JP3377745B2 - 超電導フライホイール装置のスラスト軸受 - Google Patents

超電導フライホイール装置のスラスト軸受

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電力貯蔵フライホイ
ールにおける超電導スラスト軸受の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】図3には電力貯蔵用超電導フライホイー
ル装置の回転軸心に沿う断面図が示されている。図3に
おいて、1はCFRP製のフライホイールリングであ
り、円板状の支持ディスク2′の外周に固定されてい
る。3′は上部軸、4′は中間軸、6′は下部軸であ
り、上記支持ディスク2′は上部軸3′の下部フランジ
と中間軸4′の上部フランジとの間に挟持され、複数の
ボルト(図示省略)によって固定されている。
【0003】5は磁性鉄板からなる円板状のスラストカ
ラーであり、上記中間軸4′の下部フランジと下部軸
6′の上部フランジとの間に挟持され、複数のボルト2
4、ナット25(図5参照)によって固定されている。
上記スラストカラー5には、内周側から順に、リング状
の内周永久磁石7、非磁性材からなる中間リング9、リ
ング状の外周永久磁石8が吸着保持され、上記上部軸
3′、中間軸4′、下部軸6′等からなる回転軸と一体
で回転するようになっている。上記スラストカラー5、
内周永久磁石7、外周永久磁石8及び中間リングで、
永久磁石組立体(図5参照)を構成する。
【0004】10は上記内周、外周永久磁石7,8の下
方に微小間隙を存して対向して設置された高温超電導バ
ルク体、11は液体窒素が収容される液体窒素溜めであ
り、同液体窒素溜め11に外部Xから配管12を経て液
体窒素が導入され、上記高温超電導バルク体10と上記
永久磁石7,8を備えた永久磁石組立体との間に磁気反
撥力を発生せしめることにより、上記回転軸、支持ディ
スク2′及びフライホイールリング1、永久磁石7,8
及び中間リング9が固着されたスラストカラー5等から
なるロータ60の重量を支持し浮上させる超電導スラス
ト軸受50を構成している。13は上記液体窒素溜め1
1と外部Yとを接続する配管で、液体窒素溜め11内に
おいて外部からの侵入熱で蒸発した窒素ガスを外部Yに
排出するものである。
【0005】14は上記上部軸3′を支持する上部ラジ
アル軸受、15は上記下部軸6′を支持する下部ラジア
ル軸受であり、これらラジアル軸受14,15は常電導
型の磁気軸受にて構成される。また上部軸3′の軸端及
び下部軸6′の軸端はころがり軸受からなる上部補助軸
受16及び下部補助軸受17にて補助的に支持されてい
る。18は、充、放電により本フライホイール装置の回
転エネルギの入、出力を行なう発電、電動機である。
【0006】21は上記ロータ60の中央部が収納され
るケーシング、20は上記発電、電動機18が収納され
るケーシング、19は上記上部ラジアル軸受14及び上
部補助軸受16が取付けられるケーシング、22は上記
下部ラジアル軸受15及び下部補助軸受17が取付けら
れるケーシングであり、これらのケーシング19,2
0,21,22は複数のボルト(図示省略)によって液
体密に締め付け固定されることにより、その内部が真空
に保持されている。
【0007】21′は上記中央部のケーシング21の外
周に巻装された防護材、23は上記ケーシング20に設
けられた真空排気口であり、同排気口23により、上記
ロータ60が収納される上記ケーシング19,20,2
1,22内の真空排気を図のZ方向に行なうことによっ
て、ロータ60の回転による風損の低減及び真空断熱を
行なうようになっている。
【0008】上記フライホイール装置の運転時におい
て、図4に示される運転モードのように、回転数の上昇
時A→B間において発電、電動機18により充電を行な
い、B→C間においては一定回転数で以って電力貯蔵を
行ない、回転数の下降時C→D間において放電を行な
う。
【0009】また、上記フライホイール装置の通常運転
時においては、高速回転するロータ60の重量によるス
ラスト荷重は上記超電導スラスト軸受50にて支持する
ことによりロータ60を浮上させながら回転せしめ、ラ
ジアル荷重は常電導型磁気軸受である上部ラジアル軸受
14及び下部ラジアル軸受15によって非接触にて支持
している。
【0010】一方上記磁気軸受からなる上部及び下部ラ
ジアル軸受14及び15が動作不良を生じた際には、ロ
ータ60及び軸受類の損傷を防止するため、上記上部、
