JP3423554B2 - 摩擦係合要素の潤滑機構 - Google Patents

摩擦係合要素の潤滑機構

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JP3423554B2
JP3423554B2 JP34502396A JP34502396A JP3423554B2 JP 3423554 B2 JP3423554 B2 JP 3423554B2 JP 34502396 A JP34502396 A JP 34502396A JP 34502396 A JP34502396 A JP 34502396A JP 3423554 B2 JP3423554 B2 JP 3423554B2
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    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16HGEARING
    • F16H57/00General details of gearing
    • F16H57/04Features relating to lubrication or cooling or heating
    • F16H57/048Type of gearings to be lubricated, cooled or heated
    • F16H57/0482Gearings with gears having orbital motion

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  • General Details Of Gearings (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば自動変速機
等に用いられているブレーキ等の摩擦係合要素に対する
潤滑機構の技術分野に属し、特に、回転可能に設けられ
た筒状部材の外周側に配設され、この筒状部材の回転を
制御する摩擦係合要素において、この摩擦係合要素の板
状部材が筒状部材の少なくとも一端に結合されていると
ともに、摩擦係合要素を潤滑するための潤滑油が筒状部
材の内周側から流動するようになっている摩擦係合要素
の潤滑機構の技術分野に属するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、自動変速機においては、可能な限
り小型にしてコンパクトでかつ軽量に形成することが、
ますます厳しく求められている。自動変速機が収容され
る自動車のエンジンルームは限られた比較的狭い空間で
あり、しかもこのエンジンルーム内には自動変速機の他
にエンジン等の他の種々の装置および部品が配設されて
いるため、自動変速機を少しでもコンパクトにし軽量に
することはきわめて重要な意味があるものとなってい
る。また、自動変速機においては、変速段の切換時にお
ける変速の円滑化およびドライバビリティの向上ため
に、変速段の多段化が求められている。
【0003】このような変速の多段化およびコンパクト
化を両立させようとする場合、自動変速機の各構成要素
の部材を相互に径方向にオーバラップして配置すること
が多々行われている。例えば、自動変速機の各構成要素
の1つであるワンウェイクラッチのアウタレースの外周
に、このワンウェイクラッチの回転を制御するブレーキ
を配設するとともに、そのブレーキハブをアウタレース
に結合するようにすることが行われている。
【0004】一方、自動変速機のブレーキ等の摩擦係合
要素に対して潤滑を行う場合、一般に入力軸の中心に穿
設された軸方向の潤滑油通路孔に、ポンプによって送給
されてきた潤滑油を、入力軸に穿設された軸方向の潤滑
油通路孔に連通する径方向の通路を設けて、入力軸の回
転に伴って発生する遠心油圧により、潤滑油を軸方向の
潤滑油通路孔から径方向の通路を通って摩擦係合要素の
方へ流動させるようにしている。その場合、例えば前述
