JP3426513B2 - 車両のオーバーステア状態検出装置 - Google Patents

車両のオーバーステア状態検出装置

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JP3426513B2
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friction coefficient
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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は,車両の運動制御た
とえば旋回運動制御を行なう上で,より制御精度を高め
るために車両のオーバーステア状態を正確に検出するよ
うにした車両のオーバーステア状態検出装置に関する。 【0002】 【従来の技術】従来,車両の運動制御(たとえばトラク
ション制御やアンチロックブレーキ制御等)を行なうに
あたって,車両のオーバーステア状態を検出するものが
あり,そのオーバーステア状態を検出する手法として,
たとえば特開平2−70561号公報および特開平5−
155323号公報等で既に開示されたものがある。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】上記従来のものでは,
ヨーレイト検出手段で得られる検出ヨーレイトと,舵角
検出手段で検出される舵角ならびに車体速度検出手段で
検出される車体速度に基づいて定まる規範ヨーレイトと
の差に基づいて,車両のオーバーステア状態を判断する
ようにしている。しかるに,規範ヨーレイトは,路面の
摩擦係数が高い状態を基準にして定められるものである
ので,摩擦係数が低い路面を走行している状態では規範
ヨーレイトが路面状況に対応しておらず,オーバーステ
ア状態の検出が不正確となる。 【0004】本発明は,かかる事情に鑑みてなされたも
のであり,車両のオーバーステア状態を路面の摩擦係数
が低い状態でも正確に検出し得るようにした車両のオー
バーステア状態検出装置を提供することを目的とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に,本発明は,車体速度を検出する車体速度検出手段
と;車両のヨーレイトを検出するヨーレイト検出手段
と;車体の横滑り角を推定する車体横滑り角推定手段
と;路面の摩擦係数を推定する摩擦係数推定手段と;
記ヨーレイト検出手段で検出されたヨーレイトが,前記
車体速度検出手段で検出された車体速度および前記摩擦
係数推定手段で推定される摩擦係数に基づいて定められ
る第1の限界値を超え,且つ前記車体横滑り角推定手段
で得られた車体横滑り角または該車体横滑り角の変化速
度が,前記車体速度検出手段で検出される車体速度なら
びに前記摩擦係数推定手段で推定される摩擦係数で定ま
第2の限界値を超えたときにオーバーステア状態と判
断する判断手段と;を備えることを特徴とする。 【0006】車両のヨーレートが,車体速度および路面
の摩擦係数に基づいて定められる第1の限界値を超えた
ことをもって,車両が旋回中であることが判断される。 【0007】ところで車体の横滑り角は,車体の向きに
対して車体の進行方向がなす角であって,車両の運動状
態および路面の摩擦係数が変化するのに応じた車両の旋
回挙動状態を示すものであり,一方,車体速度および路
面の摩擦係数に応じて車体の横滑り角の限界値(第2の
限界値)は予め知り得るものであるので,車両のヨーレ
ートが上記第1の限界値を超えたことで判断される車両
の旋回時に車体の横滑り角が車体速度および路面の摩擦
係数に基づく第2の限界値を超えたときには,車両がオ
ーバーステア状態であると判断することができ,路面の
摩擦係数の変化を反映してオーバーステア状態を正確に
判断することができる。また車両のヨーレートが上記第
1の限界値を超えたことで判断される車両の旋回時に車
体横滑り角の変化速度が大きくなったときには,車両が
オーバーステア状態に近づいていると判断することがで
き,車体横滑り角の変化速度が,車体速度および路面の
