JP3444218B2 - 誘電体共振器、誘電体フィルタ、誘電体デュプレクサ、発振器、通信機装置 - Google Patents

誘電体共振器、誘電体フィルタ、誘電体デュプレクサ、発振器、通信機装置

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JP3444218B2
JP3444218B2 JP03318999A JP3318999A JP3444218B2 JP 3444218 B2 JP3444218 B2 JP 3444218B2 JP 03318999 A JP03318999 A JP 03318999A JP 3318999 A JP3318999 A JP 3318999A JP 3444218 B2 JP3444218 B2 JP 3444218B2
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富哉 園田
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  • Transceivers (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、マイクロ波やミリ
波帯において使用される誘電体共振器およびそれを用い
た誘電体フィルタ、誘電体デュプレクサ、発振器、通信
機装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の誘電体フィルタにおける第一の例
を、図26に基づいて説明する。なお、図26は従来の誘電
体フィルタの分解斜視図である。図26に示すように従来
の誘電体フィルタ110aは、対向する二面に電極が形成さ
れた誘電体基板120aと、下ケース112および上ケース111
とから構成されている。誘電体基板120aに形成された電
極には、電極が除去されることにより五つの円形の開口
部121a〜121eが形成され、裏面電極の対向する位置にも
同形状の開口部が形成されている。この開口部121a〜12
1eによって規定される部分および上下のケース111、112
で誘電体共振器122a〜122eを構成し、その開口部121a〜
121eの形状や誘電体基板120aの厚みなどによって、その
共振周波数が決まる。
【0003】下ケース112は、基板113と基板113上に搭
載された金属枠114とからなり、金属枠114には誘電体基
板120aが搭載されるため、内部に段差部115が形成され
ている。基板113表面の所定の部分には電極116が形成さ
れ、さらに基板113表面には入出力接続用手段として、
マイクロストリップライン130、131が入力用・出力用に
それぞれ形成されている。また、基板113裏面のほぼ全
面に電極が形成されている。そして、不要モードの影響
を排除するためスルーホール117を通して基板113表面の
マイクロストリップライン130、131以外の電極が基板11
3裏面の電極に導通されている。
【0004】このような構成を有する誘電体フィルタ11
0aでは、下ケース112の内部段差部115に誘電体基板120a
が搭載され、導電性接着剤などにより固定されている。
また、下ケース112の金属枠114の上に上ケース111が搭
載されて固定されている。そして、入出力接続用手段と
してのマイクロストリップライン130に入力信号が入力
されると、マイクロストリップライン130と誘電体共振
器122aとが結合する。このとき、誘電体共振器122aの共
振モードとしてはTE010モードを利用する。さらに、隣
り合う誘電体共振器122a〜122e同士が結合した後、出力
側のマイクロストリップライン131から信号が出力され
て、誘電体フィルタ110aは五段の帯域通過フィルタとし
て機能している。TE010モード誘電体共振器の無負荷Q
は後述する矩形スロットモードの誘電体共振器の無負荷
Qに比べて高く、例えば26GHzにおいてTE010モード誘電
体共振器の無負荷Qは1900程度であり、矩形スロットモ
ード誘電体共振器の無負荷Qは900程度である。このよ
うにTE010モードを使用すると誘電体共振器の無負荷Q
が高いため、挿入損失の小さい誘電体フィルタが得られ
るという利点がある。
【0005】次に、従来の誘電体フィルタにおける第二
の例を、図27に基づいて説明する。なお、図27は従来の
誘電体フィルタの分解斜視図であり、先の例と同一部に
は同符号を付し詳細な説明は省略する。図27に示すよう
に従来の誘電体フィルタ110bにおいては、誘電体基板12
