JP3430346B2 - 磁気光学素子の製造方法 - Google Patents

磁気光学素子の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、光受動素子にファラデ
ー回転子として用いられ、透過光の波長領域が実質的に
0.98μm、1.017μm、1.047μm、1.
064μm帯である磁気光学素子、特に、光増幅器用励
起光源(例えば、レーザーダイオード)の近傍に用いら
れる光アイソレータ、および同波長領域で用いられる光
磁界センサへの使用に好適な磁気光学素子の製造方法に
関する。 【0002】 【従来の技術】光通信システムにおいては、近年、光信
号を電気信号に置き換えることなく光信号のままで直接
増幅を行う、光ファイバ増幅器の使用が検討されてい
る。この場合、前記増幅器内にEr(エルビウム)添加
光ファイバを使用し、このEr添加光ファイバに増幅す
る信号光と励起光とを透過させて増幅光を得る。光通信
システムにおいて一般的な波長である1.55μmの信
号光が用いられている場合、前記励起光の波長は1.4
8μmまたは0.98μmの場合に特に良好な結果が得
られることが確認されている。 【0003】このうち1.48μm帯励起による光ファ
イバ増幅器は0.98μm帯励起による光ファイバ増幅
器の場合に較べて、得られる光学特性の面で必ずしも優
れているわけではないが、1.48μm帯では信頼性の
ある励起用レーザ光源がすでに得られていること、また
1.48μm帯に対応した光アイソレータが同じく開発
済みであることから、既に実用化されている。 【0004】いっぽう、0.98μm帯励起による光フ
ァイバ増幅器は、1.48μm帯励起による光ファイバ
増幅の場合に較べて実験的により高効率・低雑音特性で
あることが確認されていたが、0.98μm帯域におけ
る高出力の適切な励起用レーザ光源および光アイソレー
タが従来は存在せず、それが開発のネックとなってい
た。 【0005】ところで1.48μm帯用の光ファイバ増
幅器では、光アイソレータ用ファラデー回転子に磁性ガ
ーネット膜を用いた素子を用いることが一般的である
が、同素子は0.98μm帯においては挿入損失がきわ
めて大きいために実用性がない。一方、0.98μm帯
では最近になって励起用レーザ光源として半導体レーザ
の開発が進んでいることから、0.98μm帯を用いた
光ファイバ増幅器が注目を集めつつある。これらのこと
から小型、低損失の0.98μm帯用光アイソレータに
対する需要が高まっており、それに用いられるファラデ
ー回転子の開発が求められている。また将来的に実用の
可能性の大きい1.3μm信号光に対するPr添加光フ
ァイバー増幅器の励起用光源(1.017μmおよび
1.047μm)、光CATVの伝送用光源として用い
られようとしているレーザダイオード励起Nd:YAG
レーザ光源(1.064μm)に対しても小型、低損失
の光アイソレータが求められようとしている。 【0006】0.98μm、1.017μm、1.04
7μm、1.064μmの各帯域の近傍において低損失
・高ファラデー回転係数である材料としてMnTe−H
gTe−CdTeの3元系半磁性半導体材料が適切であ
ることは、特開昭61−123814号(即ち、123
814/1986号)公報によって従来から知られてい
た。また同3元系材料においてファラデー回転係数が高
い値を示す組成領域についても、前記特開昭61−12
3814号公報や特開平3−229217号(即ち、2
29217/1991号)公報、および平成5年(19
93年)1月25日出願の特願平5−9984号明細書
(平成6年(1994年)8月12日公開の特開平6−
222309号(即ち、222309/1994号)公
報参照)等によって提案がなされている。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
