JP3434597B2 - 成形用アルミニウム合金板およびアルミニウム合金板の成形方法 - Google Patents

成形用アルミニウム合金板およびアルミニウム合金板の成形方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【産業上の利用分野】本発明は自動車車体軽量化用材料
で、加工性に難があるアルミニウム合金板の深絞り成形
性の改善に関するものである。
【0001】
【従来の技術】近年、大気中のCO2 の増加による地球
温暖化が問題になっている。そこで、自動車の排出する
CO2 量を規制するために、燃費規制の法律化の動きが
ある。また、地球環境保護、資源の有効利用からも自動
車の燃費改善が叫ばれ、最も有効な手段である車体軽量
化のニーズが高まってきた。これらの諸問題に対処でき
る材料として、軽量でリサイクル性に富むアルミニウム
合金板が注目を集めている。また、従来の高張力鋼板の
減肉による軽量化では問題となる部材の剛性低下による
商品性のイメージダウンや操縦性の低下も、アルミニウ
ム合金板での軽量化では発生しにくい点も利点として挙
げられる。
【0002】一方、アルミニウム合金板を採用するにあ
たっては、コストの高さと成形性の低さが大きな障害と
なる。このため、従来からアルミニウム合金板の成形性
を補うために、高粘度油、固形潤滑剤や樹脂フィルム
(特開平4−1951133号公報)が使用されてき
た。しかし、これらの手法では生産性が悪いばかりか、
プレス品の寸法形状が悪いために、自動車のデザインを
決定するキャラクターラインの入る外板等には採用され
なかった。また、高粘度油や固形潤滑材の使用はコスト
を上昇させるだけでなく、後工程での完全な除去が困難
であるために、塗装性等に悪影響を与えるとの指摘もな
されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】アルミニウム合金板の
成形性が低い原因の一つは材質が鋼板よりも大きく劣る
ことである。具体的には、深絞りの指標であるランクフ
オード値(r値)が、自動車用軟鋼板では2前後である
のに対して、アルミニウム合金板は0.6〜0.8と非
常に低い。また、全伸びも鋼板の約半分であるばかり
か、成形性に非常に有効であると言われている局部伸び
が、アルミニウム合金板では4〜5%と鋼板のそれの約
1/4である。そこで、特開平5−84525号公報の
ように製造条件で局部伸びの改善を図るものも出てきて
いる。その他の成形性が低い要因として、アルミニウム
合金板の表層が軟質であるために、加工時の工具との摺
動性に問題があり、工具と材料とがかじりを発生しやす
いことが挙げられる。
【0004】アルミニウム合金板の成形性を向上させる
ために、上述の強度や伸びなどの材質を改善することが
必要であるが、添加元素を大量に配合する必要があるば
かりか、不純物量を減らすために、高純度地金の採用が
必要となり、素材コストも大幅に上昇する。また、添加
元素による圧延性低下、生産性や歩留まりの悪化を招
き、製品のコストも大きく上昇する。よって、これらの
手法による成形性の改善代はコストの割には期待できな
いのが現状である。したがって、本発明者らは、これら
の手法ではアルミニウム合金板の飛躍的な成形性改善は
出来ないと判断した。
【0005】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者らは、
アルミニウム合金板の成形性を改善するために、成形加
工時の摺動性を改善することに注目し、種々の検討を行
った。この結果、アルミニウム合金板の成形性を低コス
トで、しかも、飛躍的に改善させる成形方法を見い出し
た。
【0006】本発明は、アルミニウム合金板の成形加工
時に摺動性を改善することにより、成形性を飛躍的に改
善する成形用アルミニウム合金板を提供することを目的
とする。すなわち、本発明の一つは、板の表面粗度がR
aで0.5〜1.0μmに調整されたアルミニウム合金
板の両面または片面に樹脂ワックスを含有する有機樹脂
被覆剤を0.4〜5μm厚に塗布した上に、1〜5cS
tの低粘度油を0.5〜5g/m2 塗布したことを特徴
とするアルミニウム合金板である。また、本発明の他の
一つは、Raで0.5〜1.0μmに調整されたAl−
Mg系またはAl−Mg−Si系の高張力、低摺動性の
