JP2023144727A - マルテンサイト系ステンレス熱間圧延線材及びその製造方法、並びにマルテンサイト系ステンレス焼鈍線材 - Google Patents

マルテンサイト系ステンレス熱間圧延線材及びその製造方法、並びにマルテンサイト系ステンレス焼鈍線材 Download PDF

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Abstract

【課題】十分な焼入れ硬さを備え、耐遅れ破壊性に優れる高C含有のマルテンサイト系ステンレス鋼線材を提供する。【解決手段】本発明のマルテンサイト系ステンレス熱間圧延線材は、所定の鋼組成を有し、残留オーステナイト量が5%以上であり、硬さが700Hv以下であることを特徴とする。本発明のマルテンサイト系ステンレス焼鈍線材は、所定の鋼組成を有しゆうし、断面組織において直径50nm以上の炭化物数密度が1.4個/μm2以下である領域を5%以上有し、引張強さが800MPa以下であることを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、耐遅れ破壊性に優れるマルテンサイト系ステンレス熱間圧延線材及びマルテンサイト系ステンレス焼鈍線材(以下、これらをあわせて「マルテンサイト系ステンレス鋼線材」ということもある。また、マルテンサイト系ステンレス熱間圧延線材及びマルテンサイト系ステンレス焼鈍線材を、それぞれ、単に「熱間圧延線材」、「焼鈍線材」ということもある。)に関する。
従来、マルテンサイト系ステンレス鋼線材は強度と耐食性が要求される部位、例えば軸受などに使用されている。より高い強度が求められる場合、C含有量の増加によってマルテンサイトの強度を向上することがよく行われている。一方、高強度になるほど耐遅れ破壊性が悪化する懸念がある。特に線材製造時において、熱間圧延後の冷却時にマルテンサイト変態すること、また残留応力が導入することにより、熱間圧延後から焼鈍で軟質化するまでの間に遅れ破壊が発生しやすい。
耐遅れ破壊性を向上するために、特許文献1には成分調整と窒化処理により表面のマルテンサイトとオーステナイトの量を調整することが開示されている。特許文献2には熱間加工後、緩冷却により残量オーステナイト量を増加することが開示されている。特許文献3には残留オーステナイト量を20体積%以上とすることが開示されている。
特許第4252145号公報 特許第3765277号公報 特開2003-113449号公報
耐遅れ破壊性の向上に残留オーステナイトを用いることは有効と考えられるが、上記のような従来技術はC含有量が低い鋼に関するものであり、C含有量が高い鋼に対しては効果が十分得られない。また、C含有量が低いため焼入れ硬さも足りず製品に要求される特性を満足できない。そこで本発明は、これらの課題を解決し、C含有量が高く、耐遅れ破壊性に優れるマルテンサイト系ステンレス鋼線材を提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するため、以下の構成を要旨とする。
(1)質量%で、C:0.300~1.000%、Si:2.00%以下、Mn:0.01~2.00%、P:0.10%以下、S:0.020%以下、Ni:0.01~2.00%、Cr:10.5~18.0%、Mo:0.01~2.00%、Cu:0.01~2.00%及びN:0.001~0.200%を含有し、残部がFe及び不純物である鋼組成を備え、残留オーステナイト量が5%以上であり、硬さが700Hv以下であることを特徴とするマルテンサイト系ステンレス熱間圧延線材。
(2)質量%で、C:0.300~1.000%、Si:2.00%以下、Mn:0.01~2.00%、P:0.10%以下、S:0.020%以下、Ni:0.01~2.00%、Cr:10.5~18.0%、Mo:0.01~2.00%、Cu:0.01~2.00%及びN:0.001~0.200%を含有し、残部がFe及び不純物である鋼組成を有するマルテンサイト系ステンレス熱間圧延線材の焼鈍材であって、断面組織において直径50nm以上の炭化物数密度が1.4個/μm2以下である領域を5%以上有し、引張強さが800MPa以下であることを特徴とするマルテンサイト系ステンレス焼鈍線材。
