JP3371751B2 - イオン注入装置 - Google Patents
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Description
ように大型の加工品に対し高電流イオン注入を実現する
ための装置に関する。例えばSiウェファなどに、p型
不純物のBや、n型不純物のP、Asなどをイオンビー
ムとして加速して打ち込む場合がある。イオン注入の目
的や、イオン種は様々である。対象物が小さい場合は、
細いイオンビームを水平方向(x方向)と垂直方向(y
方向)に走査して対象物の全面にイオンビームを短時間
で注入することができる。細いイオンビームであれば質
量分析が容易であるからマグネットによって所望のイオ
ン種だけを選んで注入することができる。イオンビーム
をxy2方向に走査すると時間がかかるが対象物が小さ
い場合はそれでも差し支えない。
などのように広い面積を持つものであると、細いビーム
をxy2方向に走査すると走査距離が長くなり時間がか
かりすぎる。スループットが低くなる。そこで、2次元
的な走査をしないより直接的に大面積を覆うような注入
方法が要望される。スループットが高くてしかも注入密
度の均一性に優れ、質量分離機能をも備えた大面積用の
イオン注入装置が望まれる。本発明は大面積の対象物に
大電流大面積のイオンビームを注入する方法に関する。
るには大別して二つの方法がある。一つは回転ターゲッ
トを使用する方法である。回転と並進運動が可能な回転
ターゲットをエンドステーションに用いる。複数のウェ
ファを回転ターゲットの周囲に貼り付ける。細いイオン
ビームを質量分析した後左右に走査して、回転ターゲッ
トに取り付けられた複数枚のウェファにイオンビームを
照射する。そのとき回転ターゲットを並進運動させて1
枚のウェファの上から下までイオンビームを注入する。
ターゲットを1枚分回転させて次のウェファにも並進運
動をしてイオン注入をする。つまりビームをx方向の走
査し、ウェファをy方向に走査する。複合走査によって
広いウェファの全面にイオンビームを注入する。大面積
対象物に対しては回転ターゲット方式が主流である。
である。初めから大口径のイオンビームの束を生成しそ
のままウェファに照射する。これは様々の問題がありま
だ実用的なレベルに達していない。回転ターゲット方式
も大口径イオン源方式も次のような問題がある。
は比較的単純である。ビームを質量分析マグネットに通
し、一次元走査系に通すだけだからである。しかし反
面、エンドステーションが複雑になる。回転ターゲット
を使うのであるが、これは高速回転と並進運動を行う必
要がある。並進運動は一様な速度ではいけない。イオン
ビーム電流Ibに比例し、ビーム位置xに反比例するよ
うな並進速度制御を行わなくてはいけない。またウェフ
ァに照射されるイオンビーム電流が高くなるとチャージ
アップ現象が顕著に現れるという難点がある
学系はイオン引き出し系のみであるから装置構成はより
一層単純である。しかしイオンを質量分析しないため
に、電極から放出された不純物が、対象物注入される虞
がある。質量分析しないので分子も注入されるから、プ
ラズマの状態によって注入深さが変動するという難点も
ある。これら不純物の混入、注入深さのゆらぎなどは作
製されたデバイスの特性に強く影響する。
成分以外のガスがイオン化されてウェファに照射され
る。ウェファが余計に加熱され過度に温度上昇する。温
度上昇によりデバイスの特性が著しく劣化する可能性も
ある。例えばSiウェファにボロンの注入を行う場合、
ジボラン(B2 H6 )が原料ガスとして用いられる。こ
れをプラズマ化してイオンビームを引き出すので、ボロ
ンイオンだけでなく、水素イオンも大量に注入される。
処理をすれば基板から殆ど抜けてゆく。水素イオンの影
響は残らないのであるが、水素イオンが試料に打ち込ま
れると、その運動エネルギーが全部熱に変わるので、試
料が過熱され甚だしく温度上昇してしまう。
(30cm)といった大面積基板になると、ウェファ面
上でのゆらぎが数%以内という注入均一性を得るために
はビーム分布の精度がかなり高くなければならない。し
かしながらこれを実現するのは至難のわざである。
でき、質量分析しない新しいイオン注入の方法としてP
III(Plasma Immersion Ion Implantation )という
ものが提案されている。大面積のイオン源から大面積の
イオンビームを引き出すと、質量分析することはよほど
難しい。フィラメントや引出電極があるとこれから放散
した不純物がイオンビームに混ざるので質量分析しない
と対象物(試料)にも不純物が注入される。この問題を
