JP3389937B2 - 低温焼結用ソフトフェライト粒子粉末の製造法 - Google Patents
低温焼結用ソフトフェライト粒子粉末の製造法Info
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Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、低温焼結用ソフトフェ
ライト粒子粉末の製造法に関し、特に各種電子部品など
のデバイスに好適に用いられる低温焼結用ソフトフェラ
イト粒子粉末を製造する新規技術手段を提供するもので
ある。 【0002】 【従来の技術】周知の如く、電子機器の軽薄短小化に伴
い、これに用いられる各種電子部品の小型化、高性能化
が益々要求されている。 【0003】例えば、電子機器の電気回路に用いられる
インダクタは、磁芯または空芯ボビンに絶縁被覆を有す
る銅線を巻線してコイルを形成する巻線型から現在はフ
ェライト焼結型の積層チップインダクタが提案され実用
化もされてきている。 【0004】このフェライト焼結型の積層チップインダ
クタは次の製造工程を経て製造されている。即ち、フェ
ライト粒子粉末を含む磁性体ペーストと、Ag、Pdあ
るいはAg−Pd(電極物質)等の金属粉末を含む導体
ペーストを各々準備し、複数個の約半ターン分の導電パ
ターン印刷層をその間にフェライト印刷層を介して螺旋
状に連続的に接続されるように形成し、導電パターンが
積層方向に螺旋状になるような積層体を作り、これを焼
成炉に入れ所定温度で焼成して焼結させて積層インダク
タを得、得られた積層インダクタの両端面に前記導電パ
ターン印刷に用いたのと同じ導電ペーストを施し、適当
な温度で焼付けて外部電極を形成して積層チップインダ
クタを得るという工程である。積層型チップインダクタ
用の磁性体としては、Ni−Znフェライト、Ni−Z
n−Cuフェライト等のNi系フェライトが用いられて
いる。 【0005】ところで、上述の如く積層型チップインダ
クタの製造工程においては、導電パターンとフェライト
の印刷積層体を同時高温(通常、1000℃前後)焼成
する方法を採っているために、Ag、Pd等の電極物質
とフェライトの界面反応(相互拡散)によってフェライ
ト本来の特性が劣化するという問題点を有しており、こ
の問題点を回避するためには約900℃以下という低温
度で焼成する必要があるとされている。 【0006】しかし、900℃以下の温度で焼成した場
合には、、積層型チップインダクタ用の磁性体として透
磁率等の電磁気特性に優れたNi系フェライト焼結体が
得られ難いことが指摘されている。 【0007】従来、900℃以下という低温で焼成して
焼結させることが可能なソフトフェライト粒子粉末を得
る技術が幾つか提案されている。例えば、特開平5−1
75032号公報には、Fe2 O3 、NiO、ZnO及
びCuO原料の配合物にCoOを添加混合したフェライ
ト原料混合物を700℃の温度で仮焼成した後に粉砕し
てNi−Zn−Cuフェライト粒子粉末を製造するとい
う方法が開示されている。また、特公平6−30297
号公報には、酸化鉄と、2価の金属(M2 )の酸化物
(ただしM2 は、ニッケルおよび/または銅、あるいは
これに亜鉛を加えたもの)との配合物にLi2 Oと4価
の金属(M4 )の酸化物(ただしM4 は、チタン、スズ
およびゲルマニウムの内の一種以上)添加混合したフェ
ライト原料混合物を600〜800℃程度の温度で仮焼
成した後に粉砕してソフトフェライト粒子粉末を製造す
る方法が開示されている。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平
5−175032号公報記載の技術は、仮焼成後にボー
ルミル等にて長時間湿式粉砕を行い微粒子化した0.0
1〜0.1μm程度のNi−Zn−Cuフエライト粒子
粉末を調製し、続いて、焼成して焼結させる際、空気よ
り酸素濃度の低い雰囲気下での焼成が不可欠であり、工
程上複雑となり好ましくない。また、長時間の湿式粉砕
は、生産性に問題があるだけでなく、粉砕媒体の摩耗、
更にはこの摩耗により生じた粉末によってフェライト粉
