JP3385704B2 - 短時間焼入性に優れた高炭素冷延鋼板の製造方法 - Google Patents

短時間焼入性に優れた高炭素冷延鋼板の製造方法

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JP3385704B2
JP3385704B2 JP03613594A JP3613594A JP3385704B2 JP 3385704 B2 JP3385704 B2 JP 3385704B2 JP 03613594 A JP03613594 A JP 03613594A JP 3613594 A JP3613594 A JP 3613594A JP 3385704 B2 JP3385704 B2 JP 3385704B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,焼入時の熱変形が極め
て少なく,所要の焼入性が短時間で安定して得られる高
炭素冷延鋼板の製造方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】刃物,ゼンマイ,ワッシャー,バネ,そ
の他の機械部品は,高炭素冷延鋼板(たとえばJIS G331
1 )を素材に用い,スリット,打抜き,曲げ,プレス加
工,切削などの成形加工を行った後,焼入,焼戻,その
他の熱処理工程を経て製造される。これらの工程のう
ち,素材の製造を鉄鋼メーカーが,加工および熱処理を
ユーザーが実施している。
【0003】この場合,素材には, (a) 加工性がよいこと (b) 熱処理後の強度・靱性にすぐれていること が求められる。
【0004】前者の性能を確保するために,一般に,球
状化焼鈍が行われる。これは古くから行われている処理
であり,これによって素材が軟質化し加工性が確保され
る。一方後者については,高炭素鋼を選定し,合金元素
および不純物量を制御すること,加工メーカーでの熱処
理条件を慎重に選定することなどの手段がとられてい
る。
【0005】上記特性に加えて,最近では,短時間の加
熱で焼入性が確保されることが求められている。これは
ユーザーでの省力化・コストダウンを目的とした要望で
あり,具体的には、オーステナイト域での均熱時間を短
くしても十分な性能を有する素材の提供が求められてい
る。また、そうした場合に、焼入後の形状性、すなわ
ち、そり・ねじれなどのないようにすることも強く要望
されている。
【0006】この要望に対応するための技術は、基本的
に、球状化焼鈍時におけるセメンタイト粒を出来るだけ
微細化させ、短時間の均熱時間で固溶させる思想に基づ
いている。その具体的方法は、たとえば特開平4-11613
7 号公報に示されており、化学成分を調整した上で、鋼
中に存在するセメンタイト粒子の平均粒径を0.8 μm以
下とすること、そうした状態を実現させるために、熱間
圧延後の冷却過程での冷却速度・冷却終了温度の選定、
冷間圧延条件、焼鈍条件の特定が必要であることが述べ
られている。こうした手法により、850 ℃で、10分間の
均熱処理で十分な焼入硬さが得られると記載されてい
る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平
4-116137 号公報に示される手法では、以下の問題点が
存在する。 (1 )850 ℃、10分間の均熱条件は、未だ十分ではな
い。現在はさらに短時間が要請され、また一層低温での
均熱が望まれている。
【0008】(2 )特開平4-116137 号公報に示される
手法で製造した高炭素鋼を低温・短時間加熱条件で焼き
入れると、炭化物が十分溶け込まず、焼入硬さが不足す
る場合がある。 (3 )さらに、実際の操業を行ってみると、短時間の均
熱条件では、焼きむらが生じやすい。このためねじれ、
そりなどというような形状不良が生じる場合がある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、こうした問題
点を克服する具体的手法を提供することを目的とし、そ
の要旨とするところは、 (1)C; 0.3〜1.3wt.% ,Si; 0.1 〜0.3wt%,Cr; 0.05
