JP3394212B2 - カバー部材 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、二種材料を用いた
二重成形によって構成される成形品において、成形後の
取り外しや回動が可能となるような、相手材に対し非溶
着性に優れたポリアミド樹脂組成物からなるカバー部材
に関する。詳しくは、往復直線移動する可動体に取付け
られた各種の駆動部材に対して電力、信号、エアー又は
油等の流体を伝達するホースあるいはケーブル（以下、
媒体伝達手段という）を屈曲案内するケーブルチェーン
において、図１乃至３に示すような相対する一対の側板
１１、１３及び該側板の下部を連結する支持板１５を高
溶融点樹脂にて一体形成するとともに、一方の側板上端
部に被係合部１３ｄを設けたガイド部材７と、各側板１
１、１３の上部間を渡すように高融点樹脂にて一体成形
され、軸支部１１ｃに回動可能に支持される軸受部９ａ
及び被係合部１３ｄに係合する係合部９ｃを有するカバ
ー部材９と、から構成されるチェーン単位部材３、（こ
のチェーン単位部材をヒンジ部材５により複数連結して
ケーブルチェーン１を構成する。なお、図１では３個の
チェーン単位部材を図示）の重要構成部品としての、相
手材に対し非溶着性を有する該カバー部材に関する。

【０００２】

【従来の技術】往復直線移動する可動体に駆動部材が取
り付けられた各種装置にあっては、可動体の駆動部材に
電力、制御信号、流体等の駆動・制御手段を供給する媒
体伝達手段を接続しているが、該媒体伝達手段自体、少
なくとも可動体の最大移動距離の長さを有することが必
要となるため、該可動体の移動に伴って引きずられた
り、屈曲したりして破損する恐れがあった。

【０００３】この欠点を解決するため、例えば特開平２
−１８６１４６号公報に開示されているように、一端部
に軸部を、他端部に軸支部を、夫々有した一対のリンク
プレートと、該リンクプレートの上下に設けた案内板と
を枠形に形成してなる複数のガイド部材を、該軸支部に
該軸部を係合させて屈曲可能に連結するとともに、該案
内板に夫々可撓性を有する舌片をその前後方向の少なく
とも一方に突設するとともに該舌片が該案内板間を閉鎖
するようにしたケーブルチェーンが各種開発されている
が、この種のケーブルチェーンは、可動体の移動距離に
応じた多数のガイド部材を、一方のリンクプレートにお
ける軸部を他方のリンクプレートにおける軸支部に係合
させて長尺状に連結した後に一対のリンクプレート間に
媒体伝達手段を収容し、そしてそれらの上端部を閉鎖部
材により閉鎖し、収容された媒体伝達手段を屈曲案内す
るものである。

【０００４】このような従来のケーブルチェーンは、ガ
イド部材相互を、軸部を軸支部に嵌挿して連結すると共
に各ガイド部材に閉鎖部材を取付けなければならず、組
立て作業に多くの手間がかかり、高コスト化を招く要因
になっていた。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記した従
来の欠点を解決するためになされたものであって、高溶
融点樹脂からなるガイド部材に対し、成形後の取り外し
や回動が可能で、かつ優れた非溶着性を持つポリアミド
樹脂組成物からなるカバー部材を提供することを目的と
してなされたものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的
を達成するため鋭意研究を重ねた結果、特定のポリアミ
ドに特定の割合で可塑剤を配合した組成物がケーブルチ
ェーン用のカバー部材として優れた非溶着特性を示すこ
とを見出し、本発明を完成するに至った。

【０００７】すなわち、本発明は、ポリアミド１１及び
／又はポリアミド１２：１００重量部に対し、可塑材３
〜３０重量部を含有するポリアミド組成物からなる、二
種材料で二重成形された成形品の相手材に対し非溶着性
を有するカバー部材である。