のようなワンウェイクラッチのアウタレースの外周に配
設されたブレーキに対して潤滑を行う場合には、アウタ
レースに径方向の潤滑油通路孔を穿設して、入力軸の潤
滑油通路孔から径方向の通路を通ってワンウェイクラッ
チに流動してきた潤滑油を、遠心油圧によって、更にこ
のアウタレースの径方向の潤滑油通路孔を通してブレー
キに流動させることにより、潤滑を行うようにしている
(例えば、特開昭61ー38247号公報等を参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述の
ようにアウタレースに潤滑油通路孔を穿設した場合、ア
ウタレースの強度が低下してしまうので、この強度の低
下を補って所定の強度を確保するために、その分アウタ
レースを大型に形成する必要があり、コンパクト性に問
題を生じてしまう。しかも、ブレーキの潤滑を確実にか
つ効果的に行うために、潤滑油通路孔の径を大きくした
り、複数の潤滑油通路孔を穿設したりすると、アウタレ
ースの強度が更に一層低下してしまうので、アウタレー
スを更に大型化にしなければならないという問題があ
る。
【0006】また、自動変速機の多段化およびコンパク
ト化のため、アウタレースの外周側とブレーキとの間
に、更に自動変速機の他の構成要素の筒状部材が配置さ
れる場合がある。この場合には、アウタレースに設けら
れた潤滑油通路孔を通って流動する潤滑油は、その流れ
がこの他の構成要素の筒状部材によって邪魔されるよう
になるのでブレーキへスムーズに流動しなくなり、十分
な潤滑が行われない恐れがある。そのうえ、アウタレー
スに複数の潤滑油通路孔を設けた場合には、孔加工が多
くなり、工数的にも不利になってしまう。
【0007】一方、コンパクト化のため、前述のように
ワンウェイクラッチのアウタレースの外周に、配設した
ブレーキのブレーキハブをアウタレースに結合した場合
には、アウタレースの内周側すなわち潤滑油を送給する
側である入力軸側と、アウタレースの外周側すなわち潤
滑油を送給される側であるブレーキ側とが、アウタレー
スとブレーキハブとによって遮断されてしまう。このた
め、潤滑油がアウタレースの内周側から外周側にスムー
ズに流動しなく、効果的な潤滑ができない場合がある。
この場合には、アウタレースに潤滑油通路孔を設けるこ
とが有効となるが、このようにアウタレースに潤滑油通
路孔を設けると、前述のような問題が生じてしまう。
【0008】本発明は、このような問題を鑑みてなされ
たものであって、その目的は、筒状部材のコンパクト化
を図りながら、しかもこの筒状部材の外周側に配置され
る摩擦係合要素に対する潤滑を十分にかつ確実に行うこ
とができ、かつ加工工数を低減できる摩擦係合要素の潤
滑機構を提供することである。
【0009】本発明の他の目的は、自動変速機のワンウ
ェイクラッチのアウタレースのコンパクト化を図りなが
ら、しかもブレーキに対する潤滑を十分にかつ確実に行
うことができ、かつ加工工数を低減できる摩擦係合要素
の潤滑機構を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】前述の課題を解決するた
めに、請求項1の発明は、回転可能に設けられた筒状部
材と、この筒状部材の外周側に配設され、前記筒状部材
の回転を制御する摩擦係合要素とを備え、前記摩擦係合
要素の板状部材が前記筒状部材の少なくとも一端に結合
されており、前記摩擦係合要素を潤滑するための潤滑油
が前記筒状部材の内周側から流動するようになっている
摩擦係合要素の潤滑機構において、前記板状部材と前記
筒状部材の少なくとも一端とが当接する位置に、前記筒
状部材の内周側と外周側とを連通しかつ前記潤滑油が流
動する間隙を形成する間隙形成部が、前記板状部材に設
けられており、前記間隙形成部が、前記板状部材に、そ
の反対側の面に膨出部が現れるように形成され、かつ前
記筒状部材の一端を介して前記筒状部材の内周側と外周
側とを連通する凹部であり、前記板状部材が前記筒状部
材の一端に前記膨出部を避けて結合されていることを特