0bに形成された電極の開口部121f〜121jの形状が先の例
とは異なり矩形であり、それらにより誘電体共振器122f
〜122jが構成されている。開口部121f〜121jの形状を矩
形にすることにより、共振モードとしては矩形スロット
モードを利用する。なお、ここでは矩形スロットモード
としてTE102モードを使用している。矩形スロットモー
ドはTE010モードよりも電磁界の閉じ込め性が弱まるた
め、入出力接続用手段との結合や誘電体共振器122f〜12
2j同士の結合が取り易くなるという利点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】通信機装置に用いられ
る誘電体フィルタには、通過帯域近傍における十分な減
衰特性が要求される。一般に誘電体フィルタを構成する
誘電体共振器には多数の共振モードが存在するが、使用
共振モードの共振周波数の近傍に不要共振モードの共振
周波数が存在すると、その不要共振モードの共振周波数
における信号をも誘電体フィルタは通過させてしまう。
すなわち、通過帯域における十分な通過特性、その近傍
における十分な減衰特性を有するという誘電体フィルタ
としての要求特性を満足できない。そのため具体的に
は、従来における第一の例では使用モードであるTE010
モード以外にも様々な共振モードが発生するが、それら
の共振周波数が使用モードであるTE010モードの共振周
波数に近づかないようにしなければならない。また同様
に、従来における第二の例では使用モードであるTE102
モード以外にも様々な共振モードが発生するが、それら
の共振周波数が使用モードであるTE102モードの共振周
波数に近づかないようにしなければならない。
【0007】しかしながら従来の誘電体共振器において
は、使用共振モードであるTE010モードやTE102モードの
近傍に不要共振モードが存在している。ここで、第一従
来例の誘電体共振器における、共振器径に対する共振周
波数の関係を表すグラフを図28に示す。なお、図28にお
いて実線は使用共振モードであるTE010モード、破線は
不要共振モードであるHE310モードのグラフである。ま
た、第二従来例の誘電体共振器における、共振器長(こ
こで共振器長とは矩形状の開口部の長手方向長さとす
る)に対する共振周波数の関係を表すグラフを図29に示
す。なお、図29において実線は使用共振モードであるTE
102モード、破線は不要共振モードであるTM111モード、
一点鎖線は不要共振モードであるTM112モードのグラフ
である。
【0008】図28、29からも分かるように、第一従来例
および第二従来例の誘電体共振器においては、広範囲の
周波数帯にわたって使用共振モードからそれほど離れな
い位置に不要共振モードが存在している。つまり、従来
の誘電体共振器で構成される誘電体フィルタにおいて
は、通過帯域近傍で十分な減衰特性が得られないという
問題があった。
【0009】本発明の誘電体共振器、誘電体フィルタ、
誘電体デュプレクサ、発振器、通信機装置は、上述の問
題を鑑みてなされたものであり、これらの問題を解決
し、使用共振モードの共振周波数から不要共振モードの
共振周波数が十分離れることにより、良好な通過特性ま
たは反射特性を有する誘電体共振器、誘電体フィルタ、
誘電体デュプレクサ、発振器、通信機装置を提供するこ
とを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
本発明の誘電体共振器は、互いに対向する二主面に電極
が形成された誘電体基板と、前記二主面の電極に形成さ
れた開口部と、前記誘電体基板を内部に収納保持してな
るケースとを含んでなる誘電体共振器であって、前記開
口部と前記電極との境界部で、前記開口部側に向かって
少なくとも一つの電極凸部を設けている。
【0011】また、請求項2に係る誘電体共振器は、互
いに対向する二主面に電極が形成された誘電体基板と、
前記二主面の電極に形成された開口部と、前記誘電体基
を内部に収納保持してなるケースとを含んでなる誘電
体共振器であって、前記開口部と前記電極との境界部
で、前記開口部側に向かって少なくとも一つの電極凹部
を設けている。
【0012】これらにより、誘電体共振器に存在する様
々な共振モードの共振周波数に影響を与え、使用共振モ
ードの共振周波数から不要共振モードの共振周波数を遠
ざけることができる。
【0013】さらに、請求項3に係る誘電体共振器は、
前記誘電体共振器におけるそれぞれの不要共振モードに
対して、その不要共振モードにそれぞれ対応する所定の