(3)前記鋼組成が、前記Feの一部に替えて、質量%で、Nb:0~1.00%、Ti:0~1.00%、V:0~1.00%、B:0~0.100%、Al:0~1.00%、W:0~2.00%、Ga:0~0.050%、Co:0~1.00%、Sn:0~1.00%、Ta:0~0.50%、Ca:0~0.050%、Mg:0~0.020%、Zr:0~0.020%及びREM:0~0.050%からなる群から選ばれる1種又は2種以上を含有するものであることを特徴とする前記(1)のマルテンサイト系ステンレス熱間圧延線材。
(4)前記鋼組成が、前記Feの一部に替えて、質量%で、Nb:0~1.00%、Ti:0~1.00%、V:0~1.00%、B:0~0.100%、Al:0~1.00%、W:0~2.00%、Ga:0~0.050%、Co:0~1.00%、Sn:0~1.00%、Ta:0~0.50%、Ca:0~0.050%、Mg:0~0.020%、Zr:0~0.020%及びREM:0~0.050%からなる群から選ばれる1種又は2種以上を含有するものであることを特徴とする前記(2)のマルテンサイト系ステンレス焼鈍線材。
(5)前記線材の断面の形状が円であり、前記円の直径が5.5~30mmである、前記(1)又は(3)のマルテンサイト系ステンレス熱間圧延線材。
(6)前記線材の断面の形状が円であり、前記円の直径が5.5~30mmである、前記(2)又は(4)のマルテンサイト系ステンレス焼鈍線材。
(7)前記(1)又は(3)のマルテンサイト系ステンレス熱間圧延線材を製造する方法であって、粗圧延から仕上圧延までの全圧延工程での温度が900~1250℃であり、圧延後400℃までの冷却速度が50~300℃/minであることを特徴とするマルテンサイト系ステンレス熱間圧延線材の製造方法。
本発明によれば、耐遅れ破壊性に優れるマルテンサイト系ステンレス鋼線材を得ることができる。
本発明者らは耐遅れ破壊性に優れる線材を得るために、種々の検討を行った。その結果、以下の(a)~(c)の知見を得た。
(a)熱間圧延後の残留オーステナイト量が多くなるよう制御することで、硬さが低下し、耐遅れ破壊性が向上する。
(b)熱間圧延後に焼鈍を施すと、熱間圧延線材に存在した残留オーステナイトは、炭化物が粗く析出したフェライト相に変態し、マルテンサイトは炭化物が密に析出したフェライト相に変態する。これは残留オーステナイトとマルテンサイトの組織の大きさの違いに依存する。したがって、焼鈍線材における炭化物数密度が小さい領域の割合は、熱間圧延線材における残留オーステナイトの割合に対応しており、炭化物数密度が小さい領域の割合が多いほど熱間圧延後の耐遅れ破壊性が高かったことになる。ここで、残留オーステナイトとマルテンサイトから変態した際の炭化物数密度の境界は1.4個/μm2であった。
(c)上述の熱間圧延後の残留オーステナイト量を制御するためには、化学組成、製造時の条件、具体的には、鋳片加熱温度、粗圧延から仕上圧延までの全圧延工程での温度、圧延後400℃までの冷却速度などを調整するのが望ましい。
本発明は上記の知見に基づいてなされたものである。また、本発明の好ましい一実施形態を詳細に説明する。以降の説明では、本発明の好ましい一実施形態を本発明として記載する。以下、本発明の各要件について詳しく説明する。
本発明に係る熱間圧延線材の製造方法では、粗圧延から仕上圧延までの全圧延工程での温度(以下、単に「全圧延工程での温度」という。)を制御する。具体的には、全圧延工程での温度を900~1250℃とする。全圧延工程での温度が900℃を下回ると、炭化物析出に伴い固溶Cが減少し残留オーステナイトが減少するためである。1250℃を超えると、脱炭に伴い固溶Cが減少し残留オーステナイトが減少するためである。全圧延工程での温度は950~1200℃とするのがより好ましい。
本発明に係る熱間圧延線材の製造方法では、圧延後400℃までの冷却速度を制御する。具体的には、圧延後400℃までの冷却速度を50~300℃/minとする。50℃/min未満であると、炭化物が過剰に析出し残留オーステナイト量が低下、300℃/min超であると、マルテンサイト変態が促進し残留オーステナイト量が低下するためである。好ましくは100~250℃/minである。