徴としている。また、請求項2の発明は、前記凹部内に
潤滑油が流動する側の前記凹部の流動面および前記凹部
内から潤滑油が流動する側の前記凹部の流動面が、それ
ぞれ、傾斜していることを特徴としている。
【0011】更に、請求項3の発明は、回転可能に設け
られたアウタレースを有し、一方向の回転に対して係止
するとともに他方向の回転に対して自由となるワンウェ
イクラッチと、前記アウタレースの外周側に配設され、
このアウタレースの回転を制御し、摩擦係合要素である
ブレーキとを備え、前記ブレーキのブレーキハブが前記
アウタレースの少なくとも一端に当接されて溶接により
結合されており、前記ブレーキを潤滑するための潤滑油
が前記アウタレースの内周側から流動するようになって
いる自動変速機の摩擦係合要素の潤滑機構において、前
記ブレーキハブが、半径方向に延びる環状側板部と、こ
の環状側板部の外周端から軸方向に延び、前記ブレーキ
の複数の摩擦板が摺動可能に嵌合されるとともに複数の
潤滑孔が設けられている円筒部とを有し、前記ブレーキ
ハブと前記アウタレースの少なくとも一端とが当接する
位置に、前記アウタレースの内周側と外周側とを連通し
かつ前記潤滑油が流動する間隙を形成する間隙形成部
が、前記ブレーキハブに設けられていることを特徴とし
ている。
【0012】
【発明の作用及び効果】このように構成された請求項1
および2の各発明の摩擦係合要素の潤滑機構によれば、
摩擦係合要素の板状部材に、筒状部材の一端を介して筒
状部材の内周側と外周側とを連通する凹部からなる間隙
形成部を設けているので、潤滑油が間隙形成部を通って
筒状部材の内周側から外周側へ、この筒状部材に阻止さ
れることなく、スムーズに流動することができるように
なる。これにより、筒状部材の内外周側の間を遮断する
ような摩擦係合要素の板状部材が存在しても、潤滑油を
筒状部材の外周側にある摩擦係合要素に確実に供給でき
るようになる。しかも、筒状部材の外周側で摩擦係合要
素との間に他の筒状部材が配置されても、潤滑油が間隙
形成部を通った後、摩擦係合要素の板状部材に沿って摩
擦係合要素の方へ流動することが可能となるので、この
他の筒状部材に阻止されることなく、潤滑油は摩擦係合
要素の方へスムーズに流動することができるようにな
る。そのうえ、凹部を摩擦係合要素の板状部材に設ける
ことで、筒状部材に潤滑孔を設けた場合に比較して十分
大きな油路面積を確保できるので、多量の潤滑油を流動
させることができ、潤滑を十分に行うことができるよう
になる。
【0013】また、間隙形成部は摩擦係合要素側に形成
しているので、筒状部材側に潤滑油のための通路孔を設
ける必要がなくなる。これにより、筒状部材の強度が低
下することがないので、筒状部材をよりコンパクトに形
成することができるようになる。こうして、請求項1お
よび2の各発明によれば、筒状部材のコンパクト化を図
りながら、しかもこの筒状部材の外周側に配置される摩
擦係合要素に対する潤滑を十分にかつ確実に行うことが
でき、かつ加工工数を低減することができるようにな
る。
【0014】更に、間隙形成部を摩擦係合要素の板状部
材に形成された凹部で構成しているので、板状部材から
なる摩擦係合要素を成形する際、この凹部を一緒に成形
することができるとともに、筒状部材に通路孔を穿設す
る必要がない。これにより、摩擦係合要素の潤滑機構の
ための加工工数が大幅に低減することができるようにな
る。
【0015】更に、凹部を摩擦係合要素の板状部材に設
けているので、筒状部材に潤滑孔を設けた場合に比較し
て、十分大きな油路面積を確保できる。これにより、多
量の潤滑油を流動させることができるので、潤滑を十分
に行うことができるようになる。更に、凹部の形状を截
頭角錐台形状、円弧状、長円弧状、楕円弧状等種々の形
状に設定することが可能であり、成型時の凹部の断面形
状の自由度が大きい。
【0016】更に、摩擦係合要素の板状部材と筒状部材
との結合は板状部材側から行うようになるが、凹部が板
状部材の筒状部材と反対側の面に膨出部として現れるよ
