JP3405756B2 - マイクロカプセルの皮膜材料 - Google Patents

マイクロカプセルの皮膜材料

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JP3405756B2 JP9318393A JP9318393A JP3405756B2 JP 3405756 B2 JP3405756 B2 JP 3405756B2 JP 9318393 A JP9318393 A JP 9318393A JP 9318393 A JP9318393 A JP 9318393A JP 3405756 B2 JP3405756 B2 JP 3405756B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、マイクロカプセルの皮
膜として有用な複合構造型の感温性ラテックスに関す
る。本発明のラテックスは、特に、ワースター(Wurste
r)法によるマイクロカプセルの製造に適する。
【0002】
【従来技術と発明が解決すべき課題】マイクロカプセル
は、医薬品、農薬、食品、肥料等の微粒子状の活性成
分、またはこれらの活性成分を含有する芯物質を皮膜物
質で覆った微粒子状製品であり、活性成分には、固体、
液体、溶液あるいは懸濁液など、様々な状態の物質を用
いることができる。製品のマイクロカプセル化により、
所望の成分の酸化や分解が防止される、液状成分を見掛
上固体化することができ、取扱いが容易となる、あるい
は製品の均一化、均質化を達成できるなど、様々な利点
が得られる。従って、マイクロカプセルは広範囲に及ぶ
分野で利用が検討されている。例えば、医療分野で開発
されたドラッグデリバリーシステムのための製剤の担体
としても大いに期待されている。ドラッグデリバリーシ
ステムは、薬物を必要な時に、必要な濃度で、体の必要
な箇所に到達させるための薬物投与の方法であり、放出
制御製剤、部位指向性製剤等、様々な型の製剤がその範
疇に含まれる。マイクロカプセルは、皮膜の厚さを変化
させる、あるいは、特殊な性質を有する皮膜材料を用い
る等の工夫によって、これらドラッグデリバリーシステ
ムのための製剤の調製に有用である。
【0003】上記のごとく、マイクロカプセルは単に成
分を被覆するのみでなく、様々な機能を持ち得る画期的
な製品型であるが、その機能には皮膜が大きく寄与して
いる。従って、所望の機能を有するマイクロカプセルを
得るには、目的に応じた性質を有する皮膜材料を得るこ
とが不可欠である。例えば、上記のドラッグデリバリー
システムのための製剤としてのマイクロカプセルは、治
療目的に適した皮膜材料を用いて調製されねばならな
い。そのような皮膜材料として、体内の物理的または化
学的な変化、例えば温度、圧力(血圧)、化学物質濃度
(例えば、糖尿病におけるグルコース)等の変化をシグ
ナルとしてとらえ、薬物の透過性(溶出)を高め得るも
のが考えられる。このような性質を持つ皮膜材料で調製
したマイクロカプセルは、適切な時期に適切な部位で適
切な量の薬物を放出し得る機能的な製剤である。例え
ば、キムら(S.W.Kim,, Proc. International Wor
kshopon Intelligent Materials, pp.243 (1989))は、
糖鎖と選択的に結合する部位を有する4つの部位を有す
るコンカナバリンAを用いて、グルコース濃度に応答し
てインスリンを放出する製剤を開発した。
【0004】皮膜材料は、また上記の製品として望まれ
る性質に加えて、活性成分を含有する微粒子のコーティ
ング工程を円滑に行うことができるものでなければなら
ない。マイクロカプセルの製造は、必要とされる撹拌力
や芯粒子径により様々な方法が用いられるが、気中懸濁
法の1種であるワースター法によれば30μmまでの粉
体のコーティングが可能であり、またマイクロカプセル
の工業生産を容易に行うことができる。しかも、ワース
