
え、画像保持部２０に蓄えられた画像データを必要に応
じて随時読み出し、この画像データを分析するため、こ
の画像データに必要な演算処理や統計処理等を施す。具
体的には、第１に、反転処理の対象となっているネガ画
像の画像データが予めネガフィルムの銘柄毎に求めてあ
るグレー軸からどのくらい外れているか（言い換えれば
どの程度の色味を帯びているか）を判定する。ここで、
グレー軸とは、十分に明るい白から十分に暗い黒までを
含む連続的または段階的に変化するグレー（無彩色）か
らなるグレースケールが撮影されたネガフィルムを現像
後に画像入力部１０で画像データとして読み取った場合
のＲＧＢの強度値の集合を意味する。第２に、画像分析
部３０は、与えられた任意の１色（例えばＲ）の強度値
と組み合わせることによってグレー軸上の点（無彩色に
対応する画像データ）となる他の色（Ｇ，Ｂ）の強度期
待値を求める処理を行う。第３に、画像分析部３０は、
反転処理の対象となっているネガ画像の画像データに基
づいて、このネガ画像上のハイライトポイント（以下、
「ＨＰ」）やシャドウポイント（以下、「ＳＰ」）を求
める。

【００１７】情報保持部４０は、各種データ用のメモリ
を備え、画像分析部３０における分析処理に必要な情報
処理結果を保管する。例えば、ネガフィルムの銘柄毎に
求めたグレー軸自体を参照のために記憶したり、特定の
画素におけるＲの強度値と組み合わせることによってグ
レー軸上の点を与えるＧ，Ｂの強度期待値を求める際に
必要となる変換式等を記憶する。

【００１８】画像変換部５０は、演算処理装置等を備
え、画像分析部３０からのネガ画像上のＨＰやＳＰに関
する情報に基づいて、画像保持部２０から読み出したネ
ガ画像の画像データを、これを構成するＲＧＢの強度値
毎に数値変換し、ネガ画像の画像データを適当なコント
ラストを有するポジ画像の画像データに変換する。

【００１９】画像出力部６０は、カラー画像用のプリン
タやディスプレイを備えており、画像変換部５０から出
力されたポジタイプの画像データを実際のカラー印刷物
等として出力する。

【００２０】なお、以上説明した画像処理装置１００
は、ＣＰＵ、ＲＯＭ、ＲＡＭ、磁気ディスク等の本体部
分のほか、スキャナ、プリンタ等の周辺機器を備える１
台の一般的なコンピュータシステムにおいて、内部のＣ
ＰＵ等が以下に詳述する画像変換プログラムを実行する
ことによって実現される装置である。

【００２１】図２及び図３は、図１に示す画像処理装置
１００の動作を含む一連の画像処理手順を概念的に説明
するフローチャートであり、図２は、ＲＧＢ相互間のグ
レー変換式を求める手順を示し、図３は、ネガ画像の画
像データをポジ画像の画像データに変換する手順を示
す。

【００２２】まず、ステップＳ11で、必要な特定銘柄の
ネガフィルムでグレースケールを撮影し、このネガフィ
ルムを現像する。具体的には、その銘柄で指定されてい
る標準タイプの照明光によってグレースケールを照明
し、照明下のグレースケールをその銘柄で指定されてい
る標準露光量を含む露光範囲で撮影し、撮影後のネガフ
ィルムをその銘柄で指定されている標準のプロセスで現
像する。

【００２３】次に、ステップＳ12で、ステップＳ11で得
た現像後のネガフィルムの画像を画像入力部１０で読み
取り、読み取った画像をデジタルタイプの画像データと
して画像保持部２０に保存する。具体的には、グレース
ケールを撮影・現像した後のネガフィルムに形成された
画像を、画像入力部１０において、ＲＧＢに色分解した
デジタル強度信号からなる画像データとして読み取っ
て、ネガフィルム上に撮影された最も明るい白から最も
暗い黒に至るグレー軸がどのようなＲＧＢの強度値（以
下、「ＲＧＢ値」）をとるかを段階的に求める。