うになるので、摩擦係合要素側から凹部の位置が容易に
分かる。したがって、板状部材を筒状部材に結合する
際、これらの膨出部を避けて行いさえすればよいので、
結合作業が容易となるとともに、筒状部材と板状部材と
の位置合わせを行う必要がなくなり、加工工数を更に一
層低減できる。しかも、板状部材に凹部を成形するだけ
で、膨出部が現われるようにすることができる。特に請
求項2の発明によれば、更に、凹部内に潤滑油が流動す
る側の凹部の流動面、および凹部内から潤滑油が流動す
る側の凹部の流動面を、それぞれ、傾斜させているの
で、潤滑油をロスなくスムーズに流動させることがで
き、潤滑をより一層十分に行うことができる。
【0017】更に請求項3の発明によれば、自動変速機
のブレーキのブレーキハブ側に、間隙形成部による潤滑
油の油路を形成しているので、ワンウェイクラッチのア
ウタレースに潤滑孔を設ける必要がなくなる。したがっ
て、ワンウェイクラッチのアウタレースの外周側にある
ブレーキの潤滑を十分にかつ確実に行うようにしつつ、
ワンウェイクラッチの強度を低下させることなく、コン
パクトにワンウェイクラッチを構成することができ、自
動変速機の多段化およびコンパクト化の要望に効果的に
対応することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、図面を用いて、本発明の実
施の形態を説明する。図1ないし図3は本発明の摩擦係
合要素の潤滑機構の実施の形態の一例が適用されている
自動変速機の全体の概略構成を模式的に示すスケルトン
図であり、図4はこの例の自動変速機の各変速時におけ
る摩擦係合要素の係合・解放を示す図である。
【0019】図1に示すように、この自動変速機Aは、
前置式オーバドライブプラネタリギヤユニットからなる
副変速機構Dと、単純連結3プラネタリギヤトレインか
らなる前進4速後進1速の主変速機構Mとを組合わせた
5速構成とされ、さらに、ロックアップクラッチ付のト
ルクコンバータTを備えている。
【0020】副変速機構Dは、サンギヤS0、キャリヤ
C0、リングギヤR0に関連してワンウェイクラッチF
−0とこれに並列する多板クラッチC−0及びこれと直
列する多板ブレーキB−0を備えている。一方、主変速
機構Mは、サンギヤS1〜S3、キャリヤC1〜C3、
リングギヤR1〜R3からなる各変速要素を適宜直結し
た単純連結の3組のギヤユニットP1〜P3を備え、各
ギヤユニットの変速要素に関連して多板クラッチC−
1,C−2、バンドブレーキB−1、多板ブレーキB−
2〜B−4、ワンウェイクラッチF−1,F−2が配設
されている。なお、各クラッチ及びブレーキは、図示し
ない油圧制御装置によるサーボ油圧の制御で、それらの
摩擦係合要素を係合・解放操作するピストン・シリンダ
からなる油圧サーボ装置を備えている。
【0021】このような自動変速機Aにおいては、図示
しないエンジンの入力回転は、トルクコンバータTを経
て副変速機構Dの入力軸Nに伝達される。そして、第1
速時は、図4に係合を○印で示すようにクラッチC−0
を係合させて副変速機構Dを直結とし、主変速機構Mの
クラッチC−1を係合し、他のブレーキを全て解放とす
ることにより、図1に示すように、入力軸Nの回転はギ
ヤユニットP3のサンギヤS3に入り、ワンウェイクラ
ッチF−2によるリングギヤR3の逆回転阻止でキャリ
ヤC3から出力軸Uに第1速回転として出力される。
【0022】また、第2速回転は、図4に示すように副
変速機構Dが直結で、クラッチC−1及びブレーキB−
3を係合することにより達成される。このとき、図2に
示すようにギヤユニットP2のリングギヤR2に入った
入力は、ギヤユニットP1のキャリヤC1を反力要素と
してギヤユニットP2のキャリヤC2及びそれに直結す
るギヤユニットP1のリングギヤR1並びにギヤユニッ
トP3のキャリヤC3に出力され、出力軸Uの第2速回
転となる。
【0023】更に、第3速回転は、同様に図4に示すよ
うに副変速機構D直結で、クラッチC−1及びブレーキ
