JP2006344566A - イオンビーム発生装置、イオンビーム発生方法および機能素子の製造方法 - Google Patents

イオンビーム発生装置、イオンビーム発生方法および機能素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 特定のイオン種からなる大面積のイオンビーム束を出力する。
【解決手段】 イオンビーム発生装置20は、イオン源1と、イオンビーム引出手段10と、イオンビームの質量分離機2への入射位置が外径側であるほど、イオンビームの軌道半径が大きくなるようにイオンビームの湾曲度を変化させるビーム湾曲度変化手段5、6を有する質量分離機2と、質量分離機2の出口部2aにおいて特定の傾斜角を有するイオンビームを優先的に通過させるケーシング部材7とを備えている。
【選択図】図1

Description

本発明は、特定のイオン種からなる大面積のイオンビーム束を出力可能とするイオンビーム発生装置、これを用いたイオンビーム発生方法および、このイオンビーム発生装置を用いて機能素子を製造する機能素子の製造方法に関する。
従来より、半導体集積回路(IC)やTFT液晶表示素子などの半導体デバイスの製造工程においては、所定の導電型の半導体領域を形成するために、半導体に対してイオン注入(イオンドーピング)処理が施されている。なお、LDD構造トランジスタの低キャリア密度導電層や、閾値電圧調整のために低ドーズイオンが注入されるチャンネル部などを形成する際には、特に、高い精度のイオン注入(イオンドーピング)処理が必要である。
このイオン注入(イオンドーピング)工程では、半導体領域に対して特定のイオン種を高精度に注入するという従来からの要求に加えて、さらに、近年では、大面積の基板に対するイオン注入処理が要求されてきている。したがって、特定のイオン種からなる大面積のイオンビーム束を出力することを可能とするイオンビーム発生装置が切望されている。
この要求に答える従来のイオンビーム発生装置として、特許文献1には、特定のイオン種からなる縦長のイオンビーム束を出力することを可能とする装置が開示されている。これを図22に示している。
図22は、特許文献1に開示されている従来のイオンビーム発生装置の基本構成例を模式的に示す要部断面図である。
図22において、従来のイオンビーム発生装置100は、イオン源101と、質量分離機102と、スリット板107とを有している。
イオン源101からは、複数種のイオンからなる第1イオンビーム束Iaが出力される。第1イオンビーム束Iaは、紙面に対して垂直な方向(以下、y方向とする)、および、図中のx方向に幅を有する長方形断面のビーム束であり、特に、y方向に縦長のビーム束である。なお、上記y方向は後述する磁場(磁束密度)Byの方向であって、x方向はイオンビーム束の断面においてy方向(磁場Byの方向)に垂直な方向である。
質量分離機102では、磁場作用によって、第1イオンビーム束Iaに含まれる複数種のイオンの軌道が、それぞれ、そのイオンの質量に応じた半径で湾曲される。
スリット板107では、質量分離機102によって軌道が湾曲されたイオンのうち、長穴108を通過可能な特定質量のイオンのイオンビームのみが取り出され、第3イオンビーム束Icとして出力される。
スリット板107の長穴108から出力された第3イオンビーム束Icは、被処理物109に照射されてイオン注入処理が行なわれる。
上記質量分離機102は、主として、ヨーク104、内側コイル105および外側コイル106によって構成されている。
ヨーク104は、図22の紙面に対して垂直な方向(y方向)から見た側面が、扇形状をなしている(以下、扇形の径方向をr方向とする)。また、このヨーク104を、扇形状の湾曲に沿った方向(ry面に直交する方向で、以下、z方向とする)から見た断面形状は、図23に示すように、中央部に開口部104eを有するロ字型となっている。
図23は、z方向の下流側から上流側に向けてロ字型ヨーク104を見たときの断面図であって、図22の質量分離機102をry面で切断した場合の断面図である。
図23において、ロ字型ヨーク104の内側ヨーク部104dには内側コイル105が、また、外側ヨーク部104bには外側コイル106が、それぞれ巻回されている。なお、イオンビームは、開口部104e内に設けられた真空ケース103の内部空間103eを通過する。
上記内側コイル105および外側コイル106にはそれぞれ、図23中に矢印viおよびvoで示す方向に磁場が生成されるように電流が流されている。双方の内側コイル105および外側コイル106によって生成される磁場の反発作用により、開口部104e内(真空ケース103内の内部空間103e)に、y方向の磁場Byが形成される。この磁場Byの作用により、開口部104e内(真空ケース103内)を進行するイオンの軌道が、略z方向に沿って湾曲させられる。
上記従来の構成によれば、ロ字型ヨーク104を用いると共に、双方の内側コイル105および外側コイル106による磁場の反発作用を利用することにより、開口部104eのy方向の幅、即ち、磁極間のギャップが広くても、y方向に均一な磁場(∂By/∂y≒0)を効率よく形成することができる。
この結果、y方向に縦長のイオンビーム束であっても一様に湾曲させることが可能となり、y方向に縦長の第1イオンビーム束Iaに対しても高精度な質量分離を行うことができる。これにより、特定のイオン種からなる縦長のイオンビーム束(第3イオンビーム束Ic)を出力することが可能となる。
なお、上記特許文献1には、上記作用がより顕著なものとなるように、内側コイル105と外側コイル106のそれぞれを、さらに、複数のコイルに分割した構成が記載されている。
さらに、上記特許文献1に開示されている従来のイオンビーム発生装置100の構成によれば、内側コイル105と外側コイル106とがそれぞれ独立して設けられているため、これらのコイルに流す電流を調整することによって、r方向(質量分離機102の径方向r)に磁場勾配(∂By/∂r)を付与することができる。この結果、第1イオンビーム束Iaにおけるx方向の幅を維持したまま、収束発散させずに、平行なイオンビーム束として第3イオンビーム束Icを出力することが可能である。
なお、特許文献2には空芯ソレノイドの構成例が開示され、特許文献3には、イオンビーム中に接続用導体を形成する構成例が開示されている。これは詳細に後述する実施形態で引用する。
特許第3449198号公報 特開2004−152557号公報 特開2002−203805号公報
図22および図23で前述したように、上記特許文献1に開示されている従来のイオンビーム発生装置100によれば、特定のイオン種からなり、y方向(磁場Byの方向)に縦長のイオンビーム束(第3イオンビーム束Ic)を出力することが可能である。
しかしながら、この従来のイオンビーム発生装置100では、イオンビーム束(第3イオンビーム束Ic)のx方向(磁場Byに対して直角方向)の幅を広げることができないという課題があった。
即ち、従来のイオンビーム発生装置100において、十分な質量分離精度(イオン種分離精度)を確保し、かつ、イオンビーム束のx方向(磁場Byに対して直角方向)の幅を広げようとすると、質量分離精度の確保ためにスリット板107の長穴108の幅Woutを狭くする必要があり、また、スリット板107を通過した後のイオンビーム束の幅を広げるために、スリット板107と被処理物109との間の距離を大きく取る必要がある。これらを実現することが困難であるため、従来のイオンビーム発生装置100では、イオンビーム束(第3イオンビーム束Ic)のx方向(磁場Byに対して直角の方向)の幅を十分に広げることができなかった。この課題について、以下のように詳述する。
図24(a)〜図24(c)はそれぞれ、長穴幅Woutを種々変化させて、磁場強度(磁束密度)Byと、スリット板107から出力される第3イオンビーム束Icのビーム電流との関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
本シミュレーションでは、イオン源101から出力される第1イオンビーム束Iaに、2種のイオン(第1イオン:質量m1、第2イオン:質量m2(=2×m1))が、それぞれ等量含まれているものとしている。
図24では、第1イオンによるビーム電流(Ic1)を点線で、また、第2イオンによるビーム電流(Ic2)を一点鎖線でそれぞれ示している。さらに、第1イオンと第2イオンのビーム電流の和(Ict=Ic1+Ic2)、即ち、第3イオンビーム束Icの総ビーム電流は実線で示している。
なお、実際には、それぞれのイオンによる個別のビーム電流(Ic1、Ic2)を測定することはできず、測定可能であるのは、これらの和である第3イオンビーム束Icのビーム電流(Ict)のみである。
試算条件については、質量分離機102(ヨーク104)の中心角を90°とし、また、真空ケース103の径方向(r方向)の幅Winを、その中心(r=rc)における半径の値の約70%(Win≒rc×0.7)とした。さらに、スリット板107は、質量分離機102の出口部102aに密着しているものとした。
図24(a)は、スリット板107の長穴108の幅Woutを、真空ケース103の幅Winに対して1/4倍、図24(b)は1/2倍、図24(c)は1/1倍として、ビーム電流をそれぞれ計算した結果を示している。
なお、図24の各図の縦軸はビーム電流の相対値を示しており、一方のイオン種(第1イオンまたは第2イオン)の全てが長穴108を通過した場合の値を「1」としている。また、図24の各図の横軸については、磁場強度(磁束密度)Byを任意スケールで示している。
図24(a)→図24(b)→図24(c)に示すように、長穴108の幅Woutを順次広げていくと、第1イオンのビーム電流カーブ(Ic1)と第2イオンのビーム電流カーブ(Ic2)との重複部分が大きくなり、両者の分離が困難になってくることが分かる。
長穴108の幅Woutが広い場合、例えば図24(c)に示すようにWout/Win=1/1の場合には、第1イオンを全く含まず、かつ、第2イオンを多く含むようにして、第2イオンのみを効果的に抽出しようとすると、磁場(磁束密度)Byを図中のBy1〜By2の範囲に設定する必要がある。
しかしながら、この磁場範囲は、実際に測定される第3イオンビーム束Icのカーブ(Ict)において、ピークなどの特徴点とならないため、検出することができない。これは、第1イオンビームと第2イオンビームの双方のビーム電流カーブの重複部分でピークが生じてしまう結果であり、質量分離(イオン種分離)の精度が不十分であることを意味している。
このように、長穴幅Woutが広い場合には、第2イオンのみを効果的に抽出するための適切な磁場設定を行うことができず、さらに、このために誤った磁場設定を行ってしまう可能性も高い。
例えば、第3イオンビーム束Icのビーム電流Ictがピークとなる値に磁場(磁束密度)Byを設定した場合(By=Bymax)には、第1イオンと第2イオンとが全く分離されない状態となる。この状態は、図25に示すイオンビームの軌跡を参照すると、より理解が容易になる。
図25は、図22のイオンビーム発生装置100において第1イオンと第2イオンとが全く分離されない状態のイオンビーム軌跡の一例を示すシミュレーション結果図である。ここでは、第1イオンの軌跡を点線で示し、第2イオンの軌跡を実線で示している。
図25に示すように、長穴幅Woutが広い場合には、第2イオンによるイオンビーム束Ic2に併せて、第1イオンによるイオンビーム束Ic1もスリット板107から出力されてしまう。したがって、十分な質量分離(イオン種分離)精度を確保しようとすると、スリット板107の長穴幅Woutを狭くせざるを得ない。
上記のように、図22および図23に示す従来のイオンビーム発生装置100では、十分な質量分離精度を確保するために、長穴108の幅Woutを狭くする必要がある。このため、イオンビーム束のx方向(磁場Byに対して垂直な方向)の幅を広げることが困難である。即ち、幅広のイオンビーム束を得ようとすると、長穴108の位置でビーム束を収束させると共に、その後の発散によりビーム束の幅を広げる必要がある。
しかしながら、長穴108の幅を狭くした場合には、長穴108通過後のビーム束の広がり角も小さくなるため、長穴108(スリット板107)と被処理物109との間の距離を大きく取らなければ、ビーム束の幅を広げることができない。また、所定幅のビーム束を得るためには、この長穴108(スリット板107)と被処理物109との間の距離を厳格に管理する必要がある。さらに、長穴108の幅を狭くし過ぎると、所望のイオンも長穴108を通過することができなくなり、ビーム電流が低下する虞れがある。
したがって、幅広ビーム束を得るための上記設定は実現が困難であり、図22および図23に示す従来のイオンビーム発生装置100では、イオンビーム束(第3イオンビーム束Ic)のx方向(磁場Byに対して垂直な方向)の幅を広げることができなかった。
一方、単純にイオンビーム束の幅を広げるためには、r方向(質量分離機102の径方向)に磁場勾配(∂By/∂r)を付与することにより、イオンビーム束を収束発散させないようにして、幅広の平行ビーム束(第3イオンビーム束Ic)を得ることも可能である。
しかしながら、この手法を用いた場合には、幅広の平行なビーム束を得ることはできても、十分な質量分離精度(イオン種の分離精度)を確保することができない。この課題について、以下に詳述する。
図26(a)は、Wout/Win=1/1におけるビーム電流カーブについて、磁場勾配を付与した場合のシミュレーション結果を示すグラフであり、図26(b)は、磁場勾配を付与しない場合のシミュレーション結果を示すグラフである。
なお、図26(a)は、下記(式A)で表される磁場By(r)によって磁場勾配を付与した結果を示しており、図26の各図の横軸は、真空ケース103の径方向中心の磁場By(rc)を任意スケールで表している。また、図26の各図の縦軸は、図24の場合と同様に、ビーム電流の相対値を示しており、一方のイオン種(第1イオンまたは第2イオン)の全てが長穴108を通過した場合の値を「1」としている。
By(r)=By(rc)×(rc/r) ・・・ (式A)
上記(式A)において、rは質量分離機102における曲率の中心を原点(r=0)とする径方向座標であり、rcは真空ケース103における径方向中心のr座標である。
図26の各図を比較すると、磁場勾配を付与しても、第1イオンのカーブ(Ic1)と第2イオンのカーブ(Ic2)との重複部分が少なくならないことが分かる。即ち、図26(a)に示すように磁場勾配を付与した場合には、図27に示すように幅広の平行なビーム束を得ることはできるが、質量分離精度(イオン種の分離精度)は特に改善されない。
本発明は、上記従来の問題を解決するもので、特定のイオン種からなり、x方向(磁場に対して垂直な方向)に幅広で大面積のイオンビーム束(第3イオンビーム束Ic)を出力できるイオンビーム発生装置、これを用いたイオンビーム発生方法、およびこのイオンビーム発生装置を用いて作製する機能素子の製造方法を提供することを目的とする。
