JP3383841B2 - メタンから直接ホルムアルデヒドを製造する方法 - Google Patents

メタンから直接ホルムアルデヒドを製造する方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ホルムアルデヒド
の製造技術に係わり、詳しくはメタンから直接的にホル
ムアルデヒドを高収率で製造することのできる新規な触
媒と、該触媒を用いたホルムアルデヒドの製造方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】ホルムアルデヒドはメタノールの部分酸
化反応により製造されており、年間100万トン製造さ
れるメタノールの用途の半分はホルムアルデヒドの製造
原料である。このようにして製造されたホルムアルデヒ
ドはフェノール樹脂や尿素樹脂など合成樹脂の原料とし
て、あるいは各種医薬品の原料として利用されている。
【0003】ところで、メタノールは、メタンの水蒸気
改質反応で得られる水素と一酸化炭素から合成されてお
り、従来技術によるホルムアルデヒドの製造プロセスは
下記のフローのようになる。
【0004】メタン→H/CO→メタノール→ホルム
アルデヒド このうち、メタンからのH/CO製造は大量の高温ス
チームを用いる吸熱反応であり、典型的なエネルギー多
消費プロセスの一つとされている。一方、H/COか
らのメタノール合成反応は発熱反応であり、反応熱によ
る暴走を避けるためにCO転化率を10%程度に抑えて
運転しなければならない。さらに、メタノールの部分酸
化によるホルムアルデヒドの製造においてもまた、炭酸
ガスや一酸化炭素の生成を抑えるため、メタノールの転
化率を抑えて運転することが要求されている。このよう
に、従来のホルムアルデヒド製造プロセスはエネルギー
多消費プロセスであると同時に、きわめて運転操作の複
雑なプロセスでもある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ホルムアルデヒドの製
造における上記エネルギー多消費プロセスから脱却する
ためには、新たな製造プロセスの開発、即ち、メタンの
水蒸気改質によるH/CO製造プロセスを経ることな
くホルムアルデヒドを製造できる製造プロセスの開発が
必要とされる。
【0006】化学反応式の上では、メタノールおよびホ
ルムアルデヒドは下式に示すように、メタンの部分酸化
により一段で、すなわちメタンから直接合成される。
【0007】CH4+1/2O2→CHOH、 CH4
2→HCHO+H2O そこで、ここ半世紀以上にわたり世界各国の研究機関で
メタンからメタノールやホルムアルデヒドを直接合成す
る方法が研究されている。この反応を進行させるために
は触媒が必要であることから、研究の大半は有効な触媒
開発に費やされてきた。例えばChemistry Letter, 199
7, p31-32及びCatalysis Today, 45, p29-33(1998)など
には、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化クロムな
どをシリカに担持させた触媒が開示されている。
【0008】しかし、これらの触媒存在下においてもメ
タノールやホルムアルデヒドの収率は極めて低く、通常
は1%にも満たない値である。この分野の研究者の間で
は、メタノールやホルムアルデヒドの収率が4%を超え
ることは困難であり、収率4%がメタンからの直接合成
の壁といわれている。さらに、このプロセスを実用化す
るためには10%以上のメタンの転換率が必要といわれ
ている。このように、従来技術では、メタンからホルム
アルデヒドを実用化に供することができる程度の収率を
もって直接製造する技術は未だ提供されていない。
【0009】本発明は、このような従来技術の問題に鑑
みてなされたものであり、エネルギー多消費プロセスで
あるメタンの水蒸気改質過程を経由することのない、か
つ、環境保全を考慮したアルデヒドの直接合成プロセス
により、高収率でホルムアルデヒドを製造することので
きる新規な触媒と、該触媒を用いたホルムアルデヒドの
製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、メタンの
水蒸気改質過程を必要としないホルムアルデヒドの直接
合成プロセスを開発すべく、メタンの部分酸化活性に優
れた新規触媒の開発と、この触媒存在下における反応条
件について鋭意検討を重ねた結果、以下のような知見を
得た。すなわち、シリカに担持された12モリブド珪酸
よりなるシリカ担持12モリブド珪酸触媒がメタンの部
分酸化活性に優れ、メタンからホルムアルデヒドの直接
合成における触媒として極めて有効である。
【0011】この新規触媒の使用にあたっては、12モ
リブド珪酸(以下、SMAとも表記する)が熱的安定性
に乏しいことから、該SMAの熱分解を抑制しつつホル
ムアルデヒドの合成反応を行うことが要求された。そこ
で、さらなる検討を重ねた結果、本発明者等はさらに以
下の極めて重要な知見を得た。すなわち、この触媒の存
在下、水蒸気雰囲気においてホルムアルデヒドの合成反
応を行うことがSMAの熱分解の抑制に有効であり、ま
た、反応温度に昇温する際の昇温速度を調節することが
極めて重要である。
【0012】本発明は、かかる知見に基づきなされたも
のであり、以下の構成からなることを特徴とする。
【0013】(1) メタンと酸素の混合ガスから触媒
存在下において直接ホルムアルデヒドを製造する方法で
あって、前記触媒としてシリカに担持された12モリブ
ド珪酸を用い、前記触媒存在下における反応温度まで毎
分100℃以上の速度で昇温することを特徴とするホル
