JP3417714B2 - 残留δフェライトの少ないオーステナイト系ステンレス鋼薄肉鋳片の製造方法 - Google Patents
残留δフェライトの少ないオーステナイト系ステンレス鋼薄肉鋳片の製造方法Info
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Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、双ドラム式連続鋳造法
等のような同期式連続鋳造法によって、溶融金属からオ
ーステナイト系ステンレス鋼薄肉鋳片を直接製造する方
法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】図1に示すように、双ロール式連続鋳造
装置1は、互いに平行で接近しかつ反対方向へ回転する
一対の冷却ロール2、2と、冷却ロール2、2の両端面
に圧接した一対のサイド堰3、3とで湯溜り部4を形成
し、該湯溜り部4に注入した溶湯を冷却ロール2、2の
周面で冷却凝固して凝固シェルを生成させ、凝固シェル
を冷却ロール2、2間の間隙で圧着して、厚さ1〜10
mm程度の薄肉鋳片5を連続的に鋳造し、その後鋳造さ
れた薄肉鋳片5を1100℃以下に冷却することなくそ
のまま圧延機6を用いて熱間圧延するものである。 【0003】しかしながら、このプロセスでは、オース
テナイト(以下、γという)相中にδフェライトが残留
する鋼種(代表鋼種としてはSUS304)の場合、鋳
片の温度履歴のバラツキによってδフェライトの残留量
が異なり、鋳片表面には凝固組織むらが生じる。この組
織むらは、冷間圧延・焼鈍・酸洗を行うと光沢むらを生
じ、製品の表面品質を著しく損ねる。また、鋳片内部に
残留したδフェライトは冷間圧延・焼鈍後にも残留する
ため、その残留量の低減が求められている。 【0004】この問題を解決するために、例えば、特公
平5−23861号公報には、冷却ドラム表面のディン
プル間隔を調整して薄板製品の光沢むらを防止する技術
が提案され、また、特開平5−293601号公報に
は、鋳型から出た鋳片の冷却を高温域で遅くすることに
より鋳片表層のδフェライトを消失させる技術等が提案
されている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
のうちで冷却ドラム表面のディンプル間隔を調整する技
術(特公平5−23861号公報)を同期式連続鋳造法
に適用すると、製品表面の光沢むら防止に対しては非常
に効果があるものの、該技術は残留δフェライトを均一
分散させる方法のため、δフェライト量の低減はできな
かった。また、鋳片表層のδフェライトを消失させる技
術(特開平5−293601号公報)は光沢むらの低減
には効果があるものの、鋳片内部にδフェライトが残留
するため、製品内部のδフェライト残留量の低減はでき
ない。 【0006】本発明は、鋳片と鋳型壁面の間に相対速度
差のない、いわゆる同期式連続鋳造プロセスによって鋳
造した製品厚さに近い厚さのオーステナイト系ステンレ
ス鋼薄肉鋳片のδフェライト残留量をインライン圧延に
より低減し、高δフェライト成分のオーステナイト系ス
テンレス鋼においても、δフェライト残留量の少ない薄
肉鋳片の製造方法を提供することを目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明の上記目的は、鋳
型壁面が鋳片と同期して移動する連続鋳造機により薄肉
鋳片を鋳造する際に、鋳片の温度履歴において高温域の
冷却を特に早くすることにより鋳片に残留したδフェラ
イトを微細分散させ、消失させることによって達成され
る。 【0008】すなわち、本発明の要旨とするところは下
記のとおりである。 【0009】鋳型壁が鋳片と同期して移動する連続鋳造
機により下記(1)式によって規定されるδ−Fe量が
6.0%以上の溶湯を薄肉鋳片に鋳造し、次いで該薄肉
鋳片を熱間圧延機により熱間圧延する際に、下記(2)
式によって規定される鋳片の残留δフェライト量Xを
1.8%以下に調整することを特徴とする残留δフェラ
イトの少ないオーステナイト系ステンレス鋼薄肉鋳片の