本発明のイオンビーム発生装置は、質量分離機で磁場を与えて複数種類のイオンの各イオンビームの軌道を湾曲させることにより、該複数種類のイオンから特定種類のイオンを分離抽出し、該特定種類のイオンのイオンビームを出力可能とするイオンビーム発生装置において、該質量分離機の内径側から外径側に向かうに従って該イオンビームの軌道半径が大きくなるように、該イオンビームの、該内径側から外径側に向かう径方向における入射位置に応じて該イオンビームの湾曲度を変化させるビーム湾曲度変化手段を有しており、該質量分離機の出口部において特定の傾斜角を持つイオンビームを優先的に通過させるように、該出口部に直線状の内壁面を有するケーシング部材が設けられているものであり、そのことにより上記目的が達成される。
本発明のイオンビーム発生装置は、質量分離機で磁場を与えて複数種類のイオンの各イオンビームの軌道を湾曲させることにより、該複数種類のイオンから特定種類のイオンを分離抽出し、該特定種類のイオンのイオンビームを出力可能とするイオンビーム発生装置において、該質量分離機は、内径側から外径側に向かうに従って該イオンビームの軌道半径が大きくなるように、該イオンビームの、該内径側から外径側に向かう径方向における入射位置に応じて該イオンビームの湾曲度を変化させるビーム湾曲度変化手段を有しており、該質量分離機の出口部において特定の傾斜角を持つイオンビームを優先的に通過させるように、該出口部に直線状の内壁面を有するケーシング部材が設けられているものであり、そのことにより上記目的が達成される。
また、好ましくは、本発明のイオンビーム発生装置におけるケーシング部材は前記質量分離機の出口部と連接しており、前記イオンビームの進行方向における該ケーシング部材の直線状の内壁面の長さLは、該質量分離機の出口部の、前記内径側から外径側に向かう径方向における幅以上で、装置設置スペースで許される範囲内の寸法である。
さらに、好ましくは、本発明のイオンビーム発生装置において、前記長さLは前記幅の2倍から5倍である。
本発明のイオンビーム発生装置は、質量分離機で磁場を与えて複数種類のイオンの各イオンビームの軌道を湾曲させることにより、該複数種類のイオンから特定種類のイオンを分離抽出し、該特定種類のイオンのイオンビームを出力可能とするイオンビーム発生装置において、該質量分離機の内径側から外径側に向かうに従って該イオンビームの軌道半径が大きくなるように、該イオンビームの、該内径側から外径側に向かう径方向における入射位置に応じて該イオンビームの湾曲度を変化させるビーム湾曲度変化手段を有し、該ビーム湾曲度変化手段は、該質量分離機の内径側の外周壁面に沿って複数本配置された円弧状の内径側導体と、該質量分離機の外径側の外周壁面に沿って複数本配置された円弧状の外径側導体とを有し、該イオンビームに磁場を付与する該外径側導体の有効本数が、該イオンビームに磁場を付与する該内径側導体の有効本数よりも少なく構成されているものであり、そのことにより上記目的が達成される。
また、好ましくは、本発明のイオンビーム発生装置において、複数種類のイオンを生成するイオン源と、該イオン源で生成された該複数種類のイオンを、第1方向に所定幅を有するイオンビーム束として引き出すイオンビーム引出手段とを更に有し、前記質量分離機は、該イオンビーム引出手段から引き出された該イオンビーム束に対して、該第1方向および該イオンビーム束の進行方向に垂直な方向の前記磁場を与えて、該複数種類のイオンから特定種類のイオンを分離抽出し、該特定種類のイオンのイオンビームを分離出力可能とする。
本発明のイオンビーム発生装置は、複数種類のイオンを生成するイオン源と、該イオン源で生成された該複数種類のイオンを、第1方向に所定幅を有するイオンビーム束として引き出すイオンビーム引出手段と、該イオンビーム引出手段から引き出された該イオンビーム束に対して、該第1方向および該イオンビーム束の進行方向に垂直な第2方向の磁場を与えて、該イオンビーム束を構成する各イオンビームの軌道を湾曲させて、該複数種類のイオンから特定種類のイオンを分離抽出し、該特定種類のイオンのイオンビームを出力可能とする質量分離機とを備え、該イオンビーム引出手段は、該第2方向に延在し、該第1方向に間隔を隔てて並べられた複数の引出電極が設けられ、該複数の引出電極のそれぞれに、該第1方向における該引出電極の位置に応じて、該質量分離機の内径側から外径側に向かうに従って大きな負電圧を印加するビーム初速勾配生成手段を有しており、そのことにより上記目的が達成される。
また、好ましくは、本発明のイオンビーム発生装置における前記質量分離機から出力される特定種類のイオンのイオンビームは、互いに略平行な複数本のイオンビームで、該複数本のイオンビームは、前記内径側から外径側に向かう径方向における前記質量分離機の出口部の幅と等しい幅のイオンビーム束を構成している。
さらに、好ましくは、本発明のイオンビーム発生装置におけるビーム湾曲度変化手段は、前記質量分離機の内径側から外径側に向かうに従って前記磁場が小さくなるように磁場勾配を付与する磁場勾配生成手段である。
さらに、好ましくは、本発明のイオンビーム発生装置におけるビーム湾曲度変化手段は、前記質量分離機の内径側外周壁面および外径側外周壁面にそれぞれ配置された内側コイルと外側コイルとを有し、電流値×ターン数が該内側コイルよりも該外側コイルの方が小さく構成されている。
さらに、好ましくは、本発明のイオンビーム発生装置におけるビーム湾曲度変化手段は、前記質量分離機の内径側外周壁面および外径側外周壁面にそれぞれ配置された内側コイルと外側コイルとを有し、該内側コイルと該外側コイルのターン数が同じで、該外側コイルに流れる電流値が該内側コイルに流れる電流値よりも小さく設定されている。
さらに、好ましくは、本発明のイオンビーム発生装置におけるビーム湾曲度変化手段は、前記質量分離機の内径側外周壁面および外径側外周壁面にそれぞれ配置された内側コイルと外側コイルとを有し、該内側コイルと該外側コイルに流れる電流値が同じで、該外側コイルのターン数が該内側コイルのターン数よりも少なく設定されている。
さらに、好ましくは、本発明のイオンビーム発生装置における磁場勾配生成手段は、 前記質量分離機の内径側外周壁面に沿って複数本配置された円弧状の内径側導体と、該質量分離機の外径側外周壁面に沿って複数本配置された円弧状の外径側導体とを有し、前記イオンビームに磁場を付与する該外径側導体の有効本数が、前記イオンビームに磁場を付与する該内径側導体の有効本数よりも少なく構成されている。
さらに、好ましくは、本発明のイオンビーム発生装置における複数本の外径側導体のうちの一部の外径側導体に磁気シールドが施されて、該外径側導体の有効本数が前記内径側導体の有効本数よりも少なく構成されている。
さらに、好ましくは、本発明のイオンビーム発生装置における外径側導体の本数が前記内径側導体の本数よりも少なく構成されている。
さらに、好ましくは、本発明のイオンビーム発生装置における磁場勾配生成手段は、 前記質量分離機の内径側外周壁面に沿って配置された円弧状の内径側導体を有する内径側磁気回路と、該質量分離機の外径側外周壁面に沿って配置された円弧状の外径側導体を有する外径側磁気回路とを備え、該外径側磁気回路の磁気抵抗値が該内径側磁気回路の磁気抵抗値よりも大きく構成されている。
さらに、好ましくは、本発明のイオンビーム発生装置における外径側磁気回路の磁路長が前記内径側磁気回路の磁路長よりも長く構成されている。
さらに、好ましくは、本発明のイオンビーム発生装置における外径側磁気回路の磁路断面積が前記内径側磁気回路の磁路断面積よりも小さく構成されている。
さらに、好ましくは、本発明のイオンビーム発生装置における外径側磁気回路および前記内径側磁気回路はヨーク部材を有し、前記外径側磁気回路のヨーク部材が前記内径側磁気回路のヨーク部材よりも低透磁率の材料によって構成されている。
さらに、好ましくは、本発明のイオンビーム発生装置における磁場勾配生成手段は、前記外径側導体と前記内径側導体とを順次接続する各接続用導体を更に有し、前記複数本の外径側導体と前記複数本の内径側導体とがそれぞれ1本毎に、該接続用導体を介して、該外径側導体→該接続用導体→該内径側導体→該接続用導体→該外径側導体・・・の順に順次連続的に接続され、そのことによってソレノイドコイルが構成されている。
さらに、好ましくは、本発明のイオンビーム発生装置における磁場勾配生成手段は、前記外径側導体と前記内径側導体とを順次接続する各接続用導体を更に有し、前記複数本の外径側導体と前記複数本の内径側導体とが、該接続用導体→該外径側導体→該接続用導体→該内径側導体→該接続用導体→該内径側導体→該接続用導体→該外径側導体・・・の順に順次連続的に接続されてソレノイドコイルが構成されている。
さらに、好ましくは、本発明のイオンビーム発生装置における磁場勾配生成手段は、前記外径側導体と前記内径側導体とを接続する各接続用導体を更に有し、該外径側導体と該内径側導体とが1本ずつ該接続用導体で接続されて1ループ電流路が複数構成されている。
さらに、好ましくは、本発明のイオンビーム発生装置における磁場勾配生成手段は、前記質量分離機の前記磁場方向の両端面側にそれぞれ磁極が配置され、該質量分離機の内径側ほど前記磁場が大きくなるように構成された補助マグネットを有する。
さらに、好ましくは、本発明のイオンビーム発生装置における磁場勾配を有する磁場B(r)は、
B(r)=B(rc)×(rc/r) ・・・ (式1)
但し、rは前記質量分離機の外径および内径の曲率中心を原点(r=0)としたときの径方向の座標位置、r=rcは、該質量分離機において前記イオンビームが通過する内部空間における径方向中心のr座標、
によって設定されている。
さらに、好ましくは、本発明のイオンビーム発生装置における質量分離機において前記イオンビームが通過する内部空間における径方向中心の磁場B(rc)は、
B(rc)=(2×V×m/q)0.5/rc ・・・ (式2)
但し、Vはイオン源とイオンビーム引出手段との間に印加される電圧の絶対値、mは前記特定のイオンの質量、qは前記特定のイオンの電荷、
によって設定されている。
さらに、好ましくは、本発明のイオンビーム発生装置におけるビーム湾曲度変化手段は、前記質量分離機に入射されるイオンビーム束の各イオンビームにおけるイオンの飛来速度が、前記質量分離機の内径側から外径側に向かうに従って大きくなるように、速度勾配を付与するビーム初速勾配生成手段である。
さらに、好ましくは、本発明のイオンビーム発生装置におけるビーム初速勾配生成手段は、前記質量分離機の内径側から外径側に向かう第1方向に垂直な方向に延在し、該第1方向に間隔を隔てて並べられた複数の引出電極が設けられ、該複数の引出電極のそれぞれに、該第1方向における該引出電極の位置に応じて、該質量分離機の内径側から外径側に向かうに従って大きな負電圧を印加するように構成されている。
さらに、好ましくは、本発明のイオンビーム発生装置における複数の引出電極はそれぞれ、抵抗体を介して直列接続されており、抵抗分割によって前記電圧を印加する。
さらに、好ましくは、本発明のイオンビーム発生装置におけるビーム初速勾配生成手段は、前記イオンビーム引出手段に設けられている。
さらに、好ましくは、本発明のイオンビーム発生装置における複数本の引出電極に印加される電圧の絶対値V(r)は、
V(r)=V(rc)×(r/rc) ・・・ (式3)
但し、rは前記質量分離機の外径および内径の曲率中心を原点(r=0)としたときの径方向の座標位置、r=rcは、該質量分離機において前記イオンビームが通過する内部空間における径方向中心のr座標、
によって設定されている。
さらに、好ましくは、本発明のイオンビーム発生装置における質量分離機において前記イオンビームが通過する内部空間における径方向中心に位置する、前記引出電極に印加される電圧の絶対値V(rc)は、
V(rc)=q×(B×rc)/(2×m) ・・・ (式4)
但し、mは前記特定のイオンの質量、qは前記特定のイオンの電荷、Bは磁場強度
によって設定されている。
また、本発明のイオンビーム発生方法は、本発明の上記イオンビーム発生装置を用いて、特定イオンの平行なイオンビームからなるイオンビーム束を出力させるものであり、そのことにより上記目的が達成される。
本発明の機能素子の製造方法は、本発明の上記イオンビーム発生装置を用いて不純物イオン注入が為された領域を形成する工程を含み、そのことにより上記目的が達成される。
上記構成により、以下に、本発明の作用について説明する。
本発明にあっては、磁場勾配生成手段やビーム初速勾配生成手段などのビーム湾曲度変化手段によって、イオンビーム束を構成する個々のイオンビームにおける質量分離機への入射位置が内径側から外径側に向かうに従って、イオンビームの軌道半径が大きくなるように、質量分離機内でイオンビームの湾曲度を変化させる。これにより、イオンビームを収束発散させないようにして、質量分離機の出口部において、内径側から外径側に向かう方向(x方向)に通常幅よりも幅広のイオンビーム束を形成することが可能となる。
また、上記のビーム湾曲度変化手段によって、特定のイオン種のイオンビームを、質量分離機の出口部において特定の傾斜角を有する平行なイオンビームとすることができ、さらに、従来のスリット板の代わりに、直線状の壁面を有するケーシング部材を用いて、質量分離機の出口部において特定の傾斜角を有するイオンビームを優先的に通過させることにより、特定の傾斜角をもつ上記特定のイオン種のイオンビームからなる幅広(x方向)のイオンビーム束を出力することが可能となる。したがって、x方向に幅広のイオンビーム束に対して、十分な質量分離精度を確保することができ、その結果、特定のイオン種からなる大面積(x方向に幅広)のイオンビーム束を出力することが可能となる。
以上により、本発明のイオンビーム発生装置によれば、質量分離機内で特定のイオン種類によるイオンビームを同心円状に湾曲させ、質量分離機の出口部において特定の傾斜角を有する平行なイオンビームとするビーム湾曲度変化手段と、質量分離機の出口部において特定の傾斜角を有するイオンビームを優先的に通過させるケーシング部材とを設けることによって、磁場に対して垂直な方向(x方向)に幅広のイオンビーム束に対しても、十分な質量分離精度を確保することができる。すなわち、特定のイオン種からなる大面積(x方向に幅広)のイオンビーム束を出力することが可能となる。
このような本発明のイオンビーム発生装置を用いることにより、ICやTFT液晶素子などの半導体デバイスの製造工程において、特定のイオン種類からなる大面積のイオンビーム束によって、高精度に大面積のイオン注入処理を行うことができる。したがって、高精度のイオン注入が要求される、LDD構造トランジスタの低キャリア密度導電層や、閾値電圧調整のために低ドーズイオンが注入されるチャネル部など、所定の導電型の半導体領域を容易に、かつ、高速に形成して、トランジスタなどの機能素子を作製することが可能となる。このようにして作製された機能素子は、高スイッチング特性、低消費電力および高信頼性を有するデバイスとして非常に有用であり、また、大面積のイオンビームを用いて高スループットで作製されるため、非常に低コスト化することができる。
