JP3385987B2 - 内燃機関のイオン電流検出装置 - Google Patents

内燃機関のイオン電流検出装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は内燃機関のイオン電
流検出装置に関し、特に、機関とモータの動力を併用し
たハイブリッド車に適用した内燃機関のイオン電流検出
装置に関する。
【0002】
【従来の技術】4サイクルの内燃機関は、ピストンの2
回の往復運動により空気と燃料の混合気をシリンダ(気
筒)内にて吸気、圧縮、膨張(燃焼)および排気する4
行程からなる1燃焼サイクルを行う。4サイクルの内燃
機関は、この1燃焼サイクルをクランクシャフトの2回
転の間に行い、膨張行程における燃焼ガスの膨張仕事を
クランクシャフトに回転力として伝達し出力を得るよう
になっている。
【0003】複数気筒を有する内燃機関は、各気筒の膨
張行程において混合気が最適かつ確実に燃焼されないと
他の気筒に対して異常な負荷がかかり内燃機関が損傷し
たり、未燃ガス流出により排気ガスを浄化する触媒が損
傷したりする。それゆえ、内燃機関の安定な運転を確保
するため、従来技術では、各気筒において確実に燃焼が
行われた否かを常に検出し、例えば、膨張行程において
点火プラグのギャップ間に発生するイオン電流を検出
し、失火、ノックあるいはプレイグニッションが発生し
たか否かを判定し、その判定結果に応じて内燃機関の安
定な運転を確保するための種々の制御を行っている。具
体的には、イオン電流を検出した結果、失火と判定され
たときにはその気筒への次回の燃料供給量を増量または
停止し、ノックが発生したと判定されたときにはその気
筒の点火時期を遅角側に補正し、プレイグニッションが
発生したと判定されたときにはその気筒への燃料供給量
を増量する等の制御を行っている。例えば特開平5−2
6091号公報参照。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記特
開平5−26091号公報に開示の内燃機関失火検出装
置は、機関とモータの動力を併用して車両を駆動するハ
イブリッド車に適用した場合、機関運転中モータやモー
タの駆動用の電気を供給する発電機、インバータ、電池
を含むモータ駆動制御装置において大電流が流れたとき
などノイズが発生しイオン電流に影響を与えるため、機
関の運転状態が正常にも関わらず、失火したと誤判定し
てしまうという問題が生じる。
【0005】図14はイオン電流の電流波形を示す図で
あり、(A)は正常時、(B)はノイズ発生時のイオン
電流の電流波形を示す図ある。図14において、横軸は
時間、縦軸は電流値を示す。ハイブリッド車において、
図14の(A)に示す正常時、すなわちモータを流れる
電流が小さいときにはイオン電流にノイズがのっていな
いので、イオン電流の検出は良好であるが、図14の
(B)に示すノイズ発生時、すなわちモータを流れる電
流が大きいとき、急激に変化したときなどにはイオン電
流にノイズがのってしまう。
【0006】それゆえ、本発明は上記問題を解決し、ハ
イブリッド車に適用しても、ノイズの影響を受けたイオ
ン電流検出結果から失火、ノックあるいはプレイグニッ
ションが発生したと誤判定することのない内燃機関のイ
オン電流検出装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記問題を解決する本発
明第1形態に係る内燃機関のイオン電流検出装置は、内
燃機関と電動機の内少なくとも一方から出力された動力
を駆動輪に伝達するよう制御する制御手段と、前記内燃
機関の気筒に設けられた点火プラグの電極間に発生する
イオン電流を検出するイオン電流検出手段と、を備えた
内燃機関のイオン電流検出装置において、前記電動機お
よび該電動機を駆動するための電動機制御手段に流れる
電流を検出する電流検出手段と、前記イオン電流検出手
段により検出されたイオン電流に基づいて前記内燃機関
の燃焼状態を判定する燃焼状態判定手段と、前記電流検
出手段により検出された前記電動機および前記電動機制
御手段に流れる電流に応じて前記燃焼状態判定手段によ
る判定を禁止する燃焼状態判定制限手段と、を備えたこ
とを特徴とする。
【0008】上記構成により、電流検出手段により検出
された電動機および電動機制御手段に流れる電流に応じ
て燃焼状態判定手段による判定を禁止するので、電動機
によるノイズの影響を受けたイオン電流の検出に基づく
機関の燃焼状態の誤判定を回避できる。
【0009】上記問題を解決する本発明第2形態に係る
内燃機関のイオン電流検出装置は、内燃機関と電動機の
内少なくとも一方から出力された動力を駆動輪に伝達す
るよう制御する制御手段と、前記内燃機関の気筒に設け
られた点火プラグの電極間に発生するイオン電流を検出
するイオン電流検出手段と、を備えた内燃機関のイオン
電流検出装置において、前記電動機に要求されるトルク
指令値を算出するトルク指令値算出手段と、前記イオン
電流検出手段により検出されたイオン電流に基づいて前
記内燃機関の燃焼状態を判定する燃焼状態判定手段と、
前記トルク指令値算出手段により算出された前記電動機
のトルク指令値に応じて前記燃焼状態判定手段による判
定を禁止する燃焼状態判定制限手段と、を備えたことを
特徴とする。
【0010】上記構成により、トルク指令値算出手段に
より検出された電動機に要求されるトルクに応じて燃焼
状態判定手段による判定を禁止するので、電動機による
ノイズの影響を受けたイオン電流の検出に基づく機関の
燃焼状態の誤判定を回避できる。本発明による内燃機関
のイオン電流検出装置において、前記燃焼状態判定制限
手段は、前記内燃機関の運転状態が、始動時や加減速時
のときに前記燃焼状態判定手段による判定を禁止する。
【0011】上記禁止により、電動機および電動機制御
手段を流れる電流からのノイズの影響をイオン電流検出
手段が受けやすい時期に機関の燃焼状態の判定を行わな
