JP3423416B2 - レンズ等の設計支援装置及び方法 - Google Patents

レンズ等の設計支援装置及び方法

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JP3423416B2 JP14864194A JP14864194A JP3423416B2 JP 3423416 B2 JP3423416 B2 JP 3423416B2 JP 14864194 A JP14864194 A JP 14864194A JP 14864194 A JP14864194 A JP 14864194A JP 3423416 B2 JP3423416 B2 JP 3423416B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、複数の構成要素からな
る対象の系が所望の特性となるように、該複数の構成要
素を局所的に変更していく最適化手法の内の降下法を用
いた設計支援装置及び方法に関し、例えばレンズ設計、
LSIの最適パターン設計、建築物の設計などの支援を
行うものに関する。
【0002】
【従来の技術】設計の対象となる系を構成する構成要素
をn個の要素から成る変数ベクトル
【0003】
【数1】 で表わし、該対象の特性を評価する量をm個の要素から
成る評価関数ベクトル
【0004】
【数2】 で表わす。ただし、
【0005】
【数3】 である。ここで、添字vはXv ,Fvがベクトル(又は行
列)であることを示すために付加したものである。また
k(Xv), k,tarはそれぞれ各特性値を表わす評価
関数の値とその目標値であり、wkは重み付け係数であ
る。これらの評価関数には所望の値にすることを目的と
した特性値の他、制約条件値を含めてもよい。降下法で
は、一般に各評価関数値の目標値からのずれ(誤差)量
が最小になるように解が求められ、そのために単一評価
尺度として、次式で表わされる目的関数を用いる。
【0006】
【数4】 (4)式で与えられる目的関数を特にレンズ設計の分野
では、メリット関数と呼び。(4)式にニュートン−ラ
フソン(Newton-Raphson)法を適用すると、局所的最小
値となるためのXvの必要条件は
【0007】
【数5】 と表わせる。ここで、Av はFv(Xv)のヤコビ(Jaco
bi)行列であり、(6)式で定義される。
【0008】
【数6】 また、Hviは第i評価関数fiのヘッセ(Hesse)行列
で、(7)式で定義される。
【0009】
【数7】 なお、(6),(7)式において、Fi は評価関数ベク
トルFv(Xv)((2)式)の第i要素Fi(Xv)を意
味する。また、ΔXvは変数ベクトルの次のステップへ
の変動を表わす解ベクトルであり、以下のように表わせ
る。
【0010】
【数8】 一般に、降下法では(5)式をそのまま解く代わりに、
2次微分以上の非線形性成分を補正するパラメータ(非
線形性補正項)を要素に持つ対角行列Dv((9)式)
を用いて、(10)式を解くことにより最適解が求めら
れる。
【0011】
【数9】
【0012】
【数10】 なお、実際の数値計算では、前記Av の各要素aij
(6)式で示した様な厳密な微分係数値(11)式では
なく差分値(12)式を用いて計算される。
【0013】
【数11】
【0014】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、最適な
変数差分量δxjの値は、対象となる系の特性により千
差万別で、不適切な値を与えると数値計算上でエラーが
発生したり、多くの反復計算を要したりして、効率良く
最適解を求められないという問題がある。
【0015】本発明は、この点に着目してなされたもの
であり、変数差分量を適切に設定することにより、常に
効率良く最適解を求めることができる設計支援装置及び
方法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明のある形態は、請
求項1、15に示すように、複数の構成要素からなる設
計対象の系が所望の特性となるように、前記複数の構成
要素を局所的に変更して最適化する降下法によりレンズ
等の設計を支援する設計支援装置や設計支援方法におい
て、前記構成要素に対応する変数の差分量に対する前記
系の特性の変化量を要素に持つヤコビ行列(Av)と該
ヤコビ行列の転置行列(Av T)との積で構成される積行
列(Av Tv)の固有値分布を複数種の前記変数の差分
量のそれぞれに関して演算して複数の固有値分布を求
め、前記複数の固有値分布に基づいて前記最適化のため
前記変数の差分量を設定するようにしたものである。
【0017】本発明の他の形態は、請求項8,22に示
すように、複数の構成要素からなる設計対象の系が所望