ムアルデヒドの製造方法。 (2) (1) に記載のホルムアルデヒドの製造方法に
おいて、前記混合ガス中のメタン/酸素の体積比が9/
1〜4/6の範囲であり、かつ、前記触媒存在下におけ
る反応温度が550〜650℃の範囲であることを特徴
とする方法。(3) (1)または(2) に記載のホルムアルデヒド
の製造方法において、前記メタンと酸素の混合ガスに水
蒸気を、該混合ガスと水蒸気からなる全反応ガスの40
〜80体積%を占めるように供給することを特徴とする
方法。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明の触媒は、メタンを酸素と
反応させることによりメタンからホルムアルデヒドを直
接製造する際に用いられるものであって、該触媒はシリ
カ担体に担持されたSMAにより構成される。
【0015】本発明のシリカ担持SMA触媒は含浸法に
より、以下の方法で調製することができる。すなわち、
SMAを純水に室温で充分に溶解し、これにシリカ粉末
を浸漬し、触媒が乾涸しない程度に水分を乾燥させる。
触媒が乾涸し350℃以上で加熱されると、次式により
触媒中のSMAはシリカと酸化モリブデンに熱分解する
ため、好ましくは水浴上で加熱・撹拌しながら触媒が乾
涸しない程度に水分を乾燥させる。
【0016】H4SiMo1240→SiO2+12MoO
3+2H2O さらに、これを乾燥することにより得ることができる。
【0017】ここで、原料となるSMAは、分子式H4
SiMo1240で表される化合物であり、本発明におい
ては市販のものを用いることができる。担体用シリカ粉
末は高純度であることが好ましく、また、比表面積が5
00m2/g以上であることが好ましい。比表面積が5
00m2/g未満ではSMAがシリカ表面に凝集し、メ
タンの部分酸化反応を阻害し得る。シリカの調製は公知
の方法で行うことができ、例えば、珪酸エチルを加水分
解して得られるシリカゲルを乾燥、焼成する。この際、
加水分解時のpHを変えることにより所望の比表面積を有
するシリカ担体を得ることができる。また、珪酸エチル
の加水分解により得られるシリカに存在する細孔の平均
孔径は約40×10−10mであり、後述する水蒸気雰
囲気下においても平均粒径が約28×10−10mのS
MA分子はこの細孔内に保持される。このため、水溶性
SMAの溶出が抑制され、触媒としての耐久性にも優れ
ている。ただし、担体用シリカはこれらに限定されるも
のではなく、市販のシリカ粉末であっても本発明におい
て好適に使用可能である。
【0018】本発明においては、シリカ粉末に担持させ
るSMA量は、シリカに対して好ましくは10質量%以
上、より好ましくは10〜50質量%、最も好ましくは
25〜40質量%である。SMA担持量が10質量%未
満ではメタンの転化率が低く充分なホルムアルデヒドの
収率が得られない。一方、SMA担持量が50質量%を
超えるとSMA担持量に見合ったホルムアルデヒドの収
率が得られない。これは、後述する水蒸気雰囲気下にお
ける12モリブド珪酸の再生反応:SiO2+12Mo
3+2H2O→H4SiMo1240によるSMAの生成
量が一定値に収束することによる。なお、SMA担持量
は、前記触媒調製方法においてSMA水溶液のSMA濃
度を調整することにより所望の担持量を得ることができ
る。
【0019】本発明の触媒を用いてホルムアルデヒドを
製造するためには、メタンと酸素との混合ガスを本発明
の触媒と接触させる。例えば、所定温度にまで昇温され
た本発明の触媒の床にメタンと酸素との混合ガスを通じ
ることによりメタンと酸素との反応を行わせることがで
きる。既述のごとく本発明により提供される新規触媒
は、シリカに担持されたSMAからなるシリカ担持SM
A触媒であるが、該触媒は熱安定性に乏しく、反応温度
(例えば600℃)に至るまでの過程で分解することが
ある。そのため、本発明のホルムアルデヒドの製造方法
においては、SMA本来の触媒機能を充分に発現させる
べく、シリカ担持SMA触媒の熱分解を抑制しつつ反応
温度にまで昇温し得る技術の開発が所望され、その結
果、本発明者等により以下の極めて興味ある技術が開発
された。
【0020】すなわち、本発明においては、メタンと酸
素の混合ガスに水蒸気を供給し、水蒸気雰囲気下におい
てホルムアルデヒドの合成反応を行うことが好ましい。
これは以下の理由による。一般に、SMAは耐熱性に乏
しく、SMAを350℃以上に加熱すると容易に熱分解
し、シリカと酸化モリブデンを生成する。SMAをシリ
カに担持させることにより、その耐熱性は改善される
が、本発明のホルムアルデヒド合成温度(好ましくは、
後述するように550〜650℃である)で加熱すると
シリカと酸化モリブデンにほぼ完全に熱分解する。しか
し、雰囲気中に水蒸気が充分に存在すると、下に示す反
応式(I)によりSMAが再生されるため、SMAの熱
分解と再生とが平衡的に進行し、反応中はSMAが恒常
的に存在する。 SiO2+12MoO3+2H2O→H4SiMo1240 (I) 言い換えると、水蒸気が共存すると反応中におけるSM
Aの熱分解が抑制され、SMA本来の触媒機能を発現さ
せることができる。
【0021】本発明者等はまた、SMA触媒の昇温速度
に着目し詳細な検討を行った結果、水蒸気雰囲気下にお
けるSMAの分解・再生と昇温速度との間に極めて興味
ある関係があることを見出した。すなわち、本発明にお
いては、シリカ担持SMA触媒を反応温度にまで加熱す
るにあたり、毎分100℃以上の速度で昇温加熱するこ
とが好ましい。これは以下の理由による。上述したSM
Aの熱分解についてさらに詳細に説明すると、これまで
に報告されている論文(例えばH. Hu et al, J. Phys.
