JP3396924B2 - 活性汚泥のバルキング防止剤 - Google Patents

活性汚泥のバルキング防止剤

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JP3396924B2 JP24638593A JP24638593A JP3396924B2 JP 3396924 B2 JP3396924 B2 JP 3396924B2 JP 24638593 A JP24638593 A JP 24638593A JP 24638593 A JP24638593 A JP 24638593A JP 3396924 B2 JP3396924 B2 JP 3396924B2
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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、活性汚泥処理方法にか
かわり、更に詳しくは、活性汚泥処理の際に生じるバル
キングの防止剤に関する。 【0002】 【従来の技術】活性汚泥法は、1914年にAnder
n and Lockettらにより開発されて以来、
微生物の能力を活用した画期的な廃水処理方法として利
用されている。この活性汚泥法の利点は、BOD除去率
が高く、操作が簡単であることであるが、電力消費量が
多く窒素/リン除去が殆ど出来ない、バルキングが起き
ることなど、種々の問題を抱えている。これらの欠点を
補うべく生物膜法及び嫌気性細菌を利用した嫌気処理法
等種々の方法が提案されているが、これらの方法は、い
ずれの方法も処理能力が活性汚泥法に比べて低い欠点が
あり、現在も活性汚泥法は多くの処理場で用いられてい
るのが現状である。 【0003】先に述べた活性汚泥法の実際の運転におい
て最も大きな問題は、バルキング発生の問題である。こ
のバルキングを解消する手段としては、例えば、特開昭
56−111089号報及び特開平2−152598号
報に見られるような処理施設を改良してバルキングを防
止する方法、例えば、特開昭63−256192号報及
び特開平1−37364号報及び特開平2−16909
6号報に見られるような殺菌剤を添加してバルキングを
防止する方法、例えば、特開平1−211492号報及
び特開平2−017998号報に見られるような凝集剤
を添加してバルキングを防止する方法、例えば、特開平
3−38000号報及び特開平3−154696号報に
見られるような糸状性細菌を溶菌する作用を持つ微生物
群を活性汚泥の処理槽中に添加してバルキングを防止す
る方法等が知られている。 【0004】しかし、これらの方法は何れも完全な方法
とはいえない。施設の改良による方法は、新規に建設す
る装置においては有効であるが、現在使用している施設
には適用が困難である。また、殺菌剤を添加する方法
は、糸状性細菌のみならず、活性汚泥中の他の有用な微
生物も殺滅するため、活性汚泥の処理能力の低下をもた
らす問題があり、凝集剤を添加する方法は、活性汚泥を
強制的に沈降させるのみで、バルキングの原因となる糸
状性細菌にはなんら効果を有するものではないため根本
的な解決には至っていない。さらに、糸状性細菌の溶菌
性細菌を用いる方法は、活性汚泥中においてそれらの細
菌を活着させることが難しい問題点がある。 【0005】 【発明が解決しようとした課題】以上のように、従来の
方法は、バルキング現象の根本的解決に至っていないた
め効果が一時的であったり、活性汚泥の有機物分解能力
を損なってしまう恐れのあるものである。即ち、従来の
方法は、バルキングという現象のみを捉えた解消策であ
り、バルキングの原因である糸状性細菌に対する適切な
処理によってバルキングを根本的に解消するものではな
かった。 【0006】本発明は、以上の観点から、活性汚泥のバ
ルキング現象の原因菌である糸状性細菌の糸状体化を抑
制し、かつ、活性汚泥の処理能力に全く影響を与えない
バルキング防止剤を提供することをその目的とする。 【0007】 【問題点を解決するための手段】本発明者らは、バルキ
ングの原因菌として知られているスフェロチルス ナー
タンス(Sphaerotilus natans)の糸状体化防止策につ
いて鋭意研究した結果、上記化合物が、活性汚泥中の有
用菌の生育に影響を与えることなく、糸状性細菌の糸状
体化を抑制する効果を有することを見いだし本発明を完
成した。 【0008】以下に詳細を説明する。糸状性細菌は、糸
状で生育をするため活性汚泥中のフロック間を橋渡しす
る格好となり、活性汚泥の圧密性が無くなる。その結
果、汚泥が膨潤化し、沈降性が悪くなり、いわゆるバル
キング状態となる。 【0009】糸状性細菌の特徴は、他の一般的な細菌と