の特性となるように、前記複数の構成要素を局所的に変
更して最適化する降下法によりレンズ等の設計を支援す
設計支援装置や設計支援方法において、前記構成要素
に対応する変数の差分量に対する前記系の特性の変化量
を要素に持つヤコビ行列(Avの特異値の自乗値分布
を複数種の前記変数の差分量のそれぞれに関して演算し
て複数の自乗値分布を求め、前記複数の自乗値分布に基
づいて前記最適化のための前記変数の差分量を設定する
ようにしたものである。
【0018】また、前記設計支援装置又は方法におい
て、最適化を図る目的関数に対する前記変数に対応した
非線形性補正項の初期値が前記積行列の固有値分布や前
記ヤコビ行列の特異値の自乗値分布の最小値と最大値の
間に存在するように前記変数の差分量を設定したり、前
記積行列の固有値分布や前記ヤコビ行列の特異値の自乗
値分布の中央値が最適化を図る目的関数に対する前記変
数に対応した非線形性補正項の初期値の中央値に略一致
するように前記変数の差分量を設定したり、前記積行列
の固有値分布や前記ヤコビ行列の特異値の自乗値分布
平均値が最適化を図る目的関数に対する前記変数に対応
した非線形性補正項の初期値の中央値に略一致するよう
に前記変数の差分量を設定したり、前記積行列の固有値
分布や前記ヤコビ行列の特異値の自乗値分布の中央値が
最適化を図る目的関数に対する前記変数に対応した非線
形性補正項の初期値の平均値に略一致するように前記変
数の差分量を設定したり、前記積行列の固有値分布や前
記ヤコビ行列の特異値の自乗値分布の平均値が最適化を
図る目的関数に対する前記変数に対応した非線形性補正
項の初期値の平均値に略一致するように前記変数の差分
量を設定したり、前記複数の固有値分布や前記複数の自
乗値分布と該固有置分布や自乗値分布に対し設定された
重み付け情報とを用いて前記変数の差分量を設定したり
することが望ましい。
【0019】さらに、前記設計支援装置又は方法におい
て、「積行列(Av Tv)の固有値分布」に代えて、「ヤ
コビ行列(Av)の特異値の自乗値分布」を用いてもよ
い。
【0020】
【作用】請求項1の装置又は請求項15の方法によれ
ば、系の構成要素に対応する変数の差分量に対する系の
特性の変化量を要素に持つヤコビ行列(Av)と該ヤコ
ビ行列の転置行列(Av T)との積行列(Av Tv)の
有値分布を複数種の前記変数の差分量のそれぞれに関し
て演算して複数の固有値分布が求められ、前記複数の固
有値分布に基づいて前記最適化のための前記変数の差分
量が設定される。
【0021】請求項8の装置又は請求項22の方法によ
れば、系の構成要素に対応する変数の差分量に対する前
記系の特性の変化量を要素に持つヤコビ行列(Av)の
特異値の自乗値分布を複数種の前記変数の差分量のそれ
ぞれに関して演算して複数の前記自乗値分布が求めら
れ、前記複数の自乗値分布に基づいて前記最適化のため
前記変数の差分量が設定される。
【0022】
【実施例】以下本発明の実施例を図面を参照して説明す
る。
【0023】図1は本発明の一実施例に係る設計支援装
置の構成を示す図である。この装置は、設計対象となる
系の構成要素に対応する変数の最適化を行うために、種
々の演算を実行するCPU(中央処理装置)1と、使用
者がCPU1にデータや演算命令を入力するための入力
装置2と、CPU1が実行するプログラムや演算途中の
データ等を格納する記憶装置3と、演算結果をディスプ
レイに表示したり、プリンタにより印刷する出力装置4
とから構成される。これらの構成要素1〜4は、バス5
により相互に接続されている。
【0024】次に、CPU1で実行される処理の概要を
説明する。
【0025】先ず、前述したヤコビ行列Avとその転置
行列Av Tとの積行列(Av Tv)を以下のように固有値
分解する。
【0026】
【数12】 ここで、Vvはn×nの直交行列であり、Svは(14)
式に示すように、積行列(Av Tv)のn個の固有値を
要素に持つn×nの対角行列である。
【0027】
【数13】 こうして得られるn個の固有値s1 ,・・・,snの分
布は、一般に前述した変数の差分量δxjを変化させる
に伴って変化する。その際、差分量δxjによって直接
n個の固有値分布を制御するため、本実施例では以下の
手法を採用している。
【0028】先ず、前述した評価関数ベクトルF
v(Xv)のXv0近傍での線形近似式
【0029】
【数14】 に着目し、評価関数ベクトルFv(Xv)の第i要素を以
下のように表わす((16)式)。
【0030】
【数15】 (16)式において、δjiは、第i評価関数の第j変
数による変化量を表わす。(16)式の関係から、ヤコ
ビ行列Av ((6)式),及び解ベクトルΔX
v((8)式)かわりにそれぞれ(17)式,(18)
式のような行列Av′,及びベクトルΔXv′を用いても