解決するためにPIII法が提案されている。ウェファ
をプラズマの中にさらし、ウェファに負の電圧を印加す
るとウェファの外側にシース領域が生ずる。シース領域
では大電圧が掛かるのでシース領域でイオンを加速しウ
ェファに注入するというものである。
er, Plasma Source Sci. Technol.1(1992) p1-6によっ
て初めて主張された方法である。ウェファをイオン源の
内部のプラズマに入れてしまうので、ビーム引き出しの
必要がなく引出電極系も不要である。ために引出電極か
らの不純物がでるという可能性はない。しかし質量分析
をするわけではないので、原料ガスに含まれる不要イオ
ンの注入を回避する事はできない。例えばSiウェファ
にボロンをp型ドーパントとして注入する場合、ソース
ガスとしてジボラン(B2 H6 )ガスを用いる。この場
合水素イオンもシースで加速されウェファに注入され
る。
過熱される。プラズマ密度を高くしてイオン電流密度を
高めようとすると、水素注入のために温度が上がりすぎ
る。ウェファの温度上昇を避けるためプラズマ密度を余
り高めることができない。ために注入時間の短縮ができ
ない。前記の報告によれば10分かかって1.9×10
15/cm2 のボロン注入を行っている。しかしそのよう
に遅いイオン注入では役に立たない。実際PIIIは実
用化されていないようである。
であろう。細いビームの左右上下2次元走査に替えて、
線分状(帯状)の一次元広がりのあるビームを試料に打
ち込み、試料をそれと直角方向に走査するというもので
ある。特開平6−342639号はそのようなイオン注
入装置を提案している。イオン源から帯状のイオンビー
ムを作りだし、二つの磁石とスリットを組み合わせ質量
分離する。質量分離磁石はy方向に狭いギャップを介し
て対向するダイポール磁石である。狭いギャップにはX
Z面で一様なY方向磁場が形成される。
ットの穴を通過し拡散して第2の磁石に入る。これによ
って平行なビームに成形され、水平方向(X方向)に広
がった帯状のイオンビームを作り出す。ウェファはそれ
と垂直(Y方向)に走査する。これで実効的にウェファ
の全面にイオンビームを注入することができる。イオン
ビーム全面注入のために不可欠である二通りの走査(ス
キャン)を帯状ビームとウェファスキャンに分割してい
る。質量分離もしているし巧みな方法である。
Z面で一様である。その場合収束性が問題である。細い
スリットを通過する質量エネルギーのイオンビームだけ
が選択されるというが、磁場が一様であると発散を抑制
できない。さらにウェファをY方向にスキャンするため
に複雑な機構が必要になる。真空中でウェファを動かす
機構であるので部品の寿命も短い。このように磁気的、
機構的な問題がある。
れを質量分析すればいいように思われよう。しかし大口
径イオンビームの質量分析はこれまで行われた事はな
い。ビーム径が大きいので磁石の間隔(ギャップ)も広
くしなければならない。当然に磁界を強くしなければな
らない。ただに磁石間隔を広げるだけでは足りない。広
い磁石ギャップの間に大口径イオンビームを通した場
合、磁束密度が一様にならないのでビームが発散する。
ビームが発散するとそれだけ損失になる。また発散ビー
ムがガスをイオン化し、不純物を導き入れることにもな
る。ためにコンタミネーションの原因にもなる可能性が
ある。そのような理由で大口径イオン源から出た大口径
イオンビームを質量分析するというようなことは、試み
の段階でもなされていない。実用レベルで実施された事
はない。
は、直交2方向に広がりをもつ大面積のイオンビームを
生成するイオン源と、湾曲傾斜面を持つ複数の扇形対向
磁極を円弧状に配列した質量分析マグネットと、試料を
支持する支持機構よりなり、イオン源から出た大面積イ
オンビームを質量分析マグネットの入口に入射させ質量
分離し、出口から出た直交2方向に試料以上の広がりを
もつ大面積イオンビームを、走査しないで、試料に照射
するようにしている。
の傾斜を示すn値と、湾曲を表すε、中心角θの値を磁
極毎に異なる値を与えて、大面積のイオンビームが中間
点の磁極近傍のm点で磁場方向に直交するx方向に収束
し、磁場方向のy方向には発散しないように工夫する。
す。これはイオン源1、複数の磁極(磁石列)からなる
質量分析マグネット2、試料支持機構8に取り付けられ
たウェファ3を図示している。イオン源1は大面積のイ
オンビームを生成する。これがまず特徴ある点である。
線状の細いビームではなく、帯状のビームでもない。広
い円形断面を持つイオンビームである。大面積ビームは
これまで質量分離が不可能であったが、本発明はマグネ
ットによる大面積ビームの質量分離を行う。大面積のイ