以下に、本発明のイオンビーム発生装置の実施形態1〜9について、図面を参照しながら詳細に説明する。
(実施形態1)
本実施形態1は、図22に示す従来のイオンビーム発生装置100の要部構成例と類似しているものの、従来のスリット板107に代えて、後述するケーシング部材を備えている点に特徴構成があり、このケーシング部材を設けると共に、後述する質量分離機の径方向に磁場勾配を与える磁場勾配生成手段を設けることによって、x方向(磁場に対して垂直な方向)に幅広の特定イオン種からなる大面積イオンビーム束を出力可能としたものである。
図1は、本発明の実施形態1に係るイオンビーム発生装置の概略構成例を示す断面図であり、図2は、図1のその主要部である質量分離機とその周辺部の構成例を示す断面斜視図である。
図1および図2において、本実施形態1のイオンビーム発生装置20は、イオン源1と、イオンビーム引出手段としての引出電極10と、ビーム湾曲度変化手段を備えた質量分離機2と、ケーシング部材7とを有している。
イオン源1では、放電などにより複数種のイオンが生成される。このイオン源1は、例えばアノード1aとカソード1bの間で原料ガス(例えばH希釈されたB)を分解することによって、複数種のイオン(B 、B 、H など)が生成されるように構成されている。なお、アノード1aとカソード1bの間には、効率的に原料ガスを分解できるように、電子供給用のフィラメント1cなどが設けられていてもよい。
引出電極10は、負にバイアスされており、この引出電極10によって、上記イオン源1で生成された複数種のイオン(B 、B 、H など)が、第1イオンビーム束Iaとして引き出され、後述する質量分離機2に入射される。なお、上記イオン源1と引出電極10とを併せたものが、図22に示す従来のイオンビーム発生装置100におけるイオン源101に相当する。
この引出電極10から出力される第1イオンビーム束Iaは、図22に示す従来のイオンビーム発生装置100の場合と同様に、図中のx方向、およびy方向(図1では、紙面に対して垂直な方向)に幅を有する長方形断面のビーム束であるが、従来技術に比べてx方向の幅が広く設定されている。互いに直交する上記x方向およびy方向はそれぞれ、特許請求の範囲における第1方向および第2方向に対応している。なお、本明細書において、y方向は、後述する磁場Byの方向と定義し、また、x方向は、イオンビーム束の断面においてy方向(磁場Byの方向)に垂直な方向と定義している。
質量分離機2では、引出電極10によってイオン源1から引き出された第1イオンビーム束Iaに対してy方向の磁場を与え、そのことにより、第1イオンビーム束Iaに含まれる複数種のイオンの軌道が、それぞれ、質量および入射位置(x方向の位置)に応じた半径で湾曲される。これにより、第1イオンビーム束Iaから分離されて、それぞれのイオン種に対応する複数のイオンビーム束(第2イオンビーム束Ib)が作られる。例えば、第1イオンビーム束Iaに、2種のイオン(第1イオン:質量m1、第2イオン:質量m2(=2×m1))が含まれている場合には、図3に示すように、第2イオンビーム束Ib1(図3中の破線)とIb2(図3中の実線)が作られる。
この質量分離機2は、図1および図2に示すように、ヨーク4、内側コイル5および外側コイル6によって構成されており、質量分離機2(ヨーク4)をy方向(第2方向)から見た側面は、扇形状をなしている。なお、この扇形の径方向(r方向)は、質量分離機2の入口部2cにおいて、x方向(第1方向)と一致している。
また、ヨーク4を、扇形状の湾曲に沿った方向(ry面に直交する方向、以下、z方向と呼ぶ)から見た断面は、図4に示すように、中央に開口部4eを有するロ字型となっている。
図4は、図1の質量分離機2をry面で切断した場合の断面図であって、z方向の下流側から上流側に向けて、図1の質量分離機2を見た場合の断面図である。
図4に示すように、このロ字型ヨーク4のうち、内径側の内側ヨーク部4dに内側コイル5が、また、外径側の外側ヨーク部4bに外側コイル6がそれぞれ巻回されている。イオンビームは、開口部4e内に設けられた真空ケース3の内部空間3eを通過する。
上記内側コイル5と外側コイル6にはそれぞれ、図4中の矢印viおよびvoの方向に磁場が生成されるように電流が流されている。双方の内側コイル5と外側コイル6によってそれぞれ生成される各磁場の反発作用により、開口部4e内(真空ケース3の内部空間3e)に、y方向の磁場Byが形成される。この磁場(磁束密度)Byの作用により、真空ケース3内を進行するイオンの軌道が、略z方向に沿って湾曲させられる。
本実施形態1の質量分離機2においては、その内径側から外径側に向かうに従って、y方向の磁場(磁束密度)Byが小さくなるように磁場勾配が付与されている(∂By/∂r<0)。具体的には、ターン数(Turn/m)が同じで、外側コイル6に流れる電流が、内側コイル5に流れる電流よりも小さく設定されている。または、コイルを流れる電流が同じで、外側コイル6のターン数(Turn/m)が、内側コイル5のターン数よりも少なく巻回されている。これらによって、ロ字型ヨーク4の開口部4e内(真空ケース3の内部空間3e内)に磁場勾配が付与される。なお、電流×ターン数が内側コイル5よりも外側コイル6が小さければ、その内径側から外径側に向かうに従って、y方向の磁場(磁束密度)Byが小さくなるように磁場勾配が付与される。また、本実施形態1において、内側コイル5および外側コイル6は磁場勾配生成手段(ビーム湾曲度変化手段)に対応する。
上記磁場勾配(∂By/∂r)を有する磁場By(r)は、好ましくは、下記(式1)のように設定される。
By(r)=By(rc)×(rc/r) (式1)
なお、上記(式1)において、rは質量分離機2の径方向の座標位置であり、質量分離機2(ヨーク4、真空ケース3)の外径および内径の曲率中心を原点(r=0)としている。また、r=rcは、質量分離機2においてイオンビームが通過する真空ケース3の内部空間3eにおける径方向中心のr座標を示している。
以上のように磁場勾配を設定することによって、図3に示すように、第2イオンビーム束Ib1およびIb2を構成する個々のイオンビームIb1−1、Ib1−2、Ib1−3、Ib1−4、およびIb2−1、Ib2−2、Ib2−3、Ib2−4は、内径側から外径側に向うに従って、イオンビームの軌道半径が大きくなる。
特に、質量分離機2においてイオンビームが通過する真空ケース3内の内部空間3eにおける径方向中心の磁場By(rc)を、
By(rc)=(2×V×m2/q)0.5/rc (式2)
となるように設定した場合には、図3に示すように、第2イオン(質量:m2)によるイオンビームIb2−1、Ib2−2、Ib2−3およびIb2−4の軌道が、質量分離機2(ヨーク4、真空ケース3)の外径曲率および内径曲率と同心円状となる。
上記(式2)において、Vはイオン源1と引出電極10との間に印加される電圧であり、m2はイオンビーム束に図3に示すように2種類のイオンビームが含まれている場合の第2イオンの質量であり、qは第2イオンの電荷である。
したがって、図3に示すように、これらのイオンビームIb2−1、Ib2−2、Ib2−3およびIb2−4からなる第2イオンビーム束Ib2は、質量分離機2の出口部2aにおいて、z軸に対する傾斜角が0゜の平行なビーム束となる。
一方、第2イオン以外のイオン(第1イオン)によるイオンビームの軌道は、図3に示すように、質量分離機2(ヨーク4、真空ケース3)の外径曲率および内径曲率と同心円状とはならず、したがって、真空ケース3の壁面3d,3bと衝突するか、または、質量分離機2の出口部2aにおいてz軸に対して大きく傾斜する。
即ち、図3において、第1イオンによるイオンビームIb1−1およびIb1−2は、真空ケース3の壁面3dに衝突している。また、イオンビームIb1−3およびIb1−4は、真空ケース3の壁面3dおよび3bと衝突していないが、質量分離機2の出口部2aにおいてz軸に対して大きく傾斜している。
図1および図2に示すケーシング部材7は、質量分離機2(真空ケース3)の出口部2aと接続して設けられており、真空ケース3の壁面3dに連接する内側の直線状壁面7dおよび、真空ケース3の壁面3bに連接する外側の直線状壁面7bを有している。
直線状壁面7dおよび7bは、質量分離機2の出口部2aにおいて、真空ケース3の壁面(曲面)3dおよび3bの接線方向(z方向)に延在している。即ち、ケーシング部材7は、質量分離機2(真空ケース3)の出口部2aにおいて、z軸に対する傾斜角が0゜のイオンビームを優先的に通過させるためのものであり、その壁面7dおよび7bに衝突せずに通過したイオンビームのみが、第3イオンビーム束Icとして出力される。
図3の事例では、ケーシング部材7の壁面7dおよび7bに平行なイオンビームIb2−1、Ib2−2、Ib2−3およびIb2−4、即ち、第2イオンビーム束Ib2を構成するイオンビームは、ケーシング部材7を通過することができる。
一方、質量分離機2(真空ケース3)の出口部2aにおいて大きく傾斜しているイオンビームIb1−3およびIb1−4は、ケーシング部材7の壁面7dと衝突するため、ケーシング部材7を通過することができない。
この結果、第2イオンからなる第2イオンビーム束Ib2のみが、そのまま、第3イオンビーム束Icとしてケーシング部材7から出力される。
即ち、図22に示す従来のイオンビーム発生装置100では、スリット板107によりx方向の幅のみを制限して質量分離していたのに対して、本実施形態1では、ケーシング部材7の壁面7dおよび7bによって、さらに傾斜角にも制限を与えている。
このことによって、本実施形態1では、ケーシング部材7のx方向の幅が広くても、十分な質量分離精度を確保することができる。これによって、特定のイオン種からなる、x方向に幅広のイオンビーム束(第3イオンビーム束Ic)を出力すること可能となる。
このように、所望のイオン種(特定質量のイオン種:第2イオン)に対して特定の傾斜角を付与するために、本実施形態1では、質量分離機2にビーム湾曲度変化手段としての磁場勾配生成手段を設け、上記磁場勾配を付与している。
以上のようにして、ケーシング部材7から出力された第3イオンビーム束Icは、図1の被処理物(半導体)9上に照射され、ここにイオン注入処理が行なわれる。このイオン注入により所定の導電型とされた半導体領域を用いて、TFTなどの機能素子が作製される。
なお、第3イオンビーム束Icは、図1に示すように、ケーシング部材7よりも後段に設けられた加速電極11によって適宜に加速され、加速されたイオンビーム束が被処理物9上に照射される。
但し、この場合、加速電極11は、ケーシング部材7よりも後段に配置する必要があり、ケーシング部材7の前段に配置することは好ましくない。これは、磁場勾配により制御されているはずのイオン種毎の傾斜角が、加速電極11による一定方向の加速によって、イオン種によらずほぼ一方向を向いてしまうからである。なお、加速電極11は、ない場合もあり得る。
次に、本実施形態1のイオンビーム発生装置20による効果について、詳細に説明する。
図5は、本実施形態1のイオンビーム発生装置20における磁場強度(磁束密度)Byと第3イオンビーム束Icのビーム電流の関係について、従来技術と比較したシミュレーション結果を示すグラフである。
図5(a)は、本実施形態1のイオンビーム発生装置20によるシミュレーション結果であり、ケーシング部材7を設けると共に、質量分離機2の径方向に、上記(式1)で表される磁場勾配を付与した場合のシミュレーション結果である。なお、y方向には、磁場勾配がないものとしている(∂By/∂y=0)。
本シミュレーションでは、引出電極10から出力される第1イオンビーム束Iaに、2種のイオン(第1イオン:質量m1、第2イオン:質量m2(=2×m1))がそれぞれ等量含まれているものとする。
第1イオンによるビーム電流(Ic1)は図5中の点線で、また、第2イオンによるビーム電流(Ic2)は一点鎖線でそれぞれ示している。さらに、第1イオンと第2イオンのビーム電流の和(Ict=Ic1+Ic2)、即ち、第3イオンビーム束Icの総ビーム電流は実線で示している。なお、実際には、各々のイオンによる個別のビーム電流(Ic1、Ic2)を測定することはできず、測定可能であるのは、これらの和である第3イオンビーム束Icのビーム電流(Ict)のみである。
試算条件については、質量分離機2(ヨーク4)の中心角を90°とし、また、真空ケース3の径方向(r方向)の幅Winを、その中心(r=rc)における半径の値の約70%(Win≒rc×0.7)とした。さらに、ケーシング部材7は、質量分離機2(真空ケース3)の出口部2aと接続しており、その幅Woutは、真空ケース3の幅Winと同じであるとした(Wout=Win)。さらに、ケーシング部材7の長さLは、幅Woutの2.5倍とした(L=Wout×2.5)。なお、ケーシング部材7のz方向(イオンビームの進行方向)の長さLは、質量分離機2の出口部2aの、内径側から外径側に向かう径方向における幅(Wout)以上で、装置設置スペースで許される範囲内の寸法であればよい。より好ましくは、この長さLはその幅Woutの2倍から5倍に設定される。なお、幅Woutは、Wout≦Winであればよく、Wout=Winに限られない。
一方、図5(b)および図5(c)は、従来のイオンビーム発生装置100によるシミュレーション結果を示している。
図5(b)は、磁場勾配を付与し、ケーシング部材7に替えて、これと同じ幅Woutのスリット板107を設けた場合の結果であり、図26(a)と同じグラフである。また、図5(c)は、磁場勾配を付与しなかった場合(∂By(r)/∂r=0、By(r)=By(rc))の結果であり、図26(b)(または図24(c))と同じグラフである。その他の試算条件は、図5(a)と同じである。
図5(a)〜図5(c)の各図の横軸は、真空ケース3の径方向中心の磁場(磁束密度)By(rc)を任意スケールで示している。また、各図の縦軸は、ビーム電流の相対値を表しており、一方のイオン種(第1イオンまたは第2イオン)の全てがケーシング部材7またはスリット板107を通過した場合の値を「1」としている。
図5(a)〜図5(c)を比較して、本実施形態1の場合(図5(a))には、第1イオンのビーム電流カーブ(Ic1)と第2イオンのビーム電流カーブ(Ic2)との重複が少なく、両者を十分に分離できることが分かる。
例えば、図5(a)の場合に、第1イオンを全く含まず、かつ、第2イオンを多く含むようにして、第2イオンのみを効果的に抽出しようとすると、磁場(磁束密度)By(rc)を図中のBy_Ic2maxに設定する必要がある。この磁場の値(By_Ic2max)は、実際に測定される第3イオンビーム束Icのカーブ(Ict)においてもピーク点となっているために、確実に検出することができる。
