JP3444306B2 - 二酸化チオ尿素の製造法および同製造法による二酸化チオ尿素を用いた製紙用パルプの漂白方法 - Google Patents

二酸化チオ尿素の製造法および同製造法による二酸化チオ尿素を用いた製紙用パルプの漂白方法

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JP3444306B2 JP22727493A JP22727493A JP3444306B2 JP 3444306 B2 JP3444306 B2 JP 3444306B2 JP 22727493 A JP22727493 A JP 22727493A JP 22727493 A JP22727493 A JP 22727493A JP 3444306 B2 JP3444306 B2 JP 3444306B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は主にオンサイト製造二酸
化チオ尿素(TUDOと略す)による製紙用パルプの漂白
方法に関する。さらに詳しくは、漂白現場でTUDOを
製造し、製造されたTUDO液またはスラリー状TUD
Oをパルプに付与して漂白を行う、またはパルプ上でT
UDOを生成させながら漂白を行う、経済的で且つ効率
的なTUDOの漂白方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】製紙用パルプの漂白は、過酸化物漂白・
塩素系酸化剤漂白・還元剤漂白に大別され、パルプの種
類・使用目的に応じて、それぞれの漂白特質・効果と照
らし合わせながら行われてきている。H22に代表され
る過酸化物漂白は、リグニンを含有するパルプに対し漂
白力があることから機械パルプ・新聞古紙の脱墨漂白に
主に使用されている。塩素系酸化剤による漂白は、リグ
ニンの少ない化学パルプに対し効果がある事から、BK
P多段漂白においてCl2・NaClO・ClO2の各漂
白が、上中質古紙漂白においてNaClO漂白が主に行
われている。たとえば、上中質古紙漂白においては、1
2%NaClO溶液を対パルプ8%程度添加、ミキシン
グすることにより漂白が行われている。
【0003】還元剤漂白は、染料系色素の脱色には優れ
るものの、過酸化物系・塩素系薬品に比し漂白能力に限
界があり、又コストが高いこと等から新聞紙配合用低白
色度機械パルプの漂白に、また高白色度機械パルプのH
22漂白後の後段漂白及び新聞古紙H22脱墨漂白後の
後段漂白に使用されてきている。一般に還元剤として
は、亜二チオン酸系のNa224またはTUDOが使
用される。その中でも、Na224がその漂白能力、
薬品コスト等の観点より主流として使用されてきた。一
方、TUDOはNa224と同じ亜二チオン酸系還元
剤で、Na224と同等の漂白効果を持ちながらも、薬
品コストが高いことより、これまで余り使用されてこな
かった。しかし、最近、ダイオキシンに代表される有機
塩素化合物による排水汚染問題・省エネルギーへの要請
・染料色素に対する脱色効果等の観点より、TUDO漂
白が、上中質古紙脱墨漂白におけるNaClO漂白の代
替として、また、新聞古紙H22脱墨漂白後の後段漂白
におけるNa224漂白の代替として脚光を浴びてき
ている。 まず 上中質古紙の脱墨漂白では、NaCl
O漂白が安価で、且つ染料系色素にも脱色能力が優れる
ことから、従来、概ね下記に代表される工程により実施
されてきた。 [ハ゜ルハ゜-]→[熟成脱墨]→[洗浄]→[ニ-テ゛ィンク゛]→
[NaClO漂白]→[洗浄]→[抄紙工程] しかし、塩素系薬品使用による有機塩素化合物の副生問
題から、その副生回避対策としてNaClOに代わる漂
白法が望まれてきている。NaClO漂白の代替法とし
て、H22漂白・Na224漂白・TUDO漂白等が
検討され、その中で以下の理由よりTUDO漂白がNa
ClO漂白代替として有望視されてきている。
【0004】まず、H22漂白は天然色素に対しては充
分な漂白効果を示すが、上中質古紙中のチラシ・色上質
紙からの染料系色素に対しては、脱色効果が弱くNaC
lO漂白の代替として不充分である。また、Na22
