JP3409605B2 - 半導体偏波回転素子 - Google Patents

半導体偏波回転素子

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JP3409605B2
JP3409605B2 JP26623196A JP26623196A JP3409605B2 JP 3409605 B2 JP3409605 B2 JP 3409605B2 JP 26623196 A JP26623196 A JP 26623196A JP 26623196 A JP26623196 A JP 26623196A JP 3409605 B2 JP3409605 B2 JP 3409605B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光通信,光交換,
光情報処理等に用いる半導体偏波回転素子に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】光通信,光交換,光情報処理といった光
を利用したシステムの構築を考えると、光ファイバや光
導波路,光スイッチ,光受光器,光増幅器等の光素子が
必要不可欠になる。しかしこれらの素子は、光ファイバ
と結合したり、集積化を行うことで実用的部品にする必
要がある。特に集積化することは、ミクロン精度で必要
とされる光ファイバと半導体素子との光軸合わせを省く
ことが出来るので、堅牢となり信頼性の増加が予想でき
る。
【0003】ところで通常の光ファイバにおいては、光
源からの偏波面を維持する機能は有しておらず、半導体
光スイッチや半導体レーザ型光増幅器といった光機能素
子に入力されるときには、環境の変化に応じて信号光の
偏波状態が変動する可能性がある。
【0004】しかしながら前記のような半導体デバイス
の導波路構造は、一般に導波層または活性層が等方的で
なく、幅が数ミクロンあるのに対して厚みがサブミクロ
ンオーダであることや、導波層のスイッチング特性また
は活性層の増幅特性が偏波状態によって異なる。そのた
め入力信号光の偏波状態によって出力特性が大きく変動
する。
【0005】そこで偏波依存性を解消する方法として、
偏波ダイバーシティの例(H.Heidrich,F.Fidorra,M.Ham
acher,K.Kaiser,K.Li,D.Trommer,and G.Unterbosch:”M
onolithically Integrated Heterodyne Receivers base
d on InP”,20th European Conference on Optical Com
munication(ECOC'94),pp.77-80,1994)が報告されてい
る。ここではTE成分で発振する局発光源の出力にTM
成分を持たせるため偏波回転素子を集積化している。
【0006】偏波回転素子としては、たとえば図10に
示すように、左右非対称な導波路が、その左右を反転さ
せた導波路と特定の周期を持って交互に並べられた構造
のものが知られている。
【0007】偏波回転素子は、InP基板11の主面上
に、バンドギャップ波長が1.1μm帯のInGaAs
P導波層12,InPサイドクラッド層13,InPリ
ッジ層14が順次積層形成された構造となっている。最
上層の前記InPリッジ層14は、その名称でもわかる
ように所定幅を有するリッジ構造(突条構造)となって
いる。
【0008】前記InPリッジ層14の上面は、その中
央線を隔て、左右の面の高さ(幅員における高さ)が非
対称な面、すなわち、高い面1と低い面2となってい
る。前記高い面1と低い面2は、InPリッジ層14の
長手方向に沿って特定の周期で現れるようにもなってい
る。図11では高い面1は左側に現れるとともに低い面
2は右側に現れ、図12では高い面1は右側に現れると
ともに低い面2は左側に現れている。
【0009】一般的にTE偏波成分はx方向に、TM偏
波成分はy方向(x方向から見て90°の方向)に電界
