JP3459559B2 - 有機材料による被覆防食方法 - Google Patents

有機材料による被覆防食方法

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JP3459559B2
JP3459559B2 JP02596598A JP2596598A JP3459559B2 JP 3459559 B2 JP3459559 B2 JP 3459559B2 JP 02596598 A JP02596598 A JP 02596598A JP 2596598 A JP2596598 A JP 2596598A JP 3459559 B2 JP3459559 B2 JP 3459559B2
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泰彦 大野
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属表面又は鉄筋
を含むコンクリート表面の有機材料による被覆防食方法
に関し、特に大気中のみならず、湿潤状態もしくは水中
にある金属表面又は鉄筋を含むコンクリート表面に対し
ても、安定かつ良好な樹脂接着をすることにより、良好
な密着状態を維持し、構造物の腐食劣化を長期間防止す
る有機材料による被覆防食方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】金属表
面又は鉄筋を含むコンクリート表面(以下、単に金属表
面と略する)の従来の腐食防止方法としては、一般に塗
装、ライニング、コンクリート被覆、ペトロラタムライ
ニング、メッキ等があり、数多くの文献が示されている
(例えば、腐食防止便覧等)、また腐食の激しい室外に
おける防食方法の中で、特に腐食環境として厳しい水
中、乾湿繰り返し、もしくは高湿度中の金属表面の防食
方法としては、上記腐食防食方法の中でも、かなり限ら
れた方法となる(例えば、(財)沿岸開発技術センタ
ー;港湾鋼構造物防食・補修マニュアル等)。また、こ
れらの環境に暴露され、既に腐食を生じている金属に対
しての防食方法としては、水中塗装(例えば、特開平2
−248532号公報、実開昭61−66043号公
報)、ペトロラタムライニング(例えば、特開昭62−
1830号公報)、コンクリート被覆(例えば、特公平
5−45728号公報)がある。
【0003】また、吸水性ポリマーを含んだ材料を使用
した防食方法としては、吸水性ポリマーをゴム材に添加
したものを保護カバーに貼り付けた防食構造体(特開昭
62−78323号公報)がある。
【0004】さらに、未硬化樹脂を使用した防食方法と
しては、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂を不織布に含
浸して貼り付けるライニング工法(特開平3−2188
15号公報)がある。
【0005】また、流動性のある樹脂を予め被防食体の
周囲に一定の隙間をあけて組み立てた型枠内に流し込み
被覆する防食加工方法(特開昭60−144427号公
報)が提案されている。
【0006】上述した腐食防止方法のうち、特に腐食環
境の厳しい所にある既設構造物の腐食防止方法として挙
げた上記3つの方法には、以下に示すような問題点を有
する。
【0007】(1)水中塗装:ブラストによる下地処理
を必要(SIS−Sa2以上)とし、下地処理後直ちに
施工しなければならず、実際には現場工程の微妙な相違
により、部分的な接着不良もしくは剥離を生じる場合が
ある。膜厚を厚くする水中パテもあるが、同様な問題点
を有する。また通常、塗膜の表面に保護層を設けないた
め、環境の変化や外力の影響を直接受け、従って寿命の
点でも問題がある。
【0008】(2)ペトロラタムライニング:ペトロラ
タムは優れた防食材であり、比較的低いグレードの下地
処理(SIS−St2)でも良好な防食効果を発揮する
が、基材がワックスであるため、被防食体と密着性は示
すものの接着は不可能である。従って、外力を受けるよ
うな環境では、長期的には被防食体と防食層の間に隙間
が発生し、腐食を生じるという問題がある。
【0009】(3)コンクリート被覆:コンクリートは
アルカリ性を示す材料であり、水分、溶存酸素を環境か
ら遮断し防食する材料としては優れているが、一般に水
気の多い環境で塗布して防食することは難しく、実際に
は被防食体にある一定の隙間をあけた型枠を組み、その
中に流し込んで、充填被覆することが広く行われてい