4漂白は本来染料系色素の脱色効果は充分に有するが、
空気中の酸素により簡単に酸化分解を受け易い欠点を持
つため、空気を遮断する特別な漂白装置を必要とする。
現行のNaClO漂白装置では、空気中の酸素の影響を
受け満足な漂白ができず、Na224漂白はNaCl
O漂白の代替として不適当である。すなわち、現行のN
aClO漂白装置は、PC10〜30%と比較的高濃度
パルプ状態での操業漂白となっているので、薬品ミキシ
ング装置から漂白タワーまで、殆ど空気開放系にあり、
この空気(酸素)がNa224の漂白効果を阻害す
る。それに対し、TUDO漂白はNa224漂白と同
様に染料系色素に対し相当の脱色効果を有すると共に、
Na224に比し空気中の酸素との反応が遅いという
性質を持ち、現行NaClO漂白装置によっても、酸化
分解ロスが比較的少なく、適当な使用量によりNaCl
O漂白と同等の漂白白色度を得る事ができる。次に、新
聞古紙H22脱墨漂白後の後段漂白用としては、薬品コ
ストの観点よりNa224漂白が主体であった。従来
のNa224による漂白は、PC3〜5%の低パルプ
濃度、温度50〜70℃の条件で行われてきていたが、
低パルプ濃度状態で温度50〜70℃にするには、多大
の熱エネルギーを必要とすることから、最近は省エネの
為、PC10〜30%の高濃度パルプ状態での漂白が意
図されてきている。高濃度パルプ状態の漂白は、前記上
中質古紙の場合と同様空気が混入し易い状態となるの
で、Na224漂白が満足にできなくなる。また、N
224の漂白効果を充分に出すには、空気(酸素)
による酸化分解を防ぐため空気を遮断できる漂白装置に
する必要があり、その場合相当の設備投資を必要とす
る。
【0005】それに対し、TUDOは空気中の酸素によ
る分解を比較的受けにくいことから、通常設備による省
エネ・高濃度パルプ漂白に対応できる。以上の様に、T
UDOは空気中の酸素による酸化分解を比較的受けにく
いという特徴を持つことから、上中質古紙脱墨漂白のN
aClO漂白、及び新聞古紙H 22脱墨漂白後のNa2
24漂白の代替漂白法として、有用となってきてい
る。しかしながら、一方TUDO漂白は以下の欠点を有
する。従来のTUDO漂白は、製造メーカーで製品化さ
れた粉末状TUDOを使用して漂白が行われているが、
以下のことから漂白処理コストが高いものとなってい
る。一つは、TUDO粉末は、例えばチオ尿素溶液とH
22液を加えて反応させ、生成TUDO液を精製・濃縮
・乾燥することによって得られるが、その際、高価な反
応・精製・濃縮・乾燥装置を必要とし、また、反応の制
御・精製・濃縮・乾燥に多大なエネルギーを必要とし、
更に反応・製品化過程で一部のTUDOの分解損失があ
り、結果として薬品製造コストそのものが大幅に高くな
っている。今一つの問題点は、漂白現場で粉末状TUD
Oを溶解して、パルプに付与する場合、攪拌溶解時及び
パルプとの混合時に空気中の酸素の影響を受けて、有効
成分の分解ロスを引き起こし、その分漂白作用が低下す
る。
【0006】TUDOの製造法として、TU水溶液に過
酸化物を、反応液のPHを2〜6に保って作用させTU
DOを製造する方法が米国特許第2783272号にお
いて知られているが該特許ではTUDO生成収率が低
く、原料であるTUと過酸化物を多く必要とする。ま
た、収率向上策として、特公昭58−39155号にお
いて反応液に重炭酸アンモニュウムの添加が提案されて
いるが、本発明者らが検討した結果では、この方法では
大きな収率向上効果は認められなかった。すなわち、従
来の技術では、TUDO製造における薬品コストが高く
つく。また、TUDO製品の運搬・貯蔵・使用時に、徐
々に空気中の酸素よる酸化分解を受け、ロスを生じる。
漂白業界では、上記欠点の改善された、現場適用実施し
易い様な、TUDO漂白法が望まれている。
【0007】
【本発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上
中質古紙脱墨漂白におけるNaClO漂白の代替とし
て、また、新聞古紙H22脱墨漂白後の後段Na22
4漂白の代替として、更に各種古紙・機械パルプ・クラ