ター法は、活性成分の物理化学的な性質による影響を受
け難いという利点を有するために、様々なマイクロカプ
セルの製造に利用されており、該方法に適した皮膜材料
の開発が望ましい。ワースター法で100μm以下の粒
子にコーティングを行う場合、コーティング剤の結合力
による造粒、乾燥粒子のチャンバー内壁への静電気付
着、粒子の非定常な循環、バグフィルターの粒子付着、
粒子透過、過剰差圧等の問題が生じ得るが、中でも粒子
の静電気による付着および造粒傾向が主な問題である。
【0005】マイクロカプセルは極めて多分野で利用さ
れるものであり、また、医療分野に限っても、その治療
対象および目的は個々の製剤で異なることから、汎用性
に富み、操作性が良好であり、製品に有用な機能を付与
し得ると共に、マイクロカプセルの製造を円滑に行い得
る、マイクロカプセル皮膜材料の開発は強く求められて
いる。本発明者らは、エチルアクリレート、メチルメタ
クリレート及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートの
コポリマー(以下、EA−MMA−HEMA又はエチル
アクリレート・メチルメタクリレート・2−ヒドロキシ
エチルメタクリレートコポリマーと呼称する)を開発
し、モノマー比がマイクロカプセルの製造および製品の
皮膜の性質に及ぼす影響を検討した[福森ら、Chem.Ph
arm.Bull.36(8):3070ー3078 (1988)]。次いで、本発明
者らは、EA−MMA−HEMAコポリマーは、その成
分モノマーの配合比を調節することで、軟化温度や被覆
物質の溶出性を変化させることができる(例えば、1
2:6:4の配合率のコポリマーの場合には軟化温度は
低いが透過抑制能が高く、6:12:8の配合率のコポ
リマーの場合には軟化温度は高いが操作性が良好であ
る)ことを示し(福森ら、前掲)、さらに性質の異なる
コポリマー同士を組み合わせてマイクロカプセルを製造
した(福森ら、Processing of the Pre-World Congress
Particle Technology,Gifu, 1990, p.59)。このコポ
リマーの組み合わせによる皮膜材料は、軟化による付着
や、造粒傾向をある程度抑制し、マイクロカプセルに溶
出制御性を付与することができたが、ワースター法によ
るコーティングに際して静電気の発生を避け得ないとい
う欠点を持っていた。
【0006】ワースター法は上記のごとくマイクロカプ
セルの製造法の1つであって、図7に示すように、スプ
レーガン上に円筒が設置され、吸気が底盤によって主と
してその円筒を通るよう構成されている。粒子は円筒c
外で流動化しており、円筒c中を上昇する気流によって
吸い込まれ、スプレーされる。cから噴出した粒子は、
チャンバーの拡大部で失速、落下して循環する。円筒か
ら吹き上げられた時点で、粒子はほぼ乾燥しているが、
ここで乾燥しすぎると、チャンバー内壁全面に静電気に
よる付着が起こる。適当に溶媒を保持した粒子は落下し
て円筒外で乾燥させられるが、乾燥が不十分であると再
びスプレーされて、造粒や湿潤付着の原因になる。この
ような静電気付着は微粒子のコーティングでは特に起こ
り易く、それに起因する粒子の滞留が製品を不均一にす
ることから、静電気付着の起こり難い膜材の開発が重要
である。
【0007】
【問題を解決するための手段】本発明者らは、コーティ
ング工程における問題点を解決し、マイクロカプセルに
優れた特性を付与し得ると共に、様々な分野で利用可能
なマイクロカプセルの皮膜材料を提供することを目的と
して鋭意研究を重ねた結果、透過抑制能を有するエチル
アクリレート・メチルメタクリレート・2−ヒドロキシ
エチルメタクリレートのコポリマーと、感温性ハイドロ
ゲルとの複合構造ラテックスが、この目的の達成に有用
であることを見い出し、本発明を完成した。
【0008】即ち、本発明は、エチルアクリレート・メ
チルメタクリレート・2−ヒドロキシエチルメタクリレ