末が汚染され、結果的に電磁気特性に悪影響を及ぼす可
能性がある。 【0009】また、特公平6−30297号公報記載の
技術は、高い透磁率を有したフェライト焼結体を得るた
め、酸化鉄と2価の金属の酸化物との配合物にLi2 O
と4価の金属の酸化物を添加混合することが必須となっ
ているが、これ等を添加することによる効果も充分でな
く、また経済的にコスト高となり好ましくない。 【0010】従って、当業界では、900℃以下という
低温で焼成して焼結させた場合であっても、高透磁率を
有したフェライト焼結体が得られるという低温焼結用ソ
フトフェライト粒子粉末を提供することが最大の技術的
課題となっている。 【0011】 【課題を解決するための手段】前記技術的課題は、次の
通りの本発明によって達成できる。即ち、本発明は、F
e2 O3 、NiO、ZnO及びCuOの各粒子粉末から
なる原料配合物を仮焼成した後に粉砕してNi−Zn−
Cuフェライト粒子粉末からなる低温焼結用ソフトフェ
ライト粒子粉末を得るに当たって、Fe2 O3 原料とし
て平均粒子径が0.06μm以下であるγ−F2 O3 粒
子粉末を用い、且つ750〜800℃の温度範囲で仮焼
成した後に粗粉砕することを特徴とする低温焼結用ソフ
トフェライト粒子粉末の製造法である。 【0012】次に、本発明実施にあたっての諸条件につ
いて説明する。 【0013】先ず、本発明におけるFe2 O3 原料につ
いて説明する。本発明の目的とする900℃以下という
低温で焼成して焼結させた場合であっても、高透磁率を
有したフェライト焼結体が得られるという低温焼結用ソ
フトフェライト粒子粉末を得るためにはFe2 O3 原料
として平均粒子径が0.06μm以下であるγ−Fe2
O3 粒子粉末を用いなければならない。平均粒子径が
0.06μmを越えるγ−Fe2 O3 粒子粉末を用いて
得たソフトフェライト粒子粉末は、900℃以下で焼成
して焼結させた場合高い透磁率を有したフェライト焼結
体が得られない。 【0014】次に、本発明においてγ−Fe2 O3 粒子
粉末と混合させるNiO、ZnO及びCuOの各粒子粉
末は、750〜800℃の温度範囲でγ−Fe2 O3 粒
子に拡散反応し得るものであればいかなるものでもよい
が、作業性等を勘案するとこれらの酸化物、水酸化物が
好ましい。 【0015】次に、本発明における原料配合割合につい
て説明する。本発明の目的とする低温焼結用ソフトフェ
ライト粒子粉末を得るためには、γ−Fe2 O3 45〜
50モル%に対し、NiO10〜30モル%、ZnO1
0〜40モル%及びCuO5〜15モル%とすることが
望ましい。 【0016】次に、本発明における仮焼成温度について
説明すると、仮焼成温度は、750〜800℃の範囲で
なければならない。800℃を越える温度で仮焼成して
得られるソフトフェライト粒子粉末を900℃以下で焼
成して焼結させた場合には高い透磁率を有したフェライ
ト焼結体が得られない。 【0017】一方、仮焼成温度が750℃未満の場合に
も、スピネルフェライト単相がえられるが、得られるフ
ェライト粒子が小さすぎるため、これを900℃以下で
焼成して焼結させた場合、1〜10MHz程度の低周波
数帯域において高い透磁率を有するフェライト焼結体が
得られない。 【0018】 【作用】本発明において最も重要な点は、Ni−Zn−
Cuフェライト粒子粉末からなる低温焼結用ソフトフェ
ライト粒子粉末を得るに当たって、平均粒子径が0.0
6μm以下であるγ−F2 O3 粒子粉末をFe2 O3 原
料として用い、且つ750〜800℃の温度範囲で仮焼
成した場合には、長時間の湿式粉砕処理を施すことな
く、粗粉砕によって容易に微粒子化ができ、また、この
微粒子粉末を900℃以下で焼成して焼結させた場合に
は、焼結密度が高く、1MHz〜100MHzの周波数
帯域において高透磁率を有したフェライト焼結体が得ら
れるという事実である。 【0019】この事実について、本発明者は、平均粒子
径が0.06μm以下であるγ−F2 O3 粒子粉末をF
e2 O3 原料として用いていることによって、低い仮焼
成温度でスピネル単相が作製できること、また、γ−F