いので、機関の燃焼状態の誤判定を回避できる。本発明
による内燃機関のイオン電流検出装置において、前記燃
焼状態判定制限手段は、前記電動機が回生制動する期間
に前記燃焼状態判定手段による判定を禁止する。
【0012】上記禁止により、電動機および電動機制御
手段からのノイズの影響をイオン電流検出手段が受けや
すい電動機の回生制動時に機関の燃焼状態の判定を行わ
ないので、機関の燃焼状態の誤判定を回避できる。本発
明による内燃機関のイオン電流検出装置は、前記イオン
電流検出手段により検出されたイオン電流に応じて前記
内燃機関を安定化させる機関安定化手段、をさらに備え
る。
【0013】
【発明の実施の形態】図1は本発明による内燃機関のイ
オン電流検出装置の一実施形態の構成図である。図中、
参照番号1は全体を100で示す機関のシリンダブロッ
ク、2はピストン、3はシリンダヘッド、4は燃焼室、
5は吸気マニホルド、6は排気マニホルドをそれぞれ示
す。吸気マニホルド5は、サージタンク7、吸気ダクト
8およびエアフローメータ9を介してエアクリーナ10
に接続されている。吸気ダクト8内にはスロットル弁1
1が配設され、吸気マニホルド5には燃料噴射弁12が
吸気ポート13に向けて燃料を噴射するように配設され
ている。排気マニホルド6には排気管14が接続され、
この排気管14の途中にHC、CO、NOxの3成分を
同時に浄化する三元触媒コンバータ15が配設されてい
る。点火プラグ16は燃焼室4内に導入された混合気に
点火するために設けられている。
【0014】電子制御ユニット40は、デジタルコンピ
ュータからなり、双方向性バス41によって相互に接続
されたROM42、RAM43、B.RAM43a、C
PU44、入力ポート45および出力ポート46を具備
する。B.RAM43aはバックアップ用のRAMでバ
ッテリからの供給電圧が無くなっても記憶したデータを
保持し続けるために設けられている。
【0015】次に、機関100の状態を検出する複数の
検出器と電子制御ユニット40の入力部を説明する。シ
リンダブロック1のウォータジャケット内には冷却水温
THWを検出する水温センサ30が設けられている。水
温センサ30の出力信号はA/D変換器47を介して入
力ポート45に入力される。エアフローメータ9は吸入
空気量GAに比例した出力電圧を発生し、この出力電圧
もA/D変換器47を介して入力ポート45に入力され
る。排気マニホルド6内に配設された上流側空燃比セン
サ31および排気管14内に配設された下流側空燃比セ
ンサ32はそれぞれ排気中の酸素濃度を検出し、これら
の出力信号もそれぞれA/D変換器47を介して入力ポ
ート45に入力される。
【0016】ディストリビュータ25に内蔵されるクラ
ンク角センサ33は、機関100のクランク角を検出し
機関100がクランク角30度(以下30°CAと記
す)回転する毎に1つのパルス信号を出力し、またクラ
ンク角基準センサ34は、機関100のクランク軸2回
転(720°CA)毎の1番気筒の圧縮行程の上死点T
DC付近と、この上死点から360°CAの位相差をも
つ4番気筒の圧縮行程の上死点TDC付近とにおいて、
各気筒の噴射時期と点火時期を決定するために基準とな
る2つのパルス信号を出力する。また、気筒判別はこの
2つのパルス信号を用いて機関100の始動が開始され
てからクランク軸が2回転する間に行われる。クランク
角基準センサ34から機関の回転数NEが算出される。
これらクランク角センサからのパルス信号は入力ポート
45に直接入力される。
【0017】一方、電子制御ユニット40の出力部は、
出力ポート46と駆動回路48、49とからなる。燃料
噴射弁12は駆動回路48に接続されており、慣習的な
燃料噴射制御にしたがって開弁され、吸気ポート13へ
向けて燃料を噴射する。点火プラグ16は燃焼室4内で
確実に燃焼が行われたか否かを検出するイオン電流検出
回路を含む点火回路35を介して駆動回路49に接続さ
れており、慣習的な点火時期制御にしたがった点火時期
に点火され、燃焼室4内の混合気の燃焼を開始させる。
点火回路35内のイオン電流検出回路は、点火プラグ1
6内に発生する陽イオンの発生量に相当する電圧信号を
A/D変換器47に出力する。
【0018】機関100は吸気系からスロットル弁11
を介して吸入した空気と燃料噴射弁12から噴射された
燃料との混合気を燃焼室4内に吸引してこの混合気の爆
発により押し下げられるピストン2の直線運動をクラン
ク軸51の回転運動に変換する。クランク軸51は、プ
ラネタリギヤ52、スタータ用モータMG1、駆動用モ
ータMG2を介して動力伝達ギヤ53に機械的に結合さ
れており、動力伝達ギヤ53はディファレンシャルギヤ
54にギヤ結合されている。したがって、機関100、
モータMG1およびモータMG2の内の何れから出力さ
れた動力は最終的に車両の左右の駆動輪55、56に伝
達される。
【0019】次に、本発明による内燃機関のイオン電流
検出装置について説明する。図2はイオン電流を検出し
オン着火時に着火を防止する電気回路系統を示す図であ
る。図2に示す電気回路系統は、イグナイタ201、バ
ッテリ202、点火コイル203、点火プラグ16、イ
オン電流検出回路210およびECU40を備える。イ
グナイタ201はバッテリ202から電圧が印加される
点火コイル203の一次巻線203aとこの一次巻線2
03aと接地との間に接続されるパワートランジスタ2
04と抵抗204aとを有する。点火コイル203の二
次巻線203bの一端は点火プラグ16に接続され、他
端はコンデンサ205および点火電流の逆流を防止する
ダイオード206を介して接地されている。コンデンサ
205にはツェナーダイオード207が並列接続され、
ダイオード206には例えばSCRからなるスイッチン
グ素子208とイオン電流検出用抵抗209とを直列接
続した回路が並列接続されている。点火プラグ16は点
火コイル203の二次巻線203bに接続された放電用
電極16aとこれに対向するとともに接地されるグラウ
