JP3380593B2 - 均一弱磁性ステンレス鋼板及びその製造方法 - Google Patents

均一弱磁性ステンレス鋼板及びその製造方法

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信義 岡登
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  • Manufacturing Of Steel Electrode Plates (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、硬貨やゲーム用メダル
等の素材として用いられ、また、それら硬貨等の自動識
別装置等に悪影響を与えないために、均一弱性性である
ことを要求される種類のステンレス鋼及びその製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、遊技機用等のメダル用素材とし
て、ステンレス鋼が多用されるようになってきた。メダ
ル素材に求められるコイニング性に優れたステンレス鋼
として、従来は、フェライト系ステンレスが主流であっ
た。特公昭60−8288にはコイン用ステンレス鋼と
してのフェライト系ステンレス鋼板の製造方法が開示さ
れている。
【0003】しかし、磁性を用いてコイン識別を行うコ
イン選別装置を通るコイン用としては、強磁性フェライ
ト系ステンレスは不適である。そこで、非磁性であるオ
ーステナイト系ステンレスのコイニング加工性等を改良
した新鋼種が提案されている(特開平4−6665
1)。また、オーステナイト中にフェライトを少量析出
させた弱磁性の二相系ステンレス鋼も提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、オース
テナイトマトリックス中にフェライト相を適量・均一に
分散させることは容易ではない。そのような組織となる
よう組成を調整したインゴットを溶製しても、製造され
た板(圧延品)にフェライト相の異方性が強く表れるか
らである(図1参照)。そのため、磁性にも圧延異方性
が生じ、板から打ち抜いたコインの磁性が異なることと
なり、コイン識別上の問題が生じる。
【0005】本発明は、二相系ステンレス鋼の上述の問
題点を解決し、磁性の圧延異方性が極めて少ないコイニ
ング加工にも適したステンレス鋼を提供することを目
的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、均一分散し
たフェライト相を得るためには、造塊・圧延段階ではオ
ーステナイト単相組織の材料中に、圧延後にフェライト
相を現出させることが一つの手段として採用しうるとの
新たな着想の元、多くの実験を重ねることによって本発
明を完成させるに至った。
【0007】本発明のコイニング加工性に優れた均一弱
磁性ステンレス鋼は、C:≦0.03w%、N:≦
0.05w%、Si:≦2.0w%、Mn:≦2.0w
%、Ni:7〜16w%、Cr:16〜25w%を含有
し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、かつ、 Nieq =Ni+30C+0.5Mn+0.5Cu+20N Creq =Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb+1.5Ti で規定される等価Ni 量及び等価Cr 量が、 0.8Creq −6≦Nieq ≦1.1Creq −9、 Nieq ≧−0.89Creq +26.3 という条件を満たし、オーステナイトマトリックス中に
針状のフェライト相が3〜5v%均一に分布しているこ
とを特徴とする。
【0008】本発明の均一弱磁性ステンレス鋼の製造
方法は、上述の成分のステンレス鋼を、実質的な圧延加
工後に、1000〜1150℃で加熱し材料をいったん
オーステナイト単相とし、次に、オーステナイト単相と
なった材料を、1375〜1425℃で加熱し、フェラ
イト相を析出させることを特徴とする。
【0009】
【作用】通常のステンレス鋼板の製造では、溶解−鋳造
−熱間圧延−冷間圧延−焼鈍酸洗等の工程をとる。オー
ステナイト(γ)−フェライト(α)2相ステンレス鋼
を製造する時には、たとえば1100℃の温度で状態図
上α+γ領域に入る成分設計をする。しかし、このよう
にして製造した材料は図1に示すような圧延異方性をも
つ。圧延異方性の問題を解決するため発明者らが鋭意検