位置に前記電極凸部を設けている。
【0014】さらにまた、請求項4に係る誘電体共振器
は、前記誘電体共振器におけるそれぞれの不要共振モー
ドに対して、その不要共振モードにそれぞれ対応する所
定の位置に前記電極凹部を設けている。
【0015】これらにより、使用共振モードに最も影響
を与える不要共振モード、すなわち使用共振モードの共
振周波数に最も近い共振周波数を有する不要共振モード
に対して、その共振周波数を変化させることができる。
また、電極凸部または電極凹部を設ける位置、形状、大
きさなどにより、容易に不要共振モードの共振周波数を
設定することができる。
【0016】さらにまた、本発明の誘電体フィルタは、
請求項1ないし4記載の誘電体共振器と、入出力接続用手
段とを含んでなることを特徴とする誘電体フィルタ。
【0017】さらにまた、本発明の誘電体デュプレクサ
は、少なくとも二つの誘電体フィルタと、該誘電体フィ
ルタのそれぞれに接続される入出力接続用手段と、前記
誘電体フィルタに共通的に接続されるアンテナ接続用手
段とを含んでなる誘電体デュプレクサであって、前記誘
電体フィルタの少なくとも一つが請求項5記載の誘電体
フィルタである。
【0018】さらにまた、本発明の通信機装置は、請求
項6記載の誘電体デュプレクサと、該誘電体デュプレク
サの少なくとも一つの入出力接続用手段に接続される送
信用回路と、該送信用回路に接続される前記入出力接続
用手段と異なる少なくとも一つの入出力接続用手段に接
続される受信用回路と、前記誘電体デュプレクサのアン
テナ接続用手段に接続されるアンテナとを含んでなる。
【0019】さらにまた、本発明の発振器は、請求項1
ないし4記載の誘電体共振器と、該誘電体共振器を収納
する筐体と、回路基板とを含んでなる。
【0020】さらにまた、本発明の他の通信機装置は、
少なくとも送信用回路または受信用回路、およびアンテ
ナとを含んでなる通信機装置であって、前記送信用回路
または受信用回路は発振器を含んでなり、該発振器が請
求項8記載の発振器である。これらにより、通過特性ま
たは反射特性が良好な誘電体フィルタ、誘電体デュプレ
クサ、発振器、通信機装置が得られる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例である誘電
体フィルタを、図1に基づいて説明する。なお、図1は本
発明の誘電体フィルタの分解斜視図である。図1に示す
ように本発明の誘電体フィルタ10は、対向する二面に電
極が形成された誘電体基板20と、下ケース12および上ケ
ース11とから構成されている。誘電体基板20に形成され
た電極には、電極が除去されることにより五つの開口部
21a〜21eが形成され、裏面電極の対向する位置にも同形
状の開口部が形成されている。この開口部21a〜21eによ
って規定される部分および上下のケース11、12で誘電体
共振器22a〜22eを構成し、その開口部21a〜21eの形状や
誘電体基板20の厚みなどによって、その共振周波数が決
まる。
【0022】下ケース12は、基板13と基板13上に搭載さ
れた金属枠14とからなり、金属枠14には誘電体基板20が
搭載されるため、内部に段差部15が形成されている。基
板13表面の所定の部分には電極16が形成され、さらに基
板13表面には入出力接続用手段として、マイクロストリ
ップライン30、31が入力用・出力用にそれぞれ形成され
ている。また、基板13裏面のほぼ全面に電極が形成され
ている。そして、不要モードの影響を排除するためスル
ーホール17を通して基板13表面のマイクロストリップラ
イン30、31以外の電極が基板13裏面の電極に導通されて
いる。
【0023】このような構成を有する誘電体フィルタ10
では、下ケース12の内部段差部15に誘電体基板20が搭載
され、導電性接着剤などにより固定されている。また、
下ケース12の金属枠14の上に上ケース11が搭載されて固
定されている。そして、入出力接続用手段としてのマイ
クロストリップライン30に入力信号が入力されると、マ
イクロストリップライン30と誘電体共振器22aとが結合
する。このとき、誘電体共振器22aの共振モードとして
はTE010モードを利用する。さらに、隣り合う誘電体共
振器22a〜22e同士が結合した後、出力側のマイクロスト
リップライン31から信号が出力されて、誘電体フィルタ
10は五段の帯域通過フィルタとして機能している。
【0024】ここで、誘電体共振器を構成する誘電体基
板に形成された開口部の上面図を図2に示す。なお、実
