JP3453604B2 - 新規なバイオチップ及びその作製方法 - Google Patents

新規なバイオチップ及びその作製方法

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JP3453604B2
JP3453604B2 JP2001226243A JP2001226243A JP3453604B2 JP 3453604 B2 JP3453604 B2 JP 3453604B2 JP 2001226243 A JP2001226243 A JP 2001226243A JP 2001226243 A JP2001226243 A JP 2001226243A JP 3453604 B2 JP3453604 B2 JP 3453604B2
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栄一 民谷
裕二 村上
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、生体材料を固定化
した微小担体と疎水性固定部を備えたパターン化基板
を、無作為液中自己組織化法を用いて疎水性相互作用に
より固定化することを特徴とする、新規なバイオチップ
の作製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】DNAチップやプロテインチップを作製
する方法として、幾つかの技術が現在用いられている。
フォトリソグラフィを利用した固相合成法は、幾何級数
的種類の生体高分子オリゴマーの全種類を高密度に合
成、配列できる技術である。しかし、固相合成方法であ
るため長い鎖長のポリマーを得ることができず、蛋白質
のような高次構造を有する材料の固定化方法には適用で
きない。また、多種類のフォトマスクを利用する工程数
の多い方法であるため、低コスト化には向いていない。
また、スタンプ法は、あらかじめ用意した多種類の材料
をチップ上に並べていく技術である。任意の材料に適用
できるが、個々の材料の固定は、物理・化学吸着か、簡
単な条件で反応が進行する固定化法に限定される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】そこで、上記の従来の
バイオチップの作製方法の欠点を補うことが可能であ
り、量産にも適した、新規のバイオチップの作製方法を
開発することが、本発明の課題である。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、高集積型
バイオチップの開発にあたり、生体材料の新しい固定化
方法を提案した。即ち、生体材料を基板上に直接固定化
するのではなく、微小担体に固定化した後、担体をパタ
ーン化した基板上に固定化する2段階の固定化方法を採
用した。第二段階目の基板上への固定化方法として、微
小化した担体群を、無作為液中自己組織化法により、疎
水性相互作用を介して微小担体を基板に固定化した。無
作為液中自己組織化法については下記に詳しく述べる
が、この方法によると固定化材料の種類の増加や固定化
領域の微小化に際してもその工程が複雑にならず、生体
材料の活性を損なうことなく固定化できると期待され
る。また本方法を用いることにより、多くの分析を同時
に行えると共に、微小化により試薬や試料の消費量の抑
制や複合的情報の取得が期待されている。本発明の方法
は、このための微小担体の作製の方法、および配置の親
和力として薄板のダイシングにより得た微小担体とパタ
ーン化疎水性膜を有する基板との疎水性相互作用を用い
た方法に関するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明のバイオチップの作製方法
は、生体材料を微小担体に対して固定化する過程と、そ
の担体を配置する過程より成る。微小担体に対する固定
化では個別に各種の生体材料をカバーガラスに固定化し
た後、ダイシングマシーンで100〜400μm角に切
った担体に固定化する。これを適当な量ずつ配合し、担
体として性質が等しく化学・生化学的に性質が異なる微
小担体の懸濁液を得る。後者の配置工程では無作為液中
自己組織化法により、担体の疎水性相互作用を用いて基
板と結合させる。基板上の形状や材料を制御することに
よっても、配置用サイトを格子上に並べておくことがで
きる。
【0006】無作為液中自己組織化法とは、スピンコー
ター上に設置した液体中でこのサイト付近に先の担体懸
濁液を滴下し、そのスピンコーターを回すことで重力、
遠心力、疎水性相互作用また種々の親和力によって1つ
のサイトに一つだけの担体を配置させる方法である。た
とえば重力や疎水性相互作用によって、サイトの中に、
ほぼそのサイトと同じ大きさの担体を落とし込むと、2
つ目以降は入ることができない。基板上に多くのサイト
を用意して十分な数の担体を滴下すると、一度に数多く
のサイトに担体を配置させることが可能であり、この様
な方法を自己組織化法という。懸濁液に化学的、生化学
的に性質が異なる生体材料を固定化した担体の混合物を
用いれば、最終的に多種類の生体材料を密に固定化した
基板を得ることができる。このとき特定の生体材料を固
定化した担体が基板上のどこに配置されるかは制御され
ていないので、本発明の方法においては無作為に組織化
される。本発明の方法において、センサー応答のキャリ
ブレーション等によって、最終的な位置を知ることが可
能となる。この様に、生物材料を固定化した微小担体と
基板とを結合させるにあたり、無作為液中自己組織化法
によって疎水性相互作用を利用して結合させた事が、本
発明の最も大きな特徴である。
【0007】本発明は、パターン化基板及び生体材料固
定化担体を備えたバイオチップである。ここで、疎水性
固定部と生体材料固定化担体は、疎水性相互作用により
結合している。尚、パターン化基板は基板とその基板の
片面に配列した複数の疎水性固定部とを備えており、そ
の基板の疎水性固定部の間は親水性である。また、生体
材料固定化担体は微小担体、その微小担体の片面の表層
に形成した疎水性コーティング、更にその微小担体の他
方の片面に固定化した生体成分又は生体成分類似物質を
備えている。ここで固定化する生体成分又は生体成分類
似物質として、核酸、蛋白質、脂質、生体模倣有機分
子、細胞及びこれらの複合体が挙げられる。ここでいう
生体模倣分子は、生体機能材料が持つ特異的認識能や、
信号変換機能などに相当する機能を発現するか、もしく
は安定化や信号伝達のように他の機能を支援する分子を
指す。認識能については、精密合成による認識分子やモ
レキュラーインプリンティング法によって得られた分子
認識ポリマー、分子認識能を目的として得られるコンビ
ナトリアル化学の産物などがある。信号変換機能につい
ては、触媒能を有する分子、光学特性が変化する分子、
酸化または還元されうる分子、重量変化を起こす分子な
どがある。支援機能には疎水場、または親水場などによ
り他の生体材料を安定化させる分子のほか、固定化を仲
介する分子、電子伝達する導電性分子などがある。ま