まったく同様に最適化演算が行なえることが分かる。
【0031】
【数16】 このようにすれば、前記変数の差分量δxjにより直接
前記ヤコビ行列の各要素の値を変化させることができる
ため、n個の固有値の値s1〜snを自由に制御すること
が可能となる。
【0032】以上のようにして一旦与えた前記変数の差
分量δxjによるn個の固有値s1〜snの分布と前記非
線形性補正項dの初期値との関係から、設定された前記
変数差分量δxjが適切な値であるかどうかを判定する
とともに、その情報を用いて、さらに適切な値となるよ
うに前記変数差分量δxjを変更していくことにより最
適な差分量設定を行い、最適な設計値を効率的に得られ
るようにしている。
【0033】次に、レンズ設計を例にとってより具体的
に説明する。
【0034】以下の具体例では簡単のため前記非線形性
補正項diをすべて共通のdで表わし、それを要素に持
つ対角行列Dvを(19)式で表わすこととする。
【0035】
【数17】 図2は本発明の第1の実施例で設計の対象とした薄肉レ
ンズモデルを示す。図2では見易くするためレンズに厚
みを付けてあるが、計算上すべてのレンズ肉厚及び面間
隔は0としてある。このレンズ系に対して曲率半径r3
を全系の焦点距離が正確に1となるために用い、残りの
2つの曲率半径r1,r2を変数とした。評価関数として
は3次の球面差係数とコマ収係数の2つを採用した。初
期形状としては、(1/r1,1/r2)の座標で表わし
て 1/r1=−1.8,1/r2=0.5 (20) とした。そして、これら2つの変数(1/r1)、(1
/r2)の差分量δ(1/r1)、δ(1/r2)をそれ
ぞれ
【0036】
【数18】 なる範囲内で設定する。さらに、設定すべき変数差分量
は、(21)式の範囲で102きざみにすると、各変数
について4通り、合計16通りのなかから選べばよいこ
とになる。レンズ設計においては、通常、変数の種別に
よって、おおよそ設定すべき変数差分量の範囲は経験的
に分かっている。
【0037】この時、各変数差分量設定値における、こ
れら2つの変数及び2つの評価関数に対するヤコビ行列
vを求め、積行列(Av Tv)の2つの固有値s1,s2
を計算すると、以下のようになる(全体を(22)式と
する)。
【0038】
【数19】 以上について、それぞれの積行列(Av Tv)の固有値
分布は図3(a)から図6(d)に示すようになる。こ
れらの図は、CPU1によって演算された固有値分布を
出力装置4によって印刷したものである。各図で横軸に
数値を指数表示し、その上の前記各固有値(s1、s2
の位置を*で表わしている。また、横軸上に非線形性補
正項dの初期値d0の位置をXで示し、それを中心とし
た非線形性補正項dの探索範囲(以下「d探索範囲」と
いう)を[##・・・##]で示してある。なお、本実
施例では d0=1.0 (23) とした。また、d探索範囲を、
【0039】
【数20】 とした。本発明は積行列(Av Tv)の固有値分布情報
から変数の差分量の適切な値を設定するものであり、前
記d探索範囲に固有値s1,s2ができるだけ多く含まれ
るものを設定した方がよいことが、レンズ設計の分野で
は経験的に分かっている。この場合には図3〜6からも
明らかなようにd探索範囲に固有値s1,s2が1つも含
まれていないものが以下に示す場合((25)式)であ
る。
【0040】
【数21】 また固有値が1つ(s1又はs2)含まれているのが以下
に示す場合((26)式)である。
【0041】
【数22】 また固有値s1,s2が両方含まれているのが以下に示す
場合((27)式)である。
【0042】
【数23】 (27)式に示したいずれかの変数差分量を設定するこ
とにより非線形性補正項dの値を探索するための反復計
算が平均して効率良く行うことができる。
【0043】より明確に前記変数差分量の適切な値を設
定するには、非線形性補正項dの初期値d0が、積行列
(Av Tv)の固有値分布の最大のものより小さく最小
のものより大きくなっているものを設定すればよい。本
実施例の場合
【0044】
【数24】 の時、この要求は満たされる。
【0045】さらに定量的に前記変数差分量の適切な値
を設定するには、複数の変数r1,r2に対応する非線形
性補正項初期値の中央値ないし平均値と前記積行列(A
v Tv)の固有値分布の中央値ないし平均値とが略一致
するものを設定すればよい。略一致とは、対象によって
も異なるが、レンズ設計の場合経験的に102から103
程度で一致していればよいことが分かっている。ここで
は、前記非線形補正項初期値d0はすべての前記変数に
共通に与えているため、該非線形性補正項初期値の中央
値ないしは平均値はいずれもd0と表わせる。即ち、前
記積行列(Av Tv)の固有値分布の中央値ないし平均
値をsmと表わすと、前記d0
