JP3423922B2 - フラーレン水分散液の製造法 - Google Patents

フラーレン水分散液の製造法

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  • Colloid Chemistry (AREA)
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フラーレンを水中
に安定に分散したフラーレン水分散液の簡便な製造法に
関する。
【0002】
【従来の技術】炭素原子がかご状に結合した中空構造を
もつフラーレン(C60、C70等)は、新規な機能性化合
物として注目をあびているが、フラーレンは極性が極め
て低く非水溶性の溶媒でしか取扱うことができず、その
用途開発に大きな制約があった。本来水に溶けないフラ
ーレンを水に溶解あるいは安定に分散することは、フラ
ーレンの医用分野、更には食品等の応用にあたって解決
すべき課題である。例えばフラーレンは、可視光の照射
により活性酸素を発生することが知られているが、この
活性酸素は癌細胞等を強く殺傷することから、フラーレ
ンの癌治療への応用が望まれている。しかしながら、水
に対する溶解、分散性が低いために体内への投与方法の
問題があった。
【0003】フラーレンに水溶性、水分散性を付与する
試みが種々なされており、例えば、フラーレンをシクロ
ファン類に包接する方法(特開平7−206760号公
報)、γ−シクロデキストリン等に包接する方法(特開
平8−3201号公報)等の包接ホスト化合物を使う方
法、フラーレンを水溶性高分子によって化学修飾して水
可溶化する方法(特開平9−235235号公報)があ
る。更にはフラーレン水分散液としては、フラーレンの
ベンゼン飽和溶液をTHF、アセトンで希釈し、次いで
水を加えて後にベンゼン等の有機溶媒を留去してフラー
レン水分散液を製造する方法、また、フラーレンのトル
エン溶液を水に加え、超音波照射により分散すると同時
にトルエンを留去してフラーレン水分散液を製造する方
法等が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、包接ホ
スト化合物を用いる方法は操作が繁雑であって包接ホス
ト化合物が高価であり、化学修飾する方法はフラーレン
の物性を変化させ、また合成プロセスが繁雑であり、更
に上記の有機溶媒を用いるフラーレン水分散液の製造で
は、安全性の面での問題がある。フラーレンを水中にて
激しく攪拌して分散する方法が提案されている(特開平
10−45408号公報)が、これはフラーレンを1〜
10重量%(以下単に%と記載する)を含有する超微粒
炭素組成物の分散であって、超微粒炭素を含みまたフラ
ーレン含有量も少いものである。フラーレンを簡便で安
全性の高いプロセスによって安定に水中に分散できる方
法は依然として未開発である。本発明の目的は、フラー
レンを水中に安定に分散したフラーレン水分散液の製造
法を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、フラーレン
を特定の有機溶媒に溶解させた後に水に混合することに
よりフラーレンを水中に安定に分散できることを見い出
し、本発明を完成した。
【0006】すなわち、本発明は、テトラヒドロフラ
ン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド及び
ジメチルホルムアミドの群から選ばれた1種又は2種以
上の溶媒にフラーレンを溶解し、得られた飽和溶液を水
と混合することを特徴とするフラーレン水分散液の製造
法を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明で使用するフラーレンは、
炭素原子が60、70等かご状に結合して中空構造を形
成したもので、局所的変形構造体や中空部にイオン種を
導入したもの、炭素原子の一部を他の原子により置換し
たものや官能基を結合させたもの等の誘導体も包含され
る。これらのフラーレンのうちで、炭素数60のフラー
レン(C60フラーレン)、炭素数70のフラーレン(C
70フラーレン)及びそれらの混合物が好ましい。なお両
者の混合比率は、適宜選択される。
【0008】本発明で使用するフラーレンの溶媒は、水
に可溶な(水と自由に相溶する)溶媒である。水に可溶
なフラーレンの溶媒は、フラーレンを1ppm以上溶解す
るものであって、極性有機溶媒が挙げられ、テトラヒド
ロフラン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシ
ド及びジメチルホルムアミドの群から選ばれる1種又は
2種以上の混合物を用いるのが好ましい。
【0009】水に可溶なフラーレンの溶媒中へのフラー
レンの溶解量は、フラーレン溶解液中に飽和量溶解する
のが、フラーレン水分散液の製造効率の点で好ましい。
【0010】この溶解方法は特に制限されず、単なる攪
拌でもよい。
【0011】得られたフラーレン溶液には、次いで水が
フラーレン溶液:水(体積比)=1:1000〜6.