アルミニウム合金板の両面または片面に樹脂ワックスを
含有する有機樹脂被覆剤を0.4〜5μmの厚さに塗布
した後、プレス成形前にアルミニウム合金板の両面に1
〜5cSt(片面当たりの量で)の低粘度油を0.5〜
5g/m2 塗布し、プレス成形することを特徴とする深
絞り成形に優れたアルミニウム合金板の成形方法であ
る。
【0007】
【作用】以下に、本発明を詳細に説明する。本発明が適
用されるアルミニウム合金は限定されるものではない
が、自動車部材としての必要特性から合金組成を選択す
ればよく、成形性を主に考えるのであればAl−Mg系
が有利であり、自動車外板のようにデント性が必要特性
として要求される部位には焼き付け硬化性を有するAl
−Mg−Si系が適している。
【0008】本発明で使用される有機樹脂被覆剤は、樹
脂ワックスを含有する有機樹脂である。上記の有機樹脂
は特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、アルキ
ド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹
脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は
単独で使用してもよく、また、2種以上を組み合わせて
使用してもよい。また、上述のエポキシ樹脂、ウレタン
樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂等を、アミノ化合
物、ポリイソシアネート等で変性したものを用いてもよ
く、さらに、これらの樹脂に他の成分を配合した組成物
であってもよい。
【0009】ここで使用する有機樹脂は、後述する樹脂
ワックスを固定するというベース樹脂としての役割を有
するため、素地であるアルミニウム合金板との接着力が
大きいことが必要である。この観点からは、エポキシ樹
脂、ウレタン樹脂またはそれらの混合樹脂が好ましい。
【0010】樹脂ワックスは、成形時の発熱により軟化
して、材料と工具との摺動性を改善する特性を有する常
温で固形の有機合成樹脂または天然樹脂をいい、潤滑性
を分担する。その樹脂の成分により;ポリエステルワッ
クス、ポリエチレンワックス、化学修飾炭化水素ワック
ス、置換アミドワックス等の合成ワックス;モンタンワ
ックス、ピートワックス、オゾケライト等の鉱物性ワッ
クス;蜜ろう、鯨ろう、昆虫ろう等の動物ろう;カルナ
バろう、木ろう、砂糖ろう等の植物ろう等に分けられ
る。具体的には、アライド A-C6(Allied A-C6,アライ
ドケミカル社製)、バスフ A(BASF A, BASF社製)、
シーク WP-2(Ciech WP-2)、エポレンN-12(Epolene
N-12)、ヘキスト PA130(Hoechst PA130 、ヘキスト社
製)、リューナ LF114(Leuna LE114 )、パラフリント
H-1(Paraflint H-1 )、ポリワックス 500(Polywax
500 )、ポリワックス 2000(Polywax 2000)、ベバ A
227(Veba A 227)、サンワックス 151-P(ポリエチレ
ンワックス、三洋化成工業社製)、ルワックス AF-29
(ポリエチレンワックス、BASF社製)、ビスコール550-
P(ポリプロピレンワックス、三洋化成工業社製)、ル
ブロン LP-100(フッ素樹脂、旭硝子社製)等を挙げるこ
とができ、上記のポリエチレンワックス、ポリプロピレ
ンワックス、フッ素樹脂等を使用することが、成形加工
時の摩擦係数低減効果の上から好ましい。より好ましく
は、高融点が得られるポリエチレンワックス、ポリプロ
ピレンワックスである。
【0011】樹脂に占めるワックス量が増えるほど摺動
性は改善されるが、あまりにも多量の上記樹脂ワックス
を配合すると、アルミニウム板への密着性の低下を招く
ために、最適な値を選ぶ必要がある。本発明の有機樹脂
被覆剤中への上記の樹脂ワックスの配合量は、20〜9
5wt%の範囲である。より好ましくは、30〜80w
t%である。上記樹脂ワックスは、粒径数ミクロンから
10ミクロンのものが市販されており、上述したアルミ
ニウム合金板の表面粗度よりも大きなものを使用すれば
よい。0.5μm以上10μm以下のものを使用するこ
とが好ましい。
【0012】上記有機樹脂被覆剤は、好ましくは、上述
した有機樹脂、樹脂ワックスの他に、本発明の有機樹脂
