JP3343809B2 - 吹付け耐火物 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、各種工業炉の炉壁
等のライニング材や補修材として用いられる吹付け耐火
物に関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、各種工業炉の炉壁等のライニング
や補修には、工期短縮及び工事コストの削減等の理由に
より、吹付け施工が多く採用されるようになっている。
吹付け施工には、乾式法と湿式法があり、一般的には乾
式法が用いられている。乾式法は、ノズル先端で材料と
水を混合してスラリー状となった耐火物を被施工面に吹
付け（ガニング；ｇｕｎｎｉｎｇ）施工する方法であ
り、材料の水範囲が施工性を大きく左右する。従来、こ
の種の吹付け耐火物としては、アルミナ（Ａｌ
₂ Ｏ₃ ）、マグネシア（ＭｇＯ）、スピネル（ＭｇＯ・
Ａｌ₂ Ｏ₃ ）、炭化珪素（ＳｉＣ）又はシャモット等の
耐火性骨材７０〜９５ｗｔ％、アルミナセメント、珪酸
ソーダ、リン酸アルミニウム又はリン酸ガラス等の結合
剤１〜３０ｗｔ％、並びに天然のベントナイト、各種粘
土、メチルセルロース、石膏及びセピオライト等の少な
くとも１種０．１〜１０ｗｔ％から構成されているもの
が知られている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
吹付け耐火物では、材料の水範囲の調整と、たれ防止の
目的で、潤滑性とチクソトロピー性を有する天然のベン
トナイトを使用しているので、材料の十分な水範囲を確
保し、かつ良好な施工性を得るためには、多量の天然の
ベントナイトを添加する必要があり、この多量の天然の
ベントナイトの添加が、その膨潤によって結合剤のボン
ド形成を阻害し、加熱後の施工体の強度を低下させると
いう不具合がある。これは、天然のベントナイトが、不
純物として石英やクリストバライト等の非可塑性を付与
する鉱物を多く含んでいるためである。一方、結合剤と
してアルミナセメントを使用する場合においては、９０
０℃前後の中間温度域における施工体の強度低下を招来
する不具合がある。そこで、本発明は、材料の十分な水
範囲を確保し、かつ良好な施工性を得ると共に、加熱後
の施工体強度を高め得る吹付け耐火物を提供することを
主目的とする。又、他の目的は、上記目的に加えて、中
間温度域における施工体強度を高め得る吹付け耐火物の
提供にある。

【０００４】

【課題を解決するための手段】前記課題を解決するた
め、本発明の第１の吹付け耐火物は、アルミナ、マグネ
シア、スピネル、炭化珪素又はシャモット等の耐火性骨
材、アルミナセメント、珪酸ソーダ、リン酸アルミニウ
ム又はリン酸ガラス等の結合剤並びに各種粘土、メチル
セルロース、石膏及びセピオライトの少なくとも１種の
増粘剤からなる混合物に、０．１〜２．０ｗｔ％の合成
スメクタイトを添加してなることを特徴とする。又、第
２の吹付け耐火物は、アルミナ、マグネシア、スピネ
ル、炭化珪素又はシャモット等の耐火性骨材及び結合剤
としてのアルミナセメントからなる混合物に、０．１〜
１．０ｗｔ％の合成スメクタイト及び２〜１０ｗｔ％の
シリカフラワーを添加してなることを特徴とする。一
方、前記合成スメクタイトは、見掛け比重０．６〜０．
９、白色度９５％以上及び一次粒子径２０〜５０ｎｍの
３−八面体型の合成ヘクトライトや合成サポナイト、水
ヒベントナイトが好ましい。