ートのコポリマーを芯とし感温性水溶性高分子を殻とす
ることを特徴とする温度応答性活性成分放出制御性マイ
クロカプセルの皮膜材料として有用なラテックスを提供
するものである。温度応答性活性成分放出制御マイクロ
カプセルとは、芯物質に含まれる活性成分を、予め定め
た温度において、所望の放出速度で放出させるよう構成
されたマイクロカプセルを指す。この場合、2またはそ
れ以上の活性成分を含有する場合は、それぞれの成分に
ついて所望の放出速度で放出させることもできる。
【0009】既述したように、EA−MMA−HEMA
は、その成分モノマーの配合比を調節することで、軟化
温度や被覆物質の溶出性を変化させることができる。本
発明の温度応答性活性成分放出制御マイクロカプセルの
皮膜原料としてのラテックスの製造に適したEA−MM
A−HEMAコポリマーの配合比率は、EA、MMA、
HEMAが、それぞれ12〜3:3〜12:2〜8、好
ましくは12〜6:6〜12:4〜8である。
【0010】本発明のラテックスには、既知の感温性水
溶性高分子を用いることができ、それらには、N−アル
キル置換(メタ)アクリルアミド(例、N−イソプロピ
ルアクリルアミド)の単独重合体、N−アルキレン置換
(メタ)アクリルアミド(例、N−アクリロイルピロリ
ジン)の単独重合体,N−アルキル、またはN−アルキ
レン置換(メタ)アクリルアミドと他のモノマー(例、
メタクリル酸及びそのエステル、アクリル酸とそのエス
テル、スチレンなどのビニルモノマー)との共重合体の
架橋物、ポリ酢酸ビニルの部分けん化物、ポリビニルメ
チルエーテルなどが含まれるが、これらには限定されな
い。本発明の目的にはワースター流動層からの排気温度
(通常操作温度範囲約25−40℃)近傍に下限臨界共
溶温度(LCST)を持つ感温性の水溶性高分子が好ま
しい。そのような高分子は、低温側では水分子を吸収し
て膨潤し、高温側では脱水和して収縮する(温度応答性
膨潤収縮変化)。従って、排気温度をLCST以下にす
ることでコーティング操作中は膨潤状態で水を保持し、
乾燥過程で脱水するが、マイクロカプセルとして製剤化
し、投与された後、LCST以上では膨潤状態に復元せ
ず脱水和状態を維持し得る性質を有する。このように、
環境温度に応じて膨潤、水和状態が変化するポリマー
は、マイクロカプセルに温度応答性の放出制御特性を付
与することから、本発明のマイクロカプセルの製造原料
として有用である。好ましい高分子はハイドロゲルであ
り、なかでも分子内に親水性のアミド基と疎水性のイソ
プロピル基を有し、32℃にLCSTを持つポリ(N−
イソプロピルアクリルアミド)(NIPAAmポリマ
ー)が特に好ましい。このポリマーを用いると、排気温
度をコントロールすることにより粒子の保水状態が制御
でき[ホッフマン(A.S.Hoffmann)"Advances in Drug
Derivery Systems, 3" J.M.Anderson および S.W.Kim.
編, Elsvier, Amsterdam, 1987, pp.297]、加えて37
℃の溶出温度では収縮によるジッパー効果によって成膜
と溶出制御が期待できるので、本発明の目的に最適であ
る。しかしながら、他の感温性水溶性高分子を用いても
本発明のラテックスを得ることができ、それらも本発明
の範囲に包含される。
【0011】EA−MMA−HEMAコポリマー(芯)
とハイドロゲル(殻)との比率は、重量比で約9.8:
0.2〜7:3より好ましくは9:1〜8:2である。
本発明のラテックスはワースター流動層によるマイクロ
カプセルの製造に適する。マイクロカプセルの皮膜の厚
さは活性成分の性質、マイクロカプセル粒子の構造、目
的により適宜設定されるが、通常、2〜30μm、好ま
しくは6〜18.5μmの範囲である。EA−MMA−H
EMAコポリマーは各モノマーを用い、高分子化学の分
野で既知の方法を用いて製造することができるが、本発
明者らが先に開示した方法が好ましい[福森ら、Chem.