フトパルプ等の漂白方法として、薬品の損失および消費
エネルギーが小さく、且つ漂白効果の高い、工業的に有
用なTUDO漂白を提供するものである。本発明の今一
つの目的は、漂白用のTUDOを漂白現場で安価に得る
ことである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、TUDO
は主にチオ尿素(TUと略す)と過酸化物を反応させて
作られること、そして実際のパルプ漂白におけるTUD
Oの使用量はそう多くないことから、漂白現場でTUと
過酸化物を混合してTUDO液またはスラリー状TUD
Oを製造し、それをパルプに付与して、もしくはTUと
過酸化物をパルプに付与し、パルプ上でTUDO生成さ
せながらTUDO漂白を行えば、漂白コストを大幅に低
減できるのではないかと考え、TUと過酸化物との反応
性、TUDOの安定性、現場漂白装置状態、及びTUD
O漂白実施条件等を勘案しながら鋭意研究した結果、一
般的漂白使用量範囲内のTUDO生成量であれば、漂白
現場でTUと過酸化物との混合反応時に触媒または触媒
とキレート剤を存在させることによって、低コストで容
易にTUDOが製造でき、生成されたTUDOの漂白効
果には何ら問題なく、そして 生成されたTUDOは溶
液状態でそのままパルプと混合されるので空気中の酸素
による有効成分の消失を殆ど被ることなく、低漂白コス
トでTUDO漂白ができる事を見いだし本発明を完成さ
せた。
【0009】すなわち、本発明はチオ尿素と過酸化物か
ら二酸化チオ尿素を製造する方法において、反応触媒と
してIV・V・VI族元素のヘテロポリ酸またはその塩を存在
させることをを特徴とする二酸化チオ尿素の製造法、お
よび製造された二酸化チオ尿素を溶液状態のまま直接パ
ルプに付与して漂白を行うことを特徴とする製造二酸化
チオ尿素による製紙用パルプの漂白方法である。本発明
はTUと過酸化物からTUDO液を製造し、そのTUD
O液でパルプを漂白することを、またはTUと過酸化物
をそれぞれ単独でパルプに付与し、パルプ上でTUDO
を生成させながら漂白する方法に関するものである。
【0010】本発明では、TUと過酸化物の反応液から
TUDOを精製・分離せずともその反応液をそのままパ
ルプに付与し漂白することを可能とした。また、TUと
過酸化物とパルプを混合して、パルプ上でTUDOを生
成させながら漂白することを可能とした。本発明は、精
製・分離・乾燥粉末化されたTUDO製品と同等以上の漂
白ができ、精製・分離・乾燥粉末化・運搬工程等を省略で
きるので著しく安価なTUDO漂白ができる。
【0011】TUに過酸化物を作用させるだけでTUD
Oは一応生成されるが、反応が不充分でTUDOの生成
収率が低く、充分な漂白効果を出すにはTUと過酸化物
を多く必要とする。本発明では、少量の反応触媒を存在
させることにより生成収率が著しく向上し、理論収率に
近づき、更に良好な漂白が行える。
【0012】本発明方法が適用されるパルプは、新聞紙
配合用等の低白色度高収率パルプ、上中質紙配合用のす
でにH22漂白が施された高白色度高収率パルプ、H2
2脱墨漂白が施された新聞古紙パルプ、上中質古紙パ
ルプ、封筒紙用等の半晒化学パルプ等が挙げられる。ま
た、一般にNa224漂白またはTUDO漂白が実施
されているパルプに、更にはH22漂白またはNaCl
O漂白が実施されているパルプに適用される。
【0013】本発明におけるTUは固体、スラリーまた
は水溶液として使用され、TUの量は、生成TUDO必
要量に応じて選定する。オンサイトTUDO製造の場
合、実用的にはTUDO生成液当り1〜100g/L、
好ましくは7〜40g/L使用する。但しこれ以上、以
下でも特に問題はない。次にTUをそのままパルプに付
与し、パルプ上でTUDOを生成させながら漂白する場
合は、一般に漂白におけるTUDO必要量が、絶乾パル
プ重量基準0.05〜2.5%であるので、それにTUを
対応させると、絶乾パルプ重量基準0.03〜1.8%使
用すればよい。本発明に使用される過酸化物としては、
過酸化水素、金属過酸化物塩、過酢酸、過蟻酸、及び各