オンビーム11はマグネット2によって例えば180゜
(120°〜240°)曲げられてウェファ3に入射す
る。
れは点Oを中心にして中心角Θが例えば180度の半円
上に配置した磁石列M1 、M2 、M3 、…、Ms であ
る。中心角は別段180度でなくても良いが、ここでは
図1に示すように180°を例にして説明する。これ
は、質量分離の為の磁石であり120度〜240度であ
っても可能である。円弧に沿って一様磁場を作るのでは
なく不均一磁場を作る。そのために円周方向に複数の磁
石に分割されている。この例では中心角が18゜の10
個の扇形磁石を並べている。S=10とは限らず、8
個、12個、14個でも良いし奇数個であってもよい。
6個以上20個程度である。あまりに少ないと所望の収
束性を与えつつ質量分析を行う事ができない。多すぎる
と設備が巨大化して装置コストを押し上げる。
形磁石の中心角をθj として、全円周角はΘ=Σθj に
よって与えられる。同じ中心角θをもつ扇形磁石の場合
は、Θ=sθである。中心角の合計Θは、120゜≦Θ
≦240゜の範囲に選べば良い。本発明は大面積のイオ
ンビームをそのまま質量分離するという前人未到のこと
を行おうとする。質量分離を十分に行うためには、ある
程度の曲がり角度が必要である。磁石毎の定数は、n
値、ε、θである。
円弧を描いて曲がるが、中心の円弧に沿う座標をz軸と
する。これは一部は直線であるが一部は円弧である。こ
のようなz軸の取り方は変則であるがビームの運動を直
観的に表現しやすい。x軸はマグネットの分布面に平行
な方向外向きに取る。y軸は磁極が対向する方向であ
る。つまり磁束密度はy方向を向いている。ビームは時
計廻りに曲がるものとする。ビームはz方向に進行し磁
場By は正であるとする。この時ファラディ力は−x方
向を向いている。ファラディ力と遠心力が釣り合うので
磁極間では円弧状軌跡を描いてビームが通過する。
大面積ビームであり、例えば半径Aの円ビームとする
と、x2 +y2 ≦a2 で示されるような2方向に広がり
を持つビームである。直径2aは例えば200mm〜4
00mmといった大きいビームである。このビームがマ
グネット2の入口4に入り、磁石列でΘだけ曲がり、出
口5でもほぼ同じ大きさ形状のビームとして出てくる。
例えばx2 +y2 ≦b2というようなビームになる。
として出すのである。これは通常の質量分離と少し違
う。通常の細いイオンビームの質量分離は、磁石とスリ
ットを組み合わせて行う。狭いギャップの対向磁極間に
ビームを通し、外部に出た拡散ビームをスリットに導き
所望の質量のイオンだけがスリットを通るようにする。
その他の質量のイオンはスリット板面にぶつかり消滅す
る。本発明もスリットを設けることによって不要なイオ
ンビームを除去する。幾つも扇形磁石を円弧上に並べる
が、その丁度中間あたりの収束点mのあたりにスリット
14を設けるのである。図6にこれを示す。質量やエネ
ルギーが所望の値と異なるイオンは、スリット14の板
面に当たって除かれる。
円形形状のイオンビームが、引き出し電圧に相当するエ
ネルギーを持って引き出される。この質量分離磁石は入
口と出口でビームの直径や形状が殆ど変わらないように
ビームを曲げる。出口側で36cmの直径があれば(a
=18cm)、30cm径(12インチ)のSiウェフ
ァにそのまま(無走査で)イオン注入できる。引き出し
電圧をVexとすると、運動エネルギーはqVexである。
但し入り口と出口ではイオンビームが面対称になるよう
に反転している。磁場が一定とするとビームの描く半径
は一定である。入り口4で外側に入射したビームUは出
口では内側に来るし、入り口で内側にあるビームWは出
口で外側にくる。丁度中間の軌道Vはそのまま中間位置
にある。だからビームは入口と出口でほぼ面対称にちか
い配位になる。
ムはマグネット列M1 、M2 、…、Ms によって曲げら
れる。所望のイオンのみが選別され試料3に入射する。
このシステムでは、ポールピース(マグネット)M1 、
…、Ms 内にビーム収束点m(Mi (i=s/2)の近
傍にできる)を設定し不要ビームをカットするようにな
っている。一つの磁石でなくて複数の磁石に分割するの
は、一様磁場でなくて局所的に変動する磁場を発生させ
るためである。それぞれの磁石によって異なる磁場を発
生できるので、収束性や発散性を自在に与えることがで
きる。ここでは収束性を与えるようにパラメータを決め
る。
ーム径である36cmを少し上回る程度(38cm)に
設定する。マグネット(ポールピース)はy方向にN、
S極が対向するがその距離gが前記のビーム径より僅か
に大きいものとする。先ほどの円形断面ビームでは2a