Chem., 99, 10897 (1995)、C. R.Deltcheff et al., J.
Catal., 125, 292 (1990) 等)によれば、SMAの熱
分解は以下のようにして進行する。
【0022】
【化1】
【0023】従って、ホルムアルデヒドの合成反応温度
(例えば600℃)ではSMAは完全に酸化モリブデン
(α-MoO)に分解してしまうが、既述の通り、水
蒸気雰囲気下では上記式(I)によりSMAが再生され
るため、SMAの分解・再生が繰り返され、見掛け上、
SMAの分解が抑制されたことになる。しかし、式
(I)の反応は分解により生成した酸化モリブデン粒子
の大きさにより、反応速度が著しく異なる。酸化モリブ
デン粒子が極めて小さい場合(平均粒径20×10
−10m以下)は、式(I)の反応速度は大きくSMA
を再生するが、粒子が大きくなると(I)の反応速度が
極めて小さくなり、SMAの再生が阻害される。
【0024】そこで問題となるのはシリカ担持SMA触
媒の昇温速度である。SMA触媒を反応温度までゆっく
りと昇温すると、(II)式により示されるSMA分解の
各過程がほぼ平衡を保ちつつ進行するので各過程で生成
する分解中間体の成長が進み、最終分解生成物である酸
化モリブデンも粒子径の大きな結晶となる。しかし、昇
温速度を大きくすると各分解過程は非平衡的に進行する
ため粒子成長が進まず、最終生成物の酸化モリブデンも
粒子径の小さな結晶となる。この場合は式(I)に従
い、水蒸気雰囲気下においてSMAを容易に再生するこ
とができる。
【0025】この知見は極めて重要であり、SMA触媒
を反応温度にまで昇温する過程において有効に利用され
る。すなわち、SMA触媒の昇温操作の設定の仕方によ
っては、反応温度に到達した段階ですでにSMAは粒子
径の大きな酸化モリブデンとなり、SMAを再生するこ
とが困難となる。そこで、SMA本来の触媒機能を充分
に発現させるためには、特定の昇温速度以上で該触媒の
作用温度にまで昇温することが所望される。これによ
り、所定の反応温度に到達した段階でも酸化モリブデン
は超微粒子(好ましくは平均粒径20×10−10m以
下の超微粒子)として存在し、(I)式に従いSMAを
容易に再生することができる。本発明に係るホルムアル
デヒドの製造において、シリカ担持SMA触媒の存在下
における反応温度までの昇温速度は、好ましくは毎分1
00℃以上である。
【0026】本発明における反応は、混合ガス中のメタ
ン/酸素の体積比が9/1〜4/6の範囲であれば好適
に進行させることができる。ただし、メタン転化率及び
ホルムアルデヒド選択性の観点から効率的にホルムアル
デヒドを得るには、メタン/酸素の体積比が7/3〜6
/4の範囲にあることがより好ましい。
【0027】さらに、本発明におけるホルムアルデヒド
の合成反応は、反応温度が550〜650℃の範囲にお
いて好適に進行させることができる。反応温度が550
℃より低いとメタンの転化率が低下し、また650℃よ
り高いと炭酸ガスや一酸化炭素の選択性が増大するた
め、いずれもホルムアルデヒドの収率が減少する。より
好ましい反応温度は580〜620℃である。なお、こ
れは以下に想定するような反応機構によるためと考えら
れる。 CH4(g)+H+(ad)→CH5 +(ad) (1) O2(g)+2s→2O-(ad) (2) CH5 +(ad)+2O- (ad)→CH3++H2O(g)+2s (3) H2O(g)+2s→OH- (ad)+H+(ad) (4) CH3+(ad)+OH- (ad)→HCHO(g)+H2O(g)+2s (5) CH3O(ad)+2.5O- (ad)→CO2(g)+1.5H2O(g)+3.5s (6) CH3O(ad)+1.5O- (ad)→CO(g)+H2O(g)+2.5s (7) ここで、(ad)は吸着状体を、sはSMA触媒上の酸素活
性点を示す。ホルムアルデヒドの生成は(1)〜(5)の反応
によるが、(6)及び(7)の反応も併発し、炭酸ガスや一酸
化炭素が生成する。また、H+(ad)はSMA上に存在す
るプロトンで、SMA1分子には4個のH+(ad)が存在
する。メタンの部分酸化によりホルムアルデヒドを合成
するためには吸着メトキシ基(CH3O(ad))の生成が
不可欠であるが、SMA触媒ではH+(ad)の働きにより
カルボニウムカチオン(CH5 + (ad))を経由する機構
が有力である。反応温度が低いときは(1)によるメタン
の活性化吸着が進行せず、また、反応温度が高温になる
と(6)や(7)の副反応が促進されるために、メタノールや
ホルムアルデヒドの生成が阻害されるものと考えられ
る。
【0028】また、本発明においては、水蒸気を、メタ
ンと酸素の混合ガスと水蒸気からなる全反応ガスの40
〜80体積%を占めるように供給することができる。た
だし、メタン転化率及びホルムアルデヒド選択性の観点
から効率的にホルムアルデヒドを得るには全反応ガスの
60〜70体積%を占めるように供給することがより好
ましい。
【0029】
【実施例】以下、シリカにSMAを担持させることによ
り形成され、メタンの部分酸化活性に優れた新規な触媒
と、該触媒の存在下におけるホルムアルデヒドの製造方
