JP3429535B2 - 析出硬化型高珪素二相ステンレス鋼の硬化方法並びにそれを用いた高硬度加工製品の製造方法 - Google Patents

析出硬化型高珪素二相ステンレス鋼の硬化方法並びにそれを用いた高硬度加工製品の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、0.05重量%以下の
炭素、3.0〜5.0重量%の珪素を含有する析出硬化
型高珪素二相ステンレス鋼の硬化方法並びにそれを用い
た高硬度加工製品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、特公昭46−9536号公報
にて開示された高珪素強靱鋼が知られている。この高珪
素強靱鋼は、C0.08%以下、Si3.5〜6%、M
n5%以下、Ni3〜9%、Cr6〜15%及び残部F
eよりなり、NiとMnの含有量の和をSi含有量の2
倍、Crの含有量をSiの含有量の2.5倍を目標に加
減することによりA3 変態点を750℃以下に下げ、結
晶の微細化を行って他の強靱特殊鋼の2倍に相当する豊
富な強靱性を付与したものである。以下、この高珪素強
靱鋼を「シリコロイA1」と称する。尚、「シリコロ
イ」は、日本シリコロイ工業株式会社製の高珪素ステン
レス鋼の商品名である。
【0003】また、特公昭47−23056号公報に
は、溶体化処理を施した後500℃で時効を施すことに
よって事実上変形を生ずることなしにビッカース硬さ5
00以上に硬化する時効性高珪素鋼が開示されている。
この時効性高珪素鋼は、C0.05%以下、Si4〜7
%、Mn3%以下、Ni6〜16%、Cr12〜20
%、V4%以下、それぞれ1%以下のTi、Al及びそ
れぞれ4%以下のMo、W又はそれぞれ1%以下のC
u、Coを単独又は併合して含有し、残部Feよりな
り、NiとMnの含有量の和はSiの含有量の2倍、C
rの含有量をSiの含有量の3倍を目標に加減したもの
である。以下、この時効性高珪素鋼を「シリコロイC」
と称する。
【0004】このシリコロイCは、前述のシリコロイA
1に比べてSi、Ni及びCrの含有量を増量するとと
もに、新たにMo、W、V及びCo、並びにCu、Ti
及びAlを添加して、時効硬化特性を特に高め、硬度が
高い耐摩耗用として開発されたものである。従って、前
述のシリコロイA1と比較して高価な元素を多量に使用
するため全体として高価であるため、付加価値の高い限
られた製品にしか採用されてないのが現状である。
【0005】また、前述のシリコロイA1に改良を加
え、室温においてマルテンサイト相とオーステナイト相
との混合状態を有し、双方から由来する望ましい性質、
即ち強靱性且つ耐食性を兼備した析出硬化型高珪素ステ
ンレス鋼(特公昭57−17070号公報)も開発され
ている。この析出硬化型高珪素ステンレス鋼は、C0.
05%以下、Si2〜4%、Mn2%以下、Mo0.2
〜1%、Cu0.5〜3%、Ni5〜10%、Cr8〜
13%及び残部Feからなり、Cr含有量の2倍とSi
含有量の和を20〜30%に調整したものである。以
下、この析出硬化型高珪素ステンレス鋼を「シリコロイ
A2」と称する。
【0006】前述のシリコロイA1とA2は、主に構造
用として使用され、シリコロイCと比較して安価であり
汎用的である反面、表面硬度の点においてシリコロイC
には及ばないのである。しかし、それでもシリコロイA
2は、650℃焼なましと480℃析出硬化による熱処
理することによって、ブリネル硬さHB470(ショア
硬さHS65)が得られ、オーステナイト型のステンレ
ス鋼(SUSXM15J1)を900℃焼入と310℃
焼戻で熱処理することによって得られるブリネル硬さH
B500(ショア硬さHS69)に匹敵する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ここで、シリコロイC
の硬さは、前述の公報に例示されており、12mm角の
角棒において、1050℃×30分間溶体化して油冷し
た後、500℃×16時間時効硬化させて空冷する熱処
理の場合、ビッカース硬さHV510(ショア硬さHS
67)が得られ、また1250℃×30分間溶体化して
油冷した後、500℃×16時間時効硬化させて空冷す
る熱処理の場合、ビッカース硬さHV615(ショア硬
さHS75)が得られる。通常、時効硬化時間は鋼材の
厚さに略比例するので、この時効硬化に費やす16時間
は、鋼材の厚さ1cm当たりに換算すると13時間強に
