JP3346335B2 - 被覆超硬合金工具 - Google Patents

被覆超硬合金工具

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JP3346335B2 JP12010499A JP12010499A JP3346335B2 JP 3346335 B2 JP3346335 B2 JP 3346335B2 JP 12010499 A JP12010499 A JP 12010499A JP 12010499 A JP12010499 A JP 12010499A JP 3346335 B2 JP3346335 B2 JP 3346335B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は切削工具に関し、特
に鋼および鋳鉄の切削加工に使用する被覆超硬合金製切
削工具として最適であり、耐剥離性と耐欠損性に同時に
優れるようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】従来、金属材料切削用の工具材質として
は、超硬合金(WC−Co合金もしくはWC−Co合金
にTiやTa、Nbの炭窒化物を添加した合金)が用い
られてきたが、近年は切削条件が高速化してきた結果、
超硬合金にCVDやPVDで元素周期律表IVa、Va、
VIa族金属およびAl等の炭化物、窒化物、炭窒化物、
炭酸化物又はホウ窒化物、酸化物またはこれらの固溶体
からなる被覆膜を3〜15μmの厚さに被覆した超硬合
金工具の使用割合が増大している。被覆膜厚はさらに厚
くなる傾向にあり、20μm以上の膜厚のCVD被覆超
硬合金も提案されている。このようなCVD被覆超硬合
金工具では被覆膜と母材の熱膨張係数の違いから、コー
ティング後の冷却過程で被覆膜中に引張り残留応力が発
生し、工具の耐欠損性が低下するという問題点が指摘さ
れていた。
【0003】これに対して、被覆超硬合金の表面に機械
的衝撃をブラストなどの方法で与え、被覆膜中に母材ま
で貫通したクラックを導入し、耐欠損性を改善する提案
(特公平7−6066号、特公平7−49165号各公
報)がなされた。この提案の方法では、ある程度、耐欠
損性が向上することが確認されたが、母材まで貫通した
亀裂を予め被覆膜中に導入したため、グリフィスの予亀
裂長さが長くなり、この長い亀裂がもとで耐欠損性が低
下したり、被覆膜の摩耗に乱れが生じ、耐摩耗性が低下
する問題点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このように、従来の表
面被覆超硬合金工具では耐摩耗性を増大させるために被
覆膜の厚さを増加させると工具の耐欠損性が低下した
り、比較的厚さの大きい被覆膜中に亀裂を予め付与する
場合にも付与された亀裂の状態によってかえって耐摩耗
性が低下するという問題があり、これは未だ解消されて
いない。本発明は、かかる従来の事情に鑑み、耐欠損性
と耐摩耗性の両特性を向上させ、工具寿命を長寿命化さ
せた被覆超硬合金工具を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明者らは、鋭意研究を行った結果、WCをマト
リックスとし、鉄族金属を結合相とした超硬合金を基体
とし、その表面に特定の膜質、構造のセラミック膜を被
覆後、熱的もしくは機械的手法により、被覆膜中に導入
する亀裂長さおよび亀裂間隔を厳密に制御することで、
耐欠損性と耐摩耗性の両特性を向上させ、工具寿命を大
幅に長寿命化できることを見いだした。すなわち、本発
明は下記に要約したとおりの特定された各発明からな
る。
【0006】(1)WCをマトリックスとし、鉄族金属
を結合相とした超硬合金を基体とし、その基体の表面に
複数の被覆層を設けた被覆超硬合金製切削工具におい
て、(a)該被覆層の基体に隣接する最内層が厚み0.
