JP3405773B2 - 微小電界放出陰極装置およびその製造方法 - Google Patents

微小電界放出陰極装置およびその製造方法

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JP3405773B2
JP3405773B2 JP22619293A JP22619293A JP3405773B2 JP 3405773 B2 JP3405773 B2 JP 3405773B2 JP 22619293 A JP22619293 A JP 22619293A JP 22619293 A JP22619293 A JP 22619293A JP 3405773 B2 JP3405773 B2 JP 3405773B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,微小電界放出陰極装置
およびその製造方法に関する。
【0002】近年,半導体デバイス製造技術を用いて微
小真空管を集積化して,真空ICを作製する機運が高ま
ってきた。
【0003】電子の速度は,半導体中では飽和速度に制
限されるが,真空中では光速である。したがって,真空
ICは,高速デバイスへの可能性がある。また,電荷輸
送媒体としての真空は,放射線損傷,絶縁耐圧などの点
で半導体より優れているので,この点からも真空ICの
実用化が望まれる。
【0004】真空ICを構成する微小真空管の微小電界
放出陰極は,半導体の微細加工技術を用いて作製され
る。微小電界放出陰極は,サイズがミクロンオーダーな
ので,高密度の集積化が可能である。
【0005】また,微小電界放出陰極は,電子源として
の性能を考えた場合,熱陰極に比べて高効率,高輝度な
どの利点を有する。
【0006】さらに,微小電界放出陰極から放出された
電子は真空中を通過するので,固体素子より高速で移動
できる。
【0007】これらの特徴をいかして,微小電界放出陰
極は,高速演算素子,薄型の高輝度ディスプレイ装置な
どへの応用が期待されている。
【0008】
【従来の技術】微小電界放出陰極の構造例を説明する。
【0009】図14は,縦型微小電界放出陰極の例を示
す図である。
【0010】図中,51は基板,52はカソード電極,
53は絶縁層,54はエミッタティップ,55はゲート
電極である。
【0011】図に示すように,縦型微小電界放出陰極
は,円錐またはウエッジ状のエミッタティップ54と,
電子引き出し用のゲート電極55とから構成されてい
る。
【0012】エミッタティップ54とゲート電極55と
の間に電圧を印加すると,エミッタティップ54の先端
に大きな電界がかかり,電界放出が起きる。その結果,
エミッタティップ54の先端から電子が放出される。
【0013】図15は,平面型微小電界放出陰極の例を
示す図である。
【0014】図中,61は基板,62はカソード電極,
63はエミッタティップ,64はゲート電極である。
【0015】図に示すように,平面型微小電界放出陰極
は,ウエッジ状のエミッタティップ63および電子引き
出し用のゲート電極64が平面内に配置された構造をし
ている。
【0016】エミッタティップ63とゲート電極64と
の間に電圧を印加すると,エミッタティップ63の先端
に大きな電界がかかり,電界放出が起きる。その結果,
エミッタティップ63の先端から電子が放出される。
【0017】次に,図16を用いて微小電界放出陰極の
具体例を説明する。同図は,特開昭60−180040
号公報で提案されたものであり,エミッタティップ先端
にpn接合を形成した構造の微小電界放出陰極である。
【0018】図16において,71はシリコン基板,7
2はエミッタティップ,73はp+層,74はp層,7
5はn+ 領域,76はp+ 領域,77は絶縁膜,78は
ゲート電極である。
【0019】本例の微小電界放出陰極は,図16に示す
ように,エミッタティップ72の先端部の表面に形成さ
れたn+ 領域75と,エミッタティップ72の先端部の
内部に形成されたp+ 領域76とでpn接合が形成され
ている。
【0020】図17は,エミッタティップ先端部のエネ
ルギーバンド図であり,図16に示す微小電界放出陰極
に電圧を印加して電子放出を行っているときのエミッタ
ティップ先端部のエネルギーバンドを示している。
【0021】図16に示す微小電界放出陰極では,エミ
ッタティップ72の先端部の表面に形成されたn+ 領域