法に関し、実施例を挙げながら順次説明する。
【0030】まず、本発明における触媒原料として用い
た担体用シリカ粉末の調製法について調製例1として説
明する。
【0031】調製例1.担体用シリカ粉末の調製 本発明に係るシリカSMA触媒の製造に用いる高純度の
シリカを調製するため、珪酸エチルを加水分解して得ら
れるシリカゲルを110℃で10時間乾燥し、600℃
で3時間焼成して触媒担体とした。この際、加水分解時
のpHを変えることにより下表に示す比表面積の異なる
3種類のシリカ担体を調製した。
【表1】
【0032】次に、上記シリカ担体を用いたシリカ担持
SMA触媒の調製について、実施例1として説明する。
【0033】実施例1.シリカ担持SMA触媒の調製 シリカ担持SMA触媒は含浸法により、以下の手順で調
製した。まず、市販のSMA粉末5gを純水50mlに室
温で充分に溶解し、この溶液を蒸発皿に移した後20g
の前記シリカ粉末を浸漬した。これを水浴上で約50℃
で加熱・撹拌しながら、触媒が乾涸しない程度に水分を
蒸発させた。次いで、水分を蒸発させた触媒を約110
℃に保った乾燥器に入れ、さらに10時間乾燥した。こ
のようにして調製した20質量%のSMAを担持させた
触媒を密封性ポリエチレン袋に入れ、デシケーター中で
保存した。
【0034】つぎに、本実施例1に従って調製したシリ
カ担持SMA触媒の活性評価方法、およびそれに用いた
活性評価用反応装置について、実施例2として説明す
る。
【0035】実施例2.シリカ担持SMA触媒の活性評
価方法及び活性評価反応装置 図1は本発明におけるシリカ担持SMA触媒の活性評価
用反応装置を示す概略図である。図1において、メタン
ボンベ1、酸素ボンベ2と水供給器4は、配管を通して
ガス混合器3に接続され、ガス混合器3は、配管20を
通して反応管11に接続されている。配管20は、途中
で分岐され、分岐配管21はバルブ8に連通されてい
る。反応管11は、出口に配管22が連通されており、
分岐配管22a、22bを通してそれぞれガスクロマト
グラフィー9、10に接続されている。前記分岐配管2
1は、バルブ8を介して配管22に連通されている。そ
して、反応管11には、触媒6が充填されている。ヒー
ター7は、反応管11に付設されている。熱電対5は、
反応管11内に挿入されている。
【0036】ボンベ1にはメタン、ボンベ2には酸素が
充填されており、通常はそれぞれ1.8L/h及び0.
2L/hでガス混合器3に導入される。水供給器4から
供給された水は250℃に加熱されたガス混合器3中で
水蒸気となり、混合器11に充填してあるセラミックス
片によりメタン及び酸素と完全に混合される。ここで、
水供給器4として、反応中の脈流を防止するため、液体
クロマトグラフィー用の圧入装置を使用している。水蒸
気の供給量は、0.2L/h〜4L/hの範囲で自由に
調整することができる。混合ガスは分岐配管22a、2
2bを経て、それぞれ2台のガスクロマトグラフィー
9,10により組成分析される。ガスクロマトグラフィ
ー9のカラムにはカーボシーブ(Carbosieve)S−IIが
充填されており、主としてメタン、一酸化炭素、炭酸ガ
スを測定する。また、ガスクロマトグラフィー10のカ
ラムにはAPS−201が充填されており、主としてメ
タノール、ホルムアルデヒド、水を測定する。分岐配管
21に介挿されたバルブ8を閉じると、混合ガスは直径
10mmの反応管11に充填してある1.5gの触媒層
6に導入される。触媒層6は550〜650℃の範囲に
温度設定されたヒーター7により100〜150℃/分
の昇温速度で加熱され、熱電対5により温度が測定され
る。触媒層6を通過した生成ガスも混合ガスと同様にガ
スクロマトグラフィー9、10により組成分析される。
生成ガスの主成分はホルムアルデヒドであるが、ホルム
アルデヒド量の5質量%程度のメタノールも共存するた
め、以下ではこれらを併せてメタノール/ホルムアルデ
ヒドと表記する。
【0037】ここで、触媒の活性は、メタンの転化率、
生成ガス中のメタノール/ホルムアルデヒド、炭酸ガス
及び一酸化炭素の選択率を、以下の式により算出して評
価した。 メタン転化率=P/導入メタンのモル数 生成物Xの選択率=生成物Xのモル数/P ただし、P:(メタノール/ホルムアルデヒド+CO+
CO2)の総モル数 X:メタノール/ホルムアルデヒド、CO又はCO2のモ
ル数 次に、水蒸気添加量がシリカ担持SMA触媒活性に及ぼ
す影響について、実施例3として説明する。
【0038】例3として説明する。
【0039】実施例3.触媒活性の水蒸気添加量依存性 調製例1において調製したシリカ2を用い、実施例1に
従って27質量%のSMAを担持させた触媒(以下、
「27質量%SMA/SiO2」と略記する)を調製
し、実施例2の方法により触媒活性を評価した。触媒の
充填量は1.5g、メタン流量は1.8L/h、酸素流
量は0.2L/h、反応温度を600℃、該反応温度ま
での昇温速度100℃/分とし、水蒸気添加量を0.5
L/hから3.5L/hまで変化させて、メタン転化率
と、メタノール/ホルムアルデヒド、CO及びCO2の選