る。しかし、この場合型枠内で完全に隙間が充填するこ
とは、最近の分散防止剤の進歩においても難しい。ま
た、この方法では、被防食体の形状に合わせた細かい細
工が殆ど不可能であり、結果としてかなりの重量をもつ
被覆体となる。このことは被防食体への大きな負荷とな
る。また長期的には、塩分の浸透等によるコンクリート
の中性化が生じ、部分的にでも腐食が発生すると錆の膨
張圧により、急激にコンクリート層の割れが進展し、脱
落することもある。さらにコンクリートは殆ど弾性を持
たない物質であるため、被防食材が外力や熱変化により
僅かに動いても、その動きに追従できない。従って、コ
ンクリートと被防食面は、施工当初は密着している部分
でも、経時的には剥離してしまい、腐食の原因となる。
特に、この現象は海洋構造物等で認められる。
【0010】また、吸水性ポリマーをゴム材に添加した
ものの被覆による防食は、表面が平滑な金属に対して
は、優れた遮水性を発揮し防食できるが、実構造物は多
くの場合、腐食や施工時の溶接跡等により、不規則な凹
凸が多数ある。この場合は、すでに硬化しているゴム材
の水膨潤は密着を保つには不充分であり、良好な防食効
果は得られない。
【0011】未硬化樹脂を不織布に含浸して貼り付ける
方法は、被覆内にある水分を除去できないため、樹脂の
密着不良を生じやすく、しかも被覆層の強度が弱いた
め、海洋環境等の腐食環境では、長期間の被覆防食は難
しい。
【0012】流動性樹脂を型枠内に流し込み被覆する工
法は、被防食体表面が平滑で、かつ大気中の部分に対し
ては効果があるが、湿潤状態では被防食体表面と樹脂と
の密着は不安定となり、特に一部が水中にある場合は樹
脂の比重、粘度等が型枠内への分散に大きく影響し、良
好かつ安定な防食は得られにくい。
【0013】従って、本発明の目的は、従来のこれらの
方法がもつ問題点を解消させ、新設施設はもとより、腐
食環境の厳しい水中もしくは湿潤状態にある構造物に対
しても、良好かつ安定な樹脂接着により、長期間の防食
状態を維持し得る有機材料による被覆防食方法を提供す
ることにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は、鋭意検討の結
果、金属表面又は鉄筋を含むコンクリート表面を、吸水
性ポリマーを含む未硬化状態の樹脂により被覆すること
によって、上記目的が達成し得ることを知見した。
【0015】本発明は、上記知見に基づいてなされたも
ので、金属表面又は鉄筋を含むコンクリート表面の有機
材料による被覆防食方法において、上記金属又は上記鉄
筋を含むコンクリート表面を、吸水性ポリマーを含む未
硬化樹脂により被覆することを特徴とする有機材料によ
る被覆防食方法を提供するものである。
【0016】
【作用】大気中にあるすべての金属は、暴露環境に応じ
た水膜を表面に有しており、鉄、亜鉛、アルミニウム等
の水分の存在下で腐食を発生する金属は、金属表面の水
膜によりその耐食性が大きく影響を受ける。従って、金
属の表面を被覆して防食する場合には、例えば塗装に代
表されるように、いかに大気環境と金属表面を遮断する
かが、防食をする上で最も重要なことであり、それに
は、金属表面にいかに強固かつ安定した塗膜を接着させ
るかが必ず必要なこととなる。
【0017】従来の技術では、接着による防食を意図し
た防食方法は殆どなく、また実際の様々な腐食環境、特
に水中もしくは高湿潤環境においては、被防食体表面に
防食層を接着することは、すべて難しい。
【0018】一方、本発明のごとく、吸水性ポリマーを
含む未硬化樹脂を、金属表面に接触させると、金属表面
の水分は直ちに吸水性ポリマーにより吸水され、金属の
表面には樹脂接着に支障をきたすほどの水分は無くな
り、樹脂の接着が容易に達成される。なお、ここで、樹
脂の硬化反応は、吸水性ポリマーの吸水反応よりも遅い
ことが必要で、実際的には、樹脂の硬化反応は2時間以
上かかって終了することが望ましい。
【0019】水中、乾湿繰り返し状態及び高湿度環境に
ある金属表面でも同様な過程により良好な樹脂接着が達
成される。特に本発明の特徴は、既に腐食が発生した
り、溶接ビート等が残っている実際の構造物で、しかも
水中に存在するものに対しても、樹脂接着が達成される
ことにある。この場合、被覆当初には金属表面と樹脂の
間には複雑な空隙が形成されるが、直ちに水分は吸水性
ポリマーに吸水され、樹脂は金属に接着する。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明では、金属表面又は鉄筋を含むコンクリート表面