【0046】
【数25】 なる関係を満たすようになっていれば、その時設定され
た前記変数の差分量δ(1/r1)、δ(1/r2)は適
切ということになる。本実施例においては、変数の数が
2個であるので、積行列(Av Tv)の固有値分布の中
央値と平均値は一致する。そして前記変数差分量に対応
した前記固有値分布の平均値を調べると(28)式のよ
うに設定すれば(29)式の関係が満たされることが分
かる。
【0047】上記変数差分量の設定をもっと自動的に行
うには、前記固有値s1,s2がd探索範囲に多く含まれ
るほど評価値が高くなるように、図7に示すような重み
づけをすればよい。図7で、横軸が各固有値の値、縦軸
がそれぞれの固有値にかかる重みの値であり、固有値が
d探索範囲に含まれる場合に1、そうでなければ0とな
るように設定されており、これによって評価値がより高
くなるような変数差分量を設定すればよい。
【0048】また、非線形性補正項初期値d0と固有値
分布との相対関係に基づいて変数差分量δ(1/
1)、δ(1/r2)の設定を行う場合には、図8に示
すように、非線形性補正項初期値d0で最も値が高くな
り、それから遠ざかるほど徐々に値が低くなるような連
続的な重みづけをすれば良い。なお、図7,8に示す重
み付け情報(重み付け関数)は記憶装置3に格納されて
いる。
【0049】次に上述した変数差分量の設定により最適
化演算を行った場合の結果を説明する。
【0050】先ず、d探索範囲に入る固有値の個数と計
算の結果得られたメリット関数平均値、計算に要した反
復回数平均値を以下に示す。
【0051】なお、メリット関数値は出発点での値で正
規化してある。
【0052】 固有値の個数 メリット関数平均値 反復回数平均値 0 0.713 13 1 0.036 10 2 0.034 6.7 この結果から明らかなようにd探索範囲に入る固有値の
個数が多いものほど、得られるメリット関数値が小さ
く、反復計算に要した回数も少なくて済む。従って、固
有値がd探索範囲に2個入るように変数差分量を設定す
ることにより、効率良く最適なr1,r2の設計値を得る
ことができる。
【0053】次に、非線形性補正項初期値d0が固有値
分布の最小値と最大値の間に存在する場合と存在しない
場合についての結果を以下に示す。
【0054】 メリット関数平均値 反復回数平均値 存在する場合: 0.073 6.6 存在しない場合: 0.143 10.3 この結果から明らかなように、非線形性補正項初期値d
0が固有値分布の最小値と最大値の間に存在するように
変数差分量を設定することにより、得られるメリット関
数値が小さく反復回数も少なくて済み、最適設計をより
効率的に行うことができる。
【0055】さらに、非線形補正項初期値d0と固有値
分布の平均値との差をべき数の差で表わし、差が1
0,103,104,107,108の場合についての結
果は以下のようになる。
【0056】 べき数の差 メリット関数平均値 反復回数平均値 0 0.066 6.6 3 0.005 9.0 4 0.033 13.0 7 0.469 13.0 8 0.958 13.0 この結果から明らかなように、メリット関数値はべき数
の差が3程度のとき最小となり、反復回数はべき数の差
が小さいほど少ない。従って、べき数の差が2から3程
度以内となるように変数差分量を設定することにより、
最適設計をより効率的に行うことができる。
【0057】図9は、本発明の第2の実施例の設計対象
となるレンズシステムの構成を示す図である。
【0058】本実施例では、レンズ構成要素から成る変
数を22個、レンズの特性を表わす評価関数に主とし光
線収差量を用いた。この合計22個の変数の内訳は面の
曲率半径rが11個と面間隔gが11個であり、これら
の変数差分量を、曲率半径の逆数1/rに関しては
【0059】
【数26】 面間隔gに関しては
【0060】
【数27】 なる範囲内で最適な値に設定することを考える。今、各
変数差分量を101きざみで考えると、取り得るすべて
の組合せは、
【0061】
【数28】 ということになる。このすべてを、1つ当たり10-6
で調べたとしても、すべてを調べ終るのには約263年
という膨大な時間がかかる。これは組合せ最適化問題で
厳密な解を求めるのが非常に困難な問題(いわゆるNP
完全型の問題)の一種である。この種の問題の近似解を
非常に効率良く解く手法として、遺伝的アルゴリズム
(Genetic Algorithm)が従来より知られている。遺伝
的アルゴリズムは1960年代にJ.H.Hollandにより考
案されたもので、生物進化のエッセンスをそのままコン
ピュータ上でシミュレートすることにより、最適化問題
を効率良く解く手法である。
【0062】具体的には図12に示すような手順で実行
される。まずステップS1では問題をモデル化して遺伝