択性を算出した。また、これらの値からメタノール/ホ
ルムアルデヒドの収率も算出した。以上の結果を表2に
示すとともに、図2に水蒸気量の関数として表した。
【0040】
【表2】 この結果より、反応ガス中の水蒸気量が増加するととも
に、メタン転化率及びメタノール/ホルムアルデヒドの
選択率が増大し、メタノール/ホルムアルデヒドの収率
が増加することが判明した。特に、水蒸気分圧が60%
以上になるとメタン転化率が急激に上昇し、メタノール
/ホルムアルデヒド選択率も80%を超え、メタンを効
率的にメタノール/ホルムアルデヒドに変換しているこ
とが確認された。そして、メタノール/ホルムアルデヒ
ド収率は8%を超え、この分野で収率の壁といわれた4
%を遥かに凌駕していることも確認された。なお、生成
物であるメタノール/ホルムアルデヒド中のメタノール
生成量は、総ての水蒸気分圧下においてホルムアルデヒ
ド生成量の5質量%以下であり、これは以下に示す各実
施例においても同様であった。
【0041】このように、ホルムアルデヒド収率の向上
にメタン/酸素混合ガスへの水蒸気の添加はきわめて効
果的であり、特に水蒸気分圧が60%以上になるとその
添加効果が著しく高くなることが判明した。そこで、触
媒作用に対する水蒸気の役割を明らかにすべく、実施例
4において水蒸気共存下におけるSMA触媒の構造につ
いて、赤外分光法により検討した。
【0042】実施例4.触媒作用に対する水蒸気の役割 赤外分光法に用いた試料は実施例3で使用した27質量
%SMA/SiO2であり、これをKBr粉末で希釈し
赤外分光用ペレット試料に成形した。次いで、これを加
熱型赤外分光用セルに入れて測定した。なお、本実施例
における昇温速度は100℃/分とした。図3aにこの
ペレットを空気中で加熱したときの赤外吸収スペクトル
の変化を示す。ここで、907cm-1と954cm-1
観測される2本の吸収ピークはSMAに固有のものであ
るが、400℃以上に加熱するとこれらのピーク強度は
減少し、新たに1000cm-1に1本の吸収ピークが観
測される。これは酸化モリブデン(MoO3)に特徴的
な吸収ピークである。試料を600℃まで加熱するとS
MAに帰属される吸収ピークはほぼ消滅し、MoO 3
帰属される吸収ピークのみが観測される。
【0043】上述のように、SMAは耐熱性に乏しく、
SMAを350℃以上に加熱すると次式に従い容易に分
解し、シリカと酸化モリブデンを生成する。
【0044】H4SiMo1240→SiO2+12MoO
3+2H2O これに対し、本発明では、図3aの結果からSMAをシ
リカに担持することにより、その耐熱性が改善されるこ
とが示唆された。しかし、その場合であっても、600
℃で加熱するとシリカと酸化モリブデンにほぼ完全に熱
分解する。
【0045】図3bに、完全に熱分解した試料を室温ま
で降温し、水蒸気雰囲気下に12時間放置した後、観測
した吸収スペクトルを示す。ここでは、1000cm-1
の吸収ピークは観測されず、907cm-1と954cm
-1の吸収ピークが観測された。このことは、水蒸気処理
によりSMAが次式に従い再生されたことを示唆してい
る。なお、シリカ粉末と酸化モリブデン粉末を水中で混
合・撹拌すると、少量のSMAが生成することは既に学
術誌にも記載されており(J.M.Tatibouet, etal., J.Ch
em.Soc., Chem.Commun., 1260(1988), C.R.Deltcheff,
et al., J.Catal., 125, 292.(1990)など)、公知の事
実である。
【0046】 SiO2+12MoO3+2H2O→H4SiMo1240 (I) そして、再生されたSMAも加熱すると図3aの場合と
同様に、400℃から熱分解が始まり600℃では完全
に熱分解し、シリカと酸化モリブデンを生成する。
【0047】すなわち、実施例3のような水蒸気雰囲気
下では、SMAの熱分解と再生とが平衡的に進行し、反
応中はSMAが恒常的に存在する。言い換えると、水蒸
気が共存すると反応中におけるSMAの分解が抑制され
ることになる。以上のことから、水蒸気の役割は反応中
にSMAを再生し、SMA本来の触媒機能を発現させる
ことにあると考えられる。次に、SMA担持量が及ぼす
触媒活性に対する影響について実施例5において説明す
る。
【0048】実施例5.触媒活性のSMA担持量依存性 実施例3により、水蒸気添加量が3.0〜3.5L/h
(水蒸気分圧60〜64%)のときにメタノール/ホル
ムアルデヒドの収率がきわめて高くなることが確認され
た。そこで、水蒸気添加量を3.5L/hとし、実施例
3と同様にメタン流量1.8L/h、酸素流量0.2L
/h、反応温度600℃、該反応温度までの昇温速度1
00℃/分の反応条件下でシリカ粉末2に担持するSM
Aの量を変えて実験を行い、SMA担持量の変化による
触媒活性の変化を観測した。SMA担持量を6〜36質
量%の範囲で変化させ、その結果を表3及び図4に示
す。
【0049】
【表3】
【0050】この結果より、SMAの担持量を変えても
メタノール/ホルムアルデヒドの選択性は大きく変わる
ことはないが、担持量が増えるとメタンの転化率が増大