e2 O3 粒子へのNiO、ZnO及びCuOの拡散速度
を大きくすることができるために低温でもフェライト化
反応が十分に進行するものと考えている。 【0020】また、低温でのフェライト化反応であるた
め、フェライト粒子の粒子成長が抑えられ微細なものと
なって、仮焼成後の長時間の湿式粉砕処理が不要となる
ものと考えている。 【0021】 【実施例】次に、実施例並びに比較例により本発明を説
明する。 【0022】尚、以下の実施例並びに比較例におけるフ
ェライト焼結体の焼結密度は、アルキメデス法に準じて
測定した。また、透磁率は、焼結体を超音波加工装置を
用いて、外径38.8mm、内径16.9mmのリング
状に研削加工して得たリング状試料を作製し、該試料を
同軸管サンプルホルダーに挿入し、ネットワークアナラ
イザを使用した反射法によつて周波数1MHz〜100
MHzでの入力インピーダンスを測定した後算出した。 【0023】実施例1 平均粒子径0.05μmのγ−Fe2 O3 粒子粉末6
3.5g、NiO粒子粉末8.3g、ZnO粒子粉末1
8.1g及びCuO粒子粉末8.4gとをアトライタに
より湿式混合した後、この混合物を濾別・乾燥してNi
−Zn−Cuフェライト原料混合物を得、該原料混合物
を電気炉中790℃で4時間仮焼成し、続いて、ボール
ミルを用い回転数:300回転/分、固形分:40wt
%の条件下で2時間湿式粉砕して低温焼結用ソフトフェ
ライト粒子粉末を得た。 【0024】次いで、得られた低温焼結用ソフトフェラ
イト粒子粉末30gにPVA(ポリビニルアルコール)
2.0gを添加混合した後、50mmφの円板状にプレ
ス成形(プレス圧500kg/cm2 )した。この成形
体を焼成温度890℃で4時間焼成してNi−Zn−C
uフェライト焼結体を得た。得られた焼結体の焼結密度
は4.62g/ccであり、周波数1MHz、10MH
z及び100MHzにおける透磁率はそれぞれ188、
217及び32であった。 【0025】実施例2 仮焼成温度を760℃とした以外は実施例1と同様にし
てNi−Zn−Cuフェライト粒子粉末からなる低温焼
結用ソフトフェライト粒子粉末を得た。次いで、得られ
た低温焼結用ソフトフェライト粒子粉末を用い実施例1
と同様にしてNi−Zn−Cuフェライト焼結体を得
た。得られたフェライト焼結体の焼結密度は4.81g
/ccであり、周波数1MHz、10MHz及び100
MHzにおける透磁率はそれぞれ198、228及び3
3であった。 【0026】比較例1 Fe2 O3 原料として、平均粒子径0.2μmのγ−F
e2 O3 粒子粉末を用いた以外は実施例1と同様にして
Ni−Zn−Cuフェライト粒子粉末からなる低温焼結
用ソフトフェライト粒子粉末を得た。次いで、得られた
低温焼結用ソフトフェライト粒子粉末を用い実施例1と
同様にしてNi−Zn−Cuフェライト焼結体を得た。
得られたフェライト焼結体の焼結密度は4.25g/c
cであり、周波数1MHz、10MHz及び100MH
zにおける透磁率はそれぞれ117、119及び28で
あった。 【0027】比較例2 Fe2 O3 原料として、平均粒子径0.2μmのα−F
e2 O3 粒子粉末を用いた以外は実施例1と同様にして
Ni−Zn−Cuフェライト粒子粉末からなる低温焼結
用ソフトフェライト粒子粉末を得た。次いで、得られた
低温焼結用ソフトフェライト粒子粉末を用い実施例1と
同様にしてNi−Zn−Cuフェライト焼結体を得た。
得られたフェライト焼結体の焼結密度は3.85g/c
cであり、周波数1MHz、10MHz及び100MH
zにおける透磁率はそれぞれ70、71及び26であっ
た。 【0028】比較例3 Fe2 O3 原料として、平均粒子径0.05μmのγ−
Fe2 O3 粒子粉末を用い、850℃の温度で仮焼成し
た以外は実施例1と同様にしてNi−Zn−Cuフェラ
イト粒子粉末からなる低温焼結用ソフトフェライト粒子
粉末を得た。次いで、得られた低温焼結用ソフトフェラ
イト粒子粉末を用い実施例1と同様にしてNi−Zn−
Cuフェライト焼結体を得た。得られたフェライト焼結
体の焼結密度は3.90g/ccであり、周波数1MH
z、10MHz及び100MHzにおける透磁率はそれ