た、上記の構造より成るパターン化基板及び生体材料固
定化担体もまた、本発明の範囲内である。
【0008】本発明のバイオチップアレイの構造を、図
1に示す。パターン化基板は、スライドガラス等の基板
(1)上に、疎水性固定部(2)が複数存在していると
いう構造をしている。パターン化基板は、親水性部分
(8)の間に疎水性部分(9)が格子状に配列されてい
る、という構造となっている。一方、生体材料固定化担
体は、疎水性コーティング(3)、カバーガラス等の微
小担体(4)、クロムコーティング(5)、金コーティ
ング(6)及び生体材料(7)の順番に層を形成してい
る。ここで、微小担体(4)の大きさは約10〜500
μmで、厚さは1〜120μmであることが望ましい。
また、疎水性コーティング(3)の厚さは1分子層〜約
1.0μm、クロムコーティング(5)の厚さは約20
0オングストローム、金コーティング(6)の厚さは約
2000オングストロームであることが望ましい。更
に、基板(1)の厚さは約0.5〜5mm、疎水性固定
部(2)の厚さは1分子層〜約2.0μmであることが
望ましい。疎水性固定部(2)と疎水性コーティング
(3)は、疎水性相互作用により結合しており、上述し
た無作為液中自己組織化法によって、パターン化基板に
生体材料固定化担体が結合したバイオチップを作製する
ことができる。無作為液中自己組織化法の原理より、微
小担体(4)の大きさと疎水性固定部(2)の大きさは
ほぼ等しくなるように作製する必要がある。
【0009】上記の生体材料固定化担体は、以下の様な
過程で作製することができる。 (1)親水性のカバーガラスの片面の表層を、疎水性コ
ーティングした後に焼成を行う。 (2)前記カバーガラスの疎水性コーティングを行わな
かった面にクロムを蒸着してクロム蒸着層を形成する。 (3)前記クロム蒸着層の上に金を蒸着して金蒸着層を
形成する。 (4)前記金蒸着層をジチオジプロピオン酸で処理し、
更にエチル−ジメチルアミノプロピルカルボジイミドで
処理を行った後にアビジンを作用させることにより、ア
ビジンで修飾した金の層を形成する。 (5)前記アビジンで修飾した金の層にビオチン化した
生体成分を結合させる。 (6)カッターで切断する。
【0010】ここで、疎水性相互作用を与えることがで
きる限り、疎水性コーティングを行う目的で種々の材料
を使用する事が出来る。その際に、環状パーフルオロポ
リマーを用いることが好ましく、CYTOPを用いるこ
とが特に好ましい。CYTOPの化学構造式を化1に、
物理的特性を表1に、それぞれ示す。CYTOPにより
疎水性コーティングを行った後に、コーティングを行わ
なかった面にクロムと金で蒸着を行う(図2)。クロム
で蒸着を行うのは、金はガラスに対する付着性が良くな
いために、金の前にクロムの蒸着層を作製する必要があ
るからである。
【0011】
【化1】
【0012】
【表1】
【0013】金をジチオジプロピオン酸で処理を行うこ
とにより、チオール基を介してジチオジプロピオン酸は
金と結合する。その後、ジチオジプロピオン酸とエチル
−ジメチルアミノプロピルカルボジイミドを反応させる
ことにより、イミドを結合させる。更にアビジンと反応
させるとイミドが遊離して、ペプチド結合を介してアビ
ジンが金蒸着層の上に結合する。このような反応を用い
て固定化したアビジンにビオチン化DNAを作用させる
と、ビオチン−アビジン親和性相互作用により、微小担
体上にDNAが固定化される(図3)。この様にして固
定化したDNAにFITCでラベル化したDNAが結合
すると、FITCの蛍光により検出することが可能であ
る。また、同様の反応を用いて、DNAのみならず、ポ
リペプチドを固定化することも可能である。
【0014】また、上記のパターン化基板は、以下の様
な過程で作製することができる。 (1)親水性のスライドガラスの片面の表層を、疎水性
コーティングした後に焼成を行う。 (2)前記カバーガラスの疎水性コーティングを行った
面にクロムを蒸着してクロム蒸着層を形成する。 (3)前記クロム蒸着層の上に金を蒸着して金蒸着層を
形成する。 (4)前記金蒸着層にフォトレジストを作用させ、露光
した後に現像を行う。 (5)前記金蒸着層のエッチングを行った後に、フォト
レジストを除去する。 (6)前記クロム蒸着層のエッチングを行った後に、前
記疎水性コーティングのエッチングを行う。 (7)フォトレジストを除去して、残っている金及びク
ロムを再びエッチングして除去する。
【0015】ここで、疎水性相互作用を与えることがで
きる限り、疎水性コーティングを行う目的で種々の材料
を使用する事が出来る。その際に、環状パーフルオロポ
リマーを用いることが好ましく、商品名CYTOPを用
いることが特に好ましい。その様にして疎水性コーティ
ングを行った面に、クロムと金で蒸着を行う。この金蒸
着層にフォトレジストを作用させ、露光した後に現像を
行うことにより、パターン化基板の形状をプリントした
フォトレジスト層を作製する。そのために、金蒸着層の
エッチングを行った際に、感光していない部分のみが除
去され、パターン化基板の形状のプリントの通りに溝が
形成される。フォトレジストを除去した後に、クロム蒸
着層及び疎水性コーティングのエッチングを行って、疎
水性コーティングを有さない部分をパターン化基板の溝
の形状に作製する。それから、残った金蒸着層とクロム
蒸着層を除去すると、疎水性コーティングされたサイト
と疎水性コーティングされていない溝だけが残り、バタ
ーン化基板が作製される(図4)。
【0016】更に本発明は、上記の方法により作製した
生体材料固定化担体とパターン化基板とを、無作為液中
自己組織化法を用いて、疎水性相互作用によって固定化
することにより、バイオチップを作製する方法である。
ここで、無作為液中自己組織化法とは、上述したよう
に、回転しているスピンコーター中において、液体に懸
濁させた生体材料固定化担体を、パターン化基板上に結
合させる方法である(図1)。パターン化基板上に作製
した疎水性被覆のパターンの大きさは、生体材料固定化
担体とほぼ同一であるので、1つの基板パターンには1
つの微小担体しか結合しない、という特質を有する。本
方法において、あるパターンにどの様な微小担体が結合
するかは制御されず、無作為である。
【0017】更に本発明において、生体材料固定化担体
に何らかの識別子を持たせることもまた可能である。こ
こで「識別子」とは、前記担体を区別することを可能と
するために前記担体上に記載された指標を、包括的に意
味するものである。本発明において採用している無作為
液中自己組織化法においては、生体材料を固定化した担
体が基板上のどこに配置されるかを制御することはでき
ない。そのために、生体材料を固定化した担体に識別子
を付与して、各々の生体材料固定化担体が配置された位
置を識別することを可能することにより、本発明の有用
性は更に高くなる。よって本発明者らは、何らかの識別
子を生体材料固定化担体に付与することにより、その識
別子を指標として配置操作後に何がどこに配置されたか