を有機材料によって被覆防食する。ここでいう金属とは
鉄、ステンレス、亜鉛、アルミニウム等が挙げられる。
【0021】本発明では、この有機材料として吸水性ポ
リマーを含む未硬化樹脂を用いる。吸水性ポリマーとし
ては、ポリアクリル酸塩系、酢酸ビニル・アクリル酸エ
ステル共重合体ケン化物、ポリ酢酸ビニル・無水マレイ
ン酸反応物、イソブチレン・マレイン酸共重合体架橋
物、ポリエチレンオキシド系、デンプン・アクリル酸グ
ラフト重合体、ポリビニルアルコール系、ポリN−ビニ
ルアセトアミド系等が例示される。ここで、水分が海水
のように多量の電解質を含む場合には、ポリビニルアル
コール系(PVOH系)、ポリN−ビニルアセトアミド
系(PNVA系)等のようなノニオン系の吸水性ポリマ
ーが好ましい。これらの吸水性ポリマーは、上記未硬化
樹脂100重量部に対して1〜200重量部添加される
ことが望ましい。
【0022】上記未硬化樹脂としては、エポキシ系樹
脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリサルファ
イド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ゴム系から選択され
る。吸水した吸水性ポリマーは、未硬化樹脂中に分散し
ていくため、未硬化樹脂はその分散性から粘度が小さ
く、スランプ性が良好なものが好ましい。また、この未
硬化樹脂は、その使用に際しては、その表面に、使用す
る未硬化樹脂に対応する専用プライマーが塗布されてい
ることが望ましい。
【0023】また、波浪の影響を受ける海洋構造物やプ
ラント等では、被防食体が防食施工後に微妙にゆれ動く
ことがある。被覆防食層が伸縮性の少ないコンクリート
や樹脂ではこの動きに追従できない場合があり、割れや
剥離が生じ、さらに進むと防食層の脱落ということも発
生する。このため、このような状況下にある被防食体に
対しては、本発明においては、ウレタン系樹脂、シリコ
ーン系樹脂等の伸縮性の優れた樹脂を使用することが有
効である。例えば海洋桟橋基礎杭の干満帯部の防食にお
いては、JIS A 5758の引張り試験において、
最大荷重時の伸び率が400%以上のものについては、
上記のような問題は生じない。従って、このような場合
には、上記伸び率が少なくとも100%以上の柔軟性を
有する樹脂を用いることが望ましい。
【0024】上記した吸水性ポリマーを含む未硬化樹脂
は、保護材により保護されていることが望ましい。この
ような保護材としてはプラスチック、FRP、金属等が
例示される。
【0025】また、上記した吸水性ポリマーを含む未硬
化樹脂は、保持材により保持されていることが望まし
い。このような保持材としては、均一な厚さを有する不
織布、ガラス繊維、植毛布からなる樹脂保持層が挙げら
れる。
【0026】さらに、上記保護材の内面には、外力から
の緩衝層を有することが望ましく、このような緩衝層を
構成する材料としては、発泡ポリスチレン、発泡ウレタ
ン、軟質ゴム等が使用できる。
【0027】被防食体が長期間、厳しい腐食環境に晒さ
れることに鑑み、被防食体表面が水中もしくは湿潤状態
にある場合、夏冬等の温度変化及びそれらの温度変化に
伴う熱膨張、熱収縮の発生がある場合、風力、水力もし
くは他の動力源による振動がある場合を想定し、被防食
体表面に接着力を充分に発揮する樹脂密着層を形成させ
る目的から、本発明では、上記吸水性ポリマーを含む未
硬化樹脂(樹脂層)を用いる。さらに、これに加えて上
述した樹脂層の保護材、樹脂層の保持材、樹脂層の緩衝
層及び樹脂層の接着性向上のためのプライマーが好まし
く使用される。
【0028】
【実施例】以下、実施例等に基づいて本発明を具体的に
説明する。
【0029】〔実施例1〕 <水中鋼材に対する接着性>アセトン脱脂をしたみがき
鋼(SS400、100mm×50mm×1.6t
m)を海水中において、表1に示す樹脂の接着試験を行
った。なお、表1中の数値は、樹脂100重量部に対す
る吸水性ポリマーの重量部を示す。
【0030】
【表1】
【0031】予め、片面に薄くワセリンを塗布したポリ
エチレンシート(10μm)を、接着剤によりポリエチ
レン板(100mm×50mm×2t mm)に貼り付
け、ワセリン塗布面に、予め表1の組成で混合した樹脂
を平均1mmの厚さで塗布した。また一部についてはプ
ライマーを樹脂表面に刷毛により塗布した。
【0032】これを直ちに海水中にて鋼面と樹脂面を接