種のH22付加化合物等の各種の無機または有機の過酸
化化合物またはその水溶液が使用しうるが、好ましくは
22が使用される。過酸化物はTU量に対比させて使
用し、その使用量は、100%H22に換算してTUと
のモル比1.0〜3.0、好ましくは1.5〜2.0であ
る。過酸化物を上記範囲より多く使用すると、過剰の過
酸化物が生成TUDOと反応し、TUDOがその分消失
する。上記範囲より少なく使用すると、反応にあずから
ないTUが増加し、その分ロスになる。
【0014】本発明に使用される反応触媒としては、IV
・V・VI族元素のヘテロポリ酸またはその塩が使用され、
具体的にはタングステン、モリブデン、バナジウムのヘ
テロポリ酸またはそのヘテロポリ酸のプロトンの一部ま
たは全部をカチオン交換したヘテロポリ酸の塩が挙げら
れ、少なくともそれらの中の一種が使用される。カチオ
ンの交換されたヘテロポリ酸の塩類としてはアルカリ金
属、アルカリ土類金属、希土類金属、アンモニウム等の
塩が挙げられる。タングステンのヘテロポリ酸として
は、H3(PW1240)、H3(AsW1240)、H
4(SiW1240)、H4(TiW1240)、H5(Co
1240)、H5(FeW1240)、H5(BW
1240)、H3(VW1240)、H6(BeW931)、
6(TeW624)、H5(IW624)、H4(NiW6
246)、H3(GaW6246)、H6(P2
1862)、H6(As21862)、H7(PW
1133)、およびこれらヘテロポリ酸のカリウム、カル
シウム、セリユウム、アンモニウムカチオン交換体が挙
げられる。モリブデンのヘテロポリ酸としては、H
3(PMo1240)、H3(AsMo1240)、H4(S
iMo1240)、H4(GeMo1240)、H4(TiM
1240)、H8(CeMo1242)、H8(ThMo12
42)、H7(AsMo1139)、H7(PMo
1139)、H8(GeMo1139)、H6(MnMo9
32)、H6(NiMo932)、H6(TeMo624)、
5(IMo624)、H3(CoMo6246)、H
3(CrMo6246)、H3(FeMo6246)、H
3(GaMo6246)、H4(NiMo6246)、H
6(P2Mo1862)、H6(As2Mo1862)、および
これらヘテロポリ酸のカリウム、カルシウム、セリユウ
ム、アンモニウムカチオン交換体が挙げられる。バナジ
ウムのヘテロポリ酸としてはH 4(PW11VO40)、H4
(PMo11VO40)、H5(PMo10240)、および
これらヘテロポリ酸のカリウム、カルシウム、セリユウ
ム、アンモニウムカチオン交換体が挙げられる。
【0015】触媒の使用方法としては、TUと過酸化物
の溶液に触媒を溶解して使用する方法と、TUDO生成
後触媒回収分離のため触媒を他の担体に担持して不溶性
固体として使用する方法がある。特にヘテロポリ酸のカ
チオン交換体は、不溶性の場合が多いので、他の担体に
担持して使用する方法を用いることが好ましい。
【0016】TUと過酸化物の溶液に触媒を溶解して使
用する場合のヘテロポリ酸触媒の使用量は、その分子量
及びTUDO生成必要量によって異なるが、オンサイト
製造TUDO液の場合はTUDO生成液当り1〜200
0mg/L、好ましくは5〜200mg/L使用する。
TU、H22、触媒をそのままパルプに付与し、パルプ
上でTUDOを生成させながら漂白する場合は、絶乾パ
ルプ重量基準1×10-6〜0.5%、好ましくは5×1
-6〜0.05%を使用する。ヘテロポリ酸触媒を他の
担体に担持して不溶性固体として使用する場合は、担体
として活性炭、アルミナ、ゼオライト、シリカ等を使用
して通常担体に対し触媒を0.1〜50重量%、好まし
くは1〜20重量%を担持させたものを使用し、TUD
O生成液当り、担持担体として2mg/L以上、好まし
くは250mg/L以上使用する。担体担持触媒を使用
する方法で生成されたTUDO液を漂白に使用する場合
は、例えばフィルターにより触媒を除去した後にTUD
O液を使用する方法、または、触媒充填塔を設け、その
触媒充填塔にTUと過酸化物の混合溶液を通液して生成
されたTUDO液を使用する方法が好適に採用される。