【０００５】合成スメクタイトは、人工的に合成された
純粋のものであり、膨潤性、チクソトロピー性等の性状
は天然のベントナイトと同様であるが、不純物を含有し
ないため、少量の添加で水範囲の調整及びたれ防止に寄
与する。合成スメクタイトの添加量が、０．１ｗｔ％未
満であると、材料の水範囲が狭くなって良好な施工性が
得られない。一方、第１の吹付け耐火物においては２．
０ｗｔ％を超えると、材料の水範囲が広くなりすぎて施
工体の嵩比重の低減が顕著となり、良好な施工体が得ら
れず、又、第２の吹付け耐火物においては１．０ｗｔ％
を超えると、材料の水範囲は十分であり施工性に問題は
ないが、アルミナセメントによるボンド形成を阻害し、
加熱後の施工体の強度が著しく低下する。シリカフラワ
ーは、アルミナセメントの使用に伴う９００℃前後の中
間温度域での施工体の強度低下及び合成スメクタイト添
加の影響による施工体の若干の強度低下の抑制に寄与す
る。又、シリカフラワーは、粘着性及び保水性を有して
いるので、材料の付着性の向上と材料への水分添加量の
軽減に寄与する。シリカフラワーの添加量が、２ｗｔ％
未満であると、施工体の強度低下を抑制することができ
ない。一方、１０ｗｔ％を超えると、比表面積が大きく
なり、合成スメクタイトの場合とは逆に、材料への水分
添加量の増加及びたれ発生の問題が生ずる。なお、合成
スメクタイトの添加は、前述したようにたれ防止に有効
であるが、仮に合成スメクタイトの添加量を増加させ、
たれを防止したとしても、逆に合成スメクタイト添加の
影響による施工体の強度低下を招来する。

【０００６】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て具体的な実施例と比較例を用いて説明する。 実施例１〜３、比較例１〜５ 耐火性骨材として粗粒、細粒及び微粉のシャモット、結
合剤としてアルミナセメント、並びに増粘剤として合成
スメクタイト、天然のベントナイト及びメチルセルロー
スの少なくとも１種をそれぞれ表１に示す割合で配合
し、モルタルミキサーにより混合して各吹付け耐火物を
得た。得られた各吹付け耐火物１０００ｋｇを、乾式法
によりノズルから適量の水と共に、垂直な試験パネルに
２５０ｍｍの厚みとなるように吹き付けた。この際のス
ラリー状の吹付け耐火物の付着率及び粉塵発生状況は、
表１に示すようになった。又、各施工体からサンプルを
採取し、直径５０ｍｍ、高さ５０ｍｍに切断加工したも
のについて、１１０℃の温度で２４時間乾燥後の嵩比重
及び圧縮強さを測定したところ、表１に示すようになっ
た。

【０００７】

【表１】

【０００８】表１から、本発明に係る実施例１〜３の吹
付け耐火物は、付着率が８９〜９６％であり、従来品に
相当する比較例２〜５の吹付け耐火物の付着率７８〜９
４％と比較して向上しており、リバウンドロスが少なく
経済的であることがわかる。又、本発明に係る吹付け耐
火物は、従来のものと比較して施工時の粉塵発生が少な
く、良好な作業環境を得られることがわかる。更に、本
発明に係る吹付け耐火物は、施工体の乾燥後の嵩比重が
２．１２〜２．２０であり、従来のもののそれが１．８
８〜２．１０であるのと比較してかなり高くなってお
り、施工体を緻密にし得ることがわかる。更に又、本発
明に係る吹付け耐火物による施工体の乾燥後の圧縮強さ
は、４１．３〜４７．３ＭＰａであり、従来のものによ
るそれの２６．４〜４０．２ＭＰａと比較して高いこと
がわかる。

【０００９】実施例４〜８、比較例６〜１１ 耐火性骨材として粒度調整された炭化珪素、結合剤とし
てアルミナセメント、増粘剤として合成スメクタイト又
は天然のベントナイト、並びにシリカフラワーをそれぞ
れ表１に示す割合で配合し、モルタルミキサーにより混
合して各吹付け耐火物を得た。得られた各吹付け耐火物
１０００ｋｇを、乾式法によりノズルから適量の水と共
に、垂直な試験パネルに２５０ｍｍの厚みとなるように
吹き付けた。この際のスラリー状の吹付け耐火物の付着
率は、表２、表３に示すようになった。又、各施工体か
らサンプルを採取し、縦４０ｍｍ、横４０ｍｍ、長さ１
６０ｍｍに切断加工したものについて、１１０℃、９０
０℃及び１２００℃の温度で加熱した後の曲げ強さを測
定したところ、表２、表３に示すようになった。