を有しているので通常は直交しており、結合成分を有し
ていない。
【0010】そこで図11および図12に示されるよう
に、前記InGaAsP導波層12上のInPリッジ層
14を左右非対称にする構造を採ることで界分布にも非
対称性が生じ、境界部の接続条件でx方向とy方向の電
界成分が結合を起こすため、TE偏波成分とTM偏波成
分の結合が生じる。この結合、成分がTE偏波成分とT
M偏波成分との間で界分布の移行をもたらし、偏波面に
対する回転成分を生じさせる。
【0011】図11で示す構造とその反転した図12の
構造を1ブロックとして直線偏波光を入射した場合、こ
の1ブロックを通過後は入射状態から角度θだけ回転さ
れた直線偏波光に変換される。そこで図10の様に多段
にブロック(たとえばn個)を並べることでnθという
大きな回転角を得ることが出来る。
【0012】図13は別の偏波回転素子の報告例による
断面構造で、TE偏波成分とTM偏波成分との間の結合
をもたらすために、導波路の一部分をエッチングによっ
て段差を設け、導波路に斜めになった部分を持たせてい
る。それに伴い界分布の一番強い導波路部分で斜め成分
を有するため、TE偏波成分とTM偏波成分の結合効率
を高めることが出来る。
【0013】すなわち、この構造では、導波路に斜めに
なった部分を持たせるために、InP基板11に段差を
設け、このInP基板11上に順次所定の厚さのバンド
ギャップ波長1.1μm帯のInGaAsP導波層1
2,InPサイドクラッド層13,InPリッジ層14
を積層した構造になっている。
【0014】図14は別の偏波回転素子の報告例(J.J,
G.M.van der Tol et.al:A new short and low-loss pas
sive polarization converter on InP,IEEE.Photon.tec
hnol.Lett., vol.7,no.1,pp.32-34(1995) またはibid,R
ealization of a short integrated optic passive pol
arization converter on InP,IEEE.Photon.technol.Let
t., vol.7,no.8,pp.32-34(1995) による断面図である。
【0015】すなわち、この構造では、InP基板11
の上にバンドギャップ波長1.1μm帯のInGaAs
P導波層12,InPサイドクラッド層13,InPリ
ッジ層14を順次所定の厚さに形成するとともに、前記
InPリッジ層14を部分的にエッチングして垂直壁を
有する台形状として偏波の回転を図っている。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】従来の偏波回転素子に
おいて、図10の構造ではTE偏波成分とTM偏波成分
の結合効率が非常に小さいので直線偏波光の回転角度θ
も小さくなり、偏波回転素子の素子長が長くなってしま
う。
【0017】図13の導波路に斜めになった部分を設け
た構造では、導波路の斜めになった部分の角度を制御よ
く形成できないため、製造歩留りを高くすることができ
ないという問題が生じていた。また、界分布の一番強い
導波路部分を加工するので導波路損失の増加が起こる。
【0018】図14に示す偏波回転素子は、その製造に
おいてウエットエッチングを採用していることから、制
御性が非常に悪く理論通りの製造ができない。
【0019】本発明の目的は、低損失で偏波を回転させ
ることができる半導体偏波回転素子を提供することにあ
る。
【0020】本発明の他の目的は、製造歩留りを高くす
ることができる半導体偏波回転素子を提供することにあ
る。
【0021】本発明の前記ならびにその他の目的と新規
な特徴は、本明細書の記述及び添付図面によって明らか
にする。
【0022】
【課題を解決するための手段】本願において開示される
発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下