を確認するための手段もまた開発した。
【0018】下記の実施例においては、フォトリソグラ
フィーの手法によって生体材料固定化担体が有している
金薄膜を部分的に取り除くことにより、識別子を構成す
るタグの種々のパターンを書き分けて、そのパターンの
配列の組み合わせを読み取ることにより各担体の識別を
行っている。即ち、金蒸着をしたカバーガラス基板上に
フォトリソググラフィーによりタグを書き込んだ後に、
エッチングにより金薄膜を除去し、タグを構成している
パターンの種々の組み合わせを作製することにより、そ
のパターンを識別子として機能させた。より具体的に
は、2x5の格子状の微小タイルから成るタグを用い
て、1つの微小タイルを1ビットとしてタイルの有無の
パターンを二進法の数字に変換することにより、識別の
ための数字を書き込んだ。
【0019】本発明の識別子は、その他の様々な構成を
とることが可能である。実施例においては格子状の微小
タイルのパターンの配列を識別子として採用したが、例
えばバーコードの様に並列に配置している複数の線の組
み合わせを用いて、それらの線の太さにより識別させる
こともまた可能であると思われる。生体材料固定化担体
上に記載することが可能であって、個々の担体を識別す
る機能することを可能とする「識別子」としての機能を
有する限り、どの様な手段によりパターンを書き分ける
方法を用いても、本発明の範囲内であると解されるべき
である。
【0020】リソグラフィー等の手段により記載される
2次元的形状の特徴により識別する手段は、全て本発明
の範囲内であると理解されるべきである。即ち本発明の
識別子は、太さ、長さ、大きさの違う図形、またはその
組み合わせ、文字、文字に類する形状等により記載され
ることが可能である。更に2次元的形状のみならず、エ
ッチング深さの様な3次元的形状の他、担体上への堆積
や固定化あるいは担体の表面改善によって得られる薄膜
の形状、厚み、材質、およびそれらの組み合わせに伴う
特徴によって識別する「識別子」によっても本発明の目
的を達することが可能であり、本発明の範囲内であると
解されるべきである。
【0021】また、識別子としての機能を有するパター
ンを生体材料固定化担体に記載する手段は、実施例にお
いて述べているフォトリソグラフィーによるエッチッン
グに限定されるものではない。パターンを記載する手段
のその他の例として、紫外線リソグラフィー、X線リソ
グラフィー、電子ビームリソグラフィー、レーザーパタ
ーニング、集束イオンビームパターニング、スクリーン
印刷、スタンプなどの手段考えられる。しかしそれらに
限定されるものではなく、担体に識別子を記載すること
ができる限り、どの様な手段を用いても本発明の範囲内
であると解されるべきである。
【0022】
【実施例】(実施例1) (試薬)CYTOP(cyclized perflu
oro polymer(CPFP)の商品名、型番:
CTL−809M)またCYTOP溶液剤の(C4
9)N(型番:CT−Solv180)は旭化成のも
のを用いた。3,3’−ジチオジプロピオン酸は、PF
ALTZ&BAUER社のものを用いた。基板超音波洗
浄用のアセトン、NHS(N−ヒドロキシコハク酸イミ
ド)、アビジン(分子量67000、卵白由来)、トリ
ス、塩化ナトリウム、エタノール、ヨウ化カリウム、水
酸化ナトリウム、フェリシアン化カリウムは和光純薬工
業のものを用いた。EDC(塩酸1−エチル−3−(3
−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)は東京化
成工業のものを用いた。
【0023】生体材料としては、5’末端に各々ビオチ
ン及びFITCを修飾した0.2μMスケールの二重螺
旋DNAをニッシンボーに委託合成した。塩基配列は各
々、5’−GAAAAAAAATGACGTCATCC
G−3’(CRE(21bp))、5’−AGGAAT
TCCCAAGCTTGGCA−3’(random
(20bp))、そして5’−GAAAAAAAATG
ACGTCATCCG−AGGAATTCCCAAGC
TTGGCA−3’(CRE−random(41b
p))である。ポジ型レジストのOFPR−800とそ
の専用現像液のNMD−3;2.38(産業用)は東京
応化工業のものを用いた。ヨウ素は岸田化学のものを用
いた。基板洗浄用溶媒には、電子工業用(関東化学)ア
セトンを、その他の試薬には化学・生化学用特級または
その相当品を用いた。水はクリーンルームプロセスでは
超純水(18.0MΩ・cm)を、その他の場合は蒸留
水(49.5×10-6Scm,pH4.86)を用い
た。
【0024】(カバーガラスの微小加工およびパターン
化した基板の作製)カバーガラスの微小加工の微細加工
についての模式図を、図2に示した。まず、カバーガラ
ス基板(0.10〜0.12mm、18mm×18m
m、西ドイツ)の表面は超音波洗浄器(W−222、H
onda)を用いて純水、アセトン、純水の順にそれぞ
れ30分間洗浄した。そして、カバーガラスの片面はス
ピンコーター(1H−D3、MIKASA)により50
0rpmで10秒、1000〜4000rpmで20秒
にして、(C49 )Nの溶剤液で0.45〜9重量%
の濃度に希釈させたCYTOPをピペットで100μL
滴下させることによって0.5〜2.0μmの厚さでコ
ーティングして疎水性にした。
【0025】次に、115℃の恒温オーブン(DS6
4、ヤマト科学)の中に入れて4時間ハードベーキング
した。そして、その反対面上にタングステンボートを用
いる抵抗加熱型の小型真空蒸着装置(SVC−700T
URBO−TM、サンユウ)を用いてクロムを厚さ約2
00オングストローム蒸着し、その後真空を破ることな
く続けて金(純度99.99%、フルヤ金属)を厚さ約
2000オングストローム蒸着した。膜厚は水晶振動子
(6MHz PKG10、LEYBOLD INFIC
ON)を用いる膜厚モニター(TM−200R、Max
tek)で測定し、蒸着速度をクロムの場合は0.5〜
1.0オングストローム/sで、金の場合は5.0〜1
0.0オングストローム/sの範囲になる様に調節し
た。真空度はイオン真空ゲージ(ULVAC GI−T
L3)で測り、10-6torrから開始した。蒸着後、
アニーリング等の処理は施さなかった。
【0026】金蒸着のカバーガラス基板上に、図3のよ
うな過程でチオール誘導体およびアビジンを介して5’
末端にビオチン修飾したDNAを固定した。まず、1m
M濃度の3、3’−ジチオジプロピオン酸水溶液3mL
の中に金蒸着のカバーガラスを室温で20分間浸した。
水溶液に100mg/mLの濃度にしたNHSとEDC
を混合液としてカルボキシル酸と30分反応させた後乾
燥させた。アビジンを緩衝液(pH7.9、10mMト
リス−塩酸、0.2M塩化ナトリウム)で0.2mg/
mLとなるように調製した1mLの溶液に1時間浸して
置いた。1M濃度のエタノールアミン水溶液1mLにカ
バーガラスを30分間浸して未反応のカルボキシル基を
不活性化した。アビジン修飾した金を緩衝液(pH7.