【００２４】次に、ステップＳ13で、ステップＳ12で得
たグレー軸のＲＧＢ値に基づいて、ＲＧＢ値相互間の変
換式を求める。例えばＲの強度値（以下、「Ｒ値」）と
の組み合わせによってグレー軸上の点となるＧ，Ｂの強
度期待値を求める変換式や、Ｇ，Ｂの強度値（以下、
「Ｇ値」，「Ｂ値」）との組み合わせによってグレー軸
上の点となるＲの強度期待値を求める変換式等を決定し
て情報保持部４０に保管する。

【００２５】図４は、特定銘柄のネガフィルムに所定の
測定を行ってグレー軸を求めるプロセスを具体的に説明
するためのグラフである。このグラフにおいて、横軸
は、基準となるＲ値を示し、縦軸は、ＲＧＢ値を示す。
ここで、ＲＧＢ値は、８ｂｉｔで量子化されて読み取ら
れており、理論上０〜２５５の範囲の整数値をとる。

【００２６】グラフに示す測定結果を得る具体的な条件
は以下のようなものであった。対象となる銘柄のネガフ
ィルムに対して標準と指定された色温度の照明光（デー
ライトタイプの場合５０００Ｋ程度）でグレースケール
を照明し、この銘柄のネガフィルムに対して標準と指定
された露光量およびそれに対してオーバー及びアンダー
の状態でグレースケールを撮影し、露光後のネガフィル
ムを指定されたプロセスで現像した。次に、画像入力部
１０によって上記ネガフィルムに記録された画像をＲＧ
Ｂの３色に色分解し、それぞれの強度値をデジタル化し
た画像データを得る。画像分析部３０は、この画像デー
タから適当な明度間隔でサンプリングを行って、ネガフ
ィルム上に撮影された最も明るい白から最も暗い黒に至
るグレー軸がどのようなＲＧＢ値をとるかを段階的に求
め、結果を情報保持部４０に保存する。

【００２７】画像分析部３０は、上記グラフに示す実測
のＲＧＢ値に基づいて、必要な変換式を求めるが、Ｇ，
Ｂの任意の強度値ＩG，ＩBからグレー軸上の点に対応す
るＲの強度期待値ＩR’，ＩR”を求めるグレー変換式
は、 ＩR’＝１．３１６ＩG＋１０．５…(1)， ＩR”＝１．３８９ＩB＋５２．８…(2) となる。なお、上記係数の決定に際しては、最小２乗法
を用いた直線近似を行っている。

【００２８】また、Ｒの任意の強度値ＩRからグレー軸
上の点に対応するＧ，Ｂの強度期待値ＩG’，ＩB’を求
める変換式は、 ＩG’＝０．７６ＩR−８…(3)， ＩB’＝０．７２ＩR−３８…(4) となった。なお、露光オーバーの状態では、ＩRとＩBの
関係が上記(2)式及び（４）式から大きく外れているの
で、これを２次曲線で近似すると、ＩＲ＞５０，ＩB＞
１５の範囲では、 ＩR”＝５０＋（（ＩB−１５）／０．００７７４７９）^1/2…(5)， ＩB’＝０．００７７４７９（ＩR−５０）²＋１５…(6) となる。

【００２９】図３に戻って、図２で準備したグレー軸に
関するデータに基づいてネガ画像の画像データをポジ画
像の画像データに変換する手順を説明する。

【００３０】まず、ステップＳ21で、反転処理の対象と
なるネガフィルムを準備し、このネガフィルムのネガ画
像を画像入力部１０で読み取って、画像保持部２０に画
像データとして保存する。なお、読取りの対象となるネ
ガフィルムは、原則としてその銘柄で指定されている標
準照明下で被写体を撮影し、その銘柄で指定された標準
プロセスで現像したものとする。