1〜3μm、好ましくは0.3〜1μmの窒化チタンで
あり、その上層に厚み3〜30μm、好ましくは5〜1
5μmのアスペクト比5以上、好ましくは10〜50の
柱状晶からなる炭窒化チタン、さらにその上層に厚み
0.5〜10μm、好ましくは1〜8μmのアルミナが
少なくとも一層被覆されており、(b)前記工具の鏡面
研磨した断面組織上で、刃先稜線部及び/又はすくい面
の被覆膜中の亀裂のうち、被覆膜表面側の亀裂の先端が
被覆膜表面に貫通していないものが50%以上であり、
(c)前記刃先稜線部及び/又はすくい面の被覆膜中の
亀裂のうち、基体側の亀裂の先端が前記最内層の窒化チ
タン内もしくは窒化チタンよりも上層内もしくはそれら
の層間の界面にあるものが50%以上であり、(d)前
記刃先稜線部及び/又はすくい面の被覆膜中の亀裂の平
均長さが逃げ面での被覆膜厚の平均値よりも短く、
(e)前記刃先稜線部及び/又はすくい面の前記炭窒化
チタンの膜中の亀裂間隔の平均値が10μm以下であ
り、(f)前記刃先稜線部及び/又はすくい面の前記ア
ルミナ膜中の平均亀裂間隔は前記炭窒化チタン膜中の平
均亀裂間隔よりも大きい、好ましくは2倍以上、特に2
〜50倍であることを特徴とする被覆超硬合金製切削工
具。
【0007】(2)前記最内層である窒化チタンの厚み
が0.3〜1μm、前記アスペクト比5以上の柱状晶か
らなる炭窒化チタンの厚みが5〜15μm、さらにその
上層のアルミナが厚み1〜8μmであることを特徴とす
る上記(1)に記載の被覆超硬合金製切削工具。 (3)前記柱状晶のアスペクト比が10〜50であるこ
とを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の被覆超硬
合金製切削工具。
【0008】(4)前記刃先稜線部及び/又はすくい面
の被覆膜中の亀裂のうち、前記基体側の亀裂の先端が前
記最内層の窒化チタン内、前記柱状晶からなる炭窒化チ
タン内、もしくは前記窒化チタンと前記柱状晶からなる
炭窒化チタンとの界面にあるものが50%以上、好まし
くは80〜100%であることを特徴とする上記(1)
〜(3)のいずれかに記載の被覆超硬合金製切削工具。
(ここでいう基体側の亀裂の先端の存在量は総量を意味
する。) (5)前記アルミナのうち、少なくとも一層がα−アル
ミナ層であることを特徴とする上記(1)〜(4)のい
ずれかに記載の被覆超硬合金製切削工具。
【0009】(6)前記超硬合金表面には脱β層を有す
ることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記
載の被覆超硬合金製切削工具。 (7)前記刃先稜線部の被覆膜中の亀裂はコーティング
後に機械的に導入されたことを特徴とする上記(1)〜
(6)のいずれかに記載の被覆超硬合金製切削工具。
【0010】(8)前記柱状晶からなる炭窒化チタンが
有機CN化合物を反応ガスとするCVD法によって80
0℃以上1000℃以下の温度で被覆されたことを特徴
とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の被覆超硬
合金製切削工具。 (9)被覆膜の総膜厚が3〜50μmの範囲にある上記
(1)〜(8)のいずれかに記載の被覆超硬合金製切削
工具。
【0011】なお、前記最内層に被覆した窒化チタンと
前記柱状晶の炭窒化チタン又は前記(1)のアルミナ層
との間および前記柱状晶の炭窒化チタンと前記アルミナ
層の間には各層間の密着力向上のため中間層が被覆され
ていても構わない。中間層としては厚さ0.1〜5μm
程度のチタンの炭化物、窒化物、硼化物、酸化物及び又
はこれらの固溶体の層、例えば、窒化チタン、硼窒化チ
タン、窒酸化チタン、炭酸化チタン、硼窒酸化チタン、
炭窒酸化チタン等が挙げられる。さらに、アルミナ層は
複数設けてもよく、その場合、チタンの炭化物、窒化
物、硼化物、酸化物及び/又はこれらの固溶体の層と適