9、10mMトリス−塩酸、0.2M塩化ナトリウム)
にビオチン化DNAを1μMになるようにした1mLの
溶液に25℃で30分間浸して置いた。ここで、ビオチ
ン化DNA鎖はアビジン分子の4つの結合サイトの1つ
と結合する。ビオチン化DNAの固定量はDNA溶液に
浸す時間により制御できた。
【0027】そして、図2の4番目に示すようにビオチ
ン化DNA修飾したカバーガラスを粘着性のダイシング
テープ(Adwill D−210、LINTEC)に
付けた後ダイシングンマシン(A−WD−10A、東京
精密)を用いてダイヤモンドカッタ(52D−0.1T
−40H、アサヒダイヤモンド)で0.5mm/sの速
度で純水を注ぎかけながら100〜400μm角の大き
さに切り分けて数多くのビオチン化DNAを修飾した微
小担体が作製できた。その後、5分間ダイシングテープ
にUV照射して粘着性をUV照射前19600mN/2
5mm(カタログ値)からUV照射後250mN/25
mmに落として担体が取れ易くした。この工程によりチ
オール誘導体およびアビジンを介して5’末端にビオチ
ン修飾したDNAを固定した1000〜8000個位の
微小担体を作製することができた。
【0028】パターン化した基板の作製についての模式
図を図4に示した。まず、マイクロスライドガラス基板
(1.2〜1.5mm、76mm×26mm、S−12
25、マツナミガラス)をダイヤモンドカッターで3等
分した後その表面は超音波洗浄器を用いて純水、アセト
ン、純水の順にそれぞれ30分間洗浄した。そして、ス
ライドガラスの片面にスピンコーターにより500rp
mで10秒、1000〜4000rpmで20秒間、
(C49 )Nの溶剤液で9重量%の濃度に希釈させた
CYTOPをピペットで100μL滴下することによっ
て、0.5〜2.0μmの厚さで疎水性にコーティング
した。次に115℃の恒温オーブン中に入れて4時間ハ
ードベーキングした。この上にクロムと金を各々約20
0オングストロームと2000オングストロームに蒸着
した。
【0029】金を蒸着したスライドガラス基板に対し、
クラス10のクリーンルームでポジ型のフォトレジスト
のOFPR−800を7〜8滴落としてスピンコート
(1H−DXII、ミカサ)し、(1回目:500rp
m/10秒、スロープ:10秒、2回目:4000rp
m/20秒、スロープ:5秒)、プリベーク(80℃、
30分)(DK300、ヤマトサイエンティフィック)
の後、マスクアライナー(MJB3 UV400、Ka
rl Suss)を用いて8秒間露光し、現像液のNM
D−3に30秒間浸して現像した後、超純水で2度洗い
流した後窒素ガスを吹かして乾燥させた。
【0030】ポストベーク(80℃、30分)の後、金
のエッチング液(ヨウ化カリウム40g、ヨウ素10
g、水400mL)で金のエッチングを行い、超純水で
2度洗い流した後窒素ガスを吹かして乾燥させた。つい
で、アセトン洗浄でフォトレジストを除去した後2度洗
い流した後窒素ガスを吹かして乾燥させた。続けて、ク
ロムのエッチング液(水酸化ナトリウム40g、フェリ
シアン化カリウム100g、水400mL)でクロムの
エッチングを行い、超純水で2度洗い流した後窒素ガス
を吹かして乾燥させた。また、2×10-5Torr以下
で酸素プラズマ(ISCCM、500V、イオン化密度
1.0mA/cm2 以下、RF power 100
W)(EIS−200ER、ELIONIX)を2分間
照射することによりCYTOPをエッチングさせた。再
び、残っているクロムと金を全部エッチングさせた。こ
の工程によりスライドガラスの片面に親水性および疎水
性部分に分けて数多くのサイトを作製することができ
た。
【0031】(パターン化した基板上への担体の固定)
パターン化した基板上に微小加工した担体を疎水性相互
作用による無作為液中自己組織化法で付けるためスピン
コーターの回転部に図1の様にシャーレを載せ、その中
央部にパターン化した基板を固定してから純水を貯め
た。ここに150−400個の担体を入れると水上に浮
くので300rpmで6分間回転させると担体が重力、
遠心力および疎水性相互作用による担体群の無作為液中
自己組織化によりパターン化した基板に付いた。
【0032】図1は、無作為液中自己組織化法を用いた
疎水性相互作用によるパターン化した基板への担体の固
定化により作製した、DNAチップアレイの模式図を現
わす。パターン化した基板の疎水性部分にビオチン化D
NA修飾した担体の疎水性部分が疎水性相互作用により
数多くの所で付いてDNAチップアレイになる。
【0033】一方、懸濁液に化学、生化学的に性質が異
なる生体材料を固定化した担体の混合物を用いれば、最
終的に他種類の生体材料を密に固定化したDNAチップ
アレイを得ることができる。作製したDNAチップアレ
イに図3の最後の部分のようにビオチン化DNA修飾し
た担体に緩衝液(pH7.9、10mMトリス−塩酸、
0.2M塩化ナトリウム)にFITC修飾したDNAを
適当な濃度にして1mLの溶液に60℃で30分間浸し
て置いて二重螺旋を結合させた。二重螺旋DNAが結合
したかは暗室でFITC用蛍光フィルター付きの蛍光顕
微鏡(励起光450〜490nm、吸収光515〜56
5nm、分光510nm)(LEICAMZ FLII
I、Leica)で励起させると蛍光が確認でき、その
明るさによっても濃度がわかる。
【0034】(疎水性相互作用力の測定)パターン化し
た基板のCYTOP面上に微細加工した担体が疎水性相
互作用により、どの位の力で固定化されているかを調べ
るため図5のようにスピンコーターの回転部にシャーレ
を載せ、その中央部にパターン化した基板を動かないよ