【００３１】次に、ステップＳ22で、画像分析部３０
が、ステップＳ21で得たネガ画像の画像データからネガ
画像上のＨＰを求める。

【００３２】具体的には、反転処理の対象であるネガフ
ィルムのネガ画像上の画素からＲＧＢ値の和が略最小と
なるものを探してこれをＨＰの候補（以下、「ＨＰ候
補」）とし、このＨＰ候補のＲＧＢ値（画素データ）が
グレー軸に近いか否かを判定する。グレー軸に近いか否
かを判定するには、図２のステップＳ11〜Ｓ13で求めた
グレー変換式（具体的には、上記(1)式及び(2)式）を用
いる。つまり、ステップＳ21で得た画像データからネガ
画像を構成する各画素のＲＧＢ値を抽出し、この画素デ
ータを構成するＲＧＢ値の和が最小となるＨＰ候補を求
める。次に、このＨＰ候補の強度値ＩG，ＩBを(1)式及
び(2)式に代入する。そして、得られた強度期待値Ｉ
R’，ＩR”と実際の強度値ＩRとの中から最大値と最小
値とを求め、それらの比が１からずれている程度に応じ
て、ＨＰ候補のＲＧＢ値がグレー軸にある程度近接して
グレーとみなせるか、グレー軸から離れてある程度色味
を帯びている（鮮やかな有彩色）とみなせるかを判定す
る。

【００３３】ＨＰ候補がグレー軸に近接している場合、
このＨＰ候補をそのままＨＰとして採用してそのＲＧＢ
値をハイライトデータとして情報保持部４０に保存す
る。

【００３４】一方、ＨＰ候補がグレー軸から離れている
場合、ネガ画像のＲＧＢの各色プレーン毎に画素データ
の最小値を求め、その１組のＲＧＢ値（各プレーン毎の
ＨＰ）に対して、上記と同様の方法で、グレー軸に近い
か否かを判定し、各プレーン毎に求めたＨＰを合成した
ものがグレー軸に近ければ、このＲＧＢ値の組み合わせ
をネガ画像のハイライトデータとして情報保持部４０に
保存する。

【００３５】次に、ステップＳ23で、画像分析部３０
が、ステップＳ21で得たネガ画像の画像データからネガ
画像のＳＰとして適する候補（以下、「ＳＰ候補」）を
求める。

【００３６】具体的には、反転処理の対象であるネガフ
ィルムのネガ画像上の画素からＲＧＢ値の和が略最大と
なるものを探してこれをＳＰ候補とする。この実施形態
では、各ＲＧＢ値の和が最大となる画素でなく、多少の
ゆとりを持たせて、各ＲＧＢ値の和が最大に近い複数の
画素をＳＰ候補としている。これは、ＲＧＢ値の和が最
大の画素をＳＰ候補とすると、そのＳＰ候補はフイルム
上の微細なごみなど、本来ＳＰとして不適当な画素に該
当する場合があるので、そのような悪影響を避けるため
に、ＲＧＢ値の和が最大を示す画素から０．５％程度は
無視し、次に大きい０．５％程度範囲内をＳＰ候補と
し、これらＳＰ候補のＲＧＢ値の平均がシャドウデータ
として適するか否かを判断することで実際上良い結果を
得ることができる。

【００３７】次に、ステップＳ24で、画像分析部３０
が、上記ステップＳ23で求めたＳＰ候補のＲＧＢ値につ
いて、これがグレー軸に近いか否かと、上記ステップＳ
22で求めたＨＰのＲＧＢ値と近すぎないか否かとを判定
する。

【００３８】ＳＰ候補のＲＧＢ値がグレー軸に近いか否
かの判定方法は、上記ステップＳ22で説明したＨＰにつ
いての判定方法を用いるので、ここでは詳細な説明は省
略する。