するため、メタノール/ホルムアルデヒドの収率が増加
するということがわかった。特に、SMA担持量が18
質量%を超えると10%程度のメタノール/ホルムアル
デヒド収率が得られた。次に、メタン/酸素混合ガス中
のメタン/酸素の組成比が触媒活性に及ぼす影響につい
て、実施例6として説明する。
【0051】実施例6.触媒活性のメタン/酸素の組成
比依存性 メタンの部分酸化によるホルムアルデヒドの直接合成
は、次の反応式により進行する。 CH4+O2→HCHO+H2O したがって、化学量論的には反応に用いるメタン/酸素
混合ガス中のメタン/酸素の組成比は1/1であること
が望ましい。これまでに説明した実施例は、メタン/酸
素の組成比をすべて9/1として行った実験である。そ
こで、27質量%SMA/SiO2触媒1.5gを用
い、水蒸気流量3.5L/h、反応温度600℃、該反
応温度までの昇温速度100℃/分において、メタン/
酸素の組成を9/1〜4/6の範囲で変えることにより
触媒活性の評価を試みた。ただし、メタン/酸素混合ガ
スの流量は合計2.0L/hで一定とした。その結果を
表4及び図5に示す。
【0052】
【表4】
【0053】メタン/酸素中の酸素を、9/1から増や
すにつれてメタノール/ホルムアルデヒド収率も増大
し、メタン/酸素比が6/4になるとメタノール/ホル
ムアルデヒド収率は17.25%まで増大した。この
間、生成物中のメタノール/ホルムアルデヒド選択性は
ほとんど変化せず、85%以上を保っている。また、炭
酸ガスや一酸化炭素の選択性はいずれも10%以下であ
った。メタン/酸素比を4/6にするとメタンの転化率
は減少し、同時に炭酸ガスの選択性が増大するため、メ
タノール/ホルムアルデヒドの収率は減少する。ただ
し、この場合であってもメタノール/ホルムアルデヒド
の収率は10.22%ときわめて高かった。次に、シリ
カ担持SMA触媒の調製時に用いる担体用シリカの比表
面積が触媒活性に及ぼす影響について、実施例7として
説明する。
【0054】実施例7.触媒活性のシリカ比表面積依存
SMA1分子の大きさは直径28×10−10m程度で
あるので、1分子の断面積はほぼ、600×10−20
2程度になる。また、SMAの分子量は約1824で
あるから、27質量%SMA/SiO2触媒ではシリカ
1gに0.27gのSMA、すなわち、0.9×10
20個のSMA分子が担持されていることになる。0.
9×1020個のSMA分子は540m2の面積を占める
ことになる。これまでに使用してきたシリカ担体はシリ
カ粉末2であり、その比表面積は調製例1に示したよう
に570m2/gであった。以上の計算から、27質量
%SMA/SiO2触媒ではシリカ担体の表面全体をS
MA分子が、ほぼ単分子層で覆っていることになる。こ
れ以上の量のSMA分子を担持すると、SMA分子は2
層、3層となってシリカ表面に存在することになる。実
施例5の結果では、SMA担持量が27質量%以上にな
るとメタノール/ホルムアルデヒド収率はそれほど変化
せずほぼ一定となっている。すなわち、シリカ表面全体
を単分子層で覆うのに必要な量のSMAを担持すれば、
そこで触媒活性はほぼ飽和に到達する、ということが示
唆される。
【0055】本実施例では、調製例1で説明した比表面
積の異なる3種類のシリカ粉末を用いて27質量%SM
A/SiO2触媒を、実施例1に従って調製し、その触
媒活性を評価した。ここで、混合ガス中のメタン/酸素
比を9/1とし、水蒸気流量3.5L/h、反応温度6
00℃、該反応温度までの昇温速度100℃/分におい
て反応を行った。その結果を表5及び図6に示す。
【0056】
【表5】
【0057】この結果より、比表面積の最も少ないシリ
カ粉末1ではメタンの転化率が低く、また、メタノール
/ホルムアルデヒドの選択性も低いため、メタノール/
ホルムアルデヒドの収率も他の触媒に比べて著しく小さ
な値となっている。シリカ粉末1を用いた触媒ではSM
Aがシリカ表面に凝集していると考えられ、このことか
らSMAの凝集はメタンの部分酸化には好ましくない、
といえる。上記実施例では反応を600℃で行ってきた
が、次に、反応温度が触媒活性に及ぼす影響について、
実施例8として説明する。
【0058】実施例8.触媒活性の反応温度依存性 本実施例では、反応温度550〜650℃(昇温速度1
00℃/分)の範囲において、触媒としてシリカ粉末2
を用いて調製した27質量%のSMA/SiO 2触媒
1.5gを使用し、実施例7と同様の反応条件下で反応
温度による触媒活性の評価を行った。その結果を表6及
び図7に示す。
【0059】
【表6】
【0060】これにより、反応温度550〜650℃の
範囲において本発明に係るホルムアルデヒドの合成反応
は好適に進行することがわかった。特に、反応温度が5
80〜620℃の範囲においてメタン転化率、メタノー
ル/ホルムアルデヒド選択率はともに高く、高効率でメ
タノール/ホルムアルデヒドを得ることができた。次
に、触媒の耐久性について、実施例9として説明する。
【0061】実施例9.シリカ担持SMA触媒の耐久性 本実施例においては、27質量%SMA/SiO2触媒
1.5gを用いて耐久試験を行った。表7および図8