【0017】また、反応触媒を存在させた場合、漂白反
応そのものには余り影響はないが、若干着色現象が発生
する場合がある。その場合には、キレート剤を併用する
と着色の減少と共に収率向上があり、更に良好な漂白が
行える。本発明に使用されるキレート剤は、アミノカル
ボキシレート系キレート剤、ポリリン酸系キレート剤、
および化2で表されるアミノアルキルリン酸系キレート
剤からなる群から選ばれた少なくとも一種以上が使用さ
れる。
【化2】(X23PCH2)2・N・{(CH2)m・N・CH2
32n・CH2PO32 [式中Xは水素、アンモニウム、またはアルカリ金属を
示し、mは2〜3の整数、nは0〜3の整数を示す。]
【0018】具体的には、アミノカルボキシレート系キ
レート剤として、エチレンジアミン四酢酸(EDT
A)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、N−
ヒドロキシエチルエチレンジアミン−N,N’,N”−
トリ酢酸(HEDTA)、ニトリロトリ酢酸(NT
A)、シクロヘキサンジアミン四酢酸(CyDTA)お
よびそれらの塩等、アミノアルキルリン酸系キレート剤
として、アミノトリメチレンホスホン酸(ATMP)、
エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTM
P)、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸
(DTPMP)、プロピレンジアミンテトラメチレンホ
スホン酸(PDTMP)、ジプロピレントリアミンペン
タメチレンホスホン酸(DPTPMP)およびそれらの
塩等、ポリリン酸系キレート剤としたは、ピロリン酸、
トリポリリン酸、トリメタリン酸、テトラメタリン酸、
ヘキサメタリン酸およびそれらの塩等が挙げられる。キ
レート剤の使用量は、その分子量及びTUDO生成必要
量によって異なるが、オンサイト製造TUDO液の場合
はTUDO生成液当り5〜4000mg/L、好ましく
は20〜1000mg/L使用する。次にTU、H
22、反応触媒、キレート剤をそのままパルプに付与
し、パルプ上でTUDOを生成させながら漂白する場合
は、5×10-6〜1.0%、好ましくは2×10-5〜0.
25%使用する。
【0019】TUDO生成時の溶液のPHは特に調整す
る必要はないが、好ましくは、反応終了時に1〜4、更
に好ましくは、2〜3になるようにする。次に、TUD
O漂白で満足な漂白効果を出すには一般に漂白初期PH
を9〜11程度にしておく事が好ましい。漂白パルプが
このPHにない場合は、一般的には予めパルプにアルカ
リ剤を添加しTUDO漂白に好ましいPHに調整する方
法が行われるが、別法としてTUDO液製造時に、また
はパルプ上でTUDOを生成させながらの漂白時に、ア
ルカリ剤を添加して漂白初期PHが9以上になるように
することも可能である。その場合のアルカリ剤として
は、苛性ソーダ等の強塩基性アルカリ剤またはその水溶
液の他、炭酸ソーダ、ほう酸ソーダ、ケイ酸ソーダ、リ
ン酸ソーダ、ポリリン酸ソーダ等の弱塩基性アルカリ剤
またはその水溶液等が挙げられ、アルカリ性作用化合物
であればいずれのアルカリ剤でもよい。
【0020】アルカリ剤使用量はパルプのPH状態、使
用アルカリ剤のアルカリ度により異なり、漂白反応初期
PHが9〜11になる量を使用する。すでに漂白パルプ
のPHが9〜11の範囲にある場合は、またはTUDO
漂白の為に予めパルプPHを別に調整しておく場合は、
特にこのアルカリ添加操作は必要ない。次にTUDO液
製造のための薬品の混合反応装置、及び薬品とパルプの
混合装置としては、均一混合反応ができ且つ迅速に薬品
がパルプ中に均等にいきわたる装置であればいずれでも
よく、薬品混合槽、スタティックミキサー、インライン
ミキサー、ニーダー、デフューザー、二軸ミキサー、触
媒充填塔等通常の装置を組み合わせて使用される。
【0021】またTUDO液製造法の場合、できたTU
DO液を一旦ストックタンクに溜めそれを順次パルプに
付与し漂白する方法、またはスタティックミキサー、イ