一方、ケーシング部材7を設けない図5(b)の場合や、さらに、磁場勾配を付与しない図5(c)の場合には、上記最適な磁場の値By_Ic2maxが、実際に測定される第3イオンビーム束Icのカーブ(Ict)においてピークなどの特徴点とならないため、検出することができない。しかも、この磁場(By_Ic2max)においては、第3イオンビーム束Icに、第2イオンだけでなく第1イオンも混在している。
上記状態は、By(rc)=By_Ic2maxにおけるイオンビームの軌跡を、図5(a)〜図5(c)の各々の条件について計算した結果である図6(a)〜(c)を参照すると、より理解しやすい。
即ち、本実施形態1の場合(図6(a))には、特定イオン(第2イオン)によるイオンビーム束Ib2のみが、質量分離機2(真空ケース3)の出口部2aにおいて、z方向に対して傾斜角が0゜の平行な幅広のイオンビーム束となり、さらに、ケーシング部材7が、この傾斜角が0゜の平行ビーム束を優先的に通過させている。このようにして、特定イオン(第2イオン)のみによるイオンビーム束Ic2を出力できる。したがって、ケーシング部材7の幅Woutが広くても、特定イオン(第2イオン)のみによるイオンビーム束Ic2を出力できる。
一方、ケーシング部材7を設けない場合(図6(b))や、さらに、磁場勾配を付与しない場合(図6(c))には、所望イオン(第2イオン)によるイオンビーム束Ib2と併せて、第1イオンによるイオンビーム束Ib1の一部もスリット107から出力されてしまう。したがって、これらの場合には、スリット板107の幅Woutを狭くせざるを得ず、その結果、x方向(磁場に対して垂直な方向)に幅広のイオンビーム束を出力することができない。
以上のように、本実施形態1のイオンビーム発生装置20によれば、内側コイル5と外側コイル6とを含むビーム湾曲度変化手段(磁場勾配生成手段)と、ケーシング部材7との双方の作用によって、特定のイオン種からなる大面積(x方向に幅広)のイオンビーム束を出力することが可能となる。
磁場勾配生成手段(ビーム湾曲度変化手段)では、特定のイオン種によるイオンビームを同心円状に湾曲させて、これらのイオンビームが、質量分離機2の出口部2aにおいて、z方向に対して傾斜角が0゜の平行な幅広ビーム束となるようにしている。また、ケーシング部材7では、この傾斜角が0゜である、特定のイオン種によるビーム束を、優先的に通過させるようにしている。即ち、スリット板によって幅(イオンビームの通過位置)のみを制限して質量分離を行っていた従来技術に対して、さらにイオンビームの傾斜角にも制限を与えて質量分離を行っている。これにより、ケーシング部材7のx方向(磁場に対して垂直な方向)の幅がより広くても、十分な質量分離精度を確保することが可能となる。
このように、本実施形態1のイオンビーム発生装置20によれば、質量分離機2の径方向に磁場勾配を付与すると共に、ケーシング部材7を設けることにより、従来技術の課題であった、特定のイオン種からなり、x方向(磁場に対して直角方向)に幅広のイオンビーム束を出力することが可能となる。
なお、本実施形態1では、質量分離機2の出口部2aにおいて,z方向に対して傾斜角が0゜となるイオンビーム束を優先的に通過させるために、ケーシング部材7の直線状壁面7dおよび7bをz方向と平行にしている。
しかしながら、このケーシング部材7は、質量分離機2の出口部2aにおいて、特定の傾斜角を有するイオンビームを優先的に通過させるものであればよく、z方向に対して傾斜角を有するビーム束を優先的に通過させたい場合には、これに応じて、直線状壁面7dおよび7bを傾斜させればよい。
また、上記では、最も好ましい例として、(式1)のような磁場勾配を付与する場合について本実施形態の効果を説明したが、内径側から外径側に向かうに従って磁場Byが小さくなるような磁場勾配であればよく、また、必ずしも、内径側から外径側に向かって連続的に磁場が変化するものでなくてもよい。要は、質量分離機の内径側から外径側に向かってイオンビームの軌道半径を大きくできるものであればよい。但し、(式1)とは異なる磁場勾配の場合には、厳密にはイオンビームが同心円状に湾曲せず、質量分離機の出口部でのイオンビームの平行性は若干崩れる。
また、本実施形態1では、質量分離機2が扇形状である場合について説明したが、イオンビームが所定の軌道半径で湾曲されるものであれば、必ずしも扇形状である必要はなく、例えば、図28に示すように、外径側壁面および内径側壁面が、円弧状ではなくテーパ状をなしているものでもよい。
上記実施形態1のイオンビーム発生装置20では、内側コイル5と外側コイル6とからなるビーム湾曲度変化手段(磁場勾配生成手段)、およびケーシング部材7を主要構成要素として、これらの双方の作用によって、特定のイオン種からなる大面積(x方向に幅広)のイオンビーム束を出力できるようにしている。
上記主要2構成要素のうち、ビーム湾曲度変化手段については、種々の形態を採用することが可能であり、以下の本発明の実施形態2〜9では、本実施形態1とは異なる形態のビーム湾曲度変化手段を採用している。
なお、以下の各実施形態2〜9において、ビーム湾曲度変化手段以外の構成は、本実施形態1の場合と同様である。したがって、各実施形態2〜9においてビーム湾曲度変化手段が、本実施形態1の場合と同様の作用効果を奏するものであれば、本実施形態1の場合と同様の効果を得ることができる。
(実施形態2)
上記実施形態1のイオンビーム発生装置20では、質量分離機2(真空ケース3)の径方向に磁場勾配を付与するために、2組のコイル(内側コイル5、外側コイル6)とヨーク4を用いたが、イオンビーム発生装置の構成を簡略化、および軽量化するためには、1組のコイルで、かつ、ヨークを用いずに、上記実施形態1と同等の効果を達成することが好ましい。本実施形態2では、簡略、かつ、軽量な構成で上記実施形態1と同等の効果を得ることが可能なイオンビーム発生装置について説明する。
図7は、本発明の実施形態2に係るイオンビーム発生装置の主要部(後述する質量分離機202とその周辺部)の断面斜視図である。
図7において、本実施形態2のイオンビーム発生装置200は、図1および図2に示すイオンビーム発生装置20の質量分離機2に代えて、空芯ソレノイド型の質量分離機202を備えている。その他の構成については、上記実施形態1のイオンビーム発生装置20と同様であるので、ここでは、その図示とその説明を省略する。なお、本実施形態2の空芯ソレノイドの構造は、特許文献2に開示されている構造を一部応用したものである。
図7に示すように、本実施形態2の質量分離機202は、イオンビームが通過する真空ケース203と、ソレノイドコイル205とによって構成されている。
真空ケース203は、上記実施形態1のイオンビーム発生装置20の真空ケース3と同様のものであるが、その外径側曲面203bおよび内径側曲面203dに接して、ソレノイドコイル205が配置されている。なお、図中の203hおよび7hは、それぞれ、真空ケース203およびケーシング部材7のy方向(第2方向)の端面を示している。
ソレノイドコイル205は、大別すると、4つの導体グループ205a、205b、205cおよび205dから構成されている。
ソレノイドコイル205の導体グループ205bは、真空ケース203の外径側曲面203bに沿った外径側導体グループであり、円弧状の外径側導体205b−1、205b−2、・・・が、y方向に複数本配置されて構成されている。
ソレノイドコイル205の導体グループ205dは、真空ケース203の内径側曲面203dに沿った内径側導体グループであり、円弧状の内径側導体205d−1、205d−2、・・・が、y方向に複数本配置されて構成されている。
ソレノイドコイル205の導体グループ205aおよび205cはそれぞれ、質量分離機202の出口部202aおよび入口部202cにおいて、外径側導体205b−1、205b−2、・・・と、内径側導体205d−1、205d−2、・・・とを接続する接続用導体グループである。なお、接続用導体グループ205aおよび205cは、ソレノイドコイル205がイオンビームの通路を遮らないように、真空ケース203の入口部および出口部を避けて、真空ケース203の外部に配置されている。
図8は、図7のソレノイドコイル205の接続状態を説明するための模式図である。
図8に示すように、導体グループ205a、205b、205cおよび205dを構成する各導体は、(接続用導体205a−1)→(外径側導体205b−1)→(接続用導体205c−1)→(内径側導体205d−1)→(接続用導体205a−2)→(外径側導体205b−2)・・・というように、外径側導体と内径側導体とが接続用導体によって順次連続的に接続されて、空芯ソレノイドコイル205を構成している。この空芯ソレノイドコイル205によって、真空ケース203内に、y方向の磁場Byが形成される。
しかしながら、上記構成のみでは、空芯ソレノイドコイル205による磁場が形成されても、磁場勾配(∂By/∂r<0)を付与することはできない。
そこで、本実施形態2では、外径側導体グループ205bを構成する一部の導体、図7および図8の事例では、外径側導体205b−2、205b−4、205b−6、・・・に対して磁気シールドが施されている。
具体的には、磁気シールドされるべき外径側導体205b−2、205b−4、205b−6、・・・の各々の周囲が、それぞれ、外径側磁気シールド管215b−2、215b−4、215b−6、・・・(以下では、総称して、外径側磁気シールド管215bと呼ぶこともある)によって覆われている。なお、外径側磁気シールド管215bには、鉄などの高透磁率材料が用いられる。
この構成によって、外径側導体205b−2、205b−4、205b−6、・・・から生成される各々の磁場は、それぞれ、外径側磁気シールド管215b−2、215b−4、215b−6、・・・によってシールドされるため、真空ケース203の中には侵入してこず、磁場Byの形成には寄与しない。
一方、それ以外の外径側導体205b−1、205b−3、205b−5、・・、および内径側導体グループ205dを構成する全ての導体205d−1、205d−2、205d−3、・・・に対しては磁気シールドが施されておらず、これらの導体は、磁場Byの形成に寄与している。
上記構成により、全ての内径側導体205d−1、205d−2、205d−3、・・・が磁場Byの形成に寄与する一方で、外径側導体グループ205bについては、磁気シールドされていない外径側導体205b−1、205b−3、205b−5、・・・のみが磁場Byの形成に寄与することになる。
したがって、一続きのソレノイドコイル205でありながらも、外径側導体グループ205bの有効本数(Turn/m)を、内径側導体グループ205dの有効本数(Turn/m)よりも少なくすることができる。その結果、上記実施形態1の場合と同様に、質量分離機202の内径側から外径側に向って磁場Byが小さくなるような磁場勾配(∂By/∂r<0)を付与することができる。
なお、本実施形態2において、磁場勾配を付与する外径側導体グループ205bと内径側導体グループ205dは、特許請求の範囲における磁場勾配生成手段(ビーム湾曲度変化手段)に対応する。
以上のように、本実施形態2においても、質量分離機202の径方向に磁場勾配を付与することができるため、上記実施形態1と同様に、ケーシング部材7の作用と併せて、特定のイオン種からなる大面積のイオンビーム束を出力することが可能となる。
しかも、本実施形態2ではコイルは1組のみであり、また、ヨークも用いていないため、イオンビーム発生装置200として、より簡略な構成で、かつ、より軽量なものとすることができる。
なお、本実施形態2において、接続用導体グループ205aおよび205cによる磁場が問題となるような場合には、図9に示すように、接続用導体グループ205aおよび205cに対しても、接続部磁気シールド管216によって、適宜、磁気シールドを施して磁場による影響を防ぐことができる。
また、本実施形態2では、質量分離機202が扇形状である場合について説明したが、イオンビームが所定の軌道半径で湾曲されるものであれば、必ずしも扇形状である必要はなく、例えば、図28に示すように、外径側壁面および内径側壁面が、円弧状ではなくテーパ状をなしているものでもよい。この場合には、外径側導体205bおよび内径側導体205dは、円弧状ではなく直線状のものとなるが、特許請求の範囲では、これらを総称して、「円弧状」と表現している。
(実施形態3)
上記実施形態2では、磁気シールド管215bを用いることによって、外径側導体グループ205bの有効本数(Turn/m)を、内径側導体グループ205dの有効本数よりも少なくする場合について説明したが、本実施形態3では、このような磁気シールド管215bを用いずに、接続用導体の引回しの工夫によって、外径側導体の本数(Turn/m)を内径側導体の本数より少なくすることにより、質量分離機の径方向に磁場勾配を付与する場合について説明する。
図10は、本発明の実施形態3に係るイオンビーム発生装置において、ソレノイドコイルの接続状態を示す模式図である。
図10において、本実施形態3のイオンビーム発生装置300は、図7〜図9に示すイオンビーム発生装置200のソレノイドコイル205に代えて、ソレノイドコイル305を用いている。その他の構成については、上記実施形態2のイオンビーム発生装置200の場合と同様であるので、ここでは、その図示とその説明を省略する。
図10に示すように、本実施形態のソレノイドコイル305は、5つの導体グループ305a、305b、305c、305dおよび305fによって構成されている。
ソレノイドコイル305の導体グループ305bは、図示しない真空ケースの外径側曲面に沿った外径側導体グループであり、円弧状の外径側導体305b−1、305b−3、・・・が、y方向に複数本配置されている。
ソレノイドコイル305の導体グループ305dは、図示しない真空ケースの内径側曲面に沿った内径側導体グループであり、円弧状の内径側導体305d−1、305d−2、305d−3、・・・が、y方向に複数本配置されている。
ソレノイドコイル305の導体グループ305aおよび305cはそれぞれ、図示しない質量分離機の出口部および入口部において、外径側導体305b−1、305b−3、・・・と、内径側導体305d−1、305d−2、305d−3、・・・とを接続する第1接続用導体グループである。
ソレノイドコイル305の導体グループ305fは、外径側導体を介さずに内径側導体同士を接続する第2接続用導体グループである。これによって、一続きのソレノイドコイル305でありながらも、外径側導体グループ305bの本数(Turn/m)を、内径側導体グループ305dの本数(Turn/m)よりも少なくしている。
このように、本実施形態3では、外径側導体グループ305bを構成する外径側導体の本数(Turn/m)が、内径側導体グループ305dを構成する内径側導体の本数(Turn/m)よりも少なくする点を特徴構成としている。