下部ラジアル軸受14,15の軸受すきまの約1/2の
軸受すきまを有する上記上部及び下部補助軸受16及び
17によってロータ60を支持する。また上記中間リン
グ9は、スラストカラー5とともに回転する内周永久磁
石7の遠心力を支持する。また上記中間リング9はその
半径方向において上記外周永久磁石8に支持される。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】図5〜図6には上記従
来の超電導フライホイール装置の運転時における永久磁
石組立体に作用する遠心力の状況が示されている。図5
〜図6において、FR1,FR2,FR3・・・FRNは上記永
久磁石組立体による遠心力である。同図から明らかなよ
うに、図3に示す従来のものでは、上記永久磁石組立
構成する内周永久磁石7、中間リング9、外周永久磁
石8が半径方向において分割された分割型であるため、
夫々の要素がフープ応力(たが張応力)をそれ自体で
支持することができず、上記遠心力FRNはスラストカラ
ー5の外周内面5aに作用する。
【0012】このため、上記遠心力FRNによって、スラ
ストカラー5の外周部が図5のように上側に反るように
変形して角度θだけ傾斜する。そして、上記従来のもの
においては、上記角度θの変形によって、高温超電導バ
ルク体10と永久磁石組立体との間の外周側隙間が大き
くなり上記超電導スラスト軸受50の浮上性能、つまり
軸受性能が低下するという問題点がある。
【0013】本発明の目的は、超電導フライホイール装
置において、超電導スラスト軸受部の永久磁石組立体か
らの遠心力による変形を抑制して、永久磁石組立体と高
温超電導バルク体との隙間を均一に保持し、上記スラス
ト軸受の浮上性能つまり軸受性能を向上せしめることに
ある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は上記問題点を解
決するもので、その要旨とする第1の手段は、真空に保
持されたケーシング内に、回転駆動される回転軸及び同
回転軸に支持ディスクを介して固定された環状フライホ
イールリングを含むロータと、上記回転軸に固定された
磁性材からなるスラストカラーに取付けられた永久磁石
組立体及び同永久磁石組立体に微小隙間を存して設置さ
れた超電導バルク体よりなる超電導スラスト軸受とを収
納してなる超電導フライホイール装置において、上記超
電導スラスト軸受は、上記永久磁石組立体を上記スラス
トカラーの上側及び下側に、上下対称にかつ双方の遠心
力が同一になるように各1組取付けてなることを特徴と
する超電導フライホイール装置のスラスト軸受にある。
【0015】上記手段によれば、上下2組の永久磁石組
立体がスラストカラーの上側及び下側に上下対称にか
つ、双方の遠心力が同一になるように取付けられている
ので、上記永久磁石組立体の遠心力によるスラストカラ
ーの変形量は、従来のもののように上側に偏って変形す
ることなく、上下側で均一となり、従って、上記永久磁
石組立体と超電導バルク体との隙間も内周側と外周側と
で均一となり、超電導スラスト軸受の浮上性能の低下が
防止される。
【0016】また第2の手段は、上記超電導フライホイ
ール装置において、上記スラストカラー及び上記永久磁
石組立体の外側に複数のカーボン繊維を軸方向に配した
クロス巻きのCFRPからなる内周リングを設けるとと
もに、同内周リングの外側に複数のカーボン繊維を周方
向に配したフィラメントワインディングのCFRPから
なる外周リングを固定してなる。
【0017】上記第2の手段によれば、外周リングを構
成する上記フィラメントワインディングのCFRPはフ
ープ応力(たが張り応力)に対して高い強度を有するた
め、上記永久磁石組立体の遠心力による半径方向の変形
が最少限に抑制され、また内周リングを構成する上記ク
ロス巻きのCFRPは高い曲げ剛性を有するため、上記
遠心力による曲げ成分に対して充分に大きな剛性が得ら
れる。
【0018】従って、上記スラスト軸受の変形は、上記
フープ応力に対して高い強度を有する外周リングと高い
曲げ剛性を有する内周リングとを組合せたことにより従
来のものに較べて大幅に減少し、永久磁石組立体と超電
導バルク体との隙間は適正に維持される。
【0019】さらに第3の手段は上記第1の手段と第2
の手段とを組合せたもので、第1、第2の手段による作
用効果が重畳される。
【0020】
【発明の実施の形態】以下図1〜図2を参照して本発明
の実施形態につき詳細に説明する。本発明は図3に示す
超電導フライホイール装置の超電導スラスト軸受50の