本発明に係る熱間圧延線材では、残留オーステナイト量と硬さを制御する。具体的には、残留オーステナイト量を5%以上、硬さを700Hv以下とするのが好ましい。残留オーステナイト量が5%を下回ると、硬さが700Hvを超え、耐遅れ破壊性が低下するためである。残留オーステナイト量は10%以上、硬さは650Hv以下とするのがより好ましく、残留オーステナイト量は15%以上、硬さは600Hv以下とするのがさらに好ましい。
本発明に係る焼鈍線材では、炭化物数密度を制御する。具体的には、断面組織において直径50nm以上の炭化物数密度が1.4個/μm2以下である領域を5%以上とするのが好ましい。炭化物数密度が1.4個/μm2以下である領域が5%を下回ると、熱間圧延線材時点の残留オーステナイト量も5%を下回っており、耐遅れ破壊性が低下していた可能性があるためである。炭化物数密度が1.4個/μm2以下である領域は10%以上とするのがより好ましく、15%以上とするのがさらに好ましい。
本発明に係る焼鈍線材では、引張強さを制御する。具体的には、引張強さを800MPa以下とするのが好ましい。引張強さが800MPaを超えると、伸線等の次加工の製造性が低下するためである。引張強さは750MPa以下とするのがより好ましく、700MPa以下とするのがさらに好ましい。
本発明に係る熱間圧延線材及び焼鈍線材では、圧延と垂直方向の断面形状は円となる。前記円の直径は、5.5~30mmの範囲とするのが好ましい。直径が5.5mm未満又は30mm超であると、全圧延工程での温度を900~1250℃とすることができず、残留オーステナイト量が減少するためである。直径は25mm以下とするのがより好ましく、20mm以下とするのがさらに好ましい。
各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
Cはマルテンサイトの強度を得るため、また残留オーステナイト量を得るために0.300%以上添加する。しかしながら、1.000%を超えて添加すると硬さが上昇し、耐遅れ破壊性が低下する可能性があるため、1.000%以下とする。好ましくは0.400~0.800%である。
Siは鋼の脱酸に必要な元素である。最終製造物の熱間圧延線材及び焼鈍線材にSiが含有される必要はないが、通常は脱酸に用いたSiが残留するので、脱酸の効果を十分に得るために、最終製造物に含有されるSiを0.01%以上としてもよい。Siが2.00%を超えて含有されると硬さが上昇し、耐遅れ破壊性が低下する可能性があるため、2.00%以下とする。好ましくは0.10~1.50%である。
Mnはマルテンサイトの強度を得るため、また残留オーステナイト量を得るために0.01%以上添加する。しかしながら、2.00%を超えて添加すると硬さが上昇し、耐遅れ破壊性が低下する可能性があるため、2.00%以下とする。好ましくは0.10~1.50%である。
P、Sは原料から不純物として混入するが、過剰に含有すると耐食性が低下するとともに製造性が著しく低下するため、Pについては0.10%以下、Sについては0.020%以下とする。好ましくはPについては0.08%以下、Sについては0.015%以下である。
Niは鋼の靭性を高め、耐遅れ破壊性を高めるために、0.01%以上添加する。しかしながら、2.00%を超えて添加すると硬さが上昇し、耐遅れ破壊性が低下する可能性があるため、2.00%以下とする。好ましくは0.10~1.50%である。
Crは耐食性を高めるために、10.5%以上添加する。しかしながら、18.0%を超えて添加すると残留オーステナイト量が低下し、耐遅れ破壊性が低下する可能性があるため、18.0%以下とする。好ましくは12.0~16.0%である。
Moは耐食性を高めるために、0.01%以上添加する。しかしながら、2.00%を超えて添加すると硬さが上昇し、耐遅れ破壊性が低下する可能性があるため、2.00%以下とする。好ましくは0.05~1.50%である。