記のとおりである。
【0023】(1)光の導波方向に垂直な断面が一定の
形状となるリッジ型の半導体からなる直線導波路を半導
体基板上に有する半導体偏波回転素子であって、前記所
定直線導波路部分に対して偏波を回転させるに可能な距
離に、前記直線導波路と同じ層構成からなる直方体形状
偏波回転用側壁がその一面を前記直線導波路の側面に
対面するように前記直線導波路の両側に沿って直線導波
路に対して非対称に複数設けられている。前記直線導波
路の両側の前記偏波回転用側壁は前記直線導波路を挟ん
で交互に配設されている。前記半導体基板上には前記直
線導波路の両側に沿って直線的に延在する直線側壁が設
けられ、該直線側壁と一体形成された前記偏波回転用側
壁は、その一面が前記直線導波路の側面に対向するよう
前記直線側壁の一側縁から前記直線導波路に向かって
突出する櫛型形状となっている。前記偏波回転用側壁の
前記直線導波路に沿う長さLは一定であり、前記偏波回
転用側壁は2Lのピッチで配置されている。
【0024】(2)前記手段(1)の構成において、半
導体偏波回転素子は、半導体基板と、前記半導体基板上
に設けられる導波層と、前記導波層上に設けられるスペ
ーサ層と、前記スペーサ層上全域に設けられるエッチン
グストップ層と、前記エッチングストップ層上に設けら
れ前記直線導波路と偏波回転用側壁または前記直線導波
路と偏波回転用側壁と直線側壁を構成するクラッド層
と、前記クラッド層上に設けられるキャップ層とからな
っている。
【0025】前記(1)の手段によれば、リッジ型の直
線導波路に偏波回転用側壁を近接配置する構造になって
いることから、偏波回転用側壁に対面する直線導波路部
分では、導波路界分布が偏波回転用側壁側の斜め上方に
引き上げられるため、TE偏波とTM偏波との結合効果
を大きくすることができ、偏波を回転させることができ
る。
【0026】したがって、リッジ型の直線導波路の両側
に交互に偏波回転用側壁を近接配置する本発明の半導体
偏波回転素子では、周期的に配置する偏波回転用側壁の
数の選択によって、所望の偏波回転角度を得ることがで
きる。
【0027】また、本発明の半導体偏波回転素子は、光
の導波がリッジ型直線導波路となるため、光損失の増加
を殆ど無視して使用できる。
【0028】また、直線導波路および偏波回転用側壁な
らびに直線側壁は、共に確立されたフォトリソグラフィ
技術とフォトエッチング技術によって高精度にかつ再現
性良く形成できるため製造歩留りの向上が図れる。
【0029】前記(2)の手段によれば、前記手段
(1)の効果に加え、偏波回転用側壁の高さおよび幅を
高精度に形成することができる。
【0030】すなわち、導波層上にスペーサ層を介して
エッチングストップ層を設けるとともに、クラッド層上
にキャップ層を設けることから、エッチングをウエット
エッチングで行うことができる。この結果、前記キャッ
プ層によってエッチング時の偏波回転用側壁の幅の細り
を抑止でき、かつエッチングストップ層によってエッチ
ング深さを一定にすることができ、偏波回転用側壁の断
面寸法を高精度に形成することができる。
【0031】また、ウエットエッチングはドライエッチ
ングに比較してエッチング面が滑らかになるため、残留
するエッチングストップ層の表面も滑らかになり、エッ
チングストップ層の表面での光の散乱に起因する半導体
基板への光の逃げ量も減り、損失の低減を図ることがで
きる。
【0032】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実
施形態を詳細に説明する。
【0033】なお、実施形態を説明するための全図にお
いて、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰
り返しの説明は省略する。
【0034】(実施形態1)図1〜図3は本発明の実施
形態1の半導体偏波回転素子に係わる図であって、図1
は半導体偏波回転素子の平面図、図2は図1のA−A線