改良に係るものである。
【0021】即ち図1はその実施形態に係る超電導スラ
スト軸受部の回転軸心に沿う要部断面図を示し、図1に
おいて、4′は中間軸、6′は下部軸であり、同中間軸
4′のフランジ下面と下部軸6′のフランジ上面との間
にはスラストカラー5が挟持され、円周方向等間隔に配
置された複数のボルト24及びナット25によって締め
付け固定されている。
【0022】上記スラストカラー5は、内周に円板部5
b、外周に円筒部5aが形成されている。上記円筒部5
aはフライホイール装置が高速回転することから、大き
な遠心力の作用を抑制するため比較的薄肉に形成されて
いる。
【0023】26aは内周リングであり、カーボン繊維
を軸方向に配し、その間に樹脂を詰めたクロス巻きCF
RP材からなり、その内周面が上記スラストカラーの円
筒部5aの外周面に固着されている。26a1 は同クロ
ス巻きCFRPの軸方向カーボン繊維を示す。26bは
外周リングであり、カーボン繊維を周方向に巻き、その
間に樹脂を詰めたフィラメントワインディングCFRP
からなり、その内周面が上記内周リング26aの外周面
に固着されている。26b1 は同フィラメントワインデ
ィングCFRPの周方向巻きカーボン繊維を示す。
【0024】上記スラストカラー5の円板部5bにはそ
の上下両面に2組の永久磁石組立体60b,60aが大
きさ、位置ともに上下対称に固定されている。即ち下側
の永久磁石組立体60aは図3に示す従来のものと同様
に、内周側から順に内周永久磁石7、非磁性材料からな
る中間リング9及び外周永久磁石8が図1に示すような
極の配置で以って設けられている。また上側の永久磁石
組立体60bは、内周側から順に内周永久磁石7′、非
磁性材料からなる中間リング9′及び外周永久磁石8′
が図1に示すような極の配置で以って、それぞれの部材
が上記上側の永久磁石組立体60bの各部材と対称にな
るように設けられている。
【0025】上記のように構成された超電導フライホイ
ールの運転時において、図2に示すように、上側の永久
磁石組立体60bの遠心力FRu及び下側の永久磁石組立
体60aの遠心力FRdは、これら上側及び下側の永久磁
石組立体60b及び60aが同一仕様つまり、これらの
重量、形状及び取付位置が同一であるので同一値とな
り、またこれら上側及び下側の永久磁石組立体60b及
び60aが円板部5bに対して上下対称に取付けられて
いるので上記スラストカラー5の円筒部5aに左右均等
に作用する。この遠心力FRu及びFRdにより比較的薄肉
の円筒部5aは中央の円板部5bへの付け根から両端に
かけて図2の破線に示すように、上下均等に外周方向へ
曲げられることとなり、従来のもののように上側に偏っ
て変形することはない。
【0026】また、前記フライホイールリング26に作
用する上記遠心力FRu及びFRdは、両側面から中央側に
向いた曲げの成分を含む上、下均等な遠心力FRu1 及び
Rd 1 となる。
【0027】然るに、上記外周リング26bを構成する
周方向巻きカーボン繊維26b1 を有するフィラメント
ワインディングCFRPは、上記フープ応力に対して高
い強度を有するため、上記遠心力FRu1 及びFRd1 によ
るスラストカラー5の円筒部5aの半径方向の変形は最
少限に維持される。しかしながら、上記周方向巻きカー
ボン繊維26b1 を有するCFRPは、上記遠心力F
Ru1 及びFRd1 の曲げ成分に対する強度が小さい。
【0028】そこで、この実施形態においては、上記ス
ラストカラー5の円筒部5aと上記フィラメントワイン
ディングCFRPからなる外周リング26bとの間に曲
げ剛性が大きい軸方向カーボン繊維26a1 を有するC
FRP製内周リング26aが設けられているので、上記
曲げ成分に対して充分に大きな剛性を有する。従って、
上記スラストカラー5の変形は最少限に維持され、永久
磁石組立体60aと高温超電導バルク体10との隙間の
拡大が防止され、上記隙間が適正に維持され、超電導ス
ラスト軸受50は所要の浮上特性を維持することができ
る。
【0029】
【発明の効果】本発明は以上のように構成されており、
請求項1の発明によれば、スラスト軸受を構成する上下
2組の永久磁石組立体がスラストカラーの上側及び下側
に、上下対称に、かつ双方の遠心力が同一になるように
取付けられているので、スラストカラーの変形が従来の
もののように上側に偏ることなく、上下側で均一とな
る。
【0030】従って、上記永久磁石組立体と超電導バル
ク体との隙間も軸受の内、外周に亘って均一となり、上
