JP3441119B2 - 含ハロゲン有機化合物の分解方法 - Google Patents

含ハロゲン有機化合物の分解方法

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JP3441119B2 JP20234993A JP20234993A JP3441119B2 JP 3441119 B2 JP3441119 B2 JP 3441119B2 JP 20234993 A JP20234993 A JP 20234993A JP 20234993 A JP20234993 A JP 20234993A JP 3441119 B2 JP3441119 B2 JP 3441119B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、含ハロゲン有機化合物
を分解する方法に係り、特に、紫外線照射によって含ハ
ロゲン有機化合物の分解反応を行う技術に関する。
【0002】
【従来の技術】トリクレン、ポリクロロビフェニル(P
CB)、フロン等の含ハロゲン有機化合物は、化学工業
等の各種分野で広く使われている。このような化合物の
うち、トリクレンやPCB等の塩素化合物は、人体に対
する毒性が明らかになっている。フロン等の弗素化合物
については、人体には無害ではあるが、オゾン層を破壊
して地球環境を悪化させることが近年明らかにされてい
る。このような状況から、含ハロゲン有機化合物の分解
・無害化する方法が求められ、様々な方法が検討されて
いる。具体的には、触媒法、紫外線法あるいはナトリウ
ム分解法などについて開発が進められている。
【0003】触媒法では、含ハロゲン有機化合物の溶液
を調製し、液相中の酸素を用いて含ハロゲン有機化合物
を触媒で分解する。この方法では、操作が簡単であり、
操作に必要なエネルギーが少ないので経済性が高い。し
かし、液相の酸素濃度が低いため、分解効率が低い。
又、分解時に発生する弗化水素、塩化水素等のハロゲン
化合物により触媒が急速に劣化する問題がある。
【0004】紫外線を気相含ハロゲン有機化合物に照射
することによって分解する紫外線分解方法では、分解時
に生成される生成物によって分解反応の進行が妨げられ
るため、分解効率が低く、紫外線照射だけで含ハロゲン
有機化合物を完全に分解することは難しい。又、分解に
よって発生するハロゲン化合物ガスによって装置が腐食
される危険性も他の方法に比べて高い。更に、この方法
では大型の装置を必要とする傾向にあり、分解効率など
の上述の問題点が解決されない限り、経済的に不利であ
る。
【0005】ナトリウムを用いて含ハロゲン有機化合物
を分解するナトリウム分解法においては、分解効率が高
いが、多量のナトリウムを消費するため経済性に劣り、
又、ナトリウムの取扱における安全性確保のために必要
な種々の装備により装置全体が大きくなる欠点がある。
【0006】上述の分解方法の中から、近年、紫外線分
解法を改良した塩素化合物の分解方法が提案されてい
る。この分解方法では、アルカリ金属を含有させたアル
コール溶媒に有機塩素化合物を溶解させ、これに紫外線
を照射することによって分解反応が行われる。分解反応
により塩素化合物から切断された塩素は溶液中のアルカ
リ金属と塩を形成し、反応系から析出、除去される。従
って、分解物による反応進行の妨げを防ぐことができ
る。
【0007】しかし、上述の紫外線分解法では、紫外線
照射により溶媒アルコール分子から生じたアルデヒドや
ケトンが、アルカリ共存下でアルドール縮合により重合
反応を起こし、分解反応の継続に悪影響を与える。これ
を防ぐためには操作条件をきわめて狭い範囲に制限する
必要があり、実用性に乏しい。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上述の状況において、
本発明者らは、アルカリが存在しない状態で紫外線照射
を行う方法が有利であることを見出し、特願平4−21
9115号において提案した。この方法においては、紫
外線照射の後に反応液にアルカリが加えられ、このよう
に構成することによって、アルカリ存在下での反応より
も高い割合で、含ハロゲン有機化合物を分解反応に導く
ことができる。又、アルカリ存在下での紫外線照射にお