討を重ねた結果、いったん状態図のγループ領域で加熱
しγ単相として製造した材料を、γループ温度以上のα
+γ領域で加熱することによって異方性のない材料が得
られることがわかった。このようにして得た材料は、図
2に示すようなオーステナイト相の結晶粒界に沿って針
状のフェライト相が均一に析出した異方性のない組織を
有する。
【0010】本発明のステンレス鋼は、オーステナイ
トマトリツクス中にフェライト相が針状に形成されてお
り、その量は3〜50w%である。そのため、コイニン
グ後においても、均一な弱磁性を保つ。また、C、Nの
含有量が低いため、硬度も低くコイニング性が良い。
【0011】本発明のステンレス鋼における各成分の
作用と含有量限定の理由又は好ましい含有量及びその理
由は次のとおりである。
【0012】Nieq とCreq との関係:基本的には、材
料の構成成分は、状態図上のγループにかかるものであ
ればよいが、適正なフェライト相の量を得るため、ま
た、マルテンサイト相を一定以下に抑えるため、以下
(図3参照)に示す制限がある。Nieq ≧0.8Creq
−6とする。Nieq がこの値未満であると、フェライト
相の析出量が50%を超えてしまい、弱磁性を保てなく
なるからである。
【0013】Nieq ≦1.1Creq −9とする。Nieq
がこの値を超えると、フェライト相が析出しないか、も
しくは、オーステナイト相が安定になるのでフェライト
相を析出させるのに必要な時間が非常に長くなって経済
的でないからである。Nieq ≧−0.89Creq +2
6.3とする。Nieq がこの値未満のとき、熱処理後に
既にマルテンサイトが多量に生成して材料の硬さが上昇
するため、コイニング性が劣化するからである。
【0014】コイン用材としては、磁性の他に、コイニ
ング性を考慮して軟質であることが求められる。従来、
コイン用材を軟質にするための方法として、固溶強化元
素を極力低くすることが提案されているが、本発明では
従来より高温の熱処理を施すことにより、内部応力の解
放がさらに進み、軟質にすることもできるため、成分に
よる限定範囲を広くすることができる。また、本発明で
は、溶製後に脱C、脱Nすることもできるので、さらに
軟質な材料を得ることもできる。
【0015】C:≦0.03w%である。固溶強化によ
る硬さ上昇を許容でき、また、一般の溶製技術で安定し
て達成できる範囲だからである。やや製造技術上の困難
を伴うが、C:≦0.005w%が好ましい。コイン用
材の場合のコイニング性を向上させるためには、固溶強
化元素であるCを低減することが好ましいからである。
製造方法の一例としての本発明の脱C熱処理によりこの
低減を達成しうる。
【0016】N:≦0.05w%である。また、N:≦
0.015w%が好ましい。上述のCにおける場合と同
様である。
【0017】Si:≦2.0w%である。材料の軟質さ
の点からは低いほうが望ましい。しかし、Siは脱酸材
として製造上添加するのが一般的であり、2.0w%ま
では許容できる。 Mn:≦2.0w%以下である。材料の硬さの点から
は、特に制限はない。しかし、この値を超えてMnを含
有すると、材料の耐食性が劣化するので、2.0w%を
上限とする。
【0018】Ni:7〜16w%である。オーステナイ
ト相を得るために不可欠な元素であり、7%以上の添加
が必要である。一方、経済的観点から16w%以下とす
る。 Cr:16〜25w%である。材料の耐食性を維持する
ために16w%以上必要である。硬さの上昇、加工性の
劣化、及び、経済性の観点から、上限は25w%とす
る。
【0019】Mo:3.0w%以下含有してもよい。材
料の耐食性が向上するからである。ただし、その効果が
飽和するのと経済的な観点から上限は3.0w%とす
る。 Cu:3.0w%以下含有してもよい。オーステナイト
生成元素であり、材料の硬さ及び加工硬化を低下させる
点で好ましい。しかし、熱間加工性が劣化するので、上
限は3.0w%とする。
【0020】Ti:1.0w%以下含有してもよい。T
iは結晶粒の微細化を図り、成形後の肌荒れを防止する
作用がある。しかし、1.0%より多く添加してもその
効果は飽和するため、1.0%以下とする。 Nb:1.0w%以下含有してもよい。上述のTiにお
ける場合と同様である。
【0021】本発明の製造方法においては、オーステナ
イトマトリツクス中に均一なフェライト相を得るため
に、材料をいったんオーステナイト単相とする。この熱