<gである。ビームが磁極に衝突しないためにこれは当
然の条件である。磁気回路の磁気抵抗を減らすために磁
極間距離gは狭い方がよい。そこでgはビーム径を少し
上回る程度の距離とするのである。
に分割されておりそれぞれのポールピースM1 、M2 、
…、Ms は異なる傾斜を持っている。この点が本発明の
最も工夫の存する点である。一様の半円磁場を作るので
はない。磁極の対向するy方向に磁場ができるが、磁極
が生成する磁場By は磁石によって少しずつ異なる。図
2にxy面での断面図を示す。対向する対になった磁石
のコアMj (S)、Mj (N)の周りにコイル10、1
3が巻廻されている。コアMj 、Mj は扇形のコアであ
る。これが強磁性体のヨーク12によって接続されてい
る。コアMj、Mj は平坦面でなく、傾斜面6、7を持
つ。傾斜面6、7の傾きは対になっている磁極間では同
じである。しかし他の磁極では傾きが異なる。傾きの他
に曲面εが形成してある。これも本発明で使用する磁極
の特徴である。εもビームも収束性に影響を及ぼす。
ε=0)であるが、本発明では磁極が傾斜と曲率をも
つ。通常の平坦な磁極はx依存性のない一様磁場B0 を
発生する。傾斜面は一次のx依存性を与える。曲面が二
次のx依存性を与える。s個の扇形磁石は0次成分B0
は同一であるが、一次成分nxと二次成分εx2 が異な
る。そうする事によって、本発明は大面積ビームに収束
性を賦与しているのである。ただに一様な磁場By では
収束性を与えることができず発散してしまう。
呼ばれており以下の式によって定義する。簡単にいえば
軌道半径Rによって規格化したx方向の磁場の減少率で
ある。 n=−(1/hB0 )(δB/δx) (1) これが0であれば一様磁場であるから同じエネルギー質
量のビームは同じ半径Rの円弧を描く。これが0でない
ので同じエネルギー質量のイオンであっても入射点によ
って描く円弧の曲率半径rが相違する。円弧の外側に向
けてx軸を取っているから、nが負であると、外側へ行
くほどBy が増加し、内側程By が減少する。外側に入
射したものはより小さい半径の円弧を描く。内側に入射
したものはより大きい半径の円弧を描くのである。nが
正であればその反対になる。
曲率半径Rの逆数である。一様磁場の場合qBR=mv
=pという関係が成り立つ。mはイオン質量、vは速
度、pは運動量である。磁場の0次成分B0 、運動量p
0 によってhは h=qB0 /p0 (2) と表現する事ができる。p0 は初期運動量である。磁場
によるファラディ力は速度の直角方向に働き、運動エネ
ルギーを増減させないから運動エネルギーは一定であ
る。つまり運動量pは一定値である。これをp0 として
いる。引出電圧をVexとすると、p0 =(2mqVex)
1/2 である。
ラメータとなる。本発明においてはs個の傾斜凸面曲率
の異なる扇形磁石を合い接して並べ、それぞれによって
独自の磁場By を発生させている。nは軌道の外側(+
x)に向けた磁場Byの減少率であるから、負であると
外側ほど磁場が強く曲率半径が小さくなる。正であると
外側ほど磁場が弱くて、曲率半径が大きくなる。つまり
正にすると外側で外へ広がり、内側で内側に広がるつま
りビーム全体としてみると広がることになる。反対にn
が負であると、ビームが狭くなる。
に影響するのではない。s個の扇形磁石のうち後半の磁
石でそのような事は正しいが、前半の磁石では反対にな
る。それは丁度半分のs/2個目の磁石において(図1
のm点)ビームが収束し反転するからである。前半にお
いて、拡開するような摂動は最終的には縮径させるよう
な摂動に変化する。
下に示す。曲率半径は各ブロックによって異なるがおよ
そ100cmである。全体としての構造は半径100c
mに沿うように配列してある。つまり1/h0 =100
cmに設定してある。表1にs=10の場合の各扇形磁
石の傾斜角とnの値を示す。これはTransport
というビーム軌道解析コードによって計算したものであ
る。
ファでのビーム特性が所定の条件にあうように膨大な解
析を行って初めて得られたものである。これは全偏向角
が180°でなくより大きい218°となっている。図
11にこの実施例をより具体的に表す磁石配列を示す。
あるためにビームの特性には収差が影響してくる。
石での入力側でのx座標、x方向への傾き、y座標、y
方向への傾きなどを変数Xj によって表現する。入力で
のこれら変数の値をXj (0)とし、出力側での値をX
j (s)とすると次の関係がある。 Xj (s)=ΣRijXj (0)+ΣΣTijk Xj (0)
Xk (0)(3) 第1項が磁場によるビームの曲げを意味する。扇形磁石