ンラインミキサー、カスケード方式薬品混合反応機、反
応触媒充填塔等を使用し、連続的にTUDO液を製造し
ながら、製造されたTUDOを連続的にパルプに付与し
漂白する方法が考えられるがいずれの方法でもよい。ま
たTUDO液製造においては、冷却は必ずしも必要ない
が、発熱反応であるので好ましくは反応液を5〜80
℃、更に好ましくは20〜60℃に冷却しながら、また
空気中酸素混入防止対策として、N2ガス、CO2ガスで
シールしながら操作してもよい。次に薬品使用量、混合
方法、添加方法以外のパルプ漂白条件は、従来から行わ
れているNa224漂白条件またはTUDO漂白条件
に準じて行う。例えば、漂白パルプ濃度は従来行われて
きたNa224漂白のPC3〜5%の低濃度から、最
近のTUDO漂白で行われているPC20%以上の高濃
度に適用できる。パルプの種類、漂白目的にもよるが漂
白温度は通常、室温以上、好ましくは40〜100℃、
漂白時間は5分以上、好ましくは30〜120分であ
る。尚これらの条件はパルプの種類、漂白目的、漂白装
置の形態や状況によって選定されるので限定的なもので
ない。
【0022】本発明において適用される漂白装置は、従
来からNa224漂白、TUDO漂白、NaClO漂
白、またはH22漂白に使用されているタイプの装置で
あれば、いずれの装置にも適用できる。また本発明法の
TUDO製造法は、漂白現場だけでなく他場所での製造
にも適用でき、他場所でTUDOを製造し、それを使用
場所に輸送して使用しても何等問題はない。
【0023】
【実施例】次に実施例、比較例によって本発明をさらに
詳しく説明する。尚、本発明は以下の実施例によって何
ら制限されるものではない。また、実施例、比較例中の
薬品濃度、白色度、パルプ種略号等の詳細は次の通りで
ある。 薬品濃度:TUDO液製造の場合は g/L パルプ付与の場合は絶乾パルプ重量基準の重量% 白色度 :漂白終了後のパルプを絶乾量で15g採取
し、イオン交換水にてPC1.0%に希釈離解後、亜硫
酸水でpHを5.0に調整。その後希釈パルプ溶液を吸
引濾過し、2枚のパルプシートに抄紙後、一夜風乾して
白色度をJIS−P8123(ハンター白色度測定法)
に従って測定した。 パルプ種略号 TMP:サーモメカニカルパルプ---高収率パルプの一
種。 新聞古紙DIP:新聞古紙からの脱墨処理パルプ。 上中質古紙DIP:上中質古紙からの脱墨処理パルプ 尚 下記実施例、比較例の結果については、表1〜3に
記載した。 TUDOとNa224の還元当量比:両者が水溶液
中で次の様に加水分解した時に、生成すると仮想される
H2SO2量が1モル当り同じ当量となる。 (NH2)2CSO2+H2O=(NH2)2CO+H2SO2 Na2S2O4 +H2O=Na2SO3 +H2SO2 よって両者の重量当りの還元当量比は次の様になる。 TUDO:Na224=1:0.62
【0024】実施例1 生成TUDO理論濃度が20g/LとなるようにTU1
4.1gおよび触媒として、カリウム置換りんタングス
テン酸[K2H(PW1240)]の重量が二酸化珪素に
対し20重量%の二酸化珪素担持カリウム置換りんタン
グステン酸触媒500mgを含む水溶液に、35%H2
236gを添加混合しTUDO液1Lを製造した。結
果を表1に示した。 実施例2 キレート剤としてDTPA・5Naを400mg存在さ
せた以外は、実施例1と同様にTUDO液を製造した。
結果を表2に示した。 比較例1 触媒を存在させない以外は、実施例1と同様にTUDO
液を製造した。結果を表1に示した。 比較例2 生成TUDO理論濃度が20g/LとなるようにTU1
4.1g、重炭酸アンモニウム1.46gを含む水溶液
に、35%H2236gを添加混合しTUDO液1Lを
製造した。結果を表1に示した。
【0025】
【表1】 生成TUDO濃度 (生成収率) 液色相 実施例1 18.62g/L (93.1%) 微青 実施例2 19.60g/L (98.0%) 無色 比較例1 14.92g/L (74.6%) 無色 比較例2 13.51g/L (67.9%) 無色
【0026】実施例3 新聞紙向けの未晒TMP(白色度49.3%)のPH5.
