JP3345351B2 - 厚膜形有光沢ディッピング塗料組成物 - Google Patents

厚膜形有光沢ディッピング塗料組成物

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幹男 藤井
力生 川端
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は主に水道用鋳鉄製異
形管およびそれに付属する部品類の内外面の防食塗装に
用いられる厚膜形有光沢ディッピング塗料組成物に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】水道用鋳鉄製異形管及びそれに付属する
部品類は、その形状が複雑であるため、スプレー塗装や
はけ塗りが困難であり、塗料中に被塗物を浸漬して塗装
するディッピング塗装が広く採用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし従来は良好な濡
れ性や乾燥性などの塗装作業性を確保するためには、塗
料を希釈して薄膜に塗装せざるを得なかった。また1回
で厚膜に塗装するためには塗料粘度が高くなって乾燥性
を含めた塗装作業性が低下したり、あるいは見かけの乾
燥性をあげるために塗料配合中の顔料分を多くすると塗
膜の光沢が低下するといった問題を有していた。光沢の
低い塗膜では被塗物の商品価値を低下させるため、有光
沢の上塗り塗料をもう1度ディッピング塗装することも
行われている。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは乾燥性、厚
膜性、塗膜光沢の相反する要求性能を満足させるために
研究した結果、特定のエポキシエステル樹脂とアクリル
樹脂を併用し、そこに特定割合の顔料を配合することに
より、必要な塗膜厚を確保しながら、良好な乾燥性と塗
膜光沢を有するディッピング塗料を見いだし、本発明を
完成した。
【0005】すなわち、本発明は、水道用鋳鉄製異形管
およびそれに付属する部品類の内外面の防食塗装に用い
られる厚膜形有光沢ディッピング塗料組成物において、
酸価が3以下であるエポキシエステル樹脂(a)と溶液
重合によって得られるアクリル樹脂(b)を含有する溶
剤系の厚膜形有光沢ディッピング塗料組成物であって、
エポキシエステル樹脂(a)が、エポキシ樹脂と不飽和
基を有する脂肪酸とを反応させてなるエポキシエステル
樹脂に、さらにビニルモノマーをグラフト重合させて得
られることを特徴とする厚膜形有光沢ディッピング塗料
組成物である。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明の厚膜形有光沢ディッピン
グ塗料組成物はエポキシエステル樹脂(a)、アクリル
樹脂(b)を必須成分として含有するものであるが、使
用に際しては必要により各種顔料類、添加剤類を分散、
混合した1液の塗料として調製される。そして塗装にお
いてはディッピング槽中にこの塗料と専用の希釈用シン
ナーを投入し、適正な塗装粘度に調整した後、被塗物を
ディッピング塗装するものである。
【0007】本発明に用いる(a)エポキシエステル樹
脂としては、1分子中にエポキシ基を2個以上有する液
状または固形のエポキシ樹脂を不飽和基を有する脂肪酸
と反応させてエステル化した後に、脂肪酸中の不飽和基
とビニルモノマーとをグラフト重合させて得られるもの
であり、重量平均分子量約10000〜20000で、
酸価が3以下のものが使用できる。
【0008】重量平均分子量が10000よりも小さい
場合には塗料としたときの粘度が低くでき厚膜性には有
利であるが、乾燥性や塗膜の防食性に問題を有すること
がある。一方重量平均分子量が20000を越えると、
塗料にしたときの粘度が高くなりすぎるため、ディッピ
ング塗装に適性な粘度まで調整するのに多量の希釈用シ
ンナーを要するため、厚膜に塗装することが困難にな
り、好ましくない。また、エポキシエステル樹脂の酸価
が3を越えると鉄製の部材に塗装したときに早期にさび
が生じる原因の一つとなるため好ましくない。
【0009】エステル化反応に用いられるエポキシ樹脂
はビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェ
ノールAD型、あるいはこれらを変性したものが使用で
きる。またエポキシ樹脂のエポキシ当量の大きさについ
ても特に制限はないが、望ましい分子量を有するエポキ
シエステル樹脂を得るためには、エポキシ当量が450
〜1000程度のものが好適である。