ンド電極16bとを有する。イオン電流検出回路210
は、コンデンサ205、ツェナーダイオード207、ス
イッチング素子208および抵抗209から構成され
る。
【0020】ECU40は、イグナイタ201を構成す
るパワートランジスタ204に制御信号Cを出力すると
ともに制御信号Cに基づき点火プラグ16が放電した後
に点火プラグ16に生じるイオン電流Iを端子211か
ら検出する。また、ECU40はスイッチング素子20
8のゲート端子212にスイッチング素子208を導通
または遮断するスイッチング信号Sを出力する。
【0021】次に、イオン電流を検出する電気回路つい
て以下に説明する。図2はイオン電流を検出し失火とオ
ン着火時に着火を防止する電気回路系統を示す図であ
る。先ず、イオン電流の検出について説明する。機関1
00の膨張行程において、ECU40からの制御信号C
によりパワートランジスタ204がオンオフ制御され点
火コイル203の一次巻線203aに電流の通電と遮断
が行われると、遮断時に点火コイル203の二次巻線2
03bに高電圧が誘起される。これにより、点火プラグ
16のグラウンド電極16bから同放電用電極16aに
向けて火花放電が生じ、燃焼室4内の混合気が燃焼され
る。このときの放電電流によりコンデンサ205は充電
される。なおこの充電電圧はツェナーダイオード207
により一定の電圧にクランプされて保持される。
【0022】燃焼室4内で正常な燃焼が行われると、コ
ンデンサ205に充電された電荷は、イオン電流Iとし
て図示する方向に、抵抗209、スイッチング素子20
8、二次巻線203bおよび点火プラグ16を経由して
流れ放電する。このイオン電流Iが抵抗209を流れた
ときに抵抗209の両端に発生する電圧は、点火プラグ
16部分での陽イオンの発生量に応じた電圧値として端
子211から出力され、ECU40内のA/D変換器4
7に入力されA/D変換された後CPU44により読取
られる。
【0023】ECU40は、機関100の燃焼サイクル
が膨張行程のときに読取った電圧値を所定値と比較して
失火の判定を行い、読取った電圧値が所定値より小さい
ことから失火と判定したときはその気筒に対して例えば
複数回燃料噴射量を増大し、それでもなお継続的に失火
と判定されたときは表示灯を点灯するとともにその気筒
への燃料供給を停止する。
【0024】ECU40はまた、端子211から出力さ
れる電圧信号からノックが発生したか否かを判定し、ノ
ックが発生したと判定したときはその気筒の点火時期を
遅角側に補正するよう制御する。ECU40はまた、端
子211から出力される電圧信号からプレイグニッショ
ンが発生したか否かを判定し、プレイグニッションが発
生したと判定したときはその気筒への燃料供給を増量す
るよう制御する。
【0025】次に、制御信号Cオン時のオン着火につい
て以下に説明する。図2に示すイオン電流検出回路21
0には、制御信号Cがオンの時に点火プラグ16の電極
間に電流が流れて所謂オン着火するのを防止するため、
スイッチング素子208を設けている。図3はスイッチ
ング素子208の制御例を示すタイムチャートである。
図3において横軸は時間を示す。上段はパワートランジ
スタ204の制御信号Cのオンオフ状態を示し、下段は
スイッチング素子208のスイッチング信号Sのオンオ
フ状態を示す。図3から制御信号Cとスイッチング信号
Sはオンオフのタイミングが反転していることが判る。
このようにスイッチング信号SをECU40から送るこ
とにより、制御信号Cのオン時に二次巻線203bに誘
導された起電力により、接地→抵抗209→スイッチン
グ素子208→ツェナーダイオード207→二次巻線2
03b→点火プラグ16→接地の経路で電流が流れよう
としても、スイッチング素子208のゲートへのスイッ
チング信号Sがオフなのでスイッチング素子208によ
りその電流は遮断することができる。このように、一次
電流通電に伴うオン着火の発生は的確に防止される。
【0026】次に、図1に示すハイブリッド車に適用し
た内燃機関のイオン電流検出装置において、機関運転中
モータに大電流が流れたときなどノイズが発生しイオン
電流に悪影響を与えるような場合に、機関の運転状態が
正常にも関わらず、失火したと誤判定することを回避す
る制御について以下に説明する。図4は失火判定制限ル
ーチンのフローチャートである。本ルーチンは所定の周
期、720°CA毎に実行される。先ず、ステップ40
1ではモータMG1、MG2の電流の検出値からノイズ
の有無を判定し、ノイズ有りと判定したときは本ルーチ
ンを終了し、ノイズ無しと判定されたときはステップ4
02に進む。モータMG1、MG2の電流の検出は図5
に示す電流検出器195〜198により行う。このノイ
ズ有無の判定は、実験結果から次のようなときにノイズ
が発生すると判定する。すなわち、電流検出器195〜
198により検出された電流値Imが所定値より大のと
き、検出電流値の変化率(dIm/dt)が所定値より
大のとき、または回生制動電流Irmが流れたときに、
ノイズが発生した(ノイズ有り)と判定する。また、こ
のノイズ有無の判定は後述するモータMG1、MG2に
要求されるトルク指令値から判定してもよい。
【0027】ステップ402では、機関100が始動時
か否かを機関100の回転数NEが400RPMを越え
たか否かにより判定し、NE<400RPMのときは機
関100始動時と判定して本ルーチンを終了し、NE≧
400RPMのときは機関100始動完了と判定してス
テップ403に進む。ステップ403では、機関100
が加減速時か否かを判定し、その判定結果がYESのと
きは本ルーチンを終了し、その判定結果がNOのときは
ステップ404に進む。機関100が加減速時か否かを
判定は、エアフローメータにより検出した吸入空気量G
Aと機関100の回転数NEとから負荷GN=GA/N
E(g/rev)を算出し、この負荷の変化率から判定
する。その他に、吸気管内の空気圧を検出する吸気圧セ