ぞれ81、80及び26であった。 【0029】比較例4 Fe2 O3 原料として、平均粒子径0.05μmのγ−
Fe2 O3 粒子粉末を用い、730℃の温度で仮焼成し
た以外は実施例1と同様にしてNi−Zn−Cuフェラ
イト粒子粉末からなる低温焼結用ソフトフェライト粒子
粉末を得た。次いで、得られた低温焼結用ソフトフェラ
イト粒子粉末を用い実施例1と同様にしてNi−Zn−
Cuフェライト焼結体を得た。得られたフェライト焼結
体の焼結密度は4.34g/ccであり、周波数1MH
z、10MHz及び100MHzにおける透磁率はそれ
ぞれ79、78及び30であった。 【0030】 【発明の効果】以上説明した通りの本発明によれば、前
出実施例にも示した通り、長時間の湿式粉砕を施すこと
なく粗粉砕で容易に微粒子化ができ、この微粒子粉末を
900℃以下の低温で焼成して焼結させた場合には高透
磁率を有したフェライト焼結体が得られる。従って、本
発明により製造される低温焼結用ソフトフェライト粒子
粉末は各種電子部品用材料として最適のものといえる。
ライト粒子粉末の製造法に関し、特に各種電子部品など
のデバイスに好適に用いられる低温焼結用ソフトフェラ
イト粒子粉末を製造する新規技術手段を提供するもので
ある。 【0002】 【従来の技術】周知の如く、電子機器の軽薄短小化に伴
い、これに用いられる各種電子部品の小型化、高性能化
が益々要求されている。 【0003】例えば、電子機器の電気回路に用いられる
インダクタは、磁芯または空芯ボビンに絶縁被覆を有す
る銅線を巻線してコイルを形成する巻線型から現在はフ
ェライト焼結型の積層チップインダクタが提案され実用
化もされてきている。 【0004】このフェライト焼結型の積層チップインダ
クタは次の製造工程を経て製造されている。即ち、フェ
ライト粒子粉末を含む磁性体ペーストと、Ag、Pdあ
るいはAg−Pd(電極物質)等の金属粉末を含む導体
ペーストを各々準備し、複数個の約半ターン分の導電パ
ターン印刷層をその間にフェライト印刷層を介して螺旋
状に連続的に接続されるように形成し、導電パターンが
積層方向に螺旋状になるような積層体を作り、これを焼
成炉に入れ所定温度で焼成して焼結させて積層インダク
タを得、得られた積層インダクタの両端面に前記導電パ
ターン印刷に用いたのと同じ導電ペーストを施し、適当
な温度で焼付けて外部電極を形成して積層チップインダ
クタを得るという工程である。積層型チップインダクタ
用の磁性体としては、Ni−Znフェライト、Ni−Z
n−Cuフェライト等のNi系フェライトが用いられて
いる。 【0005】ところで、上述の如く積層型チップインダ
クタの製造工程においては、導電パターンとフェライト
の印刷積層体を同時高温(通常、1000℃前後)焼成
する方法を採っているために、Ag、Pd等の電極物質
とフェライトの界面反応(相互拡散)によってフェライ
ト本来の特性が劣化するという問題点を有しており、こ
の問題点を回避するためには約900℃以下という低温
度で焼成する必要があるとされている。 【0006】しかし、900℃以下の温度で焼成した場
合には、、積層型チップインダクタ用の磁性体として透
磁率等の電磁気特性に優れたNi系フェライト焼結体が
得られ難いことが指摘されている。 【0007】従来、900℃以下という低温で焼成して
焼結させることが可能なソフトフェライト粒子粉末を得
る技術が幾つか提案されている。例えば、特開平5−1
75032号公報には、Fe2 O3 、NiO、ZnO及
びCuO原料の配合物にCoOを添加混合したフェライ
ト原料混合物を700℃の温度で仮焼成した後に粉砕し
てNi−Zn−Cuフェライト粒子粉末を製造するとい
う方法が開示されている。また、特公平6−30297
号公報には、酸化鉄と、2価の金属(M2 )の酸化物
(ただしM2 は、ニッケルおよび/または銅、あるいは
これに亜鉛を加えたもの)との配合物にLi2 Oと4価
の金属(M4 )の酸化物(ただしM4 は、チタン、スズ
およびゲルマニウムの内の一種以上)添加混合したフェ
ライト原料混合物を600〜800℃程度の温度で仮焼
成した後に粉砕してソフトフェライト粒子粉末を製造す
