JP3350572B2 - 第2セリウムイオン含有酸水溶液の製造法 - Google Patents

第2セリウムイオン含有酸水溶液の製造法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、有用な酸化剤である第
2セリウムイオン含有酸水溶液の製造法に関する。詳し
くは、本発明は、第1セリウムイオン含有酸水溶液を、
陽極と陰極の間に隔膜を有しない無隔膜電解槽を用いて
電解酸化する第2セリウムイオン含有酸水溶液の製造方
法に関する。
【0002】第2セリウムイオン含有酸水溶液は、2−
メチルナフタレンを2−メチル−1,4−ナフトキノン
(ビタミンK3)に酸化する反応或いは、ナフタレンを
1,4−ナフトキノンに酸化する反応のような芳香族化
合物を対応するキノン類へ酸化する反応;トルエンをベ
ンズアルデヒドに酸化する反応のような芳香族化合物の
置換基を酸化する反応;シクロアルカンを開環させる反
応;オキシムをカルボニル化する反応など種々の有機合
成の分野で酸化反応の酸化剤として用いられる。
【0003】第2セリウムイオンを用いて有機化合物を
酸化すると第2セリウムイオンは第1セリウムイオンに
還元されるが、工業的には該第1セリウムイオンを回収
し酸化して第2セリウムイオンに再生して再利用する必
要がある。このため有機化合物の酸化反応工程と回収し
た第1セリウムイオンを電気化学的に第2セリウムイオ
ンに酸化して再生する工程とを組み合わせて行う間接電
解法がよく行われる。本発明はかかる間接電解法におい
て第1セリウムイオンを第2セリウムイオンに酸化して
再生する方法として特に有用である。
【0004】
【従来の技術】従来、第1セリウムイオンを第2セリウ
ムイオンに電解酸化する方法においては、陽極と陰極の
間に隔膜を有する隔膜式電解槽が使用されている(例え
ば特公昭45−41561号等参照)。これは、隔膜が
ないと、陽極にて一旦生成した第2セリウムイオンの一
部が陰極において再び第1セリウムイオンに還元されて
電流効率が極端に低下するためである。しかしながら隔
膜式電解槽を用いる場合、電解槽の構造が複雑となり、
装置や隔膜の設備費や保守のための費用がかさんだり、
隔膜の電気抵抗により電解電圧が上昇する等の問題があ
る。また、陽極液に有機物が含まれていると有機物が隔
膜を通して陽極液から陰極液に移動して陰極にて還元反
応を受け、その結果、陰極液が着色したり、電流効率が
低下したり電解電圧が上昇するなどの問題も生じる。
【0005】一方、隔膜を備えていない無隔膜電解槽を
用いる方法も検討されており、陰極の面積を陽極の面積
よりも小さくし陰極の電流密度を陽極より大きくするこ
とにより、陽極で生成した第2セリウムイオンが陰極で
再び還元されるのを防ぎながら、第1セリウムイオンを
第2セリウムイオンに電解酸化する方法が提案されてい
る(例えば米国特許第4683038号、特開平4−1
3879号等)。しかしながら、これらの方法では、陰
極の電流密度を陽極より高くするため、電解電圧が上昇
したり、陰極上に樹脂状の粘着物の析出が起こったり、
電解液中の電流分布が不均一になり易い等の不都合があ
る。これらの不都合を解消するためには激しく攪拌する
必要があるが、この場合には電解特性向上によるコスト
減少よりも動力費の負担が大きくなる。また陰極電流密
度と陽極電流密度の比を大きくするためには、電極の大
きさや形状を大きく変えなければならない等の問題もあ
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来提案されている第
1セリウムイオンの酸水溶液を電解酸化して第2セリウ
ムイオンの酸水溶液を製造する方法は、隔膜式電解槽又
は無隔膜電解槽のいずれを使用するとしても、工業的規
模で製造する方法としては種々の問題点を有している。
【0007】従って、本発明の目的は、無隔膜電解槽を
使用する製法において、経時的な電流効率の低下を惹起
することなく高い電流効率で第2セリウムイオンの酸水
溶液を工業的に有利に製造可能な方法を提供することに
ある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、使用済み
の第1セリウムイオンの酸水溶液を無隔膜電解槽を用い