宜にサンドウィッチ状に積層することができる。また、
アルミナ層の外側に最外層として窒化チタンを被覆した
場合には、切削時の使用済みコーナーの識別、金色化に
よる商品価値の向上に役立つ。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明によれば、WCをマトリッ
クスとし、鉄族金属を結合相とした超硬合金を基体と
し、その基体の表面に複数の被覆層を設けた被覆超硬合
金製切削工具において、(a)該被覆層の基体に隣接す
る最内層が厚み0.1〜3μm、好ましくは0.3〜1
μmの窒化チタンであり、その上層に厚み3〜30μ
m、好ましくは5〜15μmのアスペクト比5以上、好
ましくは10〜50の柱状晶からなる炭窒化チタン、さ
らにその上層に厚み0.5〜10μm、好ましくは1〜
8μmのアルミナが少なくとも一層被覆されており、
(b)前記工具の鏡面研磨した断面組織上で、刃先稜線
部及び/又はすくい面の被覆膜中の亀裂のうち、被覆膜
表面側の亀裂の先端が被覆膜表面に貫通していないもの
が50%以上あり、(c)前記刃先稜線部及び/又はす
くい面の被覆膜中の亀裂のうち、基体側の亀裂の先端が
前記最内層の窒化チタン内もしくは窒化チタンよりも上
層内もしくはそれらの層間の界面にあるものが50%以
上であり、(d)前記刃先稜線部及び/又はすくい面の
被覆膜中の亀裂の平均長さが逃げ面での被覆膜厚の平均
値よりも短く、(e)前記刃先稜線部及び/又はすくい
面の前記炭窒化チタンの膜中の亀裂間隔の平均値が10
μm以下であり、(f)前記刃先稜線部及び/又はすく
い面の前記アルミナ膜中の平均亀裂間隔は前記炭窒化チ
タン膜中の平均亀裂間隔よりも大きい、好ましくは2倍
以上、特に2〜50倍とすることが重要である。
【0013】以下に上記発明(1)における、(a)〜
(f)及びその他の発明の限定理由について以下に説明
する。 (a)最内層を窒化チタンとしたのは超硬合金基材に対
する密着力に優れている上、被覆膜中の亀裂が母材に達
するのを防ぐ膜質として非常に優れているからである。
その厚みは0.1μm未満ではその効果が期待できず、
3μmよりも厚くすると耐摩耗性が低下するためこのよ
うに限定した。その上層の炭窒化チタン膜は耐摩耗性の
観点から被覆することが好ましく、また、アスペクト比
が5以上の柱状晶膜とすることで亀裂を導入しやすく、
膜そのものも強靱であるためこのように限定した。ま
た、このアスペクト比は10〜50の範囲にあると特に
優れた性能を期待できる。その厚みは3μm未満では耐
摩耗性向上効果が小さく、30μmよりも厚くなると耐
欠損性の低下が著しくなるのでこのように限定した。ま
た、さらに上層のアルミナ膜は鋼を高速切削したさいに
すくい面摩耗抑制の観点から必要で、その厚みが0.5
μm未満であるとその効果が小さく、10μmを越える
と耐欠損性の低下が著しいためこのように限定した。特
に好ましいのは1〜8μmの時である。
【0014】(b)工具の断面組織を鏡面加工後、光学
顕微鏡もしくは走査電子顕微鏡で観察したとき、刃先稜
線部及び/又はすくい面の被覆膜中の亀裂のうち、被覆
膜表面側の亀裂の先端が被覆膜表面に貫通していないも
のが50%以上であると、高速切削時の被覆膜の耐酸化
性が向上するため好ましい。 (c)刃先稜線部及び/又はすくい面の被覆膜中の亀裂
のうち、母材側の亀裂の先端が前記最内層の窒化チタン
内もしくは窒化チタンよりも上層内もしくはそれらの層
間の界面にあるものが50%以上あると、母材まで貫通
した亀裂の割合が低くなるため、断続切削時に、母材に
貫通した亀裂が応力集中源となって超硬合金母材が破壊
し欠損したり、被覆膜直下の超硬合金が破壊することに
よって被覆膜が剥がれて耐摩耗性が低下する現象が抑制
できるため好ましい。
【0015】特にこのとき、前記刃先稜線部の被覆膜中
の亀裂が、前記柱状晶からなる炭窒化チタン膜にのみ存
在し、その上下の被覆層に貫通していないものが50%