5、PC4%のスラリーに Na2CO3を加えて漂白初
期PHが10になるように調整し、その後実施例1で製
造したオンサイトTUDO液を対パルプ0.55%(1
00%固形換算)添加、ミキシングし、60℃、90分
間の漂白を行った。結果を表2に示した。 比較例3 オンサイト製造TUDO液の代わりに、市販のTUDO
製品(DEGUSSA社製、純度99.55%)を対パル
プ0.55%(100%固形換算)とTUDO漂白初期
PHが10になる量のNa2CO3を添加した他は実施例
3と同様な漂白を行った。結果を表2に示した。 比較例4 実施例3と同じ未晒TMPのPH5.5、PC4%のス
ラリーに、TUDOの代わりに同還元当量のNa22
4粉末(三菱瓦斯化学(株))製、純度85%)を対パルプ
1.1%添加、ミキシングし、その後60℃、90分間
の漂白を行った。結果を表2に示した。
【0027】実施例4 下記脱墨漂白プロセスにてH22により脱墨漂白済み
の、上中質紙向けの新聞古紙DIP(白色度68.1%)
のPH7.5、PC25%のスラリーに、空気解放系に
て、実施例2で製造したオンサイトTUDO液を対パル
プ0.27%(100%TUDO固形換算)およびNa
OHを対パルプ0.3%添加、ミキシングし、PC20
%、70℃で60分間の漂白を行った。結果を表2に示
した。 [ハ゜ルヒ゜ンク゛]→[希釈脱水]→[ニ-テ゛ィンク゛]→[薬品ミキ
シンク゛]→[H2O2熟成脱墨漂白]→[フロ-テ-ション]→[洗
浄]→[脱水(PC25%)] 比較例5 実施例4のオンサイト製造TUDO液の代わりに、同還
元当量のTUDO製品を対パルプ0.27%(固形100
%TUDO換算)添加した他は実施例4と同様な漂白を
行った。結果を表2に示した。 比較例6 実施例4のオンサイト製造TUDO液およびNaOHの
代わりに、同還元当量の85%Na224粉末を対パ
ルプ0.55%添加、ミキシングし、PC20%、70
℃、60分間の漂白を行った。結果を表2に示した。な
お、この漂白中、Na224の空気酸化分解物の臭気
が周囲に立ちこめ作業環境が著しく悪かった。
【0028】実施例5 下記脱墨プロセスで脱墨漂白済みの、家庭紙向けの上中
質古紙DIP(白色度71.0%)のPH11.0、PC
30%のスラリーに、空気解放系にて、対パルプでチオ
尿素0.8%、反応触媒としてNa22(SiMo12
40)0.005%およびキレート剤としてトリポリリン
酸Na0.005%を添加、ミキシングし、次いで35
%H222.05%を添加、ミキシングし、60℃、1
80分間の漂白を行った。結果を表2に示した。 [ハ゜ルヒ゜ンク゛]→[アルカリ熟成脱墨]→[フロ-テ-ション]→[洗
浄]→[脱水(PC30%)] 比較例7 実施例5のチオ尿素、H22、反応触媒、キレート剤の
代わりに、実施例5のTUDO生成量と同還元当量とな
るTUDO製品1.08%を使用した他は、実施例5と
同様な漂白を行った。結果を表2に示した。 比較例8 実施例5と同じ上中質古紙DIPを亜硫酸水にてPH6
に調整し、実施例5のチオ尿素、H22、反応触媒、キ
レート剤の代わりに、オンサイト製造TUDO生成量と
同還元当量となる85%Na224粉末を対パルプ2.