Cuは耐食性を高めるために、0.01%以上添加する。しかしながら、2.00%を超えて添加すると硬さが上昇し、耐遅れ破壊性が低下する可能性があるため、2.00%以下とする。好ましくは0.05~1.50%である。
Nはマルテンサイトの強度を得るため、また残留オーステナイト量を得るために0.001%以上添加する。しかしながら、0.200%を超えて添加すると硬さが上昇し、耐遅れ破壊性が低下する可能性があるため、0.200%以下とする。好ましくは0.005~0.150%である。
本発明のステンレス鋼は、上述してきた元素以外は、Fe及び不純物からなる化学組成から構成される。さらに、前記成分組成に加え、Feの一部に替えて、選択的に以下に示す元素を含有してもよい。
Nbは、添加しなくてもよい。Nbは炭窒化物を形成するので、Cr炭化物の生成を抑制し、Cr欠乏層の生成を抑制する。この結果、Nbは粒界腐食を防止する効果を有する。しかしながら、Nbを過剰に含有させると、粗大炭窒化物によって靭性を低下させたり、残留オーステナイト量を低下させたりすることで、耐遅れ破壊性が低下する可能性があるため、Nb含有量は1.00%以下とする。Nb含有量は0.50%以下とするのがより好ましく、0.20%以下とするのがさらに好ましい。一方、上記効果を得るためには、Nb含有量は0.001%以上とするのが好ましい。
Tiは、添加しなくてもよい。Tiは炭窒化物を形成するので、Cr炭化物の生成を抑制し、Cr欠乏層の生成を抑制する。この結果、Tiは粒界腐食を防止する効果を有する。しかしながら、Tiを過剰に含有させると、粗大炭窒化物によって靭性を低下させたり、残留オーステナイト量を低下させたりすることで、耐遅れ破壊性が低下する可能性があるため、Ti含有量は1.00%以下とする。Ti含有量は0.50%以下とするのがより好ましく、0.20%以下とするのがさらに好ましい。一方、上記効果を得るためには、Ti含有量は0.001%以上とするのが好ましい。
Vは、添加しなくてもよい。Vは炭窒化物を形成するので、Cr炭化物の生成を抑制し、Cr欠乏層の生成を抑制する。この結果、Vは粒界腐食を防止する効果を有する。しかしながら、Vを過剰に含有させると、粗大炭窒化物によって靭性を低下させたり、残留オーステナイト量を低下させたりすることで、耐遅れ破壊性が低下する可能性があるため、V含有量は1.00%以下とする。V含有量は0.50%以下とするのがより好ましく、0.20%以下とするのがさらに好ましい。一方、上記効果を得るためには、V含有量は0.001%以上とするのが好ましい。
Bは、添加しなくてもよい。添加すれば熱間加工性及び耐食性を向上させる効果を有する。しかしながら、Bを過剰に含有させると、硬さが上昇し、耐遅れ破壊性が低下する可能性がある。このため、B含有量は0.100%以下とする。B含有量は0.050%以下とするのがより好ましく、0.020%以下とするのがさらに好ましい。一方、上記効果を得るためには、B含有量は0.0001%以上とするのが好ましい。
Alは、添加しなくてもよい。添加すれば脱酸を促進させ、介在物清浄度レベルを向上させる効果を有する。しかしながら、Alを過剰に含有させると、硬さが上昇し、耐遅れ破壊性が低下する。また、粗大介在物によって耐遅れ破壊性が低下する可能性がある。このため、Al含有量は1.00%以下とする。Al含有量は0.50%以下とするのがより好ましく、0.10%以下とするのがさらに好ましい。一方、前記効果を得るためには、Al含有量は0.001%以上とするのが好ましい。
Wは、添加しなくてもよい。Wは炭窒化物を形成するので、Cr炭化物の生成を抑制し、Cr欠乏層の生成を抑制する。この結果、Wは粒界腐食を防止する効果を有する。しかしながら、Wを過剰に含有させると、粗大炭窒化物によって靭性を低下させたり、残留オーステナイト量を低下させたりすることで、耐遅れ破壊性が低下する可能性があるため、W含有量は2.00%以下とする。W含有量は1.00%以下とするのがより好ましく、0.50%以下とするのがさらに好ましい。一方、上記効果を得るためには、W含有量は0.001%以上とするのが好ましい。