摩擦係数に基づく第2の限界値を超えたときには,車両
がオーバーステア状態に近づいていることを路面の摩擦
係数の変化を反映して正確に判断することができる。 【0008】 【発明の実施の形態】以下,本発明の実施の形態を,添
付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。 【0009】図1ないし図10は本発明の第1実施例を
示すものであり,図1は車両の駆動系およびブレーキ系
を示す図,図2は制御ユニットの構成を示すブロック
図,図3はタイヤ特性設定手段で設定されるタイヤ特性
を示す図,図4は制御ユニットにおける車体横滑り角推
定手段の構成を示すブロック図,図5は線形二輪車両運
動モデルでの横方向の力のバランスを示す図,図6は線
形二輪車両運動モデルで用いるタイヤ特性を示す図,図
7は摩擦係数推定手段の構成を示すブロック図,図8は
車両の旋回運動時のコーナリングフォースおよび制・駆
動力により発生する車体モーメントを示す図,図9はヨ
ーレイトの限界値の設定マップを示す図,図10は車体
の横滑り角の限界値の設定マップを示す図である。 【0010】先ず図1において,車体1の前部には,エ
ンジンEおよび変速機Tから成るパワーユニットPが搭
載されており,該パワーユニットPからの動力は,推進
軸Sおよび差動装置Dを介して駆動輪である左,右後輪
RL,WRRに伝達される。また左,右前輪WFL,WFR
は左,右前輪用車輪ブレーキBFL,BFRが装着され,
左,右後輪WRL,WRRには左,右後輪用車輪ブレーキB
RL,BRRが装着され,各車輪ブレーキBFL,BFR
RL,BRRは,たとえばディスクブレーキである。 【0011】タンデム型のマスタシリンダMが備える第
1および第2出力ポート2A,2Bからはブレーキペダ
ル3の踏込み操作に応じたブレーキ液圧が出力されるも
のであり,両出力ポート2A,2Bはブレーキ液圧制御
装置4に接続され,該ブレーキ液圧制御装置4からのブ
レーキ液圧が各車輪ブレーキBFL,BFR,BRL,BRR
作用せしめられる。このブレーキ液圧制御装置4では,
制御ユニット5で制御されることにより各車輪ブレーキ
FL,BFR,BRL,BRRに作用せしめるブレーキ液圧が
調節されるものであり,制御ユニット5には,各車輪W
FL,WFR,WRL,WRRの車輪速度をそれぞれ検出する車
輪速度検出器6FL,6FR,6RL,6RR,ステアリングハ
ンドルHで操作された舵角δを検出する舵角検出手段
7,車両のヨーレイトγを検出するヨーレイト検出手段
8,ならびに車両の横加速度AYを検出する横加速度検
出手段9の検出値がそれぞれ入力される。 【0012】図2において,制御ユニット5は,車体速
度検出手段10と,スリップ率算出手段11と,タイヤ
特性設定手段12と,車体横滑り角推定手段13と,摩
擦係数推定手段14と,車両のオーバーステア状態を判
断する判断手段15と,ブレーキ液圧制御装置4での各
車輪ブレーキBFL,BFR,BRL,BRRのブレーキ圧を演
算するブレーキ圧演算手段16とを備える。 【0013】車体速度検出手段10では,各車輪の車輪
速度をそれぞれ個別に検出する4つの車輪速度検出器6
FL,6FR,6RL,6RRの検出値に基づいて車体速度Vが
得られ,スリップ率算出手段11では,車体速度検出手
段10で算出される車体速度Vならびに前記各車輪速度
検出器6FL,6FR,6RL,6RRの検出値に基づいて各車
輪毎のスリップ率が演算される。 【0014】タイヤ特性設定手段12には,各車輪のタ
イヤ毎のタイヤ特性が実走行データに基づいて予め設定
されており,図3で示すように,車輪のスリップ角αお
よびコーナリングフォースCFの関係を示すスリップ角
−コーナリングフォース特性と,スリップ率λおよびコ
ーナリングフォース減少率RCFの関係を示すスリップ
−コーナリングフォース減少率特性と,スリップ率λ
および制・駆動力FXの関係を示すスリップ率−制・駆
動力特性とが,摩擦係数推定手段14で推定される路面
の摩擦係数μに応じて左,右前輪および左,右後輪に個
別に対応して予め設定されている。すなわちタイヤ特性