B−2を係合し、他を解放することにより達成される。
このとき、図3に示すようにギヤユニットP2のリング
ギヤR2に入った入力は、サンギヤS2を反力要素と
し、キャリヤC2及びそれに連結したギヤユニットP3
のキャリヤC3に出力され、出力軸Uの第3速回転とな
る。
【0024】更に、第4速回転は、同じく図4に示すよ
うに副変速機構D直結で、クラッチC−1及びクラッチ
C−2を共に係合することにより達成される。このと
き、図示しないがギヤユニットP2のリングギヤR2に
入った入力はリングギヤR2及びサンギヤS2に入力さ
れるため、ギヤユニットP2が直結となって入力回転が
そのまま出力される。
【0025】更に、第5速回転は、図4に示すように主
変速機構Mが上記第4速回転の状態で、クラッチC−0
を解放し、ブレーキB−0の係合でサンギヤS0を固定
して副変速機構Dを増速回転させることにより達成され
る。
【0026】更に、後進は、図4に示すように副変速機
構Dを上記の状態とし、主変速機構MのクラッチC−2
とブレーキB−4を係合させることで達成される。この
とき、ギヤユニットP2のサンギヤS2に入った入力
は、リングギヤR3を反力要素とするギヤユニットP
2,P3のキャリヤC2,C3の逆回転として出力され
る。
【0027】ところで、本発明の摩擦係合要素の潤滑機
構は、この自動変速機Aにおいて、ブレーキB−2とワ
ンウェイクラッチF−1とを対象として適用されてい
る。図5は、自動変速機AにおけるブレーキB−2とワ
ンウェイクラッチF−1とが設けられている部分を拡大
して示す断面図である。
【0028】図5に示すように、入力軸Nと同軸に配設
された回転軸1に、主変速機構MのサンギヤS1,S2
が一体に形成された筒状回転軸2が相対回転可能に支持
されている。この筒状回転軸2の外周にはワンウェイク
ラッチF−1が嵌合されており、その場合筒状回転軸2
はワンウェイクラッチF−1のインナーレースとして機
能するようになっている。ワンウェイクラッチF−1の
アウタレース3の外周側には、ブレーキB−2が配設さ
れている。
【0029】このブレーキB−2のブレーキハブ4は、
図6に示すように半径方向に延びる環状側板部4aと、
環状側板部4aの外周から軸方向に延びる円筒部4bと
から、ほぼ有底円筒状に形成されている。同図(b)に
示すように、環状側板部4aがアウタレース3の軸方向
左端に、このアウタレース3と同軸状にビーム溶接α等
により固定されている。また、環状側板部4aには、ア
ウタレース3の軸方向左端に対向する位置に、アウタレ
ース3と反対側に凹んだ凹部4cが所定数(図示例では
6個であるがこれに限定されるものではない)形成され
ている。この凹部4cは、アウタレース3を跨いで截頭
角錐台形に形成されている。したがって、環状側板部4
aがアウタレース3に固定された状態では、この凹部4
cにより、アウタレース3の軸方向左端と環状側板部4
aとの間に所定の隙間が形成され、この隙間によりアウ
タレース3の内周側と外周側とが連通されている。すな
わち、後述するようにこの隙間を通って潤滑油がアウタ
レース3の内周側から外周側に流動するようになってい
る。その場合、環状側板部4aに設けられた凹部4c
は、本発明の間隙形成部を構成しているとともに、従来
のようなアウタレース3等に設けられた潤滑孔に比較し
て、十分大きな油路面積が確保され、多量の潤滑油が流
動できるようになっている。凹部4cの油路面積はアウ
タレース3の強度に影響しないので、容易に大きく設定
することができる。
【0030】また、ブレーキハブ4の円筒部4bには、
従来と同様にブレーキB−2の可動側の摩擦板5が摺動
可能に嵌合される多数のスプライン溝4dが形成されて
いるとともに、これらのスプライン溝4dの間に潤滑油
が流動する潤滑油通路孔4eが穿設されている。そし
て、このような凹部4cを有する環状側板部4aとスプ
ライン溝4dを有する円筒部4bとからなるブレーキハ
ブ4は、プレス加工によって簡単に製造されるようにな
っている。なお従来と同様に、摩擦板5は、ケース6に