製造方法。 【0010】 δ−Fe量(%)=3×(Cr重量%+1.5×Si重量%+Mo重量%)− 2.8×(Ni重量%+30×(C重量%+N重量%)+ 0.5Mn重量%)−19.8 …(1)式 X=4.4−0.15×R−0.27×V+1.3×(δ−Fe量%) …(2)式 但し、X:鋳片の残留δフェライト量(%) R:熱間圧延における圧下率(%) V:鋳造温度Tcから熱間圧延機入り側温度Tr間の平均冷却速度( ℃/s) 【0011】 【作用】本発明においては、双ロール方式の連続鋳造機
が好ましく用いられる。鋳型内の凝固冷却速度Vcを速
くすることにより、γをより安定して晶出させることが
可能となり、従って初晶δフェライトの微細分散が可能
となる。凝固冷却速度が300℃/s未満であると、初
晶であるδフェライトが容易に存在して粗大となるた
め、鋳造後の工程においてδフェライトの消失が困難と
なり、また、鋳型内での固相率が低下し、鋳造の安定性
を損ねるおそれがある。さらに、鋳造温度Tcから熱間
圧延機入り側温度Trによって計算されるこの間の平均
冷却速度Vを速くすることで、凝固後のδフェライトか
らγへの変態の発生が容易となり、その結果、鋳片内部
に残留したδフェライトの消失は促進される。また、1
000℃以上の温度域で圧延を行うことにより、再結晶
過程の促進に伴って鋳片に残留したδフェライトは容易
に拡散するため、δフェライト残留量の低減が可能とな
る。 【0012】熱間圧延機入り側温度Trが1000℃未
満ではスケール噛み込み疵が発生しやすくなり、125
0℃を超えると熱延ロールの損傷が大きくなる。また、
鋳造後の熱間圧延の圧下率Rが10%未満では鋳片内部
への歪み蓄積が再結晶過程を促進するためには不十分で
あり、40%を超えるとスケールのビルドアップによる
熱延ロールの摩耗が激しくなり、表面疵が発生しやすく
なる。なお、好ましい圧下率としては25〜35%であ
る。 【0013】図2に、後記(1)式によって計算される
溶湯の成分(δ−Fe量%)が8〜8.5%で、凝固冷
却速度Vc、および熱間圧延機入り側温度Trを110
0℃に固定して熱間圧延率Rを変化させた場合の鋳片の
残留δフェライト量を測定した結果を示す。図中の数字
は、各条件で熱間圧延した鋳片の残留δフェライト量を
示している。図2から明らかなように、前記の凝固冷却
速度Vcが300℃/s以上で、熱間圧延率Rを30%
以上とすることにより、鋳片のδフェライト残留量が約
8%から4%未満へと大幅に減少している。これは、製
品での光沢むら防止および内部残留量を確保するのに十
分であった。さらに、凝固冷却速度Vcおよび圧延率R
と残留δフェライト量の関係は、互いに反比例の関係に
あり、またこの2つの条件を組み合わせることによって
相乗効果が得られる。 【0014】 δ−Fe量(%)=3×(Cr重量%+1.5×Si重量%+Mo重量%)− 2.8×(Ni重量%+30×(C重量%+N重量%)+ 0.5Mn重量%)−19.8 …(1)式 また、溶湯の成分から計算されるδ−Fe量が高けれ
ば、初晶はδフェライトとなるために、凝固時のδフェ
ライト量は多く存在するはずであるが、凝固冷却速度V
cが速ければ速いほど準安定γの発生が容易となるの
で、δフェライトを微細分散させることが可能である。
また、圧下歪みを付加した場合、高温時の硬さが高いδ
フェライトの方が準安定γよりも歪みの蓄積が多いため
に再結晶促進過程において、δフェライトの拡散が助長
されるため、熱間圧延機入り側温度Trが影響するもの
と考えられる。従って、鋳造温度Tcおよび熱間圧延機
入り側温度Trによって計算される平均冷却速度Vがδ
フェライトの拡散に影響する。 【0015】本発明者らは、熱間圧延機入り側温度Tr
および熱間圧延率Rを種々に変化させた結果、熱間圧延
機入り側温度Trおよび熱間圧延率Rを選択することで
鋳片の残留δフェライトを2.0%以下に低減できるこ
とを見出した。本発明者らは、先ず次の工程によって薄
板製品を製造した。すなわち、オーステナイト系ステン
レス鋼を溶製した後、冷却ドラムの表面にディンプルを
配設した双ドラム式連続鋳造機により板厚1.6〜5.