75と,エミッタティップ72の先端部の内部に形成さ
れたp+ 領域75とで形成されるpn接合に充分な逆バ
イアス電圧を印加すると,図17に示すように,アバラ
ンシェ(雪崩)増倍が起こり,エミッタティップ72の
表面に形成されたn+ 領域75中のキャリア(電子)濃
度が高まる。
【0022】また,エミッタティップ72の先端は,印
加される強電界に起因するショットキー効果により仕事
関数が低減する。
【0023】以上の結果,図16に示す微小電界放出陰
極では,平らなウェハ表面に作製されたアバランシェ・
ダイオード構造の微小電界放出陰極(例えば,J.Appl.P
hys.,51(1980)3780)などに比べて,効率良く電子放出が
行われる。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】一般に,微小電界放出
陰極において,駆動回路の消費電力を低減させるためな
どの点から,電子放出特性を低電圧化させることは重要
な問題である。
【0025】図16に示す従来の微小電界放出陰極で
は,アバランシェ増倍を用いているので,電子は,シリ
コン原子と衝突して電子と正孔とを発生させているた
め,絶えずエネルギーは緩和している(つまり,格子に
エネルギーを奪われている)。その結果,エミッタティ
ップからの電子放出効率は,あまり高くならない。
【0026】したがって,従来の微小電界放出陰極に
は,電子放出特性を低電圧化させることができない,と
いう問題があった。
【0027】本発明は,上記の問題点を解決して,電子
放出効率を高めることにより,電子放出特性の低電圧化
を実現することのできる,微小電界放出陰極装置および
その製造方法を提供することを目的とする。
【0028】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに,本発明に係る微小電界放出陰極装置およびその製
造方法は,次のように構成される。 (1) カソード電極と,該カソード電極に接続され電
子放出のための突状の先端部を有するエミッタティップ
と,前記カソード電極と電気的に絶縁され前記エミッタ
ティップ先端の近傍に設けられたゲート電極とを少なく
とも備え,前記カソード電極およびゲート電極に電圧を
印加することで,前記エミッタティップの先端部より電
子を放出する微小電界放出陰極装置において,前記エミ
ッタティップが,該エミッタティップの内側に形成され
たホットエレクトロン供給層と,前記エミッタティップ
の外側に形成されたホットエレクトロン通過層と,前記
ホットエレクトロン供給層と前記ホットエレクトロン通
過層との間に設けられた絶縁層とを有し,前記ホットエ
レクトロン供給層と前記ホットエレクトロン通過層との
間に設け られた絶縁層が,前記エミッタティップの先端
部において,前記エミッタティップの他の部分よりも膜
厚が薄く形成されており,前記ホットエレクトロン供給
層および前記ホットエレクトロン通過層に,それぞれ独
立に電圧を印加する手段が設けられているように構成す
る。 (2) カソード電極と,該カソード電極に接続され電
子放出のための突状の先端部を有するエミッタティップ
と,前記カソード電極と電気的に絶縁され前記エミッタ
ティップ先端の近傍に設けられたゲート電極とを少なく
とも備え,前記カソード電極およびゲート電極に電圧を
印加することで,前記エミッタティップの先端部より電
子を放出する微小電界放出陰極装置において,前記エミ
ッタティップが,該エミッタティップの内側に形成され
たホットエレクトロン供給層と,前記エミッタティップ
の外側に形成されたホットエレクトロン通過層と,前記
ホットエレクトロン供給層と前記ホットエレクトロン通
過層との間に設けられた絶縁層とを有し,前記ホットエ
レクトロン通過層が,As,Sb,Biのいずれかから
成るものであり,前記ホットエレクトロン供給層および
前記ホットエレクトロン通過層に,それぞれ独立に電圧
を印加する手段が設けられているように構成する。 () 前項1または2において,前記ホットエレクト
ロン供給層と前記ホットエレクトロン通過層との間に設
けられた絶縁層が,陽極酸化により形成されているよう
に構成する。 (項(1)乃至(3)のうちの1項において,
前記ホットエレクトロン供給層と前記ホットエレクトロ
ン通過層との間に設けられた絶縁層のうち,エミッタテ
ィップ先端部の絶縁層の膜厚と,前記ホットエレクトロ
ン通過層の膜厚との合計膜厚が,前記ホットエレクトロ