設定手段12は,摩擦係数推定手段14で得られた推定
摩擦係数μに応じて,スリップ角−コーナリングフォー
ス特性,スリップ−コーナリングフォース減少率特
性,ならびにスリップ率−制・駆動力特性を補正する機
能を有するものである。 【0015】車体横滑り角推定手段13は,車両の旋回
運動制御を行なう上でより制御精度を高めるために,車
体の横滑り角βを推定するものであり,舵角検出手段7
で検出される舵角δ,ヨーレイト検出手段8で検出され
るヨーレイトγ,横加速度検出手段9で検出される横加
速度AY,車体速度検出手段10で検出される車体速度
V,スリップ率算出手段11で算出される各車輪毎のス
リップ率λ,ならびにタイヤ特性設定手段12で設定さ
れるタイヤ特性に基づいて,車体の横滑り角βが車体横
滑り角推定手段13で推定される。この車体横滑り角推
定手段13で得られた横滑り角βは判断手段15に入力
され,判断手段15では横滑り角βに基づくオーバース
テア状態の判断がなされる。 【0016】図4において,車体横滑り角推定手段13
は,走行状態検出部17と,横加速度推定部18と,第
1横滑り角算出部19と,第2横滑り角算出部20と,
選択部21と,スリップ角算出部22とを備える。 【0017】タイヤ特性設定手段12で設定されるタイ
ヤ特性のうち,スリップ角−コーナリングフォース特性
ならびにスリップ率−コーナリングフォース減少率特性
に基づいて,横加速度推定部18により推定横加速度A
YEが推定される。すなわち横加速度推定部18には,
タイヤ特性設定手段12が接続されるとともに,スリッ
プ率算出手段11で算出されるスリップ率λ,ならびに
スリップ角算出部22で算出される各車輪毎のスリップ
角αが入力されており,左,右前輪および左,右後輪毎
の(CF×RCF)の四輪の総和に基づいて,推定横加
速度推定部18で推定横加速度AYEが得られることに
なる。 【0018】而して上述の演算(CF×RCF)におい
て,スリップ率−コーナリングフォース減少率特性に基
づくコーナリングフォース減少率RCFを,コーナリン
グフォースCFに乗じることにより,車両の運動制御に
伴なってスリップ率λが変動することに応じて,コーナ
リングフォースCFが補正されることになる。 【0019】横加速度推定部18で得られた推定横加速
度AYEは,第1横滑り角算出部19に入力される。こ
の第1横滑り角算出部19には,前記推定横加速度AY
Eに加えて,車体速度検出手段10で検出される車体速
度Vならびにヨーレイト検出手段8で検出されるヨーレ
イトγが入力されており,非線形の四輪車両運動モデル
に基づいて車体の横滑り角を第1横滑り角β1として算
出する演算が第1横滑り角算出部19で実行される。 【0020】ここで,「非線形の四輪車両運動モデル」
とは,左,右前輪および左,右後輪のコーナリングフォ
ースを等しいとは仮定しない状態でスリップ角に対して
各車輪のコーナリングフォースが非線形に変化するよう
なタイヤ特性を反映する運動モデルである。 【0021】基本的な線形二輪車両運動モデルに基づく
微分方程式によれば,横滑り角の微分値は,{(横加速
度/車体速度)−ヨーレイト}として得られるものであ
り,横加速度を推定横加速度AYEとし,車体速度を車
体速度検出手段10で検出される車体速度Vとし,ヨー
レイトをヨーレイト検出手段8で検出されるヨーレイト
γとすることにより, dβ1/dt=(AYE/V)−γ……(1) として,第1横滑り角β1の微分値(dβ1/dt)が
得られる。またその微分値(dβ1/dt)を積分する
ことにより,第1横滑り角β1が, β1=∫{(AYE/V)−γ}dt+β10 ……(2) として,第1横滑り角算出部19で得られることにな
る。而して上記積分式において,β10 は第1横滑り角
β1の初期値であり,第2横滑り角算出部20から入力
される。 【0022】ところで,上記非線形の四輪車両運動モデ
ルに基づいて得た第1横滑り角β1は,車両の旋回運動
状態で横滑り量が比較的大きいときの横滑り角に適合し
たものであるが,車両が低速で直進している走行状態で
横滑り量が比較的小さいときには,第1横滑り角β1の