いては、反応系で使用した溶媒の回収、再利用が難しか
ったのに対し、本発明者らの提案する方法においては、
溶媒の再利用が可能であるという利点もある。しかし、
更に細部に渡る研究の結果、分解効率や実用面での確実
性に関して改良の余地があることが判明した。
【0009】
【課題を解決するための手段】従って、本発明は上述の
紫外線分解方法の改良に関するもので、分解効率及び実
用における適用性が高い、含ハロゲン有機化合物の紫外
線分解方法を提供することを目的とする。
【0010】上記目的を達成するため本発明に係る含ハ
ロゲン有機化合物の紫外線分解方法は、含ハロゲン有機
化合物とイソプロパノールとを含む液体を、実質的にア
ルカリ物質の不存在下で紫外線を照射する工程と、該液
体をアルカリ物質で処理する工程と、該液体を水性液で
処理する工程とを具備したことを特徴とする。
【0011】又、本発明に係る含ハロゲン有機化合物の
紫外線分解方法は、含ハロゲン有機化合物と該含ハロゲ
ン有機化合物を溶解可能な溶媒とを含む液体を、実質的
にアルカリ物質の不存在下で紫外線を照射する工程と、
該液体をアルコラート化合物で処理する工程とを備える
ものである。
【0012】
【作用】イソプロパノール中で紫外線照射された含ハロ
ゲン有機化合物をアルカリで処理した後に、水性液で処
理すると、分解反応及びアルカリ処理によって生じた塩
と共に水性液に溶解し、同時に、アルカリ処理で用いら
れ過剰となったアルカリ物質も水性液に移動する。これ
に伴って、水性液はイソプロパノールから分離する。分
離した水性液を除去することによって、過剰アルカリ物
質及び塩を含まないイソプロパノールが回収され、含ハ
ロゲン有機化合物の紫外線分解に再利用される。
【0013】又、紫外線照射後のアルカリ処理において
アルカリ金属のアルコラート化合物を用いることによ
り、含ハロゲン有機化合物の分解が高い分解率で行われ
る。
【0014】以下、更に本発明について詳細に説明す
る。
【0015】溶媒中での含ハロゲン有機化合物の紫外線
照射による分解においては、溶媒和効果によりハロゲン
化合物の炭素−ハロゲン結合が弱まり、気相で反応させ
るのに比べて低いエネルギの紫外線で結合を切断するこ
とができる。分解反応によって切断されたハロゲンは溶
液中でハロゲンイオンとして存在すると考えられ、分解
反応進行に従って液相中で増加して反応液を酸性にする
が、分解反応に悪影響は及ぼさない。
【0016】この時、液相反応系内にアルカリ金属等の
アルカリ物質が存在すると、これと含ハロゲン有機化合
物から切断されたハロゲンが塩を形成し、反応系から析
出、除去される。しかし、アルコール溶媒にアルカリ物
質が存在すると、紫外線照射中にアルコール分子から派
生するアルデヒドやケトンがアルドール縮合を起こし、
分解反応の進行を妨げ、結果として、分解反応が完全に
進行せず、含ハロゲン有機化合物の一部が残存する。更
に、含ハロゲン有機化合物を反応液に追加して分解操作
を繰り返し行うと、著しく分解効率が落ちるので、反応
系の繰り返し使用を効率よく行えない。
【0017】この点を考慮して、本発明は、実質的にア
ルカリ物質の存在しない溶媒中で紫外線照射を行い、紫
外線照射工程とは別に必要量のアルカリ物質を添加する
ことを基本としており、これに、分解効率などを向上さ
せる改良を加えるものである。以下、詳細について述べ
る。
【0018】まず、基本的には、含ハロゲン有機化合物
を含む反応液相を構成する溶媒は、溶媒和効果により含
ハロゲン有機化合物のハロゲン−炭素結合を弱めてハロ
ゲン−炭素結合の脱ハロゲンを容易にするような、含ハ
ロゲン有機化合物を溶解する溶媒であればよいが、その
ような溶媒のなかでも、メタノール、エタノール、n−
プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類等が
好適に用いられる。アルコール溶媒は、脱ハロンゲンさ
れた化合物に水素を与え、この性質は分解反応性を補助
する。又、アルコール溶媒中では、脱離したハロゲンは
安定にハロゲンイオンとして存在する。更に、アルコー
ルは工業的に取り扱い易く入手も容易である。ハロゲン
化合物を溶解可能な混合溶媒を使用してもよい。
【0019】アルコールのうち、作用を有効に発揮する