際には誘電体基板上に五つの開口部が形成されている
が、ここでは一つの開口部に注目した図を用いる。図2
に示すように本実施例における開口部21は、基本的に円
形状であるが、さらに開口部21と電極23との境界部から
開口部21側に向かって、六つの電極凸部25が形成されて
いる。また、六つの電極凸部25はそれぞれ60°の間隔で
配置されている。
【0025】さらにここで、本実施例の誘電体共振器に
おける使用共振モードであるTE010モードと、最もTE010
モードに共振周波数が近い不要共振モードであるHE310
モードの電界分布図を図3に示す。図3においてHE310
ードは縮退した直交二重モードであり、図示はしていな
いが90°回転した位置にもう一つのモードが存在する。
本実施例においてはHE310モードに対応するように60°
の間隔で六つの電極凸部25を設けているので、それによ
り電磁界分布が影響を受け、HE310モードの縮退がとけ
て共振周波数が高くなるモード(HE310+モードとす
る)と低くなるモード(HE310−モードとする)とに分
かれる。これにより、それぞれHE310+モード、HE310
モードの共振周波数は、従来の誘電体共振器におけるHE
310モードよりも使用共振モードであるTE010モードの共
振周波数から遠ざかる。
【0026】このことを表すグラフを図4〜11に示す。
なお、このときの誘電体共振器の開口部形状は図2に示
すようなものであり、開口部径をD、対向する二つの電
極凸部間をd、D−dすなわち電極凸部25の凸部長さの二
倍をδDとしている。さらに、電極凸部25幅を角度幅で
表しその角度をθとしている。そのような定義の下で図
4〜6は、θ=10°のときの共振器径に対する共振周波数
の関係を表すグラフであり、図4ではδD=0.3mm、図5で
はδD=0.4mm、図6ではδD=0.5mmとしている。さら
に、図7〜9はθ=20°のときの共振器径に対する共振周
波数の関係を表すグラフであり、図7ではδD=0.3mm、
図8ではδD=0.4mm、図9ではδD=0.5mmとしている。ま
た、図10はθ=10°で開口部径をD=3.75mmに固定した
ときのδDに対する共振周波数の関係を表すグラフであ
り、図11はθ=20°で開口部径をD=3.75mmに固定した
ときのδDに対する共振周波数の関係を表すグラフであ
る。なお、これらの図において実線はTE010モードのグ
ラフ、破線はHE310−モード、一点鎖線はHE310+モード
のグラフを表す。
【0027】これらのグラフからもわかるように、誘電
体基板に形成された電極23と開口部21との境界部から開
口部21側に向かって電極凸部25を形成すると、使用共振
モードであるTE010モードから不要共振モードであるHE
310モードの共振周波数がHE310−モードとHE310モード
+とに分かれて離れていく。特に、図4〜6のそれぞれを
比較することや、図7〜9のそれぞれを比較することによ
り電極凸部25の長さ(δD)が長い程不要共振モードの
共振周波数はより遠くへ離れることが分かる。また、図
4〜6と図7〜9を比較することにより電極凸部25の幅
(θ)が大きい程不要共振モードの共振周波数はより遠
くへ離れることが分かる。さらに、図10、11から分かる
ように、電極凸部25の長さ(δD)はある程度長いとこ
ろで、使用共振モードから不要共振モードの共振周波数
が十分離れる。
【0028】なお、上記実施例においては不要共振モー
ドがHE310モードであるため、それに対応して六つの電
極凸部25を設けている。しかしながら、最も影響が大き
い不要共振モードが他の共振モードである場合、例えば
HE210モードやHE110モードである場合にはそれに対応し
た電極凸部を設けると良い。すなわち、図12にHE210
ードとHE110モードとの電界分布を示すが、これらの不
要共振モードに対応するためには、図13に示すようにそ
れぞれ四つや二つの電極凸部25を設けると良い。
【0029】次に、本発明の誘電体フィルタにおける第
二の例を、図14に基づいて説明する。なお、誘電体フィ
ルタの全体構成については先の実施例と同一であるた
め、この実施例においては誘電体基板に形成された電極
および一つの開口部のみを示す上面図を用いて説明す
る。図14に示すように本実施例の誘電体フィルタにおい
ては、誘電体基板の対向する二主面に形成された開口部
21形状が矩形状である。これにより、本実施例において
は使用共振モードとしてTE102モードを利用している。
【0030】本実施例においては、矩形状の開口部21の