触させ、ポリエチレン板側を上側にして、海水中に水平
に置き、ポリエチレン板の上に固定用として約1kgの
おもりを置いた。室温にて、7日間そのまま放置し、樹
脂が硬化していることを確認した後、海水中から取り出
し、接着力を測定した。
【0033】接着力の測定では、樹脂上ポリエチレンシ
ートをゆっくり剥離した後、溶剤でワセリンを拭き取
り、接着試験に供試する部分の周囲をカッターで切り離
した後、樹脂上に測定用治具を接着剤で取り付け、接着
剤が完全に硬化した後、5mm/minの速度で治具を
引張り、樹脂の接着力を測定した。測定結果を図1〜3
に示す。なお、図1〜3中の黒塗りのプロットは、プラ
イマー付きである。
【0034】図1〜3の結果から、いずれも、吸水性ポ
リマーの添加により、水中鋼面への樹脂接着性はかなり
向上している。また専用プライマーを樹脂表面に塗布し
た場合においては、さらに接着力の向上が認められる。
【0035】〔実施例2〕 <凹凸面のある水中鋼材に対する防食効果>実際の腐食
鋼材の凹凸を想定し、図4に示すような深さ1mmの溝
をもつ試験片を作成し、本発明における被覆防食試験を
行った。
【0036】被覆材は、ポリエチレン板(130mm×
90mm×3.0t mm)の表面に、厚さ1.5mmの
不織布(ポリエステル製)を貼り付け、そこにウレタン
系樹脂100重量部に対し吸収性ポリマー(PNVA
系)30重量部を混合したものを、コテにより含浸させ
たものとした(図5)。また、比較として市販の水膨潤
性ゴムシートをポリエチレン板に貼り付けたものおよび
無被覆のものを供試した。
【0037】防食用試験片の表面をエタノールで脱脂洗
浄後、20℃静止状態の海水中に48時間浸漬し腐食さ
せた。その後、鋼表面の錆を海水中にて布で拭き取り、
その面に被覆材を海水中にて密着させ、ポリエチレン板
の上に重さ1kgのおもりを乗せ、水平に放置した。
【0038】防食状態を確認するため、防食用の試験片
の分極抵抗を測定した。その結果を図6に示す。
【0039】分極抵抗と腐食速度には、次式の関係があ
る(例えば、金属表面工業全書13金属腐食防食技術
(改訂新版)、p.226)。 ICORR=K/Rp ICORR:腐食速度 K :定数 Rp :分極抵抗
【0040】従って、本実施例により、本発明の被覆防
食方法は凹凸が存在する金属表面に対しても、良好な防
食性能を発揮することが判った。また、1000時間
後、試験片を回収し鋼表面を観察したところ、無防食で
は全面腐食、水膨潤ゴム被覆では溝部は全面腐食し、密
着部でも表面が黒変し、一部に茶褐色の錆が認められた
が、本発明の被覆防食方法では、樹脂が鋼面全面によく
接着し、腐食は全く認められなかった。
【0041】〔実施例3〕 <実際の構造物に対する被覆防食施工例>約10年間無
防食状態で、海洋環境に設置されているφ406mmの
鋼管杭について、−1000mm〜+1000mmの範
囲で、本発明の被覆防食方法による防食被覆を行い、施
工は海水レベルが±0mm以上の時に実施した。なお、
施工杭の1本に図7に示す予め薄い鋼板(200mm×
300mm×0.3t mm)を−500mm、±0m
m、+500mmのレベルに貼り付け、90日後に回収
して樹脂の接着力及び鋼表面の防食状態を確認した。ま
た、別の鋼管杭を用い図8に示すように予め未硬化樹脂
と保護カバーの間に裏面を絶縁塗装した薄い鋼板(20
mm×100mm×0.3t mm)A及びBを挿入し、
更に施工時に図9に示すようにAとB対面する鋼管表面
の位置にA’、B’の試験片を取付け、インピーダンス
の測定を経時的に行った。なお、A’、B’の試験片
は、いずれも鋼管とは絶縁されている。
【0042】被覆工程は、以下のように行った。 (1)工場において、図8に示す保護カバーを製作す
る。なお、保護カバーは、内径が鋼管杭径と一致するよ
うに成形した半割り形状とし、フランジ間に10mmの
隙間があくように成形した。なお、同図において、1は
FRP製半割型成形カバー(保護材、2.0mmt)、
2は成形カバー固定用フランジ(7.0mmt)、3は
成形カバー固定用ボルト穴(φ16mm)、4は発泡ポ
リエチレン(緩衝層、10倍発泡、5.0mmt)、5
はナイロン製マジックテープ布(保持材)、6はインピ
ーダンス測定用鋼板(マジックテープ布と発泡ポリエチ
レンの間)、7は測定用リード線をそれぞれ示す。な
お、鋼板6において、Aはフランジに対して90度の位
置とし、Bはフランジに対して45度の位置とした。ま