05%を添加、ミキシングし、60℃、180分間の漂
白を行った。結果を表2に示した。 比較例9 実施例5のチオ尿素、H22、反応触媒、キレート剤の
代わりに、12%NaClO溶液を対パルプ8%添加、
ミキシングし、常温で180分間の漂白を行った。結果
を表2に示した。
【0029】
【表2】 実施例 漂白パルプの 漂白剤の種類 白色度 /比較例 種類 実施例 3 TMP オンサイト製造TUDO 56.1% 比較例 3 TMP 製品TUDO 55.5%比較例 4 TMP Na2 2 4 55.9% 実施例 4 新聞古紙DIP オンサイト製造TUDO 72.4% 比較例 5 新聞古紙DIP 製品TUDO 71.8%比較例 6 新聞古紙DIP Na2 2 4 69.5% 実施例 5 上中質古紙DIP オンサイト製造TUDO 77.2% 比較例 7 上中質古紙DIP 製品TUDO 76.7% 比較例 8 上中質古紙DIP Na2 2 4 73.4%比較例 9 上中質古紙DIP NaClO 77.2%
【0030】
【本発明の効果】本発明によれば、比較的安価なTU、
過酸化物を使用し、また高価な設備を必要とせずに高い
反応収率で安価にTUDOを製造でき、更には安価なT
UDO漂白が行える。また、本発明によれば、漂白現場
でTUDO液を製造し、TUDOを精製・分離すること
なしに、その製造TUDO液を直接漂白に使用できるの
で、安価なTUDO漂白が行える。すなわち、新聞紙配
合用向け低白色度TMPについては、市販TUDO製品
漂白より漂白効果が大きく、また、Na224漂白と
同等効果の漂白が行える。本発明法ではNa224
白におけるが如き分解臭気がほとんど少なく、作業環境
面でも大きなメリットがある。上中質紙向け高白色度新
聞古紙DIPの漂白については、空気中の酸素の影響も
かなり回避され、製品TUDOあるいはNa224
りも漂白効果がよく、そして漂白現場で製造されるTU
DOであるためTUDOそのもののコストが著しく安く
なり、TUDO漂白薬品コストを大幅に安価にできる。
高濃度パルプ漂白処理は省熱エネルギーの観点から有利
であることが知られているが、高濃度パルプ漂白処理に
本発明を適用すれば、空気中の酸素に強い、効果的で且
つ安価なTUDO漂白ができ、更に省熱エネルギーの意
義が大きくなる。家庭紙用(トイレットペーパー等)向
け上中質古紙DIPについては、低漂白薬品コストで、
現行NaClO漂白とほぼ同等の漂白が行え、かつ、N
aClO漂白の大きな問題点である有機塩素化合物生成
を回避できる。
【0031】本発明によれば、漂白現場にてTUDOを
収率よく、低コストにて得ることができ、且つ生成した
TUDOを、空気中の酸素による分解を実質上受けるこ
とがなく、漂白工程に有効に利用することができる。そ
の結果、薬品コスト及び熱エネルギーコストの低い漂白
を行うことができ、また、上中質古紙パルプ漂白につい
ては、現行NaClO漂白装置等の空気解放系装置にお
いても、安価な漂白コストで現行NaClOとほぼ同等
の漂白が行うことができ、NaClO漂白の場合のよう
な有機塩素化合物の副生を回避することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭61−263957(JP,A) 特開 昭59−13756(JP,A) 特開 昭55−17339(JP,A) 特開 昭50−62934(JP,A) 特開 昭48−46577(JP,A) 特開 昭62−276094(JP,A) 特開 平2−234991(JP,A) 特公 昭49−40451(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07C 381/14 D21C 9/10

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 チオ尿素と過酸化物から二酸化チオ尿素
    を製造する方法において、反応触媒としてIV・V・VI族
    元素のヘテロポリ酸またはその塩を存在させることを特
    徴とする二酸化チオ尿素の製造法。
  2. 【請求項2】 反応触媒が、タングステン、モリブデン
    またはバナジウムをポリ原子とするヘテロポリ酸または
    その塩からなる群から選ばれた少なくとも一種であるこ
    とを特徴とする請求項1記載の製造法。
  3. 【請求項3】 二酸化チオ尿素の製造時において、キレ
    ート剤を添加することを特徴とする請求項1記載の製造
    法。
  4. 【請求項4】 キレート剤がアミノカルボキシレート系
    キレート剤、ポリリン酸系キレート剤、および式(1)
    で表されるアミノアルキルリン酸系キレート剤からなる
    群から選ばれた少なくとも一種である請求項3記載の製
    造法。 【化1】 (X23PCH2)2・N・{(CH2)m・N・CH2PO32n・CH2PO32(1) [式中Xは水素、アンモニウム、またはアルカリ金属を
    示し、mは2〜3の整数、nは0〜3の整数を示す。]
  5. 【請求項5】 請求項1の方法により製造された二酸化
    チオ尿素液を溶液状態のままパルプに付与してパルプを
    漂白することを特徴とする製紙用パルプの漂白方法。
  6. 【請求項6】 請求項1の方法による二酸化チオ尿素液
    の製造時にパルプを共存させてパルプを漂白することを
    特徴とする製紙用パルプの漂白方法。
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