る方法が開示されている。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平
5−175032号公報記載の技術は、仮焼成後にボー
ルミル等にて長時間湿式粉砕を行い微粒子化した0.0
1〜0.1μm程度のNi−Zn−Cuフエライト粒子
粉末を調製し、続いて、焼成して焼結させる際、空気よ
り酸素濃度の低い雰囲気下での焼成が不可欠であり、工
程上複雑となり好ましくない。また、長時間の湿式粉砕
は、生産性に問題があるだけでなく、粉砕媒体の摩耗、
更にはこの摩耗により生じた粉末によってフェライト粉
末が汚染され、結果的に電磁気特性に悪影響を及ぼす可
能性がある。 【0009】また、特公平6−30297号公報記載の
技術は、高い透磁率を有したフェライト焼結体を得るた
め、酸化鉄と2価の金属の酸化物との配合物にLi2 O
と4価の金属の酸化物を添加混合することが必須となっ
ているが、これ等を添加することによる効果も充分でな
く、また経済的にコスト高となり好ましくない。 【0010】従って、当業界では、900℃以下という
低温で焼成して焼結させた場合であっても、高透磁率を
有したフェライト焼結体が得られるという低温焼結用ソ
フトフェライト粒子粉末を提供することが最大の技術的
課題となっている。 【0011】 【課題を解決するための手段】前記技術的課題は、次の
通りの本発明によって達成できる。即ち、本発明は、F
e2 O3 、NiO、ZnO及びCuOの各粒子粉末から
なる原料配合物を仮焼成した後に粉砕してNi−Zn−
Cuフェライト粒子粉末からなる低温焼結用ソフトフェ
ライト粒子粉末を得るに当たって、Fe2 O3 原料とし
て平均粒子径が0.06μm以下であるγ−F2 O3 粒
子粉末を用い、且つ750〜800℃の温度範囲で仮焼
成した後に粗粉砕することを特徴とする低温焼結用ソフ
トフェライト粒子粉末の製造法である。 【0012】次に、本発明実施にあたっての諸条件につ
いて説明する。 【0013】先ず、本発明におけるFe2 O3 原料につ
いて説明する。本発明の目的とする900℃以下という
低温で焼成して焼結させた場合であっても、高透磁率を
有したフェライト焼結体が得られるという低温焼結用ソ
フトフェライト粒子粉末を得るためにはFe2 O3 原料
として平均粒子径が0.06μm以下であるγ−Fe2
O3 粒子粉末を用いなければならない。平均粒子径が
0.06μmを越えるγ−Fe2 O3 粒子粉末を用いて
得たソフトフェライト粒子粉末は、900℃以下で焼成
して焼結させた場合高い透磁率を有したフェライト焼結
体が得られない。 【0014】次に、本発明においてγ−Fe2 O3 粒子
粉末と混合させるNiO、ZnO及びCuOの各粒子粉
末は、750〜800℃の温度範囲でγ−Fe2 O3 粒
子に拡散反応し得るものであればいかなるものでもよい
が、作業性等を勘案するとこれらの酸化物、水酸化物が
好ましい。 【0015】次に、本発明における原料配合割合につい
て説明する。本発明の目的とする低温焼結用ソフトフェ
ライト粒子粉末を得るためには、γ−Fe2 O3 45〜
50モル%に対し、NiO10〜30モル%、ZnO1
0〜40モル%及びCuO5〜15モル%とすることが
望ましい。 【0016】次に、本発明における仮焼成温度について
説明すると、仮焼成温度は、750〜800℃の範囲で
なければならない。800℃を越える温度で仮焼成して
得られるソフトフェライト粒子粉末を900℃以下で焼
成して焼結させた場合には高い透磁率を有したフェライ
ト焼結体が得られない。 【0017】一方、仮焼成温度が750℃未満の場合に
も、スピネルフェライト単相がえられるが、得られるフ
ェライト粒子が小さすぎるため、これを900℃以下で
焼成して焼結させた場合、1〜10MHz程度の低周波
数帯域において高い透磁率を有するフェライト焼結体が
得られない。 【0018】 【作用】本発明において最も重要な点は、Ni−Zn−
Cuフェライト粒子粉末からなる低温焼結用ソフトフェ
ライト粒子粉末を得るに当たって、平均粒子径が0.0
6μm以下であるγ−F2 O3 粒子粉末をFe2 O3 原