て電解酸化して第2セリウムイオンの酸水溶液を再生す
る方法について種々検討している中で、該第1セリウム
イオンの酸水溶液中に混在する有機化合物が、電解液の
着色や電流効率の低下など種々の好ましくない影響を与
えていることを知見した。そこで、本発明者等は各種有
機物の電解特性に与える影響等について詳細に検討した
結果、特定の複素環化合物を第1セリウムイオンと共存
させると著しく電流効率が改善されるとともに経時的な
電流効率の低下を惹起しないことを見いだし、本発明を
完成するに至った。また、この特定の複素環化合物を共
存させるとフレッシュな第1セリウムイオンの酸水溶液
を電解酸化する際にも高い電流効率で第2セリウムイオ
ンの酸水溶液を製造できることを知見した。
【0009】かくして、本発明によれば、陽極と陰極の
間に隔膜を有しない無隔膜電解槽を用いて第1セリウム
イオン含有酸水溶液中の第1セリウムイオンを電解酸化
して第2セリウムイオン含有酸水溶液を製造する方法に
おいて、該第1セリウムイオン含有酸水溶液中に、置換
基を有する五員複素単環化合物、置換基を有する六員複
素単環化合物、及び縮合複素多環化合物からなる群から
選択される少なくとも一種の複素環化合物を存在せしめ
ることを特徴とする第2セリウムイオン含有酸水溶液の
製造法が提供される。
【0010】
【作用】本発明に従って上記の特定の複素環化合物を使
用すると、電解に際して電場がかかった状態で陰極表面
にその化合物自体が安定吸着するか、又は該複素環化合
物の酸化もしくは還元などで新たに生じた有機化合物、
有機化合物イオン等の化学種が陰極表面に安定吸着する
ので、陽極電流密度と陰極電流密度との比を大きく変え
ることなく、陰極と陽極の電流密度が等しい電解条件に
おいてさえも、第2セリウムイオン含有酸水溶液が高い
電流効率で得られるものと推定される。上記化合物自体
及び/又は化学種の陰極表面への安定吸着とは、これら
化合物自体及び/又は化学種が陰極に強固に吸着してい
る状態だけに限られず、化合物自体及び/又は化学種が
陰極表面に単に集合して存在している状態や、電解液中
の化合物自体及び/又は化学種が陰極表面に吸着してい
る化合物自体及び/又は化学種と平衡状態を保ちながら
存在している状態をも包含する。また、これら化合物自
体及び/又は化学種は電解終了にともない陰極表面から
離散しても構わない。なお、本発明において使用する特
定の複素環化合物は、第2セリウムイオン生成の電流効
率低下を防ぐために陽極で生成した第2セリウムイオン
と容易に反応しないものが好ましい。
【0011】
【具体的説明】以下に本発明を詳しく説明する。
【0012】本発明において使用する第1セリウムイオ
ン含有酸水溶液としては、第1セリウムイオンを含む硫
酸水溶液又はメタンスルホン酸水溶液が好適であり、例
えば硫酸第1セリウムを含む硫酸水溶液、メタンスルホ
ン酸第1セリウムを含むメタンスルホン酸水溶液、又は
これらの混合物等が挙げられる。また、硝酸第1セリウ
ムを含む硝酸水溶液等も使用することができる。また、
第2セリウムイオン含有酸水溶液(酸成分としてとして
硫酸、メタンスルホン酸、硝酸如きの無機酸を含有す
る)を用いて、2−メチルナフタレンを2−メチル−
1,4−ナフトキノン(ビタミンK3)に酸化する反応
或いは、ナフタレンを1,4−ナフトキノンに酸化する
反応のような芳香族化合物から対応するキノン類へ酸化
する反応において生じる第1セリウムイオン含有酸水溶
液も好適である。
【0013】酸水溶液中の第1セリウムイオンの濃度
は、あまりに低濃度であると生産性が悪いうえに電流効
率の低下をもたらして工業的に不利となる。従って、
0.05モル/リットル以上が好ましく、より好ましく
は0.05〜10モル/リットルの範囲である。
【0014】また、酸水溶液中の酸濃度については、使
用する酸の種類に依存するが、一般に酸濃度が低すぎる
と第2セリウムイオンが不安定になり、酸濃度が高すぎ
ると第1セリウムイオンの溶解度が低下したり装置の腐
蝕が生じたりするので不利である。従って、酸水溶液中
の酸濃度は一般的には0.1〜8モル/リットルの範囲
内にあることが望ましい。例えば、酸として、硫酸を用
いた場合には0.1〜2モル/リットルの範囲内、硝酸
を用いた場合には0.1〜5モル/リットルの範囲内、