〜0.25wt% 、Mn; 2.0wt.% 以下、Cu: 0.3wt%以下,Ni:
3.5wt%以下,W: 2.5wt% 以下,Mo: 0.3wt%以下,V: 0.3
wt% 以下を含有する鋼を準備する工程と,巻取温度(C
T)460 〜650℃の条件で熱間圧延する工程と,酸洗脱
スケールする工程と、冷延率(CR)を数2に規定する
範囲で冷間圧延する工程と,水素5%以上,露点-10 ℃
以下,酸素100ppm以下の還元性雰囲気で,C <0.8wt.%
の場合640 ℃〜Ac1 ,C ≧0.8wt.% の場合640 〜750 ℃
の焼鈍温度で2〜25時間の均熱保持する焼鈍を行う工程
と,調質圧延を行う工程を順次行い、冷間圧延時もしく
は調質圧延時に,光沢度(JIS Z8741,20度鏡面光沢)50
〜500 の鏡面光沢を材料表面に付与することを特徴とす
る短時間焼入性に優れた高炭素冷延鋼板の製造方法であ
る。ただしMn, Cu,Ni, W, Mo, V については、無添加
の場合を含む。
【0010】
【数2】
【0011】(2)前記熱間圧延後、酸洗脱スケール前
に640 〜720 ℃で2〜10時間中間焼鈍を実施することを
付加した前記短時間焼入性に優れた高炭素冷延鋼板の製
造方法である。
【0012】
【作用】本発明者は種々の検討を重ね、これら高炭素冷
延鋼板を素材として十分な加工性を備え、低温・短時間
での均熱条件でも、十分な焼入性が確保され、かつ焼入
時に捩れ・そりなどがない良好な形状を有する鋼の製造
方法を検討した。その結果、次に示すような知見を得
た。
【0013】(1)セメンタイト粒は微細なほどオース
テナイト域での溶解時間が減少する。また低温でも固溶
するようになる。 (2)球状化焼鈍後のセメンタイト粒径を小さくするた
めには、冷間圧延に際しての圧延条件の選定が重要であ
り、熱間圧延の仕上温度と関連する特定の領域で実施す
る必要がある。またワークロール径が小さい方が好まし
い。 (3)短時間で均熱させるには、材料表面の光沢度を制
御し、炉からの輻射熱等を素早く吸収することが有効で
ある。
【0014】以下に、本発明にかかる高炭素冷延鋼板の
化学成分および製造条件を上記のごとく限定した理由を
説明する。 (1)化学組成 (a) C 鋼板に必要な硬さ、焼入性および耐磨耗性を得るために
は、0.3wt.% 以上のCの添加が必要である。また、C含
有量が1.3wt.% を超えると焼入後の脆化を招く。よって
C含有量を0.3 〜1.3wt.% とした。
【0015】(b) Si Siが0.1wt.% 未満となると焼入時の硬さが不足し、一方
Siが0.3wt.% を超えると焼入後硬質となって脆化する。
このためSi含有量を0.1 〜0.3wt.% とした。 (c) Cr Crが0.05wt.%未満であると冷延時の焼鈍の際の炭化物が
粗大になり、短時間での焼入性が低下する。一方Crが0.
25wt.%を超えると焼鈍時に炭素の固溶が阻止され球状炭
化物が不均一に分散するようになる。このため加工性が
劣化するとともに、短時間焼入性が低下する。このため
Cr含有量を0.05〜0.25wt.%とした。
【0016】(d) Mn Mnが2.0wt.% を超えると急激に硬化し靱性が劣化する。
このため添加する場合には、Mn含有量を2.0wt.% 以下と
する。 (e) Cu Cuは熱延鋼板の表面スケールの酸洗等による除去を容易
にする効果を有する元素であるが、0.3wt.% を超えると
焼入後の脆弱化を招く。したがって添加する場合には、
0.3wt.% 以下とする。
【0017】(f) Ni Niはフェライト基地を強化し、引張強さを高める作用を
有する。しかしながら3.5wt.% を超えるとグラファイト
化が生じやすくなり、またその増量はコスト的にも不利
である。このため、添加する場合には、上限を3.5wt.%
とする。 (g) W W は焼戻軟化抵抗性を高める効果を有するが、2.5wt.%
を超えると、焼鈍時に安定炭化物が生成し、焼入時のむ
らが生じる原因となる。そのため添加する場合には、2.
5wt.% を上限とする。
【0018】(h) Mo MoはW と同様に焼戻軟化抵抗を増大させる効果を有し、
また靱性向上等に有効な元素である。しかしながら、2.