積分演算過程でのノイズの蓄積による誤差が比較的大き
くなり,直進の低速で車両が走行している状態で第1横
滑り角β1を用いて車輪スリップ角αを得るのは適切で
はない。そこで,線形の二輪車両運動モデルに基づいて
車体の横滑り角を第2横滑り角β2として得る演算が第
2横滑り角算出部20で実行される。 【0023】ここで,「線形の二輪車両運動モデル」と
は,左,右前輪のコーナリングフォースが等しく,かつ
左,右後輪のコーナリングフォースが等しいと仮定した
状態でスリップ角に対して前,後輪のコーナリングフォ
ースが線形に変化するような運動モデルである。 【0024】線形の二輪車両運動モデルでは,図5で示
すように,左,右前輪のコーナリングフォースCFFが
等しく,また左,右後輪のコーナリングフォースCFR
が等しいとした横方向の力学方程式を用いるものであ
り,この図5において,前輪のスリップ角αF,後輪の
スリップ角αR,車体の横滑り角βは,反時計方向を正
として表している。而して車両の質量をM,前輪のコー
ナリングフォースをCFF,後輪のコーナリングフォー
スをCFRとしたときに, M・AY= CFF+ CFR……(3) として表すことができる。またコーナリングフォースC
Fは,車輪スリップ角αが微小範囲であるときには,図
6で示すように線形であるので,前輪のコーナリングパ
ワーをCPF,後輪のコーナリングパワーをCPR,前
輪のスリップ角をαF,後輪のスリップ角をαRとした
ときに, CFF=CPF×αF……(4) CFR=CPR×αR……(5) である。 【0025】また前輪のスリップ角αFおよび後輪のス
リップ角αRは,車体重心から前輪までの距離LF,車
体重心から後輪までの距離LR,車体速度V,車体の横
滑り角β,ヨーレイトγおよび前車輪の実舵角δwを用
いて次のように表すことができる。 【0026】 αF=β+(LF/V)×γ−δw……(6) αR=β−(LR/V)×γ……………(7) ここで,前車輪の実舵角δwは,舵角検出手段7で検出
される舵角δをステアリング系のギヤ比で除し,アッカ
ーマンアングルを考慮した補正を加えることにより得ら
れるものである。 【0027】上記第(4) 〜(7) 式を,第(3) 式に代入す
ると, M×AY=CPF×{β+(LF/V)×γ−δw} +CPR×{β−(LR/V)×γ}……(8) が成り立ち,この第(8) 式をβについて整理すると, β={M/(CPF+CPR)}×AY −{(CPF×LF−CPR×LR)/(CPF+CPR)}×γ/V +{CPF/(CPF+CPR)}×δw……(9) を得ることができる。而してCPF,CPR,LF,L
R,Mは,車両固有の一定値であるので,上記第(9) 式
を次のように書き換えることができる。 【0028】 β=C1×AY−C2×γ/V+C3×δw……(10) 第2横滑り角算出部20は,上記第(10)式に基づく演算
を行なうものであり,車体速度検出手段10で検出され
る車体速度V,ヨーレイト検出手段8で検出されるヨー
レイトγ,横加速度検出手段9で検出される横加速度A
Yならびに舵角検出手段7で検出される舵角δが第2横
滑り角算出部20に入力され,第2横滑り角算出部20
は,上記第(10)式に基づく演算で得た横滑り角βを第2
横滑り角β2として出力する。 【0029】第1横滑り角算出部19で算出される第1
横滑り角β1,ならびに第2横滑り角算出部20で算出
される第2横滑り角β2は,選択部21で択一的に選択
されて,判断手段15に入力されるとともにスリップ角
算出部22に入力されるものであり,選択部21による
択一的な選択は,走行状態検出部17により切換えられ
る。 【0030】走行状態検出部17は,車体速度検出手段
10で検出される車体速度V,ヨーレイト検出手段8で
検出されるヨーレイトγ,横加速度検出手段9で検出さ
れる横加速度AYならびに舵角検出手段7で検出される
舵角δに基づいて車両の走行状態を検出するものであ
り,たとえば次のような各条件の全てが成立するか否か
を判断する。 【0031】V<10km/h −3(deg)<δ<+3(deg) −0.1(G)<AY<+0.1(G) −1.0(deg/s)<γ<+1.0(deg/s) 上記各条件が全て成立したときに,走行状態検出部17