処理(加熱)条件は、通常のオーステナイト鋼の製造条
件と同じで、例えば1000〜1150℃である。素材
として市販のオーステナイト系ステンレス鋼を用いても
よい。次に、オーステナイト単相となった材料を、1
75〜1425℃で加熱し、フェライト相を析出させ
る。1375℃未満でもフェライト相は析出するが、長
時間の保持が必要となり経済的でない。また、1425
℃を超える高温は、材料が半溶融状態となるので採用で
きない。なお、温度の上限は、成分系によって融点が変
化するため多少下がる場合がある。
【0022】本発明の製造方法の熱処理は高温で行うた
め、材料が酸化するおそれが大いにある。低酸素ポテン
シャル雰囲気中、不活性ガス中、あるいは、還元雰囲気
中で処理することが望ましい。また、高温であるため材
料強度が著しく低下するため熱処理中は平坦な耐火物性
板の上にのせる、座屈しないためにガイドを設けるなど
の対策も適宜行うことが望ましい。
【0023】熱処理を露点0℃以下の水素雰囲気中で行
うと、材料中の脱C、脱Nが起こり、低C、N材を得る
ことができる。雰囲気中のHは材料中のC、Nと反応し
てCH4 、NH3 などのガスとして除去される。雰囲気
中の露点が十分に低くない場合には、材料表面に比較的
厚い酸化皮膜が生じ、脱C、脱N反応を妨害する。
【0024】本発明の製造方法の熱処理は、実質的な圧
延加工後に行われる。圧延加工前に熱処理を行うと、析
出したフェライト相に圧延異方性が生じてしまうからで
ある。ただし、そのような事態を招かない程度の圧下量
の圧延(例テンパー圧延)であれば、熱処理後に行って
もよい。なお、パンチングやコイニング加工をした後
に、熱処理を行ってもよい。
【0025】
【実施例】溶解−鋳造−熱間圧延−焼鈍酸洗−冷間圧延
の工程により製造した1.5mm厚の鋼板に1100℃均
熱1min の焼鈍と酸洗を施し、オーステナイト単相とし
た後に、温度1375〜1425℃、保持時間30〜1
20min の熱処理を施した。熱処理にはプッシャー式加
熱炉を用い、平坦なアルミナ板上に材料をのせて行なっ
た。雰囲気は、Ar及びH2 (D.P.5℃)、H2
(D.P.−5℃)とした。得られた鋼板の熱処理後の
フェライト量、組織形態及び硬さを測定した結果を表1
に示す。なお、フェライト量は、フェライトメーターに
よる指示値を示したものである。
【0026】
【比較例】フエライト量約10%となるよう成分調整
し、溶解−鋳造−熱間圧延−焼鈍酸洗−冷間圧延−焼鈍
酸洗の工程により1.5mm厚の鋼板を製造した。得られ
た鋼板に種々の熱処理を施した後のフェライト量、組織
形態及び硬さを測定した結果を表1に示す。なお、表中
の比較例6は本発明の熱処理を施していないものであ
る。
【0027】
【表1】
【0028】実施例1〜6はいずれも本発明請求項1の
条件を満足するものであり、圧延異方性のない針状のα
相組織が得られた。硬さもHv135以下と柔らかくな
っている。熱処理後のC、N量については、熱処理雰囲
気がArの実施例1あるいは露点+5℃のH2 の実施例
2については、C、N量の低下は見られない。しかし、
露点−5℃のH2 雰囲気で処理した実施例3において
は、C量が0.016%から0.003%へ、N量は
0.030%から0.010%へと大いに低減されてい
る。その結果、硬さもHv110と極めて軟質になって
いる。また、実施例3のα量は、実施例1、2と比較し
て2倍と多量になっている。
【0029】実施例4、5は、実施例1、2、3と較べ
て熱処理前のC、N量がかなり高いが、露点−5℃のH
2 雰囲気中での熱処理後には、実施例3と同程度まで
C、N量は低下している。実施例6は、オーステナイト
生成元素であるC、N量の大幅な低下により、フェライ
トの生成量が増加している。実施例7、8、9は、C
u、Mo、Ti、Nbを添加したものである。熱処理後
には磁性、硬さともコイン用材料として適したものとな
っている。
【0030】比較例1はNieq が高すぎてオ−ステナイ
ト単相組織となっている。比較例2および3は、Creq
、Nieq とも低く、マルテンサントが生成するため、
著しく磁性を帯び弱磁性が失なわれるとともに硬さも硬
くなっている。
【0031】比較例4は、熱処理温度を1350℃まで
下げると、120分間の保持でもフェライトは、わずか
2%しか生成せず、十分な磁性が得られないことを示し
ている。比較例5は、Creq が高くフェライト相が多す