被覆剤の特性を損なわない範囲で硬化剤、安定剤、分散
剤、充填剤等が添加されてもよい。
【0013】上記樹脂被覆剤は、焼付乾燥後、上記樹脂
被覆剤中の樹脂ワックスの含有率が20〜95wt%、
好ましくは30〜80wt%となるように有機樹脂と樹
脂ワックスとを配合する。
【0014】本発明の一つは上述のようにして得られた
有機樹脂被覆剤を、上記アルミニウム合金板の両面また
は片面に所定量を塗工し、さらにその上に板を製造する
工場で後述する低粘度油を塗布して本発明の係わる成形
用アルミニウム合金板とする。本発明の他の一つは有機
樹脂被覆樹脂層を両面または片面に形成させた上記アル
ミニウム合金板をプレス成形工場で成形をする前に後述
する低粘度油を塗布してプレス成形する。ここで、使用
する低粘度油は、パラフィン系もしくはナフテン系の鉱
油を主成分とし揮発性有機溶剤を添加したものである。
前記低粘度油を前記樹脂上に塗布すると、樹脂面に付着
したゴミ等が洗い流され、星目等の欠陥を防止する上で
有効であるばかりか、摺動性改善に非常に有効である。
【0015】本発明で使用する低粘度油は、洗浄効果や
アルミニウム合金板とのなじみ性、そして後工程での脱
脂性の点から、1〜5cStの粘度を有するものとす
る。より好ましくは、1〜3cStである。塗布する低
粘度油の量は、塗布量が増加するにつれてアルミニウム
合金板の脱脂不良が起こりやすくなるため、5g/m2
以下にすることが必要である。また、0.5g/m2
満ではアルミニウム合金板上への均一な塗布が難しいた
め、摺動性改善効果が期待できない。したがって、塗布
する油量は0.5〜5g/m2 に制御する必要がある。
より好ましくは、0.5〜2.0g/m2 の範囲であ
る。
【0016】また、上述のような低粘度油を用いて摺動
性を改善するためには、素地であるアルニウム合金板
の表面粗度を管理することが重要である。金属板上に塗
工するものが樹脂のみである場合は、素地となる板の表
面は滑らかで凹凸の少ないブライト材が有利である。し
かし、自動車部品の様に金型にビードが入り、高面圧が
掛かる成形では、樹脂の剪断抵抗が増加するのに伴い摩
擦係数も増加することが知られている。また、上述のよ
うな低粘度油は、成形時に、材料が塑性変形するにつれ
て素地表面の油ためから出て、金型と材料の金属接触を
低減し、低面圧領域では樹脂の効果で、高面圧領域では
油の効果でそれぞれ成形性が改善されると思われる。し
たがって、上述の複合潤滑は、深絞り成形のように面圧
が変化する成形に有利な潤滑方法である。
【0017】しかし、素地となる材料の表面粗度には十
分な注意を払うことが重要である。すなわち、素地の粗
度が非常に大きくなると、樹脂で表面を均一に覆うこと
が難しくなり、摺動性が低下する。逆に粗度が非常に小
さくなると、油ためが素地表面に無くなり、潤滑油の効
果が期待できない。そこでアルミニウム合金板の粗度
を、平均粗さ(Ra)で下限が従来のアルミニウム合金
板の通常圧延(ミルフィニッシュ)より大きな0.5μ
mとした。粗度の上限は、アルミニウム合金板で低粘度
油使用を想定して決定された値より小さな1.0μmと
した。より好ましくは、0.5〜0.8μmの範囲であ
る。
【0018】本発明のアルミニウム合金板の成形方法
は、以下のように行う。アルミニウム合金板を、通常の
方法で鋳造し、熱延し、冷延焼鈍して、ダルフィニッシ
ュ加工を行い所定の表面粗度をもった冷延板とする。こ
のアルミニウム合金板上の両面または片面に、ロールコ
ータ等を用いて上述の有機樹脂被覆剤を所定の厚さにな
るように塗布し、乾燥させる。その後、有機樹脂被覆層
上に上記の低粘度油を所定の量塗布する。なお、この低
粘度油の塗布は前述のごとく、プレス成形の前に実施し
てもよい。このように製造した本発明に係わる成形用ア
ルミニウム合金板は、プレス成形油を用いることなく低
速、低面圧のプレス成形、押出し成形などの成形におい
て、成形性が非常によく、自動車部品などを製造するの
に好適である。
【0019】上記有機樹脂被覆で形成される有機樹脂
層の塗工厚は、0.4から5μmに制御することが重要
である。0.4μm未満の塗工厚では膜厚の制御が困難
であるばかりかアルミニウム合金板の表層を均一に覆う
ことができないため、摺動性の改善も不十分となり、成
形性の大きな改善は期待できない。一方、5μmを越え
る塗工厚では、摺動性の改善はほぼ飽和し、コストが増