5wt.% を超えて添加すると焼入性が低下する。そのた
め、添加する場合には、2.5wt.% を上限とする。 (i) V V はオーステナイト粒を微細化するとともに、焼入性を
高める効果を有し、かつ焼戻軟化抵抗の増大、靱性向上
をもたらす。しかしながら、0.3wt.% を超えて添加する
と焼入後極端に脆化する傾向にある。そのため、添加す
る場合には、2.5wt.% を上限とする。
【0019】(2)製造プロセス 本発明では、熱間圧延→冷間圧延→球状化焼鈍の各工程
を経て短時間焼入性に優れた高炭素冷延鋼板が製造され
る。必要によって熱間圧延の後に中間焼鈍が施される。
【0020】(a)熱間圧延条件 熱間圧延は通常の条件で行われる。スラブ加熱温度は特
に規定する必要はなく、慣用の温度範囲で十分である。
一般的には1050〜1300℃の範囲の温度が選択される。ま
たパススケジュール、圧下率も慣用条件で実施して差し
つかえない。ただし巻取温度が450 ℃未満では材質が硬
くなり、引き続き実施される冷間圧延においてエッジ割
れが生じやすくなる。その結果、歩留が低下する。一方
650 ℃を超えると層状パーライトのラメラー間隔が増大
し、引き続く冷間圧延過程でのセメンタイトの破砕が不
十分となる。こうした場合、球状化焼鈍を実施しても炭
化物の分布が不均一となる傾向にあり、また急激に粗大
化する傾向にある。そのため短時間焼入性が劣化するこ
ととなる。こうした場合、後述する表面粗さを規定する
ことによって、ある程度は軽減されるが、650 ℃を超え
てしまうと、本願の目的とする性能を得ることが出来な
くなってしまう。そのため巻取温度を450 〜650 ℃に限
定する。
【0021】(b) 中間焼鈍 短時間焼入性をさらに向上させるためには、中間焼鈍を
実施することが望ましい。こうした処理により、熱間圧
延後の層状セメンタイトの一部がフェライト中に溶け込
んで分断され、引き続く冷間圧延過程での炭化物破砕作
用を促進する効果を有する。しかしながら焼鈍温度が64
0 ℃未満では上記の効果が得られず、一方720 ℃を超え
ると炭化物が凝集粗大化し、短時間焼入性を逆に低下さ
せてしまう。また2時間未満の焼鈍時間では、上記の効
果が得られず、10時間を超えると炭化物凝集粗大化によ
る短時間焼入性の劣化を招く。そのため、中間焼鈍を実
施する場合には、焼鈍温度を640 〜720 ℃とし、焼鈍時
間を2〜10時間にすることが望ましい。
【0022】(c) 冷間圧延 熱間圧延された材料は、圧延ままあるいは必要に応じて
中間焼鈍を実施した後、酸洗などの手段によってその表
面スケールを除去する工程に送られる。引き続き冷間圧
延が実施されるが、ここでの圧延条件が本発明の重要な
ポイントとなる。この冷間圧延過程では、熱間圧延で生
成された層状のセメンタイトを破砕し、細かく分散さ
せ、最終焼鈍過程において生成される球状セメンタイト
の粒径をサブミクロンオーダーにさせるように条件を設
定する必要がある。
【0023】そこで本発明者らは、そうした観点から検
討を実施し、焼入性と冷延率とがある特定の関係をもっ
て関連性が認められること、また巻取温度がそれらの関
係に大きな影響を及ぼすことを発見した。つまり巻取温
度が高くなると焼入性確保のための冷延率が上昇する傾
向にあること、具体的には冷延率(CR)と巻取温度
(CT)が、数3の条件を満たした場合に焼入性が確保
されることを見いだした。
【0024】
【数3】
【0025】これらの関係は、パーライトのラメラー間
隔と圧下によるセメンタイト破砕の度合いとの関連から
導かれるものであり、パーライト間隔が増大するにとも
ない、セメンタイトを必要な分だけ破砕させるための圧
下率も高くなることを示すものである。
【0026】セメンタイトを微細に破砕するためには、
冷延率が大きければ大きいほど有利となるが、反面冷延
率が高くなりすぎると材質が必要以上に硬化し、エッジ
割れが発生する。エッジ割れが発生する冷延率(CR)
も巻取温度(CT)と密接な関係があり、巻取温度(C
T)の上昇とともにエッジ割れが発生する限界冷延率
(CR)が上昇する。そしてその関係が数4の条件を満