したがって、ソレノイドコイル305の導体グループ305a、305b、305c、305dおよび305fを構成する各導体は、図10に示すように、(第1接続用導体305a−1)→(外径側導体305b−1)→(第1接続用導体305c−1)→(内径側導体305d−1)→(第2接続用導体305f−1)→(内径側導体305d−2)→(第1接続用導体305a−3)→(外径側導体305b−3)→・・・というように、外径側導体と内径側導体とが第1接続用導体により、内径側導体同士が第2接続用導体により、順次連続的に接続されて、空芯ソレノイドコイル305が構成されている。
この空芯ソレノイドコイル305によって、真空ケース内にy方向の磁場Byが形成され、しかも、質量分離機(真空ケース)の内径側から外径側に向って磁場Byが小さくなるような磁場勾配(∂By/∂r<0)が付与される。
この作用効果は、空芯ソレノイドコイル305が、以下の2つの接続パターンで構成されていることにより得られるものである。
第1接続パターンは、上記実施形態2の場合と同様に、外径側導体と内径側導体とが接続されるパターンである。この第1接続パターンでは、(第1接続用導体305a−1)→(外径側導体305b−1)→(第1接続用導体305c−1)→(内径側導体305d−1)というように、外径側導体と内径側導体とが第1接続用導体により接続されている。
第2接続パターンは、外径側導体グループ305bを介さずに、内径側導体同士(例えば、内径側導体305d−1と内径側導体305d−2)が接続されるパターンである。この第2接続パターンでは、(内径側導体305d−1)→(第2接続用導体305f−1)→(内径側導体305d−2)というように、内径側導体同士が第2接続用導体により接続されている。
以上のように、本実施形態3の空芯ソレノイドコイル305によれば、外径側導体と内径側導体を接続する第1接続パターンに加えて、内径側導体同士を接続する第2接続パターンも採用している。このため、一続きのソレノイドコイル305でありながらも、外径側導体グループ305bの導体本数(Turn/m)を、内径側導体グループ305dの導体本数よりも少なくすることができる。
これによって、質量分離機の径方向に磁場勾配を付与することが可能となり、上記実施形態1,2の場合と同様に、ケーシング部材7の作用効果と併せて、特定のイオン種からなる大面積のイオンビーム束を出力することが可能となる。
しかも、コイルは1組のみで、また、上記実施形態1のようにヨークも用いていないため、イオンビーム発生装置300として、より簡略な構成で、かつ、より軽量なものとすることができる。
さらに、外径側導体グループ305bの導体本数を、実体として内径側導体グループ305dの導体本数よりも少なくすることができるため、上記実施形態2のように、外径側導体の有効本数を内径側導体の有効本数よりも少なくするために、外径側導体に対して磁気シールドを施す必要がなくなる。このため、イオンビーム発生装置の構成を、更により簡略なものとすることができる。
なお、本実施形態3においても、必要に応じて、第1接続用導体グループ305a、305c、および第2接続用導体グループ305fに対して、適宜に磁気シールドを施して不要な磁場の影響を防止するようにしてもよい。
また、本実施形態3の質量分離機も、イオンビームが所定の軌道半径で湾曲されるものであれば、必ずしも扇形状である必要はなく、例えば、図28に示すように、外径側壁面および内径側壁面が、円弧状ではなくテーパ状をなしているものでもよい。この場合には、外径側導体および内径側導体は、円弧状ではなく直線状のものとなるが、特許請求の範囲では、これらを総称して、「円弧状」と表現している。
(実施形態4)
上記実施形態2のイオンビーム発生装置200では、ソレノイドコイル205がイオンビームの通路を遮らないように、接続用導体グループ205aおよび205cを真空ケース203の外部に配置したが、接続用導体グループの配置は、上記構成には限らず、特許文献3に開示されている構造を一部応用して、接続用導体グループをイオンビームの通路中に配置することも可能であり、本実施形態4では、この場合について説明する。
図11は、本発明の実施形態4に係るイオンビーム発生装置の主要部(後述の質量分離機402とその周辺部)の断面斜視図である。
図11において、本実施形態のイオンビーム発生装置400は、図7および図8に示すイオンビーム発生装置200において真空ケース203の外部に配置されていた接続用導体を、イオンビームの通路中に設けたものである。その他の構成は、実施形態2と同様であるので、図示と説明を省略する。
図11に示すように、本実施形態4の質量分離機402は、イオンビームが通過する真空ケース403とソレノイドコイル405とによって構成されている。なお、真空ケース403そのものは、上記実施形態2のイオンビーム発生装置200の真空ケース203と同様のものである。
ソレノイドコイル405は、4つの導体グループ405a、405b、405cおよび405dによって構成されている。
ソレノイドコイル405の導体グループ405bは、真空ケース403の外径側曲面403bに沿った外径側導体グループであり、円弧状の外径側導体405b−1、405b−2、・・・が、y方向に複数本配置されている。
ソレノイドコイル405の導体グループ405dは、真空ケース403の内径側曲面403dに沿った内径側導体グループであり、円弧状の内径側導体405d−1、405d−2、・・・が、y方向に複数本配置されている。
上記外径側導体グループ405bおよび内径側導体グループ405dは、上記実施形態2の導体グループ205bおよび205dと同じものであり、外径側導体グループ405bを構成する一部の導体(図11および図12の事例では、外径側導体405b−2、405b−4、405b−6、・・・)には、磁気シールド管415b−2、415b−4、415b−6、・・・によって磁気シールドが施されている。
ソレノイドコイル405の導体グループ405aおよび405cはそれぞれ、質量分離機402の出口部402aおよび入口部402cにおいて、外径側導体405b−1、405b−2、・・・と、内径側導体405d−1、405d−2、・・・とを接続する接続用導体グループである。
接続用導体グループ405aおよび405cは、質量分離機402(真空ケース403)の出口部402aおよび入口部402cに面してスリット状に配置されており、この構成が上記実施形態2とは異なる点である。
なお、接続用導体グループ405aおよび405cを構成する各導体405a−1、405a−2、・・・および405c−1、405c−2、・・・には、イオンビームの影響を受けずに電流を流せるように、静電シールドが施されている。
具体的には、接続用導体405a−1、405a−2、・・・および405c−1、405c−2、・・・の各々の周囲が、空間または絶縁物を介して、接続部静電シールド管417a−1、417a−2、・・・および417c−1、417c−2、・・・(以下では、総称して、接続部静電シールド管417と呼ぶこともある)によって覆われている。接続部静電シールド管417には、ステンレスなどの導電性材料が用いられている。
本実施形態4においては、導体グループ405a、405b、405cおよび405dを構成する各導体が、図12に示すように、(接続用導体405a−1)→(外径側導体405b−1)→(接続用導体405c−1)→(内径側導体405d−1)→(接続用導体405a−2)→(外径側導体405b−2)…というように、内径側導体と外径側導体とが接続用導体により順次連続的に接続されて、螺旋状の空芯ソレノイドコイル405が構成されている。
この空芯ソレノイドコイル405によって、真空ケース403内にy方向の磁場Byが形成され、また、質量分離機402(真空ケース403)の内径側から外径側に向って磁場Byが小さくなるような磁場勾配(∂By/∂r<0)が付与されている。
なお、磁場勾配の付与方法は、上記実施形態2と同様であり、一部の外径側導体に磁気シールドを施すことによって、外径側導体グループ405bの有効本数(Turn/m)を、内径側導体グループ405dの有効本数よりも少なくしている。
以上のように、本実施形態4によれば、質量分離機402の径方向に磁場勾配を付与することができるので、上記実施形態2の場合と同様に、ケーシング部材7の作用効果と併せて、特定のイオン種からなる大面積のイオンビーム束を出力することが可能となる。しかも、コイルは1組のみで、また、ヨークも用いていないため、イオンビーム発生装置を、より簡略な構成で、かつ、より軽量なものとすることができる。
さらに、本実施形態4においては、質量分離機402(真空ケース403)の出口部402aおよび入口部402cに面して、接続用導体グループ405aおよび405cを配置しているため、これらの接続用導体グループ405aおよび405cも磁場Byの形成に寄与させることができる。
その結果、z方向(質量分離機402の周方向)における磁場Byの均一性が高まり、上記実施形態2のイオンビーム発生装置200よりも、さらに、質量分離精度(イオン種分離精度)の向上を図ることができる。
さらに、接続用導体グループ405aおよび405cの引き回しの距離が上記実施形態2の場合によりも短くなるため、ソレノイドコイル405の抵抗も小さくなると共に、ソレノイドコイル405を形成するための配線を容易に引き回すことが可能となる。
なお、本実施形態4の質量分離機402も、イオンビームが所定の軌道半径で湾曲されるものであれば、必ずしも扇形状である必要はなく、例えば、図28に示すように、外径側壁面および内径側壁面が、円弧状ではなくテーパ状をなしているものでもよい。この場合には、外径側導体および内径側導体は、円弧状ではなく直線状のものとなるが、特許請求の範囲では、これらを総称して、「円弧状」と表現している。
なお、ここで、本実施形態4の変形例について説明する。
本実施形態4のイオンビーム発生装置400では、質量分離機402(真空ケース403)の入口部402cおよび出口部402aに面して、接続用導体グループ405cおよび405aを配置している。
このため、質量分離機402の入口部402cよりも前段、および出口部402aよりも後段が、ソレノイドコイル405の外部に位置することになり、これらの領域では、微小ながらも真空ケース403の内部とは逆向きの磁場が形成されている。この逆向きの磁場は、質量分離機402に入射されるイオンビーム束や、出力されるイオンビーム束を傾斜させてしまう虞がある。
このような問題に対処するためには、接続用導体グループ405cの前段、および接続用導体グループ405aの後段に、磁気シールド手段を設けておけばよい。
例えば、図13に示すように、接続用導体グループ405cの前段、および接続用導体グループ405aの後段に、スリット状の磁気シールド418cおよび418aを配置することができる。
スリット状磁気シールド418cおよび418aは、複数の磁気シールド棒418c−1、418c−2、・・・および418a−1、418a−2、・・・からなり、各々の磁気シールド418cおよび418aは、接続用導体グループ405cおよび405aの各導体と対向して配置されている。
この構成によれば、質量分離機402の入口部402cよりも前段、および出口部402aよりも後段における磁場が、各磁気シールド418cおよび418aを通るため、スリット状の磁気シールド418cおよび418aのスリット間を通過するイオンビームには、不要な磁場が作用しなくなる。その結果、質量分離機402に入射されるイオンビーム束や、出力されるイオンビーム束が傾斜するような問題を防止することができる。
なお、スリット状磁気シールド418cおよび418aを構成する各磁気シールド棒418c−1、418c−2、・・・および418a−1、418a−2、・・・には、静電シールドが施されていることが好ましく、この場合には、各磁気シールド棒を、図示しない静電シールド管(パイプ)によって覆うことができる。
さらに、磁気シールド手段の別の構成として、上記実施形態4のイオンビーム発生装置400における接続部静電シールド管417aおよび417cの内部に、接続用導体405aおよび405cと共に、磁気シールド棒を設けるような構成としてもよい。
(実施形態5)
上記実施形態4では、磁気シールド管415bを用いることによって、外径側導体グループ405bの有効本数(Turn/m)を、内径側導体グループ405dの有効本数よりも少なくしているが、磁気シールド管415bを用いずに、接続用導体の引回しの工夫によって、外径側導体の本数(Turn/m)を内径側導体の本数より少なくすることも可能であり、本実施形態5では、上記実施形態3のイオンビーム発生装置300において用いた第2接続用導体グループ305fを、上記実施形態4のイオンビーム発生装置400に適用する場合について説明する。
図14は、本発明の実施形態5に係るイオンビーム発生装置におけるソレノイドコイルの接続状態を示す模式図である。
図14に示すように、本実施形態5のソレノイドコイル505は、5つの導体グループ505a、505b、505c、505dおよび505fによって構成されている。
ソレノイドコイル505の導体グループ505bは、図示しない真空ケースの外径側曲面に沿った外径側導体グループであり、円弧状の外径側導体505b−1、505b−3、・・・が、y方向に複数本配置されている。
ソレノイドコイル505の導体グループ505dは、図示しない真空ケースの内径側曲面に沿った内径側導体グループであり、円弧状の内径側導体505d−1、505d−2、505d−3、・・・が、y方向に複数本配置されている。
ソレノイドコイル505の導体グループ505aおよび505cはそれぞれ、図示しない質量分離機の出口部および入口部において、外径側導体505b−1、505b−3、・・・と、内径側導体505d−1、505d−2、505d−3、・・・とを接続する第1接続用導体グループである。
この第1接続用導体グループ505aおよび505cは、上記実施形態4の接続用導体グループ405aおよび405cと同様に、質量分離機の出口部および入口部に面して、スリット状に配置されている。
また、第1接続用導体505a−1、505a−3、・・・および505c−1、505c−3、・・・の各々の周囲が、空間または絶縁物を介して、第1接続部静電シールド管517a−1、517a−3、・・・および517c−1、517c−3、・・・によって覆れている。
ソレノイドコイル505の導体グループ505fは、外径側導体を介さずに内径側導体同士を接続する第2接続用導体グループであり、上記実施形態3のイオンビーム発生装置300に用いた第2接続用導体グループ305fと同様のものである。
導体グループ505a、505b、505c、505dおよび505fを構成する各導体は、図14に示すように、(第1接続用導体505a−1)→(外径側導体505b−1)→(第1接続用導体505c−1)→(内径側導体505d−1)→(第2接続用導体505f−1)→(内径側導体505d−2)→(第1接続用導体505a−3)→(外径側導体505b−3)→…というように、外径側導体と内径側導体が第1接続用導体により、内径側導体同士が第2接続用導体により、順次連続的に接続されて、空芯ソレノイドコイル505が構成されている。