異なり、鞘状の物質を細胞が生合成できる点にあり、こ
のため糸状体化するものと理解されている。従って、糸
状性細菌が鞘を形成しない条件を見い出せばバルキング
問題は自ずと解決する事が出来る。 【0010】また、現在の活性汚泥は、BOD規制の対
象となる有機物の分解能力は殆ど問題なく、バルキング
状態であっても処理水中の有機物は分解されており、汚
泥の膨潤化の現象さえ解消できれば、運転管理上問題な
い。 【0011】さらに、糸状性細菌の代表菌であるスフェ
ロチルス ナータンスの場合、有機物質の資化も優れて
いると報告もあり(J.Bacteriology 6
7巻pp.278−291,1954)、廃水中のBO
D除去には糸状性細菌も有用微生物である。従って、バ
ルキングの原因となる糸状性細菌を除去したり、殺滅す
ることなく糸状体化のみを抑制する方法は、活性汚泥の
処理能力を全く損なうことのない、極めて有用なバルキ
ング解消方法である。 【0012】本発明者らは、糸状性細菌の糸状体化が糸
状性細菌自身が生合成する鞘にあることに着目し、糸状
性細菌を殺滅することなく鞘を生合成しない糸状性細菌
の生育条件について研究し、糸状性細菌の生育及び活性
汚泥には全く影響を与えることなく、かつ、糸状性細菌
が鞘を形成しない、即ち、糸状体化させない化合物とし
て上記化合物を見いだした。 【0013】本発明は、下記一般式化3又は化4で示さ
れる化合物の少なくとも一種を含有することを特徴とす
る活性汚泥のバルキング防止剤である。 【0014】 【化3】 【0015】(式中、R1 、R2 は、同一、又は異なっ
ていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミ
ノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルカ
ノイルアミノ基、置換されていても良いフェニルアミノ
基、置換されていても良いベンジルアミノ基、置換され
ていても良いベンゾイルアミノ基、フロイルアミノ基、
フルフリルアミノ基、3−シクロアルキルウレイド基、
ピペリジノ基、アルコキシ基、メルカプト基、アルキル
チオ基、カルボキシアルキルチオ基、アルコキシカルボ
ニルアルキルチオ基、置換されていても良いベンジルチ
オ基、アルキル基、置換されていても良いベンジル基、
シアノ基又はカルボキシル基を表し、Z1は、窒素原子
又はC−R4 を表し、R4 は、水素原子、ハロゲン原
子、水酸基又はメルカプト基を表し、R3 は、水素原
子、アルキル基、テトラヒドロピラニル基、5−ホスホ
−D−リボシル基、又はサイクリック−3,5−ホスホ
−D−リボシル基又は2−デオキシリボシル基を表
す。) 【0016】 【化4】 【0017】(式中、R5 、R6 は、同一又は異なって
いてもよく、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ
基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルカノ
イルアミノ基、置換されていても良いフェニルアミノ
基、置換されていても良いベンジルアミノ基、置換され
ていても良いベンゾイルアミノ基、フロイルアミノ基、
フルフリルアミノ基、3−シクロアルキルウレイド基、
ピペリジノ基、アルコキシ基、メルカプト基、アルキル
チオ基、カルボキシアルキルチオ基、アルコキシカルボ
ニルアルキルチオ基、置換されていても良いベンジルチ
オ基、アルキル基、置換されていても良いベンジル基、
シアノ基又はカルボキシル基を表し、Z2 は、窒素原子
又はC−R8 を表し、R8 は、水素原子、ハロゲン原
子、水酸基、又はメルカプト基を表し、R7 は、水素原
子、アルキル基、テトラヒドロピラニル基、5−ホスホ
−D−リボシル基、又はサイクリック−3,5−ホスホ
−D−リボシル基又は2−デオキシリボシル基を表
す。) 【0018】本発明に用いることの出来る化合物として
は、例えば、2- アセチルアミノ-6- ヒドロキシプリ
ン、2−アミノ−6−カルボキシメチルメルカプトプリ
ン、2- アミノ−6−ヒドロキシ−8−メルカプトプリ
ン、2- アミノ−6−メルカプトプリン、2−アミノ−
6,8−ジヒドロキシプリン、2’−デオキシアデノシ
ン、2’−デオキシグアノシン、2,6−ジアミノプリ
ン、2,6−ジクロロプリン、2,8−ジメルカプト−
6−ヒドロキシプリン、6−アミノ−8−ブロモプリ
ン、6−アニリノプリン、6−ベンジルアミノプリン、
6−ベンジルチオプリン、6−カルボキシメチルチオプ
リン−ヒドラジド、6−クロロ−9−(テトラヒドロ−
2−ピラニル)プリン、6−シクロヘキシルウレイドプ
リン、6−ジメチルアミノプリン、6−ヨードプリン、