ン通過層の静電遮蔽距離と略一致するか,あるいはそれ
以下に形成されているように構成する。 (カソード電極と,該カソード電極に接続され電
子放出のための突状の先端部を有するエミッタティップ
と、前記カソード電極と電気的に絶縁され前記エミッタ
ティップ先端の近傍に設けられたゲート電極とを少なく
とも備え,前記カソード電極およびゲート電極に電圧を
印加することで,前記エミッタティップの先端部より電
子を放出する微小電界放出陰極装置の製造方法におい
て,基板上に,ホットエレクトロン供給層用電極膜を形
成する工程と,該ホットエレクトロン供給層用電極膜上
に,第1の絶縁層を形成する工程と,該第1の絶縁層上
に,ホットエレクトロン通過層用電極膜,第2の絶縁
層,およびゲート電極膜を順次形成する工程と,前記ゲ
ート電極膜,第2の絶縁層,ホットエレクトロン通過層
用電極膜,および第1の絶縁層を貫通する孔部を形成し
た後,該孔部底面の前記ホットエレクトロン供給層用電
極膜上に,突状のホットエレクトロン供給層を形成する
工程と,該ホットエレクトロン供給層の表面に第3の絶
縁層を形成する工程と,該第3の絶縁層の表面に,ホッ
トエレクトロン通過層を形成する工程とを含むように構
成する。
【0029】() 前項(5)において,前記第3の
絶縁層を形成する工程が,前記ホットエレクトロン供給
層の先端を酸化防止層で被覆する工程と,前記ホットエ
レクトロン供給層の表面を酸化して第1の酸化層を形成
する工程と,前記ホットエレクトロン供給層の先端を酸
化防止層を除去した後,再酸化を行って,前記ホットエ
レクトロン供給層の先端に,前記第1の酸化層よりも薄
い第2の酸化層を形成する工程とを含むように構成す
る。 (7) 前項(5)または(6)において,前記ホット
エレクトロン供給層および前記ホットエレクトロン供給
層用電極膜の両方または一方を陽極酸化が可能な物質で
形成し,第1の絶縁層および第3の絶縁層の両方または
一方を陽極酸化により形成するように構成する。 (8) カソード電極と,該カソード電極に接続され電
子放出のための突状の先端部を有するエミッタティップ
と,前記カソード電極と電気的に絶縁され前記エミッタ
ティップ先端の近傍に設けられたゲート電極とを少なく
とも備え,前記カソード電極およびゲート電極に電圧を
印加することで,前記エミッタティップの先端部より電
子を放出する微小電界放出陰極装置において,前記エミ
ッタティップ先端の表面に,絶縁膜を介して半金属から
なる島状の領域が形成されているように構成する。 (9) カソード電極と,該カソード電極に接続され電
子放出のための突状の先端部を有するエミッタティップ
と,前記カソード電極と電気的に絶縁され前記エミッタ
ティップ先端の近傍に設けられたゲート電極とを少なく
とも備え,前記カソード電極およびゲート電極に電圧を
印加することで,前記エミッタティップの先端部より電
子を放出する微小電界放出陰極装置において,前記エミ
ッタティップ先端の表面に,絶縁膜を介さず直接,ドー
パントがドープされた半金属からなる島状の領域が形成
されているように構成する。
【0030】図1は,本発明の基本構成を示す図であ
る。
【0031】図中,1はエミッタティップ先端部,2は
絶縁層,3はホットエレクトロン供給層,4はホットエ
レクトロン通過層,5はゲート電極である。
【0032】
【作用】本発明に係る微小電界放出陰極装置では,エミ
ッタティップ先端部1をMIM( Metal Insulator Met
al )構造にしている。すなわち,エミッタティップ先端
部1は,薄い絶縁層2を間に挟み,それぞれ独立に電圧
印加可能なホットエレクトロン供給層3およびホットエ
レクトロン通過層4が配置された構造をしている。
【0033】ホットエレクトロン供給層3とホットエレ
クトロン通過層4との間に電圧を印加すると,電子がホ
ットエレクトロン供給層3から薄い絶縁層2をトンネリ
ングしてホットエレクトロンとなり,このホットエレク
トロンは,ホットエレクトロン通過層4を通過して真空
中に放出される。
【0034】このとき,ホットエレクトロン通過層4と
ゲート電極5との間にも電圧を印加すると,エミッタテ
ィップ先端部1表面の仕事関数をショットキー効果によ
り低減することができるので,電子の放出効率が高ま
る。
【0035】本発明に係る微小電界放出陰極装置では,
ホットエレクトロン通過層4を金属または半金属で形成
している。金属中または半金属中における自由電子の平