に沿う一部の拡大断面図、図3は半導体偏波回転素子の
製造状態を示す一部の拡大断面図である。
【0035】本実施形態1の半導体偏波回転素子は、図
1に示すように、細長矩形の半導体基板30の上面に中
央線に沿ってリッジ型の直線導波路40を有するととも
に、リッジ型の偏波回転用側壁41を前記直線導波路4
0の両側に沿って直線導波路40に対して非対称に複数
設ける構造となっている。前記偏波回転用側壁41は矩
形状となり、一辺(一面)を前記直線導波路40の側面
に対面させる構成になっている。
【0036】また、前記偏波回転用側壁41は、半導体
基板30の両側縁に沿って設けられるリッジ型の直線側
壁42に連結されて支持された構造となっている。
【0037】後述するが、前記偏波回転用側壁41と直
線側壁42は、エッチング技術によって形成されて一体
構造となっている。したがって、前記偏波回転用側壁4
1は直線側壁42の一側縁から前記直線導波路40に向
かって一定間隔に突出する形状になり、あたかも櫛のよ
うな形状になっている。そして、その先端面が前記直線
導波路40の側面に対向する。
【0038】前記偏波回転用側壁41は、図2に示すよ
うに、前記直線導波路40と同じ層構成からなり、所定
の高さと、長さLを有している。偏波回転用側壁41の
高さは直線導波路40と同じで、たとえば、1.4μm
程度となっている。
【0039】前記偏波回転用側壁41の直線導波路40
の長さ方向に沿う長さLは、たとえば500μmとな
り、隣り合う偏波回転用側壁41は2Lのピッチで配列
されている。直線導波路40を挟んで配設される偏波回
転用側壁41は、配列ピッチがLだけずれるようになっ
ている。すなわち、前記偏波回転用側壁41は前記直線
導波路40に対面する面(先端面)が前記直線導波路4
0を挟んで相互に殆ど対向することなく交互に配設され
ることになる。
【0040】前記偏波回転用側壁41は、前記所定直線
導波路部分において偏波を回転させるに可能な距離aに
近接配置されている。前記距離aは、たとえば、1.5
μmになっている。偏波を回転させるためには、距離a
は短い程良いが、エッチングによって直線導波路40と
偏波回転用側壁41を形成する際の両者間に形成される
溝(トレンチ)間隔の形成の再現性等によって自ずから
決定される。
【0041】また、偏波の回転は、偏波回転用側壁41
が直線導波路40から5μm程度も離れると起きなくな
る。したがって、本実施形態1では、直線導波路40と
直線側壁42との間隔は5μmが選択されている。
【0042】前記偏波回転用側壁41の直線導波路40
に沿う長さLは、最も効率的に偏波回転が行われる数値
が選択される。最も効果のある周期は、二つの導波モー
ド(TE偏波,TM偏波)の伝搬定数の差に起因する位
相差(Δψ1-2)が180°になる距離Zが偏波回転用
側壁の長さである時、最も効率的な偏波回転が実現され
る。
【0043】現在においては、二つの導波モードの伝搬
定数の違いは定量的には分かっていない。
【0044】しかし、本発明者等は実験分析結果とし
て、たとえば、図5に示すように、位相差(Δψ1-2
と伝搬距離Zとの相関を示すグラフを得ている。そこ
で、本実施形態1では、距離Lを、たとえば、500μ
mとする。
【0045】偏波回転用側壁41の周期を2L(100
0μm)としているが、周期が2Lであることに限定さ
れない。
【0046】また、本発明者等による実験分析結果によ
って得た、偏波回転用側壁の長さ(μm)と偏波回転角
(°)との関係を図6に示す。このグラフからもLを5
00μmとすることが良いことが分かる。
【0047】本実施形態1の半導体偏波回転素子は、直
線導波路40の両側にそれぞれ1個の偏波回転用側壁4
1を配置したもの、すなわち2Lに亘る部分を1ブロッ
ク(基本ブロック)とすると、後述するように16ブロ
ックで偏波の回転が90°となる。
【0048】本実施形態1の半導体偏波回転素子は、図
2に示すように、InP基板30の上面に、厚さが0.