Pharm. Bull. 36(8): 3070ー3078 (1988)]。得られた
コポリマーとNIPAAmポリマーとを用いるラテック
スの製造も、上記の文献に記載の方法に従って行った。
【0012】本発明のラテックスを用い、ワースター法
で芯物質(乳糖の微粒子、53−63μm)をコーティ
ングし、マイクロカプセルを調製した。その結果、本発
明のラテックスによれば、膜材の軟化、静電気による付
着、造粒傾向を最小限に抑え、温度応答型の活性成分放
出制御マイクロカプセルを製造することができることが
明らかとなった。マイクロカプセルが応答する温度は、
複合構造ラテックスを構成する高分子成分、マイクロカ
プセルの構造、芯物質である活性成分の性質等により、
変化するが、目的に応じて任意に設定することができ
る。
【0013】本発明のラテックスによって製造されるマ
イクロカプセルの芯物質としては、医薬品、農薬、食
品、肥料等いずれでもよく、単一または複数の活性成分
を用いることができる。ワースター法によるマイクロカ
プセル化には通常以下の状態の微粒子が用いられるがこ
れらに限定されない。 1)微粒子状活性成分 2)固体、液体状の活性成分を適当な溶媒に、場合によ
っては結合剤、賦形剤などの添加剤と共に溶液または懸
濁液とし、あるいは、粉末のままで、不活性な微粒子状
物質(核粒子)に既知の方法でレイヤリングし、核粒子
の周りに活性成分を固定した、活性成分含有層を有する
微粒子状物質、 3)活性成分を結合剤、賦形剤などの適当な添加剤で微
細造粒した造粒物。 なお、複数の活性成分を含有する場合にあっては、含有
成分中の成分毎に放出制御を行うことができる。例え
ば、乳糖芯物質(53−63μm)にアセトアミノフェ
ンをヒドロキシプロピルセルロースを結合剤としてレイ
ヤリングしたものを、EA−MMA−HEMA(12:
6:4)コポリマーと、NIPAAmポリマーの9:1
(芯:殻)の複合構造ラテックスでマイクロカプセル化
した場合、乳糖とアセトアミノフェンは図8記載の溶出
パターンを示す。図8から、アセトアミノフェンと乳糖
とが、個別に時差放出されていることが分かる。他方、
疎水性の高いインドメタシン等の場合には、複合構造ラ
テックスの殻部分のハイドロゲルが拡散障壁として作用
し、溶出制御される。以下に実施例を挙げ、本発明を詳
しく説明する。
【0014】
【実施例】製造例1 EA−MMA−HEMAコポリマーの製造 文献[福森ら、Chem. Pharm. Bull. 36(8): 3070ー307
8 (1988)]記載の方法で製造した。乳化剤としてドデシ
ル硫酸ナトリウム(SDS)、反応開始剤として過硫酸
アンモニウム(APS)を用いる乳化重合法を用いる。
EA−MMA−HEMAコポリマーの合成に用いられる
各モノマーの合計重量が433gとなるように、モノマ
ーの配合比に相当するEA、MMAおよびHEMAから
なるモノマー混合物を調製する。モノマー混合物中のモ
ノマー比(EA:MMA:HEMA)は12:6:4、
9:9:4または6:12:4である。上記のごとく調
製したモノマー混合物から150gを分取し、予めSD
S4gを蒸留水1300gに溶解した水溶液に加え、ホ
モミキサーを用いて乳化し、乳化物を得る。得られた乳
化物を撹拌機、還流冷却器、モノマー滴下用ビュレット
及び窒素導入管を付した内容2Lの丸底4つ口セパラブ
ルフラスコに移す。この乳化物を投入したフラスコを反
応停止まで窒素気流下80℃の恒温槽中に浸し、泡立た
ない程度に激しく撹拌する。恒温槽中の乳化物が設定温
度80℃に到達後、この乳化物に反応開始剤としてAP
S水溶液(1g/50ml)1mlを添加し、同時に150
gを分取した残りのモノマー混合物の滴下を開始する。
滴下は3時間かけてゆっくりと行う。モノマー混合物全
量が滴下された後、さらに2時間反応させる。モノマー
混合物の全量の滴下が終了するまでの間、APS水溶液
(1g/50ml)1mlを30分毎に添加し、滴下終了後
は、濃度の異なるAPS水溶液(2g/30ml)1m
lを30分毎に添加する。反応の停止は、得られた高分
子エマルジョンのフラスコを冷水で室温まで冷却するこ