【００１０】

【表２】

【００１１】

【表３】

【００１２】表２、３から、本発明に係る実施例４〜８
の吹付け耐火物は、付着率が９０〜９６％となり、従来
品に相当する比較例６、７の吹付け耐火物の付着率８２
〜８６％と比較し、大幅に向上しており、リバウンドロ
スが少なく経済的であることがわかる。又、本発明に係
る吹付け耐火物は、９００℃の温度での加熱後の曲げ強
さが５〜８ＭＰａであり、従来のもののそれが２〜３Ｍ
Ｐａであるのと比較して格段に高いことがわかる。

【００１３】なお、上述した実施例においては、耐火性
骨材としてシャモット、炭化珪素を用いた場合について
説明したが、これに限定されるものではなく、耐火性骨
材としてアルミナ、マグネシア又はスピネル等を用いて
も同様の効果が得られた。又、実施例１〜３において
は、結合剤としてアルミナセメントを用いた場合につい
て説明したが、これに限らず、珪酸ソーダ、リン酸アル
ミニウム又はリン酸ガラス等の結合剤を用いても同様の
効果が得られた。更に、実施例１〜３においては、増粘
剤として合成スメクタイトとメチルセルロースを用いた
場合について説明したが、これに限らず、天然のベント
ナイトを除き、合成スメクタイト、各種粘土、メチルセ
ルロース、石膏及びセピオライトの少なくとも１種を増
粘剤として用いても同様の効果が得られた。

【００１４】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の第１の吹
付け耐火物によれば、合成スメクタイトは、膨潤性、チ
クソトロピー性等の性状は天然のベントナイトと同様で
あるが、長石やクリストバライト等の不純物を含有せ
ず、少量の添加で材料の水範囲の調整及びたれ防止に寄
与するので、材料の十分な水範囲を確保し、かつ良好な
施工体を得ることができると共に、加熱後の施工体の強
度を高めることができ、ひいては施工体の耐摩耗性を高
め、耐用寿命を延ばすことができる。又、第２の吹付け
耐火物によれば、上述した合成スメクタイトの作用に加
え、シリカフラワーは、アルミナセメントの使用に伴う
９００℃前後の中間温度域での施工体の強度低下及び合
成スメクタイト添加の影響による施工体の若干の強度低
下の抑制に寄与し、かつシリカフラワーは、粘着性及び
保水性を有し、材料の付着性の向上と材料への水添加量
の軽減に寄与するので、材料や十分な水範囲を確保し、
かつ一層良好な施工性を得ることができると共に、加熱
後の施工体の強度を一層高めることができ、ひいては施
工体の耐摩耗性を一層高め、耐用寿命を格段に延ばすこ
とができる。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 齊藤 幸治 愛知県刈谷市小垣江町南藤１番地 東芝 セラミックス株式会社刈谷製作所内 (72)発明者 中村 登 愛知県刈谷市小垣江町南藤１番地 東芝 セラミックス株式会社刈谷製作所内 (56)参考文献 特開 平９−263463（ＪＰ，Ａ) 特開 平９−263464（ＪＰ，Ａ) 特開 平９−263465（ＪＰ，Ａ) 特開 平６−32665（ＪＰ，Ａ) 特開 平８−133852（ＪＰ，Ａ) 特開 平１−148757（ＪＰ，Ａ) 特開 昭57−145082（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) C04B 35/66 F27D 1/16

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 アルミナ、マグネシア、スピネル、炭化
   珪素又はシャモット等の耐火性骨材、アルミナセメン
   ト、珪酸ソーダ、リン酸アルミニウム又はリン酸ガラス
   等の結合剤並びに各種粘土、メチルセルロース、石膏及
   びセピオライトの少なくとも１種の増粘剤からなる混合
   物に、０．１〜２．０ｗｔ％の合成スメクタイトを添加
   してなることを特徴とする吹付け耐火物。
2. 【請求項２】 アルミナ、マグネシア、スピネル、炭化
   珪素又はシャモット等の耐火性骨材及び結合剤としての
   アルミナセメントからなる混合物に、０．１〜１．０ｗ
   ｔ％の合成スメクタイト及び２〜１０ｗｔ％のシリカフ
   ラワーを添加してなることを特徴とする吹付け耐火物。
3. 【請求項３】 前記合成スメクタイトが、見掛け比重
   ０．６〜０．９、白色度９５％以上及び一次粒子径２０
   〜５０ｎｍであることを特徴とする請求項１又は２記載
   の吹付け耐火物。