長辺におけるほぼ中央部にそれぞれ一つずつの電極凸部
25を設けている。これにより不要共振モードであるTM
111モードとTM112モードの共振周波数を使用共振モード
であるTE102モードから遠ざけている。すなわち、図15
に示すような電界分布を有するTE102モード、TM111モー
ド、TM112モードにおいては、開口部21の長辺における
ほぼ中央部に電極凸部25を設けると、TM111モードの共
振周波数は低くなりTM112モードの共振周波数は高くな
る。そして、TE102モードの共振周波数はほとんど変化
しない。
【0031】このことを示すグラフを図16〜18に示す。
ここで、開口部21の長辺の長さ(共振器長)をLとし、
開口部21の短辺の長さ(共振器幅)を1.8mmに固定して
いる。さらに、電極凸部25の長さを0.18mmに固定し、電
極凸部25の幅をyとしている。そのような定義の下で図1
6は、y=0.3mmとしたときの共振器長に対する共振周波
数の関係を表すグラフであり、図17はy=0.5mmとしたと
きの共振器長に対する共振周波数の関係を表すグラフで
ある。また、図18は共振器長(L)を2.77mmに固定した
ときの電極凸部25の幅(y)に対する共振周波数の関係
を表すグラフである。なお、図16〜18においては実線が
TE102モード、破線がTM111モード、一点鎖線がTM112
ードのグラフを表す。
【0032】これらのグラフからもわかるように、誘電
体基板に形成された電極23と開口部21との境界部から開
口部21側に向かって電極凸部25を形成すると、使用共振
モードであるTE102モードから不要共振モードであるTM
111モードとTM112モードの共振周波数が離れていく。特
に、図16と図17との比較や、図18により電極凸部25の幅
(y)が長い程不要共振モードの共振周波数はより遠く
へ離れることが分かる。なお、本実施例においては開口
部21長辺のほぼ中央部に電極凸部25を設けたものを用い
たが、使用共振モードやそれに付随する不要共振モード
に応じて電極凸部25を適宜設ければよい。すなわち、図
19に示すような様々な位置に電極凸部25を設けることが
可能である。
【0033】さらに、本発明における他の誘電体フィル
タの実施例を図20に基づいて説明する。なお、誘電体フ
ィルタの全体構成については第一の実施例と同一である
ため、この実施例においても誘電体基板に形成された電
極および一つの開口部のみを示す上面図を用いて説明す
る。図20に示すように本実施例の誘電体フィルタにおい
ては、誘電体基板に形成された電極23と開口部21との境
界部から電極23側に向かって六つの電極凹部26を設けて
いる。これにより、使用共振モードであるTE010モード
の共振周波数から不要共振モードであるHE310モードの
共振周波数が遠ざかり、帯域近傍での減衰が十分な誘電
体フィルタが得られる。なお、図示および詳細な説明は
省略するが、このような電極凹部26を設ける構造は、そ
れぞれHE210モードやHE110モードなどの不要共振モード
に対応して電極凹部を四つ設ける構造や二つ設ける構造
にも適応できる。また、矩形状の開口部を有する誘電体
フィルタにも適応可能である。さらに、電極凸部25と電
極凹部26を組み合せた図21に示すようなものでも構わ
ず、電極凸部25や電極凹部26を設ける位置や大きさによ
り様々な設計が可能となる。
【0034】さらにまた、本発明の実施例である誘電体
デュプレクサを、図22に基づいて説明する。なお、図22
は本実施例の誘電体デュプレクサの分解斜視図であり、
第一の実施例と同一部には同符号を付し、詳細な説明は
省略する。図22に示すように本実施例の誘電体デュプレ
クサ40は、二主面に電極が形成された誘電体基板20a上
の五つの開口部21f〜21jで構成される五つの誘電体共振
器からなる第一誘電体フィルタ部41と、別の五つの開口
部21k〜21oで構成される五つの誘電体共振器からなる第
二誘電体フィルタ部42とからなる。第一誘電体フィルタ
部41を構成する五つの誘電体共振器は、それぞれ磁界結
合し送信用帯域通過フィルタとなる。第二誘電体フィル
タ部42を構成する、第一誘電体フィルタ部41の誘電体共
振器とは異なる共振周波数を有する五つの誘電体共振器
もまた、磁界結合し受信用帯域通過フィルタとなる。
【0035】第一誘電体フィルタ部41の入力段の誘電体
共振器21fに結合するマイクロストリップライン32は、
外部の送信用回路に接続されている。また、第二誘電体
フィルタ部42の出力段の誘電体共振器21oに結合するマ