の公報に示されているCdMnHgTe結晶はいずれも
MBE(分子線エピタキシィ)法や従来のブリッジマン
法にて作製されているが、これらは均一な単結晶の材料
を工業的に量産可能な方法であるとは言い難い。 【0008】MBE法は真空中で原料の構成元素を基盤
材料に蒸着して作製する方法であるから、作製された結
晶は、通常、数μm乃至数十μm程度のきわめて薄いも
のとなり、一般に光アイソレータに必要な45°のファ
ラデー回転角を得るのに十分な寸法形状、少なくとも厚
さ300μm程度の素子を作製することは困難である。
また通常この方法では作製結晶は他結晶体膜となる場合
が多く、ファラデー素子に用いられる光学的均一性のす
ぐれた単結晶の素子材料を得ることは難しい。 【0009】一方、従来のブリッジマン法によれば、十
分な大きさの素子を作製することは可能であるが、その
作製の途中で双晶が発生したり、結晶成長の途中でその
組成に結晶偏析と呼ばれる変動が生じるために、通常で
は組成が不均一かつ光学的品質の低い素子材料しか得る
ことができず、これが歩留まりの低下や光学品質や特性
の低下の原因となるために、やはり実用的な方法である
とは言えない。この従来のブリッジマン法を用いてCd
MnHgTe結晶(単結晶)を作製する場合について以
下に詳細に説明する。 【0010】この従来のブリッジマン法を用いてCdM
nHgTe結晶(単結晶)を作製する場合、後に詳述す
るように、出発原料を相変態点以上の融点で溶融し、溶
融された原料を徐々に冷却するので、この徐々な冷却に
よる結晶化過程で必ず相変態点を通過し、その際に双晶
が発生する。また、この場合、非コングルェント溶融で
あることから結晶の成長とともに結晶と融液の組成が変
化し、得られた結晶には場所により組成に差が生じるた
め、均一な組成を有する結晶が得られない。 【0011】双晶が存在する場合、その境界面近傍は光
学的品質が低いため、ファラデー回転子としての実用光
学特性を満足するためには双晶面に対して特定の向き
(一般的には双晶面に垂直な向き)に育成結晶を切り出
す必要があり、かつこれらの素子では入射光が双晶面を
透過するために光学的品質が低く、光学特性のばらつき
も大きい。さらにこの製造法によって得られた結晶は組
成偏析(結晶組成の変動)が大きく、結晶の成長方向に
ヴェルデ定数および挿入損失の値が大きく変動するの
で、ファラデー回転子として利用しうる適切な組成範囲
の領域は製造した結晶の中のごく限られた部分であっ
た。これらは従来のブリッジマン法による結晶では避け
られなかったことで、双晶の発生がなく、かつ組成偏析
の小さいCdMnHgTe結晶が求められていた。 【0012】次に、前述の公報に開示されたMnTe−
HgTe−CdTeの3元系半磁性半導体材料の光学特
性について説明する。高光学特性を得るためのMnTe
−HgTe−CdTeの3元系半磁性半導体材料の組成
としては、前述の各公報に示された組成範囲は必ずしも
適当なものであるとは言えない。一般にファラデー素子
に求められる光学特性は、透過光の波長に対して、 (1)ヴェルデ定数(単位長さ・単位印加磁界当たりの
ファラデー回転角)が大きいこと (2)透過光の挿入損失が小さいこと の2点である。ところが、挿入損失に関しては0.7〜
0.9μmの領域にカットオン波長とよばれる挿入損失
が急激に増加する領域があり、その近傍、およびより短
波長側の領域では挿入損失が大すぎるためにファラデー
回転子として用いることができない。カットオン波長の
値はCdMnHgTe半磁性半導体の場合、その組成に
応じて変動するので、目的とする波長領域以外での光学
特性のデータを単純に外挿して、素子を用いる波長領域
でファラデー回転子として十分な光学特性を有するかを
判断することは不可能である。 【0013】これをふまえて前記特開昭61−1238
14公報および前記特開平3−229217公報を顧み
れば、前者では実施例に記された実測波長は0.8μ