【００３９】ＳＰ候補のＲＧＢ値が、ＨＰのＲＧＢ値と
近すぎないか否かの判定は、図２のステップＳ11，Ｓ12
で測定したグレースケールについての画像データを利用
する。すなわち、適正条件下で撮影されたグレースケー
ル中の最も明るいパッチと最も暗いパッチとに対応して
参照用のネガフィルムに形成された一対の画像における
Ｒ値の差と、上記ステップＳ22，Ｓ23で反転処理の対象
であるネガフィルムについて求めたネガ画像上でのＨＰ
とＳＰ候補とのＲ値の差を比較し、後者の方が著しく小
さいときには、ＳＰ候補がＨＰと近すぎると判断する。
ここで、ＲＧＢ値のうちＲ値のみに着目しているのは、
ＨＰ及びＳＰ候補ともにグレー軸に近いことが事前に確
認されていれば、ＲＧＢ値のうち一要素の比較のみで足
りるからであり、また、ネガ画像上ではＲＧＢの３要素
のうちＲの強度値が最も広い範囲に亘って変化するた
め、ＨＰとＳＰ候補とが近過ぎる否かを精度良く比較で
きるからである。

【００４０】ステップＳ24においてＳＰ候補のＲＧＢ値
が略グレー軸上にあり、かつＨＰのＲＧＢ値と十分な差
を有していると判断された場合、ステップＳ25に進み、
ステップＳ24にいおいてＳＰ候補のＲＧＢ値がグレー軸
から離れ、或いはＨＰのＲＧＢ値と十分な差を有してい
ないと判断された場合、ステップＳ26に進む。

【００４１】ステップＳ25では、ステップＳ23で求めた
ＳＰ候補を適切なものとしてそのままＳＰとし、このＳ
ＰのＲＧＢ値をシャドウデータとして情報保持部４０に
保存する。

【００４２】ステップＳ26では、ステップＳ23で求めた
ＳＰ候補を不適切なものとして、ＨＰのＲＧＢ値を参照
してＳＰとして望ましい仮想的ＲＧＢ値を求め、この仮
想的ＲＧＢ値をシャドウデータとして情報保持部４０に
保存する。このシャドウデータは、反転処理の対象であ
るネガフィルムについてステップＳ22で求めたＨＰの画
像データと、ステップＳ11，Ｓ12でグレースケールにつ
いて測定して得た画像データとを利用して、ＨＰの画像
データをグレースケールのコントラスト分だけシフトさ
せることによって得られる。具体的に説明すると、ステ
ップＳ22では反転処理の対象であるネガフィルムについ
てＨＰの画像データが求められており、また、ステップ
Ｓ12では参照用のネガフィルムに撮影されたグレースケ
ール中の、最も明るい白パッチと最も暗い黒パッチの画
像データが分かっている。反転処理の対象であるネガフ
ィルム上におけるＨＰのＲＧＰ値のうちＲ値をＩR（Ｈ
Ｐ）とし、参照用のネガフィルム上の最も明るいパッチ
と最も暗いパッチのネガ画像上でのＲ値をそれぞれＩR
（ＷＰ），ＩR（ＢＰ）とする。そして、両ネガフィル
ムのハイライト同士の差である（ＩR（ＨＰ）−ＩR（Ｗ
Ｐ））をＩR（ＢＰ）に加えて、ＩR（ＳＰ）、すなわち
求めるべきＳＰのＲ値の仮想的強度値とする。求めるべ
きＳＰの残り２つの仮想的強度値ＩG（ＳＰ），ＩB（Ｓ
Ｐ）は、図２のステップＳ11〜Ｓ13で求めた変換式（具
体的には、上記(3)式、(4)及び(5)式）を用いる。

【００４３】最後に、ステップＳ27で、画像分析部３０
が、反転処理前のネガ画像のハイライトデータが反転処
理前のポジ画像の画像データの最大値に変換されかつネ
ガ画像のシャドウデータがポジ画像の画像データの最小
値にそれぞれ変換されるように、各色毎に一次関数の強
度変換式を求め、画像変換部５０が、この強度変換式を
ネガ画像の各画素データに対して適用するデータ変換を
実行し、画像出力部６０が、かかるデータ変換によって
得たポジ画像を印刷する。

【００４４】以下、具体的な画像変換の例を説明する。
被写体が白とオレンジ色の二色の色面で構成されている
ものとする。この場合、白い色面のネガ画像のＲＧＢ値
は、例えば（８９，６０，２８）で与えられ、オレンジ
色の色面のネガ画像のＲＧＢ値は、例えば（９２，９
４，９９）で与えられる。