メタンスルホン酸を用いた場合には1〜8モル/リット
ルの範囲内、にあるのが望ましい。
【0015】本発明において使用する複素環化合物は、
置換基を有する五員複素単環化合物、置換基を有する六
員複素単環化合物、及び縮合複素多環化合物からなる群
から選択される少なくとも一種の複素環化合物である。
本発明において複素環を構成する異種原子としては窒
素原子、酸素原子が挙げられ、複素環化合物は両原子を
環構造中に同時に有するものであっても構わない。具体
的には五員複素単環としてはフラン環(含酸素複素
環)、ピロール環(含窒素複素環)等が挙げられ、六員
複素単環としてはピリジン環(含窒素複素環)、モルホ
リン環(含窒素及び含酸素環)等が挙げられる。縮合複
素多環としては窒素原子を1〜2個含む2〜3個の縮合
環を有する含窒素複素環やクロマン環等の含酸素複素環
等が挙げられる。
【0016】五員複素単環化合物又は六員複素単環化合
物が有している置換基としては、置換基を有してもよい
炭素原子数1〜20のアルキル基、ニトロ基、カルボキ
シル基、炭素原子数1〜4のアシル基、シアノ基、炭素
原子数1〜20のアルコキシ基及びハロゲン原子からな
る群から選択される少なくとも一種が挙げられる。具体
的には、炭素原子数1〜20のアルキル基として、例え
ば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピ
ル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n
−オクチル基、イソオクチル基、n−デシル基等が挙げ
られる。これらのアルキル基は塩素、臭素、フッ素原子
等で一部置換されていてもよい。炭素原子数1〜20の
アルコキシ基として、例えば、メトキシ基、エトキシ
基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキ
シ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチル
オキシ基、イソオクチルオキシ基、n−デシルオキシ基
等が挙げられる。炭素原子数1〜4のアシル基として、
例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブ
チリル基、イソブチル基等が挙げられる。ハロゲン原子
として、例えば、塩素原子、臭素原子及びフッ素原子が
挙げられる。
【0017】本発明で使用する含窒素複素環化合物とし
ては、キノリン環等の如き縮合複素環化合物やピリジン
環又はピロール環を有する化合物が好ましい。ピロール
やピリジンは陰極に対する吸着安定性が十分でなく、ピ
リジン環又はピロール環に置換基を有する化合物が好ま
しい。さらに好ましくは分子量が80以上の化合物であ
る。
【0018】より具体的には、含窒素複素環化合物とし
てニトロピロール類、N−メチルピロール等の如き置換
基を有するピロール誘導体;α−,β−又はγ−メチル
ピリジン(α−,β−又はγ−ピコリン)等の如きアル
キル置換ピリジン類、ニコチン酸等の如きピリジンカル
ボン酸類、キノリン酸、シアノピリジン、o−,m−又
はp−ジシアノピリジン等の如きシアノピリジン類、等
のピリジン誘導体;キノリン、ニトロキノリン等の如き
キノリン誘導体;イソキノリン;フェナントロリン;フ
ェナントリジン;インドール;カルバゾール;アクリジ
ン;フェナジン等が挙げられる。メチルピリジン類、ピ
リジンカルボン酸類、シアノピリジン類、キノリン酸、
キノリン、イソキノリン、フェナントロリン及びフェナ
ントリジンは陰極への吸着安定性に優れているのでより
好ましい。
【0019】本発明で使用する含酸素複素環化合物の好
ましいものとして、具体的にはフルフラール、5−ニト
ロ−2−フランカルボン酸、フランカルボン酸或いはベ
ンゾフランのような置換基の結合したフラン環を有する
フラン誘導体が挙げられる。また、クロマン、クロメ
ン、キサンテン、モルホリン等の如きその他の縮合複素
環化合物も使用することができる。
【0020】本発明で使用する複素環化合物は、陰極に
対する吸着安定性の観点から、80以上の分子量を有す
るものが好ましい。ただし、複素環化合物の分子量が大
きくなりすぎると一般にセリウム塩を含有する酸水溶液
に対する溶解性が低下するので、より好ましい分子量は