が十分に薄いと、このような線形関係だけで入口、出口
の変数の関係が決まる。しかし分割された扇形磁石はそ
れほど薄くないので入口、出口での座標に間には単純な
線形関係になく、座標の二次の項を含む。
収差を補正するためにポールピースの上下の面に曲面が
付与されている。ビーム光学系の分野ではεと呼ばれる
値で規定される。この値はビーム特性を満足できるよう
に選択された。これの値はTransport と呼ばれるビーム
軌道解析コードによって実施された。(ReportS
LAC−75Rev.2(1971))。
る。すべての磁極の全ての位置において、マグネットの
強さBy がわかるから、ここでビームが描く円弧半径r
を求める事ができる。速度vは不変であるから円弧の半
径rは磁場に反比例する。r=mv/qBである。ビー
ムの境界F1 、F2 、…、Fs ではビームの位置と傾き
が連続するという条件を課す。このような境界条件によ
ってビーム軌跡を求めることができる。実際にはBがx
の1次、2次で変動するので解析的な計算はできない。
前記のビーム解析コードによりコンピュータによってか
なり膨大な計算をして求められる。
18cm、広がり角が10mr(ミリラジアン)と仮定
した。そのビームが本発明の磁石列によってどうなるの
かを計算した。表1のパラメータを採用した二次までの
要素を考慮した計算によるとマグネットから50cm下
流のウェファでのビーム特性は次のようになった。 X =18cm X’=20mr Y =18cm Y’=20mr ここでz軸はビーム流れの方向に取ってあり、x軸、y
軸はビーム流れと直交する2軸である。ビームのx軸方
向の半径がX(cm)、ビームのx軸方向の広がり角が
X’(ミリラジアンmr)である。ビームのy軸方向の
半径がY、y軸方向の広がり角がY’である。
であった円形ビームが、出口ではx方向及びy方向でほ
とんど変わない。また広がり角もx方向、y方向ともに
0.02ラジアン程度で僅かである。xy二方向ともに
20cm以上の直径を持つビームである。例えば直径2
0cm或いは30cm(8インチ、12インチ)ウエハ
の全面に、走査することなしに、イオン注入を行うこと
ができる。この特性はビーム軌道解析をさらに実施する
ことによって修正可能である。
が二方向ともに8インチウェファ、12インチウエファ
の直径(W=20cm、30cm)より大きい(2X>
W,2Y>W)ので、ビームを走査しなくてもウェファ
全体にイオンビームを照射できる。単にウェファを中心
周りに回転させるだけでよい。これは注入の均一性を高
めるためであって、走査しているのではない。
のy方向磁場強度By の表現を以下に示しておく。この
種の問題に関しては、Whiteらが明快に説明してい
る。Nicolas R. White and Kenneth H. Purser,"The de
sign of magnets with non-dipole field components",
Nuclear Instruments and Methods in Physics Resear
ch A258 (1987)437-442. これは平坦面を持つダイポー
ル磁石が一様磁場を形成し、四重極(quadrupole)がx
の一次成分bxをあたえ、六重極(sextupole )がxの
二乗成分を与えるといい、これらの和の磁場はダイポー
ル磁石の端面に傾斜をつけ凹凸を付けることによって実
現される、と述べている。つまりダイポール(二重極)
と四重極、六重極を加えたものと等価な磁場を凹凸傾斜
面のダイポール磁石によって生成できるというものであ
る。
イポール磁石を扇形磁石として採用する。何れもy方向
の磁場By をつくるがこれは、 By =B0 {1−(nx/R)+(βx2 /R2 )+…} (4) と表現できる(βR-2=ε)。nが前記のfield
indexである。Rは一様磁場B0 での所望ビームの
曲率半径である(qB0 R=p0 )。右辺1項目B0 が
一様磁場成分で平坦なダイポールによって発生すること
ができる。二項目のxの一次依存性の項が四重極磁石に
よって作られる。3項目のxの2乗の項が六重極によっ
て形成される。これら3つの磁石の寄与の和を、傾斜曲
面の磁極によって作り出す事ができる。xの一次の項は
大面積イオンビームの収束性の向上のために利用する。
xの二次の項は収差の補正のために用いる。
を一つ一つ計算するのであるが、それでは直観的になに
をしているのか分からない。表1の数値は一つの実施例
を示すものであって、本発明の技術思想の全てを表現し
ているのではない。そこで以下に本発明の質量分析マグ