【００４５】ここで、ネガ画像上のＳＰ候補のＲＧＢ値
は、 ＩR（Ｍａｘ）＝９２，ＩG（Ｍａｘ）＝９４，ＩB（Ｍ
ａｘ）＝９９ となり、ネガ画像上のＨＰ候補のＲＧＢ値は、 ＩR（Ｍｉｎ）＝８９，ＩG（Ｍｉｎ）＝６０，ＩB（Ｍ
ｉｎ）＝２８ となる。

【００４６】次に、ネガ画像上のＨＰ候補がグレー軸に
近いか否かを判定する。ＩR（Ｍｉｎ）＝８９であるか
ら、(1)式及び(2)において、ＩG＝ＩG（Ｍｉｎ），ＩB
＝ＩB（Ｍｉｎ）として、Ｒに関する強度期待値 ＩR’＝１．３１６×６０＋１０．５＝８９．４， ＩR”＝１．３８９×２８＋５２．８＝９１．６ を得る。これらの強度値ＩR及び強度期待値ＩR’，Ｉ
R”のうち、最大のものと最小のものと比は、１．０３
である。これは、十分にグレー軸に近いと判定されるの
で、ネガ画像上のＨＰとしてこの値を使用する。なお、
グレー軸に近いと判断されるのは、このようにして求め
た比が１．０〜１．２程度の範囲にあるものである。

【００４７】次に、ネガ画像上のＳＰ候補がグレー軸に
近いか否かを判定する。ＩR（Ｍａｘ）＝９２であるか
ら、(1)式及び(2)式において、ＩG＝ＩG（Ｍａｘ），Ｉ
B＝ＩB（Ｍａｘ）として、Ｒに関する強度期待値 ＩR’＝１．３１６×９４＋１０．５＝１３４， ＩR”＝１．３８９×９９＋５２．８＝１９０ を得る。これらの強度値ＩR及び強度期待値ＩR’，Ｉ
R”のうち、最大のものと最小のものと比は、１９０／
９２＝２．０６である。これは、グレー軸に近いと判定
されないので、ネガ画像上のＳＰとしてこの値を使用し
ない。

【００４８】この場合、ＨＰの値を参照してＳＰの値を
決める。適正露光の条件下で撮影したグレースケール中
の、最も明るいパッチと最も暗いパッチのネガ画像上で
のＲの強度値は、図３のグラフを参照すると９４と１９
０である（グラブ中に記入してある）。求めたＨＰの画
素データのうちＲの強度値ＩR（ＨＰ）は８９であり、
最も明るいパッチと最も暗いパッチのネガ画像上でのＲ
の強度値ＩR（ＷＰ），ＩR（ＢＰ）は、それぞれ９４，
１９０である。（ＩR（ＨＰ）−ＩR（ＷＰ））の値をＩ
R（ＢＰ）に加えて、ＩR（ＳＰ）すなわち求めるべきＳ
ＰのＲの強度値とするので、ＩR（ＳＰ）＝１８５であ
る。

【００４９】求めるべきＳＰの残り二つの要素、ＩG
（ＳＰ），ＩB（ＳＰ）は、前述の式より ＩG（ＳＰ） ＝０．７６×ＩR（ＳＰ）−８＝０．７６×１８５−８＝１３２， ＩB（ＳＰ） ＝０．７２×ＩR（ＳＰ）−３８＝０．７２×１８５−３２＝１０１ となり、ネガ画像上のＳＰのＲＧＢ値として、（１８
５，１３２，１０１）が得られる。