80〜1000である。
【0021】本発明において使用する複素環化合物は、
単独で使用しても二種以上併用してもよい。電解酸化中
に存在させる複素環化合物の濃度は、本発明では使用し
た複素環化合物がそのままあるいは化学種を生成して陰
極表面に安定吸着するため、特別に高くする必要はな
い。ある程度の濃度以上ではその効果に大きな変化はな
く、高すぎれば電解電圧が上昇したりかえって電流効率
が低下する場合もあるため、電解液中の複素環化合物の
濃度は好ましくは1〜10,000ppmより好ましく
は10〜2,000ppmとする。
【0022】本発明を実施するに際して、使用する複素
環化合物が、蒸発したり第2セリウムイオンと反応した
り電極上で電極反応を起こしたりして、電解進行にとも
ない徐々に消費されるような場合には、本発明の効果を
維持するのに充分な濃度を保持するために適時、または
連続的に電解液に添加すると良い。
【0023】また、本発明の方法は、フレッシュな第1
セリウムイオン含有酸水溶液に複素環化合物を添加して
使用することが勿論可能ではあるが、実用的には、例え
ば下記のような循環工程において特に好適に適用するこ
とができる。工程1:第1セリウムイオン含有酸水溶液
を、これに複素環化合物を添加して、電解酸化すること
により、複素環化合物を含有する第2セリウムイオン含
有酸水溶液を得る工程。工程2:工程1で得られた複素
環化合物を含有する第2セリウムイオン含有酸水溶液を
酸化剤として用いて各種原料有機化合物を酸化する工
程。工程3:工程2における反応混合物から酸化生成物
を分離することにより、複素環化合物を含有する第1セ
リウムイオン含有酸水溶液を回収する工程。工程4:工
程3で回収された複素環化合物を含有する第1セリウム
イオン含有酸水溶液をそのまま電解酸化して複素環化合
物を含有する第2セリウムイオン含有酸水溶液を得る工
程。
【0024】本発明を実施するに際して電解温度は特に
限定はされないが、複素環化合物の沸点以下であるのが
好ましく、低すぎると電流効率も低下する。従って、電
解温度は、通常、10℃から使用複素環化合物の沸点ま
での範囲の温度とする。
【0025】一般に電流密度が高い場合には、単位電解
槽あたりの生産量を上げることができるが、その反面、
電流効率の低下や電解電圧の上昇をもたらし、また電解
液中の複素環化合物の分解を生じることもある。本発明
を実施するに際して陽極電流密度は好ましくは5〜50
A/dm2とするとよい。
【0026】前述したとおり、一般に無隔膜電解槽を用
いる場合、陰極の面積を陽極の面積よりも小さくして陰
極電流密度を陽極電流密度より大きくすることが行なわ
れている。しかし本発明を実施するに際しては、従来の
方法ほど陰極電流密度と陽極電流密度との比率を大きく
する必要はなく、2倍以下で十分であり、等倍でもよ
い。
【0027】電解槽内での電解液の電極に対する線速
は、低すぎると電流効率の低下や電解電圧の上昇を招
き、高すぎると電解槽内圧力損失が増加し液漏れ、動力
コスト増等のトラブルが生じるため、好ましくは1〜1
00cm/secの電解液線速で実施するとよい。
【0028】本発明において陽極としては、従来の隔膜
法と同様の公知の電極材料が使用される。例えば、イリ
ジウム酸化物被覆チタン、白金−イリジウム酸化物被覆
チタン、二酸化鉛被覆チタン等の如き酸化物被覆電極
や、白金メッキチタン、チタン酸化物、酸化スズ、グラ
ファイト及びグラッシーカーボン等が用いられる。しか
し、有機化合物含有条件下での電流効率や電極耐久性を
考慮すると、鉛、白金、イリジウム、スズ及びタンタル
からなる群から選択される少なくとも1種を含む電極で
あることが好ましい。陰極としても、公知の電極が用い
られるが、特に有機物含有条件下での電流効率や電極耐
久性を考慮するとチタン、チタン酸化物、ジルコニウ
ム、タングステン、タリウム及びタンタルからなる群か
ら選択される少なくとも1種の電極又はそれらを基体と
した電極であることが特に好ましい。
【0029】電解槽の形式としては、工業的には、一般
にフィルタープレス型電解槽や円筒状電解槽が用いられ
るが、本発明を実施するに当たっては特に限定されな
い。電解液貯槽に第1セリウムイオン含有酸水溶液を仕
込み、外部循環ラインを経て電解槽に通じて電解酸化