たした場合にエッジ割れが防止されることを見いだし
た。
【0027】
【数4】
【0028】こうした関係を図示すると図1のとおりで
ある。図中には、巻取温度(CT)の好適範囲も併せて
しめしている。冷間圧延時に炭化物を砕くのに有効な手
法は、剪断型の塑性変形を導入することである。一般に
冷間圧延では、剪断型塑性変形が導入されやすいが、圧
延時のワークロール径によって炭化物の破砕の程度が異
なる。すなわちワークロール径が小さい程圧延時の変形
が剪断的な塑性変形となり、炭化物がより微細に破壊さ
れるようになる。破砕された炭化物が微細であればある
ほど、球状化焼鈍後における炭化物も微細であり、ひい
ては成形加工後の熱処理時の加熱段階で、炭化物がマト
リックスに短時間で溶解するようになる。そのため、ワ
ークロール径を300mm 以下にすることが好ましい。
【0029】(d) 焼鈍条件 (イ)雰囲気ガス 発明の材料には、SiおよびCrが含有されており、焼きつ
きが生じにくいが、水素濃度が5vol.% 未満では温度分
布が不均一になり焼きつきが起こりやすくなる。したが
って焼鈍における雰囲気ガス中の水素濃度を5vol.% 以
上と規定する。また、酸素濃度が100ppmを超えるとテン
パーカラーが生じ、歩留が低下する。よって酸素を100p
pm以下とすることが好ましい。さらに露点が-10 ℃を超
えてもテンパーカラーが生じやすく、また脱炭層が形成
される。脱炭層の部分は焼入性が極端に劣化し、本発明
が対象とする利用分野の製品には極めて不都合なことに
なる。そのため露点を-10 ℃以下に規定する。さらにま
た、上記以外のガスは残部不活性ガス、たとえば窒素ガ
ス、アルゴンガスなどである。
【0030】(ロ)焼鈍温度・時間 焼鈍温度が640 ℃未満であると炭化物の球状化が不完全
となり、成形加工性が劣化する。一方焼鈍温度が、炭素
含有量0.8wt.% 未満の場合にAc1 点を、炭素含有量0.8w
t.% 以上の場合に750 ℃を超えると、オーステナイトが
生成し、炭化物の固溶量が急激に増大する。このため均
熱後の徐冷過程でふたたびパーライトが生成し、粗大な
炭化物が生成されることになる。このため成形性が劣化
するとともに、短時間均熱焼入性が極端に低下する。そ
のため焼鈍温度を640 ℃以上、炭素含有量0.8wt.% 未満
の場合にAc1 点以下、炭素含有量0.8wt.% 以上の場合に
750 ℃以下と規定した。
【0031】また、焼鈍時間は2時間未満であると、炭
化物の球状化が不完全となり、成形性を著しく劣化させ
る。一方焼鈍時間が25時間を超えると炭化物が凝集粗大
化し、短時間均熱焼入性が劣化する。さらに焼きつきが
発生しやすくなる。そのため焼鈍時間を2〜25時間に限
定する。
【0032】(e) 調質圧延 焼鈍後は調質圧延が実施される。調質圧延条件は特に規
定しない。慣用の条件で実施可能である。ただし本発明
では前述した材料表面の光沢度が重要なポイントとなる
ので、光沢度の調整を調質圧延で行う場合には、光沢度
が前述の範囲となるようロール表面を制御する必要があ
る。
【0033】(f) 最終圧延 調質圧延を施した後、フェライト粒径を粗大化させるた
めの冷間圧延・焼鈍が実施される場合がある。こうした
処理を行っても本発明の効果は損なわれない。
【0034】(g) 光沢度 光沢度は、本発明の重要なポイントであり、短時間均熱
焼入を可能にするキーである。炉に挿入された材料は主
として熱源からの輻射によって加熱されるが、材料表面
から反射される熱量を出来るだけ低減し、熱を効果的に
吸収させる必要がある。これを具体化する手段として本
発明者らは、光沢度を50〜500 にすることが有効である
ことを見いだした。なおここでいう光沢度はJIS Z8741
,方法5,20度鏡面光沢によって規定される値であ
る。
【0035】図2に光沢度と相対硬さ率(H)の関係を
示す。ここでいう相対硬さ率(H)とは、数5に示すと
おり、800 ℃で5秒保持後焼入した材料の硬さ[ (HRC
)ac] を長時間高温に保持した後焼入した材料の硬さ
[ (HRC )max]で除し、それを百分率で示した値をい
う。
【0036】
【数5】