【００５０】詳細な説明は省略するが、ネガ画像上のＨ
ＰのＲＧＢ値が（８９，６０，２８）であることを考慮
すれば、変換処理後のポジ画像上のＨＰをＲＧＢ値とも
に２４５とし、そのＳＰのＲＧＢ値をともに２０とする
という条件の下に、Ｒに関するネガからポジへの一次変
換式 ＩRp＝４５３−（２２５／（１８５−８９））×ＩR…(7) Ｇに関するネガからポジへの一次変換式 ＩGp＝４３２−（２２５／（１３２−６０））×ＩG…(8) Ｂに関するネガからポジへの一次変換式 ＩBp＝３３１−（２２５／（１０１−２８））×ＩB…(9) を得る。なお、上記ＩRp，ＩGp，ＩBpは、それぞれ反転
処理後のポジ画像上のＲＧＢ値を意味する。

【００５１】上記の(7)式、(8)式及び(9)式に、ネガ画
像上でオレンジの色面がとっていたＲＧＢ値を代入すれ
ば、ＩRp＝２３７，ＩGp＝１３８，ＩBp＝２５という値
が得られ、ポジ画像上にオレンジ色が再現されることが
わかる。

【００５２】参考のため、ネガ画像のＲＧＢの各プレー
ン毎に最小値及び最大値を求め、これら２組のＲＧＢ値
を、グレー軸を参照することなく、そのままＨＰ，ＳＰ
とする方法を採用した場合のネガ・ポジ反転について説
明する。上記実施例と同様の被写体（白とオレンジ色の
２色の色面）において、白い色面のネガ画像のＲＧＢ値
は、（８９，６０，２８）で与えられ、オレンジ色の色
面のネガ画像のＲＧＢ値は、（９２，９４，９９）で与
えられる。ここで、ネガ画像上のＳＰの強度値は、前述
の値をそのまま利用して ＩR（Ｍａｘ）＝９２，ＩG（Ｍａｘ）＝９４，ＩB（Ｍ
ａｘ）＝９９ となり、ネガ画像上のＨＰの強度値も、前述の値をその
まま利用して ＩR（Ｍｉｎ）＝８９，ＩG（Ｍｉｎ）＝６０，ＩB（Ｍ
ｉｎ）＝２８ となる。なお、ポジ画像上のＨＰは、ＲＧＢともに２４
５とし、ポジ画像上のＳＰはＲＧＢともに２０とする。

【００５３】以上の条件から、Ｒに関するネガからポジ
への一次変換式 ＩRp＝６９２０−（２２５／３）×ＩR…(10) Ｇに関するネガからポジへの一次変換式 ＩGp＝６４２−（２２５／３４）×ＩG…(11) Ｂに関するネガからポジへの一次変換式 ＩBp＝３３４−（２２５／７１）×ＩB…(12) を得る。

【００５４】上の各式に、ネガ画像上のＳＰのＲＧＢ値
を代入すれば、ＲＧＢ値はすべてポジ画像上のＳＰの値
である２０となる。つまり、被写体中でオレンジ色だっ
た色面が、ネガフィルムに撮影され、スキャナ等で読み
取られ、ポジ画像に変換されたときに黒（ＲＧＢ値が全
て２０）になり、もとの被写体とは大きく異なるポジ画
像が得られることになる。

【００５５】

【発明の効果】以上の説明から明らかなように、請求項
１の方法によれば、色分解して得た強度値の総和が略最
大となる画素に対応するシャドウポイント候補の画素デ
ータが、ハイライトデータと所定以上の差異を有してお
り、かつ、このシャドウポイント候補の画素データが、
ネガフィルムと同一銘柄のネガフィルムについて予め求
めてあるグレー軸と所定以上に近接している場合、シャ
ドウポイント候補を適切なシャドウポイントと判定し
て、このシャドウポイント候補の画素データをシャドウ
データとし、シャドウポイント候補が適切なシャドウポ
イントでないと判定された場合、ハイライトポイントの
画像データを参照して決められるグレー軸上の仮想的画
像データをシャドウデータとする工程と、ハイライトデ
ータとシャドウデータとに基づいてネガ画像の画像デー
タをポジ画像の画像データに変換する工程とを有するの
で、シャドウポイント候補とハイライトポイントとが十
分な光量差を有し、かつシャドウポイント候補が略無彩
色であるとき（つまり、シャドウポイント候補が適切で
あるとき）には、シャドウポイント候補をそのままシャ
ドウポイントとして採用してネガ画像からポジ画像への
略適正な反転を行うことができ、シャドウポイント候補
とハイライトポイントとが十分な光量差を有さず、或い
はシャドウポイント候補がある程度鮮やかな有彩色であ
るとき（つまり、シャドウポイント候補が不適切である
とき）には、ハイライトポイントを参照して得た仮想的
シャドウポイントを用いてネガ画像からポジ画像への略
適正な反転を行うことができる。つまり、様々な色分布
及び強度分布を有するネガ画像に対して適切な反転を行
って被写体に近いポジ画像を得ることができる。