5:3.5、好ましくは1:100〜1:1の割り合い
で混合される。ここで使う水は超純水、蒸留水、脱イオ
ン水等精製水が使用されるが、水道水でもよい。ここ
で、フラーレン溶液と水の混合方法としては、水にフラ
ーレン溶液を注入する方法がよい。
【0012】得られたフラーレン水分散液は、必要によ
り次いでフラーレンの溶媒が除去される。フラーレンの
溶媒の除去方法としては、窒素ガスによるバブリング、
透析、蒸留等の方法が挙げられ、窒素ガスによるバブリ
ング方法が好ましい。
【0013】得られるフラーレン水分散液中のフラーレ
ンの粒子サイズは、10〜1000nm、特に30〜50
0nmであるのが分散安定性の点から好ましい。また、フ
ラーレン水分散液中のフラーレン粒子の形状は球状であ
る。なお、この粒子サイズ及び形状は、動的光散乱光度
計及び透過型電子顕微鏡によって測定できる。
【0014】かくして製造されたフラーレン水分散液
は、ベンゼン、トルエン等の有毒な有機溶媒を全く含有
せずに簡便に製造でき、医用分野、食品、その他の機能
性化合物としての用途に幅広く利用される。
【0015】
【実施例】以下実施例により本発明を更に説明するが、
本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。な
お実施例における物性評価は次の方法によって行った。 (A)分散しているフラーレンの平均粒子径は動的光散
乱光度計(大塚電子製)により、散乱角度90°、25
℃にて測定した。 (B)粒子形状はフラーレン水分散液5μLを、銅グリ
ッド上に滴下し、風乾後、電子顕微鏡で観察した。 (C)保存安定性は遮光下、25℃でフラーレン水分散
液を6ケ月間放置し、沈殿生成が認められない場合に良
とした。
【0016】実施例1 フラーレンのテトラヒドロフラン飽和溶液5mLを調製
し、次いで5mL超純水に加えて後、水を含有するフラー
レン溶解液に窒素ガスを0.2L/分の流量で1時間通
気してテトラヒドロフランを留去して、フラーレン水分
散液5mLを製造した。製造したフラーレン水分散液の平
均粒子径、形状、保存安定性の検討結果を表1に示す。
【0017】
【表1】
【0018】表1に示すように、本発明のフラーレン水
分散液は10〜20μg/mLの平均粒径50〜70nmの
球状粒子のフラーレンを分散し、長期にわたって安定性
に優れていた。
【0019】実施例2 C60フラーレンのN−メチルピロリドン飽和溶液100
μLを超純水10mLに注入しC60フラーレン水分散液を
製造した。製造したC60フラーレン水分散液にはC60
ラーレンを8.9μg/mL分散し、平均粒子径100nm
で、6ケ月間の保存安定性試験で沈殿生成は認められず
優れた安定性を示した。
【0020】実施例3 実施例2のN−メチルピロリドンに代えて、ジメチルサ
ルホキサイド及びジメチルホルムアミドを各々使用して
飽和溶液を調製し、同様にして水分散液を製造した。い
ずれも6ケ月の保存安定性試験で沈殿生成が認められず
優れた安定性を示した。
【0021】
【発明の効果】フラーレンを長期間に渡って安定に簡便
に水中に分散できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 掘越 弘毅 神奈川県横須賀市夏島町2番地15 海洋 科学技術センター内 (56)参考文献 特開 平10−45408(JP,A) XIANWEN WEI et a l,Selective soluti on−phase generatio n and oxidation re action of C60n− and formation of an a queous,J.Chem.So c.,Perkin Trans.2, 1997年,no.7,p.1389−1393 WALTER A.SERIVENS and JAMES M. TOU R,Synthesis of 14C− Labeled C60,Its Sus pension in Water,a nd Its Uptake by H uman Keratinocyte s,J. Am. Chem.So c.,1994年,Vol.116,p.4517 −4518 GRIGORIY V. ANDRI EVSKY et al,On the Production of an Aqueous Colloidal Solution of Fuller enes,J.Chem.Soc.,C hem.Commun.,1995年,n o.12,p.1281−1282 DEGUCHI S. et al, Stable dispersions of fullerens,C60 a nd C70,in water.Pre paration and chara cterization,LANGMU IR,2001年 9月18日,Vol.17, No.19,p.6013−6017 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C01B 31/02 JICSTファイル(JOIS) INSPEC(DIALOG)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 テトラヒドロフラン、N−メチルピロリ
    ドン、ジメチルスルホキシド及びジメチルホルムアミド
    の群から選ばれた1種又は2種以上の溶媒にフラーレン
    を溶解し、得られた飽和溶液を水と混合することを特徴
    とするフラーレン水分散液の製造法。
  2. 【請求項2】 水と混合した後、フラーレンの溶媒を除
    去する請求項1記載のフラーレン水分散液の製造法。
  3. 【請求項3】 フラーレンがC60フラーレン、C70フラ
    ーレン及びこれらの混合物から選ばれたものである請求
    項1又は2記載のフラーレン水分散液の製造法。
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