は,車両が直進の低速走行状態であるとして,第2横滑
り角算出部20で算出される第2滑り角β2を選択部2
1が選択するような信号を選択部21に与えるが,上記
各条件のいずれか1つでも成立しないときには,第1横
滑り角算出部19で算出される第1横滑り角β1を選択
部21が選択するような信号を選択部21に与える。 【0032】スリップ角算出部22では,選択部21で
選択されて入力される第1横滑り角β1もしくは第2横
滑り角β2と,車体速度検出手段10で検出される車体
速度V,ヨーレイト検出手段8で検出されるヨーレイト
γ,ならびに舵角検出手段7で検出される舵角δとを用
いて,上述の第(6) ,(7) 式に基づく各車輪毎のスリッ
プ角αの演算が実行される。而してスリップ角算出部2
2で得られた各車輪毎のスリップ角αは,横加速度推定
部18での推定横加速度AYEの演算のために横加速度
推定部18に入力されるとともに,摩擦係数推定手段1
4に入力される。 【0033】図7において,摩擦係数推定手段14は,
第1偏差算出部23と,車体ヨーモーメント推定部24
と,微分回路25と,第2偏差算出部26と,ハイセレ
クト部27と,推定演算部28とを備える。 【0034】第1偏差算出部23では,車体横滑り角推
定手段13における横加速度推定部18で得られた推定
横加速度AYEと,横加速度検出手段9で検出された横
加速度AYとの差(AYE−AY)が算出される。 【0035】一方,第2偏差算出部26では,タイヤ特
性設定手段12で設定されたタイヤ特性,スリップ率算
出手段11で算出された車輪のスリップ率ならびに車体
横滑り角推定手段13のスリップ角算出部22で算出さ
れた車輪スリップ角に基づいて車体ヨーモーメント推定
部24で推定される車体ヨーモーメントとしての推定ヨ
ーレイト変化速度(dγ/dt)Eと,ヨーレイト検出
手段8で検出されたヨーレイトγを微分する微分回路2
5で得られるヨーレイト変化速度dγ/dtとの差
{(dγ/dt)E−dγ/dt}が算出される。 【0036】図8において,車両が旋回運動していると
きの左,右前輪および左,右後輪のコーナリングフォー
スをCFFL,CFFR,CFRL,CFRRとし,
左,右前輪および左,右後輪の制・駆動力をFXFL,
FXFR,FXRL,FXRRとし,左,右前輪および
左,右後輪間のトレッドをTとしたときに,車体ヨーモ
ーメント推定部24では,車体ヨーモーメントとしての
推定ヨーレイト変化速度(dγ/dt)Eが次のような
演算に基づいて推定される。 【0037】 【数1】 【0038】上記第(11)式において,CFFL,CFF
R,CFRL,CFRRは,タイヤ特性設定手段12に
設定されているスリップ角−コーナリングフォース特性
ならびにスリップ率−コーナリングフォース減少率特性
に基づいて,左,右前輪および左,右後輪毎に(CF×
RCF)の演算を実行して得られるものであり,またF
XFL,FXFR,FXRL,FXRRは,タイヤ特性
設定手段12に設定されているスリップ率−制・駆動力
特性に基づいて左,右前輪および左,右後輪毎に得られ
るものである。 【0039】而して上記第(11)式を演算するために,車
体ヨーモーメント推定部24には,タイヤ特性設定手段
12で設定されるタイヤ特性,スリップ率算出手段11
で算出されるスリップ率λ,ならびに車体横滑り角推定
手段13のスリップ角算出部22で算出される車輪スリ
ップ角αが入力される。 【0040】ところで,横加速度推定部18で推定され
る横加速度AYEならびに車体ヨーモーメント推定部2
4で推定されるヨーレイト変化速度(dγ/dt)E
は,タイヤ特性設定手段12で設定されるタイヤ特性に
基づくものである。したがって実際の路面の摩擦係数μ
が,横加速度AYEおよびヨーレイト変化速度(dγ/
dt)Eの演算に用いたタイヤ特性の摩擦係数μから変
化したときには,横加速度検出手段9で検出される横加
速度AYおよび推定横加速度AYE間に摩擦係数μの変
化分に対応した偏差が生じるとともに,ヨーレイト検出
手段8で検出されるヨーレイトγの微分値(dγ/d