うに固定化してから純水を貯めた。ここにCYTOPの
溶剤液の(C49 )Nに0.45〜9.0重量%の濃
度に希釈したCYTOPを1000〜4000rpmの
速度で0.5〜2.0μmの厚さにスピンコーティング
した150〜400個の担体を入れて300rpmで6
分間回転させると担体が重力、遠心力および疎水性相互
作用による担体群の無作為液中自己組織化によりパター
ン化した基板のCYTOP面に付いた。そして、図1の
DNAチップアレイの拡大図の様に、担体の金の面では
なくCYTOP面がパターン化した基板のCYTOP面
に接する担体数をカウンターで数えて疎水性相互作用力
が測られた。ついで、100〜900rpmの間で6分
間スピンコーターを回転させて遠心力および疎水性相互
作用力によりパターン化した基板上の担体がどれ程付い
ているか、図1の上記の拡大図のようにパターン化した
基板のCYTOP面から剥離した担体の数を数えて測っ
た。疎水性相互作用の結合力の測定を示した図を、図5
に示す。
【0035】(接触角の測定)動的接触角(DCA、d
ynamic contact angle)の測定に
より高分子固体が空気中から水中へあるいは水中から空
気中へ移行する時の表面における分子鎖と分子鎖の凝集
状態の再編成挙動が評価される。そこで、ここでは「動
的Wilhelmy平板法」の原理によりCYTOP基
板の疎水性程度を測るため動的接触角(DCA−10
0、オリエンテック)を測定した。まず、カバーガラス
基板の両面上に0.45〜9.0重量%濃度のCYTO
Pを1000〜4000rpmの濃度で0.5〜2.0
μmの厚さにスピンコーティングさせた。次に115℃
の恒温オーブンの中に入れて4時間ハードベーキングし
た。そして、CYTOPの動的接触角を測定した。動的
接触角の測定は25℃で純水の液体中にカバーガラスを
20.0mm/分の速度に保ちながら浸潰−引き上げを
3回行ってその平均値を取った。この時の浸潰−引き上
げに要する力を高感度荷重検出器を用いて動的接触角を
測定した。
【0036】(疎水性相互作用による担体の固定)無作
為液中自己組織化法を用いて疎水性相互作用によりパタ
ーン化した基板上に微小加工した担体を付けるためにス
ピンコーター装置を使い、その回転部にシャーレを載
せ、その中央部にパターン化した基板を固定してから純
水を貯めた。ここに150〜400個の担体を入れると
水面に担体が群れになって集まって浮くので、300r
pmで6分間回転させると重心、遠心力および疎水性相
互作用により担体群パターン化した基板上部分に付い
た。図6に、パターン化基板上に担体が結合している写
真を示す。図6において疎水性相互作用により、基板の
疎水性パターンの部分に、単体が固定されていることが
見られる。また、図6の(a)に担体を正面から見た写
真を、(b)に担体を側面から見た写真を、(c)に担
体を斜めから見た写真を、それぞれ示す。
【0037】また、懸濁液に化学、生化学的に性質が異
なる生体材料を固定化した担体の混合物を用いれば、多
種類の生体材料を密に固定化した多項目測定及び高集積
アレイ型DNAチップアレイを得ることができる。ま
ず、異なる生体材料を基板に固定させた後、担体を作製
する。ついで、担体の混合物を用いて無作為液中自己組
織化法を用いた疎水性相互作用によりパターン化した基
板上に固定して、最終的に新しい多項目測定及び高集積
DNA化チップアレイを作製することができる。
【0038】図7に、ビオチン化したCRE、Rand
om、CRE−Randomをそれそれ固定化した担体
上に、それらと相補的なFITC修飾したDNAを結合
させた時の蛍光を検出した結果を示す。上段はCREを
固定化した担体に、3種類のFITC修飾したDNAを
添加した結果であり、CREに相補的なDNAを結合さ
せた左側の写真のみに蛍光が検出された。中段はRan
domを固定化した担体に、3種類のFITC修飾した
DNAを添加した結果であり、Randomに相補的な
DNAを結合させた、真ん中の写真のみに蛍光が検出さ
れた。下段はCRE−Randomを固定化した担体
に、3種類のFITC修飾したDNAを添加した結果で
あり、CRE−Randomに相補的なDNAを結合さ
せた右側の写真のみに蛍光が検出された。これにより、
本発明の方法により作製されたDNAが固定化された担
体において、固定化されたDNAに特異的な相補的DN
Aが結合することが示された。
【0039】(疎水性相互作用力の測定)無作為液中自
己組織化を用いた疎水性相互作用により図1のようにパ
ターン化した基板に担体の金の面ではなくCYTOP面
が接する確率とパターン化した基板に担体がどれ程の力
で固定されているか図5のようなスピンコーター装置を
用いて遠心力と流速によりパターン化した基板から担体
が剥離する割合を調べた。結果を図8に示す。まず、
9.0重量%濃度でCYTOPをコーティングしたパタ
ーン化した基板と担体に対してパターン化した基板に担
体の金の面ではなくCYTOP面が接する確率は80%
位であったが、カバーガラスにCYTOPをコーティン
グしないと40%位まで下がり、パターン化した基板と
担体共に疎水性に処理するより接する確率はずっと劣
る。また、パターン化した基板と担体共に親水性に処理
すると担体の親水性部分が接する確率は70%位で、疎
水性に処理した基板より劣った。
【0040】次に、疎水性相互作用によりパターン化し
た基板に担体がどれ程の力で固定化されているかを、C
YTOPの濃度を0.45〜9.0重量%に変えてコー
ティングしたパターン化した基板と150〜400個の
担体に対して調べて、その結果を図9に示した。9.0
重量%濃度のCYTOPをコーティングしたパターン化