子型の設定を行う。遺伝子型としては例えば数字の列
(10100110)などを使う。次に、異なる遺伝子
を持つ個体(この場合は数字列)を多数作り出す(例え
ば10110001,01101010,111011
00・・・)(ステップS2)。そして作り出した個体
の適応性の評価を行う(ステップS3)。即ち各個体
(数列)を所定の評価関数を用いて評価し、次のステッ
プS4で評価の低い個体(数列)を淘汰する。
【0063】続くステップS5では、淘汰されなかった
個体を増殖させ、淘汰された個体数を補い、次いで交差
(ステップS6)、突然変異(ステップS7)の処理を
行い、得られた個体の適応性が不充分ならステップS3
〜S7を繰り返す。ここで交差は、特定の遺伝子対を選
定して、特定部位の入れ換えを行うものであり、突然変
異はある確率で遺伝子のある部位を変化させるものであ
る。
【0064】以上のような処理を最適な変数差分量の設
定に適用する場合、遺伝子型をどのように設定するか及
び適応性の評価をどのように行うかがポイントとなる。
【0065】本実施例では、まず遺伝子型としては、任
意の1組の差分量設定値をべき数で表した数列を採用し
た。即ち、例えば数列の左から右へ、1番目から11番
目までを各曲率半径rに関する差分量のべき数値、12
番目から22番目までを各面間隔gに関する差分量のべ
き数値とし、1/rの差分量をすべて1×10-6 、gの
差分量をすべて1×10-3 とするとき、この状態を表わ
す遺伝子列を -6-6-6-6-6-6-6-6-6-6-6-3-3-3-3-3-3-3-3-3-3-3 (32) とする。
【0066】一方、適応性の評価には、積行列(Av T
v)の固有値分布の情報を用いる。より具体的には、非
線形性補正項の初期値d0が積行列(Av Tv)の固有値
の内の最大のものより小さく最小のものより大きい値と
なるものほど、高い評価結果が得られるようにする。
【0067】より厳密に適応性を評価しようとする場合
には、前記初期値d0の中央値あるいは平均値を前記固
有値分布の中央値あるいは平均値とを比較し、それらが
略一致する場合、高い評価が得られるようにする。
【0068】本実施例では、図10に示すような分布の
重み付けを施し、前記固有値がd探索範囲外よりも範囲
内のほうが評価値が高くなるように、かつ、d探索範囲
内でも非線形性補正項初期値d0に近いほど評価が高く
なるようにした。
【0069】具体的な数値例で説明すると、まず変数差
分量を面の曲率半径rと面間隔gとをそれぞれ共通に
【0070】
【数29】 とおく。このとき、前記固有値分布を調べると、図11
(a)に示すようになった。この状態を出発点として、
図11(a)のような固有値分布に図10のような重み
付け分布をかけあわせて評価値とし、前記遺伝的アルゴ
リズムにより、適切な変数差分量を設定するための処理
を行う。その結果得られた変数差分量設定値は、曲率半
径r、面間隔gについてそれぞれ以下のようになった。
【0071】
【数30】 この変数差分量設定値(34)に対応する固有値分布を
調べると図11(b)に示すようになった。図11
(a)と(b)とを比較すれば明らかなように、上述し
た処理によって、前記固有値分布が非線形性補正項初期
値d0(=1.0)付近に集まっていることが分かる。
【0072】上述した処理の前後での、正規化されたメ
リット関数値、および計算に要した反復回数を比較する
と、以下のようになった。
【0073】 メリット関数値 反復計算回数 処理前 5.0×10-3 3 処理後 1.3×10-3 3 この結果から明らかなように本実施例によれば、降下法
の収束効率を向上させることができる。
【0074】次に本発明の第3の実施例においてCPU
1で実行される処理の概要を説明する。
【0075】先ず、前述したヤコビ行列Avを以下のよ
うに特異値分解する。
【0076】
【数31】 ここで、Uvvはそれぞれm×m、n×nの正規直交行
列、Pvは、m>nのとき
【0077】
【数32】 m≦nのとき
【0078】
【数33】 なる、ヤコビ行列Avのnまたはm個の特異値を要素に
持つ特異値行列である。そして、この特異値行列の積P
v Tvは、
【0079】
【数34】 と表わせる。こうして得られるn個の特異値の自乗値p
1 2,・・・,pn 2の分布は、一般に前述した変数の差分
量δxjを変化させるに伴って変化する。その際、差分
量δxjによって直接k個の特異値の自乗値p1 2,・・
・,pn 2の分布を制御するため、本実施例においても第
1の実施例と同様の手法(式(15)〜(18))を採
用している。これにより、差分量δxjによってn個の
特異値の自乗値p1 2,・・・,pn 2を自由に制御するこ
とができる。
【0080】以上のようにして一旦与えた前記変数の差