0mmの薄肉鋳片を鋳造した。その際、双ドラム式連続
鋳造機の鋳造温度Tcから熱間圧延機入り側温度Trを
変化させることによって、この間の平均冷却速度Vを変
化させ、さらに熱間圧延率Rを変化させた。また、溶湯
成分を変化させて(1)式による溶湯のδ−Fe量をそ
れぞれ求めた。 【0016】 δ−Fe量(%)=3×(Cr重量%+1.5×Si重量%+Mo重量%)− 2.8×(Ni重量%+30×(C重量%+N重量%)+ 0.5Mn重量%)−19.8 …(1)式 次いで、冷却された鋳片を酸洗処理し、表面のスケール
を十分に除去した後、フェライトメータを用いて残留δ
フェライト量を測定した。製造条件および測定結果を表
1、表2(表1のつづき)に示す。凝固冷却速度Vcの
高いものが鋳片残留δフェライト量が少ないことが判
る。さらに、鋳造温度Tcから熱間圧延機入り側温度T
r間の平均冷却速度V、熱間圧延率Rおよびδ−Fe量
と鋳片から測定された残留δフェライト量の関係を重回
帰分析すると、(2)式の関係が得られた。従って、溶
湯のδ−Fe量を決定し、平均冷却速度Vおよび圧延率
Rの組合せを選択することにより、鋳片の残留δフェラ
イト量を2.0%以下に調整することが可能となる。 【0017】 X=4.4−0.15×R−0.27×V+1.3×(δ−Fe量%) …(2)式 但し、X:鋳片の残留δフェライト量(%) R:熱間圧延における圧下率(%) V:鋳造温度Tcから熱間圧延機入り側温度Tr間の平均冷却速度( ℃/s) 【0018】 【表1】【0019】 【表2】【0020】 【実施例】ドラム径が1200mm、ドラム幅が800
mmでCu製の冷却ドラムを用いた双ドラム式連続鋳造
機によって、1.5〜5mm厚みのオーステナイト系ス
テンレス鋼薄肉鋳片を鋳造した。得られた鋳片の残留δ
フェライト量を測定した結果を表3、表4(表3のつづ
き)に示す。なお、図3には各工程における残留δフェ
ライト量の変化を示す。 【0021】 【表3】【0022】 【表4】【0023】(2)式によって規定される鋳片の残留δ
フェライト量Xが1.8%以下であるNo.1〜9の鋳
片は、鋳片の残留δフェライト量が2.0%以下で、組
織むらに起因する光沢むらも発生せず、製品内部の残留
δフェライト量も0.8%以下に低減できた。これに対
して、(2)式によって規定される鋳片の残留δフェラ
イト量Xが本発明の範囲を外れているNo.10〜15
の鋳片の場合は、鋳片の残留δフェライト量が4.8%
以上で、組織むらに起因する光沢むらが発生し、製品内
部にも残留δフェライトが2.4%以上残留した。 【0024】 【発明の効果】本発明に従い薄肉鋳片を製造すれば、高
δフェライト成分のオーステナイト系ステンレス鋼にお
いても鋳片に残留するδフェライト量の低減が可能とな
り、鋳片組織の均一化が達成され、冷間圧延後の製品に
光沢むらの発生がなく、製品内部のδフェライト量も著
しく低減され、良好な品質のオーステナイト系ステンレ
ス鋼冷延板を得ることができる。
等のような同期式連続鋳造法によって、溶融金属からオ
ーステナイト系ステンレス鋼薄肉鋳片を直接製造する方
法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】図1に示すように、双ロール式連続鋳造
装置1は、互いに平行で接近しかつ反対方向へ回転する
一対の冷却ロール2、2と、冷却ロール2、2の両端面
に圧接した一対のサイド堰3、3とで湯溜り部4を形成
し、該湯溜り部4に注入した溶湯を冷却ロール2、2の
周面で冷却凝固して凝固シェルを生成させ、凝固シェル
を冷却ロール2、2間の間隙で圧着して、厚さ1〜10
mm程度の薄肉鋳片5を連続的に鋳造し、その後鋳造さ
れた薄肉鋳片5を1100℃以下に冷却することなくそ
のまま圧延機6を用いて熱間圧延するものである。 【0003】しかしながら、このプロセスでは、オース
テナイト(以下、γという)相中にδフェライトが残留
する鋼種(代表鋼種としてはSUS304)の場合、鋳
片の温度履歴のバラツキによってδフェライトの残留量
が異なり、鋳片表面には凝固組織むらが生じる。この組
織むらは、冷間圧延・焼鈍・酸洗を行うと光沢むらを生
じ、製品の表面品質を著しく損ねる。また、鋳片内部に
残留したδフェライトは冷間圧延・焼鈍後にも残留する
ため、その残留量の低減が求められている。 【0004】この問題を解決するために、例えば、特公