した基板と担体に対しては100〜900rpmの間で
スピンコーターの遠心力と流速によってもパターン化し
た基板上に担体が95%以上まで付いていることが判
る。また、パターン化した基板と担体にCYTOPの濃
度を薄めるか違うように(各々0.45と9.0 重量
%)してコーティングすると担体のパターン化した基板
への固定力が80〜90%位まで低くなったが、同じ濃
度と厚さによっては結合力の差はほぼなかった。一方、
CYTOPをコーティングしなかったカバーガラス(親
水性)に対しては疎水性相互結合力は30%以下まで下
がってしまい、疎水性相互作用力が劣ることが判る。そ
して、パターン化した基板と担体共に親水性に処理する
と親水性相互作用力は50%位まで下がってしまい、疎
水性相互作用力より劣ることが判った。以上の結果によ
り本研究ではパターン化した基板と担体に9.0重量%
濃度のCYTOPを4000rpmでコーティングに利
用した。
【0041】(接触角の測定)CYTOPのコーティン
グ濃度により担体とパターン化した基板の疎水性相互作
用力が違うので、カバーガラス両面にCYTOPをコー
ティングしてCYTOPの動的接触角を測ってその結果
を図10に示した。カバーガラスのみの動的接触角は7
4.2°であった。また、0.45〜9.0重量%のC
YTOPの濃度別の動的接触角は84.3〜88.7°
で、濃度が高まると強くなった。一方、図10から判る
ように9.0重量%濃度のCYTOPを1000〜40
00rpmの速度でスピンコーティングすると動的接触
角は88.3〜88.9°で、その差はあまりなかっ
た。
【0042】この結果は担体とパターン化した基板が疎
水性相互作用により固定されており、またCYTOPの
濃度が高まると図10のようにパターン化した基板と担
体の疎水性相互作用が強くなることを示唆する。また、
CYTOPの濃度が低くなると付く力が弱まることが判
る。
【0043】本発明により、厚膜用CYTOPを用いて
作製したパターン化疎水性膜を有する基板に、DNAを
固定化してダイシングにより得た微小担体を液中で無作
為液中自己組織化法を用いた疎水性相互作用により、任
意の位置に配置することができた。このDNA反応を蛍
光によって確認することができた。また、液中でのパタ
ーン化疎水性膜と担体との疎水性相互作用力は他の作用
力より優れていて、多項目測定用の高集積型DNAチッ
プアレイとして応用可能な技術であることが示された。
【0044】実施例1においては、新しい生体材料固定
化方法は配置直後にどの材料がどこに配置されたかの情
報が失われている。生体材料そのものの応答を用いてキ
ャリブレーション等により最終的な位置が確認できるほ
か、微小担体に対する配置前に別のマーキング操作を施
しておくか色々の形を取っておけば、最終的な位置を知
ることが可能となる。一方、より多くの担体を配置、固
定化するために安定なパターン化疎水性膜の形状を作製
していく必要がある。そこで、下記の実施例2におい
て、個々の微小担体の識別を可能とするタグを付与した
バイオチップの作製を試みた。更に、実施例2において
は微小担体との壁を基板上に作製し、配置時の安定性の
向上をはかった。
【0045】(実施例2) (微小担体の作製)微小担体を作製するカバーガラス
(0.04〜0.06mm,30mmx30mm)を、
超音波洗浄器を用いて純水、アセトン、純水の順にそれ
ぞれ30分間洗浄した。カバーガラスの一方をCYTO
P(9.0重量%、0.5μm)でスピンコートした。
カバーガラスを115℃で4時間ベーキングした。クロ
ム層(0.5〜1.0オングストローム/s,200オ
ングストローム)と金層(5.0〜10.0オングスト
ローム/s,2000オングストローム)を、もう一方
の面に蒸着した。フォトリソグラフィーを用いてネガ型
のフォトレジスト(OMR83)を作用させて微粒子に
タグを与え、ホットプレート上で100℃で1分間ベー
キングした。フォトマスクを通じて、UV光(MJB3
UV400、カールザーツ)をレジスト膜に4秒間照
射した。OMR現像液で現像し、洗浄して窒素ガスで乾
燥させた。100℃で1分間ベーキングした後、金のエ
ッチング液(KI:I2 :H2 O=4:1:40)とク
ロムのエッチング液(NaOH:K 3 [Fe(CN)
6 ]:H2 O=2:5:20)の中で30秒間エッチン
グを行った。剥離したOMR層のエッチングを行い、金
表面を酸素プラズマ(67Pa,100SCCM,20
0W)に5分間暴露して親水性とした。切断するため
に、カバーガラスを粘着テープに固定した。ダイシング
マシーンを用いて、カバーガラスを100〜400μm
の微小担体に切断した。UV光を粘着テープに5分間照
射して、微粒子を剥離した。この過程によりタグを付し
た微小担体が得られた。
【0046】図11(a)は、タグにおける各ビットの
数字であり、リソグラフィーにより微小担体にそのタグ
を書き込んだ。1つの微小タイルが1ビットを意味する
とした場合には、この8ビットにより0〜255を表す
ことが可能である。SPとEPはビットの出発点と終末
点を表し、微小担体に常に書かれている。図11(b)
は図11(a)に基づいたタグであり、2進法の010
110001(10進法の数字でいうと88)を示して
いる。また、図11(c)は微小担体のSEM写真であ
り、図11(b)の”010110001”という数字
がリソグラフィーによって微小担体上に書かれており、
ダイシングマシーンにより分割した。微小担体の大きさ
は300x300μm2 である。ダイシングマシーンに
より種々の大きさの微小担体が得られた。図11(c)
において、10x10μm2 /ビットであるタグを明確