分量δxjによるn個の特異値の自乗値分布と前記非線
形性補正項dの初期値との関係から、設定された変数差
分量が適切な値であるかどうかを判定するとともに、そ
の情報を用いて、さらに適切な値となるように変数差分
量δxjを逐次変更していくことにより最適な差分量設
定を行い、最適な設計値を効率的に得られるようにして
いる。
【0081】上述した手法を第1の実施例と同一のレン
ズシステムに適用し、(22)式に対応するヤコビ行列
vの特異値の自乗値p1 2,p2 2を算出すると以下よう
になる(全体を(39)式とする)。
【0082】
【数35】 これから明らかなようにヤコビ行列Avの特異値の自乗
値の分布は、前記積行列(Av Tv)の固有値の分布と
全く同じとなる。即ち、ヤコビ行列Avの特異値の自乗
値p1 2,p2 2は、積行列(Av Tv)の固有値と等し
い。
【0083】よって、第1の実施例において積行列(A
v Tv)の固有値s1,s2を、ヤコビ行列Avの特異値の
自乗値p1 2,p2 2に置き換えたものが本実施例に相当
し、本実施例によっても第1の実施例と同様の効果を奏
する。
【0084】また、第2の実施例においても同様の置き
換えが可能である。
【0085】
【発明の効果】以上詳述したように請求項1の設計支援
装置又は請求項15の設計支援方法によれば、系の構成
要素に対応する変数の差分量に対する系の特性の変化量
を要素に持つヤコビ行列(Av)と該ヤコビ行列の転置
行列(Av T)との積で構成される積行列(Av Tv)の
固有値分布を複数種の前記変数の差分量のそれぞれに関
して演算して複数の固有値分布が求められ、前記複数の
固有値分布に基づいて前記最適化のための前記変数の差
分量が設定されるので、降下法による最適値の演算を効
率良く行い、最適な設計値を効率良く得ることができ
る。これにより、効率よく系の最適化設計を行うことが
できるという効果を奏する。
【0086】また、請求項8の設計支援装置又は請求項
22の設計支援方法によれば、系の構成要素に対応する
変数の差分量に対する前記系の特性の変化量を要素に持
つヤコビ行列(Av)の特異値の自乗値分布を複数種の
前記変数の差分量のそれぞれに関して演算して複数の前
記自乗値分布が求められ、前記複数の自乗値分布に基づ
いて前記最適化のための前記変数の差分量が設定される
ので、上記同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る設計支援装置の構成を
示す図である。
【図2】設計の対象とした第1のレンズの系の構成を示
す図である。
【図3】ヤコビ行列とその転置行列の積行列の固有値
(ヤコビ行列の特異値の自乗値)の分布を示す図であ
る。
【図4】ヤコビ行列とその転置行列の積行列の固有値
(ヤコビ行列の特異値の自乗値)の分布を示す図であ
る。
【図5】ヤコビ行列とその転置行列の積行列の固有値
(ヤコビ行列の特異値の自乗値)の分布を示す図であ
る。
【図6】ヤコビ行列とその転置行列の積行列の固有値
(ヤコビ行列の特異値の自乗値)の分布を示す図であ
る。
【図7】重み付け情報(重み付け関数)の一例を示す図
である。
【図8】重み付け情報(重み付け関数)の一例を示す図
である。
【図9】設計の対象とした第2のレンズ系の構成を示す
図である。
【図10】重み付け情報(重み付け関数)の一例を示す
図である。
【図11】ヤコビ行列とその転置行列の積行列の固有値
(ヤコビ行列の特異値の自乗値)の分布を示す図であ
る。
【図12】遺伝子的アルゴリズムの手順を示すフローチ
ャートである。
【符号の説明】
1 CPU 2 入力装置 3 記憶装置 4 出力装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G06F 17/50 680 JICSTファイル(JOIS)

Claims (28)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数の構成要素からなる設計対象の系が
    所望の特性となるように、前記複数の構成要素を局所的
    に変更して最適化する降下法によりレンズ等の設計を支
    援する設計支援装置において、前記構成要素 に対応する変数の差分量に対する前記系の
    特性の変化量を要素に持つヤコビ行列(Av)と該ヤコ
    ビ行列の転置行列(Av T)との積で構成される積行列
    (Av Tv)の固有値分布を複数種の前記変数の差分量
    のそれぞれに関して演算して複数の固有値分布を求める
    固有値分布演算手段と、前記複数の固有値分布に基づいて前記最適化のための
    記変数の差分量を設定する差分量設定手段とを設けたこ
    とを特徴とするレンズ等の設計支援装置。
  2. 【請求項2】 前記差分量設定手段は、最適化を図る目