ンサ(図示せず)から、またはスロットル弁の開度セン
サ(図示せず)からスロットル弁の開度の変化から機関
100の負荷を検出してもよい。
【0028】ステップ404では、失火率MFRが所定
値K以上か否かを判定し、MFR≧Kのときは失火と判
定してステップ405に進み、MFR<Kのときは失火
しておらず機関100の燃焼状態は安定であると判定し
て本ルーチンを終了する。この失火率MFRは複数
(n)回の機関100の燃焼サイクル中に何(x)回失
火検出されたかをカウンタで計数し、x/nを計算した
値である。
【0029】ステップ405では対応する気筒の失火フ
ラグMFFLGを1にセットし、表示灯(図示せず)を
点灯し車両の運転者に知らせる。また、失火フラグMF
FLGがセットされたとき、対応する気筒の燃料噴射量
を増大して機関100の燃焼状態を安定化させたり、あ
るいは対応する気筒の燃料噴射を停止して触媒へ向けて
未燃HCが排出され触媒を損傷しないように制御する。
【0030】次に、モータMG1、MG2に要求される
トルク指令値の算出処理について説明するが、その前に
機関とモータの動力出力装置について説明する。図5は
図1に示す機関とモータの動力出力装置の概略構成図で
ある。動力出力装置200は、機関100、機関100
のクランク軸51にプラネタリキャリア64が機械的に
結合されたプラネタリギヤ52、プラネタリギヤ52の
サンギヤ61に結合されたモータMG1、プラネタリギ
ヤ52のリングギヤ62に結合されたモータMG2およ
びモータMG1、MG2を駆動制御するモータ制御装置
180から構成される。図5に示すように、サンギヤ6
1の軸にはその回転角度θs を検出するレゾルバ71が
設けられ、リングギヤ62の軸にはその回転角度θr を
検出するレゾルバ72が設けられている。ここで、プラ
ネタリギヤ52について説明する。
【0031】図6はプラネタリギヤの断面図である。プ
ラネタリギヤ52は、プラネタリギヤ52の内側に設け
られ、クランク軸51に軸中心を貫通された中空のサン
ギヤ軸に結合されたサンギヤ61と、プラネタリギヤ5
2の外周に設けられ、クランク軸51と同軸のリングギ
ヤ62と、サンギヤ61とリングギヤ62との間に設け
られ、サンギヤ61の外周を自転しながら公転する複数
(本図では4つ)のプラネタリピニオンギヤ63と、ク
ランク軸51の端部に結合され各プラネタリピニオンギ
ヤ63の回転軸を軸支するプラネタリキャリア64と、
を備えて構成されている。
【0032】プラネタリギヤ52において、サンギヤ6
1はサンギヤ軸を介してMG1の軸に連結され、リング
ギヤ62はMG2の軸に連結されるとともにリングギヤ
軸、動力伝達ギヤ53を介してディファレンシャルギヤ
54に連結され、プラネタリピニオンギヤ63はクラン
ク軸51に連結される。サンギヤ61、リングギヤ62
およびプラネタリキャリア64にそれぞれ結合されたサ
ンギヤ軸、リングギヤ軸およびクランク軸51の3軸の
内何れか2軸へ入出力される動力が決定されると、残余
の1軸に入出力される動力は決定された2軸へ入出力さ
れる動力に基づいて定まる。
【0033】次に、モータMG1、MG2を駆動制御す
るモータ制御装置180について説明する。モータ制御
装置180は、モータMG1を駆動する第1の駆動回路
191、モータMG2を駆動する第2の駆動回路19
2、これら第1と第2の駆動回路を制御するモータ制御
ユニット190および二次電池であるバッテリ194等
から構成されている。モータ制御ユニット190は、内
部に電子制御ユニット(ECU)40同様に図示しない
CPU、RAM、ROM、入力ポート、出力ポート、A
/D変換器および駆動回路等から構成され、ECU40
と通信するためのインターフェースを備えている。モー
タ制御ユニット190には、レゾルバ71からサンギヤ
軸の回転角度θs 、レゾルバ72からリングギヤ軸の回
転角度θr、アクセルペダルポジションセンサ164a
からのアクセルペダルポジションAP(アクセルペダル
164の踏込量)、ブレーキペダルポジションセンサ1
65aからのブレーキペダルポジションBP(ブレーキ
ペダル165の踏込量)、シフトポジションセンサ18
4からのシフトポジションSP(シフトレバー182の
切換位置)、第1の駆動回路191に設けられた2つの
電流検出器195、196からの電流値Iu1,Iv1、第
2の駆動回路192に設けられた2つの電流検出器19
7、198からの電流値Iu2,Iv2、バッテリ194の
残容量を検出する残容量検出器199からの残容量BR
Mなどが、直接またはA/D変換器を介して入力ポート
に入力される。
【0034】これより、イオン電流検出時におけるノイ
ズの有無を判定するためのモータMG1、MG2に要求
されるトルク指令値の算出処理について説明する。図7
は図5に示す動力出力装置のトルク制御ルーチンのフロ
ーチャートである。本ルーチンは動力出力装置200に
おけるモータ制御装置180のモータ制御ユニット(M
CU)190により所定の周期、例えば1ms毎に実行
される。先ず、ステップ701ではリングギヤ軸の回転
数Nr を読込む。リングギヤ軸の回転数Nr はレゾルバ
72により検出されるリングギヤ軸の回転角度θr から
求められる。ステップ702ではアクセルペダルポジシ
ョンセンサ164aから検出されたアクセルペダルポジ
ションAPを読込む。ステップ703ではリングギヤ軸
に出力すべきトルクTr を算出する。ここで、このトル
クTr 算出するためのマップについて説明する。
【0035】図8は回転数Nr とアクセルペダルポジシ
ョンAPとからトルク指令値Tr を算出するマップを示
す図である。リングギヤ軸の回転数Nr はレゾルバ72
から読込んだリングギヤ軸の回転角度θr から求めら
れ、アクセルペダルポジションAPはアクセルペダルポ
ジションセンサ164aの出力を読込んで求められる。
トルク指令値Tr は予めROM42に格納した図8に示