相当し、一日の標準労働時間(8時間)を遙に越える。
また、鋼材が厚い場合には一昼夜連続して熱処理する必
要がある場合も珍しくない。このように、従来は時効硬
化に長時間の熱処理が必要であったため、その間の温度
管理が難しく、その上多大な熱エネルギーを消費し、更
には労働環境が悪いといった諸々の問題を有している。
尚、1250℃×30分間溶体化して油冷した後、90
0℃×4時間時効硬化させて空冷すると、ビッカース硬
さHV500(ショア硬さHS66)が得られる熱処理
が例示されているが、鋼材を900℃で熱処理すると熱
膨張や熱歪みによって寸法精度を著しく低下させる。そ
のため、この場合は最終的に切削等の機械加工を必要と
するが、硬度が高いためその加工には困難を究めるので
ある。また、従来の熱処理では、2mm以上の硬化深度
が得られなかった。
【0008】そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決
しようとするところは、構造用として開発された汎用的
で安価な析出硬化型高珪素ステンレス鋼(シリコロイA
2)を用いて、比較的短時間の熱処理によって時効性高
珪素鋼(シリコロイC)と同等以上の表面硬度が得ら
れ、しかも素材のもつ強靱性且つ耐食性を損なうことが
ないステンレス鋼を提供すべく析出硬化型高珪素二相ス
テンレス鋼の硬化方法を提供するとともに、それを用い
て加工性及び寸法精度に優れた高硬度加工製品の製造方
法を提供する点にある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、前述の課題解
決のために、0.05重量%以下の炭素と、3.0〜
5.0重量%の珪素と、2重量%以下のマンガンと、5
〜10重量%のニッケルと、6〜12重量%(ただし1
2重量%を除く)のクロムと、0.2〜1重量%のモリ
ブデンと、0.5〜3重量%の銅と、残部鉄とからなる
析出硬化型高珪素二相ステンレス鋼を、900〜100
0℃の温度に所定時間維持した後、急冷し、次いで60
0〜700℃の温度に所定時間維持した後、冷却し、調
質してなる第1熱処理工程と、950〜1150℃の溶
体化温度に加熱した後、急冷し、表面硬度をショア硬さ
HSに換算して35〜45にしてなる第2熱処理工程
と、鋼材の厚さ1cm当たり少なくとも10分間の基準
で、鋼材の厚さに応じた時間の間、420〜520℃の
温度に維持して時効硬化させてなる第3熱処理工程と、
を有し、前記各工程を順次行い且つ第3熱処理工程に費
やす時間を7時間以内に制限し、表面硬度をショア硬さ
HSに換算して65〜80まで高めてなる析出硬化型高
珪素二相ステンレス鋼の硬化方法を確立した。
【0010】また、前記第3熱処理工程における熱処理
時間を調整し、表面からの深さ3mmにおける硬度をシ
ョア硬さHSに換算して60以上にしてなるのである。
【0011】そして、0.05重量%以下の炭素と、
3.0〜5.0重量%の珪素と、2重量%以下のマンガ
ンと、5〜10重量%のニッケルと、6〜12重量%
(ただし12重量%を除く)のクロムと、0.2〜1重
量%のモリブデンと、0.5〜3重量%の銅と、残部鉄
とからなる析出硬化型高珪素二相ステンレス鋼塊を圧
延、鍛造若しくは鋳造して所定形状の鋼材を形成してな
る母材の製鋼工程と、前記母材を、900〜1000℃
の温度に所定時間維持した後、急冷し、次いで600〜
700℃の温度に所定時間維持した後、冷却し、調質し
てなる第1熱処理工程と、950〜1150℃の溶体化
温度に加熱した後、急冷し、表面硬度をショア硬さHS
に換算して35〜45にしてなる第2熱処理工程と、所
定の製品形状に機械的に加工してなる機械加工工程と、
加工物の厚さ1cm当たり少なくとも10分間の基準
で、加工物の厚さに応じた時間の間、420〜520℃
の温度に維持して時効硬化させてなる第3熱処理工程
と、を有し、前記各工程を順次行い且つ第3熱処理工程
に費やす時間を7時間以内に制限し、製品の表面硬度を
ショア硬さHSに換算して65〜80まで高めてなる析
出硬化型高珪素二相ステンレス鋼を用いた高硬度加工製
品の製造方法を確立した。
【0012】この製造方法においても、前記第3熱処理
工程における熱処理時間を調整し、表面からの深さ3m
mにおける硬度をショア硬さHSに換算して60以上に
してなるのである。
【0013】
【作用】以上の如き内容からなる本発明の第1発明の析
出硬化型高珪素二相ステンレス鋼の硬化方法は、従来か
ら公知の析出硬化型高珪素二相ステンレス鋼、即ち0.