アルコールは次のようなものであると本発明者らは考察
している。
【0020】1)含ハロゲン有機化合物の分解反応におい
ては、アルコール分子のOH基の結合した炭素に結合す
る水素が作用して、含ハロゲン有機化合物の脱ハロゲ
ン、水素化を進行させる。従って、この水素の活性の高
いものがよい。
【0021】2)上記水素の反応性は、上記炭素に電子供
与性の置換基が結合することにより高められる。従っ
て、電子供与性置換基を有するものがよい。
【0022】3)アルコール分子は含ハロゲン有機化合物
とラジカル反応をするので、ラジカル反応における反応
性を低下させないために立体障害が少ない方がよい。こ
の点から、電子供与性置換基としてはメチル基が好まし
い。
【0023】4)電子供与性置換基の数が多い方が、上記
水素の反応性が高まるので、電子供与性置換基が2つ結
合するのが好ましい。
【0024】上記考察の結果から、イソプロパノールが
最適溶媒と考えられる。
【0025】上述のような溶媒に溶解させる含ハロゲン
有機化合物の量は、モル換算で溶媒量に対し約10分の
1以下であることが好ましい。30分の1以下であれば
更に好ましい。ハロゲン化合物の量がこれを越えると分
解反応を完全に進行させるのが難しくなる。
【0026】上記に従って、アルコール溶媒に含ハロゲ
ン有機化合物を添加して紫外線を照射する。紫外線照射
による分解反応は、比較的高エネルギーの紫外線によっ
てほぼ完全に進行する。遠紫外域、約300nm以下の波
長での照射が好ましく、波長254nmで照射した場合、
約10〜30分で初期含ハロゲン有機化合物はほぼ検出
されなくなる。分解速度は波長が長くなると遅くなる
が、増感剤を用いると、より低エネルギーの近紫外域
(400 〜300 nm)の紫外線を使用することも可能であ
る。光増感剤としては、アセトン、エチルメチルケト
ン、アセトアルデヒド等の、ケトン構造もしくはアルデ
ヒド構造を有するものが用いられる。光増感剤の添加量
は、分解条件によって変化するが、概して、分解する含
ハロゲン有機化合物の当モル量以下で十分な効力が得ら
れる。
【0027】本発明の分解方法における分解反応につい
て本発明者らは更に研究を進めた。その結果、紫外線照
射後のアルカリ添加工程の機能は、単に造塩によってハ
ロゲンを系外に除去するだけではなく、以下のような働
きがあることが本発明者らの研究により明らかになっ
た。
【0028】例えばフロンCFC−11を分解する場
合、紫外線照射工程で、フロンCFC−11から1つの
ハロゲンを脱離する段階A(下記反応式参照)はほぼ完
全に遂行することができるが、後続の2つ目以後の脱ハ
ロゲン段階B以降の進行はかなり難しい。しかし、照射
工程後の溶液にアルカリを加えると、段階B以降の脱ハ
ロゲンが容易に進行する。つまり、照射後のアルカリ添
加によっても分解反応が進行する。これに対し、アルカ
リ存在化で紫外線照射を行う場合は、段階Bの反応の進
行は認められるが、初期段階Aの進行が完全でなく、初
期含ハロゲン有機化合物CFC−11が一部残存する。
この結果、紫外線照射とアルカリ処理とを別工程とする
ことによって、最初の反応段階Aを完全に進行させるこ
とができ、後続の反応段階も容易に進行する。結果とし
て、アルカリ存在下で紫外線照射するよりも良い結果が
得られる。この知見は、分解の対象となる初期含ハロゲ
ン有機化合物が例えばHCFC−21のような場合、紫
外線照射工程は必要がないことを示すものでもある。こ
のようなアルカリ処理のみで分解可能なものとして、H
CFC−22、CFC−12等を挙げることができる。
【0029】
【化1】 紫外線照射後に添加されるアルカリ物質は、分解反応に
より生じるハロゲン及びハロゲン化水素と塩を形成して
反応系から沈澱分離されるようなものが基本的に使用可
能である。しかし、上述の知見から、本発明者らは、更
に、使用するアルカリの種類が後続反応(段階B以降)
の進行具合いに影響し得ることを予想し、研究を重ね
た。その結果、アルカリの違いによって反応性にかなり
の差があることが確認された。より詳細には、後続分解
反応の反応性は、アルカリ金属のアルコラート化合物が
高いことが見出された。
【0030】即ち、本発明においては、含ハロゲン有機
化合物の分解効率を改善するために、アルカリ添加工程