【００５６】また、請求項２の方法によれば、シャドウ
ポイント候補の画素データがハイライトデータと所定以
上の差異を有してるか否かを、シャドウポイント候補の
第１の色に関する強度値と、ハイライトデータにおける
第１の色に関する強度値との差異が所定の下限値以上で
あるか否かに基づいて判断するので、シャドウポイント
候補とハイライトポイントとが十分な明暗差を有するか
否かを簡易・適切に判断することができ、ポジ画像おけ
るコントラストを必要で十分なものとすることができ
る。

【００５７】また、請求項３の方法によれば、シャドウ
ポイント候補の画素データがグレー軸と所定以上近接し
ているか否かを、シャドウポイント候補の第２及び第３
の色に関する強度値との組み合わせによってグレー軸上
の点になるよう定めた第１の色に関する一対の強度期待
値と、シャドウポイント候補の第１の色に関する強度値
とのうちの最大値と最小値の相違が所定の上限値以下で
あるか否かに基づいて判断するので、シャドウポイント
候補が略無彩色であるか否かを簡易・適切に判断するこ
とができ、ポジ画像おける色再現を適切なものとするこ
とができる。

【００５８】また、請求項４の記録媒体によれば、色分
解して得た強度値の総和が略最大となる画素に対応する
シャドウポイント候補の画素データが、ハイライトデー
タと所定以上の差異を有しており、かつ、このシャドウ
ポイント候補の画素データが、ネガフィルムと同一銘柄
のネガフィルムについて予め求めてあるグレー軸と所定
以上に近接している場合、シャドウポイント候補を適切
なシャドウポイントと判定して、このシャドウポイント
候補の画素データをシャドウデータとし、シャドウポイ
ント候補が適切なシャドウポイントでないと判定された
場合、ハイライトポイントの画像データを参照して決め
られるグレー軸上の仮想的画像データをシャドウデータ
とする機能と、ハイライトデータとシャドウデータとに
基づいてネガ画像の画像データをポジ画像の画像データ
に変換する機能とを実現させるプログラムが記録されて
いるので、シャドウポイント候補が適切であるときに
は、シャドウポイント候補をそのままシャドウポイント
として採用してネガ画像からポジ画像への略適正な反転
を行うことができ、シャドウポイント候補が不適切であ
るときには、ハイライトポイントを参照して得た仮想的
シャドウポイントを用いてネガ画像からポジ画像への略
適正な反転を行うことができる。つまり、様々な色分布
及び強度分布を有するネガ画像に対して適切な反転を行
って被写体に近いポジ画像を得ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の一実施形態である画像変換方法を実
行するための画像処理装置の構成を示すブロック図であ
る。

【図２】グレー軸に関するＲＧＢ相互間の変換式を求め
るフローチャートである。

【図３】ネガ画像の画像データをポジ画像の画像データ
に変換するフローチャートである。

【図４】特定銘柄のネガフィルムに所定の測定を行って
グレー軸を求めるプロセスを説明するグラフである。

【符号の説明】

１０ 画像入力部 ２０ 画像保持部 ３０ 画像分析部 ４０ 情報保持部 ５０ 画像変換部 ６０ 画像出力部 １００ 画像処理装置

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭60−14570（ＪＰ，Ａ) 特開 昭63−307584（ＪＰ，Ａ) 特開 平３−173282（ＪＰ，Ａ) 特開 平９−83825（ＪＰ，Ａ) 特表2000−509564（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) G06T 1/00 510 G06T 11/60 120 H04N 1/60 G03F 3/08