均自由行程は,低濃度にドープされた半導体に比べて長
く,また散乱されにくいので,ホットエレクトロン供給
層3中に発生されたホットエレクトロンを有効に利用す
ることができる。
【0036】特に,半金属は,例えばBiの薄膜中にお
ける自由電子の平均自由行程が1.5μmと報告されて
いるように,散乱されにくく,理想的である。
【0037】
【実施例】図2は,本発明の一実施例を示す図である。
【0038】図中,10はホットエレクトロン供給層,
11はホットエレクトロン供給層用電極,12は絶縁層
A,13はホットエレクトロン通過層用電極,14は絶
縁層B,15はゲート電極,16はエミッタティップ,
17はホットエレクトロン通過層である。
【0039】以下,図2を用いて,本発明の一実施例を
具体的に説明する。
【0040】図2に示すように,本実施例に係る微小電
界放出陰極のエミッタティップ16は,MIM構造にな
っている。すなわち,ホットエレクトロン供給層10−
絶縁層A12−ホットエレクトロン通過層17でMIM
構造を形成している。
【0041】また,ホットエレクトロン供給層10およ
びホットエレクトロン通過層17は,ホットエレクトロ
ン供給層用電極11およびホットエレクトロン通過層用
電極13により,それぞれ独立して電圧を印加すること
ができるようになっている。
【0042】さらに,MIM構造を形成する絶縁層A1
2は,エミッタティップ16先端部においてその膜厚が
薄く,エミッタティップ16の側面ではその膜厚が厚く
なるように形成されている。その結果,エミッタティッ
プ16側面のMIM構造に電子が流れてエミッタティッ
プ16先端部のMIM構造に電圧が印加されなくなるの
を防止することができる。
【0043】エミッタティップ16の先端部の周りをゲ
ート電極15が囲んでいる。ゲート電極15に,ホット
エレクトロン通過層17に印加する正の電圧よりも高い
正の電圧を印加すると,ホットエレクトロン通過層17
の表面に強電界が発生するので,ホットエレクトロンを
効率良く真空中に放出することが可能になる。
【0044】また,ホットエレクトロン供給層用電極1
1をグラウンド(接地)にとれば,ホットエレクトロン
通過層用電極13に印加する電圧,およびゲート電極1
5に印加する電圧を制御することにより,ホットエレク
トロン放出電流を制御することが可能になる。ホットエ
レクトロン通過層用電極13に印加する電圧は10V程
度,ゲート電極15に印加する電圧は数10〜100V
程度である。
【0045】さらに,ゲート電極15の上部にアノード
電極を配置することにより,4極管として利用すること
が可能になる。
【0046】ホットエレクトロン通過層17を形成する
材料としては,As,Sb,Biなどの半金属が適して
いる。ホットエレクトロン通過層17を半金属で形成す
ると,ホットエレクトロン通過層17を通過するホット
エレクトロンの高エネルギーが緩和されるのを防止する
ことが可能になるので,電子放出の効率を高めることが
できる。
【0047】また,ホットエレクトロン通過層17を形
成する材料として,上記した半金属のほかに,使用状況
や目的に応じて,Auのように化学的に不活性の物質
(イオン化傾向の小さい金属)や,LaB6 のように仕
事関数の小さい物質を用いても,上記と同様の効果を得
ることができる。
【0048】また,本発明に係る微小電界放出陰極装置
は,エミッタティップ16が破壊してMIM構造がショ
ートしても,薄いホットエレクトロン通過層17が蒸発
するか,または,ホットエレクトロン通過層17がホッ
トエレクトロン通過層用電極13との界面で断線するだ
けである。従って,本発明に係る微小電界放出陰極装置
を多数個組み込んで,ディスプレイ装置などを作製した
場合でも,1個の微小電界放出陰極装置が破壊しても,
隣接する他の微小電界放出陰極装置に影響を与えないの
で,冗長性に優れている。
【0049】次に,図3〜図10を用いて,本発明に係
る微小電界放出陰極装置の製造方法を工程順に説明す
る。
【0050】[工程1,図3] ガラスなどの絶縁性基板21上に,例えばTaを500
0Åの膜厚に成膜して,ホットエレクトロン供給層用電
極膜22を形成する。
【0051】[工程2,図4] ホットエレクトロン供給層用電極膜22の表面を酸化す
ることにより,あるいは,ホットエレクトロン供給層用
電極膜22上に既存の成膜技術を用いて絶縁膜を成膜す