イクロストリップライン33は、外部の受信用回路に接続
されている。さらに、第一誘電体フィルタ部41の出力段
の誘電体共振器21jに結合するマイクロストリップライ
ン34と、第二誘電体フィルタ部42の入力段の誘電体共振
器21kに結合するマイクロストリップライン35とは、ア
ンテナ接続用手段としてのマイクロストリップラインに
共通に接続され、外部のアンテナに接続されている。
【0036】このような構成の誘電体デュプレクサ40
は、第一誘電体フィルタ部41で所定の周波数を通過さ
せ、第二誘電体フィルタ部42で先の周波数とは異なる周
波数を通過させる帯域通過誘電体デュプレクサとして機
能する。なお、第一誘電体フィルタ部41と第二誘電体フ
ィルタ部42とのアイソレーションをとるため、上ケース
11と下ケース12の第一誘電体フィルタ部41と第二誘電体
フィルタ部42との間には仕切りを入れている。
【0037】さらにまた、本発明の実施例である通信機
装置を、図23に基づいて説明する。なお、図23は本実施
例の通信機装置の概略図である。図23に示すように本実
施例の通信機装置50は、誘電体デュプレクサ40と、送信
用回路51と、受信用回路52と、アンテナ53から構成され
る。ここで誘電体デュプレクサ40は先の実施例で示した
ものであり、図22における第一誘電体フィルタ部41と接
続される入出力接続用手段が、送信用回路51に接続され
ており、第二誘電体フィルタ部42と接続される入出力接
続用手段が、受信用回路52に接続されている。また、ア
ンテナ接続用手段はアンテナ53に接続されている。
【0038】さらにまた、本発明の実施例である発振器
を図24に基づいて説明する。なお、図24は本実施例の発
振器の分解斜視図である。図24に示すように本実施例の
発振器60は、キャップ62およびステム63と、筐体75と、
共振器本体70と、回路基板78とから構成されている。キ
ャップ62、筐体75、ステム63は、共振器本体70の線膨張
係数とほぼ同一となるように鉄により形成されており、
キャップ62とステム63とはハーメチックシールにより接
着される。また、ステム73の三つの隅部には端子ピン64
が取り付けられている。
【0039】共振器本体70は、矩形状の誘電体基板20の
対向する二面に電極23が形成され、その電極23のほぼ中
央部の互いに対向する位置には略円形状の開口部21が形
成されている。このような構造を有する共振器本体70と
キャップ62およびステム63とで略円形状の開口部21付近
に電磁界が集中する共振器を構成している。
【0040】筐体75のほぼ中央部には共振器本体70より
も大きな一段目の凹部76が設けられており、共振器本体
70の下面の開口部21の周辺に空間を設けるためにさらに
二段目の凹部77が設けられている。そして、この一段目
の凹部76に共振器本体70が配置されている。
【0041】回路基板78は、BTレジンからなる基板の表
面に主導体を、裏面にアース導体を有するマイクロスト
リップラインによりパターンを形成し、FET81やチップ
コンデンサ82、チップ抵抗83a、83b、83c、さらに膜状
の終端抵抗84やバラクタダイオード85を配置して形成さ
れている。マイクロストリップラインにより形成された
主線路の一端はワイヤボンディングによってFET81のゲ
ートに接続され、他端は膜状の終端抵抗84に接続されて
いる。また、FET81のソースに接続されているマイクロ
ストリップラインは、チップ抵抗83aを介してアース電
極86aに接続されている。さらに、FET81のドレインに接
続されているマイクロストリップラインの一方は、チッ
プ抵抗83bを介して入力端子電極87に接続されている。
そして、入力端子電極87はチップコンデンサ82を介して
アース電極86bに接続されている。FET81のドレインは、
もう一方においてマイクロストリップラインにギャップ
を設けることによるコンデンサ成分を介して出力端子電
極88に接続されている。
【0042】マイクロストリップラインにより形成され
た副線路の所定の位置においては、バラクタダイオード
85を介してアース電極86aと接続されている。また、別
の位置より引き出されたマイクロストリップラインは、
チップ抵抗83cを介してバイアス端子電極89と接続され
ている。バラクタダイオード85に電圧が付与されると、
バラクタダイオード85の容量が変化し、それにより発振
器60の発振周波数を変化させることができる。
【0043】こうして、ステム63上に筐体75が設置さ