し、電解液貯槽内の液が所定の第2セリウムイオン濃度
になるまで電解するバッチ式電解を実施してもよく、第
1セリウムイオン含有酸水溶液を連続的に電解槽に通じ
る連続電解形式を実施してもよい。前者は高い電流効率
で電解できるが電解終了後に電解液の入れ替えが必要と
なり装置及び計装設備が複雑となる。後者は連続操業が
可能となり装置及び計装設備が簡単になり工業的に実施
するのにより有利な方法である。通常、後者は前者に比
べて著しく電流効率が低下する問題があるが、本発明に
おいては高い電流効率が得られる。
【0030】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳細に説明する
が、本発明はこれに限定されるものではない。
【0031】実施例1 硫酸第1セリウムの硫酸水溶液(第1セリウムイオンを
0.3モル/リットル及び硫酸を遊離酸として1.5モ
ル/リットル含む)10Kgにβ−ピコリン酸(ニコチ
ン酸)を添加溶解させて得られた溶液(β−ピコリン酸
濃度=1000ppm)を、下記の条件にてフィルター
プレス型の無隔膜電解セルに循環させて第2セリウムイ
オン濃度が0.1モル/リットルになるまでバッチ電解
酸化を行なった。得られた電流効率は99%であった。
【0032】添加複素環化合物:β−ピコリン酸(分子
量=123、濃度=1000ppm) 電解温度:50℃ 陽極:白金メッキチタンプレート電極 電流密度10A/dm2 陰極:ジルコニウムプレート電極 電流密度10A/dm2 電流密度比(陰極/陽極):1 線速:30cm/sec比較例1 β−ピコリン酸を添加しなかった以外は実施例1と同じ
条件で電解を行った。得られた電流効率は58%であっ
た。
【0033】実施例2 下記のとおり添加複素環化合物、電極材質および電解条
件を変えて実施例1と同様にして電解酸化を行なった。
得られた電流効率は94%であった。
【0034】添加複素環化合物:キノリン酸(分子量=
167、濃度=500ppm) 電解温度:60℃ 陽極:イリジウム−スズ混合酸化物被覆チタンプレート
電極 電流密度 10A/dm2 陰極:タングステンプレート電極 電流密度 10A/dm 電流密度比(陰極/陽極):1 線速:50cm/sec実施例3 下記のとおり添加複素環化合物、電極材質および電解条
件を変えて実施例1と同様にして電解酸化を行なった。
得られた電流効率は97%であった。
【0035】添加有機化合物:β−ピコリン(分子量=
93、濃度=1500ppm) 電解温度:50℃ 陽極:二酸化鉛被覆チタンプレート電極 電流密度 30A/dm2 陰極:ジルコニウムエキスパンド電極 電流密度 50A/dm2 電流密度比(陰極/陽極):1.67 線速:40cm/sec実施例4 下記のとおり添加複素環化合物、電極材質および電解条
件を変えて実施例1と同様にして電解酸化を行なった。
得られた電流効率は98%であった。
【0036】添加複素環化合物:キノリン(分子量=1
29、濃度=3000ppm ) 電解温度:50℃ 陽極:酸化イリジウム−白金被覆チタンエキスパンド電
極 電流密度 10A/dm2 陰極:ジルコニウムエキスパンド電極 電流密度 10A/dm2 電流密度比(陰極/陽極):1 線速:20cm/sec比較例2 下記のとおり添加複素環化合物、電極材質および電解条
件を変えて実施例1と同様にして電解酸化を行なった。
電流効率は78%であった。
【0037】添加複素環化合物:ピリジン(分子量=7
9、濃度=1000ppm) 電解温度:50℃ 陽極:酸化イリジウム被覆チタンプレート電極 電流密度 10A/dm2 陰極:タングステンプレート電極 電流密度 10A/dm2 電流密度比(陰極/陽極):1 線速:20cm/sec比較例3 ピリジンを添加しなかった以外は比較例2と同様の条件
で電解を行なった。得られた電流効率は60%であっ
た。
【0038】比較例4 ピリジンの濃度を50,000ppmとした以外は比較
例2と同様の条件で電解を行なった。得られた電流効率
は47%であった。
【0039】比較例5 o−キシレン(分子量=106、濃度=1000ppm
を添加した以外は比較例2と同様の条件で電解を行なっ
た。得られた電流効率は53%であった。
【0040】実施例5 下記のとおり添加複素環化合物、電極材質および電解条