とで行う。冷却後、この水系高分子エマルジョンを80
メッシュのふるいに通してエマルジョン中の凝集物を除
去する。さらに、凝集物を除去した水系高分子エマルジ
ョン中の未反応モノマー及び水溶性物質を除去するた
め、セルロースチューブを用いて5日間、10回の透折
を行う。
【0015】実施例1 EA−MMA−HEMAコポリ
マー/ハイドロゲルからなるラテックスの製造 文献[福森ら、Chem. Pharm. Bull. 36(8): 3070ー307
8 (1988)]記載の方法で製造した。乳化剤としてドデシ
ル硫酸ナトリウム(SDS)、反応開始剤として過硫酸
アンモニウム(APS)を用いる乳化重合法を用いる。
複合構造ラテックスの芯および殻の合成に用いられる各
モノマーの合計重量が433gとなるように、芯(A)
に対する殻(B)の導入割合(A:B(重量比)=9:
1〜8:2)に相当する、芯を構成するEA、MMA、
HEMAからなる芯(A)モノマー混合物と殻を構成す
るNIPAAmからなる殻(B)モノマー水溶液(導入
割合に相当するNIPAAmを蒸留水250gで溶解)
をそれぞれ調製する。芯(A)モノマー混合物のモノマ
ー比はEA:MMA:HEMA=12:6:4、9:
9:4または6:12:4である。先に、調製した芯
(A)モノマー混合物から150gを分取し、あらかじ
めSDS4gを蒸留水1300gで溶解した水溶液に加
え、ホモミキサーを用いて乳化し、乳化物を得る。得ら
れた乳化物を撹拌機、還流冷却器、モノマー滴下用ビュ
レット及び窒素導入管を付した内容2Lの丸底4つ口セ
パラブルフラスコに移す。この乳化物を投入したフラス
コを反応停止まで窒素気流下、80℃の恒温中に浸し、
泡立たない程度に激しく撹拌する。
【0016】恒温槽中の乳化物が設定温度80℃に到達
後、この乳化物に反応開始剤としてAPS水溶液(1g
/50ml)1mlを添加し、同時に150gを分取した残
りの芯(A)モノマー混合物の滴下を開始する。芯
(A)モノマー混合物の滴下は3時間以上にわたり、ゆ
っくりと行う。次いで、芯(A)モノマー混合物の滴下
終了30分後に殻(B)モノマー水溶液の滴下を開始
し、連続して反応させる。この殻(B)モノマー水溶液
の滴下も先と同様に3時間以上にわたってゆっくりと行
う。乳化物への芯(A)モノマー混合物及び殻(B)モ
ノマー水溶液の全量の滴下が終了する約6.5時間の反
応の間、APS水溶液(1g/50ml)1mlを30分毎
に添加する。殻(B)モノマー水溶液の滴下終了30分
後に濃度の異なるAPS水溶液(2g/30ml)1mlを
添加し、さらに30分間反応させた後、反応を停止させ
る。反応の停止は、得られた水系高分子エマルジョンの
フラスコを冷水で室温まで冷却することで行う。
【0017】冷却後、この水系高分子エマルジョンを8
0メッシュのふるいに通してエマルジョン中の凝集物を
除去する。さらに、凝集物を除去したこの水系高分子エ
マルジョン中の未反応モノマーおよび水溶性物質を除去
するためにセルロースチューブを用いて5日間、10回
透折を行い、乾燥固形分濃度約17%のラテックスを得
る。得られたラテックス粒子の構造を図1に示す。
【0018】実施例2 マイクロカプセルの製造 実施例1で調製した様々なモノマー比のEA−MMA−
HEMAコポリマーと、NIPAAmポリマーからなる
ラテックスを用いて乳糖粒子(53−63μm)25g
をワースター流動層でコーティングした。装置としてN
Q−GM Spouted Bed Coater (Fuji Paudal)を用い
た。スプレー液は固形分濃度10%に固定し、芯物質に
対して最高100%レベルまでコーティングした。即
ち、EA−MMA−HEMA(12:6:4)コポリマ
ーと、NIPAAmポリマー(9:1)からなる複合構
造ラテックスを用いたマイクロカプセルの製造では、ラ
テックス250g中の乾燥固形分重量が25g(固形分
濃度10%)となるように蒸留水で調製し、スプレー液
とした。芯物質乳糖25gを図7に示した装置に仕込
み、スプレー液250gでコーティングを行った。操作
条件は、吸気温度40℃、排気温度26−27℃、スプ
レー圧2.1atm、スプレー速度1.9ml/min、風量0.