記永久磁石組立体の遠心力による超電導スラスト軸受の
浮上性能、即ち軸受性能の低下を防止することができ
る。
【0031】また請求項2の発明によれば、複数のカー
ボン繊維を周方向に配したフィラメントワインディング
のCFRPからなる外周リングによるフープ応力(たが
張り応力)に対する変形抑制と、複数のカーボン繊維を
軸方向に配したクロス巻きのCFRPからなる内周リン
グの曲げ剛性の増大により、スラスト軸受の変形が減少
せしめられ、上記軸受隙間の均一化による軸受性能の向
上が得られる。
【0032】さらに請求項3の発明によれば、請求項
1、2の発明による上記効果が重畳して得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る超電導フライホイール
装置のスラスト軸受の要部縦断面図。
【図2】上記実施形態における作用説明用の図1応当
図。
【図3】従来のスラスト軸受を用いた超電導フライホイ
ール装置の縦断面図。
【図4】上記超電導フライホイール装置の作用説明図。
【図5】従来の超電導フライホイール装置の作用を示す
要部縦断面図。
【図6】図5に対応する要部平面図。
【符号の説明】
1 フライホイールリング 4′ 中間軸 5 スラストカラー 5a 円部 5b 円部 6′ 下部軸 7,7′ 内周永久磁石 8,8′ 外周永久磁石 9,9′ 中間リング 10 高温超電導バルク体 20 ケーシング 26a 内周リング 26b 外周リング 50 超電導スラスト軸受 60a,60b 永久磁石組立体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 河島 裕 兵庫県高砂市荒井町新浜2丁目1番1号 三菱重工業株式会社高砂製作所内 (56)参考文献 特開 平9−242755(JP,A) 特開 平8−334123(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16C 32/00 - 32/06 H02J 15/00 H02K 7/02 H02K 7/09

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 真空に保持されたケーシング内に、回転
    駆動される回転軸及び同回転軸に支持ディスクを介して
    固定された環状フライホイールリングを含むロータと、
    上記回転軸に固定された磁性材からなるスラストカラー
    に取付けられた永久磁石組立体及び同永久磁石組立体に
    微小隙間を存して設置された超電導バルク体よりなる超
    電導スラスト軸受とを収納してなる超電導フライホイー
    ル装置において、上記超電導スラスト軸受は、上記永久
    磁石組立体を上記スラストカラーの上側及び下側に、上
    下対称にかつ双方の遠心力が略同一になるように各1組
    取付けてなることを特徴とする超電導フライホイール装
    置のスラスト軸受。
  2. 【請求項2】 真空に保持されたケーシング内に、回転
    駆動される回転軸及び同回転軸に支持ディスクを介して
    固定された環状フライホイールリングを含むロータと、
    上記回転軸に固定された磁性材からなるスラストカラー
    に取付けられた永久磁石組立体及び同永久磁石組立体に
    微小隙間を存して設置された超電導バルク体よりなる超
    電導スラスト軸受とを収納してなる超電導フライホイー
    ル装置において、上記超電導スラスト軸受は、上記スラ
    ストカラー及び上記永久磁石組立体の外側に複数のカー
    ボン繊維を軸方向に配したクロス巻きのCFRPからな
    る内周リングを設けるとともに、同内周リングの外側に
    複数のカーボン繊維を周方向に配したフィラメントワイ
    ンディングのCFRPからなる外周リングを固定してな
    る超電導フライホイール装置のスラスト軸受。
  3. 【請求項3】 上記スラストカラー及び上記上下2組の
    永久磁石組立体の外側に複数のカーボン繊維を軸方向に
    配したクロス巻きのCFRPからなる内周リングを設け
    るとともに、同内周リングの外側に複数のカーボン繊維
    を周方向に配したフィラメントワインディングのCFR
    Pからなる外周リングを固定してなる請求項1記載の超
    電導フライホイール装置のスラスト軸受。
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