にみることができた。この過程により、微小担体上に他
のタグを書くこともできる。
【0047】(DNAの固定化)実施例1と同様の方法
で、金蒸着を行ったカバーガラス基板上にビオチン修飾
したDNAを固定した。1mM濃度の3、3’−ジチオ
ジプロピオン酸水溶液3mLの中に、金蒸着したカバー
ガラスを室温で20分間浸した。金の上のカルボキシル
酸をEDCの存在下でNHSと反応させた後に乾燥し
た。活性化したカルボキシル基を有する金を、1mLの
アビジン(100μg/mL)の緩衝液(pH7.9、
10mMトリス−塩酸、0.2M塩化ナトリウム)中に
1時間浸した。何回か水溶液で洗浄しても、金からアビ
ジンは除去されなかった。アビジンが結合した金を、エ
タノールアミン(1M)の水溶液(1mL)に30分間
浸して、カルボキシル基を不活化してβ−ヒドロキシエ
チルアミドにした。コントロール実験として、アビジン
の緩衝液(1mL中10μg)の中にそのままの金を浸
したところ、アビジンの吸着はほとんど観察されなかっ
た。アビジンの濃度を1mL中において30〜200μ
gまで増加したところ、非特異的な吸着が観察された。
アビジンが結合した金を、ビオチン化したDNAの緩衝
溶液(20〜21bp、1μM)1mL中に25℃で3
0分間浸した。固定化量をコントロールするために金を
取り出した。アビジン分子の4つの結合サイトの1つと
結合するとして、ビオチン化したDNA鎖を計算した。
ビオチン化DNAの固定量はDNA溶液に浸す時間によ
り制御できた。
【0048】(パターン化した基板の作製)スライドガ
ラスを、超音波洗浄器を用いて純水、アセトン、純水の
順にそれぞれ30分間洗浄した。そして、スライドガラ
スの片面をCYTOPによりスピンコートして、115
℃で4時間ベーキングした。クロム/金層をCYTOP
上に蒸着し、ホットプレート上で200℃で15分間ベ
ーキングしてこの表面を乾燥させた。ネガ型フォトレジ
スト(XP SU−8 50)を、スピンコーターによ
りスライドガラス上に滴下し、ホットプレート上で10
0℃で30分間ベーキングした。フォトマスクを通じて
スライドガラスをUV光に20秒間暴露した。ホットプ
レート上において100℃で30分間ベーキングし、自
然に冷却した。SU−8現像液中で30分間現像し、現
像液で洗浄し、窒素ガスで乾燥した。SU−8 50の
表面を酸素プラズマに5分間暴露し、親水性とした。金
とクロムの層を30秒間エッチングし、洗浄して窒素ガ
スで乾燥した。パターン化した基板は、25〜30μm
の厚さの壁を有する格子縞模様であった。大きさは、全
ての側において100x100〜500x500μm2
である。パターン化した基板はそれぞれ、親水性と疎水
性の部位に分けられた。103 〜104 /cm2 の親水
性及び疎水性部位が得られた。
【0049】図12は、リソグラフィーと酸素プラズマ
プロセッシングにより作製された、パターン化基板を示
す。星印で示した範囲は親水性の部分を、残りは疎水性
の部分を示す。このパターン化基板は100x100μ
2 (10000サイト/cm2 )であった。高さが2
5〜30μmの壁を全ての側面に規則的に作製したため
に、配列した後の微小担体の安定性は高いであろうと予
測される。また、500x500μm2 のパターン化基
板を作製することも可能であった。図12(a)は作製
された壁の拡大図であり、親水性部分と壁との間のエッ
チングが巧みであることが示されている。壁を明確に見
ることができ、またフォトリソグラフィーを用いて、種
々の大きさの疎水性部位を得ることができる。
【0050】(担体のパターン化した基板上への配置)
種々の固定化DNAとタグの両方を有する約5000個
の担体を含む懸濁液(エタノール90%+蒸留水10
%)の中に、パターン化した基板を入れた。重力と疎水
性相互作用により、無作為液中自己組織化を用いて微小
担体を基盤に付着させ、パターン化基板の疎水性部位の
各々に無作為に配列した。この過程により、集約型のD
NAチップマイクロアレイを組み立てることができた。
【0051】図13は、無作為液中自己組織化を用い
て、疎水性相互作用によりタグを有する担体をパターン
化基板上に配列させた、集積型DNAチップマイクロア
レイのSEM写真を示す。星型と四角型の各部位はそれ
ぞれ、親水性と疎水性の部位を示す。微小担体がパター
ン化基板上の疎水性部位に配列する確立は約75〜85
%であった。図13において担体の厚さは約50μmで
あり、周囲に壁(25〜30μm)があるために、担体
は強固に三次元的に配列することができる。各担体をタ
グによって区別することができるために、多くの種類の
DNAが担体に固定化されたときに各DNAを区別する
ことが可能となる。タグの例として、2進法の”010
11000”というタグや”01100011”という
タグが挙げられ、これらは10進法の88という数字と
99という数字を、それぞれ示している。
【0052】(ハイブリダイゼーション)固定化したD
NAプローブ(ビオチン化したDNA)が結合した金
を、ハイブリダイゼーション緩衝液に入れて、次いでF
ITC修飾した標的cDNA(0.1pM〜1μM,5
μL)と反応させることによりハイブリダイゼーション
の実験を行った。ハイブリダイゼーションは蛍光強度の
変化により確認した。非相補的なDNA結合(1μM,
5μL)もまた評価した。蛍光顕微鏡(励起光450〜
490nm、吸収光515〜565nm)(LEICA
MZ FLIII、Leica)により暗室で蛍光を
確認し、光度によりDNAハイブリダイゼーションの検
討を行った。
【0053】図14は、DNAチップマイクロアレイに
おける、FITC修飾された標的cDNAの濃度(0.