18〜0.19m3/min、ノズル径1.0φmmである。
得られたマイクロカプセルの平均粒子径は80μm、皮
膜の厚さは平均11μmである。ラテックスを用いたマ
イクロカプセルの製造工程と、その生成物の皮膜の構造
を図1に示す。
【0019】試験例1 マイクロカプセルの製造工程および製品に対する、本発
明のラテックスの影響を検討した。対照としてEA−M
MA−HEMAコポリマーのみを用いてマイクロカプセ
ルを製造して比較した。結果を下記の表1に示す。
【表1】 表1 乳糖a)のマイクロカプセル ラテックスの芯(EA:MMA:HEMA)の組成 12:6:4 9:9:4 6:12:4 芯/殻比 10:0 9:1 8:2 10:0 9:1 10:0 9:1 軟化温度(℃) 27 42 60 46 59 74 76 操作条件b) 吸気温度(℃) 30 40 70 40 40 60 40 排気温度(℃) 23-24 26-27 36-37 23-25 26-27 29-31 25 吸気速度(m3/min) 0.18- 0.18- 0.17 0.18- 0.18- 0.17- 0.18- 0.23 0.19 0.19 0.19 0.18 0.19 スフ゜レー速度(ml/min)c) 0.6 1.9 1.5 1.5 1.9 2.4 1.9 スフ゜レー圧(atm) 2.1 2.1 2.1 2.1 2.1 1.7-1.9 2.1 収率 (%) 85 87 90 88 95 88 89粗大粒子(>90μm)(%) 7.4 5.0 3.6 0.6d) 1.2d) 1.7d) 0.4d) 表中、各記号は以下の意味を有する。 a)芯物質に53−63μmの乳糖25gを使用。 b)NQ−GM Spouted bed coater (Fuji Paudal)を
使用。 c)スプレー液:ラテックス250g中に乾燥固形分2
5gを含有。 d)凝集は認められなかった。
【0020】表1から、以下の点が明らかである。 (1)造粒傾向と操作性に及ぼす芯/殻比と芯高分子の
組成の影響 1)高分子EA−MMA−HEMAコポリマーのモノマ
ー比を12:6:4に固定した場合に以下のことがわか
る。芯/殻比10:0(対照)では造粒物の発生が著し
い。そのため、吸気温度とスプレー速度を下げると静電
気付着を生じた。この低いスプレー速度にもかかわらず
造粒物の発生が著しい(7.4%)のは、膜材の軟化に
よると思われる。芯/殻比9:1では、膜材の軟化や静
電気による付着は認められず、操作性は良好となる。5
%の造粒物の発生が認められるが実用的に低いレベルと
判断される。芯/殻比8:2では、吸気温度を70℃に
上げ造粒物の発生を3.6%におさえることができた。 2)表1から、コポリマーのMMA含有率が高くなると
軟化温度が上昇し、造粒物の発生が顕著に抑制されるこ
とが分かる。
【0021】 (2)溶出に対する芯高分子組成と温度の影響 1)芯/殻比9:1ラテックスにおける芯高分子の組成
比がマイクロカプセルの溶出温度に対する影響を検討し
た。即ち芯/殻比9:1のラテックスにおける芯高分子
(EA−MMA−HEMA)のモノマー比が12:6:
4(図2)、9:9:4(図3)または6:12:4
(図4)のマイクロカプセルからの各温度での乳糖の溶
出を比較した。溶出試験は三角フラスコを用いたインキ
ュベーション法により行った。試験液には生理食塩水を
用い、振盪速度は毎分120回とした。図から、モノマ
ー比が6:12:4の場合、いずれの温度においても著
しいバーストを生じることが分かる(図4)。これは、
6:12:4単独ラテックスの乾燥膜の軟化温度が74
℃、吸気温度が40℃であることから芯が変形可能でな