このような接続により、一続きのソレノイドコイル505でありながらも、外径側導体グループ505bの導体本数(Turn/m)を、内径側導体グループ505dの導体本数(Turn/m)よりも少なくすることができる。したがって、質量分離機(真空ケース)の内径側から外径側に向って磁場Byが小さくなるような磁場勾配(∂By/∂r<0)を付与することが可能となる。
以上のように、本実施形態5によれば、外径側導体グループ505bを構成する外径側導体の本数(Turn/m)が、内径側導体グループ505dを構成する内径側導体の本数よりも少なくなっているため、質量分離機の径方向に磁場勾配を付与することができ、上記実施形態4の場合と同等の効果を得ることができる。
さらに、本実施形態5では、外径側導体グループ505bの導体本数を、実体として内径側導体グループ505dの導体本数よりも少なくすることができる。このため、上記実施形態4のように、外径側導体の有効本数を内径側導体の有効本数よりも少なくするために、外径側導体に対して磁気シールドを施す必要がない。このため、イオンビーム発生装置の構成を、より簡略なものとすることができる。
なお、本実施形態5においても、上記実施形態3の場合と同様に、第2接続用導体グループ505fに対して適宜に磁気シールドを施して、不要な磁場の影響を防止するようにしていてもよい。
また、本実施形態5の質量分離機も、イオンビームが所定の軌道半径で湾曲されるものであれば、必ずしも扇形状である必要はなく、例えば、図28に示すように、外径側壁面および内径側壁面が、円弧状ではなくテーパ状をなしているものでもよい。この場合には、外径側導体および内径側導体は、円弧状ではなく直線状のものとなるが、特許請求の範囲では、これらを総称して、「円弧状」と表現している。
(実施形態6)
上記実施形態4では、螺旋状のソレノイドコイル405によって、真空ケース403内にy方向の磁場Byを形成し、また、質量分離機402(真空ケース403)の径方向に磁場勾配を付与していたが、上記磁場Byの形成は、螺旋状のソレノイドコイルに限らず、他の電流路によっても実現可能である。本実施形態6では、これについて説明する。
図15は、本発明の実施形態6に係るイオンビーム発生装置における磁場形成用電流路の構成例を示す模式図である。
図15において、本実施形態6のイオンビーム発生装置600は、図11および図12のイオンビーム発生装置400におけるソレノイドコイル405に代えて、磁場形成用の電流路605を設けたものである。その他の構成は、上記実施形態4の場合と同様であるので、ここでは、その図示とその説明を省略する。
図15に示すように、本実施形態6の電流路605は、6つの導体グループ605a、605b、605c、605d、605gおよび605hによって構成されている。
電流路605の導体グループ605bは、図示しない真空ケースの外径側曲面に沿った外径側導体グループであり、円弧状の外径側導体605b−1、605b−2、・・・がy方向に複数本配置されている。
電流路605の導体グループ605dは、真空ケースの内径側曲面に沿った内径側導体グループであり、円弧状の内径側導体605d−1、605d−2、・・・がy方向に複数本配置されている。
上記外径側導体グループ605bおよび内径側導体グループ605dは、上記実施形態4の導体グループ405bおよび405dと同じものであり、外径側導体グループ605bを構成する一部の導体(図15の事例では、外径側導体605b−2、605b−4、605b−6、・・・)には、磁気シールド管615b−2、615b−4、615b−6、・・・によって磁気シールドが施されている。
電流路605の導体グループ605cは、質量分離機の入口部において、外径側導体605b−1、605b−2、・・と、内径側導体605d−1、605d−2、・・・とを接続する第1接続用導体グループである。
電流路605の導体グループ605aは、質量分離機の出口部において、内径側導体605d−1、605d−2、・・・と、後述する第2配線用導体605hを接続する第3接続用導体グループである。
第1接続用導体グループ605cおよび第3接続用導体グループ605aは、上記実施形態4の接続用導体グループ405cおよび405aと同様に、質量分離機の出口部および入口部に面して、スリット状に配置されている。
また、第3接続用導体605a−1、605a−2、・・・および第1接続用導体605c−1、605c−2、・・・の各々の周囲は、空間または絶縁物を介して、接続部静電シールド管617a−1、617a−2、・・・および617c−1、617c−2、・・・によって覆れている。
電流路605の導体グループ605gは、外径側導体605b−1、605b−2、・・・の各々の端部と接続された第1配線用導体である。
また、電流路605の導体グループ605hは、第3接続用導体605a−1、605a−2、・・・の各々の端部と接続された第2配線用導体である。
本実施形態6では、図15に示すように、(第1配線用導体605g)→(外径側導体グループ605b)→(第1接続用導体グループ605c)→(内径側導体グループ605d)→(第3接続用導体グループ605a)→(第2配線用導体605h)というように外径側導体と内径側導体とが1本ずつ接続されて、電流路605が構成されている。
この電流路605において、外径側導体グループ605bを構成する各外径側導体605b−1、605b−2、・・・は並列に接続されている。これと同様に、内径側導体605d−1、605d−2、・・・も並列に接続されている。即ち、電流路605は、螺旋状のソレノイドではなく、1ループ毎の電流路である。
上記電流路605によって、図示しない真空ケース内にy方向の磁場Byが形成され、また、質量分離機の内径側から外径側に向って磁場Byが小さくなるような磁場勾配(∂By/∂r<0)が付与されている。
このような磁場勾配の付与方法は、上記実施形態4の場合と同様であり、一部の外径側導体に磁気シールドを施すことによって、外径側導体グループ605bの有効本数(Turn/m)を、内径側導体グループ605dの有効本数よりも少なくしている。
以上のように、本実施形態6によれば、質量分離機の径方向に磁場勾配を付与することができるので、上記実施形態4と同様に、ケーシング部材7の作用と併せて、特定のイオン種からなる大面積のイオンビーム束を出力することが可能となる。しかも、コイルは1組のみで、また、ヨークも用いていないため、イオンビーム発生装置を、より簡略な構成で、かつ、より軽量なものとすることができる。
なお、本実施形態6では、1ループ毎の電流路605を用いているために、第1配線用導体605gと第2配線用導体605hとの隙間で、若干の漏洩磁束が生じるが、螺旋状のソレノイドコイルを用いた場合に比べて、その配線形成が容易になる。
また、本実施形態6では、上記実施形態4のイオンビーム発生装置400の構成に対して、1ループ毎の電流路を適用した場合について説明したが、上記実施形態2のイオンビーム発生装置200の構成に対しても、同様の方法で、1ループ毎の電流路を形成することが可能である。
また、本実施形態6の質量分離機も、イオンビームが所定の軌道半径で湾曲されるものであれば、必ずしも扇形状である必要はなく、例えば、図28に示すように、外径側壁面および内径側壁面が、円弧状ではなくテーパ状をなしているものでもよい。この場合には、外径側導体および内径側導体は、円弧状ではなく直線状のものとなるが、特許請求の範囲では、これらを総称して、「円弧状」と表現している。
(実施形態7)
質量分離機の径方向に磁場勾配を付与する磁場勾配生成手段として、上記実施形態1では内側コイル5と外側コイル6を、また、上記実施形態2〜6では、ソレノイドコイル205、305、405、505および605を用いていたが、このような磁場勾配の付与は、上記各実施形態1〜6のようなコイルに限らず、他の構成によっても実現可能である。本実施形態7では、これについて説明する。
図16は、本発明の実施形態7に係るイオンビーム発生装置の主要部(質量分離機702とその周辺部)の断面斜視図である。
図16において、本実施形態7のイオンビーム発生装置700は、図11および図12のイオンビーム発生装置400において、外径側導体の周囲を覆っていた磁気シールド管415b−2、415b−4、415b−6、・・・を取り外し、その替わりに、磁場勾配生成ヨーク720を設けている。その他の構成は、上記実施形態4の場合と同様であるので、ここでは、その図示とその説明を省略する。
本実施形態7の質量分離機702は、イオンビームが通過する真空ケース703、ソレノイドコイル705および磁場勾配生成ヨーク720とによって構成されている。
ソレノイドコイル705は、上記実施形態4の場合と同様に、4つの導体グループ705a、705b、705cおよび705dによって構成されているが、外径側導体グループ705bを構成する各導体には、磁気シールドが施されていない。したがって、このソレノイドコイル705のみでは、質量分離機702の径方向に磁場勾配を付与することができない。
そこで、本実施形態7では、磁場勾配を付与するために、磁場勾配生成ヨーク720を用いている。
磁場勾配生成ヨーク720は、周方向(z方向)から見た断面が図17に示すような形状をしており、大別すると、外径側ヨーク部720bと内径側ヨーク部720dとによって構成されている。
外径側ヨーク部720bは、主として、質量分離機の外径側曲面に沿って配置された円弧状の外径側導体グループ705bによって生成される磁場を通過させる磁気回路となり、特許請求の範囲における外径側磁気回路に対応する。
また、内径側ヨーク部720dは、主として、質量分離機の内径側曲面に沿って配置された円弧状の内径側導体グループ705dによって生成される磁場を通過させる磁気回路となり、特許請求の範囲における内径側磁気回路に対応する。
ここで、外径側ヨーク部720bは、内径側ヨーク部720dに比べて磁気抵抗が大きくなるように、例えば、磁路長が長くなるように、または、磁路断面積が小さくなるように、あるいは磁路長が長くなり、かつ、磁路断面積が小さくなるように構成されている。さらに、外径側ヨーク部720bに、内径側ヨーク部720dよりも低透磁率の材料を用いるようにしてもよい。この場合には、例えば、外径側ヨーク部720bに磁性SUS(ステンレス材)を用い、内径側ヨーク部720dに鉄を用いることもできる。
上記磁場勾配生成ヨーク720を用いることによって、ソレノイドコイル705から生じるy方向の磁場Byに、内径側から外径側に向って磁場Byが小さくなるような磁場勾配(∂By/∂r<0)を付与することができる。
以上のように、本実施形態7によれば、質量分離機702の径方向に磁場勾配を付与することができるので、上記実施形態4の場合と同様に、ケーシング部材7の作用と併せて、特定のイオン種からなる大面積のイオンビーム束を出力することが可能となる。
なお、本実施形態7では、磁場勾配生成ヨーク720を用いているために、イオンビーム発生装置700の重量が重くなるが、外径側導体に対して磁気シールドを施すような構造が不要となるため、イオンビーム発生装置700として、より簡略な構成とすることができる。
また、本実施形態7の質量分離機702も、イオンビームが所定の軌道半径で湾曲されるものであれば、必ずしも扇形状である必要はなく、例えば、図28に示すように、外径側壁面および内径側壁面が、円弧状ではなくテーパ状をなしているものでもよい。この場合には、外径側導体および内径側導体は、円弧状ではなく直線状のものとなるが、特許請求の範囲では、これらを総称して、「円弧状」と表現している。
(実施形態8)
上記実施形態7では、ソレノイドコイル705と併せて、磁場勾配生成ヨーク720を用いることによって磁場勾配を付与したが、上記磁場勾配の形成は、磁場勾配生成ヨーク720に限らず、他の構成によっても実現可能である。本実施形態8では、これについて説明する。
図18は、本発明の実施形態8に係るイオンビーム発生装置の主要部(質量分離機802)の断面図である。
図18において、本実施形態8のイオンビーム発生装置800は、図16および図17に示すイオンイオンビーム発生装置700の磁場勾配生成ヨーク720に代えて、補助マグネット850を設けている。その他の構成は、上記実施形態7の場合と同様であるので、ここでは、その図示とその説明を省略する。
図18に示すように、本実施形態8の質量分離機802は、イオンビームが通過する真空ケース803、ソレノイドコイル805および補助マグネット850によって構成されている。
ソレノイドコイル805は、上記実施形態7のソレノイドコイル705と同様であり、このソレノイドコイル805のみでは、質量分離機802の径方向に磁場勾配を付与することができない。
そこで、本実施形態8では、磁場勾配を付与するために、補助マグネット850を設けている。
補助マグネット850は、補助コイル851と補助ヨーク852とによって構成されている。補助ヨーク852は、質量分離機802のy方向側の端面に磁極852jおよび852kが設けられている。これらの磁極852jおよび852k間のギャップは、質量分離機802の内径側においてy方向の磁場が大きくなるように、質量分離機802の内径側から外径側に向かって大きくなっている。真空ケース803は、この磁極間ギャップ内に配置されている。
なお、図18では、補助ヨーク852の磁極部が、外径側導体グループ805bの付近にまで伸びているが、磁極部の長さは、付与すべき磁場勾配の程度により、適宜に短くするなど調整すればよい。
上記構成により、ソレノイドコイル805から生成される磁場と、補助マグネット850から生成される磁場との双方の寄与によって、真空ケース803内にy方向の磁場Byが形成される。
また、質量分離機802(真空ケース803)の内径側から外径側に向って磁場Byが小さくなるような磁場勾配(∂By/∂r<0)が付与されている。
以上のように、本実施形態8によれば、質量分離機の径方向に磁場勾配を付与することができるので、上記実施形態4の場合と同様に、ケーシング部材7の作用と併せて、特定のイオン種からなる大面積のイオンビーム束を出力することが可能となる。
なお、本実施形態8においては、補助マグネット850を用いているために、イオンビーム発生装置の重量が重くなるが、ソレノイドコイル805とは別に設けられた補助コイル851によって、磁場勾配の程度を適宜に調整することができるため、磁場勾配設定の自由度が広がる。
(実施形態9)
上記実施形態1〜8では、ビーム湾曲度変化手段として磁場勾配生成手段を用いて、この磁場勾配生成手段によって、特定のイオン種からなるイオンビームを同心円状に湾曲させて、質量分離機の出口部側において傾斜角が0゜となる平行なイオンビーム束を形成している。このような磁場勾配生成手段とケーシング部材7との双方の作用によって、特定のイオン種からなる大面積(x方向に幅広)のイオンビーム束を出力できる。