以上であると、前記柱状晶からなる炭窒化チタン膜の結
晶粒は柱状のため、断続切削時のような衝撃が繰り返し
負荷される切削でも亀裂が膜表面と平行に進展したり、
亀裂同士が合体したりすることが少なく、膜のチッピン
グからの溶着欠損や膜の剥離による急激な摩耗増大現象
が抑制できるため好ましい。特に好ましいのは80%以
上の時である。
【0016】(d)前記刃先稜線部及び又は/すくい面
の被覆膜中の亀裂の平均長さが、逃げ面での被覆膜厚の
平均値よりも短いと、表面から母材まで貫通した亀裂が
少なくなり、高速切削時に母材に貫通した亀裂先端で超
硬合金母材が酸化することによる超硬母材の破壊、膜の
剥離による摩耗の増加が抑制できるため好ましい。な
お、前記刃先稜線部とは刃先稜線部の中央部(範囲とし
てはすくい面もしくは逃げ面とのつなぎ部までをい
う)、前記逃げ面とは逃げ面中央部、すくい面とは刃先
稜線部とすくい面のつなぎ部からすくい面側に0〜10
0μm入った位置を指す(図1、2参照)。また、前記
の光学顕微鏡もしくは走査電子顕微鏡による断面組織の
観察は、指定の場所の被覆膜を距離で約50〜100μ
m程度の長さ分、写真撮影し、これを用いて亀裂の導入
状態を評価する。ただし、この観察視野で導入されてい
る亀裂本数が少ないときには、測定視野を延長し、指定
の場所が50μm未満の長さしかないときは、測定可能
な距離だけを測定視野とする。ここでいう亀裂とは各被
覆層の膜厚の1/2以上の長さで被覆膜表面と垂直方向
に導入された亀裂のことを指す(図3参照)。これは、
各層の厚みの1/2以上の亀裂長さの亀裂が導入された
ときに、特に各層の膜が強靱化し、切削性能が向上する
ためである。また、各被覆層の平均亀裂間隔が異なると
きには、最も小さい平均亀裂間隔を本発明の平均亀裂間
隔とした。また、本発明でいう亀裂には研削や鏡面加工
時に導入された亀裂を含み、上記測定法や実施例の方法
で亀裂長さや亀裂間隔を測定することができる。
【0017】(e)前記刃先稜線部及び/又はすくい面
の前記炭窒化チタンの膜中の亀裂間隔の平均値を10μ
m以下とすることにより、刃先稜線部に負荷された切削
応力の集中を抑制でき、応力分散できるため耐欠損性が
向上するのでこのように限定した。
【0018】(f)前記刃先稜線部及び/又はすくい面
の前記アルミナ膜中の平均亀裂間隔が前記炭窒化チタン
膜中の平均亀裂間隔よりも大きい、好ましくは2倍以上
とすることで、炭窒化チタン中に亀裂が数多く導入され
たことによる機械的強度の向上効果とアルミナ中に導入
されたより広い亀裂間隔により、炭窒化チタン膜が高速
切削時に酸化することによる膜質の劣化、膜の破壊、剥
離による摩耗増大現象が抑制できるので、耐欠損性と耐
摩耗性の両立が期待できる。特に2〜50倍とすること
が好ましい。
【0019】さらに、前記アルミナのうち、少なくとも
一層がα−アルミナ層であると被覆膜中の亀裂はアルミ
ナ膜に貫通しにくくなり、前記被覆膜の表面側の亀裂の
先端が被覆膜表面に貫通していないものが増加するた
め、高速切削時に発生する高熱により、被覆膜が酸化す
ることによる膜質の劣化、膜の破壊、剥離による急激な
摩耗増大現象が抑制できるため好ましい。なお、本発明
の被覆超硬合金において、被覆膜厚範囲は3〜50μm
とするのが好ましい。
【0020】次に、前記超硬合金表面には脱β層(WC
および結合相金属以外の析出物を有さない層)を有して
いると、亀裂が切削応力により母材中に進展したときに
超硬母材表面部での靱性が向上しているため、亀裂進展
しにくく、耐欠損性がさらに向上できる。さらに、脱β
層直下に合金内部よりも硬度の高い部分が存在している
と耐欠損性と耐摩耗性のバランスが向上する。脱β層は
窒化物及び/又は炭窒化物を含有する超硬合金組成粉末
を真空などの脱窒雰囲気で焼結することによって得るこ
とができ、その厚さは5〜50μmが好ましい。
【0021】なお、前記刃先稜線部の被覆膜中の亀裂は