ければ膜形成が困難であることを示している。また、1
2:6:4および9:9:4の場合は、溶出温度の変化
によって多様な溶出挙動が見られる(図2および3)。
特に、20℃以下での急激な放出は、膜中でウォーター
チャンネル(Water-channel)を形成しているNIPA
Amポリマーが膨潤し、水の透過性が増大するためと考
えられる。溶出温度がNIPAAmポリマーのLCST
に近付くにつれ、溶出は抑えられ、12:6:4では2
8℃、9:9:4では33℃で最も溶出が抑制された
が、その温度では長時間にわたる0次型の放出が観察さ
れた。この観察された溶出抑制は、NIPAAmポリマ
ーの収縮によるジッパー効果によって、成膜したためで
あり、複合構造ラテックスは、自己成膜能を有すると考
えられる。
【0022】2)次いで、これらの溶出特性を示すパラ
メータとして乳糖の50%溶出時間(T50)を推定し、
その溶出温度との関係を調べ、結果を図5に示した。芯
高分子単独の場合の結果をも示した。図5から明らか
に、12:6:4では20℃、9:9:4では25℃以
上になるとT50は急激に増加し、溶出の抑制が認められ
る。しかしながら、前者は28℃、後者は33℃以上の
温度では、温度の上昇に伴い、逆に溶出が増加した。こ
れは芯コポリマー単独の場合の、温度上昇に伴う急激な
溶出速度の上昇からみて、芯高分子の特性に関連すると
考えられる。
【0023】3)高温側で見られた溶出速度増大の原因
を調べるために、様々な温度での、生理食塩水中での、
芯(12:6:4)/殻ラテックスによるマイクロカプ
セルの粒子径の変化を顕微鏡下で観察した。結果を図6
に示す。図6から明らかに、長時間にわたる0次放出を
示す温度(28℃、図2参照)では、粒子径に変化は認
められない。それ以上に温度が上昇するに伴い、粒子径
が急激に大きくなり、粒子の著しい膨潤が認められる。
従って、温度上昇に伴う溶出速度の増加は粒子の膨潤に
伴う膜厚の減少に起因すると考えられる。
【0024】
【発明の効果】上記のごとく、本発明の複合構造ラテッ
クスを用いることにより、マイクロカプセル製造工程で
の膜材の軟化、静電気による付着、造粒傾向を最小限に
抑え、温度変化に応じて活性成分の溶出率速度を調節す
ることができる温度応答性放出制御マイクロカプセルを
製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ラテックスを用いたマイクロカプセルの製造工
程と、その生成物の皮膜の構造を示す模式図。
【図2】芯高分子[EA−MMA−HEMA(12:
6:4)]と殻高分子NIPAAmとを9:1の比率で
含有するラテックスを膜材とし、乳糖粒子を芯物質とす
るマイクロカプセルからの、乳糖の溶出率と温度との関
係を示すグラフ。
【図3】芯高分子[EA−MMA−HEMA(9:9:
4)]と殻高分子NIPAAmとを9:1の比率で含有
するラテックスを膜材とし、乳糖粒子を芯物質とするマ
イクロカプセルからの、乳糖の溶出率と温度との関係を
示すグラフ。
【図4】芯高分子[EA−MMA−HEMA(6:1
2:4)」と殻高分子NIPAAmとを9:1の比率で
含有するラテックスを膜材とし、乳糖粒子を芯物質とす
るマイクロカプセルからの、乳糖の溶出率と温度との関
係を示すグラフ。
【図5】芯高分子[EA−MMA−HEMA(12:
6:4および9:9:4)]と殻高分子NIPAAmと
を9:1の比率で含有するラテックスを膜材とし、乳糖
粒子を芯物質とするマイクロカプセルからの、乳糖の5
0%溶出時間(T50)と溶出温度との関係を示すグラ
フ。
【図6】生理食塩水中での、芯高分子[EA−MMA−
HEMA(12:6:4)]と殻高分子NIPAAmと