05重量%以下の炭素と、3.0〜5.0重量%の珪素
と、2重量%以下のマンガンと、5〜10重量%のニッ
ケルと、6〜12重量%(ただし12重量%を除く)の
クロムと、0.2〜1重量%のモリブデンと、0.5〜
重量%の銅と、残部鉄とからなる析出硬化型高珪素二
相ステンレス鋼を特殊な熱処理によって比較的短時間で
硬化させ、表面硬度をショア硬さHSに換算して65〜
80まで高めてなるものである。ここで、各元素を用い
ることの理由及びその配合割合の理由は、前述の特公昭
57−17070号公報に詳しく説明されているが、本
発明では特に素材の原価を下げる目的でクロムの含有量
の上限を12重量%以下(但し12重量%は含まず)に
設定している。また、その他の鉄以外の元素の含有量を
可及的少なく設定することが好ましいことは言うまでも
ない。本発明において、前述の配合割合の析出硬化型高
珪素二相ステンレス鋼を用いることによって、強度と強
靱性及び耐食性は保障されているので、いかにしてその
表面硬度を高くし、硬化深度を深くするかに主眼が置か
れている。
【0014】この課題に対しては、本発明者が長年にわ
たり蓄積した経験と繰り返した実験によって、三段階の
熱処理を特定の温度範囲で順次行うことで比較的短時間
の処理時間で解決できることを見出した。即ち、図1に
示すように、素鋼を調質する第1熱処理工程と、時効硬
化のもとになる過飽和固溶体をつくる第2熱処理工程
(溶体化処理)と、時効硬化させる第3熱処理工程とを
行うのである。
【0015】前記第1熱処理工程は、900〜1000
℃の温度、好ましくは950℃に所定時間(鋼材の厚さ
1cm当たり少なくとも10分間の基準で、鋼材の厚さ
応じた時間の間)維持した後、油相急冷し、次いで6
00〜700℃の温度、好ましくは650℃に所定時間
(鋼材の厚さ1cm当たり少なくとも1.5時間の基準
で、鋼材の厚さに応じた時間の間)維持した後、気相冷
却(空冷)し、鋼材を調質するのである。尚、温度は、
温度測定装置の測定誤差や加熱装置の温度設定誤差によ
りア5%程度の変動が存在するので、必ずしも前掲の値
にはとらわれない。後述の温度の値についても同様であ
る。
【0016】前記第2熱処理工程は、950〜1150
℃の溶体化温度、好ましくは1050℃前後の温度に加
熱した後、急冷(水冷)するのである。この加熱に要す
る時間は、鋼材が内部まで略均一な温度に昇温するまで
の時間で充分である。この第2熱処理工程によって、鋼
材の表面硬度はショア硬さHSに換算して35〜45に
なる。
【0017】前記第3熱処理工程は、鋼材の厚さ1cm
当たり少なくとも10分間の基準で、鋼材の厚さに応じ
時間の間、420〜520℃の温度、好ましくは46
0〜480℃に維持して時効硬化させてなるのである。
この第3熱処理工程に費やす時間を7時間以内に制限し
ても、厚さ30cm程度の鋼材を充分に時効硬化させる
ことが可能である。そして、この第3熱処理工程を経る
と表面硬度はショア硬さHSに換算して65〜80まで
高くなる。ここで、硬度及び硬化深度は、時効硬化時間
に略比例して増すので、必要且つ充分な時効硬化時間を
確保することは当然であるが、実用的な鋼材厚さに対し