料として用い、且つ750〜800℃の温度範囲で仮焼
成した場合には、長時間の湿式粉砕処理を施すことな
く、粗粉砕によって容易に微粒子化ができ、また、この
微粒子粉末を900℃以下で焼成して焼結させた場合に
は、焼結密度が高く、1MHz〜100MHzの周波数
帯域において高透磁率を有したフェライト焼結体が得ら
れるという事実である。 【0019】この事実について、本発明者は、平均粒子
径が0.06μm以下であるγ−F2 O3 粒子粉末をF
e2 O3 原料として用いていることによって、低い仮焼
成温度でスピネル単相が作製できること、また、γ−F
e2 O3 粒子へのNiO、ZnO及びCuOの拡散速度
を大きくすることができるために低温でもフェライト化
反応が十分に進行するものと考えている。 【0020】また、低温でのフェライト化反応であるた
め、フェライト粒子の粒子成長が抑えられ微細なものと
なって、仮焼成後の長時間の湿式粉砕処理が不要となる
ものと考えている。 【0021】 【実施例】次に、実施例並びに比較例により本発明を説
明する。 【0022】尚、以下の実施例並びに比較例におけるフ
ェライト焼結体の焼結密度は、アルキメデス法に準じて
測定した。また、透磁率は、焼結体を超音波加工装置を
用いて、外径38.8mm、内径16.9mmのリング
状に研削加工して得たリング状試料を作製し、該試料を
同軸管サンプルホルダーに挿入し、ネットワークアナラ
イザを使用した反射法によつて周波数1MHz〜100
MHzでの入力インピーダンスを測定した後算出した。 【0023】実施例1 平均粒子径0.05μmのγ−Fe2 O3 粒子粉末6
3.5g、NiO粒子粉末8.3g、ZnO粒子粉末1
8.1g及びCuO粒子粉末8.4gとをアトライタに
より湿式混合した後、この混合物を濾別・乾燥してNi
−Zn−Cuフェライト原料混合物を得、該原料混合物
を電気炉中790℃で4時間仮焼成し、続いて、ボール
ミルを用い回転数:300回転/分、固形分:40wt
%の条件下で2時間湿式粉砕して低温焼結用ソフトフェ
ライト粒子粉末を得た。 【0024】次いで、得られた低温焼結用ソフトフェラ
イト粒子粉末30gにPVA(ポリビニルアルコール)
2.0gを添加混合した後、50mmφの円板状にプレ
ス成形(プレス圧500kg/cm2 )した。この成形
体を焼成温度890℃で4時間焼成してNi−Zn−C
uフェライト焼結体を得た。得られた焼結体の焼結密度
は4.62g/ccであり、周波数1MHz、10MH
z及び100MHzにおける透磁率はそれぞれ188、
217及び32であった。 【0025】実施例2 仮焼成温度を760℃とした以外は実施例1と同様にし
てNi−Zn−Cuフェライト粒子粉末からなる低温焼
結用ソフトフェライト粒子粉末を得た。次いで、得られ
た低温焼結用ソフトフェライト粒子粉末を用い実施例1
と同様にしてNi−Zn−Cuフェライト焼結体を得
た。得られたフェライト焼結体の焼結密度は4.81g
/ccであり、周波数1MHz、10MHz及び100
MHzにおける透磁率はそれぞれ198、228及び3
3であった。 【0026】比較例1 Fe2 O3 原料として、平均粒子径0.2μmのγ−F
e2 O3 粒子粉末を用いた以外は実施例1と同様にして
Ni−Zn−Cuフェライト粒子粉末からなる低温焼結
用ソフトフェライト粒子粉末を得た。次いで、得られた
低温焼結用ソフトフェライト粒子粉末を用い実施例1と
同様にしてNi−Zn−Cuフェライト焼結体を得た。
得られたフェライト焼結体の焼結密度は4.25g/c
cであり、周波数1MHz、10MHz及び100MH
zにおける透磁率はそれぞれ117、119及び28で
あった。 【0027】比較例2 Fe2 O3 原料として、平均粒子径0.2μmのα−F
e2 O3 粒子粉末を用いた以外は実施例1と同様にして
Ni−Zn−Cuフェライト粒子粉末からなる低温焼結
用ソフトフェライト粒子粉末を得た。次いで、得られた
低温焼結用ソフトフェライト粒子粉末を用い実施例1と
同様にしてNi−Zn−Cuフェライト焼結体を得た。
得られたフェライト焼結体の焼結密度は3.85g/c