摺動可能に支持された固定側の摩擦板7と交互に配設さ
れている。
【0031】なお、アウタレース3の外周側でブレーキ
ハブ4の円筒部4eとの間には、ブレーキB−2と軸方
向に隣接して配置されているブレーキBー3のサーボピ
ストン8が径方向にオーバラップされて配置されてい
る。
【0032】一方、図5に示すように回転軸1には、従
来と同様に、図示しないポンプから送給される潤滑油が
流動する軸方向の潤滑油通路孔1aが穿設されていると
ともに、環状側板部4aとアウタレース3との結合部に
対応する回転軸1の位置に、潤滑油通路孔1aに連通し
かつ回転軸1の外周側に開口する径方向の潤滑油通路孔
1bが穿設されている。また、筒状回転軸2には、筒状
回転軸2の内周側と外周側とを連通する潤滑油通路孔2
aが、潤滑油通路孔1aにほぼ連続するようにして穿設
されている。この筒状回転軸2の潤滑油通路孔2aは、
環状側板部4aとアウタレース3との結合部に向けて傾
斜して設けられている。
【0033】このように構成された本例の摩擦係合要素
の潤滑機構においては、回転軸1が回転すると、軸方向
の潤滑油通路孔1aに送給されている潤滑油に遠心油圧
が生じる。この遠心油圧により、図7に矢印で示すよう
に潤滑油通路孔1aの潤滑油は、径方向の潤滑油通路孔
1bを通って回転軸1の外周側に流動するとともに、更
に筒状回転軸2の潤滑油通路孔2aを通って、筒状回転
軸2の、外周側の環状側板部4aとアウタレース3との
結合部近傍に流動する。更に、筒状回転軸2の外周側に
流動した潤滑油は、凹部4cによって形成された環状側
板部4aとアウタレース3の左端との間の隙間を通りか
つ環状側板4aに沿って、アウタレース3の外周側すな
わちブレーキハブ4の円筒部4bの内周側に流動するよ
うになる。
【0034】このとき、凹部4cが截頭角錐台形状に形
成されていて潤滑油の流動面4f,4gが傾斜している
ので、潤滑油はこれらの傾斜面に案内されてスムーズに
かつロスなく凹部4cを流動するようになる。しかも、
環状側板部4aに設けられた凹部4cは、アウタレース
3等に設けられた潤滑孔に比較して、十分大きな油路面
積が確保されているので、多量の潤滑油が流動するよう
になる。更に、凹部4cを通過した潤滑油はブレーキB
ー3のサーボピストン8の端部と環状側板部4atの間
の間隙を通ってこのサーボピストン8に邪魔されること
なく、円筒部4bの内周側の方に流動するようになる。
【0035】そして、円筒部4bの内周側に流動してき
た多量の潤滑油は、更に円筒部4bに形成されている多
数の潤滑油通路孔4eを通って、円筒部4bの外周側の
摩擦板5,6の方へ流動し、これらの摩擦板5,6が効果
的にかつ十分に潤滑されるようになる。
【0036】このように本例の摩擦係合要素の潤滑機構
によれば、潤滑油が環状側板部4aの凹部4cを通っ
て、アウタレース3に阻止されることなくスムーズに流
動することができるようになる。これにより、ワンウェ
イクラッチ3の内外周を遮断するような例えば環状側板
部4aが存在しても、潤滑油を摩擦板5,7に確実に供
給できるようになる。
【0037】また、凹部4cはブレーキハブ4側に形成
しているので、ワンウェイクラッチF−1側に潤滑油の
ための通路孔を設ける必要がなくなる。これにより、ワ
ンウェイクラッチF−1の強度が低下することがないの
で、ワンウェイクラッチをよりコンパクトに形成するこ
とができるようになる。したがって、自動変速機の多段
化およびコンパクト化の要望に効果的に対応することが
できる。
【0038】更に、凹部4cは、ブレーキハブ4をプレ
ス加工により成形する際、一緒に成形することができ、
しかもアウタレース3に通路孔を穿設する必要がないの
で、摩擦板5,6の潤滑機構のための加工工数が大幅に
低減することができるようになる。しかも、この凹部4
cはリブの機能も有するようになるので、環状側板部4
aの強度を向上することができる。
【0039】更に、凹部4cを環状側板部4aに設ける
ことは、アウタレース3等に潤滑孔を設けた場合に比較
