JP3375520B2 - 溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents
溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法Info
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Description
板の不めっき、さざ波、アッシュ引き等の焼鈍後めっき
前の板表面に関わる格落ち欠陥が極めて少ない溶融亜鉛
めっき鋼板の製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】溶融亜鉛めっき鋼板は他のめっき鋼板と
比較して、安価でかつ薄目付けが容易であることから、
自動車、建築、家電用に使用されている。溶融亜鉛めっ
きの種類としてはいわゆる溶融亜鉛めっき鋼板だけでは
なく、溶融亜鉛めっき直後に合金化処理を施した合金化
溶融亜鉛めっき鋼板や、溶融亜鉛めっきに比較的多量に
Alを添加したいわゆるガルファン(5%Al)やガル
バリウム(55%Al)などがある。いずれも溶融亜鉛
めっき浴に板を直接接触させることにより製造するため
に、焼鈍後のめっき前の板表面の性状が重要である。焼
鈍後めっき前の鋼板表面に関わる欠陥としては、不めっ
き、さざ波、アッシュ引きなどがある。不めっきはめっ
きの付着していない鋼板の露出した部分が生ずることで
あり、溶融亜鉛めっきとしては致命的な欠陥となる。さ
ざ波はさざ波状の白い色調欠陥であるが、酷い場合には
凹凸欠陥となり、この場合はプレス外板には致命的欠陥
である。アッシュ引きは溶融亜鉛浴表面の酸化膜引きで
ある。もちろん、大部分はこれらの欠陥の発生がないよ
うに操業するべきであり、例えば鋼板中への添加元素の
制限、侵入板温の上昇、浴温の上昇、NOF(無酸化
炉)での酸化処理、焼鈍炉全体の水素濃度上昇などが比
較的効果的である。しかし、これらの欠陥は確率的に発
生し、全体に発生するのではなく、全体のごく一部にの
み局所的に発生するものである。そして、原因を特定で
きない以上、99%は問題なくても、全生産量の内の格
落ち率が0.1〜0.5%、酷い場合には1%以下程度
の焼鈍後の表面に関わる欠陥は事実上避けがたいもので
あった。 【0003】なお、焼鈍炉の雰囲気を規定した従来技術
は多数あり、例えば、特開平5−9693号公報、特開
平4−48062号公報などがあるが、これらは焼鈍炉
も一般的条件であり、不めっき、さざ波、アッシュ引き
等の焼鈍後めっき前の欠陥を低減する観点からは、何の
知見も与えてくれない。また、特開平3−253548
号公報にはスナウト内の酸素濃度を20〜200ppm
とすることが開示されているが、これはスナウト内のZ
n浴表面からのZnの蒸発を防止することを目的とし、
浴表面に酸化物を生成させるものである。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】本発明は溶融亜鉛めっ
き鋼板の、特に、不めっき、さざ波、アッシュ引き等の
焼鈍後めっき前の鋼板表面に関わる格落ち欠陥の極めて
少ない製造方法に関するものであり、これらの欠陥によ
る格落ち欠陥発生率が極めて少ない製造方法を提供する
ものである。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明は、前記問題点を
解決するるためになされたもので、溶融亜鉛めっき浴に
先立つ連続焼鈍の再結晶焼鈍後の冷却から溶融亜鉛めっ
き浴に侵入するまでの過程において、水素濃度、酸素濃
度及び鋼板温度の関係が次式を満たすように制御するこ
とを特徴とする、焼鈍後めっき前の板表面に関わる欠陥
の少ない溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法である。 【0006】1<〔O〕<(0.00025T2 −0.