3μmとなるバンドギャップ波長1.3μm帯のInG
aAsP導波層31,厚さが1.5μmとなるInPク
ラッド層32が順次積層形成された構造となっている。
【0049】また、前記InPクラッド層32は、所定
の形状にエッチング処理されて、前記のように、高さ
1.4μmで幅が2μmとなる直線導波路40および偏
波回転用側壁41ならびに直線側壁42が形成されてい
る。
【0050】このような半導体偏波回転素子は以下の方
法によって製造される。
【0051】図3に示すように、まず、表面の結晶面が
(001)になるInP基板30を用意した後、前記I
nP基板30上に厚さが0.3μmとなるバンドギャッ
プ波長1.3μm帯のInGaAsP導波層31、厚さ
が1.5μmとなるInPクラッド層32をMOCVD
法によって形成する。
【0052】つぎに、プラズマCVD法によって前記I
nPクラッド層32の全面にSiO2膜35を蒸着す
る。
【0053】つぎに、前記SiO2膜35上にフォトレ
ジスト膜36を形成した後、常用のフォトリソグラフィ
技術によって前記フォトレジスト膜36をパターニング
するとともに、フォトエッチング技術によって前記パタ
ーニングされたフォトレジスト膜36をエッチング用マ
スクとして前記SiO2 膜35をパターニングする。前
記InPクラッド層32上に残留するSiO2 膜35
は、図1の直線導波路40,偏波回転用側壁41,直線
側壁42の部分である。
【0054】つぎに、CH4/H2を用いドライエッチン
グによって前記InPクラッド層32をエッチングす
る。前記InPクラッド層32は1.5μmの厚さであ
ることから、0.1μm程度の厚さが残留するようにト
レンチエッチングする。これは、エッチングによってI
nGaAsP導波層31をエッチングしないための製造
上の安全(余裕)のためである。
【0055】本実施形態1の素子の特性について説明す
る。
【0056】本実施形態1の半導体偏波回転素子は、直
線導波路40の両側に非対称に偏波回転用側壁41を近
接配設した構造になっている。図4に示すように、直線
導波路40に偏波回転用側壁41を近接配設する結果、
導波路の界分布45が偏波回転用側壁41の方向、すな
わち、斜め上方向に引き上げられ偏波の回転作用が起き
る。
【0057】図7は、本実施形態1の半導体偏波回転素
子における基本ブロック数nと、光の各偏波の相対的光
出力との相関を示したグラフである。入射光はTE偏光
である。nの増加に伴い、相対的にTE偏光が増加して
くる。n=16のときにTM偏光が最大になる。これに
より、基本ブロック1個あたり約90/16度偏波が回
転していることがわかる。
【0058】図8は、本実施形態1の半導体偏波回転素
子における基本ブロック数と素子の挿入損失との相関を
示したグラフである。基本ブロック数n=0は、従来の
直線リッジ導波路と等価である。このときの損失は6d
Bであった。損失の内訳は5dBがファイバとの結合損
失、残りの1dBは導波路内の伝搬損失である。基本ブ
ロックの数が増加するにつれて損失が若干増加する傾向
が見られるが、TE偏光からTM偏光への完全な偏波回
転が得られるn=16においても損失の増加量は0.6
dBほどであり、充分低い値となっている。
【0059】したがって、本実施形態1では基本ブロッ
クを16とすることによって90度の偏波回転を実現す
ることができる。
【0060】(実施形態2)図9は本発明の実施形態2
である半導体偏波回転素子の一部を示す拡大断面図であ
る。
【0061】本実施形態2の半導体偏波回転素子は、図
9に示すように、InP基板30の上面に、厚さが0.
3μmとなるバンドギャップ波長1.3μm帯のInG
aAsP導波層31,InPスペーサ層46,厚さが
0.01μmとなるバンドギャップ波長1.3μm帯の
InGaAsPエッチングストップ層47,厚さが1.