しかしながら、特定のイオン種からなるイオンビームを同心円状に湾曲させるビーム湾曲度変化手段は、上記磁場勾配生成手段には限らない。例えば、質量分離機に入射されるイオンの初速度が、内径側から外径側に向って大きくなるような速度勾配を付与するビーム初速勾配生成手段であってもよい。本実施形態9では、これについて説明する。
図19は、本発明の実施形態9に係るイオンビーム発生装置の主要部(後述の質量分離機902とその周辺部)の断面斜視図である。
図19において、本実施形態9のイオンビーム発生装置900は、図11および図12に示す上記実施形態4のイオンビーム発生装置400において、外径側導体の周囲を覆っていた磁気シールド管415b−2、415b−4、415b−6、・・・を取り外し、さらに、引出電極10の代わりに電位勾配型引出電極910を設けている。その他の構成については、上記実施形態4の場合と同様であるので、ここでは、その図示とその説明を省略する。
まず、本実施形態の質量分離機902の構成について説明する。
質量分離機902は、イオンビームが通過する真空ケース903とソレノイドコイル905とによって構成されている。真空ケース903は、上記実施形態4の真空ケース403と同様のものである。ソレノイドコイル905も、上記実施形態4と同様に、4つの導体グループ905a、905b、905cおよび905dによって構成される螺旋状の空芯ソレノイドである。
但し、本実施形態9では、外径側導体グループ905bを構成する各外径側導体905b−1、905b−2、・・・に磁気シールドが施されていない。したがって、ソレノイドコイル905によって真空ケース903内に形成されるy方向の磁場Byは、質量分離機902の径方向に磁場勾配を持たない(∂By/∂r=0)。上記以外の質量分離機902の構成については、上記実施形態4の場合と同様であるので、ここでは、その説明を省略する。
次に、本実施形態9の電位勾配型引出電極910の構成について説明する。なお、この電位勾配型引出電極910は、特許請求の範囲における、ビーム初速勾配生成手段に対応する。
図19に示すように、電位勾配型引出電極910は、y方向に延在した複数の棒状電極910−1、910−2、・・・が、x方向(質量分離機902の入口部902cにおいては、質量分離機902径方向(r方向)と一致する方向)に複数本並べられて、構成されている。
各棒状の引出電極910−1、910−2、・・・には、x方向の上方に向かうに従がって、即ち、質量分離機902の内径側から外径側に向かうに従って、大きな負電圧V(r)が印加されるようになっている。これにより、電位勾配型引出電極910から引き出されるイオンビーム束を構成する個々のイオンビームに対して、x方向の上方に向かうに従がって、即ち、質量分離機902の内径側から外径側に向かうに従って、イオンの飛来速度vが大きくなるように、速度勾配が付与される。
上記棒状引出電極910−1、910−2、・・に印加される負電圧V(r)は、好ましくは、下式(3)のように設定される。
V(r)=V(rc)×(r/rc) ・・・ (式3)
上記(式3)において、rは質量分離機の径方向の座標位置であり、質量分離機902(真空ケース903)の外径および内径の曲率中心を原点(r=0)としている。また、r=rcは、質量分離機902においてイオンビームが通過する真空ケース903の内部空間903eにおける径方向中心のr座標を示す。さらに、負電圧V(r)はイオン源1に対する電位差である。
上記(式3)の電圧設定については、例えば、棒状引出電極910−1、910−2、・・・の各々を絶縁しておき、それぞれの棒状引出電極に対して、r方向位置に応じた所定の電圧を印加すればよい。
また、図20に示すように、棒状引出電極910−1、910−2、・・の各々を、順次、抵抗体912を介して直列接続し、抵抗分割によってr方向位置(x方向位置)に応じた所定の電圧を印加するようにしてもよい。
図21は、上記(式3)の設定を行った場合について、イオンビーム軌道のシミュレーション結果を示す図である。
本シミュレーションでは、イオン源1から引き出される第1イオンビーム束Iaに、2種のイオン(第1イオン:質量m1、第2イオン:質量m2(=2×m1))が含まれるものとする。また、真空ケース903の径方向中心に位置する棒状引出電極に印加する電圧V(rc)は、下記(式4)のように設定する。
V(rc)=q×(By×rc)/(2×m2) ・・・ (式4)
上記(式4)において、Byはソレノイドコイル905によって生成されるy方向の磁束密度であり、m2は第2イオンの質量であり、qは第2イオンの電荷である。
図21に示すように、上記(式3)および(式4)の設定により、第2イオン(質量:m2)によるイオンビームIb2−1、Ib2−2、Ib2−3およびIb2−4の軌道が、質量分離機902の曲率と同心円状となっていることが分かる。
したがって、これらのイオンビームからなる第2イオンビーム束Ib2は、質量分離機902の出口部902aにおいて、上記実施形態1における図3の場合と同様に、z軸に対する傾斜角が0゜の平行なイオンビーム束となる。
以上のように、本実施形態9においても、特定のイオン種によるイオンビームを質量分離機902の内部で同心円状に湾曲させて、これらのイオンビームが、質量分離機902の出口部902aにおいてz方向に対して傾斜角が0゜の平行な幅広ビーム束となるようにしている。したがって、上記実施形態1〜8の場合と同様に、ケーシング部材7の作用と併せて、特定のイオン種からなる大面積のイオンビーム束を出力することが可能となる。
さらに、本実施形態9のビーム湾曲度変化手段は、電位勾配型引出電極910を設けるだけという簡単な構成である。
なお、本実施形態9の質量分離機902も、イオンビームが所定の軌道半径で湾曲されるものであれば、必ずしも扇形状である必要はなく、例えば、図28に示すように、外径側壁面および内径側壁面が、円弧状ではなくテーパ状をなしているものでもよい。
以上により、本発明のイオンビーム発生装置は、上記実施形態1〜9で説明したように、ビーム湾曲度変化手段(磁場勾配生成手段またはビーム初速勾配生成手段)と、ケーシング部材7との双方の作用によって、特定のイオン種からなる大面積(x方向に幅広)のイオンビーム束を出力することができるようにしている。
具体的には、ビーム湾曲度変化手段(磁場勾配生成手段またはビーム初速勾配生成手段)によって、特定のイオン種によるイオンビームを質量分離機内で同心円状に湾曲させ、これらのイオンビームが、質量分離機の出口部において、傾斜角がz軸に対して0゜の平行な幅広のイオンビーム束となるようにしている。さらに、ケーシング部材7が、この傾斜角が0゜で、特定のイオン種による平行ビーム束を、優先的に通過させるようにしている。
これにより、スリット板によって幅(イオンビームの通過位置)のみを制限して質量分離していた従来技術に対して、さらに、イオンビームの傾斜角にも制限を与えて質量分離を行っている。このため、本発明のイオンビーム発生装置によれば、ケーシング部材のx方向(磁場に対して垂直な方向)の幅が広くても、十分な質量分離精度を確保することが可能となり、特定のイオン種からなる大面積のイオンビーム束を出力することできる。
このような本発明のイオンビーム発生装置を用いることにより、半導体領域に対するイオン注入(イオンドーピング)を、高精度に、かつ、高速に行なうことができる。したがって、高精度のイオン注入(イオンドーピング)が要求される、LDD構造トランジスタにおける低キャリア密度導電層や、閾値電圧調整のために低ドーズイオンが注入されるチャネル部などを、容易に、かつ、高速に形成することができる。
このようにして作製されたトランジスタなどの機能素子は、高スイッチング特性、低消費電力、および高信頼性を有するデバイスとして、非常に有用である。しかも、この機能素子は、大面積のイオンビーム束を用いて高スループットで作製することができるため、非常に低コスト化することができる。
なお、上記実施形態1〜9では、ビーム湾曲度変化手段(磁場勾配生成手段またはイオンビーム初速勾配生成手段)と、ケーシング部材との双方を用いて、その相乗効果により、高精度の質量分離と大面積化の両立を図っている。
しかしながら、質量分離精度よりもイオンビームの大面積化の要求の方が強いような用途に対しては、ケーシング部材7を省略することも可能である。この場合には、特に、実施形態2〜9で説明したビーム湾曲度変化手段(磁場勾配生成手段またはイオンビーム初速勾配生成手段)のみの利用でも、十分な効果が得られる。
また、上記各実施形態1〜9では特に触れなかったが、質量分離機および磁場勾配生成手段による磁場の外部漏洩を防止する必要がある場合には、質量分離機の外周をシールド材で覆うなど、適宜に、磁気シールドを施すことが好ましい。
以上のように、本発明の好ましい実施形態1〜9を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態1〜9に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態1〜9の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
本発明は、特定のイオン種からなる大面積のイオンビーム束を出力可能とするイオンビーム発生装置、これを用いたイオンビーム発生方法および、このイオンビーム発生装置を用いて機能素子を製造する機能素子の製造方法の分野において、特定のイオン種によるイオンビームを質量分離機内で同心円状に湾曲させ、質量分離機の出口部において特定の傾斜角を有する平行なイオンビームとするビーム湾曲度変化手段と、質量分離機の出口部において特定の傾斜角を有するイオンビームを優先的に通過させるケーシング部材とを設けることにより、磁場に対して垂直な方向(x方向)に幅広のイオンビーム束に対しても、十分な質量分離精度を確保することができる。すなわち、特定のイオン種からなる大面積(x方向に幅広)のイオンビーム束を出力することが可能となる。
このような本発明のイオンビーム発生装置を用いることにより、ICやTFT液晶素子などの半導体デバイスの製造工程において、特定のイオン種からなる大面積のイオンビーム束によって、高精度に大面積のイオン注入処理を行うことができる。したがって、高精度のイオン注入が要求される、LDD構造トランジスタの低キャリア密度導電層や、閾値電圧調整のために低ドーズイオンが注入されるチャネル部など、所定の導電型の半導体を容易に、かつ、高速に形成して、トランジスタなどの機能素子作製することが可能となる。このようにして作製された機能素子は、高スイッチング特性、低消費電力および高信頼性を有するデバイスとして非常に有用であり、また、大面積のイオンビームを用いて高スループットで作製されるため、非常に低コスト化することができる。
本発明の実施形態1に係るイオンビーム発生装置の概略構成例を示す断面図である。 図1の質量分離機とその周辺部の構成を示す断面斜視図である。 図1のイオンビーム発生装置におけるイオンビームの軌跡の一例を示すシミュレーション結果図である。 図1の質量分離機をry面で切断した場合の断面図である。 磁場強度(磁束密度)By(rc)と第3イオンビーム束のビーム電流の関係を示すシミュレーション結果図であって、(a)は図1のイオンビーム発生装置、(b)は磁場勾配は付与しているが、ケーシング部材を設けていない従来のイオンビーム発生装置、(c)は磁場勾配を付与せず、ケーシング部材も設けていない従来のイオンビーム発生装置のシミュレーション結果図である。 イオンビームの軌跡を示すシミュレーション結果図であって、(a)は図1のイオンビーム発生装置、(b)は磁場勾配は付与しているが、ケーシング部材を設けていない従来のイオンビーム発生装置、(c)は磁場勾配を付与せず、ケーシング部材も設けていない従来のイオンビーム発生装置のシミュレーション結果図である。 本発明の実施形態2に係るイオンビーム発生装置の主要部の断面斜視図である。 図7のソレノイドコイルの接続状態を説明するための模式図である。 図8のソレノイドコイルとは別の構成例を説明するための模式図である。 本発明の実施形態3に係るイオンビーム発生装置において、ソレノイドコイルの接続状態を示す模式図である。 本発明の実施形態4に係るイオンビーム発生装置の主要部(質量分離機402とその周辺部)の断面斜視図である。 図11のソレノイドコイルの接続状態を説明するための模式図である。 本発明の実施形態4の変形例におけるスリット状の磁気シールドを説明する模式図である。 本発明の実施形態5に係るイオンビーム発生装置におけるソレノイドコイルの接続状態を説明するための模式図である。 本発明の実施形態6に係るイオンビーム発生装置における電流路の構成例を説明するための模式図である。 本発明の実施形態7に係るイオンビーム発生装置の主要部の断面斜視図である。 図16のイオンビーム発生装置の主要部をry面で切断した断面図である。 本発明の実施形態8に係るイオンビーム発生装置の主要部の断面図である。 本発明の実施形態9に係るイオンビーム発生装置の主要部の断面斜視図である。 図19のイオンビーム発生装置における棒状引出電極への電圧印加方法の一例を示す図である。 図19のイオンビーム発生装置における、イオンビームの軌跡の一例を示すシミュレーション結果図である。 特許文献1に開示されている従来のイオンビーム発生装置の基本構成例を模式的に示す要部断面図である。 図22の質量分離機をry面で切断した場合の断面図である。 (a)〜(c)は、長穴幅Woutを種々変化させて、磁場強度(磁束密度)Byと、スリット板から出力される第3イオンビーム束Icのビーム電流との関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。 図22のイオンビーム発生装置において第1イオンと第2イオンとが全く分離されない状態のイオンビーム軌跡の一例を示すシミュレーション結果図である。 (a)は、Wout/Win=1/1におけるビーム電流カーブについて、磁場勾配を付与した場合のシミュレーション結果を示すグラフであり、(b)は、磁場勾配を付与しない場合のシミュレーション結果を示すグラフである。 図26(a)に示す磁場勾配を付与した場合のイオンビーム軌跡の一例を示すシミュレーション結果図である。 図1の質量分離機の外径側壁面および内径側壁面が円弧状ではなくテーパ状をなしている場合の模式図である。
符号の説明
1:イオン源
1a:アノード
1b:カソード
1c:電子供給用フィラメント
2、202、402、702、802、902:質量分離機
2a、202a、402a:質量分離機の出口部
2c、202c、402c:質量分離機の入口部
3、203、403、703、803、903:真空ケース
3b、3d、203b、203d、403b、403d、905b、905d:真空ケースの壁面
3e、903e:真空ケースの内部