においてアルコラート化合物を用いることを特徴とす
る。経済性、入手容易性などの点から好ましいアルコラ
ート化合物として、ナトリウム及びカリウムのメタノラ
ート、エタノラート、n−プロパノラート、イソプロパ
ノラート等が挙げられるが、特にこれらに限定されるも
のではなく、必要に応じて様々なものを用いることがで
きる。
【0031】アルコラート化合物は、溶液状態で加えて
も、分散液状態あるいは直接粉末を加えても反応性は高
い。アルコールにアルカリ金属を溶解させてアルコラー
ト溶液を調整して加えることもできる。但し、アルコラ
ート化合物はアルコールに対する溶解度が低いため、溶
媒量が多量になる。アルコラート化合物のアルコキシ基
は、溶媒アルコールのアルコキシ基と同じである必要は
ない。経済的な要件及び後続分解反応の反応性を考慮す
ると、アルコラート粉末あるいは分散液の使用が最も有
効である。
【0032】アルカリ処理をアルコラート化合物を用い
て行う点からも、反応系の溶媒としてアルコールを用い
るのは都合がよい。
【0033】本発明に従ってアルカリが存在しない状態
で紫外線照射することによる他の利点は、反応系から回
収される溶媒が分解操作に再利用可能なことである。つ
まり、本発明においては、上述のようなアルカリ添加工
程の後に析出塩の分離工程及び含ハロゲン有機化合物再
添加工程を備えることによって、分解反応を高分解効率
で繰り返すことができる。この際に重要なことは、析出
塩を分離して得た回収液にアルカリが残存するのを防止
することである。回収液のアルカリ残存防止は、アルカ
リ添加工程で加えるアルカリ物質の量を、紫外線照射に
よる反応の進行状態を考慮して適宜調節することによっ
て可能であるが、測定誤差などにより液相にアルカリが
残存する可能性がある。これを防止する方法として、本
発明は、アルカリ添加工程の後に反応液相の洗浄工程を
設けることを提案する。
【0034】残存アルカリは水に溶解するので、水をア
ルカリ添加工程後の液相に加えれば、残存アルカリは加
えた水に溶解する。従って、このアルカリを含んだ水を
反応液相から分離できれば、液相の洗浄は可能となる。
これを可能とする1つの方法として、分解反応を行う液
相を構成する溶媒としてイソプロパノールを使用すると
いうことが提示される。
【0035】イソプロパノールは、他のアルコールと同
様、通常、水と任意の割合で混ざり合う。しかし、水が
電解質を含む場合、イソプロパノールは水と分離すると
いう特性を有する。従って、反応液相がイソプロパノー
ル液であれば、紫外線分解工程及びアルカリ添加工程の
後に反応液に添加、攪拌された水は、反応溶液中に懸濁
している塩(塩化ナトリウム、弗化ナトリウム等)及び
反応溶液中の残存アルカリを溶解し、つまり電解質を含
むので、上記性質に従ってイソプロパノール液相から分
離する。故に、分離した水相を除去することにより、ア
ルカリ物質がほぼ完全に除去されたイソプロパノール液
相が得られ、再び分解工程で良好に使用することができ
る。前述の紫外線照射における反応性に関してもイソプ
ロパノールは好ましい。
【0036】洗浄水の分離効率を向上させるためには、
予め電解質を含んだ水を添加するのが好ましい。例え
ば、食塩水を用いる場合、約15wt%以上のものである
と、水相とイソプロパノール相の分離が特に良好であ
る。又、水のpHを酸性に調整して添加すると、イソプロ
パノール液相からアルカリを吸収した廃液のpHを中性に
近づけることができるので、廃液の処理が容易になる。
又、分解反応中のアルコール液相に水が存在しても分解
反応には影響を与えないので、紫外線分解工程又はアル
カリ添加工程の前に反応溶液に水を加えておくと、アル
カリ添加によって生じる塩及び残存アルカリが素早く水
に溶解され、塩等を溶解した水がイソプロパノール溶媒
から短時間で分離する。従って、より効率よく残存アル
カリを除去することができる。
【0037】洗浄工程は必要に応じて数回繰り返しても
よく、実質的にアルカリが存在しない程度に溶媒の洗浄
を行って、紫外線分解に再利用される。
【0038】本願で言う「実質的にアルカリが存在しな
い状態」は前述のような紫外線分解における高効率や溶
媒の再利用による利点が得られる状態を示すものであ
り、具体的には、溶液を塩基性に傾けるのに寄与するア