5μmとなるInPクラッド層32,InGaAsキャ
ップ層49が順次積層形成された構造となっている。
【0062】また、前記InPクラッド層32およびI
nGaAsキャップ層49は、前記実施形態1の場合と
同様にパターニングされて、直線導波路40および偏波
回転用側壁41ならびに直線側壁42が形成されてい
る。
【0063】なお、リッジ型直線導波路40の延在方向
は(011)方向である。
【0064】このような半導体偏波回転素子は以下の方
法によって製造される。
【0065】まず、表面の結晶面が(001)になるI
nP基板30を用意した後、前記InP基板30上に厚
さが0.3μmとなるバンドギャップ波長1.3μm帯
のInGaAsP導波層31、InPスペーサ層46、
厚さが0.01μmとなるバンドギャップ波長1.3μ
m帯のInGaAsPエッチングストップ層47、厚さ
が1.5μmとなるInPクラッド層32、InGaA
sキャップ層49をMOCVD法によって形成する。
【0066】つぎに、プラズマCVD法によって前記I
nPクラッド層32の全面にSiO2膜を蒸着する。
【0067】つぎに、前記実施形態1の場合と同様に、
前記SiO2膜上にフォトレジスト膜を形成した後、常
用のフォトリソグラフィ技術によって前記フォトレジス
ト膜をパターニングするとともに、フォトエッチング技
術によって前記パターニングされたフォトレジスト膜を
エッチング用マスクとして前記SiO2膜をパターニン
グする。前記SiO2膜はC26/SF6によってエッチ
ングする。
【0068】つぎに、Cl2ガスを用いたRIBEによ
って最上層のInGaAsキャップ層49をエッチング
し、続いてInPクラッド層32(1.5μm厚)を塩
酸とりん酸の混合液を用いたウエットエッチングによっ
て1.5μmの深さエッチングを行い、前記実施形態1
の場合と同様にそれぞれリッジ型の直線導波路40,偏
波回転用側壁41,直線側壁42を形成する。
【0069】本実施形態2の半導体偏波回転素子は、前
記実施形態1の半導体偏波回転素子と同様の効果を有す
るとともに、以下の効果を有する。
【0070】(1)InGaAsP導波層31上にIn
Pスペーサ層46を介してInGaAsPエッチングス
トップ層47を設けるとともに、InPクラッド層32
上にInGaAsキャップ層49を設けることから、I
nGaAsキャップ層49およびInPクラッド層32
のエッチングをウエットエッチングで行うことができ
る。この結果、前記InGaAsキャップ層49によっ
てエッチング時の偏波回転用側壁の幅の細りを抑止で
き、かつInGaAsPエッチングストップ層47によ
ってエッチング深さを一定にすることができ、偏波回転
用側壁の断面寸法を高精度に形成することができる。
【0071】(2)ウエットエッチングはドライエッチ
ングに比較してエッチング面が滑らかになるため、残留
するInGaAsPエッチングストップ層47の表面も
滑らかになり、エッチングストップ層47の表面での光
の散乱に起因する半導体基板への光の逃げ量も減り、損
失の低減を図ることができる。
【0072】以上本発明者によってなされた発明を実施
形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形
態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範
囲で種々変更可能であることはいうまでもない、たとえ
ば、前記実施形態においては、InP基板上のInGa
AsP材料系について記述したが、他の材料系を用いる
ことによっても同様の効果を得ることができる。
【0073】また、リッジ形状に関して、実施形態1,
実施形態2のように、導波層(コア層)がリッジの下方
に存在するが、リッジ形状形成の際、コア層の途中まで
エッチングした構造でも、本発明の趣旨を変えるもので
はない。
【0074】また、偏波を回転させるためには、偏波回
転用側壁が配列されていれば良い。すなわち、前記偏波
回転用側壁を保護する直線側壁は設けなくても良い。
【0075】
【発明の効果】本願において開示される発明のうち代表
的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下
記のとおりである。
【0076】(1)本発明の半導体偏波回転素子は、近
接した偏波回転用側壁の存在により、導波路界分布を斜
め上方に引き上げることができるため、TE偏波とTM
偏波との結合効果を大きくすることができる。
【0077】(2)本発明の半導体偏波回転素子は、そ
の製造において、エッチングパターンを変更するだけ
で、従来のリッジ型直線導波路を有する半導体偏波回転
素子の製造技術で製造できるため、製造歩留りの向上を
図ることができる。
【0078】(3)エッチングストップ層やキャップ層
を有する半導体偏波回転素子は、その製造においてエッ
チングストップ層の作用によってリッジの高さを制御で
きるとともに、キャップ層によって直線導波路の幅をエ
ッチング時の細りを防止できるため、高精度寸法のリッ
ジ型直線導波路や偏波回転用側壁を形成できる。本発明