コーティング後に導入することができ、機械的衝撃の程
度を制御することで本発明の被覆超硬合金製切削工具を
製造することができる。機械的衝撃を与える方法として
はブラスト処理の他に、砥粒を付着させたブラシや弾性
砥石による研磨、バレル処理などの方法を挙げることが
出来る。このような処理を行った場合、穴つきチップな
どでは穴内面の被覆膜に処理がかかりにくいことから、
穴内面の被覆膜とすくい面、刃先稜線部、逃げ面の被覆
膜の亀裂状態に差が現れやすい。
【0022】次に、前記上層のアルミナ膜が刃先稜線部
の少なくとも一部で、アルミナの粒界が工具表面からの
走査電子顕微鏡観察で判別できないほどに研磨されてい
るとアルミナ膜の粒界に被削材が付着し、膜を剥離させ
る現象を抑制できるため好ましい。また、前記柱状晶か
らなる炭窒化チタンがアセトニトリル(CH3 CN)、
スクシノニトリル、トルニトリル、アクリロニトリル、
ブチニトリルなどの有機CN化合物を反応ガスとするC
VD法によって800℃以上1000℃以下の温度で被
覆されていると、炭窒化チタン膜が柱状晶となりやす
く、本発明に記載の亀裂が導入されやすいため好まし
い。
【0023】
【実施例】以下、実施例により、本発明を説明するが、
これにより本発明が限定されるものではない。 実施例1 重量%で90%WC−3%TiCN−1%ZrC−6%
Coなる組成の超硬合金粉末をプレスし、真空雰囲気中
で1400℃、1時間保持の条件で焼結し、平研、刃先
処理を行い、ISO型番CNMG120408の形状の
超硬合金製チップを作製した。この超硬合金の断面を鏡
面研磨し、組織を光学顕微鏡で観察したところ合金表面
に約20μmの脱β層が形成でき、脱β層の直下に合金
内部よりも硬度の高い部分が形成できていることが断面
硬度分布測定により確認できた。このチップに下層から
順に1.0μmTiN−8μmTiCN−0.5μmT
iBN−2μmαアルミナ−0.5μmTiNなる構造
の膜を被覆した。なお、さiCN膜は原料ガスにアセト
ニトリルを用いて被覆し、アスペクト比が10の膜とし
た。さらにこのチップをすくい面および逃げ面側から、
鉄粉を用いて鉄粉のサイズ、投射スピードを変化させ
て、表1に示す亀裂状態のチップを作製した。なお、被
覆膜中の亀裂の状態は、各被覆超硬合金をダイヤモンド
ホイールで切断し、切断面が見えるように樹脂に埋め込
んだ後、切断面を研削盤で#140のダイヤモンド砥石
を用い、研削速度30m/sec、送り速度20cm/
sec、切り込み量4μm(初期)、2μm(中期)、
1μm(後期)の条件で約300μmの厚さを平面研削
し、更に、研磨盤で#1500(平均粒径が11.5〜
8.9μm)のダイヤモンドペーストで粗研磨、次に#
3000(平均粒径が5.9〜4.7μm、JIS R
6001)のダイヤモンドペーストで仕上げ研磨した面
を光学顕微鏡を用いて×1500で観察し定量化した。
【0024】これらのチップを用いて、表2に記載した
切削テストを実施した。その結果を表3中に記載する。
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【0027】本発明品である試料No.1−1、1−
2、1−3のチップはいずれも優れた耐欠損性、耐摩耗
性を示したが、被覆膜表面側の亀裂の先端が被覆膜表面
に貫通していないものが50%より少ない試料No.1
−4、基体側の亀裂の先端が前記最内層の窒化チタン内
もしくは窒化チタンよりも上層内もしくはそれらの層間
の界面にあるものが50%より少ない試料No.1−
5、被覆膜中の亀裂の平均長さが逃げ面での被覆膜厚さ
の平均値より長い試料No.1−6はNo.1−1、1
−2、1−3のチップよりも耐欠損性、耐摩耗性に劣る
結果となった。
【0028】実施例2 重量%で86%WC−3%TaC−1%NbC−2%T
iC−1%ZrC−7%Coなる組成の超硬合金粉末を