【0010】また、エステル化に用いる不飽和基を有す
る脂肪酸としてはオレイン酸、リノール酸、リノレイン
酸などがあげられるがこれに限定されるものではない。
また通常はこれらの混合物である各種油脂の脂肪酸が用
いられ、それにはあまに油脂肪酸、しなきり油脂肪酸、
サフラワー油脂肪酸、大豆油脂肪酸、あるいは脱水ひま
し油脂肪酸などをあげることができるが、本発明はこれ
らに限定されるものではない。
【0011】エステル化反応の条件としては既知の方法
をそのまま適用することができる。
【0012】グラフト重合に用いるビニルモノマーとし
ては、通常のアクリル樹脂の合成に使用される各種のア
クリル酸及びそのエステル類、メタクリル酸及びそのエ
ステル類、さらにはスチレンやアクリロニトリルなどを
用いることができる。
【0013】グラフト重合の反応には一般のラジカル重
合の条件をそのまま適用することができる。
【0014】本発明の(b)アクリル樹脂としては通常
のアクリル樹脂の合成に使用される各種のアクリル酸及
びそのエステル類、メタクリル酸及びそのエステル類、
スチレンやアクリロニトリルなどのビニルモノマーをラ
ジカル重合させて得ることができる重量平均分子量が3
0000〜50000,ガラス転移点が30〜70℃の
ものが使用できる。
【0015】重量平均分子量が30000よりも小さい
場合には塗料としたときの粘度が低くでき厚膜性には有
利であるが、乾燥性や塗膜の防食性に問題を有すること
がある。一方重量平均分子量が50000を越えると、
塗料にしたときの粘度が高くなりすぎるため、ディッピ
ング塗装に適性な粘度まで調整するのに多量の希釈用シ
ンナーを要するため、厚膜に塗装することが困難にな
る。また樹脂のガラス転移点が30℃よりも低い場合に
は、ディッピング塗装した塗膜の乾燥性が遅くなる傾向
があり、好ましくない。ガラス転移点が70℃を越える
場合には塗膜の耐衝撃性や耐屈曲性などの物性が低下す
る傾向がある。
【0016】本発明の(a)エポキシエステル樹脂と
(b)アクリル樹脂とは特定の割合で混合して使用され
る。(a)エポキシエステル樹脂と(b)アクリル樹脂
との混合割合が、固形分比で4:1よりも大きく、
(a)エポキシエステル樹脂の割合が多い場合には塗膜
の乾燥性が低下するので好ましくなく、一方混合割合が
1:1よりも小さく(b)アクリル樹脂の割合が多くな
る場合には、物性、防食性が低下するので好ましくな
い。
【0017】本発明において使用される顔料としては着
色顔料、体質顔料、防錆顔料があるが、これらの使用割
合が重量比で混合された樹脂の固形分の30%よりも少
ない場合には塗膜の厚膜性や乾燥性が低下するので好ま
しくない。また80%よりも多い場合には乾燥した塗膜
の光沢が低下するので好ましくない。
【0018】本発明における厚膜形有光沢ディッピング
塗料には前記以外に必要に応じ分散散剤、湿潤剤、消泡
剤、たれ止め剤、増粘剤、レベリング剤、皮張り防止剤
などの添加剤類を併用してもよい。また塗装作業性や乾
燥性を調整するために通常使用される各種の有機溶剤を
併用してもよい。
【0019】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に
説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお「部」および「%」は「重量部」および「重量%」
を示す。
【0020】(1)エポキシエステル樹脂(a)の製造 (1−1)エステル化反応 撹拌装置、温度計、還流冷却管及び窒素冷却管を備えた
反応器に、あまに油脂肪酸8部、脱水ひまし油脂肪酸2
部、大豆油脂肪酸5部を仕込み、窒素雰囲気下で150
℃に昇温してから、エポキシ当量が約950のビスフェ
ノールA型固形エポキシ樹脂(注1)22部、パラター
シャリーブチル安息香酸3部、キシレン1部を投入し、
250℃まで昇温した。この温度で3時間保持しエステ
ル化反応を完了させてから180℃以下に冷却しエステ
ル化物を得た。
【0021】(1−2)グラフト化反応 撹拌装置、温度計、還流冷却管及び窒素冷却管を備えた
反応器に、キシレン40部を仕込みここにエステル化物
を投入した。140℃まで昇温し、ここにスチレン9
部、アクリロニトリル3部、ジターシャリーブチルパー
オキサイド0.2部の混合液を4時間かけて滴下した。
さらに2時間の熟成後キシレン7部、芳香族系混合溶剤
(注2)2部を投入して冷却しグラフト化反応を完了し
た。得られたエポキシエステル樹脂溶液の樹脂特性は、
不揮発分47%、粘度(ガードナー法)U、酸価2.