加するばかりか、有機樹脂被覆剤で形成される樹脂層が
厚くなりすぎるために、成形加工時に樹脂剥離が発生し
やすくなる。このため、樹脂厚は0.4μm以上5μm
以下にすることが必要である。有機樹脂被覆剤の塗工を
片面にするか両面にするかは、成形方法により選択すれ
ば良い。すなわち、張出し性が主体となる成形ではポン
チ面側に有機樹脂被覆剤を塗工すれば十分であり、深絞
り成形では両面に塗工することが、破断防止に有効であ
る。
【0020】
【実施例】以下に、実施例をもって本発明をより詳細に
説明するが、本発明は何等これらに限定されるものでは
ない。
【0021】(予備試験)Al−Mg系である5182
合金(Al−4.5%Mg)を、通常の鋳造、熱延、冷
延焼鈍を経て、1.0mm厚の冷延板とした。なお、表
面は傷付き性からショットダル(Ra=0.8μm)圧
延とした。エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製、エ
ピコート1007)とウレタン樹脂(三菱化成社製、マイテ
ックBL-100)をエポキシ樹脂:ウレタン樹脂の比が2
5:75となるように混合し、有機樹脂を調合した。こ
の有機樹脂に焼付け乾燥後の樹脂ワックス量が50wt
%となるように樹脂ワックス(ポリエチレンワックス;
サンワックス 151-P、三洋化成工業社製)を混合し、有
機樹脂被覆剤を調合した。上記のアルミニウム合金板の
両面に、上述のように調整した有機樹脂被覆剤をロール
コーターを用いて、樹脂塗工厚が0.4〜6.0μmと
なるように塗布し、乾燥した。
【0022】これらの両面有機樹脂被覆アルミ合金板よ
り、20mm×200mmの摺動試験用短冊試験片を切
り出し、平面金型(幅10mm)を用いて、以下の試験
条件で摩擦係数を測定した。試験条件は、面圧を2水準
の1kgf/mm2 および4kgf/mm2 とし、摺動
速度を実際に部品のプレスを行う速度に近い200mm
/sとした。測定結果を図1に示す。図1に示したよう
に、本発明に係わる有機樹脂被覆剤を塗布することによ
って摩擦係数は大きく低下し、本発明に係わる有機樹脂
被覆剤が潤滑性に富むことが明らかになった。また、ア
ルミニウム合金板上に形成された有機樹脂被覆層の厚さ
が0.4μm以上になると、いずれの面圧においても摩
擦係数は0.1未満となり、優れた摺動性を示した。一
方、有機樹脂被覆層の厚さが6.0μm以上になると、
摩擦係数は0.1以上となり、摺動性の低下が認められ
た。
【0023】(実施例1)予備試験で作製した供試材を
使用して、有機樹脂被覆層の厚さと低粘度油を使用した
場合の成形性への効果を調査した。試験条件は、円筒深
絞りで、ポンチ径φ50mm、プランク径φ95mm
(絞り比1.9)、ポンチ速度200mm/sとした。
低粘度油は、商品名;NOX RUST530-40S (パーカー興産
(株)製、粘度5cSt)を用い、塗布量は0.5g/
2 として、浸漬後、室温放置にて塗布した。
【0024】試験は、しわ押さえ荷重を変えて成形可能
範囲を調査するとともに、成形金型による樹脂の剥離発
生を目視で測定した。結果を図2に示す。図2に示すよ
うに、有機樹脂被覆層のみを形成し低粘度油を塗布して
いないアルミ合金板の場合には、しわ押さえ荷重の上限
値は10トン未満であったが、本発明の有機樹脂被覆層
の上に上記の低粘度油を塗布したアルミニウム合金板
は、この有機樹脂被覆層を有するアルミニウム合金板の
成形可能範囲を大きく拡大し、20トンのしわ押さえ荷
重でも絞り抜けが可能となった。なお、有機被覆樹脂層
の厚さが6.0μm以上になると、樹脂剥離が発生し、
成形可能範囲の上限値が低下した。
【0025】(実施例2)上記の5182合金の熱延板
5mm厚を研究圧延において、1mm厚の冷延板とした
のち、530℃で1分保持の焼鈍を行った。この冷延板
に研究スキンパスロールで図3に示す何種類かのショッ
トダル仕上げとし、有機樹脂被覆層の形成に最適な表面
性状の検討を行った。予備試験と同じ組成の有機樹脂被
覆剤をロールコーターを用いて、厚さ0.5μmとなる
ように両面に塗工し、乾燥した。さらに、この有機樹脂
被覆層の上に粘度3cStの低粘度油(商品名:NOX RU
ST307TS 、パーカー興産(株)製)を、0.5g/m2
塗布したのち、予備試験と同様にして摺動試験で摩擦係
数(μ)を測定した。