    的関数に対する前記変数に対応した非線形性補正項の初
    期値が前記積行列の固有値分布の最小値と最大値の間に
    存在するように前記変数の差分量を設定することを特徴
    とする請求項1記載の設計支援装置。
  3. 【請求項3】 前記差分量設定手段は、前記積行列の固
    有値分布の中央値が最適化を図る目的関数に対する前記
    変数に対応した非線形性補正項の初期値の中央値に略一
    致するように前記変数の差分量を設定することを特徴と
    する請求項1記載の設計支援装置。
  4. 【請求項4】 前記差分量設定手段は、前記積行列の固
    有値分布の平均値が最適化を図る目的関数に対する前記
    変数に対応した非線形性補正項の初期値の中央値に略一
    致するように前記変数の差分量を設定することを特徴と
    する請求項1記載の設計支援装置。
  5. 【請求項5】 前記差分量設定手段は、前記積行列の固
    有値分布の中央値が最適化を図る目的関数に対する前記
    変数に対応した非線形性補正項の初期値の平均値に略一
    致するように前記変数の差分量を設定することを特徴と
    する請求項1記載の設計支援装置。
  6. 【請求項6】 前記差分量設定手段は、前記積行列の固
    有値分布の平均値が最適化を図る目的関数に対する前記
    変数に対応した非線形性補正項の初期値の平均値に略一
    致するように前記変数の差分量を設定することを特徴と
    する請求項1記載の設計支援装置。
  7. 【請求項7】前記差分量設定手段は、前記複数の固有値
    分布と該固有置分布に対し設定された重み付け情報とを
    用いて前記変数の差分量を設定することを特徴とする請
    求項1記載の設計支援装置。
  8. 【請求項8】複数の構成要素からなる設計対象の系が所
    望の特性となるように、前記複数の構成要素を局所的に
    変更して最適化する降下法によりレンズ等の設計を支援
    する設計支援装置において、前記構成要素 に対応する変数の差分量に対する前記系の
    特性の変化量を要素に持つヤコビ行列(Av)の特異値
    の自乗値分布を複数種の前記変数の差分量のそれぞれに
    関して演算して複数の前記自乗値分布を求める自乗値分
    布演算手段と、 前記複数の自乗値分布に基づいて前記最適化のための
    記変数の差分量を設定する差分量設定手段とを設けたこ
    とを特徴とするレンズ等の設計支援装置。
  9. 【請求項9】 前記差分量設定手段は、最適化を図る目
    的関数に対する前記変数に対応した非線形性補正項の初
    期値が、前記ヤコビ行列の特異値の自乗値分布の最小値
    と最大値の間に存在するように前記変数の差分量を設定
    することを特徴とする請求項8記載の設計支援装置。
  10. 【請求項10】 前記差分量設定手段は、前記ヤコビ行
    列の特異値の自乗値分布の中央値が最適化を図る目的関
    数に対する前記変数に対応した非線形性補正項の初期値
    の中央値に略一致するように前記変数の差分量を設定す
    ることを特徴とする請求項8記載の設計支援装置。
  11. 【請求項11】 前記差分量設定手段は、前記ヤコビ行
    列の特異値の自乗値分布の平均値が最適化を図る目的関
    数に対する前記変数に対応した非線形性補正項の初期値
    の中央値に略一致するように前記変数の差分量を設定す
    ることを特徴とする請求項8記載の設計支援装置。
  12. 【請求項12】 前記差分量設定手段は、前記ヤコビ行
    列の特異値の自乗値分布の中央値が最適化を図る目的関
    数に対する前記変数に対応した非線形性補正項の初期値
    の平均値に略一致するように前記変数の差分量を設定す
    ることを特徴とする請求項8記載の設計支援装置。
  13. 【請求項13】 前記差分量設定手段は、前記ヤコビ行
    列の特異値の自乗値分布の平均値が最適化を図る目的関
    数に対する前記変数に対応した非線形性補正項の初期値
    の平均値に略一致するように前記変数の差分量を設定す
    ることを特徴とする請求項8記載の設計支援装置。
  14. 【請求項14】 前記差分量設定手段は、前記複数の自
    乗値分布と該固有置分布に対し設定された重み付け情報
    とを用いて前記変数の差分量を設定することを特徴とす
    る請求項8記載の設計支援装置。
  15. 【請求項15】 複数の構成要素からなる設計対象の系
    が所望の特性となるように、前記複数の構成要素を局所
    的に変更して最適化する降下法によりレンズ等の設計を
    支援する設計支援方法において、前記構成要素 に対応する変数の差分量に対する前記系の