【０００８】以下、本発明を詳細に説明する。本発明に
おいて、二種材により二重成形されたケーブルチェーン
における相手材であるガイド部材は、側板１１、１３及
び該側板の下部を連結する支持板１５を一体形成した断
面が上向きコの字形の形状を有し、各側板１１、１３の
上端部には湾曲部１１ｂ、１３ｂが互いに向い合うよう
に湾曲形成され、一方の湾曲部１１ｂの先端には軸支部
１１ｃが孔１１ｄを間において一体的に設けられてい
る。各軸支部１１ｃは該ガイド部材の連結方向（図１に
矢印で示した方向。以下、同様）に直交する方向の断面
がほぼ円形に形成され、該軸支部の両側に位置する湾曲
部１１ｂの先端部は上半分が切り欠かれた円形状に形成
されている。また、他方の湾曲部１３ｂにおける連結方
向中間部外面には所定幅の凹所１３ｃが該ガイド部材の
連結方向に直交する方向へ延出するように形成されてい
ると共にその端部には被係合部１３ｄが形成されてい
る。

【０００９】本発明における相手材に対して非溶着性に
優れるポリアミド樹脂組成物からなるカバー部材９はガ
イド部材の各側板１１、１３における湾曲部１１ｂ、１
３ｂ間に一体成形されており、湾曲部１１ｂ側の端部中
央には各軸支部１１ｃを全周にわたって包み込む軸受部
９ａが、また、他方の湾曲部１３ｂ側端部には凹所１３
ｃ内に挿嵌する嵌合部９ｂ及び被係合部１３ｄに係合す
る係合部９ｃが夫々一体的に形成されている。

【００１０】このとき、カバー部材９自体はガイド部材
７を形成する高溶融点樹脂に対して非溶着状態で形成さ
れるため、凹所１３ｃから嵌合部９ｂを、そして被係合
部１３ｄから係合部９ｃをそれぞれ取り外すことができ
ると共に軸支部１１ｃに対して軸受部９ａを回動させる
ことができる。

【００１１】本発明におけるケーブルチェーンは、任意
の数のガイド部材７相互を、ヒンジ部材５を一体成形す
ることにより任意の長さに連結し、その後各ガイド部材
７へカバー部材９を一体成形することにより完成する。

【００１２】完成したケーブルチェーンへの媒体伝達手
段の組込みは、ガイド部材７の被係合部１３ｄから係合
部９ｃを取り外すことによって行われる。

【００１３】これにより、従来までのような組立て作業
時の手間を省いて製作及び組立効率を向上させることが
できる。

【００１４】相手材となるガイド部材を成す高溶融点樹
脂としては、非溶着材成形時の成形温度を考慮して、非
溶着材料より高い融点を持つ樹脂が選ばれる。具体的に
は、ポリアミド６、ポリアミド６６、ポリアミド６／６
６共重合体、ポリアミド６６／６Ｔ（ポリヘキサメチレ
ンアジパミド／ポリヘキサメチレンテレフタルアミド共
重合体）及びこれらの混合物が挙げられる。

【００１５】本発明において使用されるポリアミドは、
ポリアミド１１又はポリアミド１２であり、これらは単
独であるいは混合して用いてもよい。更には、ポリアミ
ド１１、ポリアミド１２それぞれのモノマーを共重合し
て得られるポリアミド樹脂であってもよい。

【００１６】本発明において使用される可塑剤として
は、例えば、ベンゼンスルホン酸ブチルアミド、ｐ−ヒ
ドロキシ安息香酸と炭素数６〜２１の直鎖又は分岐鎖ア
ルコールとのエステル（例えば、２−エチルヘキシル、
ｐ−ヒドロキシベンゾエート）等を挙げることができる
が、好ましくは、ベンゼンスルホン酸ブチルアミドであ
る。

【００１７】可塑剤の配合量は、ポリアミド１００重量
部に対して３〜３０重量部、好ましくは３〜２５重量部
である。可塑剤の配合量が３重量部より少ないと充分な
非溶着性が得られず、３０重量部を越えるとブリードア
ウトの問題を生じるので好ましくない。

【００１８】本発明における非溶着性ポリアミド樹脂組
成物は、要求される特性に応じて他の添加剤、例えば耐
熱剤、紫外線吸収剤を含む耐候剤、難燃剤、帯電防止
剤、滑剤、可塑剤、核剤、発砲剤、着色剤、安定剤、カ
ップリング剤などを更に含有することができる。