を9:1の比率で含有する複合構造ラテックスを膜材と
し、乳糖を芯物質とするマイクロカプセルの粒径と温度
との関係を示すグラフ。
【図7】ワースター法によるマイクロカプセルの製造原
理を示す模式図。
【図8】芯高分子[EA−MMA−HEMA(12:
6:4)]と殻高分子NIPAAmとを9:1の比率で
含有する複合構造ラテックスを膜材とし、乳糖およびア
セトアミノフェンを芯物質とするマイクロカプセルから
の、生理食塩水中での各成分の放出状態を示すグラフ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C08L 33/08 C08L 33/14 33/14 B01J 13/02 A (72)発明者 福田 友昭 兵庫県明石市北朝霧丘2−7−11 (72)発明者 大迫 義文 大阪府大阪市城東区中央2−2−30 不 二パウダル株式会社内 (56)参考文献 Chem.Pharm.Bull., 1988年,36(8),3070−3078 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B01J 13/04 A61K 9/58 C08F 265/06 C08J 3/12 C08L 33/00

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エチルアクリレート・メチルメタクリレ
    ート・2−ヒドロキシエチルメタクリレートのコポリマ
    ーを芯とし、N−アルキル置換(メタ)アクリルアミ
    ドの単独重合体、N−アルキレン置換(メタ)アクリ
    ルアミドの単独重合体,N−アルキルまたはN−アル
    キレン置換(メタ)アクリルアミドとメタクリル酸及び
    そのエステル、アクリル酸及びそのエステル及びビニル
    モノマーから選択されるモノマーとの共重合体の架橋
    物、ポリ酢酸ビニルの部分けん化物、及びポリビニ
    ルメチルエーテルから選択されるハイドロゲルを殻とす
    るラテックス粒子を含有することを特徴とする、マイク
    ロカプセルの皮膜材料。
  2. 【請求項2】ラテックス粒子中のエチルアクリレート・
    メチルメタクリレート・2−ヒドロキシエチルメタクリ
    レートコポリマーと、ハイドロゲルとの割合が、重量比
    で9.8:0.2〜7:3である、請求項1記載の皮膜材
    料。
  3. 【請求項3】 エチルアクリレート・メチルメタクリレ
    ート・2−ヒドロキシエチルメタクリレートコポリマー
    におけるモノマー比が12〜3:3〜12:2〜8であ
    る、請求項1または2に記載の皮膜材料。
  4. 【請求項4】 ハイドロゲルがポリ(N−イソプロピル
    アクリルアミド)である、請求項1〜3のいずれかに記
    載の皮膜材料。
  5. 【請求項5】 エチルアクリレート・メチルメタクリレ
    ート・2−ヒドロキシエチルメタクリレートコポリマー
    とポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)とを重量比
    で9:1〜8:2の割合で含有する、請求項4記載の皮
    膜材料。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載の皮膜材
    料を用い、ワースター法により活性成分をコーティング
    することからなる、温度応答性活性成分放出制御マイク
    ロカプセルの製造方法。
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