ネットによってどのようにビーム軌道のひとつひとつが
曲げられるのか直観的な説明をする。直観的な計算、説
明であって厳密ではない。しかし磁極の傾きn(FIELD
INDEX )の作用を直観的に理解することができよう。図
6は磁場が一様と仮定した時の実際の半円軌道である。
イオンビームの半径は全て一定値Rをとる。これはqB
0 R=p0 で決まる。p0 は運動量、B0は磁場の零次
成分である。この磁場を基本磁場B0 、そのときの半径
を基本半径Rということにする。流れの方向にz軸をビ
ームを含む平面に平行でビームに直角にx軸を外向きに
取る。y方向に磁極が配置されるものとする。
ビームU、右側のビームWを考える。ビーム半径はaで
あるから、入口でUはVより左にaだけ離れ、WはVよ
り右にaだけずれている。基準磁場が全体に掛かってい
る場合、どのビームも入口でF0 に直角で基準半径Rを
描くので、出口でも、左ビームUは中心ビームVより左
にa離れ、右ビームWは右にa離れている。z軸はビー
ムV上に取ってある。この中心ビームは中心Oから半径
Rの半円を描く。これが基準のz軸である。s個の磁極
(ポールピースは半円(π)を描くので磁極中心角はπ
/sである。j番目の境界Fj は基線OF0 からjπ/
sの角度にある。基線OF0 から角度φをなす点での軌
跡Uの中心Oからの距離OU(φ)は OU(φ)=R+acosφ−a2 sin2 φ/2R (5) によって表現できる。
ずれx(φ)はこれから基準半径Rを差し引いて、 x(φ)=acosφ−a2 sin2 φ/2R (6) である。φがほぼπ/2以下で正、それより大きいと負
になるが、それはm点で収束性と、そこでのビーム反転
を表している。図1や図6で収束点mで僅かなビームの
偏りが現れるがこれは(6)式の右辺の第2項から来て
いる。
与えるが、それは半径rのRからの相違として現れる。
図10によってそれがx座標の違いと、方位にどのよう
に影響するかを示そう。点Oを中心として基準半径Rの
円弧EFが基準軌道Vである。OE、OFが境界Fj 、
Fj+1 を示す。初期点Eが同一で半径rのビームが辺O
FのG点と交差するとする。扇形磁極内での基準円はO
Fであり中心角はθである。半径rのビームはEGと進
む。基準ビームよりFOだけ内側に変位する。変位をδ
xとすると、δx=−FGである。また角度は基準ビー
ムよりも(θ−φ’)だけ下側に傾く。変位角δΨはδ
Ψ=θ−φ’によって定義される。
Q=rであるし、OE=OF=Rであるから、一時近似
の範囲で Rθ=rφ’ (9) である。また EK=r(1−cosφ’) (10) EH=R(1−cosθ) (11) FG=HKsecθ (12) である。
qでありmagnetic rigidity というがこれは一定であ
る。だから、磁束密度の傾きnを持つ部分に対しては曲
率半径rとの積Brが基準磁場と基準半径の積に等しい
はずである。 B0 (1−nx/R)r=B0 R (15)
変位角δΨと変位δxは δΨ=−nxθ/R (17) δx=−nxθ2 secθ/2 (18)
ら実際にはサフィックスjが付く。δΨの総和を取ると
全磁極の作用を集めた出口での変位角ΔΨが求められ
る。 ΔΨ=−Σnj aθcosφj /R (19) ここでΣは磁極jの全てについて和を取るということで
ある。
−φ)の重みをもって相加える事によって得られる。 Δx=ΣδΨj (π−φj )Rθ (20) =−Σnj aθ2 cosφj (π−φj ) (21)
ずれたビームUの出口でのz軸からのズレの角度であ
る。同様にΔxは入口で中心からx方向にaだけ左にず
れたビームUのx=−a(一様磁場の場合)からのズレ
変位である。
変位するのかを示す。ビームWの場合はaを−aに置き
換えれば良い。UVの中間のビームの場合はaを、中間
ビームからの距離cによって置き換えれば良い。である
から(19)と(20)によって、入口において中心ビ
ームVから任意の距離離れていたビームの出口での位置
と角度を求めることができる。
にはindex nの2次や3次の項も含まれる。より高次の
項を含んだ解析的な議論もできるが、直観性に欠けるの
でここでは最低次の近似によって傾斜磁場−nx/RB
0 の効果を直観的に説明しているのである。これだけで
傾斜磁場の影響をかなり的確に直観的に把握する事がで
きる。出口でのビームの傾きΔΨがビームの収束性を直
接に表現している。この式は、j番目の磁極の磁場勾配
nj にビームのz軸からのズレacosφj を掛けてそ
れ以後の経路長さ(π−φj )を掛けるということであ
る。cosφがπ/2で符号が変わるので、磁場勾配n
の効果が中間点mで反転するということがはっきりと分