m、1.3μm、1.5μm、の3波長のみであり、ま
た後者では0.50〜0.78μmの領域に限定されて
いる。 【0014】従って、0.98μm帯用光アイソレータ
に用いることを前提とするファラデー回転素子におい
て、良好な光学特性を得られる範囲として上記の2つの
公報に示された組成範囲をそのまま当てはめて考えるこ
とは無理で、適する組成範囲を知るためには様々な組成
でCdMnHgTe半磁性半導体を新たに製作し、その
光学特性であるヴェルデ定数とカットオン波長を必要な
波長領域で新規に測定する必要がある。 【0015】また、上記特願平5−9984号明細書で
はその対応波長領域に0.98μm帯が含まれているも
のの、使用対象とする波長範囲を0.8〜1.1μmと
かなり広くとったために使用波長を0.98μm近傍に
限定した場合に較べると請求範囲の組成領域が逆に著し
く狭くなっており、この領域のみでは良好な光学特性が
得られる0.98μm帯近傍波長用ファラデー回転素子
の組成範囲として適切とは言えない。 【0016】以上記した通り、0.98μm帯近傍波長
用光アイソレータに用いられるCdMnHgTe半磁性
半導体のファラデー回転子において求められているの
は、 (1)工業的に安定して量産可能な製造の手段があるこ
と。 【0017】(2)同波長領域で透過光の挿入損失が小
さく、かつヴェルデ定数が十分に大きい半磁性半導体の
組成範囲が提示されること。 の以上2点である。しかし、上述の先行技術ではこの何
れについても明確に示されてはいなかった。なお、上記
の説明ではCdMnHgTe半磁性半導体によるファラ
デー回転子を0.98μm帯近傍波長光アイソレータに
用いることを前提としているが、同じ波長の透過光を用
いる光磁界センサ用ファラデー回転子として用いる場合
でも全く同様である。 【0018】 【0019】本発明の課題は、ファラデー素子として用
いることができる、組成が均一でかつ光学的品質の高い
磁気光学素子を、製造する方法を提供することにある。 【0020】 【0021】【課題を解決するための手段】 発明によれば、(Cd
1-X-Y Mnx HgY 1 Te1 (0<X<1、0<Y<
1)で表される磁気光学素子であって、MnTe−Hg
Te−CdTeの擬3元系相図において、 Mn0.5 Hg0.5 Te, Mn0.6 Hg0.4 Te, Cd0.83Mn0.13Hg0.04Te, Cd0.83Mn0.05
0.12Te の4点に囲まれる範囲に含まれる組成を有し、かつ30
0μm以上の厚さを有する、双晶及び組成偏析を実質的
に含まない単結晶からなる前記磁気光学素子を製造する
方法において、前記擬3元系相図において前記範囲に含
まれる目標組成に対し、Te以外の元素の割合はそのま
まの状態で、Teが0.001以上0.1以下過剰であ
る割合に配合された金属Cd、金属Mn、金属Te、お
よび金属HgTeからなる原料又は金属Cd、金属M
n、金属Te、および金属Hgからなる原料を出発原料
として用意する工程と; 前記出発原料を、Hgの蒸気圧に対応する圧力に維持さ
れ、かつ、前記出発原料を融解し得る温度に維持された
雰囲気に置いて、前記出発原料を、融解された原料に融
解する工程と; 前記融解された原料を急冷凝固して多結晶体とする工程
と; この多結晶体を、Hgの蒸気圧に対応する圧力に維持さ
れ、かつ、前記多結晶体の相変態温度より低い温度に維
持された雰囲気に置いて、固相反応により前記単結晶を
再結晶成長させる工程とを含むことを特徴とする磁気光
学素子の製造方法が得られる。 【0022】 【実施例】次に本発明の実施例について詳細に説明す
る。 【0023】図1に参照すると、本発明の一実施例によ
る磁気光学素子は、(Cd1-X-Y Mnx HgY 1 Te
1 (0<X<1、0<Y<1)で表される磁気光学素子
において、波長領域0.98μm、1.017μm、
1.047μm、1.064μm帯の各波長近傍域で使