5,重量平均分子量14000であった。
【0022】(2)アクリル樹脂(b)の製造 撹拌装置、温度計、還流冷却管及び窒素冷却管を備えた
反応器に、キシレン50部を仕込み、ここにメタクリル
酸メチルエステル40部、アクリル酸2エチルヘキシル
8部、メタクリル酸0.01部およびクメンハイドロパ
ーオキサイド0.02部からなるモノマー混合液を全還
流下3時間かけて滴下した。滴下終了後同温度で2時間
保持した。得られた樹脂溶液の特性は不揮発分53%、
粘度(ガードナー法)Z3,重量平均分子量40000
であった。
【0023】(注1)油化シェル化学社製、商品名:エ
ピコート1004 (注2)出光石油化学社製、商品名:イプゾール100
【0024】(3)ディッピング塗料の製造 実施例1 トルエン10部とエポキシエステル樹脂(a)20部の
混合液に、カーボンブラック1部、ケイ酸マグネシウム
5部、硫酸バリウム5部、りん酸亜鉛5部、脂肪酸アマ
イドワックス4部、酸化ポリエチレンワックス2部を順
次加えてディスパーで混合し、サンドミルにて分散後レ
ットダウンとしてエポキシエステル樹脂(a)18部、
アクリル樹脂(b)25部、メチルエチルケトン4部を
加え、ディスパーで混合してディッピング塗料を得た。
【0025】実施例2、3及び比較例1〜4 実施例1において表1に示す組成及び配合量とする以外
は実施例1と同様にして、実施例2、3、および比較例
1〜4の塗料組成物を得た。
【0026】得られた実施例及び比較例の各塗料組成物
を以下に示す性能試験に供し評価した。結果を表2に示
す。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】(*1)塗装膜厚:IHSカップで測定し
て30秒となるように専用シンナーで希釈し、そこに磨
き軟鋼板をディッピング塗装し、乾燥後電磁膜厚計によ
って塗膜の膜厚を測定した。 (*2)乾燥性:(*1)でディッピング塗装した塗膜
についてJIS K5400.6.5に規定する硬化乾
燥に達するまでの時間を測定した。 (*3)塗膜の光沢:(*1)でディッピング塗装した
塗膜について48時間乾燥後60度鏡面反射率を測定し
た。 (*4)JISK5400.8.1による10mm折り
曲げ
【0030】性能試験結果の表記の説明 ○印:塩水噴霧試験においては、塗膜の表面にサビ、フ
クレなどの異状が認められない。また、耐屈曲性試験に
おいては折り曲げられた部分の塗膜に、われやしわなど
の異状が認められない。 ×印:塩水噴霧試験においては、塗膜の表面にサビ、フ
クレなどの異状が認めらる。また、耐屈曲性試験におい
ては折り曲げられた部分の塗膜に、われやしわなどの異
状が認めらる。
【0031】(注3)楠本化成(株)製 商品名:ディ
スパロン6900−20X (注4)楠本化成(株)製 商品名:ディスパロン42
00−20
【0032】
【発明の効果】本発明の塗料組成物をディッピング塗装
に用いることにより、1回塗りで80μm以上の厚膜塗
装が可能で、乾燥が早いという優れた作業性を有し、か
つ得られた塗膜は光沢があり、防食性と物性が良好であ
るので、水道用鋳鉄製異形管およびそれに付属する部品
類の内外面の防食塗装に好適である。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平10−120969(JP,A) 特開 昭60−130615(JP,A) 特開 平10−36763(JP,A) 特開 昭61−12765(JP,A) 特開 平7−188608(JP,A) 特開 平8−48936(JP,A) 特公 平8−22980(JP,B2) 特公 平3−78434(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C09D 133/06 C09D 5/08 C09D 151/08

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水道用鋳鉄製異形管およびそれに付属す
    る部品類の内外面の防食塗装に用いられる厚膜形有光沢
    ディッピング塗料組成物において、酸価が3以下である
    エポキシエステル樹脂(a)と溶液重合によって得られ
    るアクリル樹脂(b)を含有する溶剤系の厚膜形有光沢
    ディッピング塗料組成物であって、エポキシエステル樹
    脂(a)が、エポキシ樹脂と不飽和基を有する脂肪酸と
    を反応させてなるエポキシエステル樹脂に、さらにビニ
    ルモノマーをグラフト重合させて得られることを特徴と
    する厚膜形有光沢ディッピング塗料組成物。
  2. 【請求項2】 エポキシエステル樹脂(a)とアクリル
    樹脂(b)との混合割合が固形分換算で1:1〜4:1
    の範囲であり、さらにこれらに配合する顔料の割合が、
    混合された樹脂の固形分に対して重量比で30〜80%
    であることを特徴とする請求項1に記載の厚膜形有光沢
    ディッピング塗料組成物。
JP17409398A 1998-06-05 1998-06-05 厚膜形有光沢ディッピング塗料組成物 Expired - Lifetime JP3345351B2 (ja)

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