6−メトキシプリン、6−メチルアミノプリン、6−n
−ブトキシプリン、6−n−ブチルチオプリン、6−n
−ヘキシルアミノプリン、6−ピペリジノプリン、6−
(4−カルボキシブチル)チオプリン、6−[β−ヒド
ロキシエチルアミノ]プリン、6−(γ、γ−ジメチル
アリルアミノ)プリン、6−(メチルチオ)プリン、8
- アザ- 2,6- ジアミノプリン、8−アザアデニン、
8−アザグアニン、アデニン、アデノシン−3’,5’
−1リン酸(cAMP)、アデノシン−5’−1リン
酸、グアニン、キネチン、6−ベンゾイルアミノアデニ
ン、6−(2−フロイル)アミノプリン及びプリン等を
挙げることが出来る。尚、上記一般式化3及び化4で表
される化合物のなかには、イミン- エナミン、ケト- エ
ノール互変異性体も存在し、これらも本発明に含まれ
る。 【0019】本発明において、上記化合物は、粉末、液
体又は顆粒状で、曝気槽や沈殿槽の活性汚泥に直接添
加、又は返送汚泥や流入廃水に混和、混合して用いるこ
とが出来る。 【0020】 【実施例】以下、本発明を実施例により更に具体的に説
明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるもの
ではない。 【0021】(実施例1〜9) (1)実験方法 グルコース0.2%、ペプトン0.5%、クエン酸鉄ア
ンモニウム塩0.05%、硫酸マグネシウム0.02
%、塩化第2鉄0.001%、塩化カルシウム0.00
5%を成分とする培地に供試菌としてスフェロチルス
ナータンス IFO13543を1白金耳植菌し、30
℃にて、1〜2日間振盪培養を行った。スフェロチルス
ナータンスの生育の度合いの判断は、目視により行
い、糸状状態又は桿菌状態で生育したか否かの判断は、
顕微鏡観察により行った。 【0022】(2)実験結果 上記化合物を用いて実際に実験を行った結果を表1に示
す。比較例として、化合物を添加しない区を設けた。そ
の結果、比較例におけるスフェロチルス ナータンスの
生育は、必ず糸状状態で生育したのに対し、実施例1〜
9に示した化合物を表1に記載した濃度を添加して培養
を行うと、表記濃度で生育は抑制されずに糸状体化のみ
抑制された。これらの結果は、数回繰り返しても同様な
結果であり、再現性に優れている。 【0023】 【表1】【0024】(実施例10)グルコース870mg/l、ペ
プトン250mg/l、塩化ナトリウム550mg/l、肉エキ
ス250mg/l、リン酸2カリウム39mg/lの合成廃水を
調製した。このBODは、1,000mg/l、TOCは、
550mg/l、pHは、7であり、糸状性細菌が最も増殖
しやすい組成である。 【0025】次に図1に示したような実験装置を組み立
て、上記合成廃水を用いて活性汚泥の培養を行い、バル
キングの有無を180分後の汚泥の沈降度(SV18
0)により求めた。 【0026】この方法により、BOD/MLSS負荷
0.2〜0.4kg/kg/日、SRT10日、MLS
S2,000ppmの条件で実験を行ったところ、実験開
始7日でSV180が80%以上となり、更に顕微鏡観
察において視野(x100倍)一杯に糸状性細菌が増殖
し、バルキング状態となった。 【0027】次に、試験区として、2,6−ジアミノプ
リンを1Nの水酸化ナトリウム水溶液に溶解し、1日に
1回ずつ曝気槽に対し、2N塩酸で中和しながら200
ppmとなるように毎日添加した。その結果、図2に示し
たように試験期間中対照区のSV180は、約1週間で
80%以上となり、バルキングを起こしたのに対し、試
験区のSV180は、低いレベルで維持されていたた
め、安定した運転が可能であった。 【0028】また、糸状性細菌の発生を観察したとこ
ろ、対照区は、糸状性細菌が視野一杯に広がっていたの
に対し、試験区は殆ど観察されずフロックの状態も非常
によかった。この結果は、非常に再現性に優れるもので
あった。 【0029】(実施例11)上記実施例10と同様の実
験装置および条件を用い、試験区として8−アザグアニ
ンを1Nの水酸化ナトリウム水溶液に溶解し、1日に1
回ずつ曝気槽に対し、2N塩酸で中和しながら20ppm
となるように毎日添加した。その結果、図3に示したよ
うに試験期間中、対照区のSV180は、約1週間で8
0%以上となり、バルキングを起こしたのに対し、試験
区のSV180は、低いレベルで維持されていたため安
定した運転が可能であった。また、糸状性細菌の発生を
観察したところ対照区は、糸状性細菌が視野一杯に広が
っていたのに対し、試験区は、糸状性細菌が殆ど観察さ
れずフロックの状態も非常によかった。 【0030】 【発明の効果】以上のように、本発明の糸状体化抑制剤
である化合物は、活性汚泥の有益な微生物にダメージを