れ、筐体75の凹部76に共振器本体70が収納された後、そ
の上に回路基板78が搭載される。ステム63、筐体75の三
つの隅部に取り付けられた端子ピン64は、回路基板78の
入力端子電極87、出力端子電極88、バイアス端子電極89
部分に設けられた孔に挿入されて、それぞれの端子電極
87、88、89と接続される。回路基板78に設けられた孔
は、端子ピン64と常に接続されているように端子ピン64
と同形状を有している。
【0044】さらにまた、先の通信機装置とは異なる本
発明の実施例である通信機装置を、図25に基づいて説明
する。なお、図25は本発明の通信機装置の概略図であ
る。図25に示すように本発明の通信機装置90は、送信用
フィルタおよび受信用フィルタからなるデュプレクサ91
と、デュプレクサ91のアンテナ接続用端子に接続される
アンテナ92と、デュプレクサ91の送信用フィルタ側の入
出力端子に接続される送信用回路93と、デュプレクサ91
の受信用フィルタ側の入出力端子に接続される受信用回
路94とから構成されている。
【0045】送信用回路93にはパワーアンプ(PA)があ
り、送信信号はパワーアンプにより増幅され、送信用フ
ィルタを通してアンテナ92から発信される。また、受信
信号はアンテナ92から受信用フィルタを通して受信用回
路94に与えられ、受信用回路94におけるローノイズアン
プ(LNA)やフィルタ(RX)などを通過した後、ミキサ
(MIX)へ入力される。一方、フェーズロックループ(P
LL)による局部発振器は、発振器60(VCO)とディバイ
ダ(DV)とからなり、ローカル信号をミキサへ出力す
る。そして、ミキサから中間周波数が出力される。
【0046】上記誘電体デュプレクサ、発振器、通信機
装置においても、誘電体基板の形成された電極と開口部
との境界部における所定の位置に電極凸部あるいは電極
凹部が形成されている。これにより、使用共振モードの
共振周波数から不要共振モードの共振周波数が遠ざか
り、通過特性あるいは反射特性が良好な誘電体デュプレ
クサ、発振器、通信機装置が得られる。
【0047】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、誘電体基
板の二主面に形成された電極および開口部と、誘電体基
を内部に収納保持してなるケースとを含んで構成され
る誘電体共振器あるいはその誘電体共振器を含む誘電体
フィルタにおいて、誘電体基板に形成された電極と開口
部との境界部に電極凸部または電極凹部を設けた。さら
に、電極凸部または電極凹部を使用共振モードや不要共
振モードの電磁界分布に応じて適切な位置に形成した。
これにより、使用共振モードの共振周波数から不要共振
モードの共振周波数が遠ざかり、帯域近傍での不要共振
モードの共振が無くなり通過特性あるいは反射特性が良
化する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の誘電体フィルタの分解射視図である。
【図2】本発明の開口部を表す上面図である。
【図3】TE010モード、HE310モードの電界分布図であ
る。
【図4】共振器径に対する共振周波数の関係を表すグラ
フである。
【図5】共振器径に対する共振周波数の関係を表すグラ
フである。
【図6】共振器径に対する共振周波数の関係を表すグラ
フである。
【図7】共振器径に対する共振周波数の関係を表すグラ
フである。
【図8】共振器径に対する共振周波数の関係を表すグラ
フである。
【図9】共振器径に対する共振周波数の関係を表すグラ
フである。
【図10】δDに対する共振周波数の関係を表すグラフ
である。
【図11】δDに対する共振周波数の関係を表すグラフ
である。
【図12】HE210モード、HE110モードの電界分布図であ
る。
【図13】HE210モード、HE110モードに対応する電極凸
部の位置を表す上面図である。
【図14】本発明の他の実施例における開口部を表す上
面図である。
【図15】TE102モード、TM111モード、TM112モードの
電界分布図である。
【図16】共振器長に対する共振周波数の関係を表すグ
ラフである。
【図17】共振器長に対する共振周波数の関係を表すグ
ラフである。
【図18】電極凸部幅に対する共振周波数の関係を表す
グラフである。
【図19】様々な電極凸部の位置を表す図である。
【図20】境界部に電極凹部を設けたものの上面図であ
る。
【図21】電極凸部と電極凹部を組み合せたものの上面
図である。
【図22】本発明の誘電体デュプレクサの分解斜視図で
ある。
【図23】本発明の通信機装置の概略図である。