かる。
路図であるが、nが正の場合の軌道のズレを小さい矢印
によって示している。図6を直線化したものが図7であ
る。図6、図7においてnが正の場合、どこにおいても
ビームは外側にずれる。ところがm点でビームは内外反
転するから、前半で外側に偏奇したものは結局内側への
偏奇に寄与することになる。図8はこれを意味する。M
1 での内向きの偏奇は正のnによってもたらされるもの
である。このようなnの意味の反転はcosφという因
子によって端的に表現されている。質量分析マグネット
2の入口(或いは入口以前の任意の位置)、出口(或い
は出口以後の任意の位置)において、ビームのx方向の
広がり、x方向の傾きなどを指定すると、これにふさわ
しい各磁極の傾斜nを上記の式によって求めることがで
きる。実際には前述のようにTRANSPORTという
コードを使いコンピュータによって計算する。入口出口
でのx方向広がり、傾き、y方向広がり、傾きを与える
ことによって、s個の磁極の傾斜nや、収差補正の凹凸
εの値を決めることができる。実施例では、入口での特
性値をX=18cm、X’=10mr、Y=18cm、
Y’=10mrとし、ウエファ位置でのビ−ム特性値
を、X=18cm、X’=20mr、Y=18cm、
Y’=20mrと仮定した。
によって直径36cmのイオンビームを曲げた場合のy
方向のビーム広がりを流れ方向(z方向)に沿って示す
図である。図4はx方向のビーム広がりを流れ方向に沿
って示す図である。図5は流れ方向の同じビームの広が
りを示す斜視図である。マグネット群は10個の扇形磁
石を218度の中心角をなすように並べたものである。
10個の磁石には、表1のようなAngle、n値を与
えている。これは膨大な計算をして求めたものである。
弧を描く軌道を進行するのであるが、ここでは流れを直
線化(z軸に沿って)して示した。黒い部分がマグネッ
トである。マグネットは+y、−yの方向(y=±19
cm±δ)にある。磁場はy方向に生ずる(By )。z
軸の30cm〜410cmの範囲に磁石が設けられる。
磁石間での軌道の中間点は大体z=210cmである。
y方向(上下方向)のビーム広がりは、初め直径が36
cmの略平行ビームであったが、磁石のギャップを通過
する間だいたい40cm以下を維持する。上下方向のビ
ーム広がりはあまり変わらない。マグネットによる磁場
成分はBy 、Bx であるが、強いのはBy でBx は極弱
いからビームはy方向にあまり力を受けない。だから初
め平行ビームであればその後も平行性をほぼ保持して最
後まで平行なビームになる。しかし図3にも僅かに窺え
るがy方向には出口側で少し縮小している。Bx による
収束作用が働いている。これは磁極のx方向の凹凸によ
る収束作用である。
に磁場の力を受ける。であるからx方向にはかなり大き
い変化をする。図4はx方向のビームの広がりのz軸に
沿う変化を示す図である。x方向にビームの受ける力は
vqBy (vはビーム速度)である。これによってイオ
ンビームは軌道半径Rに沿って曲がる。マグネット間の
軌道の中間点でビームが収束している。
である。同じエネルギーであれば一様磁場中で同じ半径
の軌道を描いて荷電粒子が曲がってゆく。約220゜
(実施例の場合)曲がるようなビームであるから、初め
もっと内側において磁石間に入射したものは最も外側に
出るし(図1、図6、図11のW)、最も外側に入射し
たものは最も内側に出る(図1、図6、図11のU)。
だから丁度、磁石間軌道の半ばで同じエネルギー、同じ
質量の荷電粒子はx方向に収束する。m点(z=210
cm)の辺りでの収束はそれに基づくものである。質量
分離のために図6に示すように収束点mのあたりにスリ
ット14を設けると良い。
のままウェファに照射する。イオンビーム面積がウェフ
ァより広いので、ウェファはx方向にもy方向にも走査
する必要がない。ビームも走査する必要がない。ビーム
走査機構が不要である。ウェファの駆動機構が従来の回
転運動と並進運動の組み合わせでなくて単純な回転運動
だけになる。ウェファ支持機構(エンドステーション)
の駆動機構が単純化されるので装置のコストダウンが可
能となる。
要である。短時間でウェファ全体にイオン注入ができ
る。イオン注入のスループットが著しく向上する。
ァに照射される。質量分析をしない大口径イオン源方式
に比べて不純物が混入する可能性が少ない。所望のイオ
ン種のみを注入することができる。これは極めて優れた
特徴である。ボロンをドープする場合例えばジボランを
使うと、水素イオンが大量にできる。質量分離をしない
と水素も試料に注入されてしまう。そのために試料(例
えばSiウェファ)の温度が上がり過ぎる。過熱によっ