ることにより,絶縁層A23を形成する。
【0052】工程1(図3)において,ホットエレクト
ロン供給層用電極膜22をTaやNbなど緻密な陽極酸
化膜が形成可能な材料で形成した場合,絶縁層A23を
陽極酸化により形成することができるので,絶縁層A2
3としてピンホールのない理想的な酸化膜の形成が可能
である。
【0053】また,絶縁層A23を絶縁膜を成膜して形
成する場合でも,プラズマCVD法によりSiN膜を成
膜することにより,ピンホールの少ない絶縁膜を形成す
ることができる。
【0054】[工程3,図5] 絶縁層A23上に,ホットエレクトロン通過層用電極膜
24,絶縁層B25,およびゲート電極膜26を順次成
膜する。
【0055】ホットエレクトロン通過層用電極膜24に
は例えばTaを用い,絶縁層B25には例えばSiO2
を用い,ゲート電極膜26には例えばTaを用いる。
【0056】[工程4,図6] ゲート電極膜26,絶縁層B25,ホットエレクトロン
通過層用電極膜24,および絶縁層A23を貫通する円
形の孔を形成した後,例えばTaから成るエミッタティ
ップ27を作製する。
【0057】エミッタティップ27の作製には,既存技
術(例えば,C.A.Spint,J.Appl.,39(1968)p.3504に記載
されている技術)を用いる。具体的には,次の手順によ
る。
【0058】 ドライエッチングにより,ゲート電極
膜26,絶縁層B25,ホットエレクトロン通過層用電
極膜24,および絶縁層A23を貫通する円形の孔部を
形成する。
【0059】 孔部の内部を除くゲート電極膜26の
表面にAl2 3 膜を形成する。
【0060】 Taを,孔部の内部にも届くように,
全面に堆積する。
【0061】 リン酸によりAl2 3 膜上のTaを
リフトオフする。
【0062】以上の手順を経ることにより,図6に示す
エミッタティップ27が形成される。
【0063】エミッタティップ27を形成する材料とし
ては,後の工程において酸化するので,上記したTaの
ほかNbなどの緻密な陽極酸化膜が形成可能な材料が望
ましい。
【0064】[工程5,図7] エミッタティップ27の先端から例えば0.1μm以内
の領域をエミッタティップ先端保護膜28で被覆する。
【0065】エミッタティップ先端保護膜28の形成
は,例えば,基板を回転させながら,斜め方向からSi
2 を蒸着することにより行う。
【0066】[工程6,図8] エミッタティップ27のエミッタティップ先端保護膜2
8で被覆されていない表面を酸化して,酸化層C29を
形成する。
【0067】[工程7,図8,図9] エミッタティップ先端保護膜28をエッチング除去した
後,再度酸化を行ってエミッタティップ27先端に酸化
層C29よりも薄い酸化層D30を形成する。この薄い
酸化層D30の膜厚は,数10nmに設定する。
【0068】[工程8,図10] 全面に,例えばAs,Sb,Biなどの半金属をスパッ
タあるいは蒸着などにより堆積して,ホットエレクトロ
ン通過層31を形成する。
【0069】ホットエレクトロン通過層31の膜厚は,
数10nmに設定する。
【0070】以上の各工程を経て,本発明に係る微小電
界放出陰極装置が完成する。
【0071】ここで,本発明に係る微小電界放出陰極装
置のホットエレクトロン通過層について,より具体的に
説明する。
【0072】上述の例では,ホットエレクトロン通過層
をAs,Sb,Biなどの半金属で形成する例を示し
た。半金属は,自由電子濃度が低いので,電子の静電遮
蔽距離が大きくなる。例えばBiの場合,自由電子濃度
が3×1017cm-3のとき,静電遮蔽距離は4.5Åで
ある。
【0073】したがって,エミッタティップ先端の電子
放出面の絶縁膜膜厚とホットエレクトロン通過層膜厚の
合計膜厚が,ホットエレクトロン通過層の静電遮蔽距離
以下になると,電子放出によってできた電荷による電界
が電子放出面の絶縁膜にかかり,ホットエレクトロンの
注入確率が高められる。
【0074】図11は,電子放出面のエネルギーバンド
図である。同図に示すように,真空での真空準位は,ホ
ットエレクトロン通過層表面にある正電荷のために上昇
しているが,真空中では電荷が遮蔽されないため,電界
は絶縁膜内に比べて低い。また,このような状況では,
ホットエレクトロン通過層に電圧を印加しなくても,ホ
ットエレクトロンの注入が可能になる。
【0075】上述したことを利用したのが,図12に本
発明の他の実施例(その1)として示す,微小電界放出