平5−23861号公報には、冷却ドラム表面のディン
プル間隔を調整して薄板製品の光沢むらを防止する技術
が提案され、また、特開平5−293601号公報に
は、鋳型から出た鋳片の冷却を高温域で遅くすることに
より鋳片表層のδフェライトを消失させる技術等が提案
されている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
のうちで冷却ドラム表面のディンプル間隔を調整する技
術(特公平5−23861号公報)を同期式連続鋳造法
に適用すると、製品表面の光沢むら防止に対しては非常
に効果があるものの、該技術は残留δフェライトを均一
分散させる方法のため、δフェライト量の低減はできな
かった。また、鋳片表層のδフェライトを消失させる技
術(特開平5−293601号公報)は光沢むらの低減
には効果があるものの、鋳片内部にδフェライトが残留
するため、製品内部のδフェライト残留量の低減はでき
ない。 【0006】本発明は、鋳片と鋳型壁面の間に相対速度
差のない、いわゆる同期式連続鋳造プロセスによって鋳
造した製品厚さに近い厚さのオーステナイト系ステンレ
ス鋼薄肉鋳片のδフェライト残留量をインライン圧延に
より低減し、高δフェライト成分のオーステナイト系ス
テンレス鋼においても、δフェライト残留量の少ない薄
肉鋳片の製造方法を提供することを目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明の上記目的は、鋳
型壁面が鋳片と同期して移動する連続鋳造機により薄肉
鋳片を鋳造する際に、鋳片の温度履歴において高温域の
冷却を特に早くすることにより鋳片に残留したδフェラ
イトを微細分散させ、消失させることによって達成され
る。 【0008】すなわち、本発明の要旨とするところは下
記のとおりである。 【0009】鋳型壁が鋳片と同期して移動する連続鋳造
機により下記(1)式によって規定されるδ−Fe量が
6.0%以上の溶湯を薄肉鋳片に鋳造し、次いで該薄肉
鋳片を熱間圧延機により熱間圧延する際に、下記(2)
式によって規定される鋳片の残留δフェライト量Xを
1.8%以下に調整することを特徴とする残留δフェラ
イトの少ないオーステナイト系ステンレス鋼薄肉鋳片の
製造方法。 【0010】 δ−Fe量(%)=3×(Cr重量%+1.5×Si重量%+Mo重量%)− 2.8×(Ni重量%+30×(C重量%+N重量%)+ 0.5Mn重量%)−19.8 …(1)式 X=4.4−0.15×R−0.27×V+1.3×(δ−Fe量%) …(2)式 但し、X:鋳片の残留δフェライト量(%) R:熱間圧延における圧下率(%) V:鋳造温度Tcから熱間圧延機入り側温度Tr間の平均冷却速度( ℃/s) 【0011】 【作用】本発明においては、双ロール方式の連続鋳造機
が好ましく用いられる。鋳型内の凝固冷却速度Vcを速
くすることにより、γをより安定して晶出させることが
可能となり、従って初晶δフェライトの微細分散が可能
となる。凝固冷却速度が300℃/s未満であると、初
晶であるδフェライトが容易に存在して粗大となるた
め、鋳造後の工程においてδフェライトの消失が困難と
なり、また、鋳型内での固相率が低下し、鋳造の安定性
を損ねるおそれがある。さらに、鋳造温度Tcから熱間
圧延機入り側温度Trによって計算されるこの間の平均
冷却速度Vを速くすることで、凝固後のδフェライトか
らγへの変態の発生が容易となり、その結果、鋳片内部
に残留したδフェライトの消失は促進される。また、1
000℃以上の温度域で圧延を行うことにより、再結晶
過程の促進に伴って鋳片に残留したδフェライトは容易
に拡散するため、δフェライト残留量の低減が可能とな
る。 【0012】熱間圧延機入り側温度Trが1000℃未
満ではスケール噛み込み疵が発生しやすくなり、125
0℃を超えると熱延ロールの損傷が大きくなる。また、
鋳造後の熱間圧延の圧下率Rが10%未満では鋳片内部
への歪み蓄積が再結晶過程を促進するためには不十分で
あり、40%を超えるとスケールのビルドアップによる
熱延ロールの摩耗が激しくなり、表面疵が発生しやすく
なる。なお、好ましい圧下率としては25〜35%であ
る。 【0013】図2に、後記(1)式によって計算される
溶湯の成分(δ−Fe量%)が8〜8.5%で、凝固冷
却速度Vc、および熱間圧延機入り側温度Trを110