225T+55)×〔H〕 ただし、〔O〕:酸素濃度(ppm) T :鋼板温度(℃) 〔H〕:水素濃度(%) とする。 【0007】 【発明の実施の形態】本発明者らは、よく知られている
不めっき現象を再確認し、例えば、(a)鋼中の易酸化
性元素(特にSi、添加量が多ければMn、Cr等)は
焼鈍時に表面濃化し、これがめっき性を阻害すること、
(b)この対策としては、例えば焼鈍初期の酸化処理、
鋼中への添加量制限など、表面濃化の低減が有効である
こと、(c)侵入板温や浴温度上昇により反応性がアッ
プし、改善される傾向にあること、(d)スケール残り
や偏析等の原板欠陥原因もあること、等を再確認した。
しかし、同時に、不めっきの発生が確率的な現象である
こと、特に特徴のない軟鋼板やP添加35キロクラスの
鋼板でも発生しうることに鑑み、上記の焼鈍時の表面濃
化のような原因のみでは説明しきれないことを知見し
た。そこで、その原因について鋭意検討した結果本発明
に至ったものである。 【0008】また、同様に、さざ波やアッシュ引きに関
しても焼鈍後めっき前の鋼板表面の性状が大きく影響し
ていることを見出し、本発明に至ったものである。めっ
き前の連続焼鈍炉中には水素が添加され、露点(水蒸気
の結露温度)との比率H2 /H2 Oで管理されるのが通
常である。加熱方式としてはNOF(無酸化炉)方式や
オールラジアントチューブ方式があり、前者では加熱工
程ではFeにとって酸化性である場合もあり、後者では
全て還元性である。加熱工程を経たごは、通常はFeに
とって還元性の雰囲気下であり、還元と再結晶が同時に
行われ、その後、およそ浴温度に近い温度まで冷却され
た後、溶融亜鉛めっき浴に導かれる。にもかかわらず、
軟鋼や35キロクラスの鋼板でも不めっきが発生しうる
原因は、還元焼鈍終了後の還元された鋼板が、その後の
冷却時に酸化する現象によろものであり、微量酸素が原
因であることを見出した。 【0009】還元焼鈍終了後の温度域における水素を含
有する雰囲気下での、酸素量が鋼板表面の酸化量に及ぼ
す影響を図1に示す。図1は4%H2 −N2 雰囲気で鋼
板温度500℃における酸素濃度(O2 ppm)と酸化
量(酸素のmg/m2 )との関係を示すもので、鋼種は
35キロクラスP添加ハイテンと極低炭素軟鋼について
示した。鋼板表面の酸化量は蛍光X線(LSA結晶を使
用)の検量線法により定量化した。水素含有雰囲気下で
も雰囲気中に微量酸素が存在することにより、鋼板表面
が酸化されることがわかる。また、極低炭素軟鋼よりも
35キロクラスの鋼の方が酸化されやすいことがわか
る。 【0010】なお、この条件は、平衡論的には、エリン
ガムダイヤグラムから明らかなように、H2 /H2 Oの
比率からはFeにとって還元性雰囲気である。酸素濃度
からはこのような微量であっても酸化性雰囲気である
が、焼鈍炉加熱帯から均熱帯にかけて微量酸素が含まれ
ていることはよくあり、その類推から、全体としては還
元性雰囲気と思われていた。例えば特開平3−2535
48号公報も、Zn浴表面の酸化について述べている
が、鋼板表面の酸化については何の記載もない。Feよ
りも酸化されやすいZnがさほど酸化されていないので
あれば、Feはより酸化されないと考えられよう。ま
た、平衡論から考えて、焼鈍炉内で測定でされる酸素
は、計器の精度問題や雰囲気ガスのサンプリング問題と
も考えられる。 【0011】同様に、水素を含有する雰囲気下での酸素
量と鋼板温度が鋼板表面酸化量に及ぼす影響を図2に示
す。図2は4%H2 −N2 雰囲気中での極低炭素軟鋼の
鋼板温度(℃)と酸化量(酸素のmg/m2 )との関係
をO2 濃度をパラメータとして示したものである。鋼板
温度が高温側では還元性の作用が大きく酸化量は少な
い。つまり、高温ではFeが酸化されにくく、低温ほど
酸化が進行することがわかる。すなわち、水素による還
元反応と酸素による酸化反応との競争反応であり、高温
域では水素による還元反応が優位であるが、低温域では
酸素による酸化反応が優位なのである。従って、高温域
では酸素のことを考慮する必要はほとんど無い。ところ
が、低温域ではこのように鋼板表面に酸化物がある場合
には不めっきが発生しうることは当然であり、図2の条
件でめっき実験を行った結果、鋼板表面の酸化量が酸素
として10mg/m2 以上の場合には実際に不めっき発
生を確認することができた。10mg/m2 未満であれ
ば不めっき等の発生を著しく抑制できた。そしてこのよ
うな板の表面状態にするためには焼鈍後の冷却時の板の
温度と酸素濃度、水素濃度を式のように制御すればよい
ことを見出した。 【0012】そこで、実際のCGL(連続溶融亜鉛めっ
きライン)での加熱帯、均熱帯、冷却帯、及び侵入前に
おける雰囲気条件を測定してみると、微量ではあるが酸
素が検出され、最高到達温度付近では十分に還元性であ
ったが、その後の冷却帯以降では、図2の結果から判断
すると、酸化されうることが判明した。そこで、冷却帯
以降での酸素濃度と鋼板温度を調整した結果、本発明の
範囲内であれば、不めっき欠陥を事実上皆無にすること
ができることを知見した。また、同時にさざ波やアッシ
ュ引きも減少することを知見した。これらの結果から、
本発明を完成したものである。 【0013】また、これらの結果より、不めっき、さざ
波、アッシュ引き等の欠陥が焼鈍後めっき前の鋼板表面
に関わる欠陥であることが明らかとなった。酸素濃度を
本発明の範囲内に制御するための手段としては、連続焼
鈍炉の後部からの水素含有投入ガス量増加、後部の炉圧
の上昇による酸素濃度の低減、焼鈍炉冷却帯以降での微
量酸素の導入による酸素濃度上昇等の手段が有効であ
る。 【0014】なお、連続焼鈍炉には水素含有ガスは意図