陰極装置である。
【0076】図12に示す微小電界放出陰極装置では,
エミッタティップ41の先端表面を膜厚1Å程度の絶縁
膜42で被覆して1原子層分絶縁する。その後,絶縁膜
42の表面に厚さ1Å程度の半金属を蒸着して,半金属
アイランド43を形成する。
【0077】電子を放出した後の正孔は,電界の高い所
から低い所へ逃げようとするが,アイランド構造の場
合,高電界部に留まることとなるので,電子放出が効率
的に行われる。
【0078】さらに,半金属にドーパントをドープした
場合,エミッタティップ先端を被覆する絶縁膜を省略す
ることができる。これを,図13に,本発明の他の実施
例(その2)として示した。図中,41はエミッタティ
ップ,44はドーパントをドープされた半金属アイラン
ドである。
【0079】図13に示す実施例の場合,ドーパントを
ドープされた半金属アイランド44とエミッタティップ
41との界面の,ドープされた半金属アイランド44側
に空乏層ができるので,ドープされた半金属アイランド
44とエミッタティップ41とを絶縁する必要がない。
したがって,エミッタティップ41の先端を被覆する絶
縁膜を省略することができる。
【0080】図12に示す本発明の他の実施例(その
1)の微小電界放出陰極装置,および図13に示す本発
明の他の実施例(その2)の微小電界放出陰極装置を作
製する場合,電界強度の最も高いエミッタティップ41
先端に,半金属アイランド43またはドープされた半金
属アイランド44が確実に形成された方が,電子放出特
性の再現性が良い。
【0081】このような構造は,次の方法をとることに
より形成することができる。
【0082】 エミッタティップ41先端に,半金属
またはドープされた半金属を蒸着する際に,エミッタテ
ィップ41とゲート電極との間に電圧を印加する。
【0083】あるいは, エミッタティップ41先端
に,半金属またはドープされた半金属を蒸着した後,高
温下で電界を印加してマクスウエル電気応力によりエミ
ッタティップ41先端中央に,半金属アイランド43ま
たはドープされた半金属アイランド44が来るように処
理する。
【0084】上述したように,図13に示す本発明の他
の実施例(その2)の場合,エミッタティップ41の表
面に直接,ドーパントをドープされた半金属アイランド
44を形成した。これは,ドープされた半金属アイラン
ド44とエミッタティップ41との界面の,ドープされ
た半金属アイランド44側に空乏層ができるので,ドー
プされた半金属アイランド44とエミッタティップ41
とを絶縁する必要がなく,したがって,エミッタティッ
プ41の先端を被覆する絶縁膜を省略することができる
からである。
【0085】このことを,本発明に係る微小電界放出陰
極装置のホットエレクトロン通過層用電極に適用する
と,その下の絶縁層を省略することができ,製造工程を
簡略化することができるようになる。これを,本発明の
一実施例を示す図2を用いて,具体的に説明する。
【0086】ホットエレクトロン供給層用電極11上
に,絶縁層A12を介することなく,直接,ホットエレ
クトロン通過層用電極13をドーパントをドープされた
半金属で形成する。この場合,ホットエレクトロン供給
層用電極11とホットエレクトロン通過層用電極13と
の界面の,ホットエレクトロン通過層用電極13側に空
乏層ができるので,ホットエレクトロン供給層用電極膜
11とホットエレクトロン通過層用電極13とは,電気
的に絶縁される。したがって,絶縁層A12は不要にな
る。
【0087】
【発明の効果】本発明によれば,微小電界放出陰極装置
において,電子放出効率を高めることが可能になるの
で,電子放出特性の低電圧化を実現することができるよ
うになる。
【0088】従来の微小電界放出陰極では,アバランシ
ェ増倍を用いているので,電子はシリコン原子と衝突し
て電子と正孔を発生させているため,絶えずエネルギー
が緩和している結果,エミッタティップからの電子放出
効率は,あまり高くできなっかった。
【0089】本発明では,エミッタティップをMIM構
造とすることにより,エネルギーの緩和をなくし,エミ
ッタティップ先端のホットエレクトロン通過層を高エネ
ルギー状態に保つことを可能にしたので,エミッタティ
ップからの電子放出効率を高めることができる。
【0090】その結果,電子放出特性を低電圧化するこ
とが可能になるので,微小電界放出陰極装置の駆動用回