て、少なくとも第3熱処理工程を1日の平均労働時間内
で行えることは特筆すべき事実であり、また表面からの
深さ3mmにおける硬度をショア硬さHSに換算して6
0以上にすることも可能である。
【0018】次に、本発明の第2発明の析出硬化型高珪
素二相ステンレス鋼を用いた高硬度加工製品の製造方法
は、図2に示すように、先ず母材の製鋼工程によって、
前述の公知の析出硬化型高珪素二相ステンレス鋼塊を圧
延若しくは鋳造して最終製品に近い形状の鋼材を形成
し、前述の第1熱処理工程と第2熱処理工程を経た後、
機械加工工程によって所定の製品形状に機械的に加工
し、最後に第3熱処理工程を行うのである。従って、鋼
材に熱変形を生じさせる1000℃近い高温の熱処理を
伴う第1熱処理工程と第2熱処理工程を経た後であっ
て、しかも鋼材の表面硬度がショア硬さHSに換算して
35〜45程度の硬さ状態で機械加工を行うので、比較
的加工が容易であり、その加工の後に500℃程度の低
温の熱処理を伴う第3熱処理工程を行うので、加工物の
熱変形が極めて少なく、高精度且つ高硬度(表面硬度は
ショア硬さHSに換算して65〜80)の最終製品を製
造することが可能である。
【0019】
【実施例】次に、本発明の詳細を実施例に基づき更に説
明する。本発明に用いる析出硬化型高珪素二相ステンレ
ス鋼において、先ず珪素の含有量は実用的見地に基づき
3.0〜5.0重量%に規定している。炭素含有量は、
その増加により靱性の低下をひき起こすのみならず耐食
性の低下をも招来するので、通常の製鋼工程で充分達成
し得る0.05重量%以下に規定している。マンガン
は、析出硬化型ステンレス鋼の硬化には大して寄与しな
いため、ステンレス鋼における通常の規格範囲である2
重量%以下に規定している。モリブデン及び銅は、耐食
性を増加させる目的で添加するが、モリブデンは高価で
あり且つ強力なフェライト生成元素であるためその使用
を制限して1重量%以下に抑制している。銅は、析出硬
化元素としてまたオーステナイト生成元素としても作用
し、そのフェライト抑制作用はモリブデンのフェライト
生成作用の約1/3であるから、モリブデンによるファ
ライト生成を抑制する目的でモリブデンの3倍量である
重量%以下に定められている。また、銅は、その増量
により熱間加工性を著しく害するので、上限値は3重量
に抑えられている。更に、モリブデン及び銅の下限値
は、耐食性を確保するために、モリブデン0.2重量%
及び銅0.5重量%と規定されている。
【0020】そして、上記の炭素、マンガン、銅及びモ
リブデンの組成範囲において、析出硬化型高珪素二相ス
テンレス鋼の特徴を保持し且つ素材コストを最小限に抑
制する目的でニッケルの含有量を5〜10重量%に設定
するとともに、クロムの含有量を6〜12重量%(但し
12重量%を除く)に規定している。ここで、クロムの
含有量において12重量%を除く理由は、前述のシリコ
ロイCのクロムの含有量が12〜20重量%であり、シ
リコロイCと比較して素材コストを低減するためであ
る。
【0021】次に、実際にサンプルを作製し、熱処理を
行った後の各機械的性質を調べた結果について説明す
る。サンプルは、炭素:0.019重量%、珪素:3.