【0026】試験条件は平板摺動で、速度は200mm
/s、面圧は4kgf/mm2 一定とした。試験結果を
図3に示す。図3に示したように、上記有機樹脂被覆層
を形成させて低粘度油を塗布していないアルミニウム合
金板では、Raの値が大きくなると摩擦係数もこれに伴
って上昇した。一方、本発明の有機樹脂被覆層の上に低
粘度油を塗布した場合には、本発明の範囲であるRa=
0.5〜1.0μmで最も低い摩擦係数を示した。
【0027】(実施例3)上記の5182合金の両面に
前記予備試験で製造した有機樹脂被覆剤を0.5g/m
2 塗工し、乾燥した。この有機樹脂被覆層の上に、4種
の低粘度油(NOXRUST2012N (パーカー興産(株)
製)、粘度1cSt;NOX RUST530-40S(パーカー興産
(株)製)、粘度5cSt;R303P (杉村化学社製)、
粘度7cSt;Z5(井出興産(株)製) 、粘度10c
St)をそれぞれ、表1に示す量を塗布して、その後の
脱脂性を調査した。脱脂薬剤としてパーカーライジング
社製のFC-L4480を使用し、液温43℃で、2分間浸漬し
たのち水濡れ性で脱脂性を判定した。結果を表1に示
す。
【0028】
【0029】表1に示したように、低粘度油の粘度を5
cSt以下、塗布量を5g/m2 以下にすることで、良
好な脱脂性が得られることが判明した。
【0030】
【発明の効果】本発明によれば、所定の表面粗度を有す
るアルミニウム合金板の上に有機樹脂被覆層を両面また
は片面に形成し、その上に低粘度油を塗布することによ
り、加工性を向上させることができた。この結果、本発
明による成形用アルミニウム合金板を用いる、あるい
は、本発明によるアルミニウム合金板の成形方法を採用
すると、自動車車体の軽量化等を行う際に、優れた深絞
り成形品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】アルミニウム合金板表面上に形成された有機樹
脂層の厚さと摩擦係数(μ)との関係を示す図である。
【図2】アルミニウム合金板表面上に形成された有機樹
脂層の厚さおよび低粘度油の有無と成形性との関係を示
す図である。
【図3】アルミニウム合金板表面の粗度(Ra)および
低粘度油の有無と摩擦係数(μ)との関係を示す図であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C22C 21/00 C22C 21/00 Z (72)発明者 比 良 隆 明 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎 製鉄株式会社鉄鋼研究所内 (72)発明者 小 倉 健 一 東京都千代田区丸の内2丁目6番1号 古河電気工業株式会社内 (72)発明者 佐 藤 隆 宏 東京都千代田区丸の内2丁目6番1号 古河電気工業株式会社内 (56)参考文献 特開 平4−351229(JP,A) 特開 平3−281021(JP,A) 特開 平6−134504(JP,A) 特開 平6−207189(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B21D 22/20 B21D 37/18 B05D 7/14 B32B 15/08 C22C 21/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】板の表面粗度がRaで0.5〜1.0μm
    に調整されたアルミニウム合金板の両面または片面に
    脂ワックスを含有する有機樹脂被覆剤を0.4〜5μm
    厚に塗布した上に、1〜5cStの低粘度油を0.5〜
    5g/m2 塗布したことを特徴とする成形用アルミニウ
    ム合金板。
  2. 【請求項2】Raで0.5〜1.0μmに調整されたA
    l−Mg系またはAl−Mg−Si系の高張力、低摺動
    性のアルミニウム合金板の両面または片面に樹脂ワック
    スを含有する有機樹脂被覆剤を0.4〜5μmの厚さに
    塗布した後、プレス成形前にアルミニウム合金板の両面
    に1〜5cSt(片面当たりの量で)の低粘度油を0.
    5〜5g/m2 塗布し、プレス成形することを特徴とす
    るアルミニウム合金板の成形方法。
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