t)ならびに車体ヨーモーメント推定部24で推定され
るヨーレイト変化速度(dγ/dt)E間に摩擦係数μ
の変化分に対応した偏差が生じるはずである。これら2
つの偏差,すなわち横加速度の推定偏差およびヨーレイ
ト変化率(ヨーレイトレイト)は,路面の摩擦係数が比
較的大きい場合と,比較的小さい場合とでそれぞれ顕著
に現れる。そこで,検出した横加速度AYおよび推定横
加速度AYEの偏差を算出する第1偏差算出部23の算
出値ならびに検出したヨーレイトγの微分値(dγ/d
t)および推定ヨーレイト変化速度(dγ/dt)Eの
偏差を算出する第2偏差算出部26の算出値の大きい
方,すなわち摩擦係数μの変化の影響が大きく出た方を
摩擦係数μの変化量に対応した偏差であると判断してハ
イセレクト部27で選択し,そのハイセレクト部27で
選択された偏差が摩擦係数μの偏差に対応するものであ
るとして,推定演算部28で摩擦係数μが推定される。 【0041】すなわち推定演算部28では,摩擦係数μ
の初期値を「1」とし,摩擦係数μの変化分に対応した
第1もしくは第2偏差算出部23,26の算出偏差に対
応した摩擦係数変化分を,前回の処理ループで得られて
いた摩擦係数μに加算もしくは減算することで,今回の
処理ループでの摩擦係数μを推定することになる。 【0042】再び図2において,判断手段15には,ヨ
ーレイト検出手段8で検出されたヨーレイトγと,車体
横滑り角推定手段13で推定された横滑り角βと,車体
速度検出手段10で検出される車体速度Vと,摩擦係数
推定手段14で推定される路面の摩擦係数μとが入力さ
れており,該判断手段15は,ヨーレイトγが車体速度
Vおよび摩擦係数μに基づいて予め定められている第1
限界値γLMT を超えた状態で,車体横滑り角βが車体
速度Vおよび摩擦係数μに基づいて予め定められている
第2の限界値βLMT を超えたときに車両がオーバーステ
ア状態にあると判断する。但し,車両の左,右旋回時を
考慮して,前記限界値γLMT ,βLMT との比較にあたっ
てはヨーレイトγおよび横滑り角βの絶対値が用いられ
る。 【0043】すなわち判断手段15には,図9で示すよ
うに,車体速度Vおよび摩擦係数μの変化に応じて変化
するヨーレイトγの限界値,即ち第1の限界値γLMT
予め設定されており,判断手段15は,|γ|>γLMT
となったときに車両が旋回状態にあると判断する。また
判断手段15には,図10で示すように,車体速度Vお
よび摩擦係数μの変化に応じて変化する横滑り角βの限
界値,即ち第2の限界値βLMT が予め設定されており,
|γ|>γLMT であり,しかも|β|>βLMTとなった
ときに判断手段15は車両がオーバーステア状態にある
と判断する。 【0044】ブレーキ圧演算手段16には,舵角検出手
段7で得られる舵角δ,ヨーレイト検出手段8で検出さ
れるヨーレイトγ,車体速度検出手段10で検出される
車体速度V,ならびに判断手段15の判断結果が入力さ
れており,それらの入力に基づいてブレーキ圧演算手段
16はブレーキ圧を演算する。 【0045】而してブレーキ圧演算手段16におけるブ
レーキ圧の演算処理の一例によれば,通常の状態でのブ
レーキ圧の演算と,オーバーステアの状態のブレーキ圧
の演算とが次のように実行される。すなわち通常の状態
では,検出ヨーレイトγと,舵角δおよび車体速度Vに
基づいて定まる規範ヨーレイトとの差が小さくなるよう
に各車輪ブレーキBFL,BFR,BRL,BRRのブレーキ液
圧がブレーキ圧演算手段16で演算され,ブレーキ液圧
制御装置4がブレーキ液圧演算手段16の演算結果に基
づいて各車輪ブレーキBFL,BFR,BRL,BRRのブレー
キ液圧を制御する。また車両がオーバーステア状態にあ
ると判断手段15が判断したときにブレーキ圧演算手段
16は,前記検出ヨーレイトγを前記規範ヨーレイトに
近付ける制御演算を停止し,検出ヨーレイトγの変化速
度が「0」に近い小さな値であることを条件として,
左,右前輪WFL,WFRに装着された車輪ブレーキBFL
FRのうち旋回外輪の車輪ブレーキがロックを生じない
程度の最大ブレーキ力を発揮するようにブレーキ圧を演