ルカリ物質濃度が0.3 mol/l以下の状態を示す。
0.005 mol/l以下であればより好ましい。例え
ば、本発明の分解方法を繰り返し行うと、紫外線照射工
程における含ハロゲン有機化合物溶液中に若干の中和塩
(塩化ナトリウム、弗化ナトリウム、塩化カリウム、弗
化カリウム等)が混入し得るので、このような場合、ア
ルカリ物質濃度=(溶液中の全アルカリ物質濃度−中和
塩を形成するアルカリ物質濃度)=過剰アルカリ金属濃
度、とすることができる。
【0039】上述の方法を実施する分解装置として、図
1に示すような構造のものを例示することができる。こ
の装置1においては、混合槽3に含ハロゲン有機化合物
及び溶媒(イソプロパノール)が収容され、混合液が調
製される。混合液は紫外線照射槽5内の容器7に送ら
れ、紫外線ランプ9を取り巻く管11を通り、混合液に
紫外線が照射される。照射後の液体は、アルカリ処理槽
13へ送られる。アルカリ処理槽13内の液体にアルカ
リ槽15からアルカリ液が供給される。その後、水槽1
7から水が供給され、塩及び過剰アルカリが水に溶解し
て、水相と溶媒相とに分離する。分離した二相は別々に
アルカリ処理槽13から取り出し、溶媒相は溶媒タンク
19へ移し、水相は廃液タンク21へ送る。溶媒タンク
19に回収された溶媒は更に混合槽3へ送られ、再利用
される。
【0040】
【実施例】以下、実験結果に基づいて本発明の好適な実
施例について説明する。
【0041】(実験例1)図1の装置の混合槽3にイソ
プロパノール500mlを入れ、フロンCFC−11を濃
度が2 vol%になるようにイソプロパノールに加え、溶
解させた。溶液を紫外線照射槽5に移し、管11を通し
て溶液を循環させながら、主波長254nm(32W)の
紫外線ランプ9を30分間照射した。照射後の溶液をア
ルカリ処理槽13に送り、用いたCFC−11の4倍モ
ル量のナトリウムメタノラートをアルカリ槽から処理槽
13内へ供給した。その後、水槽17より水を200ml
加えて約2分攪拌して3分静置し、分離した水相を処理
槽13から排出した。処理槽13から排出される水相が
中性になるまで、同様に水によるイソプロパノール相の
洗浄操作を繰り返した。この後、イソプロパノール液中
の総フロン濃度(=含弗素有機化合物(CFC−11、
HCFC−21、HCFC−31、弗化メチル)の総濃
度)をガスクロマトグラフで測定し、下記式(1)に従
って分解率を計算した。分解率は100%であった。
【0042】
【数1】 回収されたイソプロパノール液を用いて、更に、上記と
同様にCFC−11溶液の調製、紫外線照射、アルカリ
処理及び水洗の一連の工程を繰り返し行った。25回目
の紫外線照射における分解は97%であった。
【0043】(実験例2〜6)イソプロパノール液の洗
浄を水に代えて表1に示す水溶液を各々用いた点を除い
ては実験例1と同様の操作を行い、1回目及び25回目
の紫外線照射におけるCFC−11の分解率を求めた。
この結果を表1に示す。
【0044】
【表1】 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 実験例 洗浄液 分解率(%) 1回目 25回目 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 1 水 100 97 2 NaCl水溶液(20wt%) 100 98 3 KCl水溶液(25wt%) 100 95 4 Na2 SO4 水溶液(20wt%) 100 96 5 NaNO3 水溶液(25wt%) 100 96 6 CH3 COONa 水溶液(30wt%) 100 98 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− (実験例7)図1の装置の混合槽3にイソプロパノール
500mlを入れ、フロンCFC−11を濃度が2 vol%
になるようにイソプロパノールに加え、溶解させた。更
に、水を200ml加えた。この溶液を紫外線照射槽5に
移し、管11を通して溶液を循環させながら、主波長2
54nm(32W)の紫外線ランプ9を30分間照射し
た。照射後の溶液をアルカリ処理槽13に送り、用いた
CFC−11の4倍モル量のナトリウムメタノラートを
アルカリ槽から処理槽13内へ供給した。この後、2分