て既に作られたデバイスが破壊されるおそれがある。ウ
ェファのサセプタには冷却機構を設けるが冷却能力に限
りがあるので、イオン注入のスループットを制限する。
本発明は質量分離をするので不要イオンの注入を防ぎ、
試料の過熱を防ぐことができる。
ようとすると、従来はイオンビームの磁場スキャンなど
の複雑な構成要素が必要であった。しかし本発明のマグ
ネットには質量分析機構と、ビーム収束機構の両方が具
備されている。このため1台のマグネットによってビー
ム光学系を構成することができる。
むね平行である。このためマグネットからウェファまで
の距離を短くする事ができる。そのために真空中のガス
分子にイオンビームが衝突して中性粒子が発生するのを
抑制することができる。
ことにより、イオン源の強度分布を積極的に変えるよう
にすることができる。そうするとウェファを回転しなく
ても注入均一性を確保することができる。このためには
フィラメント型のイオン源であれば、フィラメントの熱
電子放出量を制御する。従来は質量分析ができなかった
ので不純物発生の少ないプラズマ方式のイオン源を用い
ざるを得なかった。プラズマ方式であると、ビーム強度
を時間的に変動させることは難しいからそのようなこと
は不可能であった。本発明は質量分析をするので、不純
物が混ざり易いフィラメントイオン源を使う事ができ
る。フィラメントから不純物が出るが、質量分析するの
で不純物は除去される。フィラメントイオン源はビーム
強度を制御できるからそのようなことが可能になる。イ
オン源強度を制御して、注入均一性を向上させるという
ようなことは、本発明が初めて成し得たことである。
7.ウェファ周辺に設けられたビームモニタによりビー
ム異常が検出されると、分析スリット部に設けられたビ
ームシャッタを閉じることによって、直ちにビームを遮
断することができる。
してマグネットの存在するy方向のビーム広がりの様子
を示す図。
してマグネットの存在する方向と直交するx方向のビー
ム広がりの様子を示す図。
して経路に沿ったイオンビームの広がる様子を示す斜視
図。
って曲げた時の経路を示す原理図。
直して入口から入ったビームが交差して出口に至ること
を説明する変形座標図。
線に直してビームを平行線によって表現した変形座標
図。
行直線座標において一つのビームが磁極の磁場によって
紆余曲折することを説明する図。
準円弧Rから半径が僅かにずれた円弧を描くビームがそ
の磁極の終端で、基準円弧からどれだけ距離角度が異な
るのかを示す図。
n=0とした無摂動ビ−ムの軌跡を示す平面図。磁石数
は10個で全偏向角は218°である。
の最も内側でマグネットから出るビーム V 入口中央部から質量分析マグネットに入り中心を通
って出口中央部から出るビーム W 入口の最も内側から質量分析マグネットに入り出口
の最も外側でマグネットから出るビーム
Claims (6)
- 【請求項1】 直交2方向に広がりをもつ大面積のイオ
ンビ−ムを生成するイオン源1と、湾曲傾斜面を持つ複
数の扇形対向磁極M1 、M2 、…、Ms を円弧状に配列
した質量分析マグネット2と、試料3を支持する試料支
持機構8よりなり、イオン源1から出た大面積イオンビ
−ムを質量分析マグネット2の入口4に入射させ質量分
離し出口5から出た直交2方向に試料3以上の広がりを
もつ大面積イオンビ−ムを、走査しないで、試料3に照
射するようにした事を特徴とするイオン注入装置。 - 【請求項2】 質量分析マグネットの扇形対向磁極M
1 、M2 、…、Ms の傾斜を示すn値と、湾曲を表すε
の値を磁極毎に異なる値を与えて、大面積のイオンビ−
ムが中間点の磁極近傍のm点で磁場方向に直交するx方
向に収束し、磁場方向のy方向には発散しないようにし
た事を特徴とする請求項1に記載のイオン注入。 - 【請求項3】 質量分析マグネットの扇形対向磁極M
1 、M2 、…、Ms の分割数sは10である(s=1
0)ことを特徴とする請求項2に記載のイオン注入装
置。 - 【請求項4】 質量分析マグネットの中間点の磁極近傍
のx方向収束点にスリット14を設け不要イオンビ−ム
をスリット14に衝突させることによって排除した事を
特徴とする請求項3に記載のイオン注入装置。 - 【請求項5】 質量分析マグネットの各ピースはビーム
の収差を補正するために曲面を持つ事を特徴とする請求
項4に記載のイオン注入装置。 - 【請求項6】 試料支持機構8はイオン注入均一性を向
上させるため試料3を回転させるようにしたことを特徴
とする請求項5に記載のイオン注入装置。
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