0℃に固定して熱間圧延率Rを変化させた場合の鋳片の
残留δフェライト量を測定した結果を示す。図中の数字
は、各条件で熱間圧延した鋳片の残留δフェライト量を
示している。図2から明らかなように、前記の凝固冷却
速度Vcが300℃/s以上で、熱間圧延率Rを30%
以上とすることにより、鋳片のδフェライト残留量が約
8%から4%未満へと大幅に減少している。これは、製
品での光沢むら防止および内部残留量を確保するのに十
分であった。さらに、凝固冷却速度Vcおよび圧延率R
と残留δフェライト量の関係は、互いに反比例の関係に
あり、またこの2つの条件を組み合わせることによって
相乗効果が得られる。 【0014】 δ−Fe量(%)=3×(Cr重量%+1.5×Si重量%+Mo重量%)− 2.8×(Ni重量%+30×(C重量%+N重量%)+ 0.5Mn重量%)−19.8 …(1)式 また、溶湯の成分から計算されるδ−Fe量が高けれ
ば、初晶はδフェライトとなるために、凝固時のδフェ
ライト量は多く存在するはずであるが、凝固冷却速度V
cが速ければ速いほど準安定γの発生が容易となるの
で、δフェライトを微細分散させることが可能である。
また、圧下歪みを付加した場合、高温時の硬さが高いδ
フェライトの方が準安定γよりも歪みの蓄積が多いため
に再結晶促進過程において、δフェライトの拡散が助長
されるため、熱間圧延機入り側温度Trが影響するもの
と考えられる。従って、鋳造温度Tcおよび熱間圧延機
入り側温度Trによって計算される平均冷却速度Vがδ
フェライトの拡散に影響する。 【0015】本発明者らは、熱間圧延機入り側温度Tr
および熱間圧延率Rを種々に変化させた結果、熱間圧延
機入り側温度Trおよび熱間圧延率Rを選択することで
鋳片の残留δフェライトを2.0%以下に低減できるこ
とを見出した。本発明者らは、先ず次の工程によって薄
板製品を製造した。すなわち、オーステナイト系ステン
レス鋼を溶製した後、冷却ドラムの表面にディンプルを
配設した双ドラム式連続鋳造機により板厚1.6〜5.
0mmの薄肉鋳片を鋳造した。その際、双ドラム式連続
鋳造機の鋳造温度Tcから熱間圧延機入り側温度Trを
変化させることによって、この間の平均冷却速度Vを変
化させ、さらに熱間圧延率Rを変化させた。また、溶湯
成分を変化させて(1)式による溶湯のδ−Fe量をそ
れぞれ求めた。 【0016】 δ−Fe量(%)=3×(Cr重量%+1.5×Si重量%+Mo重量%)− 2.8×(Ni重量%+30×(C重量%+N重量%)+ 0.5Mn重量%)−19.8 …(1)式 次いで、冷却された鋳片を酸洗処理し、表面のスケール
を十分に除去した後、フェライトメータを用いて残留δ
フェライト量を測定した。製造条件および測定結果を表
1、表2(表1のつづき)に示す。凝固冷却速度Vcの
高いものが鋳片残留δフェライト量が少ないことが判
る。さらに、鋳造温度Tcから熱間圧延機入り側温度T
r間の平均冷却速度V、熱間圧延率Rおよびδ−Fe量
と鋳片から測定された残留δフェライト量の関係を重回
帰分析すると、(2)式の関係が得られた。従って、溶
湯のδ−Fe量を決定し、平均冷却速度Vおよび圧延率
Rの組合せを選択することにより、鋳片の残留δフェラ
イト量を2.0%以下に調整することが可能となる。 【0017】 X=4.4−0.15×R−0.27×V+1.3×(δ−Fe量%) …(2)式 但し、X:鋳片の残留δフェライト量(%) R:熱間圧延における圧下率(%) V:鋳造温度Tcから熱間圧延機入り側温度Tr間の平均冷却速度( ℃/s) 【0018】 【表1】【0019】 【表2】【0020】 【実施例】ドラム径が1200mm、ドラム幅が800
mmでCu製の冷却ドラムを用いた双ドラム式連続鋳造
機によって、1.5〜5mm厚みのオーステナイト系ス
テンレス鋼薄肉鋳片を鋳造した。得られた鋳片の残留δ
フェライト量を測定した結果を表3、表4(表3のつづ
き)に示す。なお、図3には各工程における残留δフェ
ライト量の変化を示す。 【0021】 【表3】【0022】 【表4】【0023】(2)式によって規定される鋳片の残留δ
フェライト量Xが1.8%以下であるNo.1〜9の鋳
片は、鋳片の残留δフェライト量が2.0%以下で、組
織むらに起因する光沢むらも発生せず、製品内部の残留
δフェライト量も0.8%以下に低減できた。これに対
して、(2)式によって規定される鋳片の残留δフェラ