用できるように、MnTe−HgTe−CdTeの擬3
元系相図において、Mn0.5 Hg0.5 Te, Mn0.6
Hg0.4 Te,Cd0.83Mn0.13Hg0.04Te, Cd
0.83Mn0.05Hg0.12Teの4点a、b、c、及びdが
囲む範囲に含まれる組成を有し、かつ300μm以上の
厚さを有する、双晶及び組成偏析を実質的に含まない単
結晶からなる。 【0024】後に詳述されるが、上述の単結晶からなる
磁気光学素子は、簡単に言えば、以下のように製造され
る。即ち、前記擬3元系相図において前記範囲に含まれ
る目標組成に対し、Te以外の元素の割合はそのままの
状態で、Teが0.001以上0.1以下過剰である割
合に配合された金属Cd、金属Mn、金属Te、および
金属HgTeからなる原料(又は金属Cd、金属Mn、
金属Te、および金属Hgからなる原料)を出発原料と
して用意し、この出発原料を石英るつぼに充填する。こ
の出発原料を充填した石英るつぼ内を、Hgの蒸気圧に
対応する圧力とし、加熱炉の均一な加熱領域に、出発原
料を充填した石英るつぼを設置して、出発原料を融解す
る。そして、この融解された原料を急冷凝固して多結晶
体とする。次に、この多結晶体の入った石英るつぼを、
加熱炉の特定の温度勾配(後述する)を持つ領域に移
し、多結晶体の入った石英るつぼを、多結晶体の相変態
温度より低い温度に維持され、かつ、Hgの蒸気圧に対
応する圧力に維持された雰囲気に数日間置いて、固相反
応により前述の単結晶を再結晶成長させる。 【0025】この製造方法は、クェンチ法(高圧溶融冷
却法)によって作製された、目標組成にほぼ対応する組
成を持つ多結晶原料のロッドをアンプル状のるつぼに真
空封入し、このるつぼを加熱装置により多結晶原料の相
変態点より低い温度に数日間保持することで、多結晶原
料を再結晶成長させることにより単結晶を製造する。こ
の製造方法によれば、従来のブリッジマン法における上
述した欠点が解消され、双晶の発生がなく、組成偏析の
極めて小さい高品質の単結晶を量産することができる。 【0026】上述の単結晶からなる磁気光学素子をファ
ラデー回転子として備えることによって、アイソレーシ
ョン:30dB以上、挿入損失:0.5dB以下の実質
的高特性を有し、かつ小型でLDモジュール内に実装可
能な0.98μm、1.017μ、1.047μm、
1.064μmの各近傍波長帯域用の光アイソレータを
得ることができる。同様に、上述の単結晶からなる磁気
光学素子をファラデー回転子として備えることによっ
て、上記波長帯域の透過光を用いる高性能の光磁界セン
サを得ることも可能である。 【0027】ZnS型構造を持つCdTeのCdの一部
をMnに置換したCd1-x Mnx Te(0<X<1)は
大きなヴェルデ定数を持つ素子であることが知られてお
り、0.63〜0.85μmの透過光領域において、光
アイソレータ用ファラデー回転子として用いられている
ことは公知である。しかし同素子は本発明での対象領域
である0.98μm、1.017μm、1.047μ
m、1.064μm帯の各近傍波長ではヴェルデ定数が
小さいため、そのままではファラデー回転子として十分
な光学特性を得ることができない。これは、一般にCd
MnTe素子においてはヴェルデ定数がそのカットオン
波長近くで大きくなる特徴があり、その値が同素子では
0.6〜0.7μmであることに起因している。この素
子を用いて上記の各帯域の近傍で十分に大きなヴェルデ
定数を得るには、Mnの組成値を変化させてヴェルデ定
数の絶対値を増大させるとともに、Cdの一部をHgに
置換することで前記カットオン波長を0.9μm帯域に
シフトさせればよい。ただし、カットオン波長そのもの
の領域では素子の挿入損失が増大するためにファラデー
回転子としては使用できなくなる。挿入損失の面から
は、上記の各帯域の近傍でCdMnHgTe素子を用い
るためのカットオン波長は0.94μm以下であること