1pMから1μM)に依存した蛍光強度の変化を示す。
図14(a)において、10-13 Mから10-6Mの範囲
内の濃度でAとBのプライマリーDNAがそれらのcD
NAとハイブリダイズした時、濃度増加により蛍光強度
がほとんど直線的に増加するという関係が観察された。
蛍光強度はcDNAの濃度に依存していた。しかし図1
4(b)は、プライマリーDNAのcDNAではないサ
ンプルと反応させた結果である。FITC標識された標
的cDNAがプライマリーDNAとハイブリダイズしな
かったために、この場合には蛍光は見られなかった。こ
れらの結果は、このDNAチップアレイを用いてDNA
を認識することが可能であることを意味している。
【0054】図15は、DNAチップマイクロアレイに
おける、種々の標的cDNAがハイブリダイズした後の
蛍光変化を示す。各プライマリーDNAを担体に固定化
した後に各担体を懸濁液中で混合してチップパターン上
に配列させた。図15(a)はDNAチップマイクロア
レイを示しており、プライマリーDNAは標的cDNA
とハイブリダイズしていないために蛍光は検出されな
い。FITC標識された標的cDNAを順次投入した。
図15(b)はA’のcDNAを投入したときの結果で
あり、A’のcDNAとハイブリダイズした時だけに丸
型の点線内に蛍光が見られた。その上に図15(c)に
おいてB’のcDNAを、更に図15(d)において
A’+B’のcDNAを投入した時に、ハイブリダイズ
することによって丸型の点線内に蛍光が見られた。これ
らの結果は、この方法がDNAチップマイクロアレイに
適用できることを示している。
【0055】
【発明の効果】本発明により、生体材料を固定化した微
小担体と担体を固定化したパターン化基板を、無作為液
中自己組織化法を用いて疎水性相互作用により固定化す
ることを特徴とする、新規なバイオチップの作製方法が
与えられた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明のバイオチップアレイの構造
を示した図である。
【図2】 図2は、微小担体の作製方法の概要を示す図
である。
【図3】 図3は、微小担体にDNAを結合させる過程
を示す図である。
【図4】 図4は、パターン化基板の作製工程の概要を
示す図である。
【図5】 図5は、スピンコーターの遠心力を用いて、
担体群の疎水性相互作用を測定する装置を示す図であ
る。
【図6】 図6は、疎水性相互作用により、基板の疎水
性パターンの部分に固定された担体を示す写真である。
【図7】 図7は、ビオチン化DNAを固定化した担体
に対する、相補的なFITC化DNAの結合を示した写
真である。
【図8】 図8は、パターン化基板に対して担体のCY
TOP面が接する確率を示す図である。
【図9】 図9は、種々の濃度のCYTOP処理におけ
る、パターン化基板に残った担体の割合を示すグラフで
ある。
【図10】 図10は、種々の濃度のCYTOP処理に
おける、動的接触角を示すグラフである。
【図11】 図11は、本発明において使用したタグの
構成を示す模式図(a,b)及びタグを付した微小担体
の写真(c)である。
【図12】 図12は、親水性部位と疎水性部位を有す
るパターン化基板の写真である。
【図13】 図13は、無作為液中自己組織化を用いて
タグを有する担体をパターン化基板上に配列させたDN
Aチップマイクロアレイの写真である。
【図14】 図14は、標的cDNAの濃度に依存した
蛍光強度の変化を示す図である。
【図15】 図15は、種々の標的cDNAがハイブリ
ダイズした後の蛍光変化を示す図である。
【符号の説明】
1 基板、2 固定部、3 疎水性コーティング、4
微小担体、5 クロムコーティング、6 金コーティン
グ、7 生体材料、8 親水性部分、9 疎水性部分
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI // G01N 33/53 G01N 33/53 M C12N 15/00 F (56)参考文献 特開 平10−185923(JP,A) 特開2002−98697(JP,A) 特開2000−249706(JP,A) 特表2001−501967(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 37/00 102 C12M 1/00 C12N 15/09 G01N 33/566 G01N 33/53

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 バイオチップであり、当該バイオチップ
    はパターン化基板及び生体材料固定化担体とを備え、当
    該パターン化基板は基板と当該基板の片面に配列した複
    数の疎水性固定部とを備え、当該基板の疎水性固定部の
    間は親水性であり、当該生体材料固定化担体は微小担
    体、当該微小担体の片面の表層に形成した疎水性コーテ
    ィング及び当該微小担体の他方の片面に固定化した生体
    成分又は生体成分類似物質を備え、当該疎水性固定部と
    当該生体材料固定化担体は疎水性相互作用により結合し
    ていることを特徴とする、バイオチップ。
  2. 【請求項2】 前記生体成分又は生体成分類似物質が核
    酸、蛋白質、脂質、生体模倣有機分子、細胞及びこれら
    の複合体よりなる群より選択された、請求項1記載のバ
    イオチップ。
  3. 【請求項3】 個々の前記生体材料固定化担体を識別た
    めの識別子を、前記生体材料固定化担体上に有している
    ことを特徴とする、請求項1又は請求項2記載のバイオ
    チップ。
  4. 【請求項4】 前記識別子が、前記生体材料固定化担体
    上に記載された格子状のタグのパターンにより構成され
    ていることを特徴とする、請求項3記載のバイオチッ
    プ。
  5. 【請求項5】 微小担体、当該微小担体の片面の表層に
    形成した微小担体疎水性コーティング及び当該微小担体
    の他方の片面に固定化した生体成分又は生体成分類似物
    質を備える、バイオチップ用の生体材料固定化担体。
  6. 【請求項6】 前記生体成分又は生体成分類似物質が核
    酸又は蛋白質、脂質、生体模倣有機分子、細胞及びこれ
    らの複合体よりなる群より選択された、請求項5記載の
    生体材料固定化担体。
  7. 【請求項7】 識別ための識別子を更に有していること
    を特徴とする、請求項5又は請求項6記載の生体材料固
    定化担体。
  8. 【請求項8】 請求項5ないし請求項7記載のいずれか
    1項記載の生体材料固定化担体と、基板及び当該基板の
    片面に格子状に配列した固定部とを備えるパターン化基
    板とを、無作為液中自己組織化法を用いて、疎水性相互
    作用により固定化することにより、バイオチップを作製
    する方法。
  9. 【請求項9】 前記無作為液中自己組織化法が、前記生
    体材料固定化担体の懸濁液を液体中に滴下して当該液体
    を回転させることにより、前記パターン化基板の前記疎
    水性固定部に前記生体材料固定化担体を配置することよ
    り成る、請求項記載の方法。
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