して、十分大きな油路面積を確保でき、多量の潤滑油を
流動させることができるので、潤滑を十分に行うことが
できるようになる。しかも、凹部4cの潤滑油の流動面
4f,4gが傾斜しているので、潤滑油がロスなくスム
ーズに流動するようになり、潤滑をより一層十分に行う
ことができる。
【0040】更に、凹部4cの形状を截頭角錐台形状に
限らず、例えば円弧状、長円弧状、楕円弧状等種々の形
状に設定することが可能であり、成型時の凹部4cの断
面形状の自由度が大きい。
【0041】更に、ブレーキハブ4とアウタレース3と
の溶接は、ブレーキハブ4側から行わなければならな
い。このため、従来のようにアウタレース3に潤滑孔を
設けたのでは、ブレーキハブ4とアウタレース3とを当
接させたとき、ブレーキハブ4側からはアウタレース3
が見えないので、アウタレース3の潤滑孔の位置が容易
に分からなく、溶接を行う際、この潤滑孔を避けて溶接
しなければならないことから、溶接作業が容易ではない
とともに、アウタレース3とブレーキハブ4との位置合
わせを行う必要があり、加工工数が多くなる。これに対
して、本例によれば、環状側板部4aに凹部4cが形成
されることから、図6(a)に示すように環状側板部4
aには膨出部4hが形成されるようになるので、ブレー
キハブ4側からは凹部4cの位置が容易に分かる。した
がって、溶接をこれらの膨出部4hを避けて行いさえす
ればよいので、溶接作業が容易であるとともに、アウタ
レース3とブレーキハブ4との位置合わせを行う必要が
なくなり、加工工数を低減できる。
【0042】以上、本発明を詳述したが、本発明は、特
許請求の範囲に記載の事項の範囲内での各細部の更なる
構成の変更を妨げるものではない。また、本発明の摩擦
係合要素の潤滑機構は、自動変速機の摩擦係合要素以外
の摩擦係合要素にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の摩擦係合要素の潤滑機構の実施の形
態の一例が適用されている自動変速機における、第1速
時の伝動状態のギヤトレインを示すスケルトン図であ
る。
【図2】 図1に示す例の自動変速機における、第2速
時の伝動状態のギヤトレインを示すスケルトン図であ
る。
【図3】 図1に示す例の自動変速機における、第2速
時の伝動状態のギヤトレインを示すスケルトン図であ
る。
【図4】 図1に示す例の自動変速機の各変速時の摩擦
係合要素の係合・解放を示す図である。
【図5】 本例の摩擦係合要素の潤滑機構が適用されて
いるブレーキB−2とワンウェイクラッチFー1の部分
を示す部分拡大断面図である。
【図6】 本例の摩擦係合要素の潤滑機構が適用されて
いるブレーキB−2のブレーキハブを示し、(a)は左
側面図、(b)は(a)におけるVIB−VIB線に沿う断面
図、(c)は右側面図である。
【図7】 図5におけるブレーキB−2とワンウェイク
ラッチFー1の部分を更に拡大して示す部分拡大断面図
である。
【符号の説明】
A…自動変速機、D…副変速機構、M…主変速機構、F
−1…ワンウェイクラッチ、B−2…ブレーキ、1…回
転軸、1a…軸方向の潤滑油通路孔、1b…径方向の潤
滑油通路孔、2…筒状回転軸、2a…潤滑油通路孔、3
…アウタレース、4…ブレーキハブ、4a…環状側板
部、4b…円筒部、4c…凹部、4e…潤滑油通路孔、
5,7…摩擦板、6…ケース
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 尾崎和久 愛知県安城市藤井町高根10番地 アイシ ン・エィ・ダブリュ株式会社内 (72)発明者 岩瀬幹雄 愛知県安城市藤井町高根10番地 アイシ ン・エィ・ダブリュ株式会社内 (72)発明者 糟谷 悟 愛知県安城市藤井町高根10番地 アイシ ン・エィ・ダブリュ株式会社内 (72)発明者 坪井治道 愛知県安城市藤井町高根10番地 アイシ ン・エィ・ダブリュ株式会社内 (72)発明者 宮田英樹 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (72)発明者 