件を変えて実施例1と同様にして電解酸化を行なった。
得られた電流効率は97%であった。
【0041】添加複素環化合物:イソキノリン(分子量
=129、濃度=100ppm) 電解温度:40℃ 陽極:イリジウム−タンタル混合酸化物被覆チタンプレ
ート電極 電流密度:15A/dm 陰極:ジルコニウムプレート電極 電流密度 15A/dm2 電流密度比(陰極/陽極):1 線速:40cm/sec実施例6 20000ppmの濃度となるようβ−ピコリン酸を添
加した以外は実施例1と同様にして電解酸化を行った。
得られた電流効率は91%であった。
【0042】実施例7 β−ピコリン酸の濃度を5ppmとした以外は実施例1
と同様の条件で電解を行なった。得られた電流効率は8
0%であった。
【0043】実施例8 β−ピコリン酸の濃度を10ppmとした以外は実施例
1と同様の条件で電解を行なった。得られた電流効率は
96%であった。
【0044】実施例9 β−ピコリン酸の濃度を5,000ppmとした以外は
実施例1と同様の条件で電解を行なった。得られた電流
効率は95%であった。
【0045】実施例10 硫酸第2セリウムを含む硫酸第1セリウムの硫酸水溶液
(第1セリウムイオンを0.4モル/リットル、第2セ
リウムイオンを0.25モル/リットル及び硫酸を遊離
酸として1.0モル/リットル含む)10Kgに1,1
0−フェナントロリンを添加溶解させて得られた溶液
(1,10−フェナントロリン濃度=50ppm)を、
下記の条件にてフィルタープレス型の無隔膜電解セルに
循環させて第2セリウムイオン濃度が0.45モル/リ
ットルになるまでバッチ電解酸化を行なった。得られた
電流効率は99%であった。
【0046】添加複素環化合物:1,10−フェナント
ロリン(分子量=180、濃度=50ppm) 電解温度:50℃ 陽極:白金メッキチタンプレート電極 電流密度10A/dm2 陰極:ジルコニウムプレート電極 電流密度10A/dm2 電流密度比(陰極/陽極):1 線速:30cm/sec実施例11 下記のとおり添加複素環化合物、電極材質および電解条
件を変えて実施例10と同様にして電解酸化を行なっ
た。得られた電流効率は89%であった。
【0047】添加複素環化合物:フルフラール(分子量
=96、濃度=1000ppm) 電解温度:50℃ 陽極:二酸化鉛被覆チタンプレート電極 電流密度20A/dm2 陰極:タングステンプレート電極(表面一部樹脂被覆) 電流密度30A/dm2 電流密度比(陰極/陽極):1.5 線速:50cm/sec実施例12 下記のとおり添加複素環化合物、電極材質および電解条
件を変えて実施例11と同様にして電解酸化を行なっ
た。得られた電流効率は98%であった。
【0048】添加複素環化合物:5−ニトロ−2−フラ
ンカルボン酸(分子量=157、濃度=1000pp
m) 電解温度:50℃ 陽極:酸化イリジウム被覆チタンプレート電極 電流密度10A/dm2 陰極:ジルコニウムプレート電極 電流密度10A/dm2 電流密度比(陰極/陽極):1 線速:20cm/sec実施例13 硝酸第1セリウムの硝酸水溶液(第1セリウムイオンを
2.0モル/リットル及び硝酸を遊離酸として1.0モ
ル/リットル含む)10Kgにフェナントリジンを添加
溶解させて得られた溶液(フェナントリジン濃度=10
00ppm)を、下記の条件にてフィルタープレス型の
無隔膜電解セルに循環させて第2セリウムイオン濃度が
0.1モル/リットルになるまでバッチ電解酸化を行な
った。得られた電流効率は88%であった。
【0049】添加複素環化合物:フェナントリジン(分
子量=179、濃度=1000ppm) 電解温度:50℃ 陽極:酸化イリジウム被覆チタンプレート電極 電流密度10A/dm2 陰極:ジルコニウムプレート電極 電流密度10A/dm2 電流密度比(陰極/陽極):1 線速:20cm/sec比較例6 フェナントリジンを添加しなかった以外は実施例13と
同様の条件で電解を行なった。得られた電流効率は43
%であった。
【0050】実施例14 メタンスルホン酸第1セリウムのメタンスルホン酸水溶
液(第1セリウムイオンを1.7モル/リットル及びメ
タンスルホン酸を遊離酸として1.6モル/リットル含
む)10Kgにシアノピリジンを添加溶解させて得られ