は、メタン流量1.8L/h、酸素流量0.2L/h、
水蒸気流量3.5L/hの条件の下、反応温度600℃
で85時間におよぶ耐久試験を行った結果を示す。ま
た、表8および図9は、メタン流量1.2L/h、酸素
流量0.8L/h、水蒸気流量3.5L/hの条件の
下、反応温度600℃で330時間におよぶ耐久試験を
行った結果を示す。いずれも反応温度までの昇温速度は
100℃/分である。
【0062】
【表7】
【0063】
【表8】
【0064】この結果より、本触媒は330時間にわた
ってメタノール/ホルムアルデヒド収率を安定的に維持
することが確認された。SMAは水溶性であるが、水蒸
気雰囲気下においても触媒層から溶出することなくシリ
カ細孔内に保持され、耐久性にも優れていることがわか
った。なお、表8にはまた、炭素に関する物質収支が示
してある。炭素の物質収支は次式により求めた。
【数1】
【0065】物質収支の値は90〜110の範囲にあ
り、分析は適正に行われていることを示している。
【0066】上記いずれの実施例においても反応温度ま
での昇温速度は毎分100℃として行ってきたが、次
に、昇温速度が触媒活性に及ぼす影響について、実施例
10および11として説明する。実施例10.昇温速度と触媒の分解抑制効果との関係 内径10mmの石英製反応管に1.5gの27質量%S
MA/SiO2触媒を充填し、ここにメタン/酸素混合
ガス(メタン/酸素体積比=6/4)を2.0L/h
で、また水蒸気を3.0L/hで導入した。触媒層の温
度を毎分40℃、60℃および100℃の速度で600
℃まで昇温し、600℃で15分間保持したあと室温ま
で急冷した。急冷過程で触媒層温度が300℃になった
時点で水蒸気の供給を停止した。室温まで冷却した触媒
を反応管から取り出し、X線回折によりSMA/SiO
2触媒の分解の様子を観察した。
【0067】図10に各速度で600℃まで昇温したあ
とのSMA/SiO2触媒のX線回折パターンを示し
た。図中の矢印は酸化モリブデンに特徴的な回折ピーク
であることを示している。これより、毎分40℃および
60℃と比較的ゆっくり昇温した触媒ではSMAが分解
し、酸化モリブデンの大きな結晶粒子を生成しているこ
とが判明した。一方、毎分100℃と急激に昇温したS
MA触媒では酸化モリブデンの生成が少なく、ほとんど
のSMA触媒がそのままの形で存在していることを示唆
している。また、図中に*印で示した回折ピークはβ-
モリブデン(MoO・HO)に帰属されるピークで
あり、SMA触媒を600℃から室温まで冷却する過程
でSMAの分解により生成したものである。
【0068】以上の結果から、昇温過程でシリカ担持S
MA触媒の分解を抑制するためには反応温度に至るまで
の昇温速度を速くすることが必要であり、好ましくは少
なくとも100℃/分程度の昇温速度が所望される。
【0069】実施例11.触媒活性の昇温速度依存性 内径10mmのステンレス製反応管に1.5gの27質
量%SMA/SiO2触媒を充填し、ここにメタン/酸
素混合ガス(メタン/酸素体積比=6/4)を2.0L
/hで、また水蒸気を3.0L/hで導入した。触媒層
の温度を毎分40℃、60℃および100℃の速度で6
00℃まで昇温し、そのままメタンの部分酸化反応を開
始した。反応生成物はホルムアルデヒド、炭酸ガスおよ
び一酸化炭素であり、これらの定量分析はガスクロを用
い、実施例2の方法により触媒活性を評価した。結果を
表9および図11に示した。
【0070】
【表9】
【0071】表9および図11から毎分40℃および6
0℃で昇温したSMA/SiO2触媒は、毎分100℃
で昇温した触媒に比べてメタンの転化率が著しく低下し
ている。これは本反応の活性種がSMAであるので、毎
分40℃および60℃で昇温した触媒ではSMAが分解
していることを示唆している。また、反応生成物の分布
を見ると、毎分40℃および60℃で昇温した触媒では
炭酸ガスの割合が多くなっている。本反応をシリカ担持
モリブデン触媒を用いて行うと炭酸ガスの生成量が多く
なることから、毎分40℃および60℃で昇温した触媒
ではSMAが分解し、酸化モリブデンが生成しているこ
とを意味している。これらの結果、触媒を反応温度まで
ゆっくり昇温した場合はSMAが酸化モリブデンに分解
し、シリカ担持酸化モリブデン触媒を用いた場合と同様
の反応結果になることが判明した。
【0072】一方、SMA/SiO2触媒を毎分100
℃で昇温した場合は350時間にわたって高活性を維持
し、メタン転化率が約20%、ホルムアルデヒド選択率
は約85%であった。また、炭酸ガスの生成は少なく生
成物中の7%程度であった。このことは、シリカ担持S
MA触媒を毎分100℃という高速度で昇温すると、昇
温過程においてもSMAは分解せず(分解して酸化モリ
ブデンを生成しても、すぐにSMAを再生する)、本反
応の活性種としての役割を果たしている、ということを
示唆している。
【0073】これは実施例9の結論を支持するものであ
り、シリカ担持SMA触媒を毎分100℃あるいはそれ
以上の高速度で昇温すると、昇温過程におけるSMA触
媒の分解を抑制することができることが判明した。
【0074】