間静置し、イソプロパノール液は水相とイソプロパノー
ル相に分離した。分離した水相中のNa濃度、ハロゲン
濃度からアルカリ除去率を下記式(2)に従って計算し
たところ、アルカリ除去率は98.8%であった。
【0045】
【数2】 (実験例8)図1の装置の混合槽3にイソプロパノール
500mlを入れ、フロンCFC−11を濃度が2 vol%
になるようにイソプロパノールに加え、溶解させた。こ
の溶液を紫外線照射槽5に移し、管11を通して溶液を
循環させながら、主波長254nm(32W)の紫外線ラ
ンプ9を30分間照射した。照射後の溶液をアルカリ処
理槽13に送り、用いたCFC−11の4倍モル量のナ
トリウムメタノラートをアルカリ槽から処理槽13内へ
供給した。この後、水を200ml加えて攪拌し、2分間
静置したところ、液相は水相とイソプロパノール相に分
離した。分離した水相中のNa濃度、ハロゲン濃度から
アルカリ除去率を計算したところ、アルカリ除去率は7
5%であった。
【0046】(実験例9)アルカリ添加工程後に水によ
る洗浄工程を行わず、析出塩の濾過を行った点を除いて
は実験例1と同様の操作を行い、イソプロパノール溶液
中の総フロン濃度に基づいて分解率を求めた。その結
果、1サイクルめの分解操作における分解率は100
%、12サイクルめにおける分解率は78%であった。
【0047】実験例1〜6と9との比較から明らかなよ
うに、水洗工程を設けることにより、余剰アルカリを反
応系からほぼ完全に除去することができ、この結果、高
分解率を維持して分解操作の繰り返しを行うことができ
る。又、実験例7と8の比較から、分解反応の前に含ハ
ロゲン有機化合物溶液に水を添加すると、アルカリによ
る分解反応とともに余剰アルカリの分離が進むので、操
作時間の大幅な短縮が図れる。水の添加は紫外線照射工
程とアルカリ添加工程の間であっても良いことは容易に
理解される。又、水の添加時期は、操作時間に影響する
のみであって、十分に時間をかけて洗浄を行えば、アル
カリ除去効率は95%以上を確保できるのはもちろんで
ある。
【0048】実験例9と同様の実験を200W程度の高
出力のランプを用いて行うと、初期ハロゲン化合物CF
C−11の分解率は、操作を繰り返しても高く維持され
るという結果が得られている。従って、実験例9におけ
る分解率の低下は、残存アルカリによるデメリットが紫
外線の低出力により顕著に現れたものと考えられる。こ
のことから、紫外線照射時のアルカリ存在量を減少させ
ることが、分解操作のエネルギー効率など経済的な有利
性を得るために重要であることが理解される。
【0049】(実験例10)図1の装置の混合槽3にイ
ソプロパノール500mlを入れ、フロンCFC−11を
濃度が2 vol%になるようにイソプロパノールに加え、
溶解させた。溶液を紫外線照射槽5に移し、主波長25
4nm、32Wの紫外線ランプ11で30分間照射した。
照射後の溶液をアルカリ処理槽13に送った。用いたC
FC−11の4倍モル量の金属ナトリウムをメタノール
必要量に溶解してアルコラート溶液を調製してアルカリ
槽に収容し、これを処理槽13内へ供給した。この後、
イソプロパノール液中の総フロン濃度をガスクロマトグ
ラフで測定し、分解率を計算した。分解率は100%で
あった。
【0050】(実験例11〜17)ナトリウムメタノラ
ート溶液に代えて表2に示すアルコラート溶液を各々用
いた点を除いては実験例10と同様の操作を行い、分解
操作の分解率を求めた。この結果を表2に示す。
【0051】
【表2】 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 実験例 アルコラート 分解率(%) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 10 Na/MeOH 100 11 Na/EtOH 100 12 Na/PrOH 100 13 Na/iso-PrOH 100 14 K/MeOH 100 15 K/EtOH 100 16 K/PrOH 100 17 K/iso-PrOH 100 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− (実験例18)ナトリウムメタノラート溶液に代えて、