が望ましい。このとき、波長0.98μmにおける挿入
損失は0.5dB以下(透過率は90%以上)であり、
この値は光アイソレータ用ファラデー回転子として用い
るに必要な程度の小さな値である。なお、最終的な素子
の光学特性に対してはバルク素子としての光学品質を左
右する結晶性も大きく影響することになる。 【0028】一方CdMnHgTe単結晶の製造方法に
おいても、本発明にて提案する製造方法によって大きく
改善を図ることができる。即ち、クェンチ法(高圧溶融
冷却法)によって作製された、目標組成に対する組成を
持つ多結晶原料のロッドをアンプル状のるつぼに真空封
入し、このるつぼ加熱装置により目的組成結晶の相変態
点より低い温度に保持することで、多結晶原料を再結晶
成長させて単結晶を製造する。その際に結晶育成上の問
題点(石英るつぼへの圧力歪み、Hgの析出など)を防
ぐため、圧力、温度および温度勾配の設定値を常に適切
に保つようにすることで、同一装置で繰り返し安定した
組成の素子結晶の製造を行うことが可能となる。以上の
方法をとることで、従来の従来のブリッジマン法では光
学品質に対する大きな問題であった双晶の発生を原理的
にゼロにするとともに、結晶の光学特性に多大な変動を
与える組成偏析を実用上問題が生じない範囲に抑えこみ
うるため、高光学特性のファラデー回転素子結晶を、高
歩留まりで製造することができ、従ってこの方法で工業
的に量産することがはじめて可能である。 【0029】次に本発明の具体例について説明する。 【0030】ここでは、図1のc点の組成に相当するC
0.83Mn0.13Hg0.04Teの単結晶を作製する場合に
ついて、以下に従来のブリッジマン法および本発明によ
る製造方法の双方について説明する。 【0031】図2は従来のブリッジマン法を実行するた
めの製造装置の概略構成を示している。金属Cd、金属
Mn、金属HgTe、および金属Teを目標となる割合
(モル数比;Cd:Mn:HgTe:Te=0.83:
0.13:0.04:0.96)に秤量して出発原料と
し、次いで出発原料を石英るつぼ3に装填し、加圧容器
8内をアルゴンガス9の存在下において真空封止して、
高圧ブリッジマン炉の電気炉1の溶融ゾーンHにて溶融
(条件:融点約1050℃、圧力約20atm)して融
液4とした後に、石英るつぼ3を3〜7mm/hour
の速さで降下させてその下部側から冷却し、石英るつぼ
3の下端側より順次結晶成長を行わせ、単結晶5とす
る。この方法で得られた結晶は、まず融点(1050
℃)から相変態点(950℃)の間ではウルツ鉱型構造
となり、次いで相変態点以下の温度では閃亜鉛鉱型構造
に変わる。以上のことから、この製造方法を採用する
と、得られる結晶は双晶が発生しかつ組成変動により結
晶成長方向で光学特性が変化する。従って得られた結晶
は光学素子の材料としてはその特定面方位、かつ特定領
域の部分しか使うことが出来ないために歩留まりが低下
してしまう。従ってこの結晶では、ファラデー回転子と
して利用できる領域は全体の結晶のごく一部であり、し
かも品質も不十分であった。 【0032】図3は、この従来のブリッジマン法にて製
造された半磁性半導体結晶の構造の赤外偏光顕微鏡写真
である。図3では写真の裏面側に育成開始部があり、結
晶はそこから写真の表面側に向けて成長している。この
写真の斜め方向に一面にすじ状の構造が明瞭に観察され
るが、これは発生した双晶の境界面である。境界面どう
しの間隔、すなわち均一な単結晶領域の厚さはこの場合
約30μmである。 【0033】図4は本発明による製造方法を実行するた
めの製造装置の概略構成を示している。図1のc点の組
成に相当するCd0.83Mn0.13Hg0.04Teの単結晶を
作製する場合には、高純度金属金属Cd、金属Mn、金
属HgTe、および金属Teを目標割合よりもTeをや
や過剰に秤量(Te過剰量は0.001(即ち、0.1
%)以上で0.1(即ち、10%)以下、本例では0.