算してブレーキ液圧制御装置4を作動せしめ,それによ
り車両のオーバーステア状態を解消する。 【0046】次にこの第1実施例の作用について説明す
ると,車体横滑り角推定手段13において,車両が低速
の直進走行状態にあることが走行状態検出部17で検出
されたときには,第2横滑り角算出部20で算出された
第2横滑り角β2に基づいて車体の横滑り角βが算出さ
れる。しかも第2横滑り角β2は,車体速度V,ヨーレ
イトγ,横加速度AYおよび舵角δの検出値により線形
の二輪車両運動モデルに基づいて算出されるものであ
り,積分演算されるものではないので,低速の直進走行
状態であることに起因して,横加速度V,ヨーレイト
γ,車体速度Vの検出値が小さなものであっても,セン
サノイズ(取付け誤差ノイズ)や走行ノイズが蓄積する
ことはなく,第2横滑り角β2に基づいて車体の横滑り
角βを精度よく算出することができる。 【0047】一方,車両が直進の低速走行状態にあると
き以外には,第1横滑り角算出部19で算出された第1
横滑り角β1に基づいて車体の横滑り角βが算出される
が,この第1横滑り角βを算出するにあたって用いる車
体速度V,ヨーレイトγおよび推定横加速度AYEのう
ち,車体速度Vおよびヨーレイトγの検出値は比較的大
きなものであり,検出値に対するノイズの大きさの割合
が比較的小さくなり,また推定横加速度AYEは,予め
設定されたタイヤ特性と,スリップ角算出部22で算出
したスリップ角ならびにスリップ率算出手段11で算出
したスリップ率とを用いて推定されるものであるので推
定精度を向上することが可能であり,第1横滑り角β1
が,非線形の四輪車両運動モデルに基づいて得た横滑り
角βの微分値dβ/dtを積分して得られるものであっ
ても,積分演算過程でのノイズによる誤差蓄積を小さく
抑え,車体の横滑り角βの算出精度を向上することがで
きる。 【0048】このようにして精度よく推定される車体の
横滑り角βは,車両の運動状態および路面の摩擦係数が
変化するのに応じた車両の旋回挙動状態を示すものであ
る。一方,車体速度Vおよび路面の摩擦係数μに応じて
車体の横滑り角βの限界値,即ち第2の限界値βLMT
予め知り得るものであり,判断手段15は,車体速度V
および路面の摩擦係数μに応じて定まる第1の限界値γ
LMT をヨーレイトγが超えたことをもって車両が旋回中
であることを判断し,その旋回時に車体の横滑り角βが
車体速度Vおよび路面の摩擦係数μに基づく第2の限界
β LMT を超えることをもって車両がオーバーステア状
態であると判断するようにしている。したがって路面の
摩擦係数μの変化を反映してオーバーステア状態を正確
に判断することができ,その正確なオーバーステア状態
の判断に応じたブレーキによる旋回挙動制御を行なうこ
とができる。 【0049】本発明の第2実施例として,判断手段15
が,車体速度Vおよび路面の摩擦係数μに応じて定まる
第1の限界値γLMT をヨーレイトγが超えたことをもっ
て車両が旋回中であることを判断し,旋回状態にあると
判断したときに,車体横滑り角βの変化速度dβ/dt
の絶対値が,図11で示すように車体速度Vおよび摩擦
係数μに基づいて予め定められている第2の限界値(d
β/dt)LMT を超えることをもって車両がオーバース
テア状態にあると判断するものであってもよい。 【0050】ここで,車体の横滑り角βの変化速度(d
β/dt)が,車体速度Vおよび路面の摩擦係数μに基
づく第2の限界値(dβ/dt)LMT を超えたときに
は,車両がオーバーステア状態に近づいていると判断す
ることができ,この第2実施例によれば,路面の摩擦係
数μの変化を反映してオーバーステア状態に近づいてい
ることを正確に判断することができる。 【0051】以上,本発明の実施例を詳述したが,本発
明は上記実施例に限定されるものではなく,特許請求の
範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計
変更を行なうことが可能である。 【0052】 【発明の効果】以上のように本発明によれば,車両のヨ
ーレートが車体速度および路面の摩擦係数に基づく第1