与えることなく、しかも、糸状性細菌の糸状体化のみを
選択的に抑制する事が出来るものである。従って、本発
明の化合物を用いることによって、効果的に活性汚泥の
バルキングを抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】 【図1】図1は、実施例10及び11に用いた実験装置
である。 【図2】図2は、2,6−ジアミノプリン200ppm を
用いた場合(実施例10)のバルキング抑制効果をSV
180の経日変化で表した図である。 【図3】図3は、8−アザグアニン20ppm を用いた場
合(実施例11)のバルキング抑制効果をSV180の
経日変化で表した図である。 【符号の説明】 1:滅菌処理済み合成廃水(4.5リットル) 2:曝気槽(2リットル) 3:沈殿槽(0.5リットル) 4:ペリスタポンプ 5:エアーポンプ 6:滅菌フィルター 7:スターラー 8:処理水 ●:2,6−ジアミノプリン又は、8−アザグアニンを
添加した場合のSV180を示す。 ○:無添加の場合のSV180を示す。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−245492(JP,A) 特開 平6−170385(JP,A) 特開 平4−126593(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C02F 3/12

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】下記の一般式化1又は化2で表される化合
    物、若しくはそれらの塩の少なくとも一種を含有するこ
    とを特徴とする活性汚泥のバルキング防止剤。 【化1】 (式中、R1 、R2 は、同一又は異なっていてもよく、
    水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、アルキル
    アミノ基、ジアルキルアミノ基、アルカノイルアミノ
    基、置換されていても良いフェニルアミノ基、置換され
    ていても良いベンジルアミノ基、置換されていても良い
    ベンゾイルアミノ基、フロイルアミノ基、フルフリルア
    ミノ基、3−シクロアルキルウレイド基、ピペリジノ
    基、アルコキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、カ
    ルボキシアルキルチオ基、アルコキシカルボニルアルキ
    ルチオ基、置換されていても良いベンジルチオ基、アル
    キル基、置換されていても良いベンジル基、シアノ基又
    はカルボキシル基を表し、Z1 は、窒素原子又はC−R
    4 を表し、R4 は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基又
    はメルカプト基を表し、R3 は、水素原子、アルキル
    基、テトラヒドロピラニル基、5−ホスホ−D−リボシ
    ル基、サイクリック−3,5−ホスホ−D−リボシル基
    又は2−デオキシリボシル基を表す。) 【化2】 (式中、式中、R5 、R6 は同一又は異なっていてもよ
    く、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、アル
    キルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルカノイルアミ
    ノ基、置換されていても良いフェニルアミノ基、置換さ
    れていても良いベンジルアミノ基、置換されていても良
    いベンゾイルアミノ基、フロイルアミノ基、フルフリル
    アミノ基、3−シクロアルキルウレイド基、ピペリジノ
    基、アルコキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、カ
    ルボキシアルキルチオ基、アルコキシカルボニルアルキ
    ルチオ基、置換されていても良いベンジルチオ基、アル
    キル基、置換されていても良いベンジル基、シアノ基又
    はカルボキシル基を表し、Z2 は、窒素原子又はC−R
    8 を表し、R8 は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、
    又はメルカプト基を表し、R7 は、水素原子、アルキル
    基、テトラヒドロピラニル基、5−ホスホ−D−リボシ
    ル基、又はサイクリック−3,5−ホスホ−D−リボシ
    ル基又は2−デオキシリボシル基を表す。)
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