た、マジックテープ布と発泡ポリエチレンの間に水が侵
入することを防ぐため、ゴム系の接着剤により充分に接
着シールした。 (2)鋼管杭表面に付着した貝、錆等の汚れをスクレー
パ等でケレン除去する。また、図7に示すように、−7
00mm、±0mm、+700mmのレベルの100m
m×100mmを防食状態観察用として、金属光沢が発
するまで研磨した。 (3)さらに図7に示すように、接着力測定用の薄い鋼
板を所定の位置に置き、ナイロン製水糸により仮止め固
定した。 (4)図9に示すように、上記(3)と180°裏側の
鋼面に、裏面を絶縁塗装したインピーダンス測定用試験
片A’、B’を置き、水糸で仮止めする。 (5)ウレタン系樹脂の主剤に、PNVA系の顆粒状吸
水性ポリマーを樹脂分100重量部に対して10重量部
を添加し、よく混合した。 (6)上記(5)に所定量の硬化剤を添加し、よく混合
した。 (7)上記(6)をコテ、ローラーにより、図8のマジ
ックテープ布(保持材)に含浸させ、マジックテープ布
の表面が予め均一になるように整えた。 (8)樹脂の表面に専用プライマーを刷毛により塗布し
た。 (9)上記(8)を上記(2)、(3)の処理をした被
防食体に取り付け、M12のボルトにて、フランジ部を
締め付け、保護カバーを固定した。 (10)下端部に水中硬化型エポキシ樹脂を充填した。
【0043】(結果) (1)インピーダンス経時変化 図10に周波数1kHzの交流インピーダンスの測定結
果を示す。 (2)樹脂の接着力測定 樹脂の接着力測定部にあたる部分を保護カバーごと切り
出し、その後、保護カバーを注意深く取り除き、幅20
mm×長さ200mmの短冊状に加工する。接着してい
る部分の先端を剥離し、180°方向のピールを測定し
た。その結果を表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】〔実施例4〕海洋環境において、本発明の
ような構造の防食被覆を行うと、外層の保護材は波浪、
海流等の外力を繰り返し受け、一方内層の防食層は被防
食耐と接着により一体化しているため、外層が受ける外
力は接着面において主に剪断力方向の力を及ぼすことに
なる。このため、防食層が完全硬化体の場合は剥離を生
じやすくなる。こうした現象は橋脚やプラントのように
振動を受けている場所でも生じ易い。本発明で示した伸
び率の大きい材料からなる防食層の場合は、防食層内で
外力による影響を分散吸収するため接着面における剥離
は生じにくい。
【0046】(実験方法) 予め海水中で腐食させた鋼板(70mm×150mm
×3mmt )をSISSt2の下地処理をし、片面に固
定用治具をはんだ付けする。 反対側の鋼表面に、海水中にて水中硬化型エポキシ系
パテを約2mmの厚さで塗布する。同じ要領で3種類の
パテの試験片を作成する。 実施例3で用いた本発明の被覆材料を海水中で鋼表面
に接着させる。 上記、の試験片を室温海水中で7日間放置し硬化
させた後、海水から引き上げ、樹脂表面を乾燥させた
後、接着剤によりFRP板(70mm×250mm×3
mmt )に接着させる(図11)。 接着剤が完全に硬化した後、固定板に試験片をボルト
で固定し、水平にしてエアレーションした室温海水中に
浸漬する。FRP板の先端にワイヤーを取り付け、垂直
方向に0.1回/秒のサイクルで5mm動かす(図1
2)。 2週間後に引き上げ、接着部の剥離状況を観察した。
その結果は下記の通りであった。
【0047】(実験結果) A社製エポキシ系パテ;端部より約10mm剥離し、剥
離面に腐食発生 B社製エポキシ系パテ;端部より約20mm剥離し、剥
離面に腐食発生 C社製エポキシ系パテ;端部より約20mm剥離し、剥
離面に腐食発生 本発明品;端部からの剥離はなく、腐食も生じていない
(伸び率500〜600%)。
【0048】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の有機材料
による被覆防食方法は、吸水性ポリマーを含む樹脂を未
硬化の状態のうちに、被防食体と密着させ固定すること
により、被防食体が大気中はもとより、湿潤状態もしく
は水中にあっても、また被防食体表面に腐食跡等の不規
則な凹凸があっても、被防食体表面に極めて安定な接着
被覆層を形成でき、その結果、長期間にわたって優れた
防食効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1のウレタン系樹脂を用いた場合の吸
水ポリマー配合量と接着力との関係を示すグラフ。