すマップにしたがってリングギヤ軸の回転数Nr とアク
セルペダルポジションAPとから算出される。
【0036】再び、図7に戻る。ステップ704では、
出力指令値Tr と回転数Nr とからリングギヤ軸に出力
すべき出力エネルギPr (=Tr ×Nr )を算出する。
ステップ705では、ステップ704で算出した出力エ
ネルギPr に基づいて、機関100の目標トルクTetと
目標回転数Netとを設定する。機関100に出力される
エネルギPr は機関100のトルクと回転数との積に等
しく無数の組合せがあるが、この中からできるだけ高効
率となるトルクと回転数との組合せを目標トルクTetお
よび目標回転数Netとして下式のように設定する。
【0037】Pr =Tet×Net 次に、ステップ706では、サンギヤ軸の目標回転数N
stを機関100の回転数Ne に代えて設定した目標回転
数Netを下式に代入して求める。 Ns =Nr −(Nr −Net)×〔(1+ρ)/ρ〕 ここで、ρ=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数 ステップ707〜709では、設定した機関100の目
標トルクTetと目標回転数Netおよびサンギヤ軸の目標
回転数Nstを用いてモータMG1(図9)、モータMG
2(図13)および機関100の制御を実行する。
【0038】機関100の制御については、ステップ7
05で設定された目標トルクTetおよび目標回転数Net
で運転されるように制御される。具体的には、モータ制
御ユニット(MCU)190から電子制御ユニット(E
CU)40に通信により目標トルクTetおよび目標回転
数Netが送信され、ECU40はこれを受信して機関1
00のトルクと回転数が目標トルクTetおよび目標回転
数Netとなるようにスロットル弁11の開度制御、燃料
噴射弁12からの燃料噴射量の制御および点火プラグ1
6の点火時期の制御を行う。
【0039】次にモータMG1に要求されるトルク指令
値の算出処理について説明する。図9はモータMG1の
制御ルーチンのフローチャートである。本ルーチンは動
力出力装置200におけるモータ制御装置180のモー
タ制御ユニット(MCU)190により所定の周期、例
えば1ms毎に実行される。先ず、ステップ901で
は、サンギヤ軸の回転数Ns を読込む。サンギヤ軸の回
転数Ns はレゾルバ71により検出されるサンギヤ軸の
回転角度θs から求められる。次いでステップ902で
は、読込んだサンギヤ軸の回転数Ns と図7のトルク制
御ルーチンにより設定された機関100の目標トルクT
etおよびサンギヤ軸の目標回転数Nstを用いて下式から
モータMG1のトルク指令値Tct(=Tm1t )を計算す
る。
【0040】Tm1t =Tet〔ρ/(1+ρ)〕+k3
(Nst−Ns )+k4∫(Nst−Ns )dt ここで、k3、k4は比例定数である。上式の右辺第1
項は以下に図10〜図12を用いて説明する共線図にお
ける動作共線の釣り合いから求められ、右辺第2項は回
転数Ns の目標回転数Nstからの偏差を打ち消す比例項
であり、右辺第3項は定常偏差をなくす積分項である。
したがって、モータMG1のトルク指令値Tm1は、定常
状態(回転数Ns の目標回転数Nstからの偏差が0のと
き)では、動作共線の釣り合いから求められる右辺第1
項に等しく設定されることになる。
【0041】上記共線図を説明する前に、動力出力装置
の動作について簡単に説明する。図10は図5に示す動
力出力装置における機関とリングギヤ軸の回転数および
トルクの関係を示す図である。図10は、機関100を
回転数Ne 、トルクTe、出力P(=P1)で運転し、
同一出力Pであるがそれぞれ異なる回転数Nr 、トルク
Tr 、出力P2でリングギヤ軸を運転する場合、すなわ
ち機関100から出力される動力をトルクに変換してリ
ングギヤ軸に作用させる場合について考えたときの機関
100とリングギヤ軸の回転数およびトルクの関係を示
す。
【0042】図11は図5に示す動力出力装置における
プラネタリギヤに結合された3軸の回転数とトルクの関
係を示す第1の共線図である。図12は同第2の共線図
である。プラネタリギヤ52の3軸(サンギヤ軸、リン
グギヤ軸およびプラネタリキャリア64(クランク軸5
1)における回転数やトルクの関係は、機構学の教える
ところによれば、図11および図12に例示する共線図
と呼ばれる図として表すことができ、幾何学的に解くこ
とができる。なお、プラネタリギヤ52における3軸の
回転数やトルクの関係は、上述の共線図を用いなくても
各軸のエネルギを計算することにより数式的に解析する
こともできる。本実施の形態では、説明を容易にするた
め共線図を用いて説明する。
【0043】図12における縦軸は3軸の回転数軸であ
り、横軸は3軸の極座標の位置の比を表す。すなわち、
サンギヤ軸とリングギヤ軸の座標軸S、Rを両端にとっ
たとき、プラネタリキャリア64の座標軸Cは、軸Sと
軸Rを1:ρに内分する軸として定められる。ここで、
ρ=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数である。今、機
関100が回転数Ne で運転されており、リングギヤ軸
が回転数Nr で運転されている場合を想定しているか
ら、機関100のクランク軸51が結合されているプラ
ネタリキャリア64の座標軸Cに機関100の回転数N
e を、リングギヤ軸の座標軸Rに回転数Nr をプロット
することができる。この両点を通る直線を描けば、この
直線と座標軸Sとの交点で表される回転数としてサンギ
ヤ軸の回転数Ns を求めることができる。この直線を動
作共線と呼ぶ。なお、回転数Ns は、回転数Ne と回転
数Nr とを用いて下式により求めることができる。
【0044】 Ns =Nr −(Nr −Ne )×〔(1+ρ)/ρ〕 このように、プラネタリギヤ52では、サンギヤ61、
リングギヤ62およびプラネタリキャリア64の内何れ