Gaは、添加しなくてもよい。添加すれば耐食性を向上させる効果を有する。しかしながら、Gaを過剰に含有させると、熱間加工性が低下する可能性があるため、Ga含有量は0.050%以下とする。Ga含有量は0.010%以下とするのがより好ましく、0.005%以下とするのがさらに好ましい。一方、上記効果を得るためには、Ga含有量は0.0001%以上とするのが好ましい。
Coは、添加しなくてもよい。添加すれば耐食性を向上させる効果を有する。しかしながら、Coを過剰に含有させると、硬さが上昇し、耐遅れ破壊性が低下する可能性があるため、Co含有量は1.00%以下とする。Co含有量は0.50%以下とするのがより好ましく、0.10%以下とするのがさらに好ましい。一方、上記効果を得るためには、Co含有量は0.001%以上とするのが好ましい。
Snは、添加しなくてもよい。添加すれば耐食性を向上させる効果を有する。しかしながら、Snを過剰に含有させると、硬さが上昇し、耐遅れ破壊性が低下する。また、Snの粒界偏析によって耐遅れ破壊性が低下する可能性があるため、Sn含有量は1.00%以下とする。Sn含有量は0.50%以下とするのがより好ましく、0.10%以下とするのがさらに好ましい。一方、上記効果を得るためには、Sn含有量は0.001%以上とするのが好ましい。
Taは、添加しなくてもよい。添加すれば耐食性を向上させる効果を有する。しかしながら、Taを過剰に含有させると、硬さが上昇し、耐遅れ破壊性が低下する可能性があるため、Ta含有量は0.50%以下とする。Ta含有量は0.10%以下とするのがより好ましく、0.05%以下とするのがさらに好ましい。一方、上記効果を得るためには、Ta含有量は0.001%以上とするのが好ましい。
Ca、Mg、Zr及びREMは、添加しなくてもよい。添加すれば脱酸効果を有する。しかしながら、これら各元素を過剰に含有させると、硬さが上昇し、耐遅れ破壊性が低下する可能性がある。また、粗大介在物によって耐遅れ破壊性が低下する。このため、Ca:0.050%以下、Mg:0.020%以下、Zr:0.020%以下、REM:0.050%以下とする。Ca含有量は、0.010%以下とするのがより好ましく、0.005%以下とするのがさらに好ましい。Mgは、0.010%以下とするのがより好ましく、0.005%以下とするのがさらに好ましい。Zrは、0.010%以下とするのがより好ましく、0.005%以下とするのがさらに好ましい。REMは、0.010%以下とするのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、Ca:0.0002%以上、Mg:0.0002%以上、Zr:0.0002%以上、REM:0.0002%以上とするのが好ましい。なお、REMとは、ランタノイドの15元素にY及びScを合わせた17元素の総称である。これらの17元素のうちの1種以上を鋼に含有させることができ、REM含有量は、これらの元素の合計含有量を意味する。
本発明の線材の化学組成において、残部はFe及び不純物である。ここで「不純物」とは、線材を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
本発明に係る線材の好ましい製造方法を説明する。上記のように、残留オーステナイト量を確保するため、全圧延工程での温度を900~1250℃に限定する。また、圧延後400℃までの冷却速度を50~300℃/minに限定する。他の製造方法は、例えば、以下のような製造方法により本発明に係る線材を安定して得ることができる。
上記成分組成を有する鋼を溶製し、所定の径を有する鋳片に鋳造したのち、鋳片に対し熱間の線材圧延を行い、マルテンサイト系ステンレス熱間圧延線材を得る。圧延前の鋳片加熱温度は、1000~1250℃とするのが好ましい。1000℃未満であるとCが未固溶、1250℃超であると脱炭により残留オーステナイト量が低下するためである。好ましくは1050~1200℃である。
得られたマルテンサイト系ステンレス熱間圧延線材を焼鈍し、マルテンサイト系ステンレス焼鈍線材を得る。圧延後の焼鈍温度は750~1000℃とするのが好ましい。750℃未満であると、再結晶不足により引張強さが高くなり、1000℃超であると、脱炭により焼入れ硬さが不足するためである。好ましくは800~950℃である。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