ぎ弱磁性が得られない。比較例6は、従来型の2相ステ
ンレス鋼であり、層状のフェライト相が存在するため磁
性の圧延異方性がみられるものである。
【0032】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
の均一弱磁性ステンレス鋼は以下の効果を発揮する。
針上のフェライト相が圧延方向とは無関係に均一に
分布しているので、磁気特性に圧延異方性がない。その
ため、磁気識別を行うコイン用材料等として好適であ
る。 硬度が低いのでコイニング性にも優れる。特
に、本発明の脱C,脱N熱処理等により製造される極低
C、N材は一層低硬度である。
【図面の簡単な説明】
【図1】フェライト相が均一に分散している本発明の実
施例(表1のNo.4)のミクロ組織を示す写真であ
る。
【図2】フェライト相の圧延異方性がはっきりと表れて
い従来のステンレス鋼のミクロ組織を示す写真である。
【図3】本発明の均一弱磁性ステンレス鋼の、Nieq と
Creq との関係を示す図である。
フロントページの続き (72)発明者 池上 雄二 神奈川県川崎市川崎区小島町4番2号 日本冶金工業株式会社 研究開発本部 技術研究所内 (56)参考文献 特開 平4−272158(JP,A) 特開 平4−259385(JP,A) 特開 昭58−64356(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 302 C22C 38/00 303 C21D 8/12

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:≦0.03w%、N:≦0.05w
    %,Si:≦2.0w%、Mn≦2.0w%,Ni:7
    〜16w%、Cr:16〜25w%を含有し、残部Fe
    及び不可避的不純物からなり;かつ、 Nieq =Ni+30C+0.5Mn+0.5Cu+20N Creq =Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb+1.5Ti で規定される等価Ni 量及び等価Cr 量が、 0.8Creq −6≦Nieq ≦1.1Creq −9、 Nieq ≧−0.89Creq +26.3 という条件を満たし; オーステナイトマトリックス中に針状のフェライト相が
    3〜50v%均一に分布していることを特徴とするコイ
    ニング加工性に優れた均一弱磁性ステンレス鋼
  2. 【請求項2】 Mo:≦3.0w%、Cu:≦3.0w
    %、Ti:≦1.0w%、Nb:≦1.0w%、の1種
    又は2種以上をさらに含有する請求項1記載の均一弱磁
    性ステンレス鋼
  3. 【請求項3】 上記Cの含有量が0.005w%以下、
    上記Nの含有量が0.015w%以下である請求項2又
    は3記載の均一弱磁性ステンレス鋼
  4. 【請求項4】 C:≦0.03w%、N:≦0.05w
    %,Si:≦2.0w%、Mn≦2.0w%,Ni:7
    〜16w%、Cr:16〜25w%を含有し、残部Fe
    及び不可避的不純物からなり;かつ、 Nieq =Ni+30C+0.5Mn+0.5Cu+20N Creq =Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb+1.5Ti で規定される等価Ni 量及び等価Cr 量が、 0.8Creq −6≦Nieq ≦1.1Creq −9、 Nieq ≧−0.89Creq +26.3 という条件を満たし; オーステナイトマトリックス中に針状のフェライト相が
    3〜50v%均一に分布しているコイニング加工性に優
    れた均一弱磁性ステンレス鋼板の製造方法であ って、 実質的な圧延加工後に、1000〜1150℃で加熱し
    材料をいったんオーステナイト単相とし、次に、オース
    テナイト単相となった材料を、1375〜1425℃で
    加熱し、フェライト相を析出させることを特徴とする均
    一弱磁性ステンレス鋼板の製造方法。
  5. 【請求項5】 上記1375〜1425℃で材料を加熱
    する際に、露点0℃以下の水素雰囲気中において、脱
    C、脱N熱処理を行うことを特徴とする請求項4記載の
    均一弱磁性ステンレス鋼板の製造方法。
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