か2つの回転を決定すると、残りの1つの回転は決定し
た2つの回転に基づいて決定される。次に、描かれた動
作共線に、機関100のトルクTe をプラネタリキャリ
ア64の座標軸Cの作用線として図中下から上に作用さ
せる。この動作共線は、トルクに対してはベクトルとし
ての力を作用させたときの剛体として取り扱うことがで
きるから、座標軸C上に作用させたトルクTe は、平行
な2つの異なる作用線への力の分離の手法により、座標
軸S上のトルクTesと座標軸R上のトルクTerとに分離
することができる。このとき、トルクTesおよびTerの
大きさは、次の2つの式により表される。
【0045】 Tes=Te ×〔ρ/(1+ρ)〕 Ter=Te ×〔1/(1+ρ)〕 動作共線がこの状態で安定であるためには、動作共線の
力の釣り合いをとればよい。すなわち、座標軸S上に
は、トルクTesと大きさが同じで向きが反対のトルクT
m1を作用させ、座標軸R上には、リングギヤ軸に出力す
るトルクTr と同じ大きさで向きが反対のトルクとトル
クTerとの合力に対し大きさが同じで向きが反対のトル
クTm2を作用させるのである。このトルクTm1はモータ
MG1により、トルクTm2はモータMG2により作用さ
せることができる。このとき、モータMG1では回転の
方向と逆向きにトルクを作用させるから、モータMG1
は発電機として作用することになり、トルクTm1と回転
数Ns との積で表せされる電気エネルギPm1をサンギヤ
軸から回生する。モータMG2では、回転の方向とトル
クの方向が同じであるから、モータMG2は電動機とし
て動作し、トルクTm2と回転数Nr との積で表される電
気エネルギPm2を動力としてリングギヤ軸に出力する。
ここで、電気エネルギPm1と電気エネルギPm2とを等し
くすれば、モータMG2で消費する電力の全てをモータ
MG1により回生して賄うことができる。このために
は、入力されたエネルギの全てを出力するものとすれば
よいから、機関100から出力されるエネルギPe とリ
ングギヤ軸に出力されるエネルギPr とを等しくすれば
よい。すなわち、トルクTe と回転数Ne との積で表さ
れるエネルギPe と、トルクTr と回転数Nr との積で
表されるエネルギPr とを等しくするのである。
【0046】図10を参照すれば、出力P1で運転され
ている機関100から出力されるトルクTe と回転数N
e とで表される動力を、トルク変換して、同一のエネル
ギでトルクTr と回転数Nr とで表される動力としてリ
ングギヤ軸に出力するのである。前述したように、リン
グギヤ軸に出力された動力は、動力伝達軸を介して駆動
軸に伝達され、デファレンシャルギヤ54を介して駆動
輪55、56に伝達される。したがって、リングギヤ軸
に出力される動力と駆動輪55、56に伝達される動力
とには、リニアな関係が成立するから、駆動輪55、5
6に伝達される動力は、リングギヤ軸に出力される動力
を制御することができる。
【0047】図11に示す共線図ではサンギヤ軸の回転
数Ns は正であったが、機関100の回転数Ne とリン
グギヤ軸の回転数Nr とによっては、図12に示す共線
図のように負となる場合もある。このときには、モータ
MG1では、回転の方向とトルクの作用する方向とが同
じになるから、モータMG1は電動機として動作し、ト
ルクTm1と回転数Ns との積で表される電気エネルギP
m1を消費する。一方、モータMG2では、回転の方向と
トルクの作用する方向とが逆になるから、モータMG2
は発電機として動作し、トルクTm2と回転数Nr との積
で表される電気エネルギPm2をリングギヤ軸から回生す
ることになる。この場合、モータMG1で消費する電気
エネルギPm1とモータMG2で回生する電気エネルギP
m2とを等しくすれば、モータMG1で消費する電気エネ
ルギPm1をモータMG2で丁度賄うことができる。
【0048】以上、本発明の動力出力装置における基本
的なトルク変換について説明したが、本発明の動力出力
装置は、機関100から出力される動力のすべてをトル
ク変換してリングギヤ軸に出力する動作の他に、機関1
00から出力される動力の全てをトルク変換してリング
ギヤ軸に出力する動作の他に、機関100から出力され
る動力(トルクTe と回転数Ne との積)と、モータM
G1により回生または消費される電気エネルギPm1と、
モータMG2により消費または回生される電気エネルギ
Pm2とを調節することにより、余剰の電気エネルギを見
い出してバッテリ194を放電する動作としたり、不足
する電気エネルギをバッテリ194に蓄えられた電力に
より補う動作など種々の動作とすることもできる。
【0049】なお、以上の動作原理では、プラネラリギ
ヤ52やモータMG1、モータMG2、トランジスタT
r1〜Tr16などによる動力の変換効率を値1(=1
00%)として説明した。実際には、効率は100%よ
り低いので、機関100から出力されるエネルギPe を
リングギヤ軸に出力するエネルギPr より若干大きな値
とするか、逆にリングギヤ軸に出力するエネルギPr を
機関100から出力されるエネルギPe より若干小さな
値とする必要がある。例えば、機関100から出力され
るエネルギPe を、リングギヤ軸に出力されるエネルギ
Pr に変換効率の逆数を乗じて算出される値とすればよ
い。また、モータMG2のトルクTm2を、図11の共線
図の状態ではモータMG1により回生される電力に両モ
ータの効率を乗じたものから算出される値とし、図12
の共線図の状態ではモータMG1により消費される電力
を両モータの効率で割ったものから算出すればよい。な
お、プラネタリギヤ52では機械摩擦などにより熱とし
てエネルギを損失するが、その損失量は全体量からみれ
ば極めて少なく、モータMG1、MG2に用いた同期電
動機の効率は100%に極めて近い。また、トランジス
タTr1〜Tr16のオン抵抗も極めて小さいものが知