01(即ち、1.0%)過剰とした。モル数比;Cd:
Mn:HgTe:Te=0.83:0.13:0.0
4:1.01)して出発原料とする。次いで出発原料を
石英るつぼ3に装填し、加圧容器8内をアルゴンガス9
の存在下において真空封止して、電気炉1の溶融ゾーン
Hにて溶融(条件:融点約1050℃、圧力約20at
m)して融液とした後に、急冷して多結晶の焼結棒6を
作製する。その後、加熱領域を適当な温度勾配(〜10
°/cmの温度勾配が上下方向に存在し、かつ下方に行
くにつれて低温となる)に設定してある位置に石英るつ
ぼを装置のるつぼ移動機構を用いて移動し、相変態温度
より低い温度(〜880℃)、圧力約15atmにて保
持し、再結晶させることで単結晶5の成長を行う。単結
晶5の成長時の温度(約900℃)は相変態点(約95
0℃)以下なので単結晶5ははじめから閃亜鉛鉱型構造
となる。従ってこの場合は結晶冷却過程で相変態点を通
過することがないので双晶が発生することはない。ま
た、融点以下での成長のため結晶の組成偏析はきわめて
小さく、上記組成の結晶では、90%以上の歩留まりで
単結晶化した領域を持つ育成体を得ることができた。 【0034】図5は、この本発明の製造方法にて製造さ
れた半磁性半導体結晶の構造の赤外偏光顕微鏡写真であ
る。図5では写真の裏面側に育成開始部があり、結晶は
そこから写真の表面側に向けて成長している。図3に示
す従来のブリッジマン法による製造の場合とは異なり、
双晶の発生による縦方向のすじ状の構造は全く見られ
ず、光学的品質が均一であることを示している。 【0035】図6を参照すると、上述の本発明の製造方
法により育成された結晶の長さ方向のHgの濃度分布a
と、上述の従来のブリッジマン法により育成された結晶
の長さ方向のHgの濃度分布bとが、示されている。な
お、cは結晶の目標組成をしめしている。また、この図
における縦軸のHg濃度は、結晶の組成式Cd1-X-Y
x HgY Te(0<X<1、0<Y<1)で示される
Yの値に対応する。 【0036】以上説明した本発明による製造方法を用
い、MnTe−HgTe−CdTeの擬3元系相図にお
ける、様々な組成のCdMnHgTeの単結晶を作製
し、そのヴェルデ定数および挿入損失を測定して、ファ
ラデー回転子として適する組成範囲を検討した。実際に
結晶を製造し、光学特性を測定した組成の位置とその組
成でのヴェルデ定数の値を図7に示す。測定位置は図に
示した合計30点である。 【0037】一般にファラデー回転子のヴェルデ定数の
値は、CdMnHgTe単結晶の場合は使用上の条件か
ら使用波長において0.03deg/cm・Oe以上の
値が必要である。なぜなら、磁界強度3000Oeの永
久磁石を用いれば透過光の偏波面を45°回転させるフ
ァラデー回転子の全長は5mmとなるが、光アイソレー
タ、光磁界センサを工業的に量産することを念頭に置く
と磁界強度3000Oeを越える永久磁石を用いたりC
dMnHgTe単結晶の全長が5mmを越えるような設
計は現実的ではないからである。そこでヴェルデ定数の
値が0.03deg/cm・Oe以上の領域を図2に記
すと、図中に点線で示した4点a、b、c、dを結ぶ四
角形の周上及びその内部となり、これは図1の4点a、
b、c、dで囲まれる組成範囲に相当するのである。な
お、ファラデー回転子の光学特性ではヴェルデ定数が大
きいこととともに挿入損失が小さいことが重要である
が、図中の四角形の中の点ではいずれもカットオン波長
が940nm以下で、アイソレータとして使用する場合
の挿入損失も0.5dB以下であることが確認されてい
る。 【0038】次に図1の4点a、b、c、dで囲まれる
組成範囲内のCdMnHgTe単結晶を用い、0.98
μm帯用光アイソレータを作製した例について以下に示
す。図1及び図2のc点に相当する組成のCd0.83Mn
0.13Hg0.04Te単結晶を上述した本発明による製造方
法で作製し、ファラデー回転子となし、磁界強度300
0OeのNd−Fe−B円筒型永久磁石の内部に挿入し
て磁界印加した構成の光アイソレータを製作した。ファ
ラデー回転子の形状は1.7mm×1.7mm×5mm
であり、光透過域面は両面に0.98μm用無反射コー
トを施してある。また偏光素子として、同じく無反射コ
ートを施したガラス偏光子を2枚用いた。光アイソレー
タのサイズはφ8mm×8Lmmと小型である。また光
学特性は、アイソレーション:30dB、挿入損失:
0.5dBであり、いずれも光ファイバ増幅器用の0.