    特性の変化量を要素に持つヤコビ行列(Av)と該ヤコ
    ビ行列の転置行列(Av T)との積で構成される積行列
    (Av Tv)の固有値分布を複数種の前記変数の差分量
    のそれぞれに関して演算して複数の固有値分布を求め、 前記複数の固有値分布に基づいて前記最適化のための
    記変数の差分量を設定することを特徴とするレンズ等の
    設計支援方法。
  16. 【請求項16】 最適化を図る目的関数に対する前記変
    数に対応した非線形性補正項の初期値が前記積行列の固
    有値分布の最小値と最大値の間に存在するように前記変
    数の差分量を設定することを特徴とする請求項15記載
    の設計支援方法。
  17. 【請求項17】 前記積行列の固有値分布の中央値が最
    適化を図る目的関数に対する前記変数に対応した非線形
    性補正項の初期値の中央値に略一致するように前記変数
    の差分量を設定することを特徴とする請求項15記載の
    設計支援装置。
  18. 【請求項18】 前記積行列の固有値分布の平均値が最
    適化を図る目的関数に対する前記変数に対応した非線形
    性補正項の初期値の中央値に略一致するように前記変数
    の差分量を設定することを特徴とする請求項15記載の
    設計支援装置。
  19. 【請求項19】 前記積行列の固有値分布の中央値が最
    適化を図る目的関数に対する前記変数に対応した非線形
    性補正項の初期値の平均値に略一致するように前記変数
    の差分量を設定することを特徴とする請求項15記載の
    設計支援方法。
  20. 【請求項20】 前記積行列の固有値分布の平均値が最
    適化を図る目的関数に対する前記変数に対応した非線形
    性補正項の初期値の平均値に略一致するように前記変数
    の差分量を設定することを特徴とする請求項15記載の
    設計支援方法。
  21. 【請求項21】 前記複数の固有値分布と該固有置分布
    に対し設定された重み付け情報とを用いて前記変数の差
    分量を設定することを特徴とする請求項15記載の設計
    支援方法。
  22. 【請求項22】 複数の構成要素からなる設計対象の系
    が所望の特性となるように、前記複数の構成要素を局所
    的に変更して最適化する降下法によりレンズ等の設計を
    支援する設計支援方法において、前記構成要素 に対応する変数の差分量に対する前記系の
    特性の変化量を要素に持つヤコビ行列(Av)の特異値
    の自乗値分布を複数種の前記変数の差分量のそれぞれに
    関して演算して複数の前記自乗値分布を求め、 前記複数の自乗値分布に基づいて前記最適化のための
    記変数の差分量を設定することを特徴とするレンズ等の
    設計支援方法。
  23. 【請求項23】 最適化を図る目的関数に対する前記変
    数に対応した非線形性補正項の初期値が、前記ヤコビ行
    列の特異値の自乗値分布の最小値と最大値の間に存在す
    るように前記変数の差分量を設定することを特徴とする
    請求項22記載の設計支援方法。
  24. 【請求項24】 前記ヤコビ行列の特異値の自乗値分布
    の中央値が最適化を図る目的関数に対する前記変数に対
    応した非線形性補正項の初期値の中央値に略一致するよ
    うに前記変数の差分量を設定することを特徴とする請求
    項22記載の設計支援方法。
  25. 【請求項25】 前記ヤコビ行列の特異値の自乗値分布
    の平均値が最適化を図る目的関数に対する前記変数に対
    応した非線形性補正項の初期値の中央値に略一致するよ
    うに前記変数の差分量を設定することを特徴とする請求
    項22記載の設計支援方法。
  26. 【請求項26】 前記ヤコビ行列の特異値の自乗値分布
    の中央値が最適化を図る目的関数に対する前記変数に対
    応した非線形性補正項の初期値の平均値に略一致するよ
    うに前記変数の差分量を設定することを特徴とする請求
    項22記載の設計支援方法。
  27. 【請求項27】 前記ヤコビ行列の特異値の自乗値分布
    の平均値が最適化を図る目的関数に対する前記変数に対
    応した非線形性補正項の初期値の平均値に略一致するよ
    うに前記変数の差分量を設定することを特徴とする請求
    項22記載の設計支援方法。
  28. 【請求項28】 前記複数の自乗値分布と該固有置分布
    に対し設定された重み付け情報とを用いて前記変数の差
    分量を設定することを特徴とする請求項22記載の設計
    支援方法。
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