られている。したがって、動力の変換効率は100%に
極めて近いものとなる。
【0050】再び、図9のフローチャートに戻る。ステ
ップ903では、レゾルバ71により検出されたサンギ
ヤ軸の回転角度θs を読込む。ステップ904では、電
流検出器195、196により検出された電流値Iu1,
Iv1を読込む。ステップ905では下式の座標変換(三
相−二相変換)を行う。座標変換は永久磁石型の同期電
動機のd軸(直軸成分)とq軸(横軸成分)の電流値に
変換することであり、座標変換する理由は永久磁石型の
同期電動機において、d軸およびq軸の電流がトルク制
御において本質的な量であるからである。始めから三相
のまま制御することも可能である。
【0051】
【数1】
【0052】次いでステップ906では電圧指令値の計
算を行う。すなわち、ステップ905で2軸の電流値に
変換した後、モータMG1のトルク指令値Tctから求め
られる各軸に流れた電流値Id1、Iq1と偏差ΔId1(=
Id1t −Id1)、ΔIq1(=Iq1t −Iq1)を求め、各
軸の電圧指令値Vd1、Vq1を偏差ΔIの比例分と偏差Δ
Iのi回分の累積分とから下式により求める。
【0053】 Vd1=kp1×ΔId1 + Σki1×ΔId1 Vq1=kp2×ΔIq1 + Σki2×ΔIq1 ここで、kp1、kp2、ki1およびki2はモータの特性に
適合するよう設定されたそれぞれの係数である。次いで
ステップ907では電圧指令値の逆座標変換(二相−三
相変換)を下式により行い、実際にモータMG1の三相
コイルに印加する電圧Vu1、Vv1、Vw1を求める。
【0054】
【数2】
【0055】次いでステップ908では第1の駆動回路
191のトランジスタTr1〜Tr6のオンオフしてPWM
制御を実行する。モータMG2に要求されるトルク指令
値の算出処理について説明する。図13はモータMG2
の制御ルーチンのフローチャートである。本ルーチンは
動力出力装置200におけるモータ制御装置180のモ
ータ制御ユニット(MCU)190により所定の周期、
例えば1ms毎に実行される。先ず、ステップ1301
では、リングギヤ軸に出力すべきトルク指令値Trtとモ
ータMG1のトルク指令値Tm1t とを用いて下式からサ
ンギヤ軸に出力すべきトルク指令値であるモータMG2
に要求されるトルク指令値Tat(=Tm2t )を求める。
【0056】Tm2t =Trt−Tm1t /ρ ステップ1302では、レゾルバ72により検出された
リングギヤ軸の回転角度θr を読込む。ステップ130
3では、電流検出器197、198により検出された電
流値Iu2,Iv2を読込む。ステップ1304では下式の
座標変換(三相−二相変換)を行う。座標変換は永久磁
石型の同期電動機のd軸(直軸成分)とq軸(横軸成
分)の電流値に変換することであり、座標変換する理由
は永久磁石型の同期電動機において、d軸およびq軸の
電流がトルク制御において本質的な量であるからであ
る。始めから三相のまま制御することも可能である。
【0057】
【数3】
【0058】次いでステップ1305では電圧指令値の
計算を行う。すなわち、ステップ1304で2軸の電流
値に変換した後、モータMG2のトルク指令値Tatから
求められる各軸に流れた電流値Id2、Iq2と偏差ΔId2
(=Id2t −Id2)、ΔIq2(=Iq2t −Iq2)を求
め、各軸の電圧指令値Vd2、Vq2を偏差ΔIの比例分と
偏差ΔIのi回分の累積分とから下式により求める。
【0059】 Vd2=kp1×ΔId2 + Σki1×ΔId2 Vq2=kp2×ΔIq2 + Σki2×ΔIq2 ここで、kp1、kp2、ki1およびki2はモータの特性に
適合するよう設定されたそれぞれの係数である。次いで
ステップ1306では電圧指令値の逆座標変換(二相−
三相変換)を下式により行い、実際にモータMG1の三
相コイルに印加する電圧Vu2、Vv2、Vw2を求める。
【0060】
【数4】
【0061】次いでステップ1307では第2の駆動回
路192のトランジスタTr11 〜Tr16 のオンオフして
PWM制御を実行する。以上説明したように、モータM
G1に要求されるトルク指令値Tctは図9のフローチャ
ートにおけるステップ902により、モータMG2に要
求されるトルク指令値Tatは図13のフローチャートに
おけるステップ1301によりそれぞれ算出される。こ
のように算出された要求トルク指令値Tct、Tatは、モ
ータMG1、MG2の電流値に相当するので、イオン電
流に対するノイズ有無の判定は、要求トルク指令値Tc
t、Tatが所定値より大のとき、要求トルク指令値Tc
t、Tatの変化率(dTct/dt、dTat/dt)が所
定値より大のとき、または回生制動となるように要求ト
ルク指令値Tct、Tatが急激に0に設定されたときに、
ノイズが発生した(ノイズ有り)と判定する。
【0062】なお、本発明が適用できるハイブリッド車
のシステムは上記実施例に限定されるものではない。本
発明は直列タイプ、並列タイプ、両者の共存タイプ等に
も適用可能である。
【0063】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
電流検出手段により検出された電動機および電動機制御
手段に流れる電流に応じて燃焼状態判定手段による判定
禁止するので、電動機および電動機制御手段によるノ
イズの影響を受けたイオン電流の検出に基づく機関の燃
焼状態の誤判定を回避できる。
【0064】以上説明したように、本発明によれば、ト
ルク指令値算出手段により検出された電動機に要求され
るトルクに応じて燃焼状態判定手段による判定を禁止
るので、電動機および電動機制御手段によるノイズの影
響を受けたイオン電流の検出に基づく機関の燃焼状態の
誤判定を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による内燃機関のイオン電流検出装置の
一実施形態の構成図である。