プレスし、真空雰囲気中で1400℃、1時間保持の条
件で焼結し、平研、刃先処理を行い、ISO型番CNM
G120408の形状の超硬合金製チップを作製した。
なお、本超硬合金表面には脱β層がないことが、超硬合
金断面の光学顕微鏡観察により、確認できた。このチッ
プに下層から順に次の3種類の被覆膜をCVD法により
コーティングした。 膜質:0.5μmTiC−10μmTiCN(アスペ
クト比3)−0.5μmTiCO−2μmκアルミナ
(総膜厚13μm) 膜質:0.5μmTiN−10μmTiCN(アスペ
クト比3)−0.5μmTiCO−2μmκアルミナ
(総膜厚13μm) 膜質:0.5μmTiN−10μmTiCN(アスペ
クト比15)−0.5μmTiCO−2μmκアルミナ
(総膜厚13μm)
【0029】なお、膜質のTiCN膜被覆時には有機
CN化合物としてアセトニトリルを原料として用い、8
60℃で被覆し、アスペクト比が約15の柱状晶TiC
N膜を形成した。また、いずれの膜質もアルミナ膜被覆
時にはH2 Sガスを添加ガスとして用い、刃先稜線部と
逃げ面中央部の膜厚が均一となるように被覆した。この
ため、いずれの膜質でも被覆膜厚はすくい面部、刃先稜
線部、逃げ面中央部ともに約13μmであった。さら
に、この被覆超硬合金の表面を、鉄球を用いて鉄球のサ
イズ、投射スピード、投射角度、投射時間を変化させ
て、表4に示す被覆膜中の亀裂状態の異なるチップを作
製した。
【0030】
【表4】
【0031】次にこれらのチップを用いて、実施例1と
同様に表2に示す耐欠損性テスト1、耐摩耗性テスト
1、耐摩耗テスト2を実施した。その結果を表5に示す
が、最下層が0.5μmのTiNで、その上層にアスペ
クト比が15の柱状晶のTiCN膜が10μm被覆さ
れ、さらに2μmのκアルミナ膜からなる膜質{前記
発明(1)の構成要件(a)を満たす}を被覆し、亀裂
の状態が前記発明(1)の(b)、(c)、(d)、
(e)、(f)を満たす試料No.2−8、2−9、2
−10、2−11のチップは、前記発明(1)の構成要
件である(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、
(f)いずれかを満たさない試料2−1〜2−7と比較
して、優れた耐欠損性、耐摩耗性を示した。中でも刃先
稜線部の被覆膜中の亀裂の基体側の先端が最内層窒化チ
タン内もしくは炭窒化チタン内もしくはそれらの層間の
界面にある割合が80%以上であるNo.2−10、2
−11のチップは特に優れた耐欠損性及び耐摩耗性を示
した。
【0032】
【表5】
【0033】以上、実施例により本発明を例示的に説明
したが、以上の実施例によって本発明が制限を受けるも
のではない。
【0034】
【発明の効果】本発明により超硬合金の被覆層中の亀裂
の間隔、その先端及び後端の位置などを定量的に特定す
ることで優れた耐欠損性と耐摩耗性を得ることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るチップの刃先稜線部、逃げ面、す
くい面等を示すための説明図。
【図2】図1のチップを上面から見た模式図。
【図3】本発明に係る超硬合金の被覆層中における亀裂
の先端の基体に対する位置関係を示す図。
【図4】実施例の耐欠損性テスト1、耐摩耗性テスト2
に用いた被削材の横断面図。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23B 27/14 C23C 16/30 C23C 16/36 C23C 28/04

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 WCをマトリックスとし、鉄族金属を結
    合相とした超硬合金を基体とし、その基体の表面に複数
    の被覆層を設けた被覆超硬合金製切削工具において、
    (a)該被覆層の基体に隣接する最内層が厚み0.1〜