表1、表2に記載の化学組成を有する鋼を溶製した。鋼の溶製の際には、ステンレス鋼の安価な溶製プロセスであるAOD溶製を想定し、100kgの真空溶解炉にて溶解し、直径180mmの鋳片に鋳造した。その後、下記の製造条件により直径14mmの線材とした。以下の各表において、本発明範囲から外れる数値に下線を付している。
以下に条件を記載する。具体的には、鋳造した鋳片に、鋳片加熱温度1150℃で加熱を行い、全圧延工程での温度範囲を1050~1150℃で直径14mmまで線材圧延を施し、400℃までの冷却速度200℃/minで冷却し、温度900℃で焼鈍を施した。
Figure 2023144727000001
Figure 2023144727000002
得られた線材について、下記の方法に従って、熱間圧延線材の残留オーステナイト量、硬さ、遅れ破壊有無、及び、焼鈍線材の炭化物数密度が1.4個/μm2以下である領域、引張強さ、遅れ破壊有無を評価した。
熱間圧延線材の残留オーステナイト量は、熱間圧延線材の中心からφ5.0mmで圧延方向に20mmの試験片を採取し、直流磁束計にて1.0×104Oeの磁場を付与した時の飽和磁化値を測定し、以下の式(A)にて求めた。飽和磁化値の測定には、直流磁化特性試験装置(メトロン技研(株)製)を用いた。
残留オーステナイト量(vol.%)={1-(σs/σ)}×100・・・(A)
ここで、σsは熱間圧延線材の飽和磁化値(T)、σはγが100%マルテンサイト変態した時の飽和磁化値(下記式(B)で表される計算値)を示す。下記式(B)中のCreqは下記式(C)で表される。
σ=1.83-0.03×Creq・・・(B)
Creq=Cr+1.8×Si+Mo+0.5×Ni+0.9×Mn
+3.6(C+N)+1.85×Al・・・(C)
熱間圧延線材の硬さは、ビッカース硬度計にて荷重1kgfで測定した。
熱間圧延線材又は焼鈍線材の遅れ破壊による縦割れ有無は、線材直径方向断面を樹脂埋め及び鏡面研磨後、光学顕微鏡観察により、断面のいずれかの部位に、長さ50μm以上の割れが見られた場合、遅れ破壊による縦割れ有りと判断した。
炭化物数密度が1.4個/μm2以下である領域の割合は、焼鈍線材の圧延方向断面を樹脂埋め及び鏡面研磨後、逆王水にて2分のエッチングを行い、SEMにてD/4位置を50000倍にてランダムに100枚を撮影し、1視野の面積4.3μm2に含まれる直径50nm以上の炭化物数が6個以下の場合、すなわち、炭化物数密度が1.4個/μm2以下である場合を熱間圧延線材時点での残留オーステナイトに対応するとして、100視野あたりの該当数にて算出した。
引張強さは、JIS Z 2241の引張試験での引張強さにて評価した。
以下、表3、表4にまとめて結果を示す。
Figure 2023144727000003
Figure 2023144727000004
No.1~36は、本発明の規定を満足し、耐遅れ破壊性が良好であった。一方、本発明の規定を満足しないNo.37~53は耐遅れ破壊性が不良又は耐食性不足であった。
[実施例2]
続いて、表1の鋼種Uの鋳片から種々の径を有する線材を作製した。得られた線材について、前記方法で、熱間圧延線材の残留オーステナイト量、硬さ、遅れ破壊有無、及び、焼鈍線材の炭化物数密度が1.4個/μm2以下である領域、引張強さ、遅れ破壊有無を評価した。以下、表5にまとめて結果を示す。
Figure 2023144727000005
No.54~59は、本発明の規定を満足し、耐遅れ破壊性が良好であった。
[実施例3]
続いて、表1の鋼種Uの鋳片から表6及び表7に記載の条件により、直径14mmの線材を作製した。得られた線材について、前記方法で、熱間圧延線材の残留オーステナイト量、硬さ、遅れ破壊有無、及び、焼鈍線材の炭化物数密度が1.4個/μm2以下である領域、引張強さ、遅れ破壊有無を評価した。以下、表6、表7にまとめて結果を示す。
Figure 2023144727000006