的に導入しているが、酸素は特開平3−253548号
公報のように、意図的に導入する場合も稀にはあるが、
通常は、意図的に導入しているわけではなくまた、平衡
論からは酸素が検出できるはずがない。しかし、実際に
は酸素が検出され、これは炉壁やストリップ侵入口等の
わずかな隙間からの侵入であり、平衡に達する前の定常
状態なのであろうと考えられる。実際問題として、酸素
濃度を、平衡論のように、1ppm以下を達成すること
は至難の業であり、膨大なコストがかかる。実用上は、
微量酸素を含有しても本発明範囲内では酸化反応はほと
んど起こらず、事実上全く問題ないので、1ppmより
大きい範囲とした。 【0015】めっきのない連続焼鈍による焼鈍材製造の
場合には、テンパーカラーが発生すると、目視で判別す
ることができ、対応は容易である。しかし、めっき鋼板
製造の場合には、焼鈍後めっき前の鋼板表面をよく見る
ことはできず、仮に見えたしても、テンパーカラーがほ
とんど見えないほどの酸化量でも不めっき発生するほど
感受性が高いので溶融めっき鋼板製造の困難性がある。
実際にめっきのない焼鈍材製造のテンパーカラー解消の
知見をもってしても、不めっきを解消することはできな
かった。また、さざ波やアッシュ引きの場合には、焼鈍
後めっき前の鋼板板面がどれほど影響しているか、ほと
んど未知であった。 【0016】本発明では焼鈍炉の冷却帯よりも前の均熱
帯又は加熱帯の雰囲気については特に規定しない。最高
到達板温時に還元されていれば十分であるためであり、
通常の連続焼鈍炉では還元されている。加熱方式として
はNOF(無酸化炉)であってもオールラジアント炉で
あってもよく、無関係である。めっき鋼板の種類として
は、溶融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっき、ガルファ
ン、ガルバリウムいずれにおいても同じことである。 【0017】なお浴温度や侵入板温、Al濃度などのめ
っき条件、或いは原板の種類によって、不めっき、さざ
波又は、アッシュ引き欠陥に対する感受性がやや異なる
場合がある。そのために、本発明が規定した式の係数や
定数項はやや異なる場合があり得る。より安全には次式
のように狭くした範囲がより好ましい。 1<〔O〕<(0.000125T2 −0.1125T
+27.5)×〔H〕 ただし、〔O〕:酸素濃度(ppm) T :板温度(℃) 〔H〕:水素濃度(%) 【0018】 【実施例】以下に本発明の一例を示す。極低炭素鋼(供
試鋼A)、低炭素鋼(供試鋼B)及びP添加35キロク
ラス鋼(供試鋼C)の供試材を転炉にて溶製した後、連
続鋳造によりスラブとした。このスラブをスラブ加熱温
度(SRT)1150〜1200℃、仕上げ温度900
〜920℃、コイル巻き取り温度500〜800℃にて
熱間圧延し35mm厚とした。その後、酸洗によりスケ
ール層を除去し冷間圧延を行い0.7mm厚とした。こ
の冷間圧延板を連続溶融亜鉛めっきライン(CGL)に
おいて、800〜850℃で再結晶焼鈍を行った後、冷
却し、470℃で溶融亜鉛めっきを行った。この際、冷
却帯から溶融亜鉛めっきまでの板温度と雰囲気を制御し
た。 【0019】なお、表1に記載した鋼板温度以外の温度
域の雰囲気は本発明で規定した範囲内の条件とした。大
部分は引き続き460〜500℃で10〜25秒の合金
化処理を行った。不めっき、さざ波、アッシュ引き欠陥
はRCで静止検査し、目視およびプレス後砥石による凹
凸で格落ちした重量比で評価した。その結果を表1に示
す。比較例では、著しく欠陥発生率が高いが、本発明で
は欠陥発生率が低い。 【0020】 【表1】 【0021】 【発明の効果】以上説明したように、本発明の開示する
溶融亜鉛めっき鋼板は不めっき、さざ波、アッシュ引き
等の焼鈍後めっき前の板性状に関わる欠陥発生率が小さ
く、高品質の溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができる。
する雰囲気下での、酸素量が鋼板表面の酸化量に及ぼす
影響を示すグラフである。 【図2】水素を含有する雰囲気下での酸素量と鋼板温度
が鋼板表面酸化量に及ぼす影響を示すグラフである。
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 溶融亜鉛めっきに先立つ連続焼鈍の再結
晶焼鈍後の冷却から溶融亜鉛めっき浴に侵入するまでの
過程において、水素濃度、酸素濃度及び鋼板温度の関係
が次式を満たすように制御することを特徴とする、焼鈍
後めっき前の板表面に関わる欠陥の少ない溶融亜鉛めっ
き鋼板の製造方法。 1<〔O〕<(0.00025T2 −0.225T+5
5)×〔H〕 〔O〕:酸素濃度(ppm) T :鋼板温度(℃) 〔H〕:水素濃度(%)
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JP20170797A JP3375520B2 (ja) | 1997-07-28 | 1997-07-28 | 溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 |
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JP4882446B2 (ja) * | 2006-03-28 | 2012-02-22 | Jfeスチール株式会社 | 溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 |
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