【0037】相対硬さ率(H)は光沢度の減少とともに
上昇し、光沢度が500 以下になると90%以上の値とな
る。一方、光沢度が50未満になると製品加工時にしぼり
きずが発生する。このため光沢度を50〜500 の範囲に限
定する。なお,光沢度が50〜500 の範囲にあり,かつ白
色度が15〜30の範囲にあるとより好ましく,後述する形
状不良率が低くなる効果がもたらされる。
【0038】なお上記光沢度は上記範囲内であれば本発
明の効果は得られるが、表裏のおのおのの値の差が200
以内にあることが望ましい。そうすることによって短時
間均熱時の表裏での炭化物の溶け込み速度がほぼ等しく
なり、焼入焼戻後の製品に形状不良(ねじれ、そりな
ど)が減少する。
【0039】図3は800 ℃、5秒保持後焼入したときの
相対硬さ率(H)と形状不良率の関係を示している。こ
こでいう形状不良率は、焼入焼戻した後の製品にそりが
出た確率である。図から明らかなとおり、短時間焼入性
すなわち相対硬さ率(H)が上昇すると、形状不良率が
減少することがわかる。さらに熱間圧延後の中間焼鈍を
実施したものと実施していないものを併せて示している
が、熱間圧延後の中間焼鈍を実施した場合の方がしない
場合に比較して、形状不良率が低いことがわかる。
【0040】また、光沢度を上記範囲にする方法は特に
規定しない。本材料の製造工程の冷間圧延工程であれば
どの段階で光沢度を調整してもよい。たとえば冷間圧延
以降に施す調質圧延や、フェライトを粗粒化させるため
の20%程度の最終冷延時に付与してもよい。
【0041】
【実施例】表1と表2に示した化学組成を有するSAE107
0 高炭素鋼を、同じく表1と表2に示す各々の条件で製
造し、その性能を評価した。評価項目は (1 )エッジ割れの有無(X:エッジ割れが生じたも
の、○:エッジ割れがなかったもの) (2)テンパーカラーの有無(X:テンパーカラーが生
じたもの、○:テンパーカラーがなかったもの) (3)脱炭層の有無(X:脱炭層が認められたもの、
○:脱炭層がなかったもの) (4)相対硬さ率(短時間焼入性を評価するもので、前
述のとおり) (5)形状不良率(焼入焼戻した後の製品においてソリ
が出た割合) である。
【0042】No. 1から14のものは請求項1の構成要件
を満たすものであり、No. 7から12は請求項2をも満た
すものである。これらのものは短時間焼入性に優れると
ともに、エッジ割れ、テンパーカラー、脱炭層の発生も
なく、耐磨耗性にも優れている。
【0043】熱間圧延後に中間焼鈍を実施したNo. 7か
ら12は、中間焼鈍を実施していないものに比較して形状
不良率がさらに低くなっていることがわかる。また、N
o. 1、7および11は焼鈍時の雰囲気が水素100 %の条
件としたものであるが、他のものに比較して、形状不良
率が低くなっている。さらに表裏の表面粗度の相違、た
とえばNo. 2と3を比較すると、相対硬さ率は同じであ
るが、光沢度の表裏差の少ないNo. 2の方がNo. 3より
も低い形状不良率になっている。
【0044】No. 13と14は、それぞれNo. 6と12を20%
の冷延率で冷間圧延し700 ℃で4時間焼鈍したものであ
る。これらの処理はフェライトを粗粒化させ、材料をよ
り軟質化させるために行われるものであるが、こうした
処理を行っても、特性は同じであることが示されてい
る。これはフェライトを粗粒化し、より軟質化させるプ
ロセスを付与した場合でも、本発明が意図する優れた焼
入性が得られることを示している。またNo. 13*と14*
は、それぞれ光沢度をNo. 13と14と同じにし、白色度の
みを変化させたものであるが,これらの比較から,白色
度が15〜30の範囲にある方が相対硬さ率が高く,かつ形
状不良率が低いことがわかる。
【0045】これに対し、No. 15は熱間圧延時の巻取温
度が請求項1の範囲よりも低く、エッジ割れを生じてい
る。No. 20は熱間圧延時の巻取温度が請求項1の範囲よ
りも高く、相対硬さ率が低く、形状不良率が高くなって
いる。また露点が請求項1の範囲よりも低く、テンパー
カラーが生じるとともに脱炭層が形成されている。No.