に係わる半導体偏波回転素子は、リッジ形状(特に深
さ)に大きく依存するため、この構造および製法は重要
である。
【0079】(4)本発明の半導体偏波回転素子は、光
の導波がリッジ型直線導波路となるため、損失の増加も
殆ど無視してよい。したがって、本発明によれば、低損
失で偏波を回転することができるとともに、歩留りの高
い半導体偏波回転素子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1である半導体偏波回転素子
の平面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う一部の拡大断面図であ
る。
【図3】本実施形態1の半導体偏波回転素子の製造状態
を示す一部の拡大断面図である。
【図4】本実施形態1の半導体偏波回転素子において、
側壁によって光の界分布が斜め上方に引き上げられた状
態を示す模式図である。
【図5】位相差と伝搬距離との相関を示すグラフであ
る。
【図6】偏波回転角と側壁の長さとの相関を示すグラフ
である。
【図7】本発明の実施形態1の半導体偏波回転素子にお
ける相対光出力と基本ブロック数との相関を示すグラフ
である。
【図8】本発明の実施形態1の半導体偏波回転素子にお
ける光損失と基本ブロック数との相関を示すグラフであ
る。
【図9】本発明の実施形態2である半導体偏波回転素子
の一部を示す拡大断面図である。
【図10】従来の半導体偏波回転素子を示す斜視図であ
る。
【図11】図10のA−A線に沿う模式的断面図であ
る。
【図12】図10のB−B線に沿う模式的断面図であ
る。
【図13】従来の他の半導体偏波回転素子の概略を示す
模式的断面図である。
【図14】従来の他の半導体偏波回転素子の概略を示す
模式的断面図である。
【符号の説明】
1…高い面、2…低い面、11…InP基板、12…I
nGaAsP導波層、13…InPサイドクラッド層、
14…InPリッジ層、30…InP基板、31…In
GaAsP導波層、32…InPクラッド層、35…S
iO2膜、36…フォトレジスト膜、40…直線導波
路、41…偏波回転用側壁、42…直線側壁、45…界
分布、46…InPスペーサ層、47…InGaAsP
エッチングストップ層、49…InGaAsキャップ
層。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−82908(JP,A) 特開 平5−341231(JP,A) 特開 昭63−147114(JP,A) 特開 平4−241304(JP,A) 特開 平7−221387(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G02B 6/126

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 光の導波方向に垂直な断面が一定の形状
    となるリッジ型の半導体からなる直線導波路を半導体基
    板上に有する半導体偏波回転素子であって、前記所定直
    線導波路部分に対して偏波を回転させるに可能な距離
    、前記直線導波路と同じ層構成からなる直方体形状の
    偏波回転用側壁がその一面を前記直線導波路の側面に対
    面するように前記直線導波路の両側に沿って直線導波路
    に対して非対称に複数設けられていることを特徴とする
    半導体偏波回転素子。
  2. 【請求項2】 前記直線導波路の両側の前記偏波回転用
    側壁は前記直線導波路を挟んで交互に配設されているこ
    とを特徴とする請求項1に記載の半導体偏波回転素子。
  3. 【請求項3】 前記半導体基板上には前記直線導波路の
    両側に沿って直線的に延在する直線側壁が設けられ、該直線側壁と一体形成された 前記偏波回転用側壁は、そ
    の一面が前記直線導波路の側面に対向するように前記直
    線側壁の一側縁から前記直線導波路に向かって突出する
    櫛型形状となっていることを特徴とする請求項1または
    請求項2に記載の半導体偏波回転素子。
  4. 【請求項4】 前記偏波回転用側壁の前記直線導波路に
    沿う長さLは一定であり、前記偏波回転用側壁は2Lの
    ピッチで配置されていることを特徴とする請求項1乃至
    請求項3のいずれか1項に記載の半導体偏波回転素子。
  5. 【請求項5】 半導体基板と、前記半導体基板上に設け
    られる導波層と、前記導波層上に設けられるスペーサ層
    と、前記スペーサ層上全域に設けられるエッチングスト
    ップ層と、前記エッチングストップ層上に設けられ前記
    直線導波路と偏波回転用側壁または前記直線導波路と偏
    波回転用側壁と直線側壁を構成するクラッド層と、前記
    クラッド層上に設けられるキャップ層とからなることを
    特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載
    の半導体偏波回転素子。
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