cであり、周波数1MHz、10MHz及び100MH
zにおける透磁率はそれぞれ70、71及び26であっ
た。 【0028】比較例3 Fe2 O3 原料として、平均粒子径0.05μmのγ−
Fe2 O3 粒子粉末を用い、850℃の温度で仮焼成し
た以外は実施例1と同様にしてNi−Zn−Cuフェラ
イト粒子粉末からなる低温焼結用ソフトフェライト粒子
粉末を得た。次いで、得られた低温焼結用ソフトフェラ
イト粒子粉末を用い実施例1と同様にしてNi−Zn−
Cuフェライト焼結体を得た。得られたフェライト焼結
体の焼結密度は3.90g/ccであり、周波数1MH
z、10MHz及び100MHzにおける透磁率はそれ
ぞれ81、80及び26であった。 【0029】比較例4 Fe2 O3 原料として、平均粒子径0.05μmのγ−
Fe2 O3 粒子粉末を用い、730℃の温度で仮焼成し
た以外は実施例1と同様にしてNi−Zn−Cuフェラ
イト粒子粉末からなる低温焼結用ソフトフェライト粒子
粉末を得た。次いで、得られた低温焼結用ソフトフェラ
イト粒子粉末を用い実施例1と同様にしてNi−Zn−
Cuフェライト焼結体を得た。得られたフェライト焼結
体の焼結密度は4.34g/ccであり、周波数1MH
z、10MHz及び100MHzにおける透磁率はそれ
ぞれ79、78及び30であった。 【0030】 【発明の効果】以上説明した通りの本発明によれば、前
出実施例にも示した通り、長時間の湿式粉砕を施すこと
なく粗粉砕で容易に微粒子化ができ、この微粒子粉末を
900℃以下の低温で焼成して焼結させた場合には高透
磁率を有したフェライト焼結体が得られる。従って、本
発明により製造される低温焼結用ソフトフェライト粒子
粉末は各種電子部品用材料として最適のものといえる。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
C01G 49/00 - 49/08
C04B 35/26 - 35/40
H01F 1/12 - 1/375
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 Fe2 O3 、NiO、ZnO及びCuO
の各粒子粉末からなる原料配合物を仮焼成した後に粉砕
してNi−Zn−Cuフェライト粒子粉末からなる低温
焼結用ソフトフェライト粒子粉末を得るに当たって、F
e2 O3 原料として平均粒子径が0.06μm以下であ
るγ−F2 O3 粒子粉末を用い、且つ750〜800℃
の温度範囲で仮焼成した後に粗粉砕することを特徴とす
る低温焼結用ソフトフェライト粒子粉末の製造法。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP15535294A JP3389937B2 (ja) | 1994-06-14 | 1994-06-14 | 低温焼結用ソフトフェライト粒子粉末の製造法 |
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JP15535294A JP3389937B2 (ja) | 1994-06-14 | 1994-06-14 | 低温焼結用ソフトフェライト粒子粉末の製造法 |
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JPH082926A JPH082926A (ja) | 1996-01-09 |
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KR100368273B1 (ko) * | 1997-12-17 | 2003-04-11 | 주식회사 포스코 | 폐액과산화철을활용한니켈-동-아연페라이트원료의제조방법 |
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- 1994-06-14 JP JP15535294A patent/JP3389937B2/ja not_active Expired - Fee Related
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