【図24】本発明の発振器の分解斜視図である。
【図25】本発明における他の通信機装置の概略図であ
る。
【図26】従来の誘電体フィルタにおける第一の例の分
解斜視図である。
【図27】従来の誘電体フィルタにおける第二の例の分
解斜視図である。
【図28】共振器径に対する共振周波数の関係を表すグ
ラフである。
【図29】共振器長に対する共振周波数の関係を表すグ
ラフである。
【符号の説明】
10 誘電体フィルタ 11 上ケース 12 下ケース 20 誘電体基板 21,21a〜21o 開口部 22a〜22e 誘電体共振器 23 電極 25 電極凸部 26 電極凹部 30〜35 マイクロストリップライン 40 誘電体デュプレクサ 50,90 通信機装置 60 発振器
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI H04B 1/44 H04B 1/44 (56)参考文献 特開 平11−4108(JP,A) 特開 平10−284913(JP,A) 特開 平11−8501(JP,A) 特開 平10−98316(JP,A) 特開 平8−250914(JP,A) 国際公開98/026470(WO,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01P 1/20 - 1/219 H01P 7/00 - 7/10

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 互いに対向する二主面に電極が形成され
    た誘電体基板と、前記二主面の電極に形成された開口部
    と、前記誘電体基板を内部に収納保持してなるケース
    を含んでなる誘電体共振器であって、前記開口部と前記
    電極との境界部で、前記開口部側に向かって少なくとも
    一つの電極凸部を設けたことを特徴とする誘電体共振
    器。
  2. 【請求項2】 互いに対向する二主面に電極が形成され
    た誘電体基板と、前記二主面の電極に形成された開口部
    と、前記誘電体基板を内部に収納保持してなるケース
    を含んでなる誘電体共振器であって、前記開口部と前記
    電極との境界部で、前記開口部側に向かって少なくとも
    一つの電極凹部を設けたことを特徴とする誘電体共振
    器。
  3. 【請求項3】前記誘電体共振器におけるそれぞれの不要
    共振モードに対して、その不要共振モードにそれぞれ対
    応する所定の位置に前記電極凸部を設けたことを特徴と
    する請求項1記載の誘電体共振器。
  4. 【請求項4】前記誘電体共振器におけるそれぞれの不要
    共振モードに対して、その不要共振モードにそれぞれ対
    応する所定の位置に前記電極凹部を設けたことを特徴と
    する請求項2記載の誘電体共振器。
  5. 【請求項5】請求項1ないし4記載の誘電体共振器と、入
    出力接続用手段とを含んでなることを特徴とする誘電体
    フィルタ。
  6. 【請求項6】少なくとも二つの誘電体フィルタと、該誘
    電体フィルタのそれぞれに接続される入出力接続用手段
    と、前記誘電体フィルタに共通的に接続されるアンテナ
    接続用手段とを含んでなる誘電体デュプレクサであっ
    て、 前記誘電体フィルタの少なくとも一つが請求項5記載の
    誘電体フィルタであることを特徴とする誘電体デュプレ
    クサ。
  7. 【請求項7】請求項6記載の誘電体デュプレクサと、該
    誘電体デュプレクサの少なくとも一つの入出力接続用手
    段に接続される送信用回路と、該送信用回路に接続され
    る前記入出力接続用手段と異なる少なくとも一つの入出
    力接続用手段に接続される受信用回路と、前記誘電体デ
    ュプレクサのアンテナ接続用手段に接続されるアンテナ
    とを含んでなることを特徴とする通信機装置。
  8. 【請求項8】請求項1ないし4記載の誘電体共振器と、該
    誘電体共振器を収納する筐体と、回路基板とを含んでな
    ることを特徴とする発振器。
  9. 【請求項9】少なくとも送信用回路または受信用回路、
    およびアンテナとを含んでなる通信機装置であって、 前記送信用回路または受信用回路は発振器を含んでな
    り、該発振器が請求項8記載の発振器であることを特徴
    とする通信機装置。
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