の限界値を超えたことで判断される車両の旋回時に車体
の横滑り角が車体速度および路面の摩擦係数に基づく第
2の限界値を超えたときには,車両がオーバーステア状
態であると判断することができるので,車両がオーバー
ステア状態であることを,路面の摩擦係数の変化を反映
してオーバーステア状態を正確に判断することができ
る。また車両のヨーレートが上記第1の限界値を超えた
ことで判断される車両の旋回時に車体横滑り角の変化速
度が大きくなったときには,車両がオーバーステア状態
に近づいていると判断することができるから,車体横滑
り角の変化速度が,車体速度および路面の摩擦係数に基
づく第2の限界値を超えたときには,車両がオーバース
テア状態に近づいていることを,路面の摩擦係数の変化
を反映して正確に判断することができる。
【図面の簡単な説明】 【図1】第1実施例における車両の駆動系およびブレー
キ系を示す図である。 【図2】制御ユニットの構成を示すブロック図である。 【図3】タイヤ特性設定手段で設定されるタイヤ特性を
示す図である。 【図4】制御ユニットにおける車体横滑り角推定手段の
構成を示すブロック図である。 【図5】線形二輪車両運動モデルでの横方向の力のバラ
ンスを示す図である。 【図6】線形二輪車両運動モデルで用いるタイヤ特性を
示す図である。 【図7】摩擦係数推定手段の構成を示すブロック図であ
る。 【図8】車両の旋回運動時のコーナリングフォースおよ
び制・駆動力により発生する車体モーメントを示す図で
ある。 【図9】ヨーレイトの限界値の設定マップを示す図であ
る。 【図10】車体の横滑り角の限界値の設定マップを示す
図である。 【図11】第2実施例での車体の横滑り角の変化速度の
限界値の設定マップを示す図である。 【符号の説明】 10・・・車体速度検出手段 13・・・車体横滑り角推定手段 14・・・摩擦係数推定手段 15・・・判断手段V・・・・車体速度 μ・・・・摩擦係数 γ・・・・ヨーレイト γ LMT ・・第1の限界値 β・・・・車体横滑り角 β LMT ・・第2の限界値 dβ/dt・・車体横滑り角の変化速度 (dβ/dt) LMT ・・第2の限界値
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平9−207736(JP,A) 特開 平9−301142(JP,A) 特開 平9−123888(JP,A) 特開 平8−158907(JP,A) 特開 昭62−299430(JP,A) 特開 平8−164833(JP,A) 特開 平5−155323(JP,A) 特開 平2−70561(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B60T 8/58

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 車体速度(V)を検出する車体速度検出
    手段(10)と;車両のヨーレイト(γ)を検出するヨーレイト検出手段
    (8)と; 車体の横滑り角(β)を推定する車体横滑り角推定手段
    (13)と; 路面の摩擦係数(μ)を推定する摩擦係数推定手段(1
    4)と;前記ヨーレイト検出手段(8)で検出されたヨーレイト
    (γ)が,前記車体速度検出手段(10)で検出された
    車体速度(V)および前記摩擦係数推定手段(14)で
    推定される摩擦係数(μ)に基づいて定められる第1の
    限界値(γ LMT )を超え,且つ 前記車体横滑り角推定手
    段(13)で得られた車体横滑り角(β)または該車体
    横滑り角(β)の変化速度(dβ/dt)が,前記車体
    速度検出手段(10)で検出される車体速度(V)なら
    びに前記摩擦係数推定手段(14)で推定される摩擦係
    (μ)で定まる第2の限界値(β LMT ,(dβ/d
    t) LMT を超えたときにオーバーステア状態と判断す
    る判断手段(15)と; を備えることを特徴とする車両のオーバーステア状態
    検出装置。
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