Figure 2023144727000007
No.60~64については、本発明の規定を満足するため、良好な耐遅れ破壊性を示した。一方、No.65~72は、本発明の好ましい製造条件を満足せず、耐遅れ破壊性が不良であった。
本発明によれば、耐遅れ破壊性に優れるマルテンサイト系ステンレス鋼線材を得ることができ、産業上極めて有用である。

Claims (7)

  1. 質量%で、
    C :0.300~1.000%、
    Si:2.00%以下、
    Mn:0.01~2.00%、
    P :0.10%以下、
    S :0.020%以下、
    Ni:0.01~2.00%、
    Cr:10.5~18.0%、
    Mo:0.01~2.00%、
    Cu:0.01~2.00%及び
    N :0.001~0.200%
    を含有し、残部がFe及び不純物である鋼組成を備え、残留オーステナイト量が5%以上であり、硬さが700Hv以下であることを特徴とするマルテンサイト系ステンレス熱間圧延線材。
  2. 質量%で、
    C :0.300~1.000%、
    Si:2.00%以下、
    Mn:0.01~2.00%、
    P :0.10%以下、
    S :0.020%以下、
    Ni:0.01~2.00%、
    Cr:10.5~18.0%、
    Mo:0.01~2.00%、
    Cu:0.01~2.00%及び
    N :0.001~0.200%
    を含有し、残部がFe及び不純物である鋼組成を有するマルテンサイト系ステンレス熱間圧延線材の焼鈍材であって、断面組織において直径50nm以上の炭化物数密度が1.4個/μm2以下である領域を5%以上有し、引張強さが800MPa以下であることを特徴とするマルテンサイト系ステンレス焼鈍線材。
  3. 前記鋼組成が、前記Feの一部に替えて、質量%で、
    Nb:0~1.00%、
    Ti:0~1.00%、
    V :0~1.00%、
    B :0~0.100%、
    Al:0~1.00%、
    W :0~2.00%、
    Ga:0~0.050%、
    Co:0~1.00%、
    Sn:0~1.00%、
    Ta:0~0.50%、
    Ca:0~0.050%、
    Mg:0~0.020%、
    Zr:0~0.020%及び
    REM:0~0.050%からなる群から選ばれる1種又は2種以上を含有するものであることを特徴とする請求項1に記載のマルテンサイト系ステンレス熱間圧延線材。
  4. 前記鋼組成が、前記Feの一部に替えて、質量%で、
    Nb:0~1.00%、
    Ti:0~1.00%、
    V :0~1.00%、
    B :0~0.10%、
    Al:0~1.00%、
    W :0~2.00%、
    Ga:0~0.050%、
    Co:0~1.00%、
    Sn:0~1.00%、
    Ta:0~0.50%、
    Ca:0~0.050%、
    Mg:0~0.020%、
    Zr:0~0.020%及び
    REM:0~0.050%からなる群から選ばれる1種又は2種以上を含有するものであることを特徴とする請求項2に記載のマルテンサイト系ステンレス焼鈍線材。
  5. 前記線材の断面の形状が円であり、前記円の直径が5.5~30mmである、請求項1又は3に記載のマルテンサイト系ステンレス熱間圧延線材。
  6. 前記線材の断面の形状が円であり、前記円の直径が5.5~30mmである、請求項2又は4に記載のマルテンサイト系ステンレス焼鈍線材。
  7. 請求項1又は3に記載のマルテンサイト系ステンレス熱間圧延線材を製造する方法であって、
    粗圧延から仕上圧延までの全圧延工程での温度が900~1250℃であり、
    圧延後400℃までの冷却速度が50~300℃/minである
    ことを特徴とするマルテンサイト系ステンレス熱間圧延線材の製造方法。
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