路を低消費電力化することができる。
【0091】以上のように,本発明は,微小電界放出陰
極装置を用いた装置の発展に寄与するところが大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施例を示す図である。
【図3】本発明の製造工程1を示す図である。
【図4】本発明の製造工程2を示す図である。
【図5】本発明の製造工程3を示す図である。
【図6】本発明の製造工程4を示す図である。
【図7】本発明の製造工程5を示す図である。
【図8】本発明の製造工程6を示す図である。
【図9】本発明の製造工程7を示す図である。
【図10】本発明の製造工程8を示す図である。
【図11】電子放出面のエネルギーバンド図である。
【図12】本発明の他の実施例(その1)を示す図であ
る。
【図13】本発明の他の実施例(その2)を示す図であ
る。
【図14】縦型微小電界放出陰極の例を示す図である。
【図15】平面型微小電界放出陰極の例を示す図であ
る。
【図16】微小電界放出陰極の具体例を示す図である。
【図17】エミッタティップ先端部のエネルギーバンド
図である。
【符号の説明】 1 エミッタティップ先端部 2 絶縁層 3 ホットエレクトロン供給層 4 ホットエレクトロン通過層 5 ゲート電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中谷 忠司 神奈川県川崎市中原区上小田中1015番地 富士通株式会社内 (56)参考文献 特開 平5−342995(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01J 1/304 H01J 1/312 H01J 9/02

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 カソード電極と,該カソード電極に接続
    され電子放出のための突状の先端部を有するエミッタテ
    ィップと,前記カソード電極と電気的に絶縁され前記エ
    ミッタティップ先端の近傍に設けられたゲート電極とを
    少なくとも備え,前記カソード電極およびゲート電極に
    電圧を印加することで,前記エミッタティップの先端部
    より電子を放出する微小電界放出陰極装置において, 前記エミッタティップが, 該エミッタティップの内側に形成されたホットエレクト
    ロン供給層と, 前記エミッタティップの外側に形成されたホットエレク
    トロン通過層と, 前記ホットエレクトロン供給層と前記ホットエレクトロ
    ン通過層との間に設けられた絶縁層とを有し,前記ホットエレクトロン供給層と前記ホットエレクトロ
    ン通過層との間に設けられた絶縁層が,前記エミッタテ
    ィップの先端部において,前記エミッタティップの他の
    部分よりも膜厚が薄く形成されており, 前記ホットエレクトロン供給層および前記ホットエレク
    トロン通過層に,それぞれ独立に電圧を印加する手段が
    設けられていることを特徴とする微小電界放出陰極装
    置。
  2. 【請求項2】 カソード電極と,該カソード電極に接続
    され電子放出のための突状の先端部を有するエミッタテ
    ィップと,前記カソード電極と電気的に絶縁され前記エ
    ミッタティップ先端の近傍に設けられたゲート電極とを
    少なくとも備え,前記カソード電極およびゲート電極に
    電圧を印加することで,前記エミッタティップの先端部
    より電子を放出する微小電界放出陰極装置において, 前記エミッタティップが, 該エミッタティップの内側に形成されたホットエレクト
    ロン供給層と, 前記エミッタティップの外側に形成されたホットエレク
    トロン通過層と, 前記ホットエレクトロン供給層と前記ホットエレクトロ
    ン通過層との間に設けられた絶縁層とを有し,前記ホットエレクトロン通過層が,As,Sb,Biの
    いずれかから成るものであり, 前記ホットエレクトロン供給層および前記ホットエレク
    トロン通過層に,それぞれ独立に電圧を印加する手段が
    設けられていることを特徴とする微小電界放出陰極装
    置。
  3. 【請求項3】 請求項1または2において, 前記ホットエレクトロン供給層と前記ホットエレクトロ
    ン通過層との間に設けられた絶縁層が,陽極酸化により
    形成されていることを特徴とする微小電界放出陰極装