た溶液(シアノピリジン濃度=1000ppm)を、下
記の条件にてフィルタープレス型の無隔膜電解セルに循
環させて第2セリウムイオン濃度が0.1モル/リット
ルになるまでバッチ電解酸化を行なった。得られた電流
効率は98%であった。
【0051】添加複素環化合物:シアノピリジン(分子
量=104、濃度=1000ppm) 電解温度:50℃ 陽極:酸化イリジウム被覆チタンプレート電極 電流密度10A/dm2 陰極:ジルコニウムプレート電極 電流密度10A/dm2 電流密度比(陰極/陽極):1 線速:20cm/sec比較例7 シアノピリジンを添加しなかった以外は実施例14と同
様の条件で電解を行なった。得られた電流効率は57%
であった。
【0052】実施例15 還流冷却器及び撹拌装置を取り付けたガラス製の反応器
に、2−メチルナフタレン23.7g及びo−キシレン
100gを仕込んで撹拌し、溶解させた後、実施例1で
製造した硫酸第1セリウム0.2モル/リットル及び硫
酸第2セリウム0.1モル/リットルを含む酸水溶液1
0リットルを投入し、50℃で2時間反応させた。反応
終了後、撹拌を停止し、反応液を分離槽に移しo−キシ
レン相と水相とを分離した。水相についてはo−キシレ
ン100gを用いて抽出して先の溶媒相に加えた。o−
キシレン相及び水相を分析した結果、原料である2−メ
チルナフタレンの転化率は95%、2−メチル−1,4
−ナフトキノン(ビタミンK3)の選択率は72%、6
−メチル−1,4−ナフトキノンの選択率は25%、o
−フタル酸の選択率は2%であった。2−メチルナフタ
レン、2−メチル−1,4−ナフトキノン及び6−メチ
ル−1,4−ナフトキノンはo−キシレン相中にのみ存
在し、o−フタル酸は水相中のみに存在した。また、水
相中の硫酸第1セリウムの濃度は0.298モル/リッ
トル、硫酸第2セリウムの濃度は0.002モル/リッ
トル、o−フタル酸の濃度は53ppmであり、実施例
1で添加したβ−ピコリン酸の濃度は1000ppmの
ままで変化していなかった。この水相10リットルを実
施例1と同様の条件で電解を行なったところ、実施例1
と同様99%の電流効率が得られた。
【0053】実施例16 還流冷却器及び撹拌装置を取り付けたガラス製の反応器
に、ナフタレン21.3g及びo−キシレン100gを
仕込んで撹拌し、溶解させた後、実施例2で製造した硫
酸第1セリウム0.2モル/リットル及び硫酸第2セリ
ウム0.1モル/リットルを含む酸水溶液10リットル
を投入し、50℃で1時間反応させた。反応終了後、撹
拌を停止し、反応液を分離槽に移しo−キシレン相と水
相とを分離した。水相についてはo−キシレン100g
を用いて抽出して先の溶媒相に加えた。o−キシレン相
及び水相を分析した結果、原料であるナフタレンの転化
率は96%、1,4−ナフトキノンの選択率は95%、
o−フタル酸の選択率は2%であった。ナフタレン及び
1,4−ナフトキノンはo−キシレン相中にのみ存在
し、o−フタル酸は水相中のみに存在した。また、水相
中の硫酸第1セリウムの濃度は0.295モル/リット
ル、硫酸第2セリウムの濃度は0.005モル/リット
ル、o−フタル酸の濃度は53ppmであり、実施例2
で添加したキノリン酸の濃度は1000ppmのままで
変化していなかった。この水相10リットルを実施例2
と同様の条件で電解を行なったところ、95%の電流効
率が得られた。
【0054】実施例17 還流冷却器及び撹拌装置を取り付けたガラス製の反応器
に、1−ニトロナフタレン28.8g及び実施例13で
製造した硝酸第1セリウム1.9モル/リットル及び硝
酸第2セリウム0.1モル/リットルを含む酸水溶液1
0リットルを投入し、70℃として1−ニトロナフタレ
ンを溶解させた後、撹拌し、1時間反応させた。反応終
了後、ニトロベンゼン100gを投入し5分間撹拌した
のち、撹拌を停止し、反応液を分離槽に移しニトロベン
ゼン相と水相とを分離した。水相についてはニトロベン
ゼン100gを用いて抽出して先の溶媒相に加えた。ニ
トロベンゼン相及び水相を分析した結果、原料である1
−ニトロナフタレンの転化率は80%、5−ニトロ−
1,4−ナフトキノンの選択率は90%、3−ニトロフ
タル酸の選択率は2%、4−ニトロフタル酸の選択率は
3%、o−フタル酸の選択率は5%であった。1−ニト