イト量Xが本発明の範囲を外れているNo.10〜15
の鋳片の場合は、鋳片の残留δフェライト量が4.8%
以上で、組織むらに起因する光沢むらが発生し、製品内
部にも残留δフェライトが2.4%以上残留した。 【0024】 【発明の効果】本発明に従い薄肉鋳片を製造すれば、高
δフェライト成分のオーステナイト系ステンレス鋼にお
いても鋳片に残留するδフェライト量の低減が可能とな
り、鋳片組織の均一化が達成され、冷間圧延後の製品に
光沢むらの発生がなく、製品内部のδフェライト量も著
しく低減され、良好な品質のオーステナイト系ステンレ
ス鋼冷延板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】双ロール式連続鋳造装置の一実施例を示す斜視
図である。 【図2】鋳片の残留δフェライト量に及ぼす熱間圧延に
よる圧下率R・凝固冷却速度Vcの効果を示す図であ
る。 【図3】各工程における残留δフェライト量の変化を示
す図である。 【符号の説明】 1 双ドラム式連続鋳造装置 2 冷却ドラム 3 サイド堰 4 湯溜り部 5 薄肉鋳片 6 熱間圧延機
図である。 【図2】鋳片の残留δフェライト量に及ぼす熱間圧延に
よる圧下率R・凝固冷却速度Vcの効果を示す図であ
る。 【図3】各工程における残留δフェライト量の変化を示
す図である。 【符号の説明】 1 双ドラム式連続鋳造装置 2 冷却ドラム 3 サイド堰 4 湯溜り部 5 薄肉鋳片 6 熱間圧延機
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.7 識別記号 FI
B22D 11/20 B22D 11/20 C
11/22 11/22 Z
(56)参考文献 特開 平3−71902(JP,A)
特開 平3−211236(JP,A)
特開 平4−200801(JP,A)
特開 平2−133528(JP,A)
特開 平6−100989(JP,A)
特開 平3−42150(JP,A)
特開 平5−293601(JP,A)
特開 平2−247049(JP,A)
特開 平4−33752(JP,A)
特開 平3−39421(JP,A)
特開 平4−158957(JP,A)
特公 平5−23861(JP,B2)
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
B22D 11/06 330
B21B 1/46
B21B 3/02
B22D 11/00
B22D 11/12
B22D 11/20
B22D 11/22
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 鋳型壁が鋳片と同期して移動する連続鋳
造機により下記(1)式によって規定されるδ−Fe量
が6.0%以上の溶湯を薄肉鋳片に鋳造し、次いで該薄
肉鋳片を熱間圧延機により熱間圧延する際に、下記
(2)式によって規定される鋳片の残留δフェライト量
Xを1.8%以下に調整することを特徴とする残留δフ
ェライトの少ないオーステナイト系ステンレス鋼薄肉鋳
片の製造方法。 δ−Fe量(%)=3×(Cr重量%+1.5×Si重量%+Mo重量%)− 2.8×(Ni重量%+30×(C重量%+N重量%)+ 0.5Mn重量%)−19.8 …(1)式 X=4.4−0.15×R−0.27×V+1.3×(δ−Fe量%) …(2)式 但し、X:鋳片の残留δフェライト量(%) R:熱間圧延における圧下率(%) V:鋳造温度Tcから熱間圧延機入り側温度Tr間の平均冷却速度( ℃/s)
Priority Applications (1)
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JP05628295A JP3417714B2 (ja) | 1995-03-15 | 1995-03-15 | 残留δフェライトの少ないオーステナイト系ステンレス鋼薄肉鋳片の製造方法 |
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- 1995-03-15 JP JP05628295A patent/JP3417714B2/ja not_active Expired - Fee Related
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