【図2】 実施例1のエポキシ系樹脂を用いた場合の吸
水ポリマー配合量と接着力との関係を示すグラフ。
【図3】 実施例1のシリコーン系樹脂を用いた場合の
吸水ポリマー配合量と接着力との関係を示すグラフ。
【図4】 実施例2で用いた防食用試験片の平面図及び
断面図。
【図5】 実施例2で用いた被覆材の断面図。
【図6】 実施例2における分極抵抗の経時変化を示す
図。
【図7】 実施例3における接着力測定用鋼板取付図。
【図8】 実施例3で用いた保護カバーの斜視図。
【図9】 実施例3で用いたインピーダンス測定用試験
片取付図。
【図10】 実施例3におけるインピーダンスの経時変
化を示す図。
【図11】 実施例4の剥離試験の状態を説明する概略
断面図。
【図12】 実施例4の剥離試験の評価方法を示す説明
図。
【符号の説明】
1:FRP製半割型成形カバー(保護材)、 2:成形カバー固定用フランジ、 3:成形カバー固定用ボルト穴、 4:発泡ポリエチレン(緩衝層)、 5:ナイロン製マジックテープ布(保持材)、 6:インピーダンス測定用鋼板(マジックテープ布と発
泡ポリエチレンの間)、 7:測定用リード線。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭61−195979(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23F 11/00 C04B 41/63 E02D 31/06

Claims (11)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属表面又は鉄筋を含むコンクリート表
    面の有機材料による被覆防食方法において、 上記金属又は上記鉄筋を含むコンクリート表面を、吸水
    性ポリマーを含む未硬化樹脂により被覆することを特徴
    とする有機材料による被覆防食方法。
  2. 【請求項2】 上記吸水性ポリマーを含む未硬化樹脂を
    保護材により保護する請求項1に記載の有機材料による
    被覆防食方法。
  3. 【請求項3】 上記保護材がプラスチック、FRP、金
    属から選択される請求項2に記載の有機材料による被覆
    防食方法。
  4. 【請求項4】 上記吸水性ポリマーが、ポリアクリル酸
    塩系、酢酸ビニル・アクリル酸エステル共重合体ケン化
    物、ポリ酢酸ビニル・無水マレイン酸反応物、イソブチ
    レン・マレイン酸共重合体架橋物、ポリエチレンオキシ
    ド系、デンプン・アクリル酸グラフト重合体、ポリビニ
    ルアルコール系、ポリN−ビニルアセトアミド系から選
    択され、該吸水性ポリマーが、上記未硬化樹脂100重
    量部に対して1〜200重量部添加される請求項1、2
    又は3に記載の有機材料による被覆防食方法。
  5. 【請求項5】 上記未硬化樹脂が、エポキシ系樹脂、ウ
    レタン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリサルファイド系
    樹脂、ポリエステル系樹脂、ゴム系から選択される請求
    項1、2、3又は4に記載の有機材料による被覆防食方
    法。
  6. 【請求項6】 上記吸水性ポリマーを含む未硬化樹脂が
    保持材によって保持される請求項1〜5のいずれかに記
    載の有機材料による被覆防食方法。
  7. 【請求項7】 上記保持材が均一な厚さを有する不織
    布、ガラス繊維、植毛布からなる樹脂保持層である請求
    項6に記載の有機材料による被覆防食方法。
  8. 【請求項8】 上記保護材の内面に、外力からの緩衝層
    を有する請求項1〜7のいずれかに記載の有機材料によ
    る被覆防食方法。
  9. 【請求項9】 上記緩衝層が発泡ポリエチレン、発泡ポ
    リウレタン、軟質ゴムからなる請求項8に記載の有機材
    料による被覆防食方法。
  10. 【請求項10】 上記未硬化樹脂に対応する専用プライ
    マーが、上記未硬化樹脂の表面に塗布されている請求項
    1〜9のいずれかに記載の有機材料による被覆防食方
    法。
  11. 【請求項11】 上記未硬化樹脂の伸び率が100%以
    上である請求項1〜10のいずれかに記載の有機材料に
    よる被覆防食方法。
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