43重量%、マンガン:1.00重量%、ニッケル:
6.45重量%、クロム:10.68重量%、モリブデ
ン及び銅を適量、残部鉄よりなる組成で、直径280m
mの円柱形状に鋳造したものを用いた(母材の製鋼工
程)。先ず、前述のサンプルを920℃の温度に所定時
間維持した後、油相急冷し、次いで660℃の温度に所
定時間維持した後、空冷して調質した(第1熱処理工
程)。次に、1050〜1100℃の温度に加熱した
後、油相急冷して溶体化処理した(第2熱処理工程)。
そして、旋盤によって表面を切削加工し、表面を平滑化
するとともに、真円柱となした(機械加工工程)。最後
に、480℃の温度に6時間維持して時効硬化させた
後、冷却した(第3熱処理工程)。
【0022】表1は、本発明のサンプルと、比較材とし
てSUH660とSUS321との機械的性質を測定し
た結果を示し、併せて特公昭57−17070号公報に
記載された従来の熱処理によるシリコロイA2の特性と
特公昭47−23056号公報に記載されたシリコロイ
Cの特性も記載している。
【0023】
【表1】
【0024】ここで、表1中の本発明に係る試料1にお
いて、上段の熱処理は第1熱処理工程を示し、下段の熱
処理は第2、第3熱処理工程を併せて示し、下段の機械
的性質は、第1〜第3熱処理工程を経た後の測定値であ
る。
【0025】また、本発明によって製造した直径280
mmの円柱の表面硬度が、ショア硬さHSで78にまで
高められていることは表1に示しているが、表面からの
深さ4.9mmではHS71、15.4mmではHS5
6、20mmではHS51、30mmではHS53、4
0mmではHS52、50mmではHS56、60mm
ではHS57、70mmではHS51、80mmではH
S50、90mmではHS51と実測されている。従っ
て、表面からの深さ3mmにおける硬度はHS60以上
が達成されており、従来の熱処理では硬化深度が2mm
以上にはできない事実からすると、本発明の熱処理によ
る硬化方法によって格段に硬化深度を深くできることが
分かる。
【0026】次に、母材の製鋼工程と機械加工工程につ
いて若干説明を加える。母材の製鋼工程については、従
来は炭素の含有量が極端に少ない純鉄が入手し難かった
ため、製鋼工程において炭素の混入を制限すべく真空溶
解で製造していたが、近年は純鉄の入手が容易になった
ため真空溶解炉を使用しなくても良くなった。それによ
り、製鋼工程が格段に簡単になり、圧延、鍛造若しくは
鋳造による製鋼が可能となった。更には、ロストワック
ス法等による精密鋳造が可能となり、精密部品の製造も
容易になった。また、機械加工については、第1、第2
熱処理工程を経た後の硬度が比較的低い(HS35〜4
5)の状態で加工するので、通常のステンレス鋼と同様
に汎用の工作機械、例えば旋盤、ボール盤、フライス盤
等によって切削加工や研削加工が容易に行えるのであ
る。
【0027】最後に、本発明の製造方法によって製造さ
れた製品の用途としては、橋梁の支承ローラ、圧延ロー
ラ、連続鋳造ローラが挙げられ、本発明によって従来製
品の3〜6倍の耐久性を実現できるものであり、また塩
素ガスに対しても耐食性が高いので、塩化ビニルの押出
しシリンダーやスクリューに用いた場合にも同様に高い
耐久性を実現できる。更に、船舶用のヂィーゼルエンジ
ンの排気管、バルブに用いることにより、従来は2航海
で取り替えていたこれらの部品の取り替え頻度を少なく
することができる。また、船舶のスクリューに用いても
好ましい。
【0028】
【発明の効果】以上にしてなる本発明の析出硬化型高珪
素二相ステンレス鋼の硬化方法によれば、構造用として
開発された汎用的で安価な析出硬化型高珪素ステンレス
鋼を用いても、この高珪素ステンレス鋼に比べてSi、
Ni及びCrの含有量を増量するとともに、新たにM
o、W、V及びCo、並びにCu、Ti及びAlを添加
して、時効硬化特性を特に高め、硬度が高い耐摩耗用と
して開発された高価な時効性高珪素鋼と同等以上の表面
硬度を得ることができる。しかも、素材のもつ強靱性且
つ耐食性を損なうことがなく、また比較的短時間の熱処
理によって硬化させることができるので、熱処理時間の
短縮、熱エネルギーの節約により更に安価に提供でき
る。
【0029】また、本発明の析出硬化型高珪素二相ステ
ンレス鋼を用いた高硬度加工製品の製造方法によれば、
鋼材に熱変形を生じさせる1000℃近い高温の熱処理