【００１９】本発明におけるポリアミド樹脂組成物は、
ポリアミド、可塑剤及び／又は耐熱剤等の各種添加剤と
を溶融混練することによって容易に調製することができ
る。

【００２０】以下、実施例を参照しつつ本発明を更に詳
細に説明する。なお、相手材に対する非溶着性は以下の
方法で評価した。

【００２１】テストピース（その形状は図４に示したと
おりで、全体としてはＡＳＴＭ Ｄ６３８の１号片形状
である）は、図５の作製手順に従って作成した。まず、
ＡＳＴＭ Ｄ６３８の１号片を作る金型に図４に示す形
状を有する金属片（非溶着材の形状をトレースしたも
の）をインサートして（図５（１）参照）、相手材の成
形を行った（図５（２）及び（３）参照）。相手材を充
分に冷却した後、それを金型内にインサートして（図５
（４）参照）、非溶着材の部分を成形することにより
（図５（５）参照）、テストピースを得た（図５（６）
参照）。このテストピースの相手材と非溶着材との境界
面での溶着性を観察して以下により評価を行った。 ○：非溶着（テストピースを手で二つ折りにした場合
に、相手材と非溶着材とが簡単に剥離・離脱） △：やや溶着（両者の剥離・屈折に数回の屈曲を要す
る） ×：溶着（１０回以上の屈曲でも両者が剥離・離脱しな
い）

【００２２】また、ブリード性については、非溶着材の
みを用いて射出成形機でプレートに成形し、２３℃、Ｒ
Ｈ６５％の環境で１ヶ月放置した後、プレートの表面状
態を観察して以下により評価した。 ○：ブリードなし、あるいは僅かなブリード ×：著しくブリード

【００２３】実施例及び比較例 相手材及び非溶着材の組成を種々変えてテストピースを
作製し、評価に供した（ここで、可塑剤はベンゼンスル
ホン酸ブチルアミドを使用した）。評価結果を表１に示
す。

【００２４】

【表１】

【００２５】

【発明の効果】本発明の組成物からなるカバー部材を有
してなる二重成形されたケーブルチェーンは、該カバー
部材が相手部材に対する非溶着性に優れるため従来のケ
ーブルチェーンに比べ組立て効率を大幅に向上させるこ
とができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のカバー部材を有してなるケーブルチェ
ーンの一部切り欠き斜視図である。

【図２】本発明のカバー部材の開閉状態を示す縦断面図
である。

【図３】本発明のカバー部材を有してなるケーブルチェ
ーンの屈曲支持状態を示す正面図である。

【図４】溶着性評価用テストピースの形状を示した図
（側面と正面）である。

【図５】溶着性評価用テストピースの作成手順を表す図
である。

【符号の説明】

１ ケーブルチェーン ３ ガイド部材 ５ ヒンジ部材 ９ カバー部材 ９ａ 軸受部 ９ｂ 嵌合部 ９ｃ 係合部 １１ 側板 １１ｂ 湾曲部 １１ｃ 軸支部 １１ｄ 孔 １３ 側板 １３ｂ 湾曲部 １３ｃ 凹所 １３ｄ 被係合部 １５ 支持板

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平９−324836（ＪＰ，Ａ) 特公 昭44−21661（ＪＰ，Ｂ１) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) C08L 77/00 - 77/12 F16G 13/16

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ポリアミド１１及び／又はポリアミド１
   ２：１００重量部に対し、可塑剤：３〜３０重量部を含
   有するポリアミド樹脂組成物からなる、二種材料で二重
   成形された成形品の相手材に対し非溶着性を有するカバ
   ー部材。
2. 【請求項２】 前記の成形品がケーブルチェーンであ
   り、相手材である高溶融点樹脂からなるガイド部材に対
   し、非溶着性を有する請求項１記載のカバー部材。
3. 【請求項３】 前記の可塑剤がベンゼンスルホン酸ブチ
   ルアミドである請求項１又は２に記載のカバー部材。