98μm帯用光アイソレータとして申し分なく使用でき
る数値である。 【0039】これに対し従来のブリッジマン方で製作し
た結晶を用いた場合、最良の結晶部分を用いても、同様
な構造の0.98μm帯用光アイソレータの特性はアイ
ソレーション25dB、挿入損失1.0dBであり、実
用的には極めて不十分なものであった。 【0040】 【0041】【発明の効果】 以上説明したように、 本発明によれば、
増幅器励起光源等(0.98〜1.064μm)に用い
られる光アイソレータ用磁気光学素子として好適な、組
成がCd 1-X-Y Mn x Hg Y Te(0<X<1、0<Y
<1)で示される半磁性半導体結晶を双晶のない、組成
偏析の十分に小さい高品質の単結晶として効率よく製造
できる方法が得られる。 【0042】 【0043】
【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の一実施例による磁気光学素子の組成範
囲をMnTe−HgTe−CdTeの擬3元系相図にお
いて示した図である。 【図2】従来のブリッジマン法を実行するための結晶製
造装置の動作を説明するための図である。 【図3】上記従来のブリッジマン法にて製造されたCd
MnHgTeで示される組成を有する半磁性半導体結晶
の構造の赤外偏光顕微鏡写真である。 【図4】本発明による製造方法を実行するための結晶製
造装置の動作を説明するための図である。 【図5】上記本発明の製造方法にて製造されたCdMn
HgTeで示される組成を有する半磁性半導体結晶の構
造の赤外偏光顕微鏡写真である。 【図6】上記従来のブリッジマン法および上記本発明の
製造方法にて製造された結晶の組成偏析の分布を比較し
て示した図である。 【図7】半磁性半導体単結晶の各組成におけるヴェルデ
定数の値をMnTe−HgTe−CdTeの擬3元系相
図において示した図である。 【符号の説明】 1 電気炉 3 石英るつぼ 4 融液 5 単結晶 6 焼結棒 8 加圧容器 9 アルゴンガス
フロントページの続き 特許法第30条第1項適用申請有り 第55回応用物理学会 学術講演会講演予稿集[第1分冊](1994年9月19日) 社団法人応用物理学会発行、第221頁中段、20p−ME −7 特許法第30条第1項適用申請有り 電子情報通信学会 1994年秋季大会−ソサイエティ先行大会−講演論文集 [エレクトロニクス1](1994年9月5日)社団法人電 子情報通信学会発行、第168頁に発表 前置審査 (56)参考文献 特開 平4−295100(JP,A) 特開 昭61−123814(JP,A) 特開 平3−229217(JP,A) 特開 平1−302174(JP,A) 特開 昭59−169995(JP,A) 特開 平6−222309(JP,A) 特開 平7−69773(JP,A) 小野寺晃一,CdMnHgTeの結晶 育成と1μm帯光アイソレータへの応 用,第18回日本応用磁気学会学術講演概 要集,1994年 9月12日,p.375,15 aA−8 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C30B 1/00 - 35/00 G01R 15/00 - 15/26 G02F 1/09 EUROPAT(QUESTEL)

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 (Cd1-X-Y Mnx HgY 1 Te
    1 (0<X<1、0<Y<1)で表される磁気光学素子
    であって、MnTe−HgTe−CdTeの擬3元系相
    図において、 Mn0.5 Hg0.5 Te, Mn0.6 Hg0.4 Te, Cd0.83Mn0.13Hg0.04Te, Cd0.83Mn0.05
    0.12Te の4点に囲まれる範囲に含まれる組成を有し、かつ30
    0μm以上の厚さを有する、双晶及び組成偏析を実質的
    に含まない単結晶からなる前記磁気光学素子を製造する
    方法において、 前記擬3元系相図において前記範囲に含まれる目標組成
    に対し、Te以外の元素の割合はそのままの状態で、T
    eが0.001以上0.1以下過剰である割合に配合さ
    れた金属Cd、金属Mn、金属Te、および金属HgT
    eからなる原料又は金属Cd、金属Mn、金属Te、お
    よび金属Hgからなる原料を出発原料として用意する工
    程と; 前記出発原料を、Hgの蒸気圧に対応する圧力に維持さ
    れ、かつ、前記出発原料を融解し得る温度に維持された
    雰囲気に置いて、前記出発原料を、融解された原料に融
    解する工程と; 前記融解された原料を急冷凝固して多結晶体とする工程
    と; この多結晶体を、Hgの蒸気圧に対応する圧力に維持さ
    れ、かつ、前記多結晶体の相変態温度より低い温度に維
    持された雰囲気に置いて、固相反応により前記単結晶を
    再結晶成長させる工程とを含むことを特徴とする磁気光
    学素子の製造方法。
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小野寺晃一,CdMnHgTeの結晶育成と1μm帯光アイソレータへの応用,第18回日本応用磁気学会学術講演概要集,1994年 9月12日,p.375,15aA−8

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