【発明の効果】以上のように、本発明によればメタンか
ら15%を超える収率でホルムアルデヒドを直接合成で
きるため、従来のエネルギー多消費型プロセスからの脱
却を示唆するものであり、化学工業の省エネルギー化に
多大の貢献が期待されるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 シリカ担持12モリブド珪酸触媒の活性評価
に用いた活性評価反応装置の概略説明図。
【図2】 触媒活性に及ぼす水蒸気供給量依存性を示す
グラフ。
【図3】 27重量%SMA/SiO2触媒の熱分解挙
動を観測した赤外スペクトルを示す図。
【図4】 触媒活性に及ぼすSMA担持量依存性を示す
グラフ。
【図5】 触媒活性に及ぼすメタン/酸素比依存性を示
すグラフ。
【図6】 触媒活性に及ぼす担体用シリカの比表面積依
存性を示すグラフ。
【図7】 触媒活性に及ぼす反応温度依存性を示すグラ
フ。
【図8】 触媒の耐久性を示すグラフ(メタン/酸素比
は9/1)。
【図9】 触媒の耐久性を示すグラフ(メタン/酸素比
は6/4)。
【図10】 種々の昇温速度で600℃まで加熱した触
媒のX線回折パターンを示す図。
【図11】 触媒活性に及ぼす昇温速度依存性を示すグ
ラフ。
【符号の説明】
1…メタンボンベ、2…酸素ボンベ、3…ガス混合器、
4…水供給器、5…熱伝対、6…触媒層、7…ヒータ
ー、8…ボンベ、9,10…ガスクロマトグラフィー、
11…反応管、20、21、22、22、22…配
フロントページの続き (72)発明者 木戸 亜矢子 静岡県富士市天間1563−3 (56)参考文献 特開 平6−320003(JP,A) 特開 平9−118647(JP,A) 特開 平1−279854(JP,A) 特開 平5−9135(JP,A) 特開 昭59−25387(JP,A) 特開 昭58−92629(JP,A) 特開 昭63−79849(JP,A) 特開 平3−258742(JP,A) 特表 昭62−502537(JP,A) 上野晃史,触媒によるメタンからメタ ノールおよびアルデヒドの直接合成,エ クセルギー再生産の学理 1997年度研究 成果報告書,1998年 1月,P.28−33 K.Aoki et al.,Dir ect conversion of methane into metha nol over MoO3/SiO2 catalyst in an ex cess amount of wat er vapo,Catallysis Today,1998年,45,1/4,29 −33 Miguel A.Banares, et al.,Genesis and Stability of Sili comolybdic Acid on Silica−Supported Molybdenum Oxide C atalysis,JOURNAL O F CATALYSIS,1995年,Vo l.155,No.2,p.249−255 杉野友美、外3名,メタンの部分酸化 によるホルムアルデヒドの直接合成,触 媒,1999年,Vol.41 No.6, p.432−434 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B01J 21/00 - 38/74 C07B 61/00 C07C 45/33 C07C 47/04 C07C 47/048 JICSTファイル(JOIS) WPI(DIALOG)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 メタンと酸素の混合ガスから触媒存在下
    において直接ホルムアルデヒドを製造する方法であっ
    て、前記触媒としてシリカに担持された12モリブド珪
    酸を用い、前記触媒存在下における反応温度まで毎分1
    00℃以上の速度で昇温することを特徴とするホルムア
    ルデヒドの製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のホルムアルデヒドの製
    造方法において、前記混合ガス中のメタン/酸素の体積
    比が9/1〜4/6の範囲であり、かつ、前記触媒存在
    下における反応温度が550〜650℃の範囲であるこ
    とを特徴とする方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載のホルムアルデ
    ヒドの製造方法において、前記メタンと酸素の混合ガス
    に水蒸気を、該混合ガスと水蒸気からなる全反応ガスの
    40〜80体積%を占めるように供給することを特徴と
    する方法。
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ES00110907T ES2223346T3 (es) 2000-03-27 2000-05-24 Procedimiento para producir formaldehido directamente a partir de metano.
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