Claims (4)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ネガフィルムのネガ画像の画像データを
   対応するポジ画像の画像データに変換する画像変換方法
   であって、 前記ネガ画像上の各画素の画素データからハイライトポ
   イントを求め、当該ハイライトポイントの画像データを
   ハイライトデータとする工程と、 前記ネガ画像上の各画素を色分解した第１から第３の色
   に関する強度値の総和が略最大となる画素をネガ画像上
   のシャドウポイント候補とする工程と、 前記シャドウポイント候補の画素データが、前記ハイラ
   イトデータと所定以上の差異を有しており、かつ、当該
   シャドウポイント候補の画素データが、前記ネガフィル
   ムと同一銘柄のネガフィルムについて予め求めてあるグ
   レー軸と所定以上に近接している場合、前記シャドウポ
   イント候補を適切なシャドウポイントと判定して、当該
   シャドウポイント候補の画素データをシャドウデータと
   し、前記シャドウポイント候補が適切なシャドウポイン
   トでないと判定された場合、前記ハイライトポイントの
   画像データを参照して決められる前記グレー軸上の仮想
   的画像データを前記シャドウデータとする工程と、 前記ハイライトデータと前記シャドウデータとに基づい
   て前記ネガ画像の画像データを前記ポジ画像の画像デー
   タに変換する工程と、を有することを特徴とする画像変
   換方法。
2. 【請求項２】 前記シャドウポイント候補の画素データ
   が前記ハイライトデータと所定以上の差異を有してるか
   否かは、前記シャドウポイント候補の前記第１の色に関
   する強度値と、前記ハイライトデータにおける前記第１
   の色に関する強度値との差異が所定の下限値以上である
   か否かに基づいて判断されることを特徴とする請求項１
   記載の画像変換方法。
3. 【請求項３】 前記シャドウポイント候補の画素データ
   が前記グレー軸と所定以上近接しているか否かは、前記
   シャドウポイント候補の前記第２及び第３の色に関する
   強度値との組み合わせによって前記グレー軸上の点にな
   るよう定めた前記第１の色に関する一対の強度期待値
   と、前記シャドウポイント候補の前記第１の色に関する
   強度値とのうちの最大値と最小値の相違が所定の上限値
   以下であるか否かに基づいて判断されることを特徴とす
   る請求項１記載の画像変換方法。
4. 【請求項４】 コンピュータによってネガフィルムのネ
   ガ画像の画像データを対応するポジ画像の画像データに
   変換するためのプログラムを記録した記録媒体であっ
   て、 前記ネガ画像上の各画素の画素データからハイライトポ
   イントを求め、当該ハイライトポイントの画像データを
   ハイライトデータとする機能と、 前記ネガ画像上の各画素を色分解した第１から第３の色
   に関する強度値の総和が略最大となる画素をネガ画像上
   のシャドウポイント候補とする機能と、 前記シャドウポイント候補の画素データが、前記ハイラ
   イトデータと所定以上の差異を有しており、かつ、当該
   シャドウポイント候補の画素データが、前記ネガフィル
   ムと同一銘柄のネガフィルムについて予め求めてあるグ
   レー軸と所定以上に近接している場合、前記シャドウポ
   イント候補を適切なシャドウポイントと判定して、当該
   シャドウポイント候補の画素データをシャドウデータと
   し、前記シャドウポイント候補が適切なシャドウポイン
   トでないと判定された場合、前記ハイライトポイントの
   画像データを参照して決められる前記グレー軸上の仮想
   的画像データを前記シャドウデータとする機能と、 前記ハイライトデータと前記シャドウデータとに基づい
   て前記ネガ画像の画像データを前記ポジ画像の画像デー
   タに変換する機能と、を実現させるプログラムを記録し
   たコンピュータ読取り可能な記録媒体。