15N NaOH水溶液30mlを用いた点を除いては実験例
10と同様の操作を行い、分解操作の分解率を求めた。
分解率は65%であった。
【0052】(実験例19)ナトリウムメタノラート溶
液に代えてナトリウムエタノラート粉末を各々用いた点
を除いては実験例10と同様の操作を行い、分解操作の
分解率を求めた。分解率は100%であった。更に、回
収されたイソプロパノール液を用いて、前記と同様にC
FC−11溶液の調製、紫外線照射、アルカリ処理の一
連の工程を繰り返し行った。5サイクル目の分解操作に
おける分解率を求めたところ、100%であった。
【0053】(実験例20)ナトリウムエタノラート粉
末に代えて当モル量のナトリウムメタノラート粉末を用
いた点を除いては実験例19と同様の操作を行い、1回
目及び5回目の分解操作の分解率を求めた。この結果を
表3に示す。
【0054】(実験例21)ナトリウムエタノラート粉
末に代えてナトリウムイソプロパノラートのイソプロパ
ノール溶液を用いた点を除いては実験例19と同様の操
作を行い、1回目及び5回目の分解操作の分解率を求め
た。この結果を表3に示す。
【0055】
【表3】 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 実験例 アルコラート 分解率(%) 全溶媒量(L) 1回目 5回目 1回目 5回目 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 19 EtONa 100 100 0.50 0.48 20 MeONa 100 100 0.50 0.49 21 iso-PrONa 100 100 0.50 2.47 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 実験例18におけるガスクロマトグラフの測定結果にお
いて、フロンCFC−11自体はほぼ全量が分解されて
いることが確認されている。このことを勘案すると、実
験例10〜18の結果から、アルカリ剤が脱ハロゲン反
応の2段階目(段階B)以降に関与することがわかる。
そして、分解反応を進行させるためには、アルコラート
化合物の使用が好ましいことが示されている。又、上記
実験結果から、アルコラート化合物は、溶液、粉体のい
ずれの場合も反応性が高いことがわかる。但し、効率的
に溶媒を使用するためには、粉体での使用が好ましい。
【0056】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
含ハロゲン有機化合物の分解効率が向上し、使用溶媒の
回収再利用が有効に行われるので、分解操作の繰り返し
をより確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の含ハロゲン有機化合物の分解方法を行
う装置の例を示す概念図である。
【符号の説明】
3 混合槽 5 紫外線照射槽 13 アルカリ処理槽 15 アルカリ槽 17 水槽 19 溶媒タンク
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭49−109351(JP,A) 特開 昭49−41344(JP,A) 特公 昭61−59779(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07B 35/06 A62D 3/00 B01J 19/08 C02F 1/58

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 含ハロゲン有機化合物とイソプロパノー
    ルとを含む液体を、実質的にアルカリ物質の不存在下で
    紫外線を照射する工程と、該液体をアルカリ物質で処理
    する工程と、該液体を水性液で洗浄処理する工程とを備
    える含ハロゲン有機化合物の分解方法。
  2. 【請求項2】 前記アルカリ物質はアルカリ金属のアル
    コラート化合物であり、前記洗浄処理後の前記液体を回
    収して、前記紫外線照射工程で使用することを特徴とす
    る請求項1記載の分解方法。
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