4:ヨーク
4b:外側ヨーク部
4d:内側ヨーク部
4e:ヨーク中央の開口部
5:内側コイル
6:外側コイル
7:ケーシング部材
7h:ケーシング部材のy方向の端面
10:引出電極
11:加速電極
20、200、300、400、500、600、700、800,900:イオンビーム発生装置
203h:真空ケースのy方向の端面
205、305、405、505、605、705、805、905:ソレノイドコイル
205a、205c、405a、405c、705a、705c、905a、905c:接続用導体グループ
205b、305b、405b、505b、605b、705b、805b:外径側導体グループ
205d、305d、405d、505d、605d、705d、805d:内径側導体グループ
215b、415b、615b:外径側磁気シールド管
216:接続部磁気シールド管
305a、305c、505a、505c、605c:第1接続用導体グループ
305f、505f:第2接続用導体グループ
417a、417c、517a、517c、617a、617c、717a、717c:接続部静電シールド管
418a、418c:スリット状磁気シールド
605:電流路
605a:第3接続用導体グループ
605g:第1配線用導体
605h:第2配線用導体
720:磁場勾配生成ヨーク
720b:外径側ヨーク部
720d:内径側ヨーク部
850:補助マグネット
851:補助コイル
852:補助ヨーク
852j、852k:磁極
910:電位勾配型引出電極
912:抵抗体
Ia:第1イオンビーム束
Ib:第2イオンビーム束
Ib1:第1イオンによるイオンビーム束
Ib2:第2イオンによるイオンビーム束
Ic:第3イオンビーム束
Ic:第3イオンビーム束
By:y方向の磁場

Claims (33)

  1. 質量分離機で磁場を与えて複数種類のイオンの各イオンビームの軌道を湾曲させることにより、該複数種類のイオンから特定種類のイオンを分離抽出し、該特定種類のイオンのイオンビームを出力可能とするイオンビーム発生装置において、
    該質量分離機の内径側から外径側に向かうに従って該イオンビームの軌道半径が大きくなるように、該イオンビームの、該内径側から外径側に向かう径方向における入射位置に応じて該イオンビームの湾曲度を変化させるビーム湾曲度変化手段を有しており、
    該質量分離機の出口部において特定の傾斜角を持つイオンビームを優先的に通過させるように、該出口部に直線状の内壁面を有するケーシング部材が設けられているイオンビーム発生装置。
  2. 質量分離機で磁場を与えて複数種類のイオンの各イオンビームの軌道を湾曲させることにより、該複数種類のイオンから特定種類のイオンを分離抽出し、該特定種類のイオンのイオンビームを出力可能とするイオンビーム発生装置において、
    該質量分離機は、内径側から外径側に向かうに従って該イオンビームの軌道半径が大きくなるように、該イオンビームの、該内径側から外径側に向かう径方向における入射位置に応じて該イオンビームの湾曲度を変化させるビーム湾曲度変化手段を有しており、
    該質量分離機の出口部において特定の傾斜角を持つイオンビームを優先的に通過させるように、該出口部に直線状の内壁面を有するケーシング部材が設けられているイオンビーム発生装置。
  3. 前記ケーシング部材は前記質量分離機の出口部と連接しており、前記イオンビームの進行方向における該ケーシング部材の該直線状の内壁面の長さLは、該質量分離機の出口部の、前記内径側から外径側に向かう径方向における幅以上で、装置設置スペースで許される範囲内の寸法である請求項1または2に記載のイオンビーム発生装置。
  4. 前記長さLは前記幅の2倍から5倍である請求項3に記載のイオンビーム発生装置。
  5. 質量分離機で磁場を与えて複数種類のイオンの各イオンビームの軌道を湾曲させることにより、該複数種類のイオンから特定種類のイオンを分離抽出し、該特定種類のイオンのイオンビームを出力可能とするイオンビーム発生装置において、
    該質量分離機の内径側から外径側に向かうに従って該イオンビームの軌道半径が大きくなるように、該イオンビームの、該内径側から外径側に向かう径方向における入射位置に応じて該イオンビームの湾曲度を変化させるビーム湾曲度変化手段を有し、
    該ビーム湾曲度変化手段は、該質量分離機の内径側の外周壁面に沿って複数本配置された円弧状の内径側導体と、該質量分離機の外径側の外周壁面に沿って複数本配置された円弧状の外径側導体とを有し、該イオンビームに磁場を付与する該外径側導体の有効本数が、該イオンビームに磁場を付与する該内径側導体の有効本数よりも少なく構成されているイオンビーム発生装置。
  6. 複数種類のイオンを生成するイオン源と、該イオン源で生成された該複数種類のイオンを、第1方向に所定幅を有するイオンビーム束として引き出すイオンビーム引出手段とを更に有し、
    前記質量分離機は、該イオンビーム引出手段から引き出された該イオンビーム束に対して、該第1方向および該イオンビーム束の進行方向に垂直な方向の前記磁場を与えて、該複数種類のイオンから特定種類のイオンを分離抽出し、該特定種類のイオンのイオンビームを出力可能とする請求項1、2および5のいずれかに記載のイオンビーム発生装置。
  7. 複数種類のイオンを生成するイオン源と、
    該イオン源で生成された該複数種類のイオンを、第1方向に所定幅を有するイオンビーム束として引き出すイオンビーム引出手段と、
    該イオンビーム引出手段から引き出された該イオンビーム束に対して、該第1方向および該イオンビーム束の進行方向に垂直な第2方向の磁場を与えて、該イオンビーム束を構成する各イオンビームの軌道を湾曲させて、該複数種類のイオンから特定種類のイオンを分離抽出し、該特定種類のイオンのイオンビームを出力可能とする質量分離機とを備え、
    該イオンビーム引出手段は、該第2方向に延在し、該第1方向に間隔を隔てて並べられた複数の引出電極が設けられ、該複数の引出電極のそれぞれに、該第1方向における該引出電極の位置に応じて、該質量分離機の内径側から外径側に向かうに従って大きな負電圧を印加するビーム初速勾配生成手段を有するイオンビーム発生装置。
  8. 前記質量分離機から出力される前記特定種類のイオンのイオンビームは、互いに略平行な複数本のイオンビームで、該複数本のイオンビームは、前記内径側から外径側に向かう径方向における前記質量分離機の出口部の幅と等しい幅のイオンビーム束を構成している請求項1、2および5〜7のいずれかに記載のイオンビーム発生装置。
  9. 前記ビーム湾曲度変化手段は、前記質量分離機の内径側から外径側に向かうに従って前記磁場が小さくなるように磁場勾配を付与する磁場勾配生成手段である請求項1、2および5のいずれかに記載のイオンビーム発生装置。
  10. 前記ビーム湾曲度変化手段は、前記質量分離機の内径側外周壁面および外径側外周壁面にそれぞれ配置された内側コイルと外側コイルとを有し、
    電流値×ターン数が該内側コイルよりも該外側コイルの方が小さい請求項1、2および9のいずれかに記載のイオンビーム発生装置。
  11. 前記ビーム湾曲度変化手段は、前記質量分離機の内径側外周壁面および外径側外周壁面にそれぞれ配置された内側コイルと外側コイルとを有し、
    該内側コイルと該外側コイルのターン数が同じで、該外側コイルに流れる電流値が該内側コイルに流れる電流値よりも小さく設定されている請求項1、2、9および10のいずれかに記載のイオンビーム発生装置。
  12. 前記ビーム湾曲度変化手段は、前記質量分離機の内径側外周壁面および外径側外周壁面にそれぞれ配置された内側コイルと外側コイルとを有し、
    該内側コイルと該外側コイルに流れる電流値が同じで、該外側コイルのターン数が該内側コイルのターン数よりも少なく設定されている請求項1、2,9および10のいずれかに記載のイオンビーム発生装置。
  13. 前記磁場勾配生成手段は、
    前記質量分離機の内径側外周壁面に沿って複数本配置された円弧状の内径側導体と、
    該質量分離機の外径側外周壁面に沿って複数本配置された円弧状の外径側導体とを有し、
    前記イオンビームに磁場を付与する該外径側導体の有効本数が、前記イオンビームに磁場を付与する該内径側導体の有効本数よりも少なく構成されている請求項9に記載のイオンビーム発生装置。
  14. 前記複数本の外径側導体のうちの一部の外径側導体に磁気シールドが施されて、該外径側導体の有効本数が前記内径側導体の有効本数よりも少なく構成されている請求項13に記載のイオンビーム発生装置。
  15. 前記外径側導体の本数が前記内径側導体の本数よりも少なく構成されている請求項13に記載のイオンビーム発生装置。
  16. 前記磁場勾配生成手段は、
    前記質量分離機の内径側外周壁面に沿って配置された円弧状の内径側導体を有する内径側磁気回路と、
    該質量分離機の外径側外周壁面に沿って配置された円弧状の外径側導体を有する外径側磁気回路とを備え、
    該外径側磁気回路の磁気抵抗値が該内径側磁気回路の磁気抵抗値よりも大きく構成されている請求項9に記載のイオンビーム発生装置。
  17. 前記外径側磁気回路の磁路長が前記内径側磁気回路の磁路長よりも長く構成されている請求項16に記載のイオンビーム発生装置。
  18. 前記外径側磁気回路の磁路断面積が前記内径側磁気回路の磁路断面積よりも小さく構成されている請求項16に記載のイオンビーム発生装置。
  19. 前記外径側磁気回路および前記内径側磁気回路はヨーク部材を有し、
    前記外径側磁気回路のヨーク部材が前記内径側磁気回路のヨーク部材よりも低透磁率の材料によって構成されている請求項16に記載のイオンビーム発生装置。
  20. 前記磁場勾配生成手段は、前記外径側導体と前記内径側導体とを順次接続する各接続用導体を更に有し、
    前記複数本の外径側導体と前記複数本の内径側導体とがそれぞれ1本毎に、該接続用導体を介して、該外径側導体→該接続用導体→該内径側導体→該接続用導体→該外径側導体・・・の順に順次連続的に接続され、そのことによってソレノイドコイルが構成されている請求項13、14および16のいずれかに記載のイオンビーム発生装置。
  21. 前記磁場勾配生成手段は、前記外径側導体と前記内径側導体とを順次接続する各接続用導体を更に有し、
    前記複数本の外径側導体と前記複数本の内径側導体とが、該接続用導体→該外径側導体→該接続用導体→該内径側導体→該接続用導体→該内径側導体→該接続用導体→該外径側導体・・・の順に順次連続的に接続されてソレノイドコイルが構成されている請求項13、15および16のいずれかに記載のイオンビーム発生装置。
  22. 前記磁場勾配生成手段は、前記外径側導体と前記内径側導体とを接続する各接続用導体を更に有し、
    該外径側導体と該内径側導体とが1本ずつ該接続用導体で接続されて1ループ電流路が複数構成されている請求項13〜16のいずれかに記載のイオンビーム発生装置。
  23. 前記磁場勾配生成手段は、前記質量分離機の前記磁場方向の両端面側にそれぞれ磁極が配置され、該質量分離機の内径側ほど前記磁場が大きくなるように構成された補助マグネットを有する請求項9に記載のイオンビーム発生装置。
  24. 前記磁場勾配を有する磁場B(r)は、
    B(r)=B(rc)×(rc/r) ・・・ (式1)
    但し、rは前記質量分離機の外径および内径の曲率中心を原点(r=0)としたときの径方向の座標位置、r=rcは、該質量分離機において前記イオンビームが通過する内部空間における径方向中心のr座標、
    によって設定されている請求項9に記載のイオンビーム発生装置。
  25. 複数種類のイオンを生成するイオン源と、該イオン源で生成された該複数種類のイオンを、第1方向に所定幅を有するイオンビーム束として引き出すイオンビーム引出手段とを更に有し、
    前記質量分離機において前記イオンビームが通過する内部空間における径方向中心の磁場B(rc)は、
    B(rc)=(2×V×m/q)0.5/rc ・・・ (式2)
    但し、Vはイオン源と該イオンビーム引出手段との間に印加される電圧の絶対値、mは前記特定のイオンの質量、qは前記特定のイオンの電荷、
    によって設定されている請求項24に記載のイオンビーム発生装置。
  26. 前記ビーム湾曲度変化手段は、前記質量分離機に入射されるイオンビーム束の各イオンビームにおけるイオンの飛来速度が、前記質量分離機の内径側から外径側に向かうに従って大きくなるように、速度勾配を付与するビーム初速勾配生成手段である請求項1に記載のイオンビーム発生装置。
  27. 前記ビーム初速勾配生成手段は、前記質量分離機の内径側から外径側に向かう第1方向に垂直な方向に延在し、該第1方向に間隔を隔てて並べられた複数の引出電極が設けられ、
    該複数の引出電極のそれぞれに、該第1方向における該引出電極の位置に応じて、該質量分離機の内径側から外径側に向かうに従って大きな負電圧を印加するように構成されている請求項26に記載のイオンビーム発生装置。
  28. 前記複数の引出電極はそれぞれ、抵抗体を介して直列接続されており、抵抗分割によって前記電圧を印加する請求項7または27に記載のイオンビーム発生装置。
  29. 複数種類のイオンを生成するイオン源と、該イオン源で生成された該複数種類のイオンを、第1方向に所定幅を有するイオンビーム束として引き出すイオンビーム引出手段とを更に有し、
    前記ビーム初速勾配生成手段は、該イオンビーム引出手段に設けられている請求項26〜28のいずれかに記載のイオンビーム発生装置。
  30. 前記複数本の引出電極に印加される電圧の絶対値V(r)は、
    V(r)=V(rc)×(r/rc) ・・・ (式3)
    但し、rは前記質量分離機の外径および内径の曲率中心を原点(r=0)としたときの径方向の座標位置、r=rcは、該質量分離機において前記イオンビームが通過する内部空間における径方向中心のr座標、
    によって設定されている請求項26〜29のいずれかに記載のイオンビーム発生装置。
  31. 前記質量分離機において前記イオンビームが通過する内部空間における径方向中心に位置する、前記引出電極に印加される電圧の絶対値V(rc)は、
    V(rc)=q×(B×rc)/(2×m) ・・・ (式4)
    但し、mは前記特定のイオンの質量、qは前記特定のイオンの電荷、Bは磁場強度
    によって設定されている請求項30に記載のイオンビーム発生装置。
  32. 請求項1〜31のいずれかに記載のイオンビーム発生装置を用いて、特定イオンの平行なイオンビームからなるイオンビーム束を出力させるイオンビーム発生方法。
  33. 請求項1〜31のいずれかに記載のイオンビーム発生装置を用いて不純物イオン注入が為された領域を形成する工程を含む機能素子の製造方法。
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