【図2】イオン電流を検出し失火とオン着火時に着火を
防止する電気回路系統を示す図である。
【図3】スイッチング素子の制御例を示すタイムチャー
トである。
【図4】失火判定制限ルーチンのフローチャートであ
る。
【図5】図1に示す機関とモータの動力出力装置の概略
構成図である。
【図6】プラネタリギヤの断面図である。
【図7】図5に示す動力出力装置のトルク制御ルーチン
のフローチャートである。
【図8】回転数Nr とアクセルペダルポジションAPと
からトルク指令値Tr を算出するマップを示す図であ
る。
【図9】モータMG1の制御ルーチンのフローチャート
である。
【図10】図5に示す動力出力装置における機関とリン
グギヤ軸の回転数およびトルクとの関係を示す図であ
る。
【図11】図5に示す動力出力装置におけるプラネタリ
ギヤに結合された3軸の回転数とトルクの関係を示す第
1の共線図である。
【図12】図5に示す動力出力装置におけるプラネタリ
ギヤに結合された3軸の回転数とトルクの関係を示す第
2の共線図である。
【図13】モータMG2の制御ルーチンのフローチャー
トである。
【図14】イオン電流の電流波形を示す図であり、
(A)は正常時、(B)はノイズ発生時のイオン電流の
電流波形を示す図ある。
【符号の説明】
1…シリンダブロック 2…ピストン 4…燃焼室 5…吸気マニホルド 6…排気マニホルド 12…燃料噴射弁 16…点火プラグ 35…点火回路 40…電子制御ユニット(ECU) 51…クランク軸 52…プラネタリギヤ 61…サンギヤ 62…リングギヤ 63…プラネタリピニオンギヤ 64…プラネタリキャリア 71、72…レゾルバ 180…モータ制御装置 190…モータ制御ユニット(MCU) 194…バッテリ 195、196、197、198…電流検出器 MG1、MG2…モータ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI F02P 17/00 E (72)発明者 高岡 俊文 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (72)発明者 井上 敏夫 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (72)発明者 草田 正樹 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (72)発明者 鈴木 孝 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (72)発明者 山崎 誠 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (56)参考文献 特開 平5−280411(JP,A) 特開 平4−308360(JP,A) 特開 平4−136485(JP,A) 特開 平1−77758(JP,A) 特開 昭57−61930(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F02D 29/02 F02D 29/06 F02D 45/00 368 F02P 17/12 B60K 6/02 - 6/04

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内燃機関と電動機の内少なくとも一方か
    ら出力された動力を駆動輪に伝達するよう制御する制御
    手段と、前記内燃機関の気筒に設けられた点火プラグの
    電極間に発生するイオン電流を検出するイオン電流検出
    手段と、を備えた内燃機関のイオン電流検出装置におい
    て、 前記電動機および該電動機を駆動するための電動機制御
    手段に流れる電流を検出する電流検出手段と、 前記イオン電流検出手段により検出されたイオン電流に
    基づいて前記内燃機関の燃焼状態を判定する燃焼状態判
    定手段と、 前記電流検出手段により検出された前記電動機および前
    記電動機制御手段に流れる電流に応じて前記燃焼状態判
    定手段による判定を禁止する燃焼状態判定制限手段と、 を備えたことを特徴とする内燃機関のイオン電流検出装
    置。
  2. 【請求項2】 内燃機関と電動機の内少なくとも一方か
    ら出力された動力を駆動輪に伝達するよう制御する制御
    手段と、前記内燃機関の気筒に設けられた点火プラグの
    電極間に発生するイオン電流を検出するイオン電流検出
    手段と、を備えた内燃機関のイオン電流検出装置におい
    て、 前記電動機に要求されるトルク指令値を算出するトルク
    指令値算出手段と、 前記イオン電流検出手段により検出されたイオン電流に
    基づいて前記内燃機関の燃焼状態を判定する燃焼状態判
    定手段と、 前記トルク指令値算出手段により算出された前記電動機
    のトルク指令値に応じて前記燃焼状態判定手段による判
    定を禁止する燃焼状態判定制限手段と、 を備えたことを特徴とする内燃機関のイオン電流検出装
    置。
  3. 【請求項3】 前記燃焼状態判定制限手段は、前記内燃
    機関の運転状態が、始動時や加減速時のときに前記燃焼
    状態判定手段による判定を禁止する請求項1または2に
    記載の内燃機関のイオン電流検出装置。
  4. 【請求項4】 前記燃焼状態判定制限手段は、前記電動
    機が回生制動する期間に前記燃焼状態判定手段による判
    定を禁止する請求項1または2に記載の内燃機関のイオ
    ン電流検出装置。
  5. 【請求項5】 前記イオン電流検出手段により検出され
    たイオン電流に応じて前記内燃機関を安定化させる機関
    安定化手段、をさらに備えた請求項1乃至4の何れか1
    項に記載の内燃機関のイオン電流検出装置。
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