    3μmの窒化チタンであり、その上層に厚み3〜30μ
    mのアスペクト比5以上の柱状晶からなる炭窒化チタ
    ン、さらにその上層に厚み0.5〜10μmのアルミナ
    が少なくとも一層被覆されており、(b)前記工具の鏡
    面研磨した断面組織上で、刃先稜線部及び/又はすくい
    面の被覆膜中の亀裂のうち、被覆膜表面側の亀裂の先端
    が被覆膜表面に貫通していないものが50%以上であ
    り、(c)前記刃先稜線部及び/又はすくい面の被覆膜
    中の亀裂のうち、基体側の亀裂の先端が前記最内層の窒
    化チタン内もしくは窒化チタンよりも上層内もしくはそ
    れらの層間の界面にあるものが50%以上であり、
    (d)前記刃先稜線部及び/又はすくい面の被覆膜中の
    亀裂の平均長さが逃げ面での被覆膜厚の平均値よりも短
    く、(e)前記刃先稜線部及び/又はすくい面の前記炭
    窒化チタンの膜中の亀裂間隔の平均値が10μm以下で
    あり、(f)前記刃先稜線部及び/又はすくい面の前記
    アルミナ膜中の平均亀裂間隔は前記炭窒化チタン膜中の
    平均亀裂間隔よりも大きいことを特徴とする被覆超硬合
    金製切削工具。
  2. 【請求項2】 前記最内層である窒化チタンの厚みが
    0.3〜1μm、前記アスペクト比5以上の柱状晶から
    なる炭窒化チタンの厚みが5〜15μm、さらにその上
    層のアルミナが厚み1〜8μmであることを特徴とする
    請求項1に記載の被覆超硬合金製切削工具。
  3. 【請求項3】 前記柱状晶のアスペクト比が10〜50
    であることを特徴とする請求項1又は2に記載の被覆超
    硬合金製切削工具。
  4. 【請求項4】 前記刃先稜線部及び/又はすくい面の被
    覆膜中の亀裂のうち、前記基体側の亀裂の先端が前記最
    内層の窒化チタン内、前記柱状晶からなる炭窒化チタン
    内、もしくは前記窒化チタンと前記柱状晶からなる炭窒
    化チタンとの界面にあるものが50%以上であることを
    特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の被覆超硬合
    金製切削工具。
  5. 【請求項5】 前記刃先稜線部及び/又はすくい面の被
    覆膜中の亀裂のうち、前記基体側の亀裂の先端が前記最
    内層の窒化チタン内、前記柱状晶からなる炭窒化チタン
    内、もしくは前記窒化チタンと前記柱状晶からなる炭窒
    化チタンとの界面にあるものが80%以上であることを
    特徴とする請求項4に記載の被覆超硬合金製切削工具。
  6. 【請求項6】 前記アルミナのうち、少なくとも一層が
    α−アルミナ層であることを特徴とする請求項1〜5の
    いずれかに記載の被覆超硬合金製切削工具。
  7. 【請求項7】 前記超硬合金表面には脱β層を有するこ
    とを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の被覆超
    硬合金製切削工具。
  8. 【請求項8】 前記刃先稜線部の被覆膜中の亀裂はコー
    ティング後に機械的に導入されたことを特徴とする請求
    項1〜7のいずれかに記載の被覆超硬合金製切削工具。
  9. 【請求項9】 前記柱状晶からなる炭窒化チタンが有機
    CN化合物を反応ガスとするCVD法によって800℃
    以上1000℃以下の温度で被覆されたことを特徴とす
    る請求項1〜8のいずれかに記載の被覆超硬合金製切削
    工具。
  10. 【請求項10】 被覆膜の総膜厚が3〜50μmの範囲
    にある請求項1〜9のいずれかに記載の被覆超硬合金製
    切削工具。
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