    置。
  4. 【請求項4】 請求項1乃至のうちの1項において, 前記ホットエレクトロン供給層と前記ホットエレクトロ
    ン通過層との間に設けられた絶縁層のうち,エミッタテ
    ィップ先端部の絶縁層の膜厚と,前記ホットエレクトロ
    ン通過層の膜厚との合計膜厚が,前記ホットエレクトロ
    ン通過層の静電遮蔽距離と略一致するか,あるいはそれ
    以下に形成されていることを特徴とする微小電界放出陰
    極装置。
  5. 【請求項5】 カソード電極と,該カソード電極に接続
    され電子放出のための突状の先端部を有するエミッタテ
    ィップと、前記カソード電極と電気的に絶縁され前記エ
    ミッタティップ先端の近傍に設けられたゲート電極とを
    少なくとも備え,前記カソード電極およびゲート電極に
    電圧を印加することで,前記エミッタティップの先端部
    より電子を放出する微小電界放出陰極装置の製造方法に
    おいて, 基板上に,ホットエレクトロン供給層用電極膜を形成す
    る工程と, 該ホットエレクトロン供給層用電極膜上に,第1の絶縁
    層を形成する工程と, 該第1の絶縁層上に,ホットエレクトロン通過層用電極
    膜,第2の絶縁層,およびゲート電極膜を順次形成する
    工程と, 前記ゲート電極膜,第2の絶縁層,ホットエレクトロン
    通過層用電極膜,および第1の絶縁層を貫通する孔部を
    形成した後,該孔部底面の前記ホットエレクトロン供給
    層用電極膜上に,突状のホットエレクトロン供給層を形
    成する工程と, 該ホットエレクトロン供給層の表面に第3の絶縁層を形
    成する工程と, 該第3の絶縁層の表面に,ホットエレクトロン通過層を
    形成する工程とを含むことを特徴とする微小電界放出陰
    極装置の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項において, 前記第3の絶縁層を形成する工程が, 前記ホットエレクトロン供給層の先端を酸化防止層で被
    覆する工程と, 前記ホットエレクトロン供給層の表面を酸化して第1の
    酸化層を形成する工程と, 前記ホットエレクトロン供給層の先端を酸化防止層を除
    去した後,再酸化を行って,前記ホットエレクトロン供
    給層の先端に,前記第1の酸化層よりも薄い第2の酸化
    層を形成する工程とを含むことを特徴とする微小電界放
    出陰極装置の製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項またはにおいて, 前記ホットエレクトロン供給層および前記ホットエレク
    トロン供給層用電極膜の両方または一方を陽極酸化が可
    能な物質で形成し,第1の絶縁層および第3の絶縁層の
    両方または一方を陽極酸化により形成することを特徴と
    する微小電界放出陰極装置の製造方法。
  8. 【請求項8】 カソード電極と,該カソード電極に接続
    され電子放出のための突状の先端部を有するエミッタテ
    ィップと,前記カソード電極と電気的に絶縁され前記エ
    ミッタティップ先端の近傍に設けられたゲート電極とを
    少なくとも備え,前記カソード電極およびゲート電極に
    電圧を印加することで,前記エミッタティップの先端部
    より電子を放出する微小電界放出陰極装置において, 前記エミッタティップ先端の表面に,絶縁膜を介して半
    金属からなる島状の領域が形成されていることを特徴と
    する微小電界放出陰極装置。
  9. 【請求項9】 カソード電極と,該カソード電極に接続
    され電子放出のための突状の先端部を有するエミッタテ
    ィップと,前記カソード電極と電気的に絶縁され前記エ
    ミッタティップ先端の近傍に設けられたゲート電極とを
    少なくとも備え,前記カソード電極およびゲート電極に
    電圧を印加することで,前記エミッタティップの先端部
    より電子を放出する微小電界放出陰極装置において, 前記エミッタティップ先端の表面に,絶縁膜を介さず直
    接,ドーパントがドープされた半金属からなる島状の領
    域が形成されていることを特徴とする微小電界放出陰極
    装置。
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