16は冷延率(CR)が請求項1の範囲よりも低く、相対
硬さ率の低下、形状不良率の上昇が認められる。No. 16
は酸素濃度も請求項1の範囲を超えており、テンパーカ
ラーの発生も認められた。No. 26は冷延率(CR)が請
求項1の範囲よりも高く、エッジ割れが生じている。
【0046】No. 17は冷延後の焼鈍温度が請求項1の範
囲よりも低く、相対硬さ率の低下、形状不良率の上昇が
認められる。No. 18は冷延後の焼鈍時間が請求項1の範
囲よりも低くなっており、相対硬さ率の低下、形状不良
率の上昇が認められる。No. 22は焼鈍時間が冷延率(C
R)が請求項1の範囲よりも高くなっており、同じく相
対硬さ率の低下、形状不良率の上昇が認められるNo. 19
は水素濃度が請求項1の範囲よりも低く、相対硬さ率の
低下、形状不良率の上昇が認められ、テンパーカラー、
脱炭層の発生も認められる。No. 21は光沢度が請求項1
の範囲よりも高くなっており、相対硬さ率の低下、形状
不良率の上昇が認められる。
【0047】No. 23はSi含有量が請求項1の範囲よりも
低く,焼入後十分な硬さが得られていない。No. 24はCr
含有量が低く,焼鈍後,炭化物が粗大となり,焼入性が
不十分である。No. 25はCr含有量が高く焼鈍時の炭素が
溶けにくく炭化物の分布が不均一になったため,焼入性
が不十分であった。No. 27は特開平4-116137 号公報に
記載される条件で作成したものであるが、炭化物の溶け
残りが少なく、耐磨耗性に劣っている。
【0048】表3と表4は、同様の実験をSK5につい
て実施した結果を示している。これらの表から明らかな
とおり、SAE1070 について行った表1と表2の結果と同
様の結果が得られている。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
【発明の効果】この発明によれば、短時間焼入性が向上
し、形状不良率が減少する高炭素冷延鋼板の製造方法が
提供される。さらに冷間圧延時のエッジ割れ、焼鈍時の
テンパーカラーの発生、脱炭層の発生も防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】熱間圧延時の巻取温度、冷間圧延時の冷延率
(CR)と焼入性・エッジ割れの関係を示す図。
【図2】光沢度と相対硬さ率の関係を示す図。
【図3】形状不良率と相対硬さ率の関係を示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 治郎丸 和三 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 平5−59456(JP,A) 特開 平5−195157(JP,A) 特開 平1−245986(JP,A) 特許2927166(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 9/46 - 9/677 C21D 8/00 - 8/04 C22C 38/00 - 38/60 C21D 1/74 - 1/773

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C; 0.3〜1.3wt.% ,Si; 0.1 〜0.3wt%,
    Cr; 0.05〜0.25wt% 、Mn; 2.0wt.% 以下、Cu: 0.3wt%以
    下,Ni:3.5wt% 以下,W: 2.5wt% 以下,Mo: 0.3wt%以
    下,V: 0.3wt% 以下を含有する鋼を準備する工程と,巻
    取温度(CT)460 〜650 ℃の条件で熱間圧延する工程
    と,酸洗脱スケールする工程と、冷延率(CR)を数1
    に規定される範囲で冷間圧延する工程と,水素5%以
    上,露点-10℃以下,酸素100ppm以下の還元性雰囲気
    で,C <0.8wt.% の場合640 ℃〜Ac1 ,C ≧0.8wt.% の
    場合640 〜750 ℃の焼鈍温度に,2〜25時間の均熱保持
    する焼鈍を行う工程と,調質圧延を行う工程を順次行
    い、調質圧延時もしくは調質圧延以降の冷間圧延時に,
    光沢度(JIS Z8741,20度鏡面光沢)50〜500 の鏡面光沢
    を材料表面に付与することを特徴とする短時間焼入性に
    優れた高炭素冷延鋼板の製造方法。ただし、Mn, Cu, N
    i, W, Mo, Vについては、無添加の場合を含む。 【数1】
  2. 【請求項2】 前記熱間圧延後、酸洗脱スケール前に、
    640 〜720 ℃で2〜10時間中間焼鈍を実施する工程を付
    加した請求項1記載の短時間焼入性に優れた高炭素冷延
    鋼板の製造方法。
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