を伴う第1熱処理工程と第2熱処理工程を経た後であっ
て、しかも鋼材の表面硬度がショア硬さHSに換算して
35〜45程度の硬さ状態で機械加工を行うので、比較
的加工が容易であり、その加工の後に500℃程度の低
温の熱処理を伴う第3熱処理工程を行うので、加工物の
熱変形が極めて少なく、高精度且つ高硬度の最終製品を
製造することができ、製造コストを大幅に低減すること
ができる。それにより、従来から析出硬化型高珪素二相
ステンレス鋼が優れた機械的性質を有することが知られ
ていたにも係わらず、その普及が遅れていたことの原因
が一掃され、各分野で実用に供することが可能となっ
た。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱処理工程を示すブロック図である。
【図2】本発明の高硬度加工製品の製造方法の工程を示
すブロック図である。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 0.05重量%以下の炭素と、3.0〜
    5.0重量%の珪素と、2重量%以下のマンガンと、5
    〜10重量%のニッケルと、6〜12重量%(ただし1
    2重量%を除く)のクロムと、0.2〜1重量%のモリ
    ブデンと、0.5〜3重量%の銅と、残部鉄とからなる
    析出硬化型高珪素二相ステンレス鋼を、900〜100
    0℃の温度に所定時間維持した後、急冷し、次いで60
    0〜700℃の温度に所定時間維持した後、冷却し、調
    質してなる第1熱処理工程と、 950〜1150℃の溶体化温度に加熱した後、急冷
    し、表面硬度をショア硬さHSに換算して35〜45に
    してなる第2熱処理工程と、 鋼材の厚さ1cm当たり少なくとも10分間の基準で、
    鋼材の厚さに応じた時間の間、420〜520℃の温度
    に維持して時効硬化させてなる第3熱処理工程と、 を有し、前記各工程を順次行い且つ第3熱処理工程に費
    やす時間を7時間以内に制限し、表面硬度をショア硬さ
    HSに換算して65〜80まで高めてなることを特徴と
    する析出硬化型高珪素二相ステンレス鋼の硬化方法。
  2. 【請求項2】 前記第3熱処理工程における熱処理時間
    を調整し、表面からの深さ3mmにおける硬度をショア
    硬さHSに換算して60以上にしてなる請求項1記載の
    析出硬化型高珪素二相ステンレス鋼の硬化方法。
  3. 【請求項3】 0.05重量%以下の炭素と、3.0〜
    5.0重量%の珪素と、2重量%以下のマンガンと、5
    〜10重量%のニッケルと、6〜12重量%(ただし1
    2重量%を除く)のクロムと、0.2〜1重量%のモリ
    ブデンと、0.5〜3重量%の銅と、残部鉄とからなる
    析出硬化型高珪素二相ステンレス鋼塊を圧延、鍛造若し
    くは鋳造して所定形状の鋼材を形成してなる母材の製鋼
    工程と、 前記母材を、900〜1000℃の温度に所定時間維持
    した後、急冷し、次いで600〜700℃の温度に所定
    時間維持した後、冷却し、調質してなる第1熱処理工程
    と、 950〜1150℃の溶体化温度に加熱した後、急冷
    し、表面硬度をショア硬さHSに換算して35〜45に
    してなる第2熱処理工程と、 所定の製品形状に機械的に加工してなる機械加工工程
    と、 加工物の厚さ1cm当たり少なくとも10分間の基準
    で、加工物の厚さに応じた時間の間、420〜520℃
    の温度に維持して時効硬化させてなる第3熱処理工程
    と、 を有し、前記各工程を順次行い且つ第3熱処理工程に費
    やす時間を7時間以内に制限し、製品の表面硬度をショ
    ア硬さHSに換算して65〜80まで高めてなることを
    特徴とする析出硬化型高珪素二相ステンレス鋼を用いた
    高硬度加工製品の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記第3熱処理工程における熱処理時間
    を調整し、表面からの深さ3mmにおける硬度をショア
    硬さHSに換算して60以上にしてなる請求項3記載の
    析出硬化型高珪素二相ステンレス鋼を用いた高硬度加工
    製品の製造方法。
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