福村景範 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (72)発明者 中脇康則 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (72)発明者 田端淳 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (72)発明者 佐用正一 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (72)発明者 北條康夫 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (56)参考文献 特開 昭60−205068(JP,A) 特開 平8−219263(JP,A) 特開 平2−173459(JP,A) 実開 昭63−6230(JP,U) 実開 平2−102058(JP,U) 実開 昭61−6065(JP,U) 実開 平1−100949(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16H 57/00 - 57/12

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 回転可能に設けられた筒状部材と、この
    筒状部材の外周側に配設され、前記筒状部材の回転を制
    御する摩擦係合要素とを備え、前記摩擦係合要素の板状
    部材が前記筒状部材の少なくとも一端に結合されてお
    り、前記摩擦係合要素を潤滑するための潤滑油が前記筒
    状部材の内周側から流動するようになっている摩擦係合
    要素の潤滑機構において、 前記板状部材と前記筒状部材の少なくとも一端とが当接
    する位置に、前記筒状部材の内周側と外周側とを連通し
    かつ前記潤滑油が流動する間隙を形成する間隙形成部
    が、前記板状部材に設けられており、 前記間隙形成部は、前記板状部材に、その反対側の面に
    膨出部が現れるように形成され、かつ前記筒状部材の一
    端を介して前記筒状部材の内周側と外周側とを連通する
    凹部であり、 前記板状部材が前記筒状部材の一端に前記膨出部を避け
    て結合されていることを特徴とする摩擦係合要素の潤滑
    機構。
  2. 【請求項2】 前記凹部内に潤滑油が流動する側の前記
    凹部の流動面および前記凹部内から潤滑油が流動する側
    の前記凹部の流動面が、それぞれ、傾斜していることを
    特徴とする請求項1記載の摩擦係合要素の潤滑機構。
  3. 【請求項3】回転可能に設けられたアウタレースを有
    し、一方向の回転に対して係止するとともに他方向の回
    転に対して自由となるワンウェイクラッチと、前記アウ
    タレースの外周側に配設され、のアウタレースの回転
    を制御し、摩擦係合要素であるブレーキとを備え、前記
    ブレーキのブレーキハブが前記アウタレースの少なくと
    も一端に当接されて溶接により結合されており、前記ブ
    レーキを潤滑するための潤滑油が前記アウタレースの内
    周側から流動するようになっている自動変速機の摩擦係
    合要素の潤滑機構において、 前記ブレーキハブが、半径方向に延びる環状側板部と、
    この環状側板部の外周端から軸方向に延び、前記ブレー
    キの複数の摩擦板が摺動可能に嵌合されるとともに複数
    の潤滑孔が設けられている円筒部とを有し、前記ブレーキハブと前記アウタレースの少なくとも一端
    とが当接する位置に、前記アウタレースの内周側と外周
    側とを連通しかつ前記潤滑油が流動する間隙を 形成する
    間隙形成部が、前記ブレーキハブに設けられている こと
    を特徴とする自動変速機の摩擦係合要素の潤滑機構。
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