ロナフタレン及び5−ニトロ−1,4−ナフトキノンは
ニトロベンゼン相中にのみ存在し、3−ニトロフタル
酸、4−ニトロフタル酸及びo−フタル酸は水相中のみ
に存在した。また、水相中の硝酸第1セリウムの濃度は
1.996モル/リットル、硝酸第2セリウムの濃度は
0.004モル/リットル、o−フタル酸の濃度は11
0ppm、3−ニトロフタル酸及び4−ニトロフタル酸
の濃度は合計で140ppmであり、実施例13で添加
したフェナントリジン濃度は900ppmとなってい
た。この水相10リットルを実施例13と同様の条件で
電解を行なったところ、87%の電流効率が得られた。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 木津 保彦 兵庫県姫路市網干区興浜字西沖992番地 の1 株式会社日本触媒 触媒研究所内 (56)参考文献 特開 平4−13879(JP,A) 特開 昭61−52382(JP,A) 特開 昭63−114988(JP,A) 特開 昭63−169394(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C25B 1/00 - 15/08

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 陽極と陰極の間に隔膜を有しない無隔膜
    電解槽を用いて第1セリウムイオン含有酸水溶液中の第
    1セリウムイオンを電解酸化して第2セリウムイオン含
    有酸水溶液を製造する方法において、該第1セリウムイ
    オン含有酸水溶液中に、置換基を有する五員複素単環化
    合物、置換基を有する六員複素単環化合物、及び縮合複
    素多環化合物からなる群から選択される少なくとも一種
    の複素環化合物を存在せしめることを特徴とする第2セ
    リウムイオン含有酸水溶液の製造法。
  2. 【請求項2】 五員複素単環化合物又は六員複素単環化
    合物が有している置換基が、置換基を有してもよい炭素
    原子数1〜20のアルキル基、ニトロ基、カルボキシル
    基、炭素原子数1〜4のアシル基、シアノ基、炭素原子
    数1〜20のアルコキシ基及びハロゲン原子からなる群
    から選択される少なくとも一種である請求項1記載の方
    法。
  3. 【請求項3】 複素環化合物が分子量80以上の含窒素
    複素環化合物である請求項1記載の方法。
  4. 【請求項4】 含窒素複素環化合物がメチルピリジン
    類、ピリジンカルボン酸類、シアノピリジン類、キノリ
    ン酸、キノリン、イソキノリン、フェナントロリン及び
    フェナントリジンからなる群から選択される少なくとも
    一種である請求項3記載の方法。
  5. 【請求項5】 複素環化合物がフラン環を有する含酸素
    複素環化合物である請求項1記載の方法。
  6. 【請求項6】 含酸素複素環化合物がフルフラール及び
    5−ニトロ−2−フランカルボン酸からなる群から選択
    される少なくとも一種である請求項5記載の方法。
  7. 【請求項7】 酸水溶液中に複素環化合物を1〜10,
    000ppmの濃度範囲で存在せしめる請求項1記載の
    方法。
  8. 【請求項8】 酸水溶液中に第1セリウムイオンを0.
    05〜10モル/リットルの濃度範囲で存在せしめる請
    求項1記載の方法。
  9. 【請求項9】 酸水溶液が硫酸水溶液及び/又はメタン
    スルホン酸水溶液である請求項1記載の方法。
  10. 【請求項10】 陽極電流密度が5〜50A/dm2
    範囲であり、陰極電流密度が陽極電流密度の1〜2倍の
    範囲である請求項1記載の方法。
  11. 【請求項11】 第1セリウムイオン含有酸水溶液が、
    第2セリウムイオン含有酸水溶液により有機化合物を酸
    化する反応において生成したものである請求項1記載の
    方法。
  12. 【請求項12】 有機化合物を酸化する反応が2−メチ
    ルナフタレンを2−メチル−